説明

識別デバイス

識別デバイスは、超音波送信ユニット(16)と、この超音波送信ユニット(16)を収容する外側ハウジング(6)とを備えている。外側ハウジング(6)は、膜によりシールされる一又は複数のアパーチャ(32)を有している。この膜は、ハウジングのその他の部分と比べて超音波を実質的に自由に通す。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、人、動物又は対象物に装着することができそれらの識別及び/又は実時間における位置の追跡をすることができる識別デバイスに関するものである。
【背景技術】
【0002】
病院の患者を確実に識別することにより、機密性を維持しかつ正確な治療を行うことを担保することができることは病院にとって重要な必要事項である。従来、このことは、識別のためのテキスト又は場合によってはバーコードが記入又は印刷されうる使い捨て用の手首バンドを用いて達成されていた。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
患者の居場所が必要な時に分からなければスタッフがその患者を探しに行くことにより世話又は治療を必要としている他の患者を待たせてしまうような場合又は他の方法で最適な作業の流れを妨げてしまうような場合には、外科手術室及び救急科の如き共有のリソース及びスタッフの効率を下げてしまう恐れがあるという問題が、複数の病院において個々に存在している。病棟から突然出て行くかもしれないというような安全上の理由で居場所を知っておく必要があるような患者は、例えば新生児及び認知症に苦しむ高齢の患者の他にもいる。
【課題を解決するための手段】
【0004】
出願人は、超音波による識別を利用することにより識別と追跡との問題に同時に対処することができることを見出した。したがって、患者に、識別及び追跡の目的に用いることができる個々の電源を備えた超音波発信機を与えることができる。具体的には、出願人は病院での使用に特に適した識別デバイスを考案した。
【0005】
本発明の第1の態様によれば、送信ユニットと、前記送信ユニット収納する外側ハウジングと備え、外側ハウジングが、膜によりシールされる一又は複数のアパーチャを有し、膜が、ハウジングのその他の部分と比較すると、超音波を実質的に通過させるように構成されている識別デバイスが提供される。
【0006】
したがって、当業者にとって明らかなように、本発明に従って、通常比較的高価な電源を備えた超音波送信機を外側ハウジング内に収容することができ、この外側ハウジングは、汚れ、流体及び感染因子による汚染から超音波送信機を保護するとともに、超音波送信機からの超音波信号が通るのを可能としている。主送信機ユニットの汚染を防ぐことができる場合、それに関連する電子機器及びトランスデューサの繊細さを考えると達成することが困難な殺菌を必要としなくなるため、主送信機ユニットを再度使用することが簡単なこととなる。外側ハウジングを、使用毎に洗浄し殺菌することができるが(外側ハウジングが繊細な電子機器を有していないので)、しかしながら、外側ハウジングは使い捨てとすることが好ましい。したがって、明らかなように、洗浄/殺菌の必要性を排除し且つ交差感染の危険性を最小限に抑える比較的安価な使い捨て部品を用いて送信ユニットの再利用を可能とすることにより、超音波を用いた識別及び追跡システムが提供する利点を享受することができるとともに、送信ユニットのコストを最小限に抑えることができる。
【0007】
必ず必要というわけではないが、膜は、通常、ハウジングのその他の部分と較べて、薄く及び/又は異なる材料からなっている。膜が密封状態を提供することが必ずしも必要というわけではない。例えば、膜が十分に微細な発砲体又は網から構成されていてもよいと考えられる。しかしながら、好ましい実施形態では、少なくともアパーチャ全体にわたって液密用のシールが設けられることが好ましい。好ましい実施形態では、膜は、PVC、ポリウレタン又はポリエチレンの如きポリマーフィルムから構成されている。フィルムの厚さは、好ましくは50μm未満であり、さらに好ましくは20μm未満であり、最も好ましくは10μm程度である。このようなフィルム(食品包装用フィルムとして一般に知られている)は、食品及び他の品物を包んで包装するために用いられているのもので、どこでも安く入手することが可能である。
