説明

調製品、特に、化粧用調製品、その製造方法および使用方法

少なくとも1種類のシリコーン、乳化剤としてそれぞれ15から20単位のPEGおよびPPGを含む少なくとも1種類のPEG/PPGジメチコーン、脂質相、調製品の総質量に対して0.1から5%の比率の水、および少なくとも1種類の粒状成分を含有する油中水型エマルジョンの形態にある調製品が開示されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、調製品、特に、化粧用調製品、およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
本発明による調製品は、エマルジョンタイプの形態にある。化粧品の分野でW/OまたはW/Siエマルジョンを使用することが知られている。シリコーンは、その非移行性のために化粧用組成物にすすんで用いられる。何故ならば、完成製品は、作業可能に塗布でき、良好な付着強さを示し、適所に留まるからである。しかしながら、それらの公知の組成物に特有の高含水量は、その組成物にはしばしば、不快なヒリヒリする冷却作用を生じるという欠点があることを意味することに気付くであろう。最新の製品にも、水分、例えば、汗や涙のために、その製品が流れて、広がるという欠点がある。それを避けるために、配合物に膜形成剤が加えられる。しかしながら、それにより、皮膚につっぱり感を生じるベトベトする製品が形成され得る。
【0003】
その組成物に構造を与えるために、たいていワックスおよびワックス状化合物が加えられる。それらには、生じる膜をくすませるという欠点がある。さらに、ワックスは、それらを加工するために、比較的高い温度を適用しなければならないほど融点が一般に高い。それにより、シリコーン含有組成物の加工に関して難点が生じる。何故ならば、一般に、80℃未満の低い引火点を持つ揮発性シリコーンを溶媒として使用しなければならないからである。したがって、そのような組成物を加工するためには、安全措置を増強する必要がある。
【0004】
高い比率で揮発性シリコーンおよび非揮発性シリコーンを含有する化粧用組成物に関するさらに別の問題は、それらの組成物は満足に塗布でき良好に付着できるが、揮発性溶媒の蒸発後、皮膚につっぱり感が生じ、これが不快であると知覚されることである。
【0005】
特許文献1には、例えば、優れた安定性に恵まれた油中水型エマルジョンであって、特定のシリコーン、油、水、エチルアルコールおよびデキストリン脂肪酸エステルを含有するエマルジョンが開示されている。それらのエマルジョンにおいて、水とエチルアルコールの比率は非常に高い。そのようにエタノールの比率が高いと、皮膚、特に粘膜に炎症が生じることがある。さらに、この種の水性系は、微生物汚染を被ることがある。汚染を避けるためには防腐剤を加える必要があり、これは、特にエタノールと共に、より悪い皮膚適合性に関する新たな問題を生じ得る。
【0006】
さらに、パール顔料を含有し得る化粧用調製品が特許文献2から知られており、ここで、エマルジョンが、低アルコールおよび水と組み合わされたシリコーン化合物から構成される。その製品に関しても、水とアルコールの比率が高い。
【0007】
ゲル状製品が特許文献3に記載されており、これも水の比率が非常に高い。その製品は、アイシャドーやリップスティック並びに日焼け防止クリームなどのメーキャップ製品を提供するように加工できる。それら全ての組成物に共通することは、ポリエーテル修飾シリコーンが乳化剤として用いられることである。それら全ての組成物において、水とアルコールの比率が高い。
【0008】
さらに、安定化目的のために特別な乳化剤および塩が用いられる、内側水相の比率が高い油中水型エマルジョンを使用することが特許文献4から知られている。提案された乳化剤は、外側の油相を安定化させる、異なる分子量の2種類の異なるポリエーテル修飾シリコーンの組合せであり、一方で、塩は、内側水相を安定化させることが意図されている。ここでは、水の比率は80%までであり得る。
【0009】
特許文献5には、シリコーン油、水および乳化剤を含むシリコーンゲル組成物であって、乳化剤が、それぞれ、25〜30エトキシおよびプロポキシ単位を持つポリエーテル修飾シリコーンである組成物が開示されている。
【0010】
