説明

識別媒体、データの読み取り方法、識別装置および識別媒体の製造方法

【課題】目視を含む多段階の識別が可能な識別媒体を得る。
【解決手段】
読み取りを行う側から、ホログラム加工103が施され、第1の旋回方向の円偏光を選択的に反射するコレステリック液晶層102と、読み取りの対象となるコードが形成され、通常は不可視であり、紫外線を照射すると蛍光し可視化するコード表示層107とを順に備え、光学読み取り装置により前記コードと同時に読み取った際に、前記コードの情報の読み取りを阻害するホログラム像が前記ホログラム加工により形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、不可視情報を備えた識別媒体に関する。
【背景技術】
【0002】
バーコードを不可視情報とした構成が知られている。例えば、特許文献1には、紫外線励起により可視光を発光する蛍光体による潜像のバーコードを形成する技術が記載され、特許文献2には、赤外線励起により赤外線を発光する蛍光体による潜像のバーコードを形成する技術が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第3526370号公報
【特許文献2】特許第3651913号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述した従来の技術では、励起光を照射しない状態での目視による真贋判定が行えない。つまり、複数段階の判別が行えない。このため、偽造防止効果および真贋判定機能は限定的となる。このような背景において、本発明は、目視での真贋判定を含む多段階の識別を行うことができる識別媒体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1に記載の発明は、読み取りを行う側から、ホログラム加工が施され、第1の旋回方向の円偏光を選択的に反射するコレステリック液晶層と、読み取りの対象となるコードが形成され、通常は不可視であり、特定の条件で見えるコード表示層とを順に備え、一般の光学読み取り装置により前記コードと同時に読み取った際に、前記コードの情報の読み取りを阻害するホログラム像が前記ホログラム加工により形成されていることを特徴とする識別媒体である。
【0006】
請求項1に記載の発明において特定の条件というのは、紫外線等の特定波長領域の光を照射した状態、加熱または冷却した状態、磁場を加えた状態、または圧力を加えた状態のことをいう。
【0007】
請求項1に記載の発明によれば、以下に述べる3段階の識別が可能となる。
(第1段階の識別)
第1段階の識別は、当該識別媒体を普通に直視することで行う識別である。この場合、コレステリック液晶層のホログラム像が視認される。コレステリック液晶層へのホログラム加工には、ノウハウが必要であり、ホログラム像の内容が分かっていても簡単には再現できない。また、コレステリック液晶層は、特定の中心波長を選択反射する光学特性を有しているので、感光材料を用いたホログラム干渉構造(ホログラムを構成するエンボス構造)のコンタクトコピーが簡単には行えず、ホログラム型を再現することが困難であるという偽造困難性も有している。これは、コレステリック液晶層から選択反射される反射光のスペクトルと同じ感光特性を有する感光材料を用いないと、コンタクトコピーではホログラム像の色合いや仔細な画像情報の再現性が得られないことに起因する。このため、コレステリック液晶層のホログラムは高い真贋識別性を有する。
【0008】
(第2段階の識別)
例えば、コード表示層が紫外線蛍光インクにより形成されている場合を考える。また、コード表示層の下に通常印刷層があるとする。ここで、紫外線の照射は行わない(つまり蛍光はさせない)状態で、当該識別媒体を第1の旋回方向の円偏光を選択的に透過する第1の円偏光フィルタを介して観察すると、コレステリック液晶層からの反射光が優先的に観察される。なお、コード表示層は、蛍光していないので、当然観察できない。なお、この状態において、第1の円偏光フィルタを外すと、通常印刷層からの反射光も明瞭に観察可能となる。またこの状態において、第2の円偏光を選択的に透過する第2の円偏光フィルタ(第1の円偏光を遮断する円偏光フィルタ)を介して、当該識別媒体を観察すると、コレステリック液晶層からの反射光は遮断されてそのホログラム像は見えず、通常印刷層の表示が選択的に観察される。このように、円偏光フィルタの切り替えにより、観察される像が切り替わる機能により識別が行われる。なお、ここではコード表示層の下に通常印刷層がある場合を説明したが、識別媒体が貼り付けられた下地の表示をこの通常印刷層に置き換えても事情は同じである。
【0009】
(第3段階の識別)
例えば、紫外線蛍光インクを用いてコード表示層を形成した場合において、当該識別媒体に紫外線を照射すると、コード表示層が蛍光し、観察可能(光学的な検出が可能)となる。この際、円偏光フィルタを利用しないで観察すると、コレステリック液晶層のホログラム像、通常印刷層、コード表示層が同時に見える。第1の円偏光フィルタを介して観察すると、コレステリック液晶層からの第1の円偏光のみが第1の円偏光フィルタを透過するので、コレステリック液晶層のホログラム像のみが選択的に見える。第2の円偏光フィルタを介して観察すると、コレステリック液晶層から反射される第1の円偏光が遮断されるので、コレステリック液晶層のホログラム像が消失し、通常印刷層およびコード表示層が見える。この像の切り替わりにより識別が行われる。
【0010】
また、請求項1に記載の発明によれば、コードが見える環境(例えば、コードを紫外線蛍光インクで形成した場合において、紫外線を照射してコードを蛍光させた状態)において、円偏光フィルタを介さずに光学読み取り装置(例えば、バーコードリーダー)によって当該識別媒体からのデータの読み取りを行った場合に、光学読み取り装置は、コード層のコード画像(例えば、2次元バーコードの画像)とコレステリック液晶層のホログラム像とを同時に検出する。この際、ホログラム像によりコード画像の読み取りが阻害されるので、光学読み取り装置で直接光学的な読み取りを行っただけでは、データの読み取りはできない。
【0011】
他方で、コレステリック液晶層が選択反射する旋回方向の円偏光を遮断する円偏光フィルタを介して、光学読み取り装置による読み取りを行う場合、コレステリック液晶層からの反射光が上記円偏光フィルタによって遮断されるので、光学読み取り装置はコレステリック液晶層のホログラム像を検出しない。このため、コードが見える環境におけるコード表示層のコードの情報を検出するS/Nが高くなり、当該コードの検出をおよび当該コードのデコードが可能となる。つまり、コードの選択的な読み取りが可能となる。
【0012】
コレステリック液晶層の反射光は、左右どちらかの旋回方向の円偏光であり、円偏光フィルタによりその反射光を遮断した場合の遮断性(透過されない特性)が極めて高い。また、円偏光であるので、円偏光フィルタを回転させてもこの逆旋回方向の円偏光を遮断する特性は変化しない。このため、円偏光フィルタを用いない場合におけるコレステリック液晶層のホログラム像によるコード表示層のコードの読み取りを阻害する機能と、コレステリック液晶層からの反射光を円偏光フィルタで遮断することによる上記コード表示層のコード情報を光学的に検出する際の検出S/Nの確保とを両立できる。
【0013】
本発明によれば、見た目では、ホログラム像に邪魔されてコードが明瞭に見えない状態であるが、使用しているコレステリック液晶が選択反射する円偏光と逆旋回方向の円偏光を選択的に透過する円偏光フィルタを介してコードの光学的な検出を行うと、ホログラム像の影響が排除されて、コードを読み取ることができる識別媒体が提供される。
【0014】
また、コードを偽装してもコレステリック液晶層のホログラムを偽造するのが困難であるので、コードが同じでも見た目で同じものを製造(偽造)することが困難となる。また、例えばコレステリック液晶のホログラムではなく、通常のホログラムをコードに重ねたものを偽造し、見た目を精巧に似せた偽造品を製造しても、円偏光フィルタを介した観察で、同様の視覚効果が得られないので、偽造を見破ることが容易となる。
【0015】
なお、光学読み取り装置の読み取り形式は、光学的にコードを読み取る形式であれば限定されず、例えば、CCD等の撮像装置により画像を取得する形式、光学受光センサによる直接反射光や散乱反射光の検出による形式、受光センサアレイによる反射光のパターンを検出する形式等が挙げられる。
