識別符号発信手段による位置検知システム
【課題】GPS等の別の位置検知手法が使用できない建屋内などの環境下において、任意箇所の位置計測を可能とする識別符号発信手段を用いた位置検知システムを提供する。
【解決手段】その長手方向に複数の識別符号発信手段を取り付けられた長尺体と、敷設する長尺体の始点及び終点の識別符号情報と長尺体の敷設経路情報を有し、長尺体内の識別符号発信手段の位置を推定し識別符号情報と経路上の位置を対応付けて記録する記憶手段と、長尺体に取り付けられた識別符号発信手段の識別符号を読み取る読み取り手段を備え、長尺体を敷設経路情報に従って配置するとともに、読み取り手段で読み取った識別符号を記憶手段で参照することにより、その位置を検出する。
【解決手段】その長手方向に複数の識別符号発信手段を取り付けられた長尺体と、敷設する長尺体の始点及び終点の識別符号情報と長尺体の敷設経路情報を有し、長尺体内の識別符号発信手段の位置を推定し識別符号情報と経路上の位置を対応付けて記録する記憶手段と、長尺体に取り付けられた識別符号発信手段の識別符号を読み取る読み取り手段を備え、長尺体を敷設経路情報に従って配置するとともに、読み取り手段で読み取った識別符号を記憶手段で参照することにより、その位置を検出する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、識別符号発信手段を用いて位置を検知するシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
識別符号発信手段の一つであるRFID(RADIO FREQUENCY IDENTIFICATION)タグを利用して位置を検出するシステムの例が特許文献1に開示されている。特許文献1のシステムでは、RFIDタグを直線状或いは行列状に一定間隔で配置(IDは連番)したシートを予め製作し、位置測定地点に設置する。シート敷設時には、基準になるRFIDの位置座標を指定し、基準以外のRFIDの位置は、基準位置と基準位置からのタグの数に配置間隔を乗じて、読み取ったRFIDタグの位置を検出する。
【0003】
また、特許文献2に開示されているシステムでは、識別符号発信手段の一つであるRFIDを取り付けたケーブルを敷設し、GPS等の別の位置検知手法を用いてケーブルに取り付けられたRFIDの位置を検知し、RFIDのIDと位置を対応させるデータベースDBを作成する。ケーブルの移設によりRFIDの位置した事を再度GPS等の別の位置検知手法を用いてIDと位置の対応DBを探索し位置が異なる場合ケーブルが移設されたと判定する設備管理システムが述べられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−170853号公報
【特許文献2】特開2008−21238号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に開示された手法では、RFIDタグを直線状或いは行列状に一定間隔で配置したことを想定しているので、RFIDタグを紐のように自由に折れ曲がるような物体に張り付けた場合については考慮されていない。
【0006】
この点、特許文献2は、自由に折れ曲がるケーブルの位置検知に関して述べられている。しかし、すべてのRFIDの位置を予め別な位置検知手法で計測しており、位置計測を行っていないRFIDの位置に関しては述べられていない。
【0007】
以上のことから本発明においては、GPS等の別の位置検知手法が使用できない建屋内などの環境下において、任意箇所の位置計測を可能とする識別符号発信手段を用いた位置検知システムを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
その長手方向に複数の識別符号発信手段を取り付けられた長尺体と、識別符号発信手段を配置した長尺体長手方向の距離と識別符号発信手段の識別符号を対応付けて記憶すると共に、長尺体の敷設経路情報を記憶する記憶手段と、長尺体に取り付けられた識別符号発信手段の識別符号を読み取る読み取り手段を備え、長尺体を敷設経路情報に従って配置するとともに、読み取り手段で読み取った識別符号を記憶手段で参照することにより、その位置を検出する。
【0009】
その長手方向に複数の識別符号発信手段を取り付けられた長尺体と、敷設する長尺体の始点及び終点の識別符号情報と長尺体の敷設経路情報を有し、長尺体内の識別符号発信手段の位置を推定し識別符号情報と経路上の位置を対応付けて記録する記憶手段と、長尺体に取り付けられた識別符号発信手段の識別符号を読み取る読み取り手段を備え、長尺体を敷設経路情報に従って配置するとともに、読み取り手段で読み取った識別符号を記憶手段で参照することにより、その位置を検出する。
【0010】
長尺体は、曲線配置が可能な材質とされる。
【0011】
検知した位置情報を、敷設経路あるいは移動経路のナビゲーションとして利用する。
【0012】
検知した位置情報を利用して、実際に敷設した経路と敷設計画時の経路を比較し、経路の差分が決められた値以上の場合、敷設経路の誤りと判定する。
【0013】
検知した位置情報を利用して、別の位置検知手段の基準点として位置を計測する。