これら公知の組成物の欠点は、それらの高い含水量であり、これにより、微生物学的問題の他に、著しい冷却作用が生じる。大面積に亘り顔や体に塗布され、それについても冷却作用が望ましい、コールドクリームと称される製品の状況とは異なり、小面積に亘り、特に目の周りに塗布されたときに、冷却作用は、不快なこと、さらには刺激として知覚される。
【特許文献1】特開2001−58921号公報
【特許文献2】特開2000−239119号公報
【特許文献3】特開平9−194323号公報
【特許文献4】米国特許出願公開第2004/0028633A1号明細書
【特許文献5】欧州特許出願公開第568102号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明の課題は、公知の組成物を改良すること、特に、気になるつっぱり感を生じずに、皮膚および粘膜、特に、瞼や唇に塗布でき、元の柔軟性および伸縮性を損なわず、しっかりと粘着し、適所に留まり、容易に除去でき、長期に亘り安定なままである組成物を提供することにあった。本発明はさらに、要望どおりに、セミマット、シルクマット、シャイニーまたは超シャイニーな膜を生じる製品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
それらの課題は、請求項1に定義された調製品により達成される。
【0013】
本発明による調製品は、以下の成分:
a) 少なくとも1種類のシリコーン、
b) 乳化剤としてそれぞれ15から20単位のPEGおよびPPGを含む少なくとも1種類のPEG/PPGジメチコーン、
c) 油、脂肪および/またはワックスを有して差し支えない脂質相、
d) 調製品の総質量に対して0.1から5%の比率の極性液体、および
e) 少なくとも1種類の粒状成分
を含有する。
【0014】
この調製品は、極性流体または液体が、組成物中に均質かつ微細に分布している形態にある。その調製品は、極性液体が、極性の弱い成分中に微細に分布しているエマルジョンまたはゲル状組成物の形態にあり得る。乳化剤は、この微細な分布に寄与できる。
【0015】
製品の性質を変えるために、必要に応じて、さらに別の成分を加えても差し支えない。
【0016】
意外なことに、少量の極性液体を微細に分布した形態で含有する、請求項に記載した形態の調製品であって、ある実施の形態において、W/OエマルジョンまたはW/Siエマルジョンの形態にあり得る調製品が、つっぱり感を生じずに、シリコーンにとって有利な性質を有することが分かった。さらに、本発明による調製品は、長期に亘り安定なままである。本発明による調製品を皮膚に塗布したときに、その調製品は、汗や涙などの、塗布地点またはその非常に近くに存在するまたは生じる水分により運び去られないだけでなく、それによって安定化さえされることが分かった。しかしながら、その効果は、その調製品が既に、水や、例えば、一価または多価アルコールなどの他の極性物質を小さな比率で含有する場合にのみ生じることができる。理論に拘束することを意図するものではなく、請求項に定義された調製品において、小さな比率の極性物質によりゲルが形成され、形成されたゲル構造が、極性物質、特に、調製品に組み込まれた水をさらに安定化させることが推測される。本発明による製品の場合、それにより、シリコーンにより得られる利点が達成されると同時に、そうしなければシリコーンに関連するであろう問題が避けられる。それらの有利な性質は、調製品が、小さな比率であるが、極性物質、特に、水を既に含有する場合のみに達成される。極性溶媒のない調製品は、皮膚に塗布してから溶媒が蒸発した後、つっぱり感が生じ、一方で、高い比率で水を含む調製品は、上述した欠点を伴う。
【0017】
さらに、本発明による調製品が、著しいチキソトロピー挙動を示すことが分かった。チキソトロピー性または固有粘性は、この種の組成物にとって非常に有利である。何故ならば、その調製品は、ペースト形態で容器中に導入でき、容器からは流れ出ないが、塗布したときに非常に作業性が良く、したがって、薄い層に心地良く塗布できるからである。本発明による保護の有利な性質は、低い比率の極性液体、特に水の他に、乳化剤とシリコーンの特別な組合せの使用により得られる。
【0018】
