説明

識別子、識別子読み取り端末装置及び識別子読み取り方法

【課題】容易に精度良く情報を読み取れる識別子を提供する。
【解決手段】平面状のベース部10の表面に、ドット状の突起11,12,13をデジタル情報に基づいた配列で形成させて、識別子を構成する。この識別子を圧力センサアレイなどのセンサ部で読み取り、各種識別用のコードとして利用する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、デジタル情報を表示する識別子、及びその識別子を読み取る識別子読み取り端末装置、並びに識別子を読み取る識別子読み取り方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、紙などに印刷した識別子であるコードを、スキャナで読み取って情報を得る技術として、バーコードを使用したものが普及している。このバーコードは、1つの方向(一次元)での配列に情報を持たせてあり、例えば1つのバーコードで数桁から十数桁程度の数字を表す。このような一次元コードであるバーコードは、記録できる情報量に限りがある。
【0003】
これに対して、水平方向と垂直方向の2つの方向を利用して、高密度に情報を記録できるコードとして、二次元コードが各種開発され、普及している。二次元コードには、バーコードなどの一次元のコードを複数段に積み上げたスタック型二次元コードと、マトリクス型にコードを展開したマトリクス型二次元コードとがある。マトリクス型二次元コードとしては、例えばQRコード(登録商標)が知られている。なお、以下の説明では、これらの二次元コードを、二次元バーコードと称する場合がある。
【0004】
マトリクス型二次元コードは、バーコードよりも狭い面積で、多数の情報を表すことができ、効率的な識別子として普及している。また、マトリクス型二次元コードは、携帯電話端末が内蔵するカメラで撮影してコードを読み取ることが可能であり、携帯電話端末の普及と共に利用が増えている。
特許文献1には、ディスクの表面にマトリクス型二次元コードを印刷する例についての記載がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010−262693号公報(図35)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、二次元コードは、水平方向と垂直方向に比較的高密度にドットを配置したパターンであり、コードを読み取るために、携帯電話端末が内蔵するカメラなどで撮影する場合、比較的時間がかかる問題があった。
すなわち、カメラで二次元コードを撮影する際には、端末のカメラ機能を立ち上げた後、そのコードが印刷された紙の表面に正確にフォーカスを合わせる必要がある。さらに、カメラで撮影された画像からアライメントマークを検出してコードを検出する必要があり、実際にユーザが操作を開始してから、コードを読み取るまでに、比較的長い時間が必要であった。
【0007】
本開示は、従来の二次元コードよりも簡便な読み取りが可能になる効率的な識別子と、その識別子の読み取り端末装置及び読み取り方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示の識別子は、平面状のベース部と、デジタル情報に基づいた配列で、ベース部の表面に配置した複数の突起とを備える。
このような構成の識別子によると、複数の突起を配置したパターンでデジタル情報を伝えることが可能になる。
【0009】
また本開示の識別子読み取り端末装置は、平面状のベース部の表面に配置された複数の突起の配置パターンを検出するセンサ部を備える。さらに、センサ部で検出した配置パターンから、デジタル情報を抽出するデータ処理部と、データ処理で得られたデータを記憶する記憶部とを備える。
このような構成の識別子読み取り端末装置としたことで、センサ部で複数の突起の配置パターンを検出することで、迅速且つ的確に識別子に組み込まれたデータを検出できる。
【0010】
また本開示の識別子読み取り方法は、デジタル情報に基づいた配列で、平面状のベース部の表面に複数の突起を配置した識別子を、センサで読み出し、その読み出した配置パターンから、デジタル情報を抽出して保存する。
このような読み取り方法によると、複数の突起の配置パターンを検出して、迅速且つ的確に識別子に組み込まれたデジタル情報を利用できる。
【発明の効果】
【0011】