【0016】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、前記コレステリック液晶層の側の面と反対の面から自然光を入射させた場合に、前記第1の旋回方向とは逆の第2の旋回方向の円偏光を前記コレステリック液晶層に向かって選択的に透過する光学機能層が前記コレステリック液晶層と前記コード表示層との間に配置されていることを特徴とする。
【0017】
請求項2に記載の発明によれば、コード表示層からの反射光が光学機能層を透過した後にコレステリック液晶層の非観察面側(光学的な読み取りを行う側と反対の面側)から入射する。この入射光は、光学機能層の機能によりコレステリック液晶層が選択反射する円偏光の旋回方向(第1の旋回方向)と逆の第2の旋回方向の円偏光となる。よって、第1の旋回方向の円偏光を選択的に透過する円偏光フィルタを介して当該識別媒体を観察した場合に、この円偏光フィルタによって第2の旋回方向の円偏光が遮断されるので、コードが見えず、コレステリック液晶層からのホログラム像が鮮明に視認される。よって、ホログラム像を用いた肉眼での識別性が高くなる。これは光学読み取り装置を用いた場合も同じであり、ホログラム像の検出による識別性が高くなる。
【0018】
仮に、請求項2の光学機能層がない場合、第1の旋回方向を選択的に透過する円偏光フィルタを介した観察において、コード表示層から反射されるランダム光成分の内の第1の旋回方向の円偏光成分がコレステリック液晶層からの反射光に混じって、円偏光フィルタを透過する。このため、ホログラム像だけを鮮明に視認することはできず、コードも同時に視認される。これは、光学読み取り装置を用いた読み取りにおいても同じである。よって、コレステリック液晶層のホログラム像単独の視認性や画像読み取り装置による読み取り精度が低下する。
【0019】
請求項3に記載の発明は、請求項1または2に記載の発明において、前記コードが、バーコード、2次元コード、OCRコード、ホログラムコード、カラーコードから選ばれた一または複数により構成されることを特徴とする。コードは、各種の方式や規格のものが知られているが(あるいは提案されているが)、本発明では、それらの何れでも利用することができる。ここで、OCRコードは、文字で表示されたコードであり、また、カラーコードは複数の色彩の組み合わせで構成したコードである。これらのコードは、複数種類を組み合わせて利用することもできる。コードの読み取りは、反射光の明暗を0、1(Hi状態、Lo状態)に対応させてデジタル信号として検出する方法、携帯電話のカメラ機能を用いた2次元バーコードの読み取りのように撮像装置を用いてコードの模様を画像として取り込み、それに基づき画像処理によりコードをデコードする方法が挙げられる。
【0020】
請求項4に記載の発明は、請求項3に記載の発明において、前記コードが肉眼では認識し難い大きさを有することを特徴とする。請求項4に記載の発明では、バーコード、2次元コード、OCRコード、ホログラムコード、カラーコード等のコードを肉眼では認識し難い大きさとし、拡大光学系を介して拡大することで読み取ることが可能な形態としている。こうすることで、直視した場合にコレステリック液晶層のホログラム像の見え方が支配的となり、肉眼でコードが視認し難い識別媒体が提供される。
【0021】
請求項5に記載の発明は、請求項1〜4のいずれか一項に記載の発明において、前記ホログラム像が前記コード表示層に形成された前記コードとは別のコードを構成していることを特徴とする。請求項5に記載の発明によれば、コード表示層に形成されたコードに加えて、コレステリック液晶層のホログラム像を利用してのコード(ホログラムコード)も用いられるので、それらの組み合わせにより扱うデータ量を多くできる。また、一方のデータのみの読み取り、両方のデータの読み取りの組み合わせによって、より高い識別性を得ることができる。
【0022】
また、請求項2に記載の発明を採用した場合、右円偏光フィルタと左円偏光フィルタを切り替えて用いることで、コード表示層からの反射光とコレステリック液晶層からの反射光とを明確に分離して検出することができる。このため、第1の円偏光フィルタを利用することで、コレステリック液晶層からの反射光を選択的に検出し、それによりホログラムコードを選択的に読み取ることができる。また、第2の円偏光フィルタを利用することで、コード表示層からの反射光を選択的に検出し、それによりコード表示層のコード情報を選択的に読み取りことができる。
【0023】
請求項6に記載の発明は、読み取りを行う側から、ホログラム加工が施され、第1の旋回方向の円偏光を選択的に反射するコレステリック液晶層と、読み取りの対象となるコードが形成され、通常は不可視であり、特定の条件で見えるコード表示層とを順に備え、光学読み取り装置により前記コードと同時に読み取った際に、前記コードの情報の読み取りを阻害するホログラム像が前記ホログラム加工により形成されている識別媒体からのデータの読み取り方法であって、光学読取装置により前記第1の旋回方向の円偏光を遮断する円偏光フィルタを介して前記コードの選択的な読み取りが行われ、前記読み取りは、前記識別媒体への特定の波長領域の光を照射、前記識別媒体に温度変化を与える、拡大レンズを介して前記識別媒体を観察する、前記識別媒体に磁場を印加する、前記識別媒体に力を加える、の少なくとも一つの状態で行われることを特徴とする識別媒体の識別方法である。
【0024】
請求項6に記載の発明によれば、コードが可視の状態において、第1の旋回方向の円偏光を遮断する円偏光フィルタを介さない場合は、コードが読み取れず、第1の旋回方向の円偏光を遮断する円偏光フィルタを介した場合に、コードが読み取れるデータの読み取り方法が提供される。すなわち、円偏光フィルタを用いないとコレステリック液晶層のホログラム像とコードが同時に見えるので、コードの読み取りが阻害される。また、第1の旋回方向の円偏光を透過する円偏光フィルタを介して当該識別媒体を観察した場合はコレステリック液晶層からの反射光しか見えないので、やはりコードの読み取りが行えない。このように、特定の旋回方向を透過する円偏光フィルタを用いないとコードの読み取りが行えない技術が提供される。なお、コードを可視とする状態は、複数を組み合わせて実行することも可能である。
【0025】
請求項7に記載の発明は、請求項6に記載の発明において、光学読み取り装置により前記コレステリック液晶層の前記ホログラムと前記コードとの同時読み取りが行われ、前記コードの選択的な読み取りおよび前記ホログラムと前記コードとの同時読み取りに基づき、前記識別媒体の真贋の判定が行われることを特徴とする。
【0026】
請求項8に記載の発明は、請求項1〜5のいずれか一項に記載の識別媒体の真贋を判定する装置であって、前記第1の旋回方向の円偏光を遮断する円偏光フィルタを介して前記コードを選択的に読み取る読み取り手段と、前記識別媒体に特定の波長領域の光を照射する光照射手段、前記識別媒体に温度変化を与える温度変化手段、拡大レンズを介して前記識別媒体を観察可能とする手段、前記識別媒体に磁場を印加する磁場印加手段、前記識別媒体に力を加える手段の少なくとも一つを備えることを特徴とする識別装置である。
【0027】
請求項9に記載の発明は、請求項1〜5のいずれか一項に記載の識別媒体を製造する方法であって、前記コード表示層を印刷により形成する工程と、前記コード表示層と前記コレステリック液晶層とを一体化する工程とを備えることを特徴とする識別媒体の製造方法である。
【発明の効果】
【0028】
本発明によれば、目視での真贋判定を含む多段階の識別を行うことができる識別媒体が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】実施形態の断面構造を示す概念図である。
【図2】実施形態の光学原理を示す原理図である。
【図3】実施形態の見え方の違いを示す概念図である。
【図4】実施形態の識別を行うシステムの一例である。
【図5】光学読み取り装置の概念図である。
【図6】光学読み取り装置のブロック図である。
【図7】光学読み取り装置の動作の手順を示すフローチャートである。
【図8】実施形態の断面構造を示す概念図である。
【図9】実施形態の見え方の違いを示す概念図である。
【図10】実施形態の断面構造を示す概念図である。
【図11】実施形態の見え方の違いを示す概念図である。
【図12】実施形態の断面構造を示す概念図である。
【図13】実施形態の光学原理を示す原理図である。
【図14】実施形態の見え方の違いを示す概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
(1)第1の実施形態