本発明による調製品のシリコーン成分は、揮発性シリコーンまたは非揮発性シリコーンにより形成できる。本発明による調製品中に少なくとも1種類の揮発性シリコーンを含ませることが好ましい。揮発性シリコーンはこの分野の当業者に公知であり、例えば、揮発性シクロメチコーンおよび揮発性線状ジメチコーンが知られている。揮発性シクロメチコーンの例は、シクロトリシロキサン(ヘキサメチルシクロトリシロキサン)、シクロテトラシロキサン(オクタメチルシクロテトラシロキサン)、シクロペンタシロキサン(デカメチルシクロペンタシロキサン)、シクロヘキサシロキサン(ドデカメチルシクロヘキサシロキサン)などの3から7ジメチルシロキサン単位を持つ環状シロキサンである。線状シリコーンの例は、ヘキサメチルジシロキサン、オクタメチルトリシロキサン、デカメチルテトラシロキサン、ドデカメチルペンタシロキサンまたはそれら個々の物質の混合物などの3から10ジメチルシロキサン単位を持つ線状シロキサンであり、ここで、様々な線状シリコーン油、様々なシクロメチコーンの混合物および環状と線状のシリコーンの混合物の両方が適している。通常、200℃未満の沸点を持つそれら化合物が揮発性シリコーンとみなされる。
【0019】
本発明による調製品は、揮発性シリコーン以外に、体温および周囲温度で実質的に揮発性ではないシリコーンを含んでもよい。シリコーン油およびシリコーン樹脂がここでは考えられ、それに関する例は、化粧品の分野の当業者にはよく知られている。化粧用調製品に適したシリコーン油およびシリコーン樹脂は、様々に入手でき、市販されている。シリコーン樹脂とも称される長鎖ジメチルシロキサンおよび分岐シロキサンの形態にあるシリコーン油を例として挙げることができる。例えば、ジメチコーン、フェニルトリメチコーン、ジフェニルジメチコーンおよびアルキルジメチコーンなどの生成物を、非揮発性シリコーン油として使用できる。異なるシリコーン化合物の混合物も適している。好ましい群のシリコーンは、真ん中のシロキサン単位が長鎖アルキル残基を担持し、一方で、他の原子価がメチル基により飽和されている、3つのシロキサン単位を持つ化合物である。その種の化合物は、INCI名でトリシロキサンまたはトリメチコーンの名称で市販されている。ここで、好ましくは、カプリリルトリメチコーン、ラウリルトリメチコーンおよびステアリルトリメチコーン並びにそれらの混合物を挙げることができる。
【0020】
その目的に適しているこのタイプのW/Siエマルジョンにシリコーン乳化剤を使用することが基本的に知られている。例えば、欧州特許出願公開第568102号明細書に記載されているような、ポリエーテル修飾シリコーンが、特に有用な乳化剤であることが分かっている。この種の乳化剤は、鎖中と鎖の末端にポリエトキシ−ポリプロポキシ単位を持つジメチルシロキサン単位の長鎖を有する。単位の数と単位の長さには、性質に影響がある。今では、特に、それぞれ15から20のエトキシおよび15から20のプロポキシを有するPEG/PPGジメチコーンが本発明に検討されることが分かった。この種の乳化剤は公知であり、市販されている。INCI名でシクロペンタシロキサンPEG/PPG−18/18ジメチコーンおよびシクロペンタシロキサンPEG/PPG−19/19ジメチコーンの名称でダウ・コーニング社(DOW CORNING)より販売されている製品を例として挙げる。それらの乳化剤は通常、ここまでに記載されたように、揮発性シロキサン中に溶解されて用いられる。
【0021】
本発明による調製品は、さらに別の必須成分として、化粧品の分野において通例の、脂質相を含む。この脂質相は、油、脂肪、直鎖または分岐鎖であり飽和もしくは一価または多価不飽和脂肪アルコール、ワックス・アルコールおよび脂肪酸、そのエステル並びに液体または固体形態にあるワックスおよびワックス・エステルから形成することができる。個々の成分は、植物、動物、鉱物または合成の起源のものであって差し支えない。「液体」という用語は、この場合には、0および45℃の間の温度範囲で流動できる形態にある物質に関する。脂質成分の例を以下に挙げるが、それによって本発明を制限することを意図するものではない。それらの物質は以下に、この分野では通例であり、当業者に馴染みある「INCI名」で特定されている。
【0022】