本開示によると、複数の突起を配置したパターンによる識別子を、端末装置が備えるセンサで読み取ることで、迅速かつ的確に、識別に組み込まれたデジタル情報を取り出すことができる。したがって、短時間で読み取りが行える使い勝手がよい識別子を利用したデジタル情報の伝達システムが構築できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本開示の第1の実施の形態による識別子の例を示す平面図である。
【図2】図1のA−A線に沿う断面図である。
【図3】図1のB−B線に沿う断面図である。
【図4】本開示の第1の実施の形態によるシステム構成例を示す説明図である。
【図5】本開示の第1の実施の形態による端末装置構成例を示すブロック図である。
【図6】本開示の第2の実施の形態による識別子の例を示す平面図である。
【図7】図6のC−C線に沿う断面図である。
【図8】本開示の第3の実施の形態による識別子の例を示す平面図である。
【図9】図8のD−D線に沿う断面図である。
【図10】本開示の第4の実施の形態による識別子の例を示す平面図である。
【図11】図10のE−E線に沿う断面図である。
【図12】本開示の実施の形態の変形例による識別子の例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本開示の一実施の形態の例を、以下の順序で説明する。
1.第1の実施の形態による識別子の構成(図1,図2,図3)
2.システム構成(図4)
3.端末装置の構成(図5)
4.第2の実施の形態による識別子の構成(図6,図7)
5.第3の実施の形態による識別子の構成(図8,図9)
6.第4の実施の形態による識別子の構成(図10,図11)
7.変形例(図12)
【0014】
[1.第1の実施の形態による識別子の構成]
本実施の形態は、伝えるデジタル情報に基づいた配列の突起を設けた識別子と、その識別子を読み取る端末装置で構成されたシステムである。
図1は、第1の実施の形態による識別子を上から見た平面図である。また、図2は、図1のA−A線に沿う断面図であり、図3は、図1のB−B線に沿う断面図である。
図1に示すように、平面状の四角形のベース部10の表面に、突起11,12,13を所定のパターンで配置して、識別子を構成する。
【0015】
各突起11,12,13の配置状態について説明すると、図1に示すように、外周部を四角形に囲むように、多数の突起11を連続してほぼ隙間がない状態に配置する。但し、その突起11の配置箇所の内の1つの角の部分には、突起11よりも直径が大きな突起12を配置する。
この四角形に囲まれた突起11,12の配置パターンは、識別子の基準となる位置を判断する基準パターンとして機能する。また、直径が大きな突起12が、基準位置や方向を示すアライメントマークとして機能し、基準となる位置と向きを示す。この基準用の突起11,12の配置パターンは、常に同じ配置パターンとする。
【0016】
そして、四角形に囲まれた突起11,12の内側に、識別子が伝えるデジタル情報に対応して、水平方向と垂直方向の双方にマトリクス型にコードを展開した配列の多数の突起13を設ける。この突起13のマトリクス状の配置パターンとしては、例えば従来から知られた二次元バーコード用の変調処理などで得られた配置が用いられる。あるいは、本実施の形態の識別子専用に用意したデジタル情報の変調処理で得られる突起の配置パターンを用いることもできる。このように識別子が伝えるデジタル情報に応じて突起の配置パターンは変化するので、図1に示した突起13の配置パターンは一例である。
【0017】
図2や図3の断面図から判るように、各突起11,12,13は、全てほぼ同じ高さの突起である。複数配置された突起11と突起13の直径は、同じである。例えば、各突起11,13の直径として、1mm以下の微細な突起とする。なお、図2や図3では、各突起11,12,13の高さは、突起であることが明確に判るように比較的高くした例を示すが、後述するセンサで読み取り可能な高さの範囲内で自由に設定が可能である。各突起11,12,13の直径や配置間隔についても、センサで読み取り可能であれば、利用者が目視できないような微細なサイズでもよい。
【0018】
また、各突起11,12,13の直径は、識別子ごとに異なる直径としてもよい。すなわち、アライメントマーク用の突起12の直径を基準として、他の突起11,13の直径を設定すればよい。例えば、アライメントマーク用の突起12の直径と、他の突起11,13の直径との比率を、2:1のような一定の比率に決めれば、識別子ごとにサイズを自由に設定できる。
【0019】