【0008】
膜は、40kHzの超音波を好ましくは6デシベル(dB)未満、好ましくは3dBぶんだけ減衰させる。
【0009】
考えられる本発明の重要な用途のうちの1つでは、識別デバイスは患者に取り付けられる。この識別デバイスを患者の首のまわり、衣類の上などに装着することができる。しかしながら、好ましい実施形態では、識別デバイスに人体に取り付けるための手段が組み込まれている。この手段は、例えば、識別デバイスと一体式の手首ストラップ又は足首ストラップから構成されている。しかしながら、一つの好ましい実施形態では、この識別デバイスが、既存の手首ストラップを取り付けるための手段を備えている。このことは、使い慣れた従来の視覚的に識別するための手首ストラップを使い続けることができるので魅力的である。さらに、このようなストラップは容易に手首や足首から外すことができないものであり、また、好ましい識別デバイスもストラップから容易に除去することができないものであるので、患者が識別デバイスを装着したままでいることを担保するのが容易である。ストラップは、識別デバイスと一体式のものであろうと又は別体のものであろうと、従来の病院の手首バンドとしてよく知られている使い捨て(one−way)キャッチ(留め具)を有することが好ましい。使い捨てキャッチは、ストラップをパチンと閉じることを可能とするものの、修理することができない程度までキャッチを壊さずには又はツール又は非常に大きな力を用いてストラップを切断せずには再び開けることはできない。同様に、識別デバイスの外側ハウジングが別体の手首バンドなどに取り付けられるように構成されている場合、このための取り付け部材も識別デバイスを容易に取り外せないように又は再利用(そのことにより、交差感染の危険をもたらすこと)できないように構成されていることが好ましい。
【0010】
上述のような構成が、それ自体で新規性がありかつ進歩性があると考えている。さらなる態様によれば、本発明は、外側ハウジング内に収容されている送信ユニットを備えた識別デバイスを提供しており、外側ハウジングは、識別デバイスを手首ストラップへ取り付けるための使い捨て取り付け手段を有している。外側ハウジングが、本発明の或態様に従って別体の手首ストラップへ取り付けるための手段を有している場合、この手段はストラップが患者に装着されているときに外側ハウジングの取り付けを可能とするように構成されていることが好ましい。このための好ましい実施形態では、取り付けるための手段はフラップを含んでおり、このフラップは、外側ハウジングの本体とフラップとの間でストラップを挟むことができるように、ストラップと患者との間に滑り込ませられるように構成されている。
【0011】
好ましくは、外側ハウジングは、患者又は患者のストラップへ取り付ける前に送信ユニットを外側ハウジングの中に封入できるように構成されている。このことにより、外側ハウジングの内部が汚染される危険性が最小限に抑えられる。好ましくは、外側ハウジングは使い捨て(single−use)キャッチにより閉じられるようになっている。使い捨てキャッチを外すために壊すと、それを再び使用することはできない。このような構成により、特別な工具なしで識別デバイスを取り外すことは困難であり、また、汚染されている恐れのある外側ハウジングを不注意に又は意図的に再び使用することを防止できる。
【0012】
病院内の患者の識別及び追跡に本発明の技術思想を応用するということは重要ではあるが、本発明はこの用途に限定されるわけではない。もっと正確にいえば、上述のような識別デバイスから恩恵を被る用途が他にも多くあると考えられる。例えば、これらの技術思想は、他の状況、例えば刑務所の人に対して用いられてもよいし、又は、農場、動物園、獣医診療所などの家畜もしくは他の動物に対して用いられてもよい。さらに、出願人は、病院の患者に対して先に記載された技術思想に対する同様の考察を診療器具、病院の職員及び病院の訪問客に対して適用することができ、したがって、先の識別デバイスをこれらに対して用いることができるものと考えている。
【0013】