例えば、ブクサス(Buxus)キネンシス油(ホホバ油)、水添ホホバ油、綿実油、水添綿実油、植物油、水添植物油、菜種油、水添菜種油、ヒマシ油、水添ヒマシ油、水添ココグリセリドなどの植物油および含水植物油、並びにマグニフェラ・インディカ(マンゴシードオイル)、リムナンセス・アルバ(メドーフォームシードオイル)、ブチロスパーマム・パーキイ(シアバター)、ヤシ油、カカオバター、マカデミア・テミフォリア・ナッツ油(マカデミアナッツ油)、ミリスチン酸イソプロピル、パルミチン酸イソプロピル、イソステアリン酸イソプロピル、ステアリン酸ブチル、イソステアリン酸イソプロピル、イソペンタン酸イソデシル、エルカ酸オレイル、オレイン酸オレイル、セバシン酸ジエチル、ラウリン酸ヘキシル、PPG−5−ラウレス−5、エチルヘキシルドデカノール、カプリル/カプリン酸トリグリセリド、パラフィン油またはそれらの混合物。その点に関して、使用する量は、揮発性成分の蒸発後に付着を良好に維持するために、低く維持することが望ましい。20%未満の比率が好ましい。5%未満の使用濃度のレベルが特に好ましい。
【0023】
適切な脂肪アルコール、脂肪酸またはワックスアルコールは、セチルアルコール、ステアリルアルコール、ベヘニルアルコールまたはそれらの混合物、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘン酸、メリシン酸またはそれらの混合物である。ワックスは、動物、植物、鉱物または合成の起源のワックスもしくはそれらの混合物および混成物から選択される。使用されるワックスは2から40の硬度のものであり、その硬度値は針貫入法により決定される。硬度値を決定する操作は、米国基準ASTM D5にしたがって実施される:25℃の温度で、所定の円錐形状の2.5gの重さの針に、47.5gの錘を装着して、サンプル体の平らな表面中に貫入させる。貫入深さは、5秒後に1/10ミリメートルの単位で測定される。
【0024】
蜜蝋、変性された蜜蝋またはいわゆる「セラベリナ」、ラノリンワックス、和蝋、カンデリラワックス、ウウリクリ(ouricuri)ワックス、カルナウバワックス、ライスワックス、例えば、オレンジフラワーワックス、オレンジワックス、ジャスミンワックスまたはアップルワックスなどの花蝋またはフルーツワックス、モンタンワックス、マイクロクリスタリンワックス、パラフィンワックス、オゾケライト、ポリエチレンワックス、フィッシャー・トロプシュ法にしたがって製造されたワックス、シリコーンワックス、例えば、ミリスチン酸ミリスチル、パルミチン酸セチル、ステアリン酸ステアリル、ステアリン酸ベヘニル、ベヘン酸ベヘニルなどの長鎖エステル、含水ホホバ油またはそれらの混合物およびそれらの混成物。そのようなワックスまたはそれらの混合物および/またはそれらの混成物の使用される量は、一般に20質量%未満、好ましくは5質量%未満の範囲にある。
【0025】
本発明に特別な性質を与えるために、必須成分として、水などの極性液体または極性溶媒もしくは水と極性溶媒との混合物が、たった0.1から5質量%のわずかな比率で含まれる。意外なことに、少量の極性溶媒を加えると、膜が形成され、この膜は、水によりぼけたり流れたりせず、安定化されることが分かった。付着性、定着性(fixedness)、柔軟性および展性などの他の性質を変えることなく、周囲から水を吸収し、それによって、意外なことに構造を安定化することができるゲル状粘稠度が生じると推測される。
【0026】
したがって、本発明による調製品は、水またはエタノール、プロピレン−1,2−グリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、グリセリン、ジグリセリン、トリグリセリン、ブチレングリコール(例えば、ブタン−1,2−、−1,3−、−1,4−ジオール)、ヘキシレングリコール(例えば、ヘキサン−1,2−、−1,3−、−1,4−または−1,6−ジオール)、トリメチルペンタンジオール、200から2000ダルトンの範囲の分子量のポリエチレングリコールまたはそれらの水との混合物などの別の極性溶媒を含有する。本発明にとって、極性液体の比率が、完成した組成物に対して5%を超えないことが必須である。極性液体は、0.5から3%、特に0.8から2%の比率で用いられることが好ましい。極性液体の含有量が少なすぎる場合、すなわち、0.5%未満である場合、所望の安定化効果はもはや達成されない。5%を超える量は、どのようなさらなる有利な性質ももたらさず、上述した欠点の原因となる。