図1には、実施形態の識別媒体100が示されている。識別媒体100は、観察が行われる側(識別面側)から、透明保護層101、コレステリック液晶層102、λ/4板104、直線偏光フィルタ層105、コード表示層107、通常印刷層108、基材フィルム層109、粘着層110と積層された構造を有している。
【0031】
透明保護層101は、最表面を保護する透明な樹脂フィルムの層である。透明保護層101は、TAC(トリアセチルセルロース)等の透過する光の偏光特性を乱さない材質が選択されている。コレステリック液晶層102は、赤の右円偏光を選択的に反射する光学特性とされている。コレステリック液晶層102には、エンボス型を押し付けることで行われたホログラム加工103が施されている。ホログラム加工103により、コレステリック液晶層102に凹凸構造が付与され、この凹凸構造において生じる光学干渉によりホログラム像が生成される。このホログラム像は、コレステリック液晶層102からの反射光を観察することで視認することができる。
【0032】
λ/4板104と直線偏光フィルタ層105は、2層で左円偏光フィルタ層106を構成している。左円偏光フィルタ層106は、非観察面側であるコード表示層107の側から自然光を入射させた場合に、観察面側(図の上側)に左円偏光を選択的に透過する光学機能となるように、λ/4板104と直線偏光フィルタ層105の向きが調整されている。
【0033】
コード表示層107は、紫外線の照射で可視領域の蛍光を生じる紫外線蛍光インクの印刷により形成された2次元バーコードが形成された層である。通常印刷層108は、普通のインクを用いた図柄の印刷の層である。この例では、基材フィルム層109上に通常印刷層108、コード表示層107の順で印刷が行われている。なお、図では、通常印刷層108の上にコード表示層107があるように記載されているが、これは印刷の順序を示すものであり、両者が重なっていない部分では、通常印刷層108とコード表示層107とは、同じ面内に位置することになる。
【0034】
基材フィルム層109は、コード表示層107と通常印刷層108の内容(画像)を際立たせる背景色を有した樹脂フィルムの層である。粘着層110は、粘着材の層である。粘着層110の機能により、識別媒体100が対象物に貼り付けられる。なお、粘着層110の露出面には図示省略したセパレータ(離型紙)が貼り付けられ、このセパレータを剥がし、粘着層110を露出させた状態で対象物への識別媒体100の貼り付けが行われる。
【0035】
二次元バーコードは、コード表示の一例であり、ドットや文字でコードを示すものや模様でコードを示すもの等、機械認識で読み取れる形態であれば、形式は限定されない。なお、基材フィルム109を用いないで、円偏光フィルタ106の直線偏光フィルタ105側にコード表示層107、通常印刷層108を印刷により形成してもよい。
【0036】
(光学機能)
図2には、識別媒体100の光学機能の原理が概念的に示されている。以下、自然光がコレステリック液晶層102の側(図の上側)から照射されている環境下における識別媒体100の光学機能について説明する。なお、図2では、透明保護層101の記載は省略されている。
【0037】
まず、基本的な光学特性を説明する。識別媒体100に照射された自然光の内、コレステリック液晶層102から赤の右円偏光が反射される。このコレステリック液晶層102からの反射光は、ホログラム加工103に起因するホログラム像を含んだ反射光となる。
【0038】
また、コレステリック液晶層102が反射しない左円偏光、直線偏光、赤以外の右円偏光がコレステリック液晶層102を透過し、円偏光フィルタ層106に入射する。この入射光は、円偏光フィルタ層106の直線偏光フィルタ層105のコード表示層107側に出た段階で直線偏光となり、コード表示層107および通常印刷層108に入射し、そこで反射される。この反射光には、コード表示層107の画像情報(二次元バーコードの画像)と通常印刷層108の画像情報が含まれる。
【0039】
コード表示層107および通常印刷層108からの反射光は、左円偏光フィルタ層106を図の下か上の方向に透過する段階で左円偏光(左旋回円偏光)となる。すなわち、円偏光フィルタ層106は、直線偏光フィルタ層105側から自然光を入射させた場合に、λ/4板104側から左円偏光が出射する特性とされている。よって、コード表示層107および通常印刷層108からの反射光は、左円偏光として、円偏光フィルタ層106を図の上方向に透過する。この透過光は、左円偏光であるので、コレステリック液晶層102を透過し、観察面側に出射する。
【0040】
(左円偏光フィルタを介した観察)
まず、紫外線を照射していない状態において、識別媒体100を左円偏光フィルタ(左旋回円偏光を選択的に透過する円偏光フィルタ)120を介して観察する場合を説明する。この場合、コレステリック液晶層102から反射される右円偏光は、左円偏光120フィルタで遮断されるので、コレステリック液晶層102の観察面側に出射する段階で左円偏光となるコード表示層107および通常図柄層108からの反射光が選択的に観察される。
【0041】
この状態における観察内容を図3(A)に示す。図3(A)には、通常印刷層108の表示(画像)108’が見えている状態が示されている。この状態では、紫外線が照射されていないので、コード表示層107のコード表示は蛍光しておらず、視認できない(検出できない)。よって、紫外線を照射しない状態における左円偏光フィルタを介した観察では、図3(A)に示すように通常印刷層108の通常印刷表示108’のみが見える。
【0042】
次に識別媒体100の紫外線を照射すると、コード表示層107が蛍光し、通常印刷層108の表示に加えてコード表示層107の表示が見える。この状態が図3(B)に示されている。図3(B)には、通常印刷表示108’に加えて、コード表示107’の二次元バーコード模様が見える様子が示されている。
【0043】
(右円偏光フィルタを介した観察)
紫外線を照射していない状態において、識別媒体100を右円偏光フィルタ(右旋回円偏光を選択的に透過する円偏光フィルタ)121を介して観察した場合、コレステリック液晶層102から反射される右円偏光は、右円偏光フィルタ121を透過するので、被観察光123には、ホログラム加工103に基づくホログラム像が含まれる。他方で、コレステリック液晶層102を観察面側に出射する段階で左円偏光となるコード表示層107および通常印刷層108からの反射光は、右円偏光フィルタ121で遮断される。このため、コード表示層107および通常印刷層108からの反射光は、被観察光123には含まれない。
【0044】
この状態における観察内容を図3(C)に示す。図3(C)には、ホログラム加工103に基づくホログラム像103’が見えている状態が示されている。なお、識別媒体100に紫外線を照射しても、図3(C)の観察状態に変化はない。これは、右円偏光フィルタ121を介した観察では、コード表示層107からの反射光(左円偏光)が観察できないからである。
【0045】
(円偏光フィルタを利用しない場合(直視の場合))
紫外線を照射しない状態において、円偏光フィルタを利用せず、識別媒体100を直視した場合について説明する。この場合、コード表示層107のコード表示(2次元バーコード表示)は蛍光せず視認できない。このため、コレステリック液晶層102から反射される右円偏光と、コレステリック液晶層102の観察面側に出射する段階で左円偏光となる通常図柄層108からの反射光が同時に観察される。よって、コレステリック液晶層102のホログラム像および通常印刷層108の図柄が同時に見える。この様子を図3(D)に示す。図3(D)には、コレステリック液晶層102のホログラム像103’および通常図柄層108の通常印刷表示108’が同時に見えている状態が示されている。
【0046】
次に、紫外線を照射している状態において、円偏光フィルタを利用せず、識別媒体100を直視した場合について説明する。この場合、コード表示層107のコード表示(2次元バーコード表示)が蛍光し、視認可能となる。このため、コレステリック液晶層102から反射される右円偏光と、コレステリック液晶層102の観察面側に出射する段階で左円偏光となるコード表示層107および通常図柄層108からの反射光が同時に観察される。よって、コレステリック液晶層102のホログラム像、コード表示層107の二次元バーコード、および通常図柄層108の図柄が同時に見える。この様子を図3(E)に示す。図3(E)には、コレステリック液晶層102のホログラム像103’、コード表示層107の二次元バーコードのコード表示107’、および通常図柄層108の通常印刷表示108’が同時に見えている状態が示されている。
【0047】
以下、図3を参照して3段階の識別機能について説明する。
