識別媒体
【課題】改竄、偽造、複製が容易ではない識別媒体を提供する。
【解決手段】識別媒体1は、対象物11に積み重ねられる第1層121と第2層122からなる。第1層121には、インクで印刷された2次元コードが形成されている。第2層122には、所定の波長のレーザビームの反射率が所定の大きさの素材で印刷された2次元コードが形成されている。第1層121に印刷されるインクの色は、第2層122に印刷される素材の色と条件等色に設定される。また、第2層122にて素材が印刷される位置は、第2層122を第1層121に積み重ねた状態で、第1層121にてインクが印刷されていない位置の上方に設定される。
【解決手段】識別媒体1は、対象物11に積み重ねられる第1層121と第2層122からなる。第1層121には、インクで印刷された2次元コードが形成されている。第2層122には、所定の波長のレーザビームの反射率が所定の大きさの素材で印刷された2次元コードが形成されている。第1層121に印刷されるインクの色は、第2層122に印刷される素材の色と条件等色に設定される。また、第2層122にて素材が印刷される位置は、第2層122を第1層121に積み重ねた状態で、第1層121にてインクが印刷されていない位置の上方に設定される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、商品パッケージ、チケット、カード、金券、証書などの対象物の真正性を識別するための識別媒体に関する。
【背景技術】
【0002】
実生活において、商品パッケージ、チケット、カード、金券、証書などの対象物に識別媒体を貼り付けて、その識別媒体を用いて対象物の真正性を識別する技術は日常的に利用されている。例えば、所定の認証情報をホログラムに記録したシートを対象物に予め貼り付けておき、対象物を使用するときに読取装置でホログラムに記録された情報を読み取り、読み取った情報を照合することで対象物の真正性を識別する技術が知られている。
【0003】
識別媒体は対象物の真正性を識別するために使用されるため、識別媒体の改竄、偽造、複製が容易ではないことが重要である。上記の例のように、識別媒体としてホログラムを利用する場合、悪意の第三者がホログラムの悪用を試みるとすれば、以下の方法が考えられる。(1)ホログラムを形成したシートを真正の対象物から剥がして、偽造又は複製した対象物に貼り付ける。(2)真正の対象物に貼り付けられたシートに形成されたホログラム自体を偽造又は複製して、偽造又は複製した対象物に貼り付ける。
【0004】
特許文献1,2はホログラムの悪用を防止する技術を開示している。具体的には、特許文献1では、ホログラムを形成したシートを対象物から剥がすと、シートが不規則に破れて、ホログラムを物理的に破壊する技術が提案されている。特許文献2では、ホログラムを形成したシートを対象物から剥がすと、そのシートの接着性が著しく低下する技術が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第3570593号
【特許文献2】実開平5−16300号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1の技術では、ホログラムを形成したシートを対象物から剥がすと、ホログラムを物理的に破壊するので、剥離したホログラムの再利用を防止することができる。また、特許文献1の技術では、ホログラムを形成したシートを対象物から剥がすと、不規則に破れたシートの一部が対象物に残るので、悪意の第三者がホログラムの悪用を試みた痕跡を容易に発見することができる。それゆえ、この技術はホログラムの悪用方法(1)への対応策として有効である。しかしながら、この技術は、ホログラム自体の偽造又は複製を困難にする技術ではないので、ホログラムの悪用方法(2)への対応策としては有効ではない。
【0007】
同様に、特許文献2の技術では、ホログラムを形成したシートを対象物から剥がすと、そのシートの接着性が著しく低下するので、剥離したホログラムの再利用を防止することができる。それゆえ、この技術はホログラムの悪用方法(1)への対応策として有効である。しかしながら、この技術は、ホログラム自体の偽造又は複製を困難にする技術ではないので、ホログラムの悪用方法(2)への対応策としては有効ではない。
【0008】
本発明は上記課題に解決するためになされたものであり、改竄、偽造、複製が容易ではない識別媒体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の第1態様によれば、対象物(11)の真正性を識別するための識別媒体(12,12a,12b,12c,12d,12e)であって、前記対象物(11)に積み重ねられる複数の層(121,121a,121b,121c,121d,121e,122,122a,122b,122c,122d,122e,124d,124e)を備え、各層には、カラー2次元コード又はホログラムが形成されていることを特徴とする識別媒体(12,12a,12b,12c,12d,12e)を提供する。
【0010】
本発明の第2態様によれば、第1態様に係る識別媒体(12,12a,12b,12c,12d,12e)であって、各層には、白色光又は所定の波長のレーザビームによって読み取られる、前記対象物(11)の真正性を識別する情報を記録したカラー2次元コード又はホログラムが形成されている。
【0011】
本発明の第3態様によれば、第1態様に係る識別媒体(12,12d)であって、最上層(122,124d)の下方に位置する層(121,121d)には、前記対象物(11)の真正性を識別する情報を記録したカラー2次元コードが形成されており、前記最上層(122,124d)には、前記最上層(122,124d)の下方に位置する層(121,121d)の前記カラー2次元コードを隠蔽するカラー2次元コードが形成されている。
【0012】
本発明の第4態様によれば、第1態様に係る識別媒体12,12a,12b,12c,12d,12e)であって、各層を直下の層に貼り付ける接着剤(123,123a,123b,123c,123d_1,123d_2,123e_1,123e_2)を更に備え、前記接着剤(123,123a,123b,123c,123d_1,123d_2,123e_1,123e_2)は、各層を直下の層から剥がすと、前記層と前記直下の層との再接着を妨げるような素材からなる。
【0013】
本発明の第5態様によれば、対象物(11)の真正性を識別するための識別媒体(12,12a,12b,12c,12d,12e)であって、前記対象物(11)に設けられる基層(121,121a,121b,121c,121d,121e)と、前記基層(121,121a,121b,121c,121d,121e)に積み重ねられる複数の層(122,122a,122b,122c,122d,122e,124d,124e)と、を備え、前記基層(121,121a,121b,121c,121d,121e)には、インクで印刷されたカラー2次元コード、又は所定の波長のレーザビームを所定の方向に回折させるホログラムが形成されており、前記複数の層(122,122a,122b,122c,122d,122e,124d,124e)の各々には、所定の波長のレーザビームの反射率が所定の大きさの素材で印刷されたカラー2次元コード、又は所定の波長のレーザビームを所定の方向に回折させるホログラムが形成されていることを特徴とする識別媒体を提供する。
【0014】
本発明の第6態様によれば、対象物(11)の真正性を識別するための識別媒体(22,22a)であって、前記対象物(11)に積み重ねられる複数の層(221,221a,222,222a,224a)を備え、前記複数の層(221,221a,222,222a,224a)のうちの少なくとも1つの層(221,222a)は、前記対象物(11)の真正性を識別する情報を記録した凹凸面を有する第1部位(221_1,222a_1)と、前記凹凸面に噛み合う面を有する第2部位(221_2,222a_2)とに分離可能な情報層であり、前記情報層から直上の層(222,224a)が剥がされるとき、前記第2部位(221_2,222a_2)は前記直上の層(222,224a)と一緒に剥がされて、前記第1部位(221_1,222a_1)の凹凸面が出現することを特徴とする識別媒体を提供する。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、改竄、偽造、複製が容易ではない識別媒体を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の第1実施形態に係る読取装置の構成を示すブロック図である。
【図2】本発明の第1実施形態に係る識別媒体の構成を示す断面図である。
【図3】図2に示した識別媒体の第1層と第2層の1次元コードのビット列を示した説明図である。
【図4】本発明の第1実施形態に係る識別媒体の第1層に形成された2次元コードの平面図である。
【図5】本発明の第1実施形態に係る識別媒体の第2層に形成された2次元コードの平面図である。
【図6】本発明の第1実施形態に係る識別媒体の第1層と第2層を重ね合わせた状態での識別媒体の2次元コードの平面図である。
【図7】各波長のレーザビームをシリコン化合物の薄膜に照射したときのレーザビームの反射率を示したグラフである。
【図8】本発明の第1実施形態に係る識別媒体の読取方法を説明するフローチャートである。
【図9】各波長のレーザビームをシリコン化合物の薄膜に照射したときのレーザビームの透過率を示したグラフである。
【図10】シリコン化合物の各膜厚に対する青色レーザビームの反射率と赤色レーザビームの透過率を示したグラフである。
【図11】本発明の第1実施形態の第1変形例に係る識別媒体の構成を示す断面図である。
【図12】本発明の第1実施形態の第2変形例に係る識別媒体の構成を示す断面図である。
【図13】本発明の第1実施形態の第3変形例に係る識別媒体の構成を示す断面図である。
【図14】本発明の第1実施形態の第4変形例に係る識別媒体の構成を示す断面図である。
【図15】本発明の第1実施形態の第5変形例に係る識別媒体の構成を示す断面図である。
【図16】本発明の第2実施形態に係る識別媒体の構成を示す断面図である。
【図17】図16に示した識別媒体の第2層を第1層から分離した前後における、識別媒体の1次元コードのビット列を示した説明図である。
【図18】本発明の第2実施形態の第1変形例に係る識別媒体の構成を示す断面図である。
【図19】図18に示した識別媒体の第3層を第2層から分離した前後における、識別媒体の1次元コードのビット列を示した説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下に、本発明の実施形態を図面を参照して説明する。なお、図面に記載の符号について、同一又は類似の部位には同一又は類似の符号を付している。また、図面に記載の部材は模式的なものであり、現実のものとは異なる。
【0018】
ここで、以下の実施形態は本発明の技術的思想を具体化するための識別媒体を例示するものであり、本発明の技術的思想は各構成要素の配置等を以下の実施形態に特定するものではない。本発明の技術的思想は、特許請求の範囲内で種々の変更を加えることができる。
【0019】
(第1実施形態)
図1は、本実施形態に係る読取装置1の構成を示すブロック図である。読取装置1は、真正性が識別されるべき対象物11に含まれる識別媒体12から情報を読み取り、読み取った情報を照合して照合結果を表示する。図1に示すように、読取装置1は、センサ2、制御部3、駆動部4、搬送機構5、照射部6、撮像部7、信号処理部8、識別部9、表示部10を備えている。
【0020】
センサ2は、対象物11が読取装置1に挿入されたことを検出すると、検出信号を制御部3に送信する。センサ2の個数は必要に応じて決められ1つ以上設けられている。制御部3は、駆動部4、照射部6、撮像部7、信号処理部8、表示部10の動作を制御し、各種の演算処理やデータの入出力等の処理を実行するCPU、CPUを動作させるためのプログラム等を格納するROM、CPUのワーク領域として使用されるRAM(いずれも図示略)から構成される。制御部3は、センサ2から検出信号を受信すると、駆動部4を介して搬送機構5を駆動し、対象物11を順方向(図中の矢印方向)に所定の距離だけ搬送させる。
【0021】
照射部6は、所定の波長(例えば、405nm又は650nm)のレーザビームを対象物11の識別媒体12に所定の角度(入射角)αで照射する。照射部6は、波長405nmのレーザビームを照射する場合には青色レーザを有し、波長650nmのレーザビームを照射する場合には赤色レーザを有している。なお、青色レーザと赤色レーザの代わりに波長可変レーザを使用してもよい。制御部3は、レーザビームの出力パワーを制御し、所定のタイミングで照射部6からレーザビームを照射させる。
【0022】
識別媒体12の裏面に設けられた反射膜により、入射角αで入射したレーザビームは出射角α(0次光)に対して回折角±β(1次光)の回折光として出射する。いま、α+β=90°となるように入射角と回折角を調整すれば、入射角αで照射したレーザビームを識別媒体12の垂直方向に設置したCCDカメラを有する撮像部7で受光し、2次元パターンを撮像することができる。
【0023】
制御部3は同期信号を撮像部7に出力し、所定のタイミングで撮像部7に2次元パターンを撮像させる。一方、白色光(太陽光)を照射して読み取る場合には、撮像部7は通常のCCDカメラとして2次元パターンを一括撮像する。
【0024】
信号処理部8は、撮像部7からの出力信号を受信し、撮像された2次元パターンに所定の画像処理(例えば、ノイズ処理、エッジ処理など)を施す。制御部3は、上記の同期信号を信号処理部8にも出力し、撮像部7での撮像と信号処理部8での信号処理とを同期させる。
【0025】
識別部9は、信号処理部8からの出力信号を受信し、処理された2次元パターンと予め記憶されている認証パターン(認証情報)とを照合する。なお、制御部3、信号処理部8、識別部9を単一のCPU、ROM、RAMで構成してもよい。また、識別部9を読取装置1から分離して、有線LAN、無線LAN、通信回線、通信ケーブル等の伝送経路を介して、識別装置として読取装置1に接続してもよい。
【0026】
制御部3は、識別部9からの出力信号を受信し、照合結果を表示部10に表示する。なお、制御部3は、照合結果を表示する代わりに、照合結果に応じた音声や音色を出力してもよい。その後、制御部3は、駆動部4を介して搬送機構5を駆動し、読取装置1から対象物11を排出する。読取装置1が照合手続に続いて他の手続を行う場合、制御部3は、照合結果に基づいて対象物11が真正のものであると判定すると、照合結果を表示部10に表示せずに次の手続を自動的に実行してもよい。
【0027】
次に、識別媒体12の構成を説明する。
【0028】
図2は、本実施形態に係る識別媒体12の構成を示す断面図である。図3は、図2に示した識別媒体12の第1層121と第2層122の1次元コードのビット列を示した説明図である。なお、着色箇所を”1”に無着色箇所を”0”にコードしている。図4は、本実施形態に係る識別媒体12の第1層121に形成された2次元コードの平面図である。図5は、本実施形態に係る識別媒体12の第2層122に形成された2次元コードの平面図である。図6は、本実施形態に係る識別媒体12の第1層121と第2層122を重ね合わせた状態での識別媒体12の2次元コードの平面図である。なお、図3の第1層121の1次元コード(00101100100011100111001)は図4のA−A断面に対応しており、図3の第2層122の1次元コード(11010011011100011000110)は図5のB−B断面に対応している。
【0029】
図2に示すように、識別媒体12は第1層121と第2層122からなる。第1層121は、透明なポリカーボネート(PC)からなり、対象物11の表面に設けられる。図4に示すように、第1層121には、インク(例えば、顔料)で印刷された2次元コードが形成されている。第2層122は、透明なポリカーボネート(PC)からなり、接着剤123で第1層121に貼り付けられて第1層121に積層される。図5に示すように、第2層122には、照射部6から照射される所定の波長のレーザビームの反射率が所定の大きさの素材で印刷された2次元コードが形成されている。例えば、照射部6が波長405nmのレーザビームを照射する場合、約35%の反射率を有する素材で2次元コードが形成され、照射部6が波長650nmのレーザビームを照射する場合、約20%の反射率を有する素材で2次元コードが形成される(図7参照)。接着剤123は、第2層122を第1層121に貼り付けた後に、第2層122を第1層121から剥がすと、第1層121と第2層122との再接着を妨げるような素材からなる。加えて、接着剤123は、第1層121と第2層122の屈折率に近い屈折率を有するならばより好ましい。
【0030】
本実施形態では、第1層121の2次元コードは特定の情報を含んでおり、例えば、QRコード、データマトリックスコード、PDF417、マキシコードなどである。第2層122の2次元コードは第1層121の2次元コードを隠蔽するためのダミーコードである。第1層121に印刷されるインクの色は、第2層122に印刷される素材の色と条件等色に設定される。また、第2層122にて素材が印刷される位置は、第2層122を第1層121に積層させた状態で、第1層121にてインクが印刷されていない位置の上方に設定される。それゆえ、図6に示すように、第1層121と第2層122を重ね合わせた状態で、上方から識別媒体12を見ると、識別媒体12は、第2層122に印刷される素材の色で一面塗られているように見えるため、目視で各層を判別することは困難である。