【0027】
小さな比率の極性液体、特に水と共に、特別なシリコーンおよび乳化剤を含む本発明による調製品は、固体粒状成分を吸収し、それらを構造形態中に安定化させるのに非常に適している。したがって、本発明による調製品は、さらに別の成分として粒状成分を含有する。その粒状成分の比率は、材料の所望の粘稠度および効果にしたがって調節される。特に、粒状成分として、着色剤、作用剤および充填剤または増粘剤が用いられる。この点に関して、着色剤および作用剤の比率は、所望の色および作用に応じ、一方で、増粘剤および充填剤は、粘稠度を調節するように働く。
【0028】
本発明によれば、特に細粒顔料が着色剤として用いられ、これは必要に応じて被覆することができる。無機顔料および有機顔料の例は、特に、二酸化チタン、酸化亜鉛、酸化鉄、酸化クロム、水酸化クロム、ウルトラマリン、ベルリンブルー(フェリックブルー)、マイカ、例えば、二酸化チタン被覆マイカ、二酸化チタンおよび金属酸化物により被覆された着色マイカなどの真珠光沢剤、酸塩化ビスマス、被覆酸塩化ビスマス、必要に応じて着色金属酸化物により被覆することのできるアルミニウム、真鍮、青銅、銅、銀、金などのフレーク状金属粉末、ポリエステルなどの薄い細粒プラスチックフレークの形態にあるいわゆる「グリッター」、固定化着色剤およびアルミニウム、ジルコニウム、バリウム、カルシウムまたはストロンチウムを含む有機着色剤のレーキである。このリストは、単に例として挙げたものであり、限定的なものではない。これらの添加は一般に、各国または各地域の化粧品の法律により許される程度に依存する。
【0029】
着色剤は、200nmおよび5μmの間の平均粒径を持つカバー力のある、から強力なカバー力のある着色剤から選択されることが好ましく、粉末形態の球状着色剤および/またはフレーク着色剤の場合には、5および145μmの間、特に10および30μmの間の平均粒径である。特定の効果、例えば、グリッター効果を達成するために、著しく大きい粒径を用いても差し支えない。その点に関して、顔料の量の比率は、通常0.1から30質量%の範囲、好ましくは3から15質量%の範囲、極めて特に好ましくは5から10質量%の範囲にある。本発明による調製品を日焼け防止剤として、特に、リップケア製品として使用する場合、そこに、上述した顔料から選択されるものの他に、必要に応じて、それぞれの化粧品の法質により許される通例のUV−AおよびUV−Bフィルタ物質と共に、1から10質量%、好ましくは3から8質量%の量で、5および25nmの範囲にある粒径のものを含むいわゆるナノ顔料の形態で、酸化セリウム、二酸化チタンおよび/または酸化亜鉛を基調色剤(base colouring)として加えることも可能である。
【0030】
特に、この分野の当業者に公知の真珠光沢の、蛍光の、燐光の、ギラギラ光るおよびチラチラ光る成分が作用剤として用いられる。それらの作用剤はよく、小さな玉の形態で用いられ、その表面には、所望の作用を与える化合物が固定化されている。ここでは、長波紫外線、いわゆるブラックライトで光を発する化合物も考えられる。
【0031】
粒状着色剤は、材料の粘稠度に影響を与える。必要であれば、その粘稠度は、それ自体知られている増粘剤および充填剤を所望の範囲で添加することによって、さらに調節することができる。例として、それぞれ細粒の非晶質形態にあるタルカム、カオリン、酸化アルミニウム、酸化ケイ素、デンプンと変性デンプン、ポリテトラフルオロエチレン粉末(テフロン(登録商標))、ナイロン粉末および窒化ホウ素などの充填剤が、その目的に適している。ヘクトライト、ベントナイト、モントモリロナイトおよびその化学修飾した形態などの増粘剤も、増粘剤としてさらに適している。増粘剤は、それらをより相溶性にするために、不溶性金属石鹸、例えば、ステアリン酸塩の形態で修飾されることが好ましい。
【0032】
粒状成分、特に、充填剤および増粘剤の加工性を改善するために、それらを、調製品中に含ませる前に、揮発性溶媒、例えば、乳化剤の含有のためにも用いられる溶媒で前処理することが好ましい。好ましい実施の形態において、粒状成分は、さらに加工する前に、湿潤が生じるように揮発性溶媒の一部と混合される。
【0033】