なお、図1に示すように、突起11,12は、ベース部10の内側に四角形を形成している。この突起11,12と接触しないように、突起11,12による突起列と多少の隙間を設けて、突起13が配置されている。このような突起11,12と突起13との間に隙間を設けることが、識別を確実にする上では好ましいが、必須のものではない。
【0020】
このような構成の識別子を製作する場合、ベース部10としては、ポリエチレンなどのプラスチック類、アルミニウムやスチールなどの金属類、紙類などの素材が用いられる。そして、それらの素材よりなるベース部10上に、顔料、樹脂、金属などを用いて、各突起11〜13を形成する。この場合、ベース部10を構成する素材と、各突起11〜13を構成する素材は、別のものとして、ベース部10に突起11〜13を貼付けや接着で形成してもよいが、ベース部10を直接加工して、突起11〜13を形成させることも可能である。例えば、金属板で構成したベース部10を、裏側からピン状のもので打ち出す加工で、各突起11〜13を形成してもよい。
【0021】
各突起11,12,13を形成するための樹脂材料としては、従来から知られた各種樹脂材料が使用可能である。たとえば、エポキシ,ポリイミドなどの熱硬化性樹脂を使用する。あるいは、ポリエチレン,ポリプロピレン,アクリル,ポリテトラフルオロエチレン,ABSなどの汎用プラスチックを使用する。あるいはまた、ポリアミド,ポリカーボネート,ポリエチレンテレフタレートなどのエンジニアリングプラスチックを使用する。
金属材料で各突起11,12,13を形成する場合には、アルミニウム,スチール,ステンレスなどが使用可能である。
【0022】
これらの材料を使用して各突起11,12,13を作成する方法としては、例えばベース部10を金型プレスで成形して、ベース部10と各突起11,12,13を同じ素材で形成する。
あるいは、パターンテンプレートやフォトリソグラフィを用いた転写、スクリーン印刷、塗料としての樹脂材料の印刷や塗布、金属エッチング、プレス加工、エンボス加工、接着剤による突起のベース部への貼付などで、作成してもよい。
【0023】
[2.システム構成]
次に、図4を参照して、図1〜図3に示した識別子を使用したシステム構成例について説明する。
図4の例では、ポスター1の表面に、識別子を構成するベース部10を貼り付けている。ベース部10の表面には、既に説明した突起11,12,13を有し、その突起11,12,13の配置パターンでデジタル情報を提示する。
この識別子で提示されたデジタル情報を読み取りたいユーザは、圧力センサアレイ101が取り付けられた端末装置100を、ポスター1の表面の識別子に接触させ、識別子に形成されている突起のパターンから、デジタル情報を読み取る。
【0024】
端末装置100は、例えば携帯電話端末として構成し、圧力センサアレイ101で読み取った突起の配列パターンから得たデジタル情報を、端末装置100内のメモリに記憶する。また、端末装置100は、基地局2と無線通信を行うことでインターネット3に接続し、インターネット3を介して所定のサーバ4にアクセスすることができる。そして、識別子から読み取ったデジタル情報をサーバ4に送信して、サーバ4でその情報に基づいた処理を行うようにする。あるいは、識別子から読み取ったデジタル情報を、サーバ4にアクセスする際のアドレスとしてもよい。
また、圧力センサアレイ101で読み取った突起の配列から得たデジタル情報に基づいて、端末装置100が持つ表示部で、何らかの表示を行うようにしてもよい。たとえば、突起の配列から得た情報が、文字又は数字の情報であるとき、その得られた文字又は数字を表示する。
【0025】
[3.端末装置の構成]
図5は、端末装置100の構成例を示した図である。
端末装置100は、圧力センサアレイ101を備える。圧力センサアレイ101は、例えば二次元状に微少なセンサを連続して配置する。それぞれのセンサは、突起11,12,13の有無による高低差を検出可能な感圧素子で構成する。二次元状に微少なセンサを連続して配置する場合、読み取る識別子よりも大きなサイズにセンサを配置する。このようなサイズの二次元状のセンサ配列の圧力センサアレイ101を使用することで、圧力センサアレイ101をベース部10に押し当てて、識別子に記録されたデジタル情報を読み取ることができる。
【0026】
あるいは、直線状に一列にセンサを連続して配置したセンサ列の圧力センサアレイ101を使用し、識別子を読み取る際に、操作者が圧力センサアレイ101のセンサ列と直交する方向に端末装置100を動かして、読み取る構成でもよい。
【0027】