【0031】
例えば、波長405nmのレーザビーム(青色レーザビーム)が照射部6から照射される場合、第2層122の2次元コードを形成する素材として、薄茶色のシリコン化合物(例えば、SiN、SiC)が採用される。図7に示すように、シリコン化合物は、青色レーザビームに対して所定の大きさの反射率(約35%)を有するので、シリコン化合物が第2層122の2次元コードを形成する素材として好適である。第2層122の2次元コードを形成するシリコン化合物は薄茶色を有するので、第1層121の2次元コードは薄茶色のインクで形成される。
【0032】
次に、読取装置1による識別媒体12の読取方法を説明する。
【0033】
図8は、本実施形態に係る識別媒体12の読取方法を説明するフローチャートである。最初に読取装置1が初期化される(ステップS1)。読取装置1が初期化されると、制御部3は、センサ2からの検出信号に基づき、対象物11が読取装置1に挿入されたか否かを判断する(ステップS2)。制御部3は、対象物11が挿入されたと判断すると、駆動部4を介して搬送機構5を駆動し、対象物11を順方向に所定の距離だけ搬送させる(ステップS3)。一方、制御部3は、対象物11が挿入されていないと判断すると、ステップS2の処理に戻る。
【0034】
制御部3は、対象物11が所定の距離だけ搬送されると、照射部6から白色光又は所定の波長のレーザビームを対象物11の識別媒体12に照射させる(ステップS4)。そして、制御部3は、同期信号を撮像部7と信号処理部8に出力して、所定のタイミングで、識別媒体12からの反射光により投影される2次元コードを撮像部7に撮像させる(ステップS5)。信号処理部8は、撮像部7からの出力信号を受信すると、撮像された2次元コードに所定の画像処理を施す(ステップS6)。識別部9は、信号処理部8からの出力信号を受信すると、処理された2次元パターンと予め記憶されている認証パターン(認証情報)とを照合する(ステップS7)。制御部3は、識別部9からの出力信号を受信すると、照合結果を表示部10に表示する(ステップS8)。
【0035】
次に、上記の読取方法を用いた対象物11の真正性を識別する方法を説明する。
【0036】
本実施形態では、第1層121の2次元コード(図4)に対象物11の認証情報が記録してあり、第2層122の2次元コード(図5)に上記の認証情報を隠蔽するためのダミーコードが記録してあることを管理者が予め知っていると想定する。
【0037】
管理者は、対象物11の真正性を確認するとき、第2層122を第1層121から剥がした状態で対象物11を読取装置1に挿入する。そして、読取装置1は、第1層121の2次元コードに記録された認証情報と識別部9に予め記憶された認証情報とを照合して、対象物11の真正性を識別する。読取装置1が、複数の識別媒体12から認証情報を読み取り、対象物11の真正性を識別する場合には、対象物11を適宜移動させて上記の認証を繰り返す。
【0038】
読取装置1は、認証時に、白色光又は任意の波長のレーザビームを使用して第1層121の2次元コードに記録された認証情報を読み取る。なお、読取装置1が、第2層122の2次元コードを形成する素材を透過する割合が所定の大きさの波長のレーザビームを使用して第1層121の2次元コードに記録された認証情報を読み取る場合には、第2層122を第1層121から剥がさなくてもよい。例えば、第2層122の2次元コードを形成する素材としてシリコン化合物を採用する場合、図9に示すように、シリコン化合物は、波長650nmのレーザビーム(赤色レーザビーム)に対して所定の大きさの透過率(約80%)を有するので、読取装置1は、第2層122を透過する赤色レーザビームを使用して第1層121の2次元コードに記録された認証情報を直接読み取る。
【0039】
本認証の使用例として、1回限り有効の対象物(例えば、商品パッケージ、チケット、カード、金券、証書)の認証が挙げられる。対象物11の認証情報を記録した第1層121の2次元コードを外部から視認できないので、悪意の第三者に対象物11の認証情報を気付かせないことができる。それゆえ、識別媒体12は、改竄、偽造、複製が容易ではない識別媒体となる。
【0040】
一方、第1層121の2次元コードと第2層122の2次元コードを重ね合わせることにより生成される2次元パターンに対象物11の認証情報が記録されている場合には、2段階の認証が可能である。なお、上記の2次元パターンに記録された情報と、第1層121の2次元コードに記録された情報を組み合わせることにより、1つの認証情報が得られるとしても良い。
【0041】
2段階認証では、管理者は、対象物11の真正性を確認するとき、第2層122を第1層121に貼り付けた状態で対象物11を読取装置1に挿入する。そして、読取装置1は、第1層121の2次元コードと第2層122の2次元コードを重ね合わせることにより生成される2次元パターンに記録された認証情報と識別部9に予め記憶された第1認証情報とを照合して、対象物11の真正性を識別する1回目の認証を行う。
【0042】
1回目の認証が終わると、読取装置1は、照合結果を表示して対象物11を排出する。管理者は、対象物11の真正性を確認すると、第2層122を第1層121から剥がした状態で対象物11を読取装置1に再挿入する。なお、読取装置1は、識別媒体12の2次元コードの照合に成功すると、対象物11を排出せずに、所定の機構(図示略)を用いて第2層122を第1層121から剥がしてもよい。そして、読取装置1は、第1層121の2次元コードに記録された認証情報と識別部9に予め記憶された第2認証情報とを照合して、対象物11の真正性を識別する2回目の認証を行う。読取装置1が、複数の識別媒体12から認証情報を読み取り、対象物11の真正性を識別する場合には、対象物11を適宜移動させて2段階認証を繰り返す。また、通常は、第1層121の2次元コードと第2層122の2次元コードを重ね合わせることにより生成される2次元パターンのみを用いて対象物11の真正性を識別し、上記の2次元パターンが改竄、偽造、又は複製された疑いがある場合に、第2層122を第1層121から剥がして、第1層121の2次元コードを用いて対象物11の真正性を識別してもよい。
【0043】
2段階認証では、読取装置1は、白色光又は第2層122の2次元コードを形成する素材で反射する割合が所定の大きさの波長のレーザビームを使用して1回目と2回目の認証を行う。例えば、第2層122の2次元コードを形成する素材としてシリコン化合物を採用する場合、読取装置1は、白色光又は青色レーザビームを使用して1回目と2回目の認証を行う。なお、1回目の認証において、読取装置1が第2層122の2次元コードに記録された情報のみを読み取る場合には、照射部6から照射されるレーザビームの出力パワー、照射部6と識別媒体12の間の距離、撮像部7と識別媒体12の間の距離、各層の厚さは、第1層121からの反射光によって生じる明暗パターンに対して、第2層122からの反射光による2次元コードを撮像部7が識別可能に撮像できるように設定されている。
【0044】
また、シリコン化合物の各膜厚に対する青色レーザビームの反射率と赤色レーザビームの透過率は図10のように変化する。例えば、シリコン化合物の膜厚15nmに対する青色レーザビームの反射率と赤色レーザビームの透過率はそれぞれ約30%と約80%である。それゆえ、第2層122の2次元コードを形成する素材として薄い膜厚(例えば、15nm)のシリコン化合物を採用し、かつ、照射部6から照射されるレーザビームの出力パワー、照射部6と識別媒体12の間の距離、撮像部7と識別媒体12の間の距離を、第1層121からの反射光によって生じる明暗パターンに対して、第2層122からの反射光による2次元コードを撮像部7が識別可能に撮像できるように設定すれば、第2層122を第1層121から剥がすことなく、読取装置1は、青色レーザビームを照射して第2層122の2次元コードに記録された情報を読み取り、かつ、赤色レーザビームを照射して第1層121の2次元コードに記録された情報を読み取ることができる。
【0045】
2段階認証の使用例として、1回限り有効の対象物(例えば、商品パッケージ、チケット、カード、金券、証書)の認証が挙げられる。対象物11が商品パッケージの場合、最初に、顧客は陳列された商品パッケージに貼り付けられた第1層121の2次元コードと第2層122の2次元コードを重ね合わせることにより生成される2次元パターンを用いて商品パッケージの真正性を確認する。そして、その商品パッケージを実際に購入する際に、店員は第2層122を第1層121から剥がして、第1層121の2次元コードを用いて商品パッケージの真正性を確認する。これにより、購入対象の商品パッケージに対して、顧客と店員による相互照合を行うことで、偽造品の被害リスクを減らすことができる。また、対象物11がチケットの場合、最初に、会場の入口にて、主催者はチケットに貼り付けられた第1層121の2次元コードと第2層122の2次元コードを重ね合わせることにより生成される2次元パターンを用いてチケットの真正性を確認する。チケットが真正であれば、主催者は参加者の入場を許可して、第2層122を第1層121から剥がす。そして、参加者が着席する際に、主催者は第1層121の2次元コードを用いてチケットの真正性を再度確認する。これにより、チケットに対して、主催者による二重照合を行うことで、不正入場やチケット偽造の被害リスクを減らすことができる。それゆえ、識別媒体12は、改竄、偽造、複製が容易ではない識別媒体となる。
【0046】
(第1変形例)
本実施形態の第1変形例を説明する。
【0047】
図11は、本変形例に係る識別媒体12aの構成を示す断面図である。図11に示すように、識別媒体12aは第1層121aと第2層122aからなる。第1層121aは、白濁又は透明な素材からなり、対象物11の表面に設けられる。第2層122aは、白濁又は透明な素材からなり、接着剤123aで第1層121aに貼り付けられて第1層121aに積層される。第1層121aと第2層122aのそれぞれの層には、照射部6から所定の波長のレーザビームを入射角αで識別媒体12aに照射すると、回折角βの方向に回折光を生成させるホログラムが形成されている。上記のホログラムは、例えばコンピュータ・ジェネレイテッド・ホログラム(CGH)である。なお、各層は、異なる波長のレーザビームにより互いに異なる回折角を生成させる複数のホログラムを有してもよい。また、第2層122aは、認証時に第2層122aに照射されるレーザビームの透過率が所定の小ささの素材から構成されても良い。これにより、認証時に、第1層121aからの反射光によって生じる明暗パターンを抑えることができる。接着剤123aは、第2層122aを第1層121aに貼り付けた後に、第2層122aを第1層121aから剥がすと、第1層121aと第2層122aとの再接着を妨げるような素材からなる。
【0048】
次に、対象物11の真正性を識別する方法を説明する。
【0049】
本変形例では、第1層121aと第2層122aのそれぞれのホログラムには、1つ以上の認証情報が記録してあることを管理者が予め知っていると想定する。なお、第1層121aのホログラムに記録された情報と、第2層122aのホログラムに記録された情報を組み合わせることにより、1つの認証情報が得られるとしても良い。
【0050】
管理者は、対象物11の真正性を確認するとき、対象物11を読取装置1に挿入する。そして、読取装置1は、第2層122aのホログラムから回折光を生じさせる波長のレーザビームを使用して、第2層122aのホログラムに記録された認証情報を読み取り、第2層122aのホログラムに記録された認証情報と識別部9に予め記憶された第1認証情報とを照合して、対象物11の真正性を識別する1回目の認証を行う。ここで、照射部6から照射されるレーザビームの出力パワー、照射部6と識別媒体12aの間の距離、撮像部7と識別媒体12aの間の距離、各層の厚さは、1回目の認証において、第1層121aからの反射光によって生じる明暗パターンに対して、第2層122aからの回折光を撮像部7が識別可能に撮像できるように設定されている。なお、第2層122aが、1回目の認証時に第2層122aに照射されるレーザビームの透過率が所定の小ささの素材から構成される場合には、照射部6から照射されるレーザビームの出力パワー、照射部6と識別媒体12aの間の距離、撮像部7と識別媒体12aの間の距離、各層の厚さは、第2層122aからの反射光によって生じる明暗パターンに対して、第2層122aからの回折光を撮像部7が識別可能に撮像できるように設定される。
【0051】
1回目の認証が終わると、読取装置1は、照合結果を表示して対象物11を排出する。管理者は、対象物11の真正性を確認すると、第2層122aを第1層121aから剥がした状態で対象物11を読取装置1に再挿入する。なお、読取装置1は、第2層122aのホログラムに記録された認証情報の照合に成功すると、対象物11を排出せずに、所定の機構(図示略)を用いて第2層122aを第1層121aから剥がしてもよい。そして、読取装置1は、第1層121aのホログラムから回折光を生じさせる波長のレーザビームを使用して、第1層121aのホログラムに記録された認証情報を読み取り、第1層121aのホログラムに記録された認証情報と識別部9に予め記憶された第2認証情報とを照合して、対象物11の真正性を識別する2回目の認証を行う。読取装置1が、複数の識別媒体12aから認証情報を読み取り、対象物11の真正性を識別する場合には、対象物11を適宜移動させて上記の認証を繰り返す。なお、通常は、第2層122aのホログラムのみを用いて対象物11の真正性を識別し、第2層122aのホログラムが改竄、偽造、又は複製された疑いがある場合に、第2層122aを第1層121aから剥がして、第1層121aのホログラムを用いて対象物11の真正性を識別してもよい。
【0052】
(第2変形例)
本実施形態の第2変形例を説明する。
【0053】
図12は、本変形例に係る識別媒体12bの構成を示す断面図である。図12に示すように、識別媒体12bは第1層121bと第2層122bからなる。第1層121bは、透明なポリカーボネート(PC)からなり、対象物11の表面に設けられる。第1層121bには、インク(例えば、顔料)で印刷された2次元コードが形成されている。第2層122bは、白濁又は透明な素材からなり、接着剤123bで第1層121bに貼り付けられて第1層121bに積層される。第2層122bには、照射部6から所定の波長のレーザビームを入射角αで識別媒体12bに照射すると、回折角βの方向に回折光を生成させるホログラムが形成されている。上記のホログラムは、例えばコンピュータ・ジェネレイテッド・ホログラム(CGH)である。なお、第2層122bは、異なる波長のレーザビームにより互いに異なる回折角を生成させる複数のホログラムを有してもよい。また、第2層122bは、認証時に第2層122bに照射されるレーザビームの透過率が所定の小ささの素材から構成されても良い。これにより、認証時に、第1層121bからの反射光によって生じる明暗パターンを抑えることができる。この場合、第1層121bに印刷されるインクの色を第2層122bの色に近い色になるように設定すれば、第2層122bを第1層121bに積層した状態で、第2層122bは第1層121bの2次元コードを隠蔽することができる。接着剤123bは、第2層122bを第1層121bに貼り付けた後に、第2層122bを第1層121bから剥がすと、第1層121bと第2層122bとの再接着を妨げるような素材からなる。
【0054】
次に、対象物11の真正性を識別する方法を説明する。
【0055】
本変形例では、第1層121bの2次元コードには1つの認証情報が記録してあり、第2層122bのホログラムには1つ以上の認証情報が記録してあることを管理者が予め知っていると想定する。なお、第1層121bの2次元コードに記録された情報と、第2層122bのホログラムに記録された1つ以上の情報を組み合わせることにより、1つの認証情報が得られるとしても良い。
【0056】
管理者は、対象物11の真正性を確認するとき、対象物11を読取装置1に挿入する。そして、読取装置1は、第2層122bのホログラムから回折光を生じさせる波長のレーザビームを使用して、第2層122bのホログラムに記録された認証情報を読み取り、第2層122bのホログラムに記録された認証情報と識別部9に予め記憶された第1認証情報とを照合して、対象物11の真正性を識別する1回目の認証を行う。ここで、照射部6から照射されるレーザビームの出力パワー、照射部6と識別媒体12bの間の距離、撮像部7と識別媒体12bの間の距離、各層の厚さは、1回目の認証において、第1層121bからの反射光によって生じる明暗パターンに対して、第2層122bからの回折光を撮像部7が識別可能に撮像できるように設定されている。なお、第2層122bが、1回目の認証時に第2層122aに照射されるレーザビームの透過率が所定の小ささの素材から構成される場合には、照射部6から照射されるレーザビームの出力パワー、照射部6と識別媒体12bの間の距離、撮像部7と識別媒体12bの間の距離、各層の厚さは、第2層122bからの反射光によって生じる明暗パターンに対して、第2層122bからの回折光を撮像部7が識別可能に撮像できるように設定される。
【0057】