送信ユニットの電力源を当該送信ユニットの内部に設けてもよいし、又は、理論的には、識別デバイス全体の外側に設けてもよい。しかしながら、出願人は、有益な一組の実施形態では、送信ユニットをハウジングの中へ挿入するときにバッテリを送信ユニットに接続することができるように、当該バッテリを外側ハウジング内に設けることを考えている。このことは有益なことである。その理由は、各患者が識別デバイスの使用を終了したときにバッテリを外側ハウジングと共に廃棄することができるので、個々の新規の患者に対して新しいバッテリを用いることを担保できるからである。さらに、送信ユニット自体が長寿命のバッテリを必要としないので費用の節約ともなる。
【0014】
バッテリは簡潔さのために外側ハウジングに一体化されていてもよいし、又は、充電/再利用のために取り外し可能となっていてもよい。好ましくは、送信ユニットを挿入したときにバッテリと送信ユニットとが自動的に接続されるように、当該バッテリが外側ハウジング内に配置されている。
【0015】
上述のような構成がそれ自体で新規性がありかつ進歩性があると考えている。さらなる態様によれば、本発明によれば、送信ユニットと、当該送信ユニットのためのバッテリとを備えており、送信ユニットをバッテリとは独立して外側ハウジングから取り外す又は外側ハウジングの中に設置することができるように、これらの送信ユニット及びバッテリが外側ハウジング内に別々に収納されている携帯型識別デバイスが提供されている。
【0016】
送信ユニットは超音波送信ユニットであることが好適であり、また、外側ハウジングは本発明の第1の態様に従って指定されたアパーチャ及び膜を有していることが好ましい。必要ならば、本発明の第1の態様の好ましい特徴は、本発明の上述の態様の好ましい特徴でもある。
【0017】
本発明の上述の態様の各々によれば、送信ユニットは信号を受信するための手段を有していることが好ましい。この信号は、例えば超音波信号、無線周波数信号又は赤外線信号であってもよく、送信ユニットが送信する信号のタイプに限定されない。しかしながら、現時点における本発明の好ましい実施形態では、上述の受信するための手段は超音波受信手段である。
【0018】
上述のような識別デバイスが実際にどのように用いられるかに応じて、在庫として使用されるのを待っている著しく長い期間にわたって、識別デバイスに電力が供給されていることになる。このことに対する一つの解決策としては、識別デバイスが使用されるまで、当該デバイスの中に送信ユニット又はバッテリを組み入れないことが考えられるが、このことは実用的ではないかもしれない。したがって、これに代えて、少なくとも一部の好ましい実施形態では、使用に必要なときに識別デバイスを起動させることができるように構成されている。このことは、オン/オフスイッチを設ける可能性を明らかに意味している。ただし、患者又は他のユーザに識別デバイスのスイッチを切らせることをできるようにするということが望ましいことであるとは考えられないので、オン/オフスイッチを設けるのは好ましいことではない。他の様々な構成が考えられる。例えば、バッテリと送信ユニットとの間の電気通路を除去することができる絶縁タブを設けることにより、又は、電気的接触を形成することを可能とするために破壊/変形することができる部品により、機械的な使い捨てONスイッチを設けることが可能となる。しかしながら、これらの選択肢は現時点において魅力的なものではない。その理由としては、外側ハウジングにより提供されているバリアを危険にさらす恐れがあること、及び/又は、デバイスの費用、特に外側ハウジングの費用を増やしてしまうことが挙げられる。
【0019】
本発明の好ましい実施形態では、送信ユニットは、適切な信号、好ましくは超音波信号を受信すると当該送信ユニットを起動させることができるように構成されている。好ましくは、送信ユニットは少なくとも2つのモードを有するように構成されている。これらの2つのモードは、送信ユニットが起動信号のみ受信するスリープモード又は待機モードと、送信ユニットが起動信号を受信するとスイッチが入り、当該送信ユニットが信号を送信する又は送信することができる動作モードとからなる。このような構成では、スリープモードは、動作モードと比較して電力消費量が非常に低くなるように構成されていることが好ましい。このことは、識別デバイスが用いられていない間バッテリの寿命を延ばすことを可能とする。
【0020】