圧力センサアレイ101を構成する各センサで読み取った突起の有無の情報は、識別子全体のパターン配列の情報とし、そのパターン配列の情報を圧力センサアレイ101から出力する。圧力センサアレイ101が出力したパターン配列の情報は、アライメント処理部102に供給される。アライメント処理部102では、供給されるパターン配列の情報から、基準となる位置を決めるアライメントマークを検出し、そのアライメントマークを基準として、パターン配列を判断する方向を特定する。具体的には、例えば図1に示すパターン配列の情報が得られる場合、径が太い突起12をアライメントマークとして検出し、その検出位置を基準にして、囲まれた状態で連続した配置の突起11の配置パターンから、情報の有無を判断する範囲を決める。
【0028】
そして、アライメント処理部102で設定された範囲と検出方向を使用して、データ処理部103で、検出範囲内のパターン配列のデータを取り出し、その検出範囲内のパターン配列のデータから、識別子で提示されたデジタル情報を読み取る。読み取ったデジタル情報に基づいて、データ処理部103内で予め決められた復号処理を行い、数字や文字の配列などのデータを得る。
【0029】
データ処理部103で得られたデータは、制御部105の制御に基づいて記憶部104に記憶され、表示部108で表示される。記憶されたデータがインターネットにアクセスするアドレスである場合には、操作部109でのユーザ操作で接続処理が行われる。この接続処理は、表示部108に表示したデータ(アドレス)を選択する操作があるときに行われる。このインターネットへのアクセスは、例えば端末装置100が備える通信部106を使用して、その通信部106に接続されたアンテナ107を介した無線通信で行われる。
【0030】
このようにして、ベース部10に配置された突起11〜13で構成された識別子を、圧力センサアレイ101を備えた端末装置100で読み取ることで、従来の印刷による二次元バーコードをカメラで読み取った場合と同様の処理が可能になる。この場合、圧力センサアレイ101で識別子を読み取る作業は、単にベース部10の表面を圧力センサアレイ101に接触させて、突起による高度差を検出するだけでよく、迅速かつ良好な読み取りが可能になる。すなわち、従来の二次元バーコードをカメラで読み取る作業時には、カメラのレンズのフォーカス調整が必要であり、二次元バーコードの読み取り作業にある程度の時間と手間が必要であったが、本実施の形態の例の場合には、そのような時間や手間が必要ない。
【0031】
なお、識別子の読み取り処理として、圧力センサアレイで読み取るのは1つの例であり、突起による高低差を読み取ることが可能であれば、他の処理で読み取ってもよい。例えば、非接触で突起による高低差を読み取る構成でもよい。また、立体撮像(3D)用のカメラで得た画像から、立体形状を認識できる場合に、識別子を撮影して、その撮影画像から突起による高低差を検出してもよい。
【0032】
[4.第2の実施の形態による識別子の構成]
次に、本開示の第2の実施の形態の例を、図6及び図7を参照して説明する。この第2の実施の形態では、識別子の構成を、第1の実施の形態と異なる例とした。識別子を圧力センサアレイで読み取る端末装置や、その端末装置に接続されるシステムについては、第1の実施の形態と同じものが適用可能であり、説明を省略する。
【0033】
図6は、識別子の例を示した図であり、図7は図6(c)のC−C線に沿う断面図である。
この例では、従来の印刷などによる二次元バーコードと互換性を持たせた識別子とした。例えば、図6(a)に示す、印刷による二次元バーコード90を想定する。この二次元バーコード90は、黒色のドットの二次元配列で示されたコードである。図6(a)に示した二次元バーコード90では、特定の形状の位置検出パターン91,92,93を3つの隅に配置し、その他の領域に、この二次元バーコード90が有する情報に対応したドットパターン94を配置する。
【0034】
このような二次元バーコード90がある場合に、本実施の形態の例での識別子として、図6(b)に平面で示すように、二次元バーコード90のドットパターンと同様の突起パターンを形成する。すなわち、ベース部20の上に突起を配置する際に、二次元バーコード90の位置検出パターン91,92,93と同じ配列の突起21,22,23によるパターンを設ける。また、二次元バーコード90の情報に対応したドットパターン94と同じ配列の突起24によるパターンを設ける。
この図6(b)に示すように、二次元バーコード90と同様な突起パターンによる識別子を形成することで、識別子を読み取った際の復号化処理として、二次元バーコードと同様の処理が実行でき、従来のバーコードの処理構成との共用化を図ることができる。