1回目の認証が終わると、読取装置1は、照合結果を表示して対象物11を排出する。管理者は、対象物11の真正性を確認すると、第2層122bを第1層121bから剥がした状態で対象物11を読取装置1に再挿入する。なお、読取装置1は、第2層122bのホログラムに記録された認証情報の照合に成功すると、対象物11を排出せずに、所定の機構(図示略)を用いて第2層122bを第1層121bから剥がしてもよい。そして、読取装置1は、白色光又は1回目の認証で使用した波長と同じ又は異なる波長のレーザビームを使用して、第1層121bの2次元コードに記録された認証情報を読み取り、第1層121bの2次元コードに記録された認証情報と識別部9に予め記憶された第2認証情報とを照合して、対象物11の真正性を識別する2回目の認証を行う。読取装置1が、複数の識別媒体12bから認証情報を読み取り、対象物11の真正性を識別する場合には、対象物11を適宜移動させて上記の認証を繰り返す。なお、通常は、第2層122bのホログラムのみを用いて対象物11の真正性を識別し、第2層122bのホログラムが改竄、偽造、又は複製された疑いがある場合に、第2層122bを第1層121bから剥がして、第1層121bの2次元コードを用いて対象物11の真正性を識別してもよい。
【0058】
(第3変形例)
本実施形態の第3変形例を説明する。
【0059】
図13は、本変形例に係る識別媒体12cの構成を示す断面図である。図13に示すように、識別媒体12cは第1層121cと第2層122cからなる。第1層121cは、白濁又は透明な素材からなり、対象物11の表面に設けられる。第1層121cには、照射部6から所定の波長のレーザビームを入射角αで識別媒体12cに照射すると、回折角βの方向に回折光を生成させるホログラムが形成されている。上記のホログラムは、例えばコンピュータ・ジェネレイテッド・ホログラム(CGH)である。なお、第1層121cは、異なる波長のレーザビームにより互いに異なる回折角を生成させる複数のホログラムを有してもよい。第2層122cは、透明なポリカーボネート(PC)からなり、接着剤123cで第1層121cに貼り付けられて第1層121cに積層される。第2層122cには、照射部6から照射される所定の波長のレーザビームの反射率が所定の大きさの素材で印刷された2次元コードが形成されている。接着剤123cは、第2層122cを第1層121cに貼り付けた後に、第2層122cを第1層121cから剥がすと、第1層122cと第2層122cとの再接着を妨げるような素材からなる。
【0060】
次に、対象物11の真正性を識別する方法を説明する。
【0061】
本変形例では、第1層121cのホログラムには1つ以上の認証情報が記録してあり、第2層122cの2次元コードには1つの認証情報が記録してあることを管理者が予め知っていると想定する。なお、第1層121cのホログラムに記録された1つ以上の情報と、第2層122cの2次元コードに記録された情報を組み合わせることにより、1つの認証情報が得られるとしても良い。
【0062】
管理者は、対象物11の真正性を確認するとき、対象物11を読取装置1に挿入する。そして、読取装置1は、第2層122cの2次元コードを形成する素材で反射する割合が所定の大きさの波長のレーザビームを使用して、第2層122cの2次元コードに記録された認証情報を読み取り、第2層122cの2次元コードに記録された認証情報と識別部9に予め記憶された第1認証情報とを照合して、対象物11の真正性を識別する1回目の認証を行う。ここで、照射部6から照射されるレーザビームの出力パワー、照射部6と識別媒体12cの間の距離、撮像部7と識別媒体12cの間の距離、各層の厚さは、1回目の認証において、第1層121cからの反射光によって生じる明暗パターンに対して、第2層122cからの反射光による2次元コードを撮像部7が識別可能に撮像できるように設定されている。
【0063】
1回目の認証が終わると、読取装置1は、照合結果を表示して対象物11を排出する。管理者は、対象物11の真正性を確認すると、第2層122cを第1層121cから剥がした状態で対象物11を読取装置1に再挿入する。なお、読取装置1は、第2層122cの2次元コードに記録された認証情報の照合に成功すると、対象物11を排出せずに、所定の機構(図示略)を用いて第2層122cを第1層121cから剥がしてもよい。そして、読取装置1は、第1層121cのホログラムから回折光を生じさせる波長のレーザビームを使用して、第1層121cのホログラムに記録された認証情報を読み取り、第1層121cのホログラムに記録された認証情報と識別部9に予め記憶された第2認証情報とを照合して、対象物11の真正性を識別する2回目の認証を行う。読取装置1が、複数の識別媒体12cから認証情報を読み取り、対象物11の真正性を識別する場合には、対象物11を適宜移動させて上記の認証を繰り返す。なお、通常は、第2層122cの2次元コードのみを用いて対象物11の真正性を識別し、第2層122cの2次元コードが改竄、偽造、又は複製された疑いがある場合に、第2層122cを第1層121cから剥がして、第1層121cのホログラムを用いて対象物11の真正性を識別してもよい。
【0064】
(第4変形例)
本実施形態の第4変形例を説明する。
【0065】
図14は、本変形例に係る識別媒体12dの構成を示す断面図である。図14に示すように、識別媒体12dは、第1層121d、第2層122d、第3層124dからなる。
【0066】
第1層121dは、透明なポリカーボネート(PC)からなり、対象物11の表面に設けられる。第1層121dには、インク(例えば、顔料)で印刷された2次元コードが形成されている。第2層122dは、白濁又は透明な素材からなり、接着剤123d_1で第1層121dに貼り付けられて第1層121dに積層される。第2層122dには、照射部6から所定の波長のレーザビームを入射角αで識別媒体12bに照射すると、回折角βの方向に回折光を生成させるホログラムが形成されている。上記のホログラムは、例えばコンピュータ・ジェネレイテッド・ホログラム(CGH)である。なお、第2層122dは、異なる波長のレーザビームにより互いに異なる回折角を生成させる複数のホログラムを有してもよい。また、第2層122dは、認証時に第2層122dに照射されるレーザビームの透過率が所定の小ささの素材から構成されても良い。これにより、認証時に、第1層121dからの反射光によって生じる明暗パターンを抑えることができる。第1層121dに印刷されるインクの色を第2層122dの色に近い色になるように設定すれば、第2層122dを第1層121dに積層した状態で、第2層122dは第1層121dの2次元コードを隠蔽することができる。接着剤123d_1は、第2層122dを第1層121dに貼り付けた後に、第2層122dを第1層121dから剥がすと、第1層121dと第2層122dとの再接着を妨げるような素材からなる。第3層124dは、透明なポリカーボネート(PC)からなり、接着剤123d_2で第2層122dに貼り付けられて第2層122dに積層される。第3層124dには、照射部6から照射される所定の波長のレーザビームの反射率が所定の大きさの素材で印刷された2次元コードが形成されている。接着剤123d_2は、第3層124dを第2層122dに貼り付けた後に、第3層124dを第2層122dから剥がすと、第2層122dと第3層124dとの再接着を妨げるような素材からなる。本変形例では、第1層121dと第3層124dは、第1実施形態の第1層121と第2層122にそれぞれ対応するものとして説明する。
【0067】
次に、対象物11の真正性を識別する方法を説明する。
【0068】
本変形例では、第1層121dの2次元コードには1つの認証情報が記録してあり、第2層122dのホログラムには1つ以上の認証情報が記録してあり、第3層124dの2次元コードには第1層121dの2次元コードに記録された認証情報を隠蔽するためのダミーコードが記録してあることを管理者が予め知っていると想定する。なお、第1層121dの2次元コードに記録された情報と、第2層122dのホログラムに記録された1つ以上の情報を組み合わせることにより、1つの認証情報が得られるとしても良い。
【0069】
管理者は、対象物11の真正性を確認するとき、第3層124dを第2層122dから剥がした状態で対象物11を読取装置1に挿入する。そして、読取装置1は、読取装置1は、第2層122dのホログラムから回折光を生じさせる波長のレーザビームを使用して、第2層122dのホログラムに記録された認証情報を読み取り、第2層122dのホログラムに記録された認証情報と識別部9に予め記憶された第1認証情報とを照合して、対象物11の真正性を識別する1回目の認証を行う。ここで、照射部6から照射されるレーザビームの出力パワー、照射部6と識別媒体12dの間の距離、撮像部7と識別媒体12dの間の距離、各層の厚さは、1回目の認証において、第1層121dからの反射光によって生じる明暗パターンに対して、第2層122dからの回折光を撮像部7が識別可能に撮像できるように設定されている。なお、第2層122dが、1回目の認証時に第2層122dに照射されるレーザビームの透過率が所定の小ささの素材から構成される場合には、照射部6から照射されるレーザビームの出力パワー、照射部6と識別媒体12dの間の距離、撮像部7と識別媒体12dの間の距離、各層の厚さは、第2層122dからの反射光によって生じる明暗パターンに対して、第2層122dからの回折光を撮像部7が識別可能に撮像できるように設定されている。
【0070】
1回目の認証が終わると、読取装置1は、照合結果を表示して対象物11を排出する。管理者は、対象物11の真正性を確認すると、第2層122dを第1層121dから剥がした状態で対象物11を読取装置1に再挿入する。なお、読取装置1は、第2層122dのホログラムに記録された認証情報の照合に成功すると、対象物11を排出せずに、所定の機構(図示略)を用いて第2層122dを第1層121dから剥がしてもよい。そして、読取装置1は、白色光又は1回目の認証で使用した波長と同じ又は異なる波長のレーザビームを使用して、第1層121dの2次元コードに記録された認証情報を読み取り、第1層121dの2次元コードに記録された認証情報と識別部9に予め記憶された第2認証情報とを照合して、対象物11の真正性を識別する2回目の認証を行う。読取装置1が、複数の識別媒体12bから認証情報を読み取り、対象物11の真正性を識別する場合には、対象物11を適宜移動させて上記の認証を繰り返す。なお、通常は、第2層122dのホログラムのみを用いて対象物11の真正性を識別し、第2層122dのホログラムが改竄、偽造、又は複製された疑いがある場合に、第2層122dを第1層121dから剥がして、第1層121dの2次元コードを用いて対象物11の真正性を識別してもよい。
【0071】
本認証の使用例として、第1実施形態の2段階認証の使用例が挙げられる。本認証では、第1実施形態の2段階認証の利点に加えて、対象物11の認証情報を記録した第1層121dの2次元コードを外部から視認できないので、悪意の第三者に対象物11の認証情報を気付かせないことができる。
【0072】
一方、第1層121dの2次元コードと第3層124dの2次元コードを第2層122dを介して重ね合わせることにより生成される2次元パターンに対象物11の認証情報が記録されている場合には、3段階の認証が可能である。なお、上記の2次元パターンに記録された情報と、第1層121dの2次元コードに記録された情報、及び/又は第2層122dのホログラムに記録された1つ以上の情報を組み合わせることにより、1つの認証情報が得られるとしても良い。
【0073】
3段階認証では、管理者は、対象物11の真正性を確認するとき、第3層124dを第2層122dに貼り付けた状態で対象物11を読取装置1に挿入する。そして、読取装置1は、第1層121dの2次元コードと第3層124dの2次元コードを第2層122dを介して重ね合わせることにより生成される2次元コードに記録された認証情報と識別部9に予め記憶された第1認証情報とを照合して、対象物11の真正性を識別する1回目の認証を行う。なお、読取装置1が第3層124dの2次元コードに記録された情報のみを読み取る場合には、照射部6から照射されるレーザビームの出力パワー、照射部6と識別媒体12dの間の距離、撮像部7と識別媒体12dの間の距離、各層の厚さは、1回目の認証において、第1層121dと第2層122dからの反射光によって生じる明暗パターンに対して、第3層124dからの反射光による2次元コードを撮像部7が識別可能に撮像できるように設定されている。
【0074】
1回目の認証が終わると、読取装置1は、照合結果を表示して対象物11を排出する。管理者は、対象物11の真正性を確認すると、第3層124dを第2層122dから剥がした状態で対象物11を読取装置1に再挿入する。なお、読取装置1は、識別媒体12の2次元コードの照合に成功すると、対象物11を排出せずに、所定の機構(図示略)を用いて第3層124dを第2層122dから剥がしてもよい。そして、読取装置1は、本変形例の2段階認証と同様に、第2層122dのホログラム記録された認証情報と識別部9に予め記憶された第2認証情報とを照合して、対象物11の真正性を識別する2回目の認証と、第1層121dの2次元コードに記録された認証情報と識別部9に予め記憶された第3認証情報とを照合して、対象物11の真正性を識別する3回目の認証を行う。読取装置1が、複数の識別媒体12から認証情報を読み取り、対象物11の真正性を識別する場合には、対象物11を適宜移動させて3段階認証を繰り返す。また、通常は、第1層121dの2次元コードと第3層124dの2次元コードを第2層122dを介して重ね合わせることにより生成される2次元パターンのみを用いて対象物11の真正性を識別し、上記の2次元パターンが改竄、偽造、又は複製された疑いがある場合に、第3層124dを第2層122dから剥がして、第2層122dのホログラムを用いて対象物11の真正性を識別してもよい。
【0075】
3段階認証では、読取装置1は、白色光又は第3層124dの2次元コードを形成する素材で反射する割合が所定の大きさの波長のレーザビームを使用して1回目の認証を行い、第2層122dのホログラムから回折光を生じさせる波長のレーザビームを使用して2回目の認証を行い、白色光又は1及び/又は2回目の認証で使用した波長と同じ又は異なる波長のレーザビームを使用して3回目の認証を行う。例えば、第3層124dの2次元コードを形成する素材としてシリコン化合物を採用する場合、読取装置1は、白色光又は青色レーザビームを使用して1回目と3回目の認証を行う。また、読取装置1が、第3層124dの2次元コードを形成する素材を透過する割合が所定の大きさの波長のレーザビームを使用して第1層121dの2次元コードに記録された認証情報を読み取る場合には、第3層124dと第2層122dを第1層121dから剥がさなくてもよい。例えば、第3層124dの2次元コードを形成する素材としてシリコン化合物を採用する場合、図9に示すように、シリコン化合物は、波長650nmのレーザビーム(赤色レーザビーム)に対して所定の大きさの透過率を有するので、読取装置1は、第3層124dと第2層122dを透過する赤色レーザビームを使用して第1層121dの2次元コードに記録された認証情報を直接読み取る。
【0076】
3段階認証の使用例として、1回限り有効の対象物(例えば、商品パッケージ、チケット、カード、金券、証書)の認証が挙げられる。対象物11が商品パッケージの場合、最初に、店員は、業者から納入された商品パッケージに貼り付けられた第1層121dの2次元コードと第3層124dの2次元コードを第2層122dを介して重ね合わせることにより生成される2次元パターンを用いて商品パッケージの真正性を確認する。店員は、商品パッケージが真正であれば、第3層124dを第2層122dから剥がす。次に、顧客は、陳列された商品パッケージに貼り付けられた第2層122dのホログラムを用いて商品パッケージの真正性を確認する。そして、その商品パッケージを実際に購入する際に、店員は第2層122dを第1層121dから剥がして、第1層121dの2次元コードを用いて商品パッケージの真正性を確認する。これにより、購入対象の商品パッケージに対して、顧客と店員による相互照合を行うことで、偽造品の被害リスクを減らすことができる。また、対象物11がチケットの場合、最初に、会場の入口にて、主催者はチケットに貼り付けられた第1層121dの2次元コードと第3層124dの2次元コードを第2層122dを介して重ね合わせることにより生成される2次元パターンを用いてチケットの真正性を確認する。チケットが真正であれば、主催者は参加者の入場を許可して、第3層124dを第2層122dから剥がす。そして、参加者が着席する際に、主催者は第2層122dのホログラムを用いてチケットの真正性を再度確認する。チケットが真正であれば、主催者は第2層122dを第1層121dから剥がす。最後に、イベント終了後に記念品が参加者に配られる際に、主催者は第1層121dの2次元コードを用いてチケットの真正性を確認する。これにより、チケットに対して、主催者による三重照合を行うことで、不正入場、記念品の不正受取、チケット偽造の被害リスクを減らすことができる。
【0077】
(第5変形例)
本実施形態の第5変形例を説明する。
【0078】
図15は、本変形例に係る識別媒体12eの構成を示す断面図である。図15に示すように、識別媒体12eは、第1層121e、第2層122e、第3層124eからなる。
【0079】