起動信号は選択されたいかなる信号であってもよいが、好ましい実施形態によれば、起動信号は、識別デバイスにより受信される又は識別デバイスにより送信される他の信号よりも著しく強い電波(高い電圧)を有していることが好ましい。このことは容易に達成することができる。その理由は、このような信号が比較的まれにしか必要とならないし、また、識別デバイスの非常に近くに配置されている送信機から送信することができるからである。例えば、識別デバイスがドッキングステーション内に置かれてもよいし、又は、携帯型の送信機が識別デバイスの隣に又は識別デバイスの上に置かれてもよい。非常に強い起動信号を用いる他の利点は、信号の増幅及び/又は処理の要求が減少することによりスリープ状態のための所要電力を減少させることができることにある。
【0021】
本発明の好ましい実施形態では、送信ユニットは、適切な無線信号上にコード化された構成情報を受信することができる。先の場合と同様に、これは超音波信号であることが好ましい。この構成情報は起動信号の一部として受信されてもよいが、上述の理由から別個であることが好ましい。通常、構成情報には、送信ユニットが一旦患者に対して用いられると与えられる識別情報が含まれうる。また、構成情報には、例えば識別デバイスの識別機能又は追跡機能に関連するその患者に関するステータスコードがさらに含まれうる。例えば、新生児又は高齢の患者に対して構成された識別デバイスは、当該識別デバイスが前もって指定されている病棟の外へ移動した場合にアラームを発生するフラグを有しうる。構成情報に加えて又はそれに代えて、送信ユニットは、新規の又は更新されたソフトウェアの如き他のデータを受信しうる。
【0022】
同様に、送信ユニットは、一部の実施形態では、設定又は試運転のプロセスの間に情報を送受信することができる。例えば、送信ユニットは通し番号の如き識別情報を送信することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】患者の手首ストラップへ取り付ける前の本発明に係る識別タグを示す図である。
【図2】手首ストラップへ取り付けられた識別タグを示す図である。
【図3】タグの本体の内部構造を上方から見た分解組立図である。
【図4】下方から見た分解組立図である。
【図5】タグの上側本体シェルを真下から見た図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
ここで、例示のみを意図する本発明の好ましい実施形態を添付の図面を参照して記載する。
【0025】
図1には、病院内の患者を識別し及び/又は患者の移動を追跡するための超音波識別タグが示されている。本明細書に記載の実施形態は本用途に特に適切なように選択されているが、当業者にとって明らかなように、実施された原理を様々な用途に有益に適用することができる。
【0026】
タグは、主要本体部分2とヒンジにより接続されたフラップ部分4とから構成される2つの主要部分を備えている。いわゆるリビングヒンジ(図示せず)を形成するために、フラップ部分4が上側本体シェル6と一体式にモールド成形されている。フラップ部分4の上面(図1のから見た場合)には、一連の丸い突出部8が形成されている。これが、患者のスキンを押すタグの部分となり、これらのバンプ8はタグのスリップを防ぎ、患者が皮膚の炎症又は反応を引き起こすことなく長い時間にわたってより快適に装着できるようにその補助を担っている。外側シェルの材料は、生分解性また再利用可能であるとともに、皮膚の表面を傷つけないものである。
【0027】
フラップ部分4の遠位端部には、一対の一体式にモールド成形された下方へ延びるフック10(図1にそのうちの1つが示されている)が設けられており、一対のフック10は、フラップ部分4が主要本体部分2の底面に向けて閉じられたとき、上側本体シェル6の正面に形成されたそれぞれ対応する半月形のアパーチャ12に係合するように位置決めされている。このことは図2から分かる。フラップ部分4を閉じると、主要本体部分2の底面とフラップ部分4との間に手首ストラップ14を挟むことができる。フック10は、上側本体シェル6のアパーチャ12内に嵌合することにより、タグを手首ストラップ14へしっかりと固定させる。フック10は非常に堅く、アパーチャ12内にしっかりと嵌るので、特殊工具を用いることなくこれらを容易に解除することができないようになっている。
【0028】