【0035】
図6(c)の例は、ベース部30の上に、突起31,32,33,34を配置した例を平面で示したものである。この例では、突起31,32,33,34の配置パターンは、図6(b)に示した突起21,22,23,24の配置パターンと同じである。
そして、 図6(c)の例は、ベース部30の表面の色と、各突起31,32,33,34の色を変えている。例えば、ベース部30の表面を白色とし、各突起31,32,33,34を黒色とする。この例では、図7に断面を示すように、各突起31,32,33,34を構成する素材を着色して、ベース部30の表面と異なる色とする。
【0036】
この図6(c)に示したように、ベース部30と突起31〜34で色を変えることで、この識別子を圧力センサアレイで読み取れると共に、識別子をカメラで撮影して、その撮影画像から二次元バーコードとして検出できる。すなわち、図6(c)に示した識別子の突起による配色パターンは、図6(a)に示した二次元バーコード90による配色パターンと同じであり、カメラで撮影した画像から、同じ処理でデータを検出することができる。したがって、本実施の形態の例によると、従来の二次元バーコードと互換性を持たせることが可能になる。
【0037】
[5.第3の実施の形態による識別子の構成]
次に、本開示の第3の実施の形態の例を、図8及び図9を参照して説明する。この第3の実施の形態では、識別子の構成を、第1,第2の実施の形態と異なる例とした。識別子を圧力センサアレイで読み取る端末装置や、その端末装置に接続されるシステムは、第1の実施の形態と同じものが適用可能であり、説明を省略する。
【0038】
図8は、識別子の例を示す図であり、図9は図8のD−D線に沿う断面図である。
この例では、先に説明した図6(c)の例と同様に、従来の二次元バーコードと互換性を持たせた識別子とした。すなわち、図8に示すように、ベース部40の表面に、突起41,42,43,44を配置する。ここで、突起41,42,43は、図6(c)の例における突起31,32,33と同様に、二次元バーコードでの位置検出パターンに相当する突起である。突起44は、提示するデータに基づいた配列を示す突起であり、図6(c)の例の突起34に相当する。
【0039】
そして、この例ではそれぞれの突起41,42,43,44を透明な素材とし、各突起41,42,43,44と接するベース部40の表面を、四角形に着色する。すなわち、図9の断面で詳細を示すように、突起44を構成する突起部材44aを透明部材とし、突起部材44aと接したベース部40の表面を、着色箇所44bとする。この着色箇所44bは、1つの突起ごとに四角形に着色する。なお、図9の断面では、突起部材44aの配置箇所だけを示すが、他の突起41,42,43の配置箇所も同様に、透明の突起部材で構成すると共に、ベース部40の表面を、1つの突起ごとに四角形に着色する。
【0040】
このように構成することで、図6(c)の例と同様に、識別子を圧力センサアレイで読み取れると共に、識別子をカメラで撮影して、その撮影画像から二次元バーコードとして検出できる。図6(c)の例の場合には、突起そのものを着色したために、突起が隣接した箇所では、各突起の間のベース部の表面で、若干の着色されていない箇所が発生したが、図8,図9の例の場合には、突起が隣接した箇所では、着色された箇所が連続する。したがって、撮影画像から二次元バーコードとして検出する際の、検出状態を従来と全く同じにでき、従来の二次元バーコードと完全な互換性を保つことができる。
【0041】
この図8に示す識別子は、例えば情報誌をはじめとする出版物などにおいて、店舗情報などを示すコードを示す識別子として適用可能である。店舗のコードを示す識別子とすることにより、消費者は携帯電話端末の光学的なリーダもしくは図5に示した端末装置100が備える圧力センサアレイ101で読み取ることを状況によって選択することが可能になり、利便性が向上することが見込める。
【0042】
[6.第4の実施の形態による識別子の構成]
次に、本開示の第4の実施の形態の例を、図10及び図11を参照して説明する。この第4の実施の形態では、識別子の構成を、第1,第2,第3の実施の形態と異なる例とした。識別子を圧力センサアレイで読み取る端末装置や、その端末装置に接続されるシステムは、第1の実施の形態と同じものが適用可能であり、説明を省略する。
【0043】
図10は、識別子の例を示した図であり、図11は図8のE−E線に沿う断面図である。