第1層121eは、白濁又は透明な素材からなり、対象物11の表面に設けられる。第1層121eには、照射部6から所定の波長のレーザビームを入射角αで識別媒体12eに照射すると、回折角βの方向に回折光を生成させるホログラムが形成されている。上記のホログラムは、例えばコンピュータ・ジェネレイテッド・ホログラム(CGH)である。なお、第1層121eは、異なる波長のレーザビームにより互いに異なる回折角を生成させる複数のホログラムを有してもよい。第2層122eは、透明なポリカーボネート(PC)からなり、接着剤123e_1で第1層121eに貼り付けられて第1層121eに積層される。第2層122eには、照射部6から照射される所定の波長のレーザビームの反射率が所定の大きさの素材で印刷された2次元コードが形成されている。接着剤123e_1は、第2層122eを第1層121eに貼り付けた後に、第2層122eを第1層121eから剥がすと、第1層121eと第2層122eとの再接着を妨げるような素材からなる。第3層124eは、白濁又は透明な素材からなり、接着剤123e_2で第2層122eに貼り付けられて第2層122eに積層される。第3層124eには、照射部6から所定の波長のレーザビームを入射角αで識別媒体12eに照射すると、回折角βの方向に回折光を生成させるホログラムが形成されている。上記のホログラムは、例えばコンピュータ・ジェネレイテッド・ホログラム(CGH)である。なお、第3層124eは、異なる波長のレーザビームにより互いに異なる回折角を生成させる複数のホログラムを有してもよい。また、第3層124eは、認証時に第3層124eに照射されるレーザビームの透過率が所定の小ささの素材から構成されても良い。これにより、認証時に、第1層121eと第2層122eからの反射光によって生じる明暗パターンを抑えることができる。この場合、第3層124eの色を第2層122eの2次元コードを形成する素材の色に近い色になるように設定すれば、第3層124eを第2層122eに積層した状態で、第3層124eは第2層122eの2次元コードを隠蔽することができる。接着剤123d_2は、第3層124eを第2層122eに貼り付けた後に、第3層124eを第2層122eから剥がすと、第2層122eと第3層124eとの再接着を妨げるような素材からなる。
【0080】
次に、対象物11の真正性を識別する方法を説明する。
【0081】
本変形例では、第1層121eのホログラムには1つ以上の認証情報が記録してあり、第2層122eの2次元コードには1つの認証情報が記録してあり、第3層124eのホログラムには1つ以上の認証情報が記録してあることを管理者が予め知っていると想定する。なお、第1層121eのホログラムに記録された1つ以上の情報と、第2層122eの2次元コードに記録された情報と、第3層124eのホログラムに記録された1つ以上の情報を組み合わせることにより、1つの認証情報が得られるとしても良い。
【0082】
管理者は、対象物11の真正性を確認するとき、対象物11を読取装置1に挿入する。そして、読取装置1は、第3層124eのホログラムから回折光を生じさせる波長のレーザビームを使用して、第3層124eのホログラムに記録された認証情報を読み取り、第3層124eのホログラムに記録された認証情報と識別部9に予め記憶された第1認証情報とを照合して、対象物11の真正性を識別する1回目の認証を行う。ここで、照射部6から照射されるレーザビームの出力パワー、照射部6と識別媒体12eの間の距離、撮像部7と識別媒体12eの間の距離、各層の厚さは、1回目の認証において、第1層121eと第2層122eからの反射光によって生じる明暗パターンに対して、第3層124eからの回折光を撮像部7が識別可能に撮像できるように設定されている。なお、第3層124eが、1回目の認証時に第3層124eに照射されるレーザビームの透過率が所定の小ささの素材から構成される場合には、照射部6から照射されるレーザビームの出力パワー、照射部6と識別媒体12eの間の距離、撮像部7と識別媒体12eの間の距離、各層の厚さは、第3層124eからの反射光によって生じる明暗パターンに対して、第3層124eからの回折光を撮像部7が識別可能に撮像できるように設定される。
【0083】
1回目の認証が終わると、読取装置1は、照合結果を表示して対象物11を排出する。管理者は、対象物11の真正性を確認すると、第3層124eを第2層122eから剥がした状態で対象物11を読取装置1に再挿入する。なお、読取装置1は、第3層124eのホログラムに記録された認証情報の照合に成功すると、対象物11を排出せずに、所定の機構(図示略)を用いて第3層124eを第2層122eから剥がしてもよい。そして、読取装置1は、第2層122eの2次元コードを形成する素材で反射する割合が所定の大きさの波長のレーザビームを使用して、第2層122eの2次元コードに記録された認証情報を読み取り、第1層122eの2次元コードに記録された認証情報と識別部9に予め記憶された第2認証情報とを照合して、対象物11の真正性を識別する2回目の認証を行う。ここで、照射部6から照射されるレーザビームの出力パワー、照射部6と識別媒体12eの間の距離、撮像部7と識別媒体12eの間の距離、各層の厚さは、2回目の認証において、第1層121eからの反射光によって生じる明暗パターンに対して、第2層122eからの反射光による2次元コードを撮像部7が識別可能に撮像できるように設定されている。
【0084】
2回目の認証が終わると、読取装置1は、照合結果を表示して対象物11を排出する。管理者は、対象物11の真正性を確認すると、第2層122eを第1層121eから剥がした状態で対象物11を読取装置1に再挿入する。なお、読取装置1は、第2層122eの2次元コードに記録された認証情報の照合に成功すると、対象物11を排出せずに、所定の機構(図示略)を用いて第2層122eを第1層121eから剥がしてもよい。そして、読取装置1は、第1層121eのホログラムから回折光を生じさせる波長のレーザビームを使用して、第1層121eのホログラムに記録された認証情報を読み取り、第1層121eのホログラムに記録された認証情報と識別部9に予め記憶された第3認証情報とを照合して、対象物11の真正性を識別する3回目の認証を行う。読取装置1が、複数の識別媒体12cから認証情報を読み取り、対象物11の真正性を識別する場合には、対象物11を適宜移動させて上記の認証を繰り返す。
【0085】
(他の変形例)
本実施形態の他の変形例として、2次元コードを形成した第1乃至3層からなる識別媒体、2次元コードを形成した第1,2層とホログラムを形成した第3層からなる識別媒体、2次元コードを形成した第1層とホログラムを形成した第2,3層からなる識別媒体、ホログラムを形成した第1乃至3層からなる識別媒体、ホログラムを形成した第1,2層と2次元コードを形成した第3層からなる識別媒体、ホログラムを形成した第1層と2次元コードを形成した第2,3層からなる識別媒体が挙げられる。
【0086】
また、第1実施形態の識別媒体12、第1乃至5変形例の識別媒体12a−12e、本変形例の識別媒体を適宜組み合わせて、各層に2次元コード又はホログラムが形成された4層以上からなる識別媒体を作成してもよい。
【0087】
更に、読取装置1からセンサ2、駆動部4、搬送機構5を取り除いて、読取装置の読取面を手動で移動させて、読取装置に識別媒体から情報を読み取らせてもよい。
【0088】
(第2実施形態)
図16は、本実施形態に係る識別媒体22の構成を示す断面図である。図17は、図16に示した識別媒体22の第2層222を第1層221から分離した前後における、識別媒体22の1次元コードのビット列を示した説明図である。なお、第1層221の1次元コードを出現させた状態において、断面から見て凸部を”1”に凹部を”0”にコードしている。
【0089】
図16に示すように、識別媒体22は第1層221と第2層222からなる。第1層221は、透明なポリカーボネート(PC)からなり、対象物11の表面に設けられる。第1層221は、第1部位221_1と第2部位221_2に分離可能な情報層である。第1部位221_1の上面には、物理的な切り込み(微細な段差パターン)で形成された2次元コードが形成されている。第2部位221_2の下面には、第1部位221_1の2次元コードを反転させた、物理的な切り込み(微細な段差パターン)で形成されたダミー2次元コードが形成されている。第2部位221_2の下面を第1部位221_1の上面に重ね合わせると、第2部位221_2は第1部位221_1に噛み合う。第2層222は、透明なポリカーボネート(PC)からなり、接着剤223で第1層221に貼り付けられて第1層221に積層される。第2層222は、第1層221を保護する透明カバーフィルムである。接着剤223は、透明なUV樹脂からなり、PC等の有機系材料の屈折率に近い屈折率を有している。接着剤223はPC等の有機系材料に対して接着性が強いので、第2層222を第1層221から剥がすと、第2層222と第1層221の第2部位221_2が第1層221の第1部位221_1から分離して、第1部位221_1の上面に形成された2次元コードが出現する。
【0090】
次に、対象物11の真正性を識別する方法を説明する。
【0091】
本実施形態では、第1層221の第1部位221_1の2次元コードには1つの認証情報が記録してあることを管理者が予め知っていると想定する。管理者は、対象物11の真正性を確認するとき、第2層222を第1層221から剥がして、第1層221の第1部位221_1の上面に形成された2次元コードを出現させる。そして、管理者は、第1部位221_1の上面に形成された微細な段差パターンに触れて、第1部位221_1の2次元コードに記録された認証情報と正規の認証情報とを照合して、対象物11の真正性を識別する。
【0092】
本認証の使用例として、1回限り有効の対象物(例えば、商品パッケージ、チケット、カード、金券、証書)の認証が挙げられる。第1層221、第2層222、接着剤223は、屈折率がほぼ等しい透明な素材からなるので、第2層222を第1層221に積層した状態では、対象物11の認証情報を記録した第1層221の2次元コードは外部から視認されない(図17参照)。それゆえ、悪意の第三者に対象物11の認証情報を気付かせないことができるので、識別媒体22は、改竄、偽造、複製が容易ではない識別媒体となる。また、第1層221の第1部位221_1の上面に形成される物理的な切り込みを目視で充分に確認できる大きさで形成すれば、段差パターンによって生じた幾何学模様(窪みの数、配列、大きさ)を視認することで、対象物11の真正性を確認することができる。例えば、識別媒体22の改造、偽造、複製が疑われる場合に、第2層222を第1層221から剥がして、第1層221の第1部位221_1の上面の幾何学模様を正規の幾何学模様と照合することにより、識別媒体22の真正性を確認するといった簡易な確認を行うことができる。
【0093】
(変形例)
本実施形態の変形例を説明する。
【0094】
図18は、本変形例に係る識別媒体22aの構成を示す断面図である。図19は、図18に示した識別媒体22aの第3層224aを第2層222aから分離した前後における、識別媒体22の1次元コードのビット列を示した説明図である。なお、着色箇所を”1”に無着色箇所を”0”にコードしている。
【0095】
図18に示すように、識別媒体22aは、第1層221a、第2層222a、第3層224aからなる。第1層221aは、透明なポリカーボネート(PC)からなり、対象物11の表面に設けられる。第1層221aには、インク(例えば、顔料)で印刷された2次元コードが形成されている。第2層222aは、透明なポリカーボネート(PC)からなり、接着剤223a_1で第1層221aに貼り付けられて第1層221aに積層される。第2層222aは、第1部位222a_1と第2部位222a_2に分離可能な情報層である。第1部位222a_1の上面には、物理的な切り込み(微細な段差パターン)で形成された2次元コードが形成されている。第2部位222a_2の下面には、第1部位222a_1の2次元コードを反転させた、物理的な切り込み(微細な段差パターン)で形成されたダミー2次元コードが形成されている。第2部位222a_2の下面を第1部位222a_1の上面に重ね合わせると、第2部位222a_2は第1部位222a_1に噛み合う。第3層224aは、透明なポリカーボネート(PC)からなり、接着剤223a_2で第2層222aに貼り付けられて第2層222aに積層される。第3層224aは、第2層222aを保護する透明カバーフィルムである。接着剤223a_1,223a_2は、透明なUV樹脂からなり、PC等の有機系材料の屈折率に近い屈折率を有している。接着剤223a_2はPC等の有機系材料に対して接着性が強いので、第3層224aを第2層222aから剥がすと、第3層224aと第2層222aの第2部位222a_2が第2層222aの第1部位222a_1から分離して、第1部位222a_1の上面に形成された2次元コードが出現する。
【0096】
次に、対象物11の真正性を識別する方法を説明する。
【0097】
本変形例では、第1層221aの2次元コードには1つの認証情報が記録してあり、第2層222aの第1部位222a_1の2次元コードには1つの認証情報が記録してあることを管理者が予め知っていると想定する。管理者は、対象物11の真正性を確認するとき、対象物11を読取装置1に挿入する。そして、読取装置1は、白熱光又は任意のレーザビームを使用して、第1層221aの2次元コードに記録された認証情報を読み取り、第1層221aの2次元コードに記録された認証情報と識別部9に予め記憶された認証情報とを照合して、対象物11の真正性を識別する。一方で、管理者は、第3層224aを第2層222aから剥がして、第2層222aの第1部位222a_1の上面に形成された2次元コードを出現させる。そして、管理者は、第1部位222a_1の上面に形成された微細な段差パターンに触れて、第1部位222a_1の2次元コードに記録された認証情報と正規の認証情報とを照合して、対象物11の真正性を識別する。
【0098】
本認証の使用例として、1回限り有効の対象物(例えば、商品パッケージ、チケット、カード、金券、証書)の認証が挙げられる。第2層222a、第3層224a、接着剤223a_2は、屈折率がほぼ等しい透明な素材からなるので、第3層224aを第2層222aに積層した状態では、対象物11の認証情報を記録した第2層222aの2次元コードは外部から視認されない。それゆえ、悪意の第三者に対象物11の認証情報の一部を気付かせないことができるので、識別媒体22は、改竄、偽造、複製が容易ではない識別媒体となる。また、第2層222aの第1部位222a_1の上面に形成される物理的な切り込みを目視で充分に確認できる大きさで形成すれば、段差パターンによって生じた幾何学模様(窪みの数、配列、大きさ)を視認することで、対象物11の真正性を確認することができる。例えば、識別媒体22の改造、偽造、複製が疑われる場合に、第3層224aを第2層222aから剥がして、第2層222aの第1部位222a_1の上面の幾何学模様を正規の幾何学模様と照合することにより、識別媒体22の真正性を確認するといった簡易な確認を行うことができる。
【符号の説明】
【0099】
1 読取装置
3 制御部
6 照射部
7 撮像部
9 識別部
11 対象物
12,12a,12b,12c,12d,12e 識別媒体
22,22a 識別媒体
121,121a,121b,121c,121d,121e 第1層
122,122a,122b,122c,122d,122e 第2層
123,123a,123b,123c 接着剤
123d_1,123d_2,123e_1,123e_2 接着剤
124d,124e 第3層
221,221a 第1層
222,222a 第2層
223,223a_1,223a_2 接着剤
224a 第3層
【技術分野】
【0001】
本発明は、商品パッケージ、チケット、カード、金券、証書などの対象物の真正性を識別するための識別媒体に関する。
【背景技術】
【0002】
実生活において、商品パッケージ、チケット、カード、金券、証書などの対象物に識別媒体を貼り付けて、その識別媒体を用いて対象物の真正性を識別する技術は日常的に利用されている。例えば、所定の認証情報をホログラムに記録したシートを対象物に予め貼り付けておき、対象物を使用するときに読取装置でホログラムに記録された情報を読み取り、読み取った情報を照合することで対象物の真正性を識別する技術が知られている。
【0003】
識別媒体は対象物の真正性を識別するために使用されるため、識別媒体の改竄、偽造、複製が容易ではないことが重要である。上記の例のように、識別媒体としてホログラムを利用する場合、悪意の第三者がホログラムの悪用を試みるとすれば、以下の方法が考えられる。(1)ホログラムを形成したシートを真正の対象物から剥がして、偽造又は複製した対象物に貼り付ける。(2)真正の対象物に貼り付けられたシートに形成されたホログラム自体を偽造又は複製して、偽造又は複製した対象物に貼り付ける。
【0004】
特許文献1,2はホログラムの悪用を防止する技術を開示している。具体的には、特許文献1では、ホログラムを形成したシートを対象物から剥がすと、シートが不規則に破れて、ホログラムを物理的に破壊する技術が提案されている。特許文献2では、ホログラムを形成したシートを対象物から剥がすと、そのシートの接着性が著しく低下する技術が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第3570593号