本発明に必須の上述した成分に加えて、本発明による調製品は、化粧品分野に通例のさらに別の成分を含ませても差し支えない。よく用いられる成分は、個々と組合せで、香水、香料添加剤、酸化防止剤、防腐剤、ケア成分などである。それらの成分は、それ自体公知の様式で、通例の量で組成物に加えることができる。
【0034】
本発明による調製品は、皮膚または粘膜上に非常に容易に延ばせるような様式で、剪断力の作用下でその粘度が変化するペースト状粘稠度を有することができる。この調製品の粘度が、800から5000Pa・s、好ましくは1100から3500Pa・sの範囲に調節されることが好ましい。その場合、粘度は、プレートの直径が25mmのサンドブラストプレート/プレート測定装置を備えた市販のレオメータにより測定される。剪断下での著しい通常加圧のために、本発明の調製品は、高い動的測定条件下でのみ再現可能にテストできる。その測定値は、25℃で8秒後、γ=1/sの剪断速度で確かめられる。
【0035】
本発明による調製品は、容易かつ均一に塗布し延ばせる軟らかい展性ペーストの形態にある。その調製品は、適切なメークアップリムーバーまたは布により、もしくは精製石鹸または適切な穏やかな界面活性剤調製品による洗浄によって、ユーザに公知の様式で皮膚から再度除去できる。本発明の調製品は、ことによるとスパチュラを備えたフラスコ、ポットまたは管などの適切な容器中に公知の様式で導入し、ユーザによりそこから再度とることができる。しかしながら、その調製品は、それに関連する改善された衛生条件のために、ディスペンサ機構と称される適切なアプリケータ装置中に導入し、そこから塗布することができる。例えば、米国特許第6238117号または同第6309128号の各明細書から公知のアプリケータ装置が、例えば、唇や目の領域に塗布するのに要求されるような少量の塗布に適している。何故ならば、そのような装置では、精密な計量ができるからである。
【0036】
好ましい実施の形態において、本発明による調製品は、特に、ある比率で引火点の低い揮発性シリコーンを含む。上述したように、特定の乳化剤を使用することは、調製物を低温加工できることを意味し、このことは、安全性に関して特に利点である。したがって、本発明のさらに別の主題は、請求項に定義した調製品の製造方法であり、ここで、乳化剤を揮発性溶媒中に溶解させ、粒状成分を加え、次いで、脂質相およびさらに別の成分を加え、均質化を行い、これらの全工程を周囲温度で行い、次いで、バッチを真空の適用により脱気し、ついで、極性液体、例えば、水および随意的なシリコーンを加える。
【0037】
本発明による方法の特別な利点は、周囲温度で行えることであり、その場合、それにもかかわらず、心地よい風合いを持つ均質な製品が得られることである。
【発明の効果】
【0038】
本発明によれば、その成分のおかげで、非移行性を有し、揮発性成分の含有量のおかげで、非常に展性のある様式で塗布でき、非常に良好な付着性を有し、適所に留まり、皮膚の微細な皺中に入り込まない調製品が提供される。さらに、本発明による調製品は、塗布後に、その性質が悪影響を受けずに、周囲からの水分をさらに吸収することができる。反対に、水の吸収により、安定性および強度さえも向上する。これは、水分の吸収の際に粘度値が上昇することにより実証できる。この点に関して、シリコーンを有し、それゆえ、そのタイプのお陰で、非常に強力な疎水性(撥水性)であるこの調製品が、外部からの水分を余計に吸収することができ、その場合展性を損なわずに、それによって安定化されることは意外である。それゆえ、本発明による調製品は、瞼や唇に塗布した場合、皮膚にいかなる不快なまたは変な感触も与えず、元の柔軟性および伸縮性を損なわずに、それらのプラスの性質に関して改善される。
【実施例】
【0039】
ここで、本発明をいくつかの実施例を参照して説明するが、本発明はそれにより制限されるものではない。その点に関して、個々の場合において、必要とされる量は、もちろん、先の量の値よりもわずかに多くても少なくてもよく、その場合、本発明による調製品がそれにもかかわらず得られる。実施例に用いられる原料は、当該技術分野の当業者に知られているINCI名(化粧品成分の国際命名法)により突きとめられる。量は、調製品の総質量に対する質量パーセントで記載されている。
【0040】
実施例1(パールリップカラー)