(第1段階の識別)
まず、図3(C)〜(E)に示すホログラム像103’のよる見た目での識別が行われる。前述したようにコレステリック液晶層に形成したホログラムの偽造は困難であるので、ホログラム像103’と見た目が同じものを再現することは難しい。このことを利用して見た目による真贋判定が可能となる。例えば、偽造品では、ホログラム像103’の見た目に違和感があり、それにより真贋判定が可能となる。
【0048】
(第2段階の識別)
紫外線を照射しない状態において、左右の円偏光フィルタの切り替えての観察を行うと、図3(A)⇔図3(C)の切り替わりが観察される。また、円偏光フィルタを外すと、図3(A)や図3(C)の状態の見た目が、図3(D)の状態に切り替わる。この切り替わりにより、真贋判定が行われる。例えば、偽造品では、これらの画像の切り替わりが明確でないので、偽造品を識別することができる。
【0049】
(第3段階の識別)
紫外線を照射した状態において、左右の円偏光フィルタの切り替えての観察を行うと、図3(B)⇔図3(C)の切り替わりが観察される。また、円偏光フィルタを外すと、図3(B)や図3(C)の状態の見た目が、図3(E)の状態に切り替わる。この切り替わりにより、真贋判定が行われる。例えば、偽造品では、これらの画像の切り替わりが明確でないので、偽造品を識別することができる。また、図3(E)の状態では、ホログラム像103’が邪魔になり、コード表示107’が正確に読み取れない。図3(E)には、ホログラム像103’により、コード表示107’が正確に読み取れない状態が誇張して示されている。
【0050】
(利用例)
以下、識別媒体100の利用例の一例を説明する。ここでは、識別媒体100を商品に付けられた2次元バーコードに適用した場合の例を説明する。図4には、識別媒体100を利用した識別を行うシステムの一例が示されている。図4(A)には、全体の概要が示され、図4(B)には、カメラ付携帯電話で識別媒体100を撮像する様子が示されている。
【0051】
図4には、データサーバ201、インターネット回線202、携帯基地局203、携帯基地局のアンテナ204、携帯電話205、製品206、識別媒体100、カメラ208、左円偏光フィルタ209が示されている。データサーバ201は、識別媒体100の2次元バーコード情報のデコードされた情報を照合する。インターネット回線202は、携帯基地局203と接続され、携帯基地局203は、アンテナ204を介して携帯電話205と通信を行う。携帯電話205は、カメラ208を備え、カメラ208で撮像した二次元バーコード情報をデコードし、携帯基地局203を介してインターネット202経由でデータサーバ201に送信する。製品206は、電子部品や機械部品等の各種の部品、食料品、日用品、衣料品、コンピュータのアプリケーションソフトウェア等の製品や製品パッケージである。製品206には、真贋判定機能および決められた内容(例えば、製造者を特定する情報や物流過程の履歴情報等)をコード化して印刷した識別媒体100が貼り付けられている。
【0052】
図4に示す例において、ユーザは、携帯電話205のカメラ208を利用し、左円偏光フィルタ209を介して識別媒体100を撮像する。この際、紫外光ライト207により紫外光を識別媒体100に照射した状態で、識別媒体100の撮像を行う。カメラ208が取得したデータは、携帯基地局203、インターネット回線202を介して、データサーバ201に送られる。データサーバ201は、受け取ったデータに基づいて、識別媒体100のコードを自身が記憶している比較対象となるデータと照合する。そしてデータサーバ201は、取得したコードの内容に基づいて、特定の情報(例えば、製品206に関する製造者を特定する情報)を携帯電話205に送る。このようにして、識別媒体100を撮像し、その画像データをデコードし、データサーバ201に送ることで問い合わせが行われ、その問い合わせの結果(回答)が、データサーバ201から携帯電話205に送られ、携帯電話205に表示される。
【0053】
なお、円偏光フィルタを介さず直接識別媒体100を撮像した場合、コレステリック液晶層のホログラム像も同時に撮像される。よって、その画像データはコレステリック液晶のホログラム像が障害になって二次元バーコード(コード表示層107)のデコードは行えない。また、紫外光を照射しない場合も、コードの表示が蛍光しないので、コードの読み取りは行えない。また、紫外線を照射しない状態での撮像では、コードの表示が蛍光しないので、読み取れない。
【0054】
(読み取り装置)
図5には、図1の識別媒体100の読み取りを行う読み取り装置300が示されている。読み取り装置300は、CCD等の撮像装置301、制御部302、通常ライト303、円偏光フィルタ304、拡大レンズ320、ステージ305、紫外線ライト321を備えている。撮像装置301は、識別媒体100の撮像を行う。制御部302は、装置全体の動作制御、撮像装置301が撮像した画像に基づくコードの解読および真贋判定を行う。通常ライト303は、識別媒体100に白色自然光を照射する。円偏光フィルタ304は、識別媒体100のコレステリック液晶層102が選択反射する円偏光(この場合は、右円偏光)を遮断する光学フィルタ(この場合は、左円偏光フィルタ)である。円偏光フィルタ304は、光軸上(撮像装置301の前)からの退避が自在にできるように図示省略した移動手段により、移動が可能とされている。拡大レンズ320は、例えばマイクロOCRコード等の肉眼では小さくて視認し難いコードを用いた場合に利用される拡大光学系である。拡大レンズ320も光軸から退避可能とされている。ステージ305は、識別媒体100が貼り付けられた対象物(例えば、電子部品や各種商品等)306が置かれるステージである。紫外線ライト321は、識別媒体100に紫外光を照射し、識別媒体100のコードを蛍光させ、可視化する。
【0055】
図6は、制御302の構成を示すブロック図である。制御部302には、後述するフローチャートの手順を実行するコンピュータとして機能する。制御部は、CPU、メモリ、インターフェースを備え、ソフトウェアー的に構成された以下の機能部を有している。制御部302は、画像抽出部306、デコード部307、デコード内容出力部308、画像判定部309、デコード可否判定部310、真贋判定部311、報知部312、駆動部313を備えている。
【0056】
画像抽出部306は、画像データから画像の内容を抽出する。デコード部307は、抽出された画像を解析し、コード(2次元バーコードデータ)を解析しデコードする。デコード内容出力部308は、デコードされた2次元バーコードの情報を出力する。ここで、2次元バーコードの情報としては、対象物306の固有情報(例えば、製造番号や各種履歴情報)が挙げられる。画像判定部309は、抽出された画像が予め記憶されている画像(リファレンス画像)と整合するか否か、を判定する。デコード可否判定部310は、デコード部307におけるコードデータのデコードが正常に行われたか否か、を判定する。真贋判定部311は、画像判定部309およびデコード可否判定部310の判定の結果に基づき、識別媒体100の真贋を判定する。報知部312は、各種判定の結果を報知する報知信号を出力する。駆動部313は、通常ライト303および紫外線ライト321の点灯制御、円偏光フィルタ304および拡大レンズ320の移動制御を行うための駆動信号を出力する。
【0057】
(読み取り装置の動作)
図7は、読み取り装置300の動作の一例を示すフローチャートである。図7の処理の手順を実行するプログラムは、制御部302内の適当なメモリ領域に記憶され、制御部302によって実行される。このプログラムは、適当な記憶媒体に記憶され、そこから提供される形態であってもよい。
【0058】
図5のステージ305上に、識別媒体100が貼り付けられた対象物306が置かれた状態で処理が開始される。処理が開始されると(ステップS501)、通常ライト303および紫外線ライト321の発光を開始し(ステップS502)、円偏光フィルタ(左円偏光フィルタ)304を撮像装置301と識別媒体100との間から退避させる(ステップS503)。
【0059】
次に、撮像装置301により識別媒体100を図1の観察面側(透明保護層101の側)から撮像し、識別媒体100を撮像した画像データを取得する(ステップS504)。識別媒体100の画像データを取得したら、2次元バーコード情報のデコードが不可で、且つ、得られた画像が予め用意しておいたリファレンス画像と整合(合致)するか否かが判定される(ステップS505)。この判定要件が満たされない場合、コレステリック液晶層102のホログラム画像による2次元バーコードの読み取りを阻害する作用が正常に機能しておらず、またこのホログラム画像が偽物の可能性が高いと判定され、真正でない疑がある旨(贋物の疑いあり)の報知情報を出力する処理を行う(ステップS506)。