【特許文献2】実開平5−16300号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1の技術では、ホログラムを形成したシートを対象物から剥がすと、ホログラムを物理的に破壊するので、剥離したホログラムの再利用を防止することができる。また、特許文献1の技術では、ホログラムを形成したシートを対象物から剥がすと、不規則に破れたシートの一部が対象物に残るので、悪意の第三者がホログラムの悪用を試みた痕跡を容易に発見することができる。それゆえ、この技術はホログラムの悪用方法(1)への対応策として有効である。しかしながら、この技術は、ホログラム自体の偽造又は複製を困難にする技術ではないので、ホログラムの悪用方法(2)への対応策としては有効ではない。
【0007】
同様に、特許文献2の技術では、ホログラムを形成したシートを対象物から剥がすと、そのシートの接着性が著しく低下するので、剥離したホログラムの再利用を防止することができる。それゆえ、この技術はホログラムの悪用方法(1)への対応策として有効である。しかしながら、この技術は、ホログラム自体の偽造又は複製を困難にする技術ではないので、ホログラムの悪用方法(2)への対応策としては有効ではない。
【0008】
本発明は上記課題に解決するためになされたものであり、改竄、偽造、複製が容易ではない識別媒体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の第1態様によれば、対象物(11)の真正性を識別するための識別媒体(12,12a,12b,12c,12d,12e)であって、前記対象物(11)に積み重ねられる複数の層(121,121a,121b,121c,121d,121e,122,122a,122b,122c,122d,122e,124d,124e)を備え、各層には、カラー2次元コード又はホログラムが形成されていることを特徴とする識別媒体(12,12a,12b,12c,12d,12e)を提供する。
【0010】
本発明の第2態様によれば、第1態様に係る識別媒体(12,12a,12b,12c,12d,12e)であって、各層には、白色光又は所定の波長のレーザビームによって読み取られる、前記対象物(11)の真正性を識別する情報を記録したカラー2次元コード又はホログラムが形成されている。
【0011】
本発明の第3態様によれば、第1態様に係る識別媒体(12,12d)であって、最上層(122,124d)の下方に位置する層(121,121d)には、前記対象物(11)の真正性を識別する情報を記録したカラー2次元コードが形成されており、前記最上層(122,124d)には、前記最上層(122,124d)の下方に位置する層(121,121d)の前記カラー2次元コードを隠蔽するカラー2次元コードが形成されている。
【0012】
本発明の第4態様によれば、第1態様に係る識別媒体12,12a,12b,12c,12d,12e)であって、各層を直下の層に貼り付ける接着剤(123,123a,123b,123c,123d_1,123d_2,123e_1,123e_2)を更に備え、前記接着剤(123,123a,123b,123c,123d_1,123d_2,123e_1,123e_2)は、各層を直下の層から剥がすと、前記層と前記直下の層との再接着を妨げるような素材からなる。
【0013】
本発明の第5態様によれば、対象物(11)の真正性を識別するための識別媒体(12,12a,12b,12c,12d,12e)であって、前記対象物(11)に設けられる基層(121,121a,121b,121c,121d,121e)と、前記基層(121,121a,121b,121c,121d,121e)に積み重ねられる複数の層(122,122a,122b,122c,122d,122e,124d,124e)と、を備え、前記基層(121,121a,121b,121c,121d,121e)には、インクで印刷されたカラー2次元コード、又は所定の波長のレーザビームを所定の方向に回折させるホログラムが形成されており、前記複数の層(122,122a,122b,122c,122d,122e,124d,124e)の各々には、所定の波長のレーザビームの反射率が所定の大きさの素材で印刷されたカラー2次元コード、又は所定の波長のレーザビームを所定の方向に回折させるホログラムが形成されていることを特徴とする識別媒体を提供する。
【0014】
本発明の第6態様によれば、対象物(11)の真正性を識別するための識別媒体(22,22a)であって、前記対象物(11)に積み重ねられる複数の層(221,221a,222,222a,224a)を備え、前記複数の層(221,221a,222,222a,224a)のうちの少なくとも1つの層(221,222a)は、前記対象物(11)の真正性を識別する情報を記録した凹凸面を有する第1部位(221_1,222a_1)と、前記凹凸面に噛み合う面を有する第2部位(221_2,222a_2)とに分離可能な情報層であり、前記情報層から直上の層(222,224a)が剥がされるとき、前記第2部位(221_2,222a_2)は前記直上の層(222,224a)と一緒に剥がされて、前記第1部位(221_1,222a_1)の凹凸面が出現することを特徴とする識別媒体を提供する。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、改竄、偽造、複製が容易ではない識別媒体を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の第1実施形態に係る読取装置の構成を示すブロック図である。
【図2】本発明の第1実施形態に係る識別媒体の構成を示す断面図である。
【図3】図2に示した識別媒体の第1層と第2層の1次元コードのビット列を示した説明図である。
【図4】本発明の第1実施形態に係る識別媒体の第1層に形成された2次元コードの平面図である。
【図5】本発明の第1実施形態に係る識別媒体の第2層に形成された2次元コードの平面図である。
【図6】本発明の第1実施形態に係る識別媒体の第1層と第2層を重ね合わせた状態での識別媒体の2次元コードの平面図である。
【図7】各波長のレーザビームをシリコン化合物の薄膜に照射したときのレーザビームの反射率を示したグラフである。
【図8】本発明の第1実施形態に係る識別媒体の読取方法を説明するフローチャートである。
【図9】各波長のレーザビームをシリコン化合物の薄膜に照射したときのレーザビームの透過率を示したグラフである。
【図10】シリコン化合物の各膜厚に対する青色レーザビームの反射率と赤色レーザビームの透過率を示したグラフである。
【図11】本発明の第1実施形態の第1変形例に係る識別媒体の構成を示す断面図である。
【図12】本発明の第1実施形態の第2変形例に係る識別媒体の構成を示す断面図である。
【図13】本発明の第1実施形態の第3変形例に係る識別媒体の構成を示す断面図である。
【図14】本発明の第1実施形態の第4変形例に係る識別媒体の構成を示す断面図である。
【図15】本発明の第1実施形態の第5変形例に係る識別媒体の構成を示す断面図である。
【図16】本発明の第2実施形態に係る識別媒体の構成を示す断面図である。
【図17】図16に示した識別媒体の第2層を第1層から分離した前後における、識別媒体の1次元コードのビット列を示した説明図である。
【図18】本発明の第2実施形態の第1変形例に係る識別媒体の構成を示す断面図である。
【図19】図18に示した識別媒体の第3層を第2層から分離した前後における、識別媒体の1次元コードのビット列を示した説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下に、本発明の実施形態を図面を参照して説明する。なお、図面に記載の符号について、同一又は類似の部位には同一又は類似の符号を付している。また、図面に記載の部材は模式的なものであり、現実のものとは異なる。
【0018】
ここで、以下の実施形態は本発明の技術的思想を具体化するための識別媒体を例示するものであり、本発明の技術的思想は各構成要素の配置等を以下の実施形態に特定するものではない。本発明の技術的思想は、特許請求の範囲内で種々の変更を加えることができる。
【0019】
(第1実施形態)
図1は、本実施形態に係る読取装置1の構成を示すブロック図である。読取装置1は、真正性が識別されるべき対象物11に含まれる識別媒体12から情報を読み取り、読み取った情報を照合して照合結果を表示する。図1に示すように、読取装置1は、センサ2、制御部3、駆動部4、搬送機構5、照射部6、撮像部7、信号処理部8、識別部9、表示部10を備えている。
【0020】
センサ2は、対象物11が読取装置1に挿入されたことを検出すると、検出信号を制御部3に送信する。センサ2の個数は必要に応じて決められ1つ以上設けられている。制御部3は、駆動部4、照射部6、撮像部7、信号処理部8、表示部10の動作を制御し、各種の演算処理やデータの入出力等の処理を実行するCPU、CPUを動作させるためのプログラム等を格納するROM、CPUのワーク領域として使用されるRAM(いずれも図示略)から構成される。制御部3は、センサ2から検出信号を受信すると、駆動部4を介して搬送機構5を駆動し、対象物11を順方向(図中の矢印方向)に所定の距離だけ搬送させる。
【0021】
照射部6は、所定の波長(例えば、405nm又は650nm)のレーザビームを対象物11の識別媒体12に所定の角度(入射角)αで照射する。照射部6は、波長405nmのレーザビームを照射する場合には青色レーザを有し、波長650nmのレーザビームを照射する場合には赤色レーザを有している。なお、青色レーザと赤色レーザの代わりに波長可変レーザを使用してもよい。制御部3は、レーザビームの出力パワーを制御し、所定のタイミングで照射部6からレーザビームを照射させる。
【0022】
識別媒体12の裏面に設けられた反射膜により、入射角αで入射したレーザビームは出射角α(0次光)に対して回折角±β(1次光)の回折光として出射する。いま、α+β=90°となるように入射角と回折角を調整すれば、入射角αで照射したレーザビームを識別媒体12の垂直方向に設置したCCDカメラを有する撮像部7で受光し、2次元パターンを撮像することができる。
【0023】
制御部3は同期信号を撮像部7に出力し、所定のタイミングで撮像部7に2次元パターンを撮像させる。一方、白色光(太陽光)を照射して読み取る場合には、撮像部7は通常のCCDカメラとして2次元パターンを一括撮像する。
【0024】
信号処理部8は、撮像部7からの出力信号を受信し、撮像された2次元パターンに所定の画像処理(例えば、ノイズ処理、エッジ処理など)を施す。制御部3は、上記の同期信号を信号処理部8にも出力し、撮像部7での撮像と信号処理部8での信号処理とを同期させる。
【0025】
識別部9は、信号処理部8からの出力信号を受信し、処理された2次元パターンと予め記憶されている認証パターン(認証情報)とを照合する。なお、制御部3、信号処理部8、識別部9を単一のCPU、ROM、RAMで構成してもよい。また、識別部9を読取装置1から分離して、有線LAN、無線LAN、通信回線、通信ケーブル等の伝送経路を介して、識別装置として読取装置1に接続してもよい。
【0026】
制御部3は、識別部9からの出力信号を受信し、照合結果を表示部10に表示する。なお、制御部3は、照合結果を表示する代わりに、照合結果に応じた音声や音色を出力してもよい。その後、制御部3は、駆動部4を介して搬送機構5を駆動し、読取装置1から対象物11を排出する。読取装置1が照合手続に続いて他の手続を行う場合、制御部3は、照合結果に基づいて対象物11が真正のものであると判定すると、照合結果を表示部10に表示せずに次の手続を自動的に実行してもよい。
【0027】
次に、識別媒体12の構成を説明する。
【0028】
図2は、本実施形態に係る識別媒体12の構成を示す断面図である。図3は、図2に示した識別媒体12の第1層121と第2層122の1次元コードのビット列を示した説明図である。なお、着色箇所を”1”に無着色箇所を”0”にコードしている。図4は、本実施形態に係る識別媒体12の第1層121に形成された2次元コードの平面図である。図5は、本実施形態に係る識別媒体12の第2層122に形成された2次元コードの平面図である。図6は、本実施形態に係る識別媒体12の第1層121と第2層122を重ね合わせた状態での識別媒体12の2次元コードの平面図である。なお、図3の第1層121の1次元コード(00101100100011100111001)は図4のA−A断面に対応しており、図3の第2層122の1次元コード(11010011011100011000110)は図5のB−B断面に対応している。
【0029】
図2に示すように、識別媒体12は第1層121と第2層122からなる。第1層121は、透明なポリカーボネート(PC)からなり、対象物11の表面に設けられる。図4に示すように、第1層121には、インク(例えば、顔料)で印刷された2次元コードが形成されている。第2層122は、透明なポリカーボネート(PC)からなり、接着剤123で第1層121に貼り付けられて第1層121に積層される。図5に示すように、第2層122には、照射部6から照射される所定の波長のレーザビームの反射率が所定の大きさの素材で印刷された2次元コードが形成されている。例えば、照射部6が波長405nmのレーザビームを照射する場合、約35%の反射率を有する素材で2次元コードが形成され、照射部6が波長650nmのレーザビームを照射する場合、約20%の反射率を有する素材で2次元コードが形成される(図7参照)。接着剤123は、第2層122を第1層121に貼り付けた後に、第2層122を第1層121から剥がすと、第1層121と第2層122との再接着を妨げるような素材からなる。加えて、接着剤123は、第1層121と第2層122の屈折率に近い屈折率を有するならばより好ましい。
【0030】
本実施形態では、第1層121の2次元コードは特定の情報を含んでおり、例えば、QRコード、データマトリックスコード、PDF417、マキシコードなどである。第2層122の2次元コードは第1層121の2次元コードを隠蔽するためのダミーコードである。第1層121に印刷されるインクの色は、第2層122に印刷される素材の色と条件等色に設定される。また、第2層122にて素材が印刷される位置は、第2層122を第1層121に積層させた状態で、第1層121にてインクが印刷されていない位置の上方に設定される。それゆえ、図6に示すように、第1層121と第2層122を重ね合わせた状態で、上方から識別媒体12を見ると、識別媒体12は、第2層122に印刷される素材の色で一面塗られているように見えるため、目視で各層を判別することは困難である。
【0031】
例えば、波長405nmのレーザビーム(青色レーザビーム)が照射部6から照射される場合、第2層122の2次元コードを形成する素材として、薄茶色のシリコン化合物(例えば、SiN、SiC)が採用される。図7に示すように、シリコン化合物は、青色レーザビームに対して所定の大きさの反射率(約35%)を有するので、シリコン化合物が第2層122の2次元コードを形成する素材として好適である。第2層122の2次元コードを形成するシリコン化合物は薄茶色を有するので、第1層121の2次元コードは薄茶色のインクで形成される。
【0032】
次に、読取装置1による識別媒体12の読取方法を説明する。
【0033】
図8は、本実施形態に係る識別媒体12の読取方法を説明するフローチャートである。最初に読取装置1が初期化される(ステップS1)。読取装置1が初期化されると、制御部3は、センサ2からの検出信号に基づき、対象物11が読取装置1に挿入されたか否かを判断する(ステップS2)。制御部3は、対象物11が挿入されたと判断すると、駆動部4を介して搬送機構5を駆動し、対象物11を順方向に所定の距離だけ搬送させる(ステップS3)。一方、制御部3は、対象物11が挿入されていないと判断すると、ステップS2の処理に戻る。
【0034】
制御部3は、対象物11が所定の距離だけ搬送されると、照射部6から白色光又は所定の波長のレーザビームを対象物11の識別媒体12に照射させる(ステップS4)。そして、制御部3は、同期信号を撮像部7と信号処理部8に出力して、所定のタイミングで、識別媒体12からの反射光により投影される2次元コードを撮像部7に撮像させる(ステップS5)。信号処理部8は、撮像部7からの出力信号を受信すると、撮像された2次元コードに所定の画像処理を施す(ステップS6)。識別部9は、信号処理部8からの出力信号を受信すると、処理された2次元パターンと予め記憶されている認証パターン(認証情報)とを照合する(ステップS7)。制御部3は、識別部9からの出力信号を受信すると、照合結果を表示部10に表示する(ステップS8)。
【0035】
次に、上記の読取方法を用いた対象物11の真正性を識別する方法を説明する。
【0036】
本実施形態では、第1層121の2次元コード(図4)に対象物11の認証情報が記録してあり、第2層122の2次元コード(図5)に上記の認証情報を隠蔽するためのダミーコードが記録してあることを管理者が予め知っていると想定する。
【0037】
管理者は、対象物11の真正性を確認するとき、第2層122を第1層121から剥がした状態で対象物11を読取装置1に挿入する。そして、読取装置1は、第1層121の2次元コードに記録された認証情報と識別部9に予め記憶された認証情報とを照合して、対象物11の真正性を識別する。読取装置1が、複数の識別媒体12から認証情報を読み取り、対象物11の真正性を識別する場合には、対象物11を適宜移動させて上記の認証を繰り返す。
【0038】