図3a、図3b、図4及び図5には、タグの主要本体部分2の分解組立図が示されている。図3a、図3b及び図4では、分かり易いように、タグのフラップ部分を省略している。主要本体部分2の中心は、図3に示され且つ図3bの分解組立図に示されるタグカーネル16である。タグカーネル16は、その内部に、超音波送信ユニット用の構成部品類を坦持するプリント回路基板18を有している。これらには、超音波トランスデューサ40、一対のインダクタ42及びクリスタル44が含まれる。また図から明らかなように、ほぼ正方形のアパーチャ46が設けられており、その二つの側部には、一対の弾性を有する電気接触用のタブ48が設けられている。下記に記載するように、タグが組み立てられると、これらのタブ48はバッテリと接触するようになっている。
【0029】
タグカーネル16は、下側カーネルモールド成形品20及び上側カーネルモールド成形品22により完成される。下側カーネルモールド成形品20は、上側カーネルモールド成形品内のシリンダ形状のボス52(そのうちの一つのみが図3bに示されている)と係合する3つの鉛直方向に突出するピン50を坦持している。このことによって、上側カーネルモールド成形品22と下側カーネルモールド成形品20との間に回路基板18を挟むことが可能となる。上側カーネルモールド成形品22は、図3aから明らかなように、正面において超音波トランスデューサ40をフレームに入れるような形状に形成されており、また、回路基板18内のアパーチャ46と整合するアパーチャ54が頂部に設けられている。
【0030】
鉛直方向のピン50及びボス52は、タグカーネル16が工場で組み立てられるときに、分解及び手動での取り外しが困難又は不可能となるよう、しっかりとした締まり嵌めを形成するように構成されている。それに加えて又はそれに代えて、接着剤が用いられてもよい。このことにより、ロバストな内蔵ユニット16が形成される。
【0031】
先の記載から明らかなように、タグカーネル16それ自体は、バッテリを有していないので、超音波の送信機又は受信機として動作することができない。バッテリは、図4に示されているようにカーネル16を上側本体シェル6に入れることにより完全なタグが組み立てられたときに自動的に挿入されるようになっている。カーネル16が上側本体シェル6の中に押し込まれると、回路基板上の2つの接触用のタブ48が、その内部で、一対のボタンセル電池バッテリ28の陽極側及び負極側とそれぞれ対応して係合する。これらのバッテリ28は、上側本体シェル6の内部のプラスチック製の保持クリップモールド成型品30内で保持される。このことは図5から明らかである。したがって、カーネル16が下から上側本体シェル6の中へ差し込まれると、バッテリ28が上側カーネルモールド成型品及び回路基板のそれぞれ対応するアパーチャ54及び46を部分的に通り抜け、2つの接触部26がバッテリと接続し、電力が回路に供給されるようになっている。このように電力が回路に供給されると、それは、1μA程度の非常に低い静止状態の電流を有するスリープモードに入る。このスリープモードでは、送信ユニットは起動信号をただ待っているだけである。
【0032】
図から明らかなように、カーネル16が上側本体シェル6の中に押し込まれると、超音波トランスデューサ40が上側本体シェルの正面に形成されたグリル32の真後ろに位置決めされることになる。図5には、グリル32の内側面が示されている。分かり易いように省略されているが、実際には、密封用シールを提供するために、グリル32の裏面のまわりのベゼル34全体にわたって伸ばされる薄いPVCフィルム(約10ミクロン)から構成された非透過性の膜が必要となる。
【0033】
ベゼル34及び電池クリップ30は両方とも鉛直方向に突出する環状の壁38により形成された内側部36の中の上側本体シェル6の一部としてモールド成形されている。この鉛直方向に突出する環状の壁38の目的は下記に記載する。
【0034】
図4をさらに参照すると明らかなように、タグカーネル16が上側本体シェル6の内部に配置されると、封止キャップ56によってタグカーネル16は所定の位置に保持されるようになっている。封止キャップ56の直径は、当該封止キャップが上側本体シェル6の内部の環状の壁38の外周のまわりにぴったりと嵌るように設計されている。この構成によって、トランスデューサ18などの如き動作コンポーネントがタグの内部に形成された密封コンパートメント内に保持されることは明らかである。次いで、タグは、図1の状態、すなわち、手首バンド上にいつでも留めて使用することが可能な状態にある。