製造方法に関して、PEG/PPG−19/19ジメチコーンを、強化撹拌機能を持つ真空処理設備内で、シクロペンタシロキサンの約半分に溶解させ、次いで、酸化鉄、シリカ、微粉ワックスおよび予め製造したゲルAとBを加え、この混合物を通常の周囲温度でよく均質化した。残りのシクロペンタシロキサンおよびマイカをここで加え、ホモジナイザを用いずに、この混合物を完全に撹拌した。パラベンおよびトコフェロールを、必要に応じて加熱しながら、フェノキシエタノール中に溶解させ、香水混合物を加え、この混合物をバッチに加えた。ここで、その混合物を、わずかに撹拌しながら、真空の適用により脱気した。ここで、トリシロキサンを加え、バッチを均質に撹拌し、水の添加によりゲル化した。得られた結果は、強烈に輝き、銅色の、3,000Pa・sの粘度の高粘性ペーストであった。それにもかかわらず、このペーストは皮膚に容易に延ばせる。
【0041】
実施例2(日焼け防止のパールリップバーム)

製造は、実施例1と同様の様式で行った。得られた結果は、日焼け防止の非常に良好な、赤みを帯びた、カバー力の弱い、強力な真珠光沢のペーストであって、リップに容易に塗布でき、乾燥後につっぱらず、他のものに移行しないペーストであった。そのペーストは、1200Pa・sの粘度を有する。
【0042】
実施例3(パールアイシャドー)

製造は、実施例1と同様の様式で行った。得られた結果は、瞼に容易に延ばすことができ、非常に長期に亘り塗布した場所に留まり、乾燥後につっぱらない、ターコイズ色のカバー力の強い、強力に真珠光沢のペーストであった。このペーストは、2500Pa・sの粘度のものである。
【0043】
実施例4(頬紅クリーム)

製造は、実施例1と同様の様式で行った。得られた結果は、茶色がかった赤色であり、皮膚に非常にうまく延ばすことができ、流体移行のモデル化が可能であり、乾燥後に皮膚上でつっぱらず、良好な付着が得られる、マット状のカバー力の強い明るいペーストであった。このペーストは、2800Pa・sの粘度のものである。
【0044】
実施例5(紫外線下で光るヘアジェル)

製造は、実施例1と同様の様式で行った。得られた結果は、個々の髪の束に非常にうまく塗布でき、紫外線、いわゆるブラックライト(例えば、踊るための場所において)を照射したときに、青みを帯びてチラチラ光る、わずかに濁ったペーストであった。このペーストは、2700Pa・sの粘度のものである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
調製品であって、
a) 少なくとも1種類のシリコーン、
b) 乳化剤としてそれぞれ15から20単位のPEGおよびPPGを含む少なくとも1種類のPEG/PPGジメチコーン、
c) 脂質相、
d) 前記調製品の総質量に対して0.1から5%の比率の極性液体、および
e) 少なくとも1種類の粒状成分
を含有する調製品。
【請求項2】
前記シリコーンとして、周囲温度および体温で実質的に揮発性であるシリコーンが用いられることを特徴とする請求項1記載の調製品。
【請求項3】
前記シリコーンとして、周囲温度および体温で実質的に揮発性であるシリコーン、または周囲温度および体温で実質的に揮発性であるシリコーンと周囲温度および体温で実質的に非揮発性であるシリコーンとの組合せが用いられることを特徴とする請求項1記載の調製品。
【請求項4】
前記非揮発性であるシリコーンとして、シリコーン油またはシリコーン樹脂が用いられることを特徴とする請求項1から3いずれか1項記載の調製品。
【請求項5】
前記シリコーンとしてC8〜C20アルキルトリメチコーンが含まれることを特徴とする請求項1から4いずれか1項記載の調製品。
【請求項6】
前記乳化剤として、PEG/PPG−19/19ジメチコーンが含まれることを特徴とする請求項1から5いずれか1項記載の調製品。
【請求項7】
前記揮発性であるシリコーンとして、2から20のジメチルシロキサン単位を持つ線状シリコーンまたは3から7のジメチルシロキサン単位を持つシクロメチコーンが含まれることを特徴とする請求項1から6いずれか1項記載の調製品。
【請求項8】