読取装置1は、認証時に、白色光又は任意の波長のレーザビームを使用して第1層121の2次元コードに記録された認証情報を読み取る。なお、読取装置1が、第2層122の2次元コードを形成する素材を透過する割合が所定の大きさの波長のレーザビームを使用して第1層121の2次元コードに記録された認証情報を読み取る場合には、第2層122を第1層121から剥がさなくてもよい。例えば、第2層122の2次元コードを形成する素材としてシリコン化合物を採用する場合、図9に示すように、シリコン化合物は、波長650nmのレーザビーム(赤色レーザビーム)に対して所定の大きさの透過率(約80%)を有するので、読取装置1は、第2層122を透過する赤色レーザビームを使用して第1層121の2次元コードに記録された認証情報を直接読み取る。
【0039】
本認証の使用例として、1回限り有効の対象物(例えば、商品パッケージ、チケット、カード、金券、証書)の認証が挙げられる。対象物11の認証情報を記録した第1層121の2次元コードを外部から視認できないので、悪意の第三者に対象物11の認証情報を気付かせないことができる。それゆえ、識別媒体12は、改竄、偽造、複製が容易ではない識別媒体となる。
【0040】
一方、第1層121の2次元コードと第2層122の2次元コードを重ね合わせることにより生成される2次元パターンに対象物11の認証情報が記録されている場合には、2段階の認証が可能である。なお、上記の2次元パターンに記録された情報と、第1層121の2次元コードに記録された情報を組み合わせることにより、1つの認証情報が得られるとしても良い。
【0041】
2段階認証では、管理者は、対象物11の真正性を確認するとき、第2層122を第1層121に貼り付けた状態で対象物11を読取装置1に挿入する。そして、読取装置1は、第1層121の2次元コードと第2層122の2次元コードを重ね合わせることにより生成される2次元パターンに記録された認証情報と識別部9に予め記憶された第1認証情報とを照合して、対象物11の真正性を識別する1回目の認証を行う。
【0042】
1回目の認証が終わると、読取装置1は、照合結果を表示して対象物11を排出する。管理者は、対象物11の真正性を確認すると、第2層122を第1層121から剥がした状態で対象物11を読取装置1に再挿入する。なお、読取装置1は、識別媒体12の2次元コードの照合に成功すると、対象物11を排出せずに、所定の機構(図示略)を用いて第2層122を第1層121から剥がしてもよい。そして、読取装置1は、第1層121の2次元コードに記録された認証情報と識別部9に予め記憶された第2認証情報とを照合して、対象物11の真正性を識別する2回目の認証を行う。読取装置1が、複数の識別媒体12から認証情報を読み取り、対象物11の真正性を識別する場合には、対象物11を適宜移動させて2段階認証を繰り返す。また、通常は、第1層121の2次元コードと第2層122の2次元コードを重ね合わせることにより生成される2次元パターンのみを用いて対象物11の真正性を識別し、上記の2次元パターンが改竄、偽造、又は複製された疑いがある場合に、第2層122を第1層121から剥がして、第1層121の2次元コードを用いて対象物11の真正性を識別してもよい。
【0043】
2段階認証では、読取装置1は、白色光又は第2層122の2次元コードを形成する素材で反射する割合が所定の大きさの波長のレーザビームを使用して1回目と2回目の認証を行う。例えば、第2層122の2次元コードを形成する素材としてシリコン化合物を採用する場合、読取装置1は、白色光又は青色レーザビームを使用して1回目と2回目の認証を行う。なお、1回目の認証において、読取装置1が第2層122の2次元コードに記録された情報のみを読み取る場合には、照射部6から照射されるレーザビームの出力パワー、照射部6と識別媒体12の間の距離、撮像部7と識別媒体12の間の距離、各層の厚さは、第1層121からの反射光によって生じる明暗パターンに対して、第2層122からの反射光による2次元コードを撮像部7が識別可能に撮像できるように設定されている。
【0044】
また、シリコン化合物の各膜厚に対する青色レーザビームの反射率と赤色レーザビームの透過率は図10のように変化する。例えば、シリコン化合物の膜厚15nmに対する青色レーザビームの反射率と赤色レーザビームの透過率はそれぞれ約30%と約80%である。それゆえ、第2層122の2次元コードを形成する素材として薄い膜厚(例えば、15nm)のシリコン化合物を採用し、かつ、照射部6から照射されるレーザビームの出力パワー、照射部6と識別媒体12の間の距離、撮像部7と識別媒体12の間の距離を、第1層121からの反射光によって生じる明暗パターンに対して、第2層122からの反射光による2次元コードを撮像部7が識別可能に撮像できるように設定すれば、第2層122を第1層121から剥がすことなく、読取装置1は、青色レーザビームを照射して第2層122の2次元コードに記録された情報を読み取り、かつ、赤色レーザビームを照射して第1層121の2次元コードに記録された情報を読み取ることができる。
【0045】
2段階認証の使用例として、1回限り有効の対象物(例えば、商品パッケージ、チケット、カード、金券、証書)の認証が挙げられる。対象物11が商品パッケージの場合、最初に、顧客は陳列された商品パッケージに貼り付けられた第1層121の2次元コードと第2層122の2次元コードを重ね合わせることにより生成される2次元パターンを用いて商品パッケージの真正性を確認する。そして、その商品パッケージを実際に購入する際に、店員は第2層122を第1層121から剥がして、第1層121の2次元コードを用いて商品パッケージの真正性を確認する。これにより、購入対象の商品パッケージに対して、顧客と店員による相互照合を行うことで、偽造品の被害リスクを減らすことができる。また、対象物11がチケットの場合、最初に、会場の入口にて、主催者はチケットに貼り付けられた第1層121の2次元コードと第2層122の2次元コードを重ね合わせることにより生成される2次元パターンを用いてチケットの真正性を確認する。チケットが真正であれば、主催者は参加者の入場を許可して、第2層122を第1層121から剥がす。そして、参加者が着席する際に、主催者は第1層121の2次元コードを用いてチケットの真正性を再度確認する。これにより、チケットに対して、主催者による二重照合を行うことで、不正入場やチケット偽造の被害リスクを減らすことができる。それゆえ、識別媒体12は、改竄、偽造、複製が容易ではない識別媒体となる。
【0046】
(第1変形例)
本実施形態の第1変形例を説明する。
【0047】
図11は、本変形例に係る識別媒体12aの構成を示す断面図である。図11に示すように、識別媒体12aは第1層121aと第2層122aからなる。第1層121aは、白濁又は透明な素材からなり、対象物11の表面に設けられる。第2層122aは、白濁又は透明な素材からなり、接着剤123aで第1層121aに貼り付けられて第1層121aに積層される。第1層121aと第2層122aのそれぞれの層には、照射部6から所定の波長のレーザビームを入射角αで識別媒体12aに照射すると、回折角βの方向に回折光を生成させるホログラムが形成されている。上記のホログラムは、例えばコンピュータ・ジェネレイテッド・ホログラム(CGH)である。なお、各層は、異なる波長のレーザビームにより互いに異なる回折角を生成させる複数のホログラムを有してもよい。また、第2層122aは、認証時に第2層122aに照射されるレーザビームの透過率が所定の小ささの素材から構成されても良い。これにより、認証時に、第1層121aからの反射光によって生じる明暗パターンを抑えることができる。接着剤123aは、第2層122aを第1層121aに貼り付けた後に、第2層122aを第1層121aから剥がすと、第1層121aと第2層122aとの再接着を妨げるような素材からなる。
【0048】
次に、対象物11の真正性を識別する方法を説明する。
【0049】
本変形例では、第1層121aと第2層122aのそれぞれのホログラムには、1つ以上の認証情報が記録してあることを管理者が予め知っていると想定する。なお、第1層121aのホログラムに記録された情報と、第2層122aのホログラムに記録された情報を組み合わせることにより、1つの認証情報が得られるとしても良い。
【0050】
管理者は、対象物11の真正性を確認するとき、対象物11を読取装置1に挿入する。そして、読取装置1は、第2層122aのホログラムから回折光を生じさせる波長のレーザビームを使用して、第2層122aのホログラムに記録された認証情報を読み取り、第2層122aのホログラムに記録された認証情報と識別部9に予め記憶された第1認証情報とを照合して、対象物11の真正性を識別する1回目の認証を行う。ここで、照射部6から照射されるレーザビームの出力パワー、照射部6と識別媒体12aの間の距離、撮像部7と識別媒体12aの間の距離、各層の厚さは、1回目の認証において、第1層121aからの反射光によって生じる明暗パターンに対して、第2層122aからの回折光を撮像部7が識別可能に撮像できるように設定されている。なお、第2層122aが、1回目の認証時に第2層122aに照射されるレーザビームの透過率が所定の小ささの素材から構成される場合には、照射部6から照射されるレーザビームの出力パワー、照射部6と識別媒体12aの間の距離、撮像部7と識別媒体12aの間の距離、各層の厚さは、第2層122aからの反射光によって生じる明暗パターンに対して、第2層122aからの回折光を撮像部7が識別可能に撮像できるように設定される。
【0051】
1回目の認証が終わると、読取装置1は、照合結果を表示して対象物11を排出する。管理者は、対象物11の真正性を確認すると、第2層122aを第1層121aから剥がした状態で対象物11を読取装置1に再挿入する。なお、読取装置1は、第2層122aのホログラムに記録された認証情報の照合に成功すると、対象物11を排出せずに、所定の機構(図示略)を用いて第2層122aを第1層121aから剥がしてもよい。そして、読取装置1は、第1層121aのホログラムから回折光を生じさせる波長のレーザビームを使用して、第1層121aのホログラムに記録された認証情報を読み取り、第1層121aのホログラムに記録された認証情報と識別部9に予め記憶された第2認証情報とを照合して、対象物11の真正性を識別する2回目の認証を行う。読取装置1が、複数の識別媒体12aから認証情報を読み取り、対象物11の真正性を識別する場合には、対象物11を適宜移動させて上記の認証を繰り返す。なお、通常は、第2層122aのホログラムのみを用いて対象物11の真正性を識別し、第2層122aのホログラムが改竄、偽造、又は複製された疑いがある場合に、第2層122aを第1層121aから剥がして、第1層121aのホログラムを用いて対象物11の真正性を識別してもよい。
【0052】
(第2変形例)
本実施形態の第2変形例を説明する。
【0053】
図12は、本変形例に係る識別媒体12bの構成を示す断面図である。図12に示すように、識別媒体12bは第1層121bと第2層122bからなる。第1層121bは、透明なポリカーボネート(PC)からなり、対象物11の表面に設けられる。第1層121bには、インク(例えば、顔料)で印刷された2次元コードが形成されている。第2層122bは、白濁又は透明な素材からなり、接着剤123bで第1層121bに貼り付けられて第1層121bに積層される。第2層122bには、照射部6から所定の波長のレーザビームを入射角αで識別媒体12bに照射すると、回折角βの方向に回折光を生成させるホログラムが形成されている。上記のホログラムは、例えばコンピュータ・ジェネレイテッド・ホログラム(CGH)である。なお、第2層122bは、異なる波長のレーザビームにより互いに異なる回折角を生成させる複数のホログラムを有してもよい。また、第2層122bは、認証時に第2層122bに照射されるレーザビームの透過率が所定の小ささの素材から構成されても良い。これにより、認証時に、第1層121bからの反射光によって生じる明暗パターンを抑えることができる。この場合、第1層121bに印刷されるインクの色を第2層122bの色に近い色になるように設定すれば、第2層122bを第1層121bに積層した状態で、第2層122bは第1層121bの2次元コードを隠蔽することができる。接着剤123bは、第2層122bを第1層121bに貼り付けた後に、第2層122bを第1層121bから剥がすと、第1層121bと第2層122bとの再接着を妨げるような素材からなる。
【0054】
次に、対象物11の真正性を識別する方法を説明する。
【0055】
本変形例では、第1層121bの2次元コードには1つの認証情報が記録してあり、第2層122bのホログラムには1つ以上の認証情報が記録してあることを管理者が予め知っていると想定する。なお、第1層121bの2次元コードに記録された情報と、第2層122bのホログラムに記録された1つ以上の情報を組み合わせることにより、1つの認証情報が得られるとしても良い。
【0056】
管理者は、対象物11の真正性を確認するとき、対象物11を読取装置1に挿入する。そして、読取装置1は、第2層122bのホログラムから回折光を生じさせる波長のレーザビームを使用して、第2層122bのホログラムに記録された認証情報を読み取り、第2層122bのホログラムに記録された認証情報と識別部9に予め記憶された第1認証情報とを照合して、対象物11の真正性を識別する1回目の認証を行う。ここで、照射部6から照射されるレーザビームの出力パワー、照射部6と識別媒体12bの間の距離、撮像部7と識別媒体12bの間の距離、各層の厚さは、1回目の認証において、第1層121bからの反射光によって生じる明暗パターンに対して、第2層122bからの回折光を撮像部7が識別可能に撮像できるように設定されている。なお、第2層122bが、1回目の認証時に第2層122aに照射されるレーザビームの透過率が所定の小ささの素材から構成される場合には、照射部6から照射されるレーザビームの出力パワー、照射部6と識別媒体12bの間の距離、撮像部7と識別媒体12bの間の距離、各層の厚さは、第2層122bからの反射光によって生じる明暗パターンに対して、第2層122bからの回折光を撮像部7が識別可能に撮像できるように設定される。
【0057】
1回目の認証が終わると、読取装置1は、照合結果を表示して対象物11を排出する。管理者は、対象物11の真正性を確認すると、第2層122bを第1層121bから剥がした状態で対象物11を読取装置1に再挿入する。なお、読取装置1は、第2層122bのホログラムに記録された認証情報の照合に成功すると、対象物11を排出せずに、所定の機構(図示略)を用いて第2層122bを第1層121bから剥がしてもよい。そして、読取装置1は、白色光又は1回目の認証で使用した波長と同じ又は異なる波長のレーザビームを使用して、第1層121bの2次元コードに記録された認証情報を読み取り、第1層121bの2次元コードに記録された認証情報と識別部9に予め記憶された第2認証情報とを照合して、対象物11の真正性を識別する2回目の認証を行う。読取装置1が、複数の識別媒体12bから認証情報を読み取り、対象物11の真正性を識別する場合には、対象物11を適宜移動させて上記の認証を繰り返す。なお、通常は、第2層122bのホログラムのみを用いて対象物11の真正性を識別し、第2層122bのホログラムが改竄、偽造、又は複製された疑いがある場合に、第2層122bを第1層121bから剥がして、第1層121bの2次元コードを用いて対象物11の真正性を識別してもよい。
【0058】
(第3変形例)
本実施形態の第3変形例を説明する。
【0059】
図13は、本変形例に係る識別媒体12cの構成を示す断面図である。図13に示すように、識別媒体12cは第1層121cと第2層122cからなる。第1層121cは、白濁又は透明な素材からなり、対象物11の表面に設けられる。第1層121cには、照射部6から所定の波長のレーザビームを入射角αで識別媒体12cに照射すると、回折角βの方向に回折光を生成させるホログラムが形成されている。上記のホログラムは、例えばコンピュータ・ジェネレイテッド・ホログラム(CGH)である。なお、第1層121cは、異なる波長のレーザビームにより互いに異なる回折角を生成させる複数のホログラムを有してもよい。第2層122cは、透明なポリカーボネート(PC)からなり、接着剤123cで第1層121cに貼り付けられて第1層121cに積層される。第2層122cには、照射部6から照射される所定の波長のレーザビームの反射率が所定の大きさの素材で印刷された2次元コードが形成されている。接着剤123cは、第2層122cを第1層121cに貼り付けた後に、第2層122cを第1層121cから剥がすと、第1層122cと第2層122cとの再接着を妨げるような素材からなる。
【0060】
次に、対象物11の真正性を識別する方法を説明する。
【0061】
本変形例では、第1層121cのホログラムには1つ以上の認証情報が記録してあり、第2層122cの2次元コードには1つの認証情報が記録してあることを管理者が予め知っていると想定する。なお、第1層121cのホログラムに記録された1つ以上の情報と、第2層122cの2次元コードに記録された情報を組み合わせることにより、1つの認証情報が得られるとしても良い。
【0062】
管理者は、対象物11の真正性を確認するとき、対象物11を読取装置1に挿入する。そして、読取装置1は、第2層122cの2次元コードを形成する素材で反射する割合が所定の大きさの波長のレーザビームを使用して、第2層122cの2次元コードに記録された認証情報を読み取り、第2層122cの2次元コードに記録された認証情報と識別部9に予め記憶された第1認証情報とを照合して、対象物11の真正性を識別する1回目の認証を行う。ここで、照射部6から照射されるレーザビームの出力パワー、照射部6と識別媒体12cの間の距離、撮像部7と識別媒体12cの間の距離、各層の厚さは、1回目の認証において、第1層121cからの反射光によって生じる明暗パターンに対して、第2層122cからの反射光による2次元コードを撮像部7が識別可能に撮像できるように設定されている。