【0060】
ステップS505において、2次元バーコード情報のデコードが不可で、且つ、得られた画像が予め用意しておいたリファレンス画像と整合する場合、円偏光フィルタ304を撮像装置301と識別媒体100との間に挿入し(ステップS507)、再度識別媒体100の撮像を行いその画像データを得る(ステップS508)。次に、この再度取得した画像データに対してデコード処理を行い、正常なデコードが行えた否か、を判定する(ステップS509)。ここで、正常なデコードが行えなければ、エラー処理を行い(ステップS510)、正常なデコードができた場合、デコードした内容(識別媒体100の2次元バーコード情報)を出力する(ステップS511)。その後、通常ライト303および紫外線ライト321の発光を停止し(ステップS512)、処理を終了する(ステップS513)。なお、2次元バーコードの画像データを取得する際には、より読み取り精度を高めるために、通常ライト303の発光を先に停止させ、紫外線ライト321のみ発光させても良い。
【0061】
(真贋判定機能)
まず、図2に関連して説明したように、識別媒体100は、直視した場合に2次元バーコードの模様とホログラム像が同時に見える。そして、左円偏光フィルタを介して見ると2次元バーコードのみが見え、右円偏光フィルタを介して見るとホログラム像のみが見える。この見える像の切り替わりで真贋の判定が可能となる。2次元バーコードのみであると、偽造された場合にその真贋の判定が困難となるが、識別媒体100では、上記の目視による観察で、真贋の判定が行える。
【0062】
また、図5、図6に関連して説明したように、機械による電子的な読み取りにおいても真贋の判定が可能となる。すなわち、見た目を似せて作った贋物の識別媒体100は、コレステリック液晶層102へのホログラム加工103が上手く再現できないので、ステップS505の判定がNOとなる。また、仮にステップS505の判定をクリアしたとしても、ステップS509の判定において、ホログラム像が画像データ中に残っていると2次元バーコードのデコードが不可となり、エラーとなるので、偽造品の2次元バーコード情報が正常な情報として読み取られる不都合が回避される。
【0063】
このように識別媒体100は、目視での観察による真贋判定、および電子的な読み取りによる真贋判定を行うことで、2次元バーコード情報の偽造を見破ることが容易となる。
【0064】
(その他)
コレステリック液晶層102が選択反射する中心波長(色)は、赤に限定されず、緑等の他の色であってもよい。また、コレステリック液晶層102が選択反射する円偏光の旋回方向は、右旋回方向に限定されず、左旋回方向であってもよい。例えば、コレステリック液晶層102が選択反射する円偏光の旋回方向を左旋回方向とした場合、符号106の部分は、右円偏光フィルタ層となる。
【0065】
基材フィルム層108と粘着層109を透明にし、貼り付けた面が透けて見える構成も可能である。この場合、透けて見える添付対象物の図柄が通常印刷層108の図柄と同様の機能を発揮する。また、粘着層109を暗色の色として、粘着層を光吸収層として機能させてもよい。この場合、紫外光を当てた環境下で直視した場合に、ホログラム像が強調され、2次元バーコードが見え難くなる。また、2次元バーコードの図柄は、予め印刷された薄いフィルムを張り合わせても形成してもよい。
【0066】
(変形例1)
図1に示す構成において、円偏光フィルタ層106を省いた構成も可能である。この場合、紫外光を当てた環境化における右円偏光フィルタを介した観察において、ホログラム像に加えて、コード表示層も薄く見える。左円偏光フィルタを介した観察の場合は、図1の識別媒体の場合と同じである。変形例1の場合、円偏光フィルタを切り替えての観察において、2次元バーコードの図柄とホログラム像との明確な切り替わりが図1の識別媒体100に比較して相対的に不明瞭となるが、図7の処理による真贋判定および2次元バーコード情報の読み取り処理は可能である。
【0067】
(変形例2)
コード表示層107として、2次元バーコードの図柄の代わりに肉眼では識別できない大きさのマイクロ文字を利用したOCRコード(以下、マイクロOCRコード)を用いる。マイクロコードOCRコードは、特定のデータを文字により記号化(暗号化)したもので、肉眼では読み取り難い大きさを有し、レンズを介して読み取る。この場合の識別媒体の使用方法や特徴は、図5の装置を用いた形態において、拡大レンズ320が利用される点、コードの方式が変わる点を除いて2次元バーコードの場合と同じである。なお、図4の形態にマイクロOCRコードを適用した場合、円偏光フィルタ209に加えて、拡大レンズを介して、カメラ208による撮像を行えばよい。
【0068】
マイクロOCRコードを用いた場合、目視でコードが読み取り難いので、コレステリック液晶層のホログラム像が強調されて見え、ホログラム像を用いた目視での識別性が高くなる。また、マイクロOCRコードは文字が小さいので、円偏光フィルタを介さずにマイクロOCRコードを画像認識により読み取ろうとした場合に、ホログラム像による幻惑作用がより大きく、ホログラム像がより明瞭な画像となる点と相まって、図7のステップS505の判定による真贋判定をより効果的に行うことができる。なお、バーコードの表示を小さくし、光学系で拡大することで読み取る形態も可能である。
【0069】
(変形例3)
2次元バーコードの変わりにID番号を用いることもできる。この場合、ID番号が画像認識され、ID番号に対応した固有情報(例えば、製造番号や、認識番号、固有の名称等)がデコードされる。
【0070】
この構成では、円偏光フィルタ304を退避させた状態で画像認識を行うと、コレステリック液晶層102のホログラム像に幻惑されて、ID番号が読み取れず、左円偏光フィルタを光路に挿入した状態で画像認識を行うと、ホログラム像が消えて、ID番号の読み取りが可能となる。
【0071】
この場合もID番号を何らかの方法で入手され、識別媒体が偽造されたとしても、偽造の困難なコレステリック液晶のホログラム像を用いた円偏光フィルタ不使用時のID番号の読み取りを困難にする光学機能、また逆に円偏光フィルタ使用時のID番号をホログラム像の影響(幻惑)を受けずに精度よく読み取れる機能、および再現の困難なホログラム画像の画像内容によって高い偽造判定機能を得ることができる。
【0072】
(変形例4)
ホログラム加工103によって形成されるホログラム像としてホログラムコードを含むものを採用してもよい。この場合、右円偏光フィルタを介した撮像によって、ホログラム加工103によるホログラムコードの読み取りが行われる。そして、左円偏光フィルタを介した撮像によって、コード表示層107のコードの読み取りが行われる。つまり、円偏光フィルタの切り替えにより、2つのコードの選択的な読み取りが可能となる。
【0073】
この場合、図5に示す装置は、右円偏光フィルタと左円偏光フィルタを備え、右円偏光フィルタの光路への挿入および退避、左円偏光フィルタの光路への挿入および退避が可能とされる。すなわち、右円偏光フィルタを光路に挿入した場合、右円偏光フィルタを介した識別媒体100の撮像となり、ホログラム加工103によって形成されるホログラム像に含まれるホログラムコードの読み出しが行われる。また、左円偏光フィルタを光路に挿入した場合、左円偏光フィルタを介した識別媒体100の撮像となり、コード表示層107のコードの読み取りが行われる。
【0074】
またこの場合、円偏光フィルタと読み取ったコードの内容との組み合わせに基づいた真贋の判定も可能となる。つまり、右円偏光フィルタ採用時のデコード内容と右円偏光フィルタ採用時のデコード内容が、予め定めた内容と一致するか否かを判定することで、識別媒体の真贋の判定が可能となる。
【0075】
この方法は、図4のシステムで実現することもできる。この場合、携帯電話205のカメラ208の前に配置する円偏光フィルタとして、左右の円偏光フィルタを用意し、また上記の方法を実行するプログラムを用意し、それをデータサーバ201において実行する。
【0076】
(変形例5)
コード表示層107の二次元バーコードを構成する蛍光インクとして、蛍光時に赤外光を発光するタイプのものを採用することもできる。この場合、可視光領域から外れた波長での発光を行うタイプのものを選択することで、コードを蛍光により発光させても目視では、コードを視認できない構成とできる。この赤外領域の蛍光を示す蛍光インクを用いてコードを構成した場合、コードの読み取りは、当該赤外領域の光を検出できる撮像装置や受光センサを用いて行われる。蛍光時の発光波長は、デコードが可能なレベルで検出できる波長であれば、特に限定されない。