この例でも、先に説明した図8の例と同様に、突起を構成する素材を透明とし、ベース部の表面を着色する。ここで、図8の例では、突起を配置するパターンと、着色するパターンを同じとしたが、本実施の形態の例では、突起を配置するパターンと、着色するパターンを変更して、それぞれで異なる情報を持つ構成とする。
【0044】
すなわち、図10や図11に示すように、白色などのベース部40の表面に、黒色などによる着色箇所51,52,53,54を設ける。着色箇所51,52,53は、従来の二次元バーコードに適用された位置検出パターンであり、着色箇所54は、データに対応したパターンである。
そして、これらの着色箇所51〜54のパターンとは無関係に、透明な素材からなる突起55を、データに対応したパターンで配置する。
【0045】
着色箇所51,52,53,54のパターンで記録されたデータを読み取る場合には、ベース部40の表面をカメラで撮影することで、データの検出が可能である。突起55の配置パターンで記録されたデータを読み取る場合には、ベース部40の表面を圧力センサアレイで読み取ることで、データの検出が可能である。
【0046】
したがって、本実施の形態の例の識別子には、突起55の配置パターンによるデジタル情報と、従来の印刷などによる二次元バーコードとしてのデジタル情報の、2種類のデジタル情報の記録ができる。そして、その2種類のデジタル情報を相互に干渉することなく読み出しが可能である。
この図10に示す識別子は、例えば食料品や飲料などの商品のコードを示す識別子として適用可能である。商品のコードを示す識別子とした場合、ベース部には金額情報、突起部には栄養成分情報を対応させることにより、店のレジでの精算時には、光学的なリーダでベース部の着色パターンを検出して、精算を行うことができる。また、購入者が、突起部を図5に示した端末装置100が備える圧力センサアレイ101で読み取ることにより、購入した商品の栄養成分等の詳細情報を取得することができる。このように複数の異なるデジタル情報を盛り込むことで消費者の利便性を高めることが可能となる。
【0047】
[7.変形例]
なお、上述した各実施の形態の例では、識別子のベース部に配置した突起は、複数の突起の高さを等しくした。これに対して、突起の高さを複数段階に設定して、突起の高さでデータの記録を行うようにしてもよい。
例えば、図12に示すように、ベース部60の表面に配置する突起として、第1の高さの突起61と、第2の高さの62とを設ける。ここで、第1の高さは、第2の高さの約2倍とする。このようにすることで、記録できるデータの情報量を増やすことができる。
すなわち、突起の高さが同じである場合には、突起の有無で2種類(例えば0か1か)のデータが示される。これに対して、図12の例の場合、突起の高さが2段階である場合、突起なしと、第1の高さの突起ありと、第2の高さの突起ありの、3種類のデータが示されることになり、それだけ多くの情報が記録できる。
例えば、9個の突起が配置できる箇所を想定すると、高さが1段階の場合、2の9乗=512通りのパターンが記録できるのに対し、高さが2段階の場合、3の9乗=19683通りのパターンが記録でき、データ量を大幅に増やすことができる。
図12では2段階に高さを設定したが、3段階以上に設定してもよい。
【0048】
また、ここまでの説明では、突起を配置するパターンとして、ベース部に二次元状に配置した例としたが、一次元状に1列にだけ突起を配置した構成としてもよい。
【0049】
また、各実施の形態の例で説明した識別子で記録するデジタル情報の例は、一例を示したものであり、これらの適用例に限定されるものではない。
【0050】
なお、本開示は以下のような構成も取ることができる。
(1)平面状のベース部と、
デジタル情報に基づいた配列で、前記ベース部の表面に配置した複数の突起とを備えた
識別子。
【0051】
(2)前記ドット状の突起は、前記ベース部に二次元状に配置し、
その二次元状の突起配置箇所の中の特定箇所に、前記突起を特定パターンで配置した基準となるマークを設けた
前記(1)記載の識別子。
【0052】
(3)前記基準となるマークを構成する突起は、前記ベース部に配置した他の突起と異なる大きさ又は高さの突起とした
前記(2)記載の識別子。
【0053】
(4)前記ベース部の表面の、前記複数の突起を配置した箇所と、前記複数の突起を配置していない箇所とを、それぞれの別の色に着色した
前記(1)から(3)のいずれか1項に記載の識別子。
【0054】
(5)前記複数の突起を透明とした