【0063】
1回目の認証が終わると、読取装置1は、照合結果を表示して対象物11を排出する。管理者は、対象物11の真正性を確認すると、第2層122cを第1層121cから剥がした状態で対象物11を読取装置1に再挿入する。なお、読取装置1は、第2層122cの2次元コードに記録された認証情報の照合に成功すると、対象物11を排出せずに、所定の機構(図示略)を用いて第2層122cを第1層121cから剥がしてもよい。そして、読取装置1は、第1層121cのホログラムから回折光を生じさせる波長のレーザビームを使用して、第1層121cのホログラムに記録された認証情報を読み取り、第1層121cのホログラムに記録された認証情報と識別部9に予め記憶された第2認証情報とを照合して、対象物11の真正性を識別する2回目の認証を行う。読取装置1が、複数の識別媒体12cから認証情報を読み取り、対象物11の真正性を識別する場合には、対象物11を適宜移動させて上記の認証を繰り返す。なお、通常は、第2層122cの2次元コードのみを用いて対象物11の真正性を識別し、第2層122cの2次元コードが改竄、偽造、又は複製された疑いがある場合に、第2層122cを第1層121cから剥がして、第1層121cのホログラムを用いて対象物11の真正性を識別してもよい。
【0064】
(第4変形例)
本実施形態の第4変形例を説明する。
【0065】
図14は、本変形例に係る識別媒体12dの構成を示す断面図である。図14に示すように、識別媒体12dは、第1層121d、第2層122d、第3層124dからなる。
【0066】
第1層121dは、透明なポリカーボネート(PC)からなり、対象物11の表面に設けられる。第1層121dには、インク(例えば、顔料)で印刷された2次元コードが形成されている。第2層122dは、白濁又は透明な素材からなり、接着剤123d_1で第1層121dに貼り付けられて第1層121dに積層される。第2層122dには、照射部6から所定の波長のレーザビームを入射角αで識別媒体12bに照射すると、回折角βの方向に回折光を生成させるホログラムが形成されている。上記のホログラムは、例えばコンピュータ・ジェネレイテッド・ホログラム(CGH)である。なお、第2層122dは、異なる波長のレーザビームにより互いに異なる回折角を生成させる複数のホログラムを有してもよい。また、第2層122dは、認証時に第2層122dに照射されるレーザビームの透過率が所定の小ささの素材から構成されても良い。これにより、認証時に、第1層121dからの反射光によって生じる明暗パターンを抑えることができる。第1層121dに印刷されるインクの色を第2層122dの色に近い色になるように設定すれば、第2層122dを第1層121dに積層した状態で、第2層122dは第1層121dの2次元コードを隠蔽することができる。接着剤123d_1は、第2層122dを第1層121dに貼り付けた後に、第2層122dを第1層121dから剥がすと、第1層121dと第2層122dとの再接着を妨げるような素材からなる。第3層124dは、透明なポリカーボネート(PC)からなり、接着剤123d_2で第2層122dに貼り付けられて第2層122dに積層される。第3層124dには、照射部6から照射される所定の波長のレーザビームの反射率が所定の大きさの素材で印刷された2次元コードが形成されている。接着剤123d_2は、第3層124dを第2層122dに貼り付けた後に、第3層124dを第2層122dから剥がすと、第2層122dと第3層124dとの再接着を妨げるような素材からなる。本変形例では、第1層121dと第3層124dは、第1実施形態の第1層121と第2層122にそれぞれ対応するものとして説明する。
【0067】
次に、対象物11の真正性を識別する方法を説明する。
【0068】
本変形例では、第1層121dの2次元コードには1つの認証情報が記録してあり、第2層122dのホログラムには1つ以上の認証情報が記録してあり、第3層124dの2次元コードには第1層121dの2次元コードに記録された認証情報を隠蔽するためのダミーコードが記録してあることを管理者が予め知っていると想定する。なお、第1層121dの2次元コードに記録された情報と、第2層122dのホログラムに記録された1つ以上の情報を組み合わせることにより、1つの認証情報が得られるとしても良い。
【0069】
管理者は、対象物11の真正性を確認するとき、第3層124dを第2層122dから剥がした状態で対象物11を読取装置1に挿入する。そして、読取装置1は、読取装置1は、第2層122dのホログラムから回折光を生じさせる波長のレーザビームを使用して、第2層122dのホログラムに記録された認証情報を読み取り、第2層122dのホログラムに記録された認証情報と識別部9に予め記憶された第1認証情報とを照合して、対象物11の真正性を識別する1回目の認証を行う。ここで、照射部6から照射されるレーザビームの出力パワー、照射部6と識別媒体12dの間の距離、撮像部7と識別媒体12dの間の距離、各層の厚さは、1回目の認証において、第1層121dからの反射光によって生じる明暗パターンに対して、第2層122dからの回折光を撮像部7が識別可能に撮像できるように設定されている。なお、第2層122dが、1回目の認証時に第2層122dに照射されるレーザビームの透過率が所定の小ささの素材から構成される場合には、照射部6から照射されるレーザビームの出力パワー、照射部6と識別媒体12dの間の距離、撮像部7と識別媒体12dの間の距離、各層の厚さは、第2層122dからの反射光によって生じる明暗パターンに対して、第2層122dからの回折光を撮像部7が識別可能に撮像できるように設定されている。
【0070】
1回目の認証が終わると、読取装置1は、照合結果を表示して対象物11を排出する。管理者は、対象物11の真正性を確認すると、第2層122dを第1層121dから剥がした状態で対象物11を読取装置1に再挿入する。なお、読取装置1は、第2層122dのホログラムに記録された認証情報の照合に成功すると、対象物11を排出せずに、所定の機構(図示略)を用いて第2層122dを第1層121dから剥がしてもよい。そして、読取装置1は、白色光又は1回目の認証で使用した波長と同じ又は異なる波長のレーザビームを使用して、第1層121dの2次元コードに記録された認証情報を読み取り、第1層121dの2次元コードに記録された認証情報と識別部9に予め記憶された第2認証情報とを照合して、対象物11の真正性を識別する2回目の認証を行う。読取装置1が、複数の識別媒体12bから認証情報を読み取り、対象物11の真正性を識別する場合には、対象物11を適宜移動させて上記の認証を繰り返す。なお、通常は、第2層122dのホログラムのみを用いて対象物11の真正性を識別し、第2層122dのホログラムが改竄、偽造、又は複製された疑いがある場合に、第2層122dを第1層121dから剥がして、第1層121dの2次元コードを用いて対象物11の真正性を識別してもよい。
【0071】
本認証の使用例として、第1実施形態の2段階認証の使用例が挙げられる。本認証では、第1実施形態の2段階認証の利点に加えて、対象物11の認証情報を記録した第1層121dの2次元コードを外部から視認できないので、悪意の第三者に対象物11の認証情報を気付かせないことができる。
【0072】
一方、第1層121dの2次元コードと第3層124dの2次元コードを第2層122dを介して重ね合わせることにより生成される2次元パターンに対象物11の認証情報が記録されている場合には、3段階の認証が可能である。なお、上記の2次元パターンに記録された情報と、第1層121dの2次元コードに記録された情報、及び/又は第2層122dのホログラムに記録された1つ以上の情報を組み合わせることにより、1つの認証情報が得られるとしても良い。
【0073】
3段階認証では、管理者は、対象物11の真正性を確認するとき、第3層124dを第2層122dに貼り付けた状態で対象物11を読取装置1に挿入する。そして、読取装置1は、第1層121dの2次元コードと第3層124dの2次元コードを第2層122dを介して重ね合わせることにより生成される2次元コードに記録された認証情報と識別部9に予め記憶された第1認証情報とを照合して、対象物11の真正性を識別する1回目の認証を行う。なお、読取装置1が第3層124dの2次元コードに記録された情報のみを読み取る場合には、照射部6から照射されるレーザビームの出力パワー、照射部6と識別媒体12dの間の距離、撮像部7と識別媒体12dの間の距離、各層の厚さは、1回目の認証において、第1層121dと第2層122dからの反射光によって生じる明暗パターンに対して、第3層124dからの反射光による2次元コードを撮像部7が識別可能に撮像できるように設定されている。
【0074】
1回目の認証が終わると、読取装置1は、照合結果を表示して対象物11を排出する。管理者は、対象物11の真正性を確認すると、第3層124dを第2層122dから剥がした状態で対象物11を読取装置1に再挿入する。なお、読取装置1は、識別媒体12の2次元コードの照合に成功すると、対象物11を排出せずに、所定の機構(図示略)を用いて第3層124dを第2層122dから剥がしてもよい。そして、読取装置1は、本変形例の2段階認証と同様に、第2層122dのホログラム記録された認証情報と識別部9に予め記憶された第2認証情報とを照合して、対象物11の真正性を識別する2回目の認証と、第1層121dの2次元コードに記録された認証情報と識別部9に予め記憶された第3認証情報とを照合して、対象物11の真正性を識別する3回目の認証を行う。読取装置1が、複数の識別媒体12から認証情報を読み取り、対象物11の真正性を識別する場合には、対象物11を適宜移動させて3段階認証を繰り返す。また、通常は、第1層121dの2次元コードと第3層124dの2次元コードを第2層122dを介して重ね合わせることにより生成される2次元パターンのみを用いて対象物11の真正性を識別し、上記の2次元パターンが改竄、偽造、又は複製された疑いがある場合に、第3層124dを第2層122dから剥がして、第2層122dのホログラムを用いて対象物11の真正性を識別してもよい。
【0075】
3段階認証では、読取装置1は、白色光又は第3層124dの2次元コードを形成する素材で反射する割合が所定の大きさの波長のレーザビームを使用して1回目の認証を行い、第2層122dのホログラムから回折光を生じさせる波長のレーザビームを使用して2回目の認証を行い、白色光又は1及び/又は2回目の認証で使用した波長と同じ又は異なる波長のレーザビームを使用して3回目の認証を行う。例えば、第3層124dの2次元コードを形成する素材としてシリコン化合物を採用する場合、読取装置1は、白色光又は青色レーザビームを使用して1回目と3回目の認証を行う。また、読取装置1が、第3層124dの2次元コードを形成する素材を透過する割合が所定の大きさの波長のレーザビームを使用して第1層121dの2次元コードに記録された認証情報を読み取る場合には、第3層124dと第2層122dを第1層121dから剥がさなくてもよい。例えば、第3層124dの2次元コードを形成する素材としてシリコン化合物を採用する場合、図9に示すように、シリコン化合物は、波長650nmのレーザビーム(赤色レーザビーム)に対して所定の大きさの透過率を有するので、読取装置1は、第3層124dと第2層122dを透過する赤色レーザビームを使用して第1層121dの2次元コードに記録された認証情報を直接読み取る。
【0076】
3段階認証の使用例として、1回限り有効の対象物(例えば、商品パッケージ、チケット、カード、金券、証書)の認証が挙げられる。対象物11が商品パッケージの場合、最初に、店員は、業者から納入された商品パッケージに貼り付けられた第1層121dの2次元コードと第3層124dの2次元コードを第2層122dを介して重ね合わせることにより生成される2次元パターンを用いて商品パッケージの真正性を確認する。店員は、商品パッケージが真正であれば、第3層124dを第2層122dから剥がす。次に、顧客は、陳列された商品パッケージに貼り付けられた第2層122dのホログラムを用いて商品パッケージの真正性を確認する。そして、その商品パッケージを実際に購入する際に、店員は第2層122dを第1層121dから剥がして、第1層121dの2次元コードを用いて商品パッケージの真正性を確認する。これにより、購入対象の商品パッケージに対して、顧客と店員による相互照合を行うことで、偽造品の被害リスクを減らすことができる。また、対象物11がチケットの場合、最初に、会場の入口にて、主催者はチケットに貼り付けられた第1層121dの2次元コードと第3層124dの2次元コードを第2層122dを介して重ね合わせることにより生成される2次元パターンを用いてチケットの真正性を確認する。チケットが真正であれば、主催者は参加者の入場を許可して、第3層124dを第2層122dから剥がす。そして、参加者が着席する際に、主催者は第2層122dのホログラムを用いてチケットの真正性を再度確認する。チケットが真正であれば、主催者は第2層122dを第1層121dから剥がす。最後に、イベント終了後に記念品が参加者に配られる際に、主催者は第1層121dの2次元コードを用いてチケットの真正性を確認する。これにより、チケットに対して、主催者による三重照合を行うことで、不正入場、記念品の不正受取、チケット偽造の被害リスクを減らすことができる。
【0077】
(第5変形例)
本実施形態の第5変形例を説明する。
【0078】
図15は、本変形例に係る識別媒体12eの構成を示す断面図である。図15に示すように、識別媒体12eは、第1層121e、第2層122e、第3層124eからなる。
【0079】
第1層121eは、白濁又は透明な素材からなり、対象物11の表面に設けられる。第1層121eには、照射部6から所定の波長のレーザビームを入射角αで識別媒体12eに照射すると、回折角βの方向に回折光を生成させるホログラムが形成されている。上記のホログラムは、例えばコンピュータ・ジェネレイテッド・ホログラム(CGH)である。なお、第1層121eは、異なる波長のレーザビームにより互いに異なる回折角を生成させる複数のホログラムを有してもよい。第2層122eは、透明なポリカーボネート(PC)からなり、接着剤123e_1で第1層121eに貼り付けられて第1層121eに積層される。第2層122eには、照射部6から照射される所定の波長のレーザビームの反射率が所定の大きさの素材で印刷された2次元コードが形成されている。接着剤123e_1は、第2層122eを第1層121eに貼り付けた後に、第2層122eを第1層121eから剥がすと、第1層121eと第2層122eとの再接着を妨げるような素材からなる。第3層124eは、白濁又は透明な素材からなり、接着剤123e_2で第2層122eに貼り付けられて第2層122eに積層される。第3層124eには、照射部6から所定の波長のレーザビームを入射角αで識別媒体12eに照射すると、回折角βの方向に回折光を生成させるホログラムが形成されている。上記のホログラムは、例えばコンピュータ・ジェネレイテッド・ホログラム(CGH)である。なお、第3層124eは、異なる波長のレーザビームにより互いに異なる回折角を生成させる複数のホログラムを有してもよい。また、第3層124eは、認証時に第3層124eに照射されるレーザビームの透過率が所定の小ささの素材から構成されても良い。これにより、認証時に、第1層121eと第2層122eからの反射光によって生じる明暗パターンを抑えることができる。この場合、第3層124eの色を第2層122eの2次元コードを形成する素材の色に近い色になるように設定すれば、第3層124eを第2層122eに積層した状態で、第3層124eは第2層122eの2次元コードを隠蔽することができる。接着剤123d_2は、第3層124eを第2層122eに貼り付けた後に、第3層124eを第2層122eから剥がすと、第2層122eと第3層124eとの再接着を妨げるような素材からなる。
【0080】
次に、対象物11の真正性を識別する方法を説明する。
【0081】
本変形例では、第1層121eのホログラムには1つ以上の認証情報が記録してあり、第2層122eの2次元コードには1つの認証情報が記録してあり、第3層124eのホログラムには1つ以上の認証情報が記録してあることを管理者が予め知っていると想定する。なお、第1層121eのホログラムに記録された1つ以上の情報と、第2層122eの2次元コードに記録された情報と、第3層124eのホログラムに記録された1つ以上の情報を組み合わせることにより、1つの認証情報が得られるとしても良い。
【0082】
管理者は、対象物11の真正性を確認するとき、対象物11を読取装置1に挿入する。そして、読取装置1は、第3層124eのホログラムから回折光を生じさせる波長のレーザビームを使用して、第3層124eのホログラムに記録された認証情報を読み取り、第3層124eのホログラムに記録された認証情報と識別部9に予め記憶された第1認証情報とを照合して、対象物11の真正性を識別する1回目の認証を行う。ここで、照射部6から照射されるレーザビームの出力パワー、照射部6と識別媒体12eの間の距離、撮像部7と識別媒体12eの間の距離、各層の厚さは、1回目の認証において、第1層121eと第2層122eからの反射光によって生じる明暗パターンに対して、第3層124eからの回折光を撮像部7が識別可能に撮像できるように設定されている。なお、第3層124eが、1回目の認証時に第3層124eに照射されるレーザビームの透過率が所定の小ささの素材から構成される場合には、照射部6から照射されるレーザビームの出力パワー、照射部6と識別媒体12eの間の距離、撮像部7と識別媒体12eの間の距離、各層の厚さは、第3層124eからの反射光によって生じる明暗パターンに対して、第3層124eからの回折光を撮像部7が識別可能に撮像できるように設定される。