【0077】
(製造方法)
図1の識別媒体100の製造方法の一例を説明する。まず、コレステリック液晶層102を図示しない形成用基板上に形成する。形成用基板上でコレステリック液晶層102を形成したら、ホログラム型を押し付け、ホログラム加工103を施す。次いで、この形成用基板からコレステリック液晶層102を剥がし、予め接着剤により一体化しておいた円偏光フィルタ層106にコレステリック液晶層102を熱プレスまたは接着により固定する。また、コレステリック液晶層102の露出した面(観察面)側に透明保護層101を接着する。
【0078】
他方で、裏面側に粘着層109を取り付けた基材フィルム層108上に、コード表示層107を、紫外線蛍光インクを用いて印刷したものを用意する。そして、コード印刷層107と直線偏光フィルタ層105が密着するように両者を熱プレスまたは接着により固定することで、図1に示す識別媒体100を得る。
【0079】
この方法によれば、透明保護層101、ホログラムが形成されたコレステリック液晶層102、円偏光フィルタ層106と積層された第1の部材と、粘着層109、基材フィルム層108と積層された第2の部材とを用意しておき、コード表示層107の形成後に、第1の部材と第2の部材とを貼りあわせて識別媒体100を得、更にこの識別媒体100を対象物に貼り付ける作業が可能となる。このため、部品の製造ラインや物流ライン等において、オンデマンドでコードを印刷により形成し、このコードが印刷された識別媒体を対象物に貼り付ける作業が可能となる。これにより、本発明を利用した識別媒体を、例えば偽造防止機能を備えた履歴管理タグとして利用することができる。
【0080】
(その他)
粘着層109と基材フィルム層108に溶剤が侵入(浸透)し易いようにする溶剤進入経路を設け、さらにコード表示層107の層やその下地に溶剤に触れると発色する材料を存在させてもよい。例えば、溶剤に触れると破れるマイクロカプセル中に発色剤や顕色剤を内包させ、このマイクロカプセルをコード表示層107の層中に存在させる。この場合、溶剤を用いて粘着層109の粘着機能を低下させ、識別媒体100を不正に対象物から剥がそうとすると、粘着層109から溶剤が内部に侵入する。この結果、マイクロカプセルは破れ、コード表示層107に加えて発色模様が観察されるようになる。これにより、溶剤を用いて剥がした識別媒体100の不正な再利用が防止される。上記の溶剤に触れると発色する技術としては、特開2008−055813号公報に記載されている技術を利用することができる。
【0081】
また上記の粘着層109および基材フィルム層108に溶剤が侵入し易いようにする溶剤進入経路を設けた構成において、溶剤で溶解する染料を含有するインクによりコード表示層107を形成してもよい。この場合、溶剤で識別媒体100を対象物から剥がそうとすると、コード表示層107の印刷内容が滲み、コードの読み取りができなくなる。すなわち、識別媒体100の不正な再利用ができなきなくなる。この技術としては、特開平10−250228号公報に記載されて技術が利用可能である。上記の溶剤で溶解する染料を含有するインクとしては、ペンタエリスリトールトリアクリレートを58重量部、エチレンオキサイド変性ビスフェノールAジアクリレートを29重量部、有機溶剤溶解染料を8重量部、2,2−ジメトキン−2−フェニルアセトフェノンを5重量部により構成されるものを挙げることができる。
【0082】
また例えば、可視化する技術として、紫外線蛍光インクとサーモクロミックインクを併用することも可能である。この場合、紫外線を当てながら加熱すると、コードの可視化が行われる技術が提供される。この場合、読み取り装置として、紫外線ライトと加熱用の赤外線ライトを備えたものを用意し、紫外線の照射と加熱が可能な構成とすればよい。この組み合わせに限定されず、特定の条件で可視化が行われる技術は、本明細書で開示する技術の2以上を組み合わせて利用することが可能である。
【0083】
(2)第2の実施形態
第1の実施形態において、コード表示層107のコード(この場合は、二次元バーコード)を表示するインクとして感熱変化インク(サーモクロミックインク)を用いる。感熱変化インクは、温度変化により、透明→発色、または発色→透明となるインクである。温度変化は、ある温度から高い温度への変化であってもよいし、ある温度から低い温度への変化であってもよい。この変化の態様は、感熱変化インクの成分を選択することで調整することができる。
【0084】
例えば、常温で透明であるが、特定の温度以上となると発色する感熱温度インクを用いる場合を説明する。加熱すると発色するサーモクロミック材料としては、光重合組成物と、脂肪族アミンまたは芳香族アミンを含む膜材料により可逆熱変色性組成物を内包し、この膜材料が酸性物質によりイオン化しているマイクロカプセル顔料を利用することができる。なお、サーモクロミック材料として、構成材料を選択することで、上記の場合と異なり、室温で光吸収層として機能する黒または濃い色を示し、加熱すると透明になる性質のものを得ることもできる。市販されているサーモクロミック材料としては、クロマティックテクノロジー(CHROMATIC TECHNOLOGIES, INC:米国)社のサーモクロミックインキ(商品名:DYNACOLOR)が知られており、これを使用することもできる。
【0085】
この場合、第1の実施形態における紫外光の照射の変わりに、加熱を行い、それによりコード表示層107の二次元バーコードを可視化する。加熱は、温風を当てる、ヒータで加熱する、手で擦る、といった方法が採用される。また、図5の識別装置を本実施形態の識別媒体の識別に用いる場合は、図5に示す構成において、加熱手段として紫外線ライト321の代わりに赤外線ライトを採用する。コードの読み取りに際しては、この赤外線ライトで当該識別媒体を加熱し、二次元バーコードの表示を可視化する。
【0086】
次に、感熱変化インクを用いた別の例を説明する。図8には、識別媒体200が示されている。識別媒体200において、図1と同じ符号の部分は、図1に関連して説明した内容と同じであるので説明は省略する。以下、図1と異なる部分について説明する。識別媒体200は、光学機能層106の非観察面の側に感熱変化層111とコード表示層112を設けた構成を有している。感熱変化層111は、常温で黒に発色し、ある温度以上になると透明になる感熱インクの印刷層である。感熱変化層は、パターニングされておらず、全体に一様に形成されている。コード表示層112は、通常のインクにより形成したにコードの表示(例えば、二次元バーコード表示)である。
【0087】
図9には、図8の識別媒体200の見え方の変化が示されている。まず、常温で自然光が当たっている状態において、左円偏光フィルタを介して観察すると、全体が暗色に見える。この状態が図9(A)に示されている。これは、コレステリック液晶層102からの右円偏光フィルタの反射光が左円偏光フィルタで遮断されて、観察されず、他方で、その下の感熱変化層111は常温で暗色であるからである。
【0088】
そして、左円偏光フィルタを介した観察において、識別媒体200を加熱すると、感熱変化層111が透明となり、その下のコード表示層112のコード表示112’が見える。この状態が図9(B)に示されている。また、常温で右円偏光フィルタを介した観察を行った場合、左円偏光フィルタ層として機能する光学機能層106の機能により、コレステリック液晶層102からの右円偏光の反射光だけが観察される。このため、図9(C)に示すようにコレステリック液晶層102に対するホログラム加工103に基づくホログラム像103’が選択的に見える。この状態は、感熱変化層111の状態に関係ないので、右円偏光フィルタを介した観察において、加熱を行っても図9(C)に示すように、ホログラム像103’のみが見える。
【0089】
次に、円偏光フィルタを用いずに識別媒体200を直視した場合を説明する。この場合、常温では、感熱変化層111が暗色となるので、コレステリック液晶層102の背後が暗色となり、コレステリック液晶層102の反射光だけが観察される。よって、図9(D)に示されるように、ホログラム像103’のみが見える。また、直視した状態で加熱した場合、感熱変化層111が透明になるので、コード表示層112の二次元バーコード112’も見える。よって、図9(E)に示すようにホログラム像103’に加えて、コード表示112’も同時に見える。
【0090】