【0035】
先述したように、タグが必要なとき、図2に示されているように、主要本体部分2を患者の手首ストラップ14に載せることができる。次いで、フラップ部分4を、ストラップの真下に折りかさね、主要本体部分2とフラップ部分4との間にストラップ14を挟み込むように主要本体部分2の底面に留める。このことにより、識別タグが永続的にストラップ14に取り付けられる。このストラップ14は、公知の方法で患者に取り付けることができる。患者が既にストラップ14を装着している場合、まずフラップ部分4をストラップ14の真下に滑り込ませて、次いで主要本体部分2をフラップ部分4に折り重ねることによりタグが取り付けられる。
【0036】
タグが患者に取り付けられる前又は後に、トランスデューサにより検出される非常に短い範囲の高エネルギ超音波バーストを加えることにより送信ユニットが動作状態(「起動状態」)にされる。起動されると、双方向の超音波通信の可能性がある。この超音波通信には、例えばタグへのソフトウェアのダウンロード又は構成設定、及び/又は、タグへの通し番号、固有の識別子、ソフトウェアバージョン又は構成情報のリードバック(read back)が含まれる。これらの信号は、ドッキングステーションにより送受信されてもよいし、基地局により送受信されてもよいし、又は、携帯型のトランシーバにより送受信されてもよい。
【0037】
起動及び設定の後、タグは、周期的な間隔で、又は、基地局により問い合わせがあった場合には、患者にとってタグがもはや必要でなくなるまで(例えば患者が退院するまで)もしくはバッテリが切れるまで、それ自体の識別情報を送信し続ける。バッテリは、約30日間持つように設計されている。タグは、バッテリの寿命が終わりに近づいたときに低バッテリメッセージを送信するように構成されていることが好ましく、このことにより、タグが依然として必要な場合には新規のタグを患者に供給することができる。
【0038】
患者にとってタグがもはや必要なものでなくなった場合、手首ストラップ14を切って患者の手首から外すか、又は、使い捨てキャッチを壊す。したがって、タグを他の患者に装着させることはできなくなる。次いで、主要本体部分2は、適切なツールを用いてフラップ部分4をこじ開けて主要本体部分2から離すことによりストラップ14から取り除かれる。このことにより、フラップ部分4と上側本体シェル6との間の接続部が(例えば、フッククリップ10をポキット折ることにより)損傷を受けることになるので、フラップ部分4と上側本体シェル6とを再度結合させることはできなくなる。最後に、シールカバー56が取り除かれ、タグカーネル16を取り除くことが可能となる。このカーネルを取り除くと、上側本体シェル6内のクリップ30の中に残るバッテリ28から自動的に切り離されることになる。そのとき、送信ユニットは、構成情報を失い、次に電力が供給されるまでの間スリープモードに自動的に戻る。したがって、いつでももう一度使用することができる状態にある。任選択的には、タグを退役(decommission)させる領域の近傍で超音波レシーバを用いることが好ましい。超音波レシーバを用いることで、カーネルがバッテリから取り除かれたときにタグから送信が突然停止するのを検出し、これをタグがもはや使用されていないことを示す特別のイベントとして解釈することができる。このことを中央データベースに連絡することにより、新規の患者に対する資源(例えば、ベッド)の即時再配分を可能とすることが可能となる。
【0039】
送信ユニットが、タグの内部のシールされた環境の中(封止キャップ56、環状の壁38及びグリル32全体にわたるフィルムの間)で保護されており、次に使用される時も再びそのような状態にあると考えられるので、次に使用する前にそれを清潔にする又は殺菌する必要はない。しかしながら、予防処置として所望ならば、送信ユニットをプラズマ又はラジカルに基づいた方法によって処理することができる。この処理は、退役の際に膜が裂けていることに気づいたときのみ又は退役が不注意に行なわれて送信ユニットが外側ハウジングの外部と接触してしまった場合のみ必要とされる。そうでなければ、このカーネルは再使用のための別個の容器に入れられる。
【0040】