【0083】
1回目の認証が終わると、読取装置1は、照合結果を表示して対象物11を排出する。管理者は、対象物11の真正性を確認すると、第3層124eを第2層122eから剥がした状態で対象物11を読取装置1に再挿入する。なお、読取装置1は、第3層124eのホログラムに記録された認証情報の照合に成功すると、対象物11を排出せずに、所定の機構(図示略)を用いて第3層124eを第2層122eから剥がしてもよい。そして、読取装置1は、第2層122eの2次元コードを形成する素材で反射する割合が所定の大きさの波長のレーザビームを使用して、第2層122eの2次元コードに記録された認証情報を読み取り、第1層122eの2次元コードに記録された認証情報と識別部9に予め記憶された第2認証情報とを照合して、対象物11の真正性を識別する2回目の認証を行う。ここで、照射部6から照射されるレーザビームの出力パワー、照射部6と識別媒体12eの間の距離、撮像部7と識別媒体12eの間の距離、各層の厚さは、2回目の認証において、第1層121eからの反射光によって生じる明暗パターンに対して、第2層122eからの反射光による2次元コードを撮像部7が識別可能に撮像できるように設定されている。
【0084】
2回目の認証が終わると、読取装置1は、照合結果を表示して対象物11を排出する。管理者は、対象物11の真正性を確認すると、第2層122eを第1層121eから剥がした状態で対象物11を読取装置1に再挿入する。なお、読取装置1は、第2層122eの2次元コードに記録された認証情報の照合に成功すると、対象物11を排出せずに、所定の機構(図示略)を用いて第2層122eを第1層121eから剥がしてもよい。そして、読取装置1は、第1層121eのホログラムから回折光を生じさせる波長のレーザビームを使用して、第1層121eのホログラムに記録された認証情報を読み取り、第1層121eのホログラムに記録された認証情報と識別部9に予め記憶された第3認証情報とを照合して、対象物11の真正性を識別する3回目の認証を行う。読取装置1が、複数の識別媒体12cから認証情報を読み取り、対象物11の真正性を識別する場合には、対象物11を適宜移動させて上記の認証を繰り返す。
【0085】
(他の変形例)
本実施形態の他の変形例として、2次元コードを形成した第1乃至3層からなる識別媒体、2次元コードを形成した第1,2層とホログラムを形成した第3層からなる識別媒体、2次元コードを形成した第1層とホログラムを形成した第2,3層からなる識別媒体、ホログラムを形成した第1乃至3層からなる識別媒体、ホログラムを形成した第1,2層と2次元コードを形成した第3層からなる識別媒体、ホログラムを形成した第1層と2次元コードを形成した第2,3層からなる識別媒体が挙げられる。
【0086】
また、第1実施形態の識別媒体12、第1乃至5変形例の識別媒体12a−12e、本変形例の識別媒体を適宜組み合わせて、各層に2次元コード又はホログラムが形成された4層以上からなる識別媒体を作成してもよい。
【0087】
更に、読取装置1からセンサ2、駆動部4、搬送機構5を取り除いて、読取装置の読取面を手動で移動させて、読取装置に識別媒体から情報を読み取らせてもよい。
【0088】
(第2実施形態)
図16は、本実施形態に係る識別媒体22の構成を示す断面図である。図17は、図16に示した識別媒体22の第2層222を第1層221から分離した前後における、識別媒体22の1次元コードのビット列を示した説明図である。なお、第1層221の1次元コードを出現させた状態において、断面から見て凸部を”1”に凹部を”0”にコードしている。
【0089】
図16に示すように、識別媒体22は第1層221と第2層222からなる。第1層221は、透明なポリカーボネート(PC)からなり、対象物11の表面に設けられる。第1層221は、第1部位221_1と第2部位221_2に分離可能な情報層である。第1部位221_1の上面には、物理的な切り込み(微細な段差パターン)で形成された2次元コードが形成されている。第2部位221_2の下面には、第1部位221_1の2次元コードを反転させた、物理的な切り込み(微細な段差パターン)で形成されたダミー2次元コードが形成されている。第2部位221_2の下面を第1部位221_1の上面に重ね合わせると、第2部位221_2は第1部位221_1に噛み合う。第2層222は、透明なポリカーボネート(PC)からなり、接着剤223で第1層221に貼り付けられて第1層221に積層される。第2層222は、第1層221を保護する透明カバーフィルムである。接着剤223は、透明なUV樹脂からなり、PC等の有機系材料の屈折率に近い屈折率を有している。接着剤223はPC等の有機系材料に対して接着性が強いので、第2層222を第1層221から剥がすと、第2層222と第1層221の第2部位221_2が第1層221の第1部位221_1から分離して、第1部位221_1の上面に形成された2次元コードが出現する。
【0090】
次に、対象物11の真正性を識別する方法を説明する。
【0091】
本実施形態では、第1層221の第1部位221_1の2次元コードには1つの認証情報が記録してあることを管理者が予め知っていると想定する。管理者は、対象物11の真正性を確認するとき、第2層222を第1層221から剥がして、第1層221の第1部位221_1の上面に形成された2次元コードを出現させる。そして、管理者は、第1部位221_1の上面に形成された微細な段差パターンに触れて、第1部位221_1の2次元コードに記録された認証情報と正規の認証情報とを照合して、対象物11の真正性を識別する。
【0092】
本認証の使用例として、1回限り有効の対象物(例えば、商品パッケージ、チケット、カード、金券、証書)の認証が挙げられる。第1層221、第2層222、接着剤223は、屈折率がほぼ等しい透明な素材からなるので、第2層222を第1層221に積層した状態では、対象物11の認証情報を記録した第1層221の2次元コードは外部から視認されない(図17参照)。それゆえ、悪意の第三者に対象物11の認証情報を気付かせないことができるので、識別媒体22は、改竄、偽造、複製が容易ではない識別媒体となる。また、第1層221の第1部位221_1の上面に形成される物理的な切り込みを目視で充分に確認できる大きさで形成すれば、段差パターンによって生じた幾何学模様(窪みの数、配列、大きさ)を視認することで、対象物11の真正性を確認することができる。例えば、識別媒体22の改造、偽造、複製が疑われる場合に、第2層222を第1層221から剥がして、第1層221の第1部位221_1の上面の幾何学模様を正規の幾何学模様と照合することにより、識別媒体22の真正性を確認するといった簡易な確認を行うことができる。
【0093】
(変形例)
本実施形態の変形例を説明する。
【0094】
図18は、本変形例に係る識別媒体22aの構成を示す断面図である。図19は、図18に示した識別媒体22aの第3層224aを第2層222aから分離した前後における、識別媒体22の1次元コードのビット列を示した説明図である。なお、着色箇所を”1”に無着色箇所を”0”にコードしている。
【0095】
図18に示すように、識別媒体22aは、第1層221a、第2層222a、第3層224aからなる。第1層221aは、透明なポリカーボネート(PC)からなり、対象物11の表面に設けられる。第1層221aには、インク(例えば、顔料)で印刷された2次元コードが形成されている。第2層222aは、透明なポリカーボネート(PC)からなり、接着剤223a_1で第1層221aに貼り付けられて第1層221aに積層される。第2層222aは、第1部位222a_1と第2部位222a_2に分離可能な情報層である。第1部位222a_1の上面には、物理的な切り込み(微細な段差パターン)で形成された2次元コードが形成されている。第2部位222a_2の下面には、第1部位222a_1の2次元コードを反転させた、物理的な切り込み(微細な段差パターン)で形成されたダミー2次元コードが形成されている。第2部位222a_2の下面を第1部位222a_1の上面に重ね合わせると、第2部位222a_2は第1部位222a_1に噛み合う。第3層224aは、透明なポリカーボネート(PC)からなり、接着剤223a_2で第2層222aに貼り付けられて第2層222aに積層される。第3層224aは、第2層222aを保護する透明カバーフィルムである。接着剤223a_1,223a_2は、透明なUV樹脂からなり、PC等の有機系材料の屈折率に近い屈折率を有している。接着剤223a_2はPC等の有機系材料に対して接着性が強いので、第3層224aを第2層222aから剥がすと、第3層224aと第2層222aの第2部位222a_2が第2層222aの第1部位222a_1から分離して、第1部位222a_1の上面に形成された2次元コードが出現する。
【0096】
次に、対象物11の真正性を識別する方法を説明する。
【0097】
本変形例では、第1層221aの2次元コードには1つの認証情報が記録してあり、第2層222aの第1部位222a_1の2次元コードには1つの認証情報が記録してあることを管理者が予め知っていると想定する。管理者は、対象物11の真正性を確認するとき、対象物11を読取装置1に挿入する。そして、読取装置1は、白熱光又は任意のレーザビームを使用して、第1層221aの2次元コードに記録された認証情報を読み取り、第1層221aの2次元コードに記録された認証情報と識別部9に予め記憶された認証情報とを照合して、対象物11の真正性を識別する。一方で、管理者は、第3層224aを第2層222aから剥がして、第2層222aの第1部位222a_1の上面に形成された2次元コードを出現させる。そして、管理者は、第1部位222a_1の上面に形成された微細な段差パターンに触れて、第1部位222a_1の2次元コードに記録された認証情報と正規の認証情報とを照合して、対象物11の真正性を識別する。
【0098】
本認証の使用例として、1回限り有効の対象物(例えば、商品パッケージ、チケット、カード、金券、証書)の認証が挙げられる。第2層222a、第3層224a、接着剤223a_2は、屈折率がほぼ等しい透明な素材からなるので、第3層224aを第2層222aに積層した状態では、対象物11の認証情報を記録した第2層222aの2次元コードは外部から視認されない。それゆえ、悪意の第三者に対象物11の認証情報の一部を気付かせないことができるので、識別媒体22は、改竄、偽造、複製が容易ではない識別媒体となる。また、第2層222aの第1部位222a_1の上面に形成される物理的な切り込みを目視で充分に確認できる大きさで形成すれば、段差パターンによって生じた幾何学模様(窪みの数、配列、大きさ)を視認することで、対象物11の真正性を確認することができる。例えば、識別媒体22の改造、偽造、複製が疑われる場合に、第3層224aを第2層222aから剥がして、第2層222aの第1部位222a_1の上面の幾何学模様を正規の幾何学模様と照合することにより、識別媒体22の真正性を確認するといった簡易な確認を行うことができる。
【符号の説明】
【0099】
1 読取装置
3 制御部
6 照射部
7 撮像部
9 識別部
11 対象物
12,12a,12b,12c,12d,12e 識別媒体
22,22a 識別媒体
121,121a,121b,121c,121d,121e 第1層
122,122a,122b,122c,122d,122e 第2層
123,123a,123b,123c 接着剤
123d_1,123d_2,123e_1,123e_2 接着剤
124d,124e 第3層
221,221a 第1層
222,222a 第2層
223,223a_1,223a_2 接着剤
224a 第3層
【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象物の真正性を識別するための識別媒体であって、
前記対象物に積み重ねられる複数の層を備え、
各層には、カラー2次元コード又はホログラムが形成されていることを特徴とする識別媒体。
【請求項2】
各層には、白色光又は所定の波長のレーザビームによって読み取られる、前記対象物の真正性を識別する情報を記録したカラー2次元コード又はホログラムが形成されていることを特徴とする請求項1に記載の識別媒体。
【請求項3】
最上層の下方に位置する層には、前記対象物の真正性を識別する情報を記録したカラー2次元コードが形成されており、
前記最上層には、前記最上層の下方に位置する層の前記カラー2次元コードを隠蔽するカラー2次元コードが形成されていることを特徴とする請求項1に記載の識別媒体。
【請求項4】
各層を直下の層に貼り付ける接着剤を更に備え、
前記接着剤は、各層を直下の層から剥がすと、前記層と前記直下の層との再接着を妨げるような素材からなることを特徴とする請求項1に記載の識別媒体。
【請求項5】
対象物の真正性を識別するための識別媒体であって、
前記対象物に設けられる基層と、
前記基層に積み重ねられる複数の層と、
を備え、
前記基層には、インクで印刷されたカラー2次元コード、又は所定の波長のレーザビームを所定の方向に回折させるホログラムが形成されており、
前記複数の層の各々には、所定の波長のレーザビームの反射率が所定の大きさの素材で印刷されたカラー2次元コード、又は所定の波長のレーザビームを所定の方向に回折させるホログラムが形成されていることを特徴とする識別媒体。
【請求項6】
対象物の真正性を識別するための識別媒体であって、
前記対象物に積み重ねられる複数の層を備え、
前記複数の層のうちの少なくとも1つの層は、前記対象物の真正性を識別する情報を記録した凹凸面を有する第1部位と、前記凹凸面に噛み合う面を有する第2部位とに分離可能な情報層であり、
前記情報層から直上の層が剥がされるとき、前記第2部位は前記直上の層と一緒に剥がされて、前記第1部位の凹凸面が出現することを特徴とする識別媒体。
【請求項1】
対象物の真正性を識別するための識別媒体であって、
前記対象物に積み重ねられる複数の層を備え、
各層には、カラー2次元コード又はホログラムが形成されていることを特徴とする識別媒体。
【請求項2】
各層には、白色光又は所定の波長のレーザビームによって読み取られる、前記対象物の真正性を識別する情報を記録したカラー2次元コード又はホログラムが形成されていることを特徴とする請求項1に記載の識別媒体。
【請求項3】
最上層の下方に位置する層には、前記対象物の真正性を識別する情報を記録したカラー2次元コードが形成されており、
前記最上層には、前記最上層の下方に位置する層の前記カラー2次元コードを隠蔽するカラー2次元コードが形成されていることを特徴とする請求項1に記載の識別媒体。
【請求項4】
各層を直下の層に貼り付ける接着剤を更に備え、
前記接着剤は、各層を直下の層から剥がすと、前記層と前記直下の層との再接着を妨げるような素材からなることを特徴とする請求項1に記載の識別媒体。
【請求項5】
対象物の真正性を識別するための識別媒体であって、
前記対象物に設けられる基層と、
前記基層に積み重ねられる複数の層と、
を備え、
前記基層には、インクで印刷されたカラー2次元コード、又は所定の波長のレーザビームを所定の方向に回折させるホログラムが形成されており、
前記複数の層の各々には、所定の波長のレーザビームの反射率が所定の大きさの素材で印刷されたカラー2次元コード、又は所定の波長のレーザビームを所定の方向に回折させるホログラムが形成されていることを特徴とする識別媒体。
【請求項6】
対象物の真正性を識別するための識別媒体であって、
前記対象物に積み重ねられる複数の層を備え、
前記複数の層のうちの少なくとも1つの層は、前記対象物の真正性を識別する情報を記録した凹凸面を有する第1部位と、前記凹凸面に噛み合う面を有する第2部位とに分離可能な情報層であり、
前記情報層から直上の層が剥がされるとき、前記第2部位は前記直上の層と一緒に剥がされて、前記第1部位の凹凸面が出現することを特徴とする識別媒体。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【公開番号】特開2012−173336(P2012−173336A)
【公開日】平成24年9月10日(2012.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−32255(P2011−32255)
【出願日】平成23年2月17日(2011.2.17)
【出願人】(308036402)株式会社JVCケンウッド (1,152)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年9月10日(2012.9.10)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年2月17日(2011.2.17)
【出願人】(308036402)株式会社JVCケンウッド (1,152)
【Fターム(参考)】
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