図9に例示する態様において、図9(B)の加熱した状態で左円偏光フィルタを介した読み取りにおいてのみ、コード表示112’を正常に読み取れる。図9(E)の場合は、ホログラム像103’が邪魔となってコード表示112’を正常に読み取れない。図9(E)には、ホログラム像103’により、コード表示112’が正確に読み取れない状態が誇張して示されている。
【0091】
(3)第3の実施形態
第2の実施形態の構成において、感熱変化インクの代わりに、フォトクロミック材料を含んだインクを使用する。フォトクロミック材料は、特定の光(例えば紫外線)を照射すると、発色状態にあるものが透明に、あるいは透明な状態であるものが発色した状態に変化する材料である。
【0092】
例えば、図8に示す構成において、感熱変化層111の変わりに紫外線を照射すると、黒に発色した状態から透明になるフォトクロミック材料を含んだ層を採用する。この場合、加熱を紫外線の照射に置き換えて考えることで、図9の場合と同様の光学機能を得ることができる。また、読み取り装置は、図5の構成をそのまま用いることができる。
【0093】
(4)第4の実施形態
図10には、識別媒体400が示されている。識別媒体400の図1と同じ符号の部分は、図1に関連して説明した部分と同じである。識別媒体400は、コード表示層107の非観察面側に磁性粉カプセル層401および基材402を配置した構造を備えている。なお、基材402の裏面側には、粘着層が配置されるが図示省略されている。
【0094】
磁性粉カプセル層401は、分散媒体、酸化鉄の粉、酸化チタンの粉をマイクロカプセル化したものを含む層である。この技術については、例えば特許第2841291号公報に記載されている。ここで、酸化鉄の粉は黒っぽい暗色の色を示し、酸化チタンの粉は、白っぽい白色系の色を示す。基材層402は、基材となる樹脂のフィルムである。なお、この態様では、実施形態1の場合と異なり、コード表示層107は、黒の通常インクで印刷されているものとする。
【0095】
磁性カプセル層401中の磁性カプセルは、通常の状態(外部から磁場を意図的に加えていない状態)において、酸化鉄の粉がマイクロカプセル中で分散しているので、暗色の見た目を示す。この状態が図10(A)に示されている。そして、背面側(非観察面側)に磁石403を近づけ、磁場を加えると、磁石403に酸化鉄の粉が引き寄せられ、磁性カプセル層401の非観察面側が黒くなる。またこの際、磁性カプセル層401の観察面側は、酸化チタンの粉が残るので、白っぽい色を示す状態となる。
【0096】
図11には、識別媒体400の光学機能の一例が示されている。自然光が当たった状態において、磁場を加えないで左円偏光フィルタを介して観察すると、右円偏光を反射するコレステリック液晶層102のホログラム像は見えず、コード表示層107のコード表示と磁性カプセル層401の暗色の状態が同時に観察される。この場合、磁性カプセル層401の全面暗色の背景にコード表示が紛れ、コード表示の読み取りは行えない(あるいは読み取り難い)。この状態が図11(A)に示されている。
【0097】
次に、左円偏光フィルタを介して観察している状態において、図10(B)に示すように磁石403を識別媒体400の背面側に近付けると、その側に酸化鉄の粉が移動し、磁性カプセル層401の観察面側が白っぽい状態となる。このため、図11(B)に示すように、コード表示層107のコード表示107’が見える状態となる。この状態において、コード107’の読み取りが可能となる。
【0098】
右円偏光フィルタを介して識別媒体を観察した場合、コレステリック液晶層102からの反射光が選択的に観察されるので、磁場の有無に無関係に、図11(C)に示すようにホログラム加工103に基づくホログラム103’が観察される。
【0099】
次に、円偏光フィルタを用いずに直視した場合を説明する。この場合、磁場を加えないと、図10(A)の状態となり、コレステリック液晶層102の背後が一面暗色になるので、図11(D)に示すようにホログラム像103’が選択的に見える。そして磁場を加えた場合、図10(B)の状態となり、コード表示層107のコード表示107’が見える。ただし、この際、コード表示107’は、ホログラム像103‘と同時に見える。この状態が、図11(E)に示されている。図11(E)の状態では、コード表示107’とホログラム像103’が同時に検出されるので、ホログラム像103’が邪魔となり、コード表示107’を読み取ることはできない。
【0100】
なお、図5の装置を用いて、識別媒体400の識別およびデータの読み取りを行う場合は、ステージ305の内部に電磁石を配置し、この電磁石への通電の有無で磁場の印加の有無の制御を行えるようにすればよい。
【0101】
(5)第5の実施形態
図12には、識別媒体500が示されている。識別媒体500の図1と同じ符号の部分は、図1に関連して説明した部分と同じである。識別媒体500は、コード表示層107の非観察面側にコロイドフォトニック結晶ゲル層501および基材502と配置した構造を備えている。なお、基材502の裏面側には、粘着層が配置されるが図示省略されている。
【0102】
コロイドフォトニック結晶ゲル層501は、コロイド粒子、網目状高分子、イオン液体からなる層状(シート状)の高分子ゲルである。コロイドフォトニック結晶ゲルについては、WO2009−148082号公報に記載されている。コロイド粒子としては、シリカ粒子、ポリスチレン粒子、高分子ラテックス粒子、二酸化チタン等の酸化物の粒子、金属粒子、これらの粒子の複数を組み合わせた複合粒子が挙げられる。網目状高分子は、重合性の水溶性分子が重合によって形成した高分子が架橋によって三次元ネットワーク構造を構成している網目状の高分子である。網目状高分子は、コロイド粒子の位置を固定し、維持するように機能する。網目状高分子としては、アクリルアミドや各種アクリルアミド誘導体(例えば、N−メチロールアクリルアミドやN―アクリロイソアミノプロパノール、N―イソプロピルアクリルアミド等)が利用可能である。イオン液体は、水および有機溶媒の代わりとして機能する。イオン液体は、実質的に蒸気圧が0であるため、蒸発せず、コロイドフォトニック結晶ゲル層501の高分子ゲルの状態を維持する。イオン液体としては、1−ブチル−3−メチルイミダゾリウムアセテート、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムアセテート、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムビス(トリフルオロメチルスルフォニル)イミド、1−へキシル−3−メチルイミダゾリウムクロライド等から選ばれたものが利用される。
【0103】
この例では、コロイド粒子はポリスチレンの粒子を用い、網目状高分子はアクリルアミドを用いている。イオン液体は1−ブチル−3−メチルイミダゾリウムアセテートを用いている。コロイドフォトニック結晶ゲル層501は、後述する原理により特定の中心波長の光を反射する。そして、外力を加える等して周期的に並んだコロイド粒子間の距離を変えると、反射光の波長がシフトし、見た目の色が変化する。この例では、定常状態において正面から見た場合にコロイドフォトニック結晶ゲル層501が緑に見えるように周期的に並んだコロイド粒子間の距離が調整されている。また、この例では、コロイドフォトニック結晶ゲル層501の色に合わせて、コード印刷層107の印字を同じ緑のインクで行っている。
【0104】
以下、コロイドフォトニック結晶ゲル層501の製造方法の一例を説明する。まず、コロイド粒子が網目状高分子によって固定化されたコロイド結晶ゲルを得る。次に、このコロイド結晶ゲルにイオン液体を含浸させる。この作業は、コロイド結晶ゲルをイオン液体に浸漬させることで行われる。こうしてコロイドフォトニック結晶ゲル層501の基となる材料を得る。そして、このコロイドフォトニック結晶ゲル層501の基となる材料をスライスすることで、コロイドフォトニック結晶ゲル層501を得る。
【0105】
(コロイドフォトニック結晶ゲル層の光学機能)
図13には、コロイドフォトニック結晶ゲル層501の光学機能の原理が概念的に示されている。コロイドフォトニック結晶ゲル層の501は、複数のコロイド粒子503が周期的に分布している。各コロイド粒子503からの反射光は、Bragg反射の原理により干渉し、特定の角度から見た場合に特定の干渉光が観察される(図13(A))。そして見る角度を変えると、干渉する波長が変化し、色合いが変化する。具体的には、見る角度を大きくすると、Bragg反射の条件における光路差が短くなり、より短波長側で干渉が生じ、観察される反射光は、短波長側の色に変化する。なお見る角度は、視線とコロイドフォトニック結晶ゲル層501への垂線とのなす角度として定義される。