バッテリは脆弱なクリップ30をポキッと折ることにより上側本体シェル6から取り除かれ、産業上再利用される第2の容器に入れられる。上側本体シェル6、ストラップ14及び封止キャップ56は第3の容器に入れられ、医学的に汚染された物質に対応できる適切な材料リサイクルが可能ならばこの容器を送って再生利用することができる。
【0041】
上記記載の退役処理は、個別のジン(gins)(例えば、カーネル、バッテリ及び汚染物質)の中に適切な部分を自動的に区分けして入れる自動ツールにより容易に達成することができる。
【0042】
当業者にとって明らかなように、上記の記載は可能な一つの実施形態であって、本明細書に記載の様々な技術思想の可能な実施形態は他にも多くある。例えば、送信ユニットが超音波に基づくものであるということは不可欠なものでもないし、また、送信ユニットが送受信することができるということも不可欠なものでもない。識別デバイスの目標物への取り付けに他の取り付け手段が用いられてもよいし、また、バッテリ又は他の電力源が送信ユニットとは別個になっている必要もない。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
超音波送信ユニットと、
前記超音波送信ユニットを収容する外側ハウジングと備えており、
前記外側ハウジングが、膜によりシールされる一又は複数のアパーチャを有しており、
前記膜が、前記外側ハウジングのその他の部分と比較して超音波を実質的に通すように構成されている、識別デバイス。
【請求項2】
前記膜は、前記外側ハウジングのその他の部分よりも薄い、請求項1に記載の識別デバイス。
【請求項3】
前記膜は、前記外側ハウジングのその他の部分とは異なる材料で構成されている、請求項1又は2に記載の識別デバイス。
【請求項4】
液密性のシールが少なくとも前記アパーチャ全体にわたって設けられている、請求項1〜3のいずれか一項に記載の識別デバイス。
【請求項5】
前記膜がポリマーフィルムを含んでいる、請求項1〜4のいずれか一項に記載の識別デバイス。
【請求項6】
前記ポリマーフィルムが50μm未満の厚みを有している、請求項5に記載の識別デバイス。
【請求項7】
前記膜は、40kHzの超音波を6デシベル未満分だけ減衰させる、請求項1〜6のいずれか一項に記載の識別デバイス。
【請求項8】
前記識別デバイスを人体に取り付ける手段を備えている、請求項1〜7のいずれか一項に記載の識別デバイス。
【請求項9】
一体型の手首用又は足首用のストラップを備えている、請求項1〜8のいずれか一項に記載の識別デバイス。
【請求項10】
前記識別デバイスを手首用のストラップに取り付けるための手段を備えている、請求項1〜9のいずれか一項に記載の識別デバイス。
【請求項11】
前記取り付けるための手段が使い捨てであるように構成されている、請求項10に記載の識別デバイス。
【請求項12】
前記ストラップが使い捨てキャッチを含んでいる、請求項9〜11のいずれか一項に記載の識別デバイス。
【請求項13】
識別デバイスであって、
外側ハウジング内に収容される送信ユニットを備えており、
前記外側ハウジングが、前記識別デバイスを手首用のストラップへ取り付けるための使い捨て取り付け手段を有している、識別デバイス。
【請求項14】
前記ストラップが人体に装着された状態にあるときに、前記ストラップへ取り付け可能であるように構成されている、請求項9〜13のいずれか一項に記載の識別デバイス。
【請求項15】
前記取り付けるための手段がフラップを含んでおり、前記フラップと前記外側ハウジングの本体との間に前記ストラップを挟むように、前記フラップが前記ストラップと前記人体との間に滑り込むように構成されている、請求項14に記載の識別デバイス。
【請求項16】
送信ユニットと
該送信ユニットのためのバッテリとを備えており、
前記送信ユニットを前記バッテリとは独立して外側ハウジングから取り除くことができるように又は前記外側ハウジングの中に設置することができるように、前記送信ユニット及び前記バッテリが前記外側ハウジング内に別々に格納されている、携帯型識別デバイス。
【請求項17】
前記送信ユニットが超音波送信ユニットである、請求項13〜16のいずれか一項に記載の携帯型識別デバイス。
【請求項18】
前記外側ハウジングが、膜によりシールされる一又は複数のアパーチャを有しており、前記膜が前記外側ハウジングのその他の部分と較べて超音波を実質的に通すように構成されている、請求項13〜17のいずれか一項に記載の携帯型識別デバイス。