前記(1)から(4)のいずれか1項に記載の識別子。
【0055】
(6)前記ベース部の表面を、前記複数の突起の配置状態とは別のパターンで、複数の色に着色した
前記(1)から(5)のいずれか1項に記載の識別子。
【0056】
(7)前記複数の突起として、前記デジタル情報に基づいて、複数段階の高さの突起を設けた
前記(1)から(6)のいずれか1項に記載の識別子。
【0057】
(8)平面状のベース部の表面に配置された複数の突起の配置パターンを検出するセンサ部と、
前記センサ部で検出した配置パターンから、デジタル情報を抽出するデータ処理部と、
前記データ処理で得られたデータを記憶する記憶部とを備えた
識別子読み取り端末装置。
【0058】
(9)前記センサは、前記突起と接触することによる圧力変化を検出する圧力センサを少なくとも直列に配置した圧力センサアレイから構成した
前記(8)記載の識別子読み取り端末装置。
【0059】
(10)前記記憶部が記憶したデジタル情報を使用した、サーバへのアクセスを行う
前記(8)又は(9)記載の識別子読み取り端末装置。
【0060】
(11)デジタル情報に基づいた配列で、平面状のベース部の表面に複数の突起が設けられた識別子を、センサで読み出し、
その読み出した配置パターンから、前記デジタル情報を抽出し、
その抽出したデジタル情報を保存する
識別子読み取り方法。
【符号の説明】
【0061】
1…ポスター、2…基地局、3…インターネット、4…サーバ、10,20,30,40,50,60…ベース部、11〜13,21〜24,31〜34,41〜44,55,61,62…突起、44a…突起部材、44b,51〜54…着色箇所、100…端末装置、101…圧力センサアレイ、102…アライメント処理部、103…データ処理部、104…記憶部、105…制御部、106…通信部、107…アンテナ、108…表示部、109…操作部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
平面状のベース部と、
デジタル情報に基づいた配列で、前記ベース部の表面に配置した複数の突起とを備えた
識別子。
【請求項2】
前記複数の突起は、前記ベース部に二次元状に配置し、
その二次元状の突起配置箇所の中の特定箇所に、前記突起を特定パターンで配置した基準となるマークを設けた
請求項1記載の識別子。
【請求項3】
前記基準となるマークを構成する突起は、前記ベース部に配置した他の突起と異なる大きさ又は高さの突起とした
請求項2記載の識別子。
【請求項4】
前記ベース部の表面の、前記複数の突起を配置した箇所と、前記複数の突起を配置していない箇所とを、それぞれの別の色に着色した
請求項2記載の識別子。
【請求項5】
前記複数の突起を透明とした
請求項2記載の識別子。
【請求項6】
前記ベース部の表面を、前記複数の突起の配置状態とは別のパターンで、複数の色に着色した
請求項5記載の識別子。
【請求項7】
前記複数の突起として、前記デジタル情報に基づいて、複数段階の高さの突起を設けた
請求項2記載の識別子。
【請求項8】
平面状のベース部の表面に配置された複数の突起の配置パターンを検出するセンサ部と、
前記センサ部で検出した配置パターンから、デジタル情報を抽出するデータ処理部と、
前記データ処理で得られたデータを記憶する記憶部とを備えた
識別子読み取り端末装置。
【請求項9】
前記センサは、前記突起と接触することによる圧力変化を検出する圧力センサを少なくとも直列に配置した圧力センサアレイから構成した
請求項8記載の識別子読み取り端末装置。
【請求項10】
前記記憶部が記憶したデジタル情報を使用した、サーバへのアクセスを行う
請求項8記載の識別子読み取り端末装置。
【請求項11】
デジタル情報に基づいた配列で、平面状のベース部の表面に複数の突起が設けられた識別子を、センサで読み出し、
その読み出した配置パターンから、前記デジタル情報を抽出し、
その抽出したデジタル情報を保存する
識別子読み取り方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2013−41327(P2013−41327A)
【公開日】平成25年2月28日(2013.2.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−176058(P2011−176058)
【出願日】平成23年8月11日(2011.8.11)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】