前記揮発性であるシリコーンとして、ヘキサメチルシクロトリシロキサン、オクタメチルシクロテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、ドデカメチルシクロヘキサシロキサン、ヘキサメチルジシロキサン、オクタメチルトリシロキサン、デカメチルテトラシロキサン、ドデカメチルペンタシロキサンまたはそれらの混合物が含まれることを特徴とする請求項1から7いずれか1項記載の調製品。
【請求項9】
前記脂質が、油、脂肪、直鎖または分岐鎖であり飽和もしくは一価または多価不飽和脂肪アルコール、ワックス・アルコール、脂肪酸とそれらのエステル、ワックスとワックス・エステルまたはそれらの混合物を含むことを特徴とする請求項1から8いずれか1項記載の調製品。
【請求項10】
前記油として、植物油または水添植物油が含まれることを特徴とする請求項1から9いずれか1項記載の調製品。
【請求項11】
前記粒状成分として、粒状の着色剤、作用剤および/または充填剤が含まれることを特徴とする請求項1から10いずれか1項記載の調製品。
【請求項12】
着色剤として細粒および/または非晶質形態の顔料が含まれ、該顔料が必要に応じて被覆されていて差し支えないことを特徴とする請求項1から11いずれか1項記載の調製品。
【請求項13】
作用剤として、グリッター、キラキラ光る、蛍光の、燐光のまたは真珠光沢剤または紫外線下で光を発する剤が含まれることを特徴とする請求項1から12いずれか1項記載の調製品。
【請求項14】
必要に応じて化学修飾された形態で、充填剤および増粘剤がさらに含まれることを特徴とする請求項1から13いずれか1項記載の調製品。
【請求項15】
前記粒状成分が、不溶性金属石鹸の形態で含まれることを特徴とする請求項1から14いずれか1項記載の調製品。
【請求項16】
化粧用調製品に通例である成分がさらに含まれることを特徴とする請求項1から15いずれか1項記載の調製品。
【請求項17】
香水と香水混合物、香料添加剤、酸化防止剤、防腐剤および/またはケア活性物質がさらに含まれることを特徴とする請求項1から16いずれか1項記載の調製品。
【請求項18】
完成した調製品が、プレートの直径が25mmのサンドブラストプレート/プレート測定装置を備えた市販のレオメータで測定して、25℃で800から5000MPa・sの粘度のものであることを特徴とする請求項1から17いずれか1項記載の調製品。
【請求項19】
ペースト状組成物の形態にあることを特徴とする請求項1から18いずれか1項記載の調製品。
【請求項20】
チキソトロピー性ペーストの形態にあることを特徴とする請求項1から19いずれか1項記載の調製品。
【請求項21】
通例の添加剤の他に、12から21%の乳化剤、10から25%の揮発性シリコーン、25から45%の非揮発性シリコーン、2から10%の脂質相、2から10%の増粘相、5から20%の着色剤および0.1から5%の水を含有することを特徴とする請求項1から20いずれか1項記載の調製品。
【請求項22】
通例の添加剤として、懸濁剤、防腐剤、香料、酸化防止剤および/または香料添加剤が含まれることを特徴とする請求項21記載の調製品。
【請求項23】
請求項1から21いずれか1項記載の調製品を製造する方法であって、前記乳化剤を揮発性溶媒中に溶解させ、前記粒状成分を加え、次いで、前記脂質相および前記さらに別の成分を加え、均質化を行い、これらの工程の全てが周囲温度で行われ、次いで、このバッチを真空の適用により脱気し、次いで、水および随意的なシリコーンを加えることを特徴とする方法。

【公表番号】特表2009−508887(P2009−508887A)
【公表日】平成21年3月5日(2009.3.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−531545(P2008−531545)
【出願日】平成18年2月23日(2006.2.23)
【国際出願番号】PCT/EP2006/001650
【国際公開番号】WO2007/038993
【国際公開日】平成19年4月12日(2007.4.12)
【出願人】(597139631)シュヴァン−スタビロ コスメティクス ゲーエムベーハー ウント コンパニー カーゲー (15)
【復代理人】
【識別番号】100116540
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 香
【復代理人】
【識別番号】100139723
【弁理士】
【氏名又は名称】樋口 洋
【Fターム(参考)】