【0106】
図13(A)に示す状態において厚み方向に圧力を加え、厚み方向に圧縮した様子が図13(B)に示されている。厚み方向に圧縮されることで、上下に隣接するコロイド粒子503間の距離が狭まり、反射される光の干渉波長が短くなる。これにより、より短波長側の光が観察される。
【0107】
ここでは、反射光の短波長側へのシフトを説明したが、全体を膨張させれば、逆に長波長側に反射光がシフトする。また、部分的に変形させた場合には、圧縮された部分からの反射光は短波長側にシフトし、伸長された部分からの反射光は長波長側にシフトする。
【0108】
また、見る角度を大きくした場合(つまり、より斜めから見ようとした場合)に干渉する光の光路差が短くなり、観察される光がより短波長側にシフトする。この現象をカラーシフト現象(ブルーシフト現象)という。このカラーシフト現象は、繰り返しの多層構造を有するコレステリック液晶層においても同様に生じる。
【0109】
(識別機能)
図14に識別媒体500を観察した場合の見た目の変化を示す。識別媒体500は、厚み方向に圧力を加えることで、コードが可視化される機能を有する。圧力は、透過する光の偏光状態を乱さない材質の透明な材料(例えば、TAC(トリアセチルセルロース))で構成される圧力板で識別媒体500を押さえつけることで行われる。また、観察やコードの読み取りは、この圧力板越しに行われる。識別媒体500からのデータを読み取り行う読み取り装置としては、図5の読み取り装置300において、識別媒体100を上方向から押す上記の圧力板を備えた構成が挙げられる。
【0110】
まず圧力を加えないで左偏光フィルタを介して、識別媒体500を観察した場合、コレステリック液晶層102からの右円偏光は観察できない。この際、コード表示層107からの反射光は観察する側に届くが、コード表示の色がその下地となるコロイドフォトニック結晶ゲル層501と同じ(この場合は、緑)であるので、コードの表示は認識できない。この様子が、図14(A)に示されている。この状態で、厚み方向に圧力を加えると、コロイドフォトニック結晶ゲル層501が厚み方向に圧縮され、コロイドフォトニック結晶ゲル層501からの反射光が短波長側にシフトする。この結果、下地の色彩との違いでコード表示層107のコード107’が浮かび上がって見える。この状態が図14(B)に示されている。当然、この状態でコード107’の読み取りが可能となる。
【0111】
右円偏光フィルタを介して識別媒体500を見ると、コード表示層107からの左円偏光の反射光は、右円偏光フィルタで遮断されるので、コレステリック液晶層102からのホログラム像103’が選択的に見える。この状態が図14(C)に示されている。光学機能層106から観察面側に出射する光は、左円偏光のみであるので、右円偏光フィルタを介して場合、圧力の有無に関係なく、図14(C)の状態が観察される。
【0112】
圧力を加えずに、且つ、円偏光フィルタを用いずに直視した場合、コレステリック液晶層102の非観察面側からの反射光は、全面一様な緑であるので、図14(D)に示すように、コレステリック液晶層102から反射されるホログラム像103’のみが観察される。この状態で圧力を加えると、コロイドフォトニック結晶ゲル層501の色が短波長側の色に変化するので、図14(E)に示すように、コード表示層107のコード表示107’が浮かび上がり、ホログラム像103’と同時に見える。この場合、ホログラム像103’が邪魔になるので、コード表示107’の読み取り(データの読み取り)は行えない。
【産業上の利用可能性】
【0113】
本発明は、真贋の識別を行うための技術に利用することができる。
【符号の説明】
【0114】
100…識別媒体、101…透明保護層、102…コレステリック液晶層、103…ホログラム加工、104…λ/4板、105…直線偏光フィルタ層、106…円偏光フィルタ層、107…コード表示層、108…通常印刷層、109…基材フィルム層、110…粘着層、111…感熱変化層、112…コード表示層、200…識別媒体、202…インターネット回線、204…アンテナ、205…携帯電話、208…カメラ、209…円偏光フィルタ、300…読み取り装置、303…ライト、304…円偏光フィルタ、305…ステージ、320…拡大レンズ、601…金属反射層、602…エンボス加工層、603…ホログラム反射層、401…磁性粉カプセル層、402…基材、403…磁石、500…識別媒体、501…コロイドフォトニック結晶ゲル層、502…基材、503…コロイド粒子。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
読み取りを行う側から、
ホログラム加工が施され、第1の旋回方向の円偏光を選択的に反射するコレステリック液晶層と、
読み取りの対象となるコードが形成され、通常は不可視であり、特定の条件で見えるコード表示層と
を順に備え、
光学読み取り装置により前記コードと同時に読み取った際に、前記コードの情報の読み取りを阻害するホログラム像が前記ホログラム加工により形成されていることを特徴とする識別媒体。
【請求項2】
前記コレステリック液晶層の側の面と反対の面から自然光を入射させた場合に、前記第1の旋回方向とは逆の第2の旋回方向の円偏光を前記コレステリック液晶層に向かって選択的に透過する光学機能層が前記コレステリック液晶層と前記コード表示層との間に配置されていることを特徴とする請求項1に記載の識別媒体。
【請求項3】
前記コードが、バーコード、2次元コード、OCRコード、ホログラムコード、カラーコードから選ばれた一または複数により構成されることを特徴とする請求項1または2に記載の識別媒体。
【請求項4】
前記コードが肉眼では認識し難い大きさを有することを特徴とする請求項3に記載の識別媒体。
【請求項5】
前記ホログラム像が前記コード表示層に形成された前記コードとは別のコードを構成していることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の識別媒体。
【請求項6】
読み取りを行う側から、
ホログラム加工が施され、第1の旋回方向の円偏光を選択的に反射するコレステリック液晶層と、
読み取りの対象となるコードが形成され、通常は不可視であり、特定の条件で見えるコード表示層と
を順に備え、
光学読み取り装置により前記コードと同時に読み取った際に、前記コードの情報の読み取りを阻害するホログラム像が前記ホログラム加工により形成されている識別媒体からのデータの読み取り方法であって、
光学読取装置により前記第1の旋回方向の円偏光を遮断する円偏光フィルタを介して前記コードの選択的な読み取りが行われ、
前記読み取りは、前記識別媒体への特定の波長領域の光を照射、前記識別媒体に温度変化を与える、拡大レンズを介して前記識別媒体を観察する、前記識別媒体に磁場を印加する、前記識別媒体に力を加える、の少なくとも一つの状態で行われることを特徴とするデータの読み取り方法。
【請求項7】
光学読み取り装置により前記コレステリック液晶層の前記ホログラムと前記コードとの同時読み取りが行われ、
前記コードの選択的な読み取りおよび前記ホログラムと前記コードとの同時読み取りに基づき、前記識別媒体の真贋の判定が行われることを特徴とする請求項6に記載のデータの読み取り方法。
【請求項8】
請求項1〜5のいずれか一項に記載の識別媒体の真贋を判定する装置であって、
前記第1の旋回方向の円偏光を遮断する円偏光フィルタを介して前記コードを選択的に読み取る読み取り手段と、
前記識別媒体に特定の波長領域の光を照射する光照射手段、前記識別媒体に温度変化を与える温度変化手段、拡大レンズを介して前記識別媒体を観察可能とする手段、前記識別媒体に磁場を印加する磁場印加手段、前記識別媒体に力を加える手段の少なくとも一つを備えることを特徴とする識別装置。
【請求項9】
請求項1〜5のいずれか一項に記載の識別媒体を製造する方法であって、
前記コード表示層を印刷により形成する工程と、
前記コード表示層と前記コレステリック液晶層とを一体化する工程と
を備えることを特徴とする識別媒体の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2012−22381(P2012−22381A)
【公開日】平成24年2月2日(2012.2.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−157849(P2010−157849)
【出願日】平成22年7月12日(2010.7.12)
【出願人】(000004640)日本発條株式会社 (1,048)
【Fターム(参考)】