【請求項19】
前記送信ユニットが信号を受信するための手段をさらに有している、請求項1〜18のいずれか一項に記載の携帯型識別デバイス。
【請求項20】
前記信号を受信するための手段は、超音波を受信するための手段である、請求項19に記載の携帯型識別デバイス。
【請求項21】
前記外側ハウジングは、患者又は患者のストラップに取り付けられる前に前記送信ユニットを当該外側ハウジングの中に封入することができるように構成されている、請求項1〜20のいずれか一項に記載の識別デバイス。
【請求項22】
前記外側ハウジングは、使い捨てキャッチにより閉じることが可能であり、
前記使い捨てキャッチは、取り外すために壊した場合に再使用することができないように構成されている、請求項1〜21のいずれか一項に記載の識別デバイス。
【請求項23】
前記送信ユニットが前記外側ハウジング内に挿入されるときにバッテリを前記送信ユニットに接続することができるように、前記バッテリが前記外側ハウジングの中に設けられている、請求項1〜22のいずれか一項に記載の識別デバイス。
【請求項24】
前記バッテリは、前記外側ハウジングに一体的に設けられている、請求項23に記載の識別デバイス。
【請求項25】
前記送信ユニットを前記外側ハウジング内に設置すると前記バッテリと当該送信ユニットとが自動的に接続されるように、前記バッテリが前記外側ハウジング内に配置されている、請求項23又は24に記載の識別デバイス。
【請求項26】
前記送信ユニットは、適切な起動信号を受信すると起動するように構成されている、請求項1〜25のいずれか一項に記載の識別デバイス。
【請求項27】
前記起動信号が超音波信号である、請求項26に記載の識別デバイス。
【請求項28】
前記送信ユニットは、
前記起動信号のみを受信するスリープモードと、
前記起動信号を受信することにより作動して、信号を送信する又は送信することができる動作モードとからなる、少なくとも2つのモードを有するように構成されている、請求項26又は27に記載の識別デバイス。
【請求項29】
前記スリープモードは、前記識別デバイスが前記動作モードのときよりも非常に少ない電力を消費するように構成されている、請求項28に記載の識別デバイス。
【請求項30】
前記起動信号は、前記識別デバイスによって受信される又は前記識別デバイスによって送信される他の信号よりも強い電波を有している、請求項26〜29のいずれか一項に記載の識別デバイス。
【請求項31】
前記送信ユニットは、無線信号上にコード化された構成情報を受信するように構成されている、請求項1〜30のいずれか一項に記載の識別デバイス。
【請求項32】
前記無線信号が超音波信号である、請求項31に記載の識別デバイス。
【請求項33】
前記無線信号は、前記送信ユニットが使用時に与える識別情報を有している、請求項31又は32に記載の識別デバイス。
【請求項34】
前記送信ユニットは、設定又は試運転のプロセスの間に情報を送信するように構成されている、請求項1〜33のいずれか一項に記載の識別デバイス。


【図1】
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【図2】
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【図3a】
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【図3b】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2011−500247(P2011−500247A)
【公表日】平成23年1月6日(2011.1.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−530554(P2010−530554)
【出願日】平成20年10月28日(2008.10.28)
【国際出願番号】PCT/GB2008/003658
【国際公開番号】WO2009/056823
【国際公開日】平成21年5月7日(2009.5.7)
【出願人】(508170852)ソニター テクノロジーズ アクティーゼルスカブ (4)
【Fターム(参考)】