【0014】
その長手方向の適宜の箇所に複数の識別符号発信手段を取り付けられた長尺体と、識別符号発信手段を配置した長尺体長手方向の距離と識別符号発信手段の識別符号を対応付けて記憶する記憶手段が一体に備えられる。
【発明の効果】
【0015】
一列に並んだRFIDを敷設し、基準となるRFIDの位置を指定する事により様々な配置経路においても基準RFID以外のRFIDの位置を推定する事ができるようになり位置検知用RFIDの設置が容易にできる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】位置検知装置として備えるべき機能を処理フローとして示した図。
【図2a】単体のRFIDインレットの一例を示す図。
【図2b】RFIDインレットを複数備えたRFID長尺体の一例を示す図。
【図3】二次元バーコードを取付けた長尺体の一例を示す図。
【図4】ケーブルの中にRFIDを挿入したRFID長尺体の例を示す図。
【図5】紐(糸)或いはロープ内にRFIDを入れた例を示す図。
【図6】筒状の形状(配管、ホースなど)にRFIDを埋め込んだ例を示す図。
【図7】長尺体の製造手法を示す図。
【図8】RFID配置距離情報データベースに登録された情報を示す図。
【図9】敷設経路情報データベースに登録されている敷設経路の一例を示す図。
【図10】基準RFID以外のRFID位置推定部4の処理フローを示す図。
【図11】長尺体上の敷設位置を示す図。
【図12】敷設系路上の位置と、長尺体上の敷設位置を比較して示した図。
【図13】RFIDの位置情報データベースDB3の一例を示す図。
【図14】読取り装置の構成を示す図。
【図15】RFIDケーブルを利用して位置を検知する例を示す図。
【図16】敷設経路通りに敷設したことを判断するシステムを示す図。
【図17】移動体のナビゲーション・位置検知を行う場合に利用する例を示す図。
【図18】位置検知用ビーコン発信装置の基準点として利用する例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
次に、本発明を実施するための形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0018】
本発明に係る識別符号発信手段による位置検知システムは、特に建屋内の位置測定に利用されるのがよい。例えば、建屋の所定階の床などの平面的広がりを有する領域、更には高さ方向への空間的広がりを有する領域における任意箇所の位置を測定するのに適する。
【0019】
このために本発明においては、識別符号発信手段として、例えばRFIDを取り付けた長尺体を使用する。長尺体としては、テープ、ケーブル、ロープなどが利用できるので、長尺体は建屋内の平面的、空間的領域の任意箇所に設置されることになる。長尺体と、その製造並びに設置に関して、図2乃至図9で説明する。
【0020】
また、長尺体に取り付けたRFIDからの信号を用いて位置検出する位置検知装置を備えている。位置検知装置として備えるべき機能、処理フロー、あるいはデータについて図1、図10乃至図14で説明する。
【0021】
また、識別符号発信手段による位置検知システムは、建屋内に設置されて建屋内の平面的、空間的領域の任意箇所の位置を検知するわけであるが、位置検知活用事例と、具体的な検知手法について図15乃至図18で説明する。
【0022】
まず、長尺体と、その製造並びに設置に関して、図2乃至図9で説明する。本実施形態で用いることができる長尺体の例を図2乃至図6に示す。
【0023】
図2aは、識別符号発信手段の一つである単体のRFIDの一例である。20がRFIDチップ、21がアンテナであり、RFIDチップ20にアンテナ21を取付けた構成22をRFIDインレットと言う。RFIDインレット22は、アンテナ21で捉えた電磁波をRFIDチップ20に供給して、RFIDチップ20に記録されているID情報や各種記録情報の読み書きを行うことができる。
【0024】
RFID長尺体とは、図2bに示すように、複数のRFIDインレット22を、テープや紐状の長尺体26に取付けた物である。RFIDインレット22に書かれているID情報部分はユニークであり、同じIDを持つRFIDインレット22は存在しない。なお、長尺体26に取付けるRFIDのID情報は連番でなくても良い。
【0025】
図3はRFIDインレット22の代わりに、二次元バーコード31を取付けた(或いは印刷した)長尺体の例である。31が二次元バーコードであり、26が長尺体である。二次元バーコードの場合もバーコード内のID情報はユニークである必要がある。
【0026】
図4は、ケーブルを長尺体とし、その中にRFIDを挿入したRFID長尺体の例である。100は導線或いは光ファイバーなどが通るケーブル心線、101は心線の保護を目的に絶縁性の樹脂などで構成されるシース部分、そして22は心線とシースの間に挿入されたRFIDインレットである。ケーブルは、電力ケーブルや信号ケーブルなど様々な目的で利用される。従って、建築物や車両・航空機などでは非常にたくさんのケーブルが利用されている。このケーブルを電力及び信号の伝送以外に、位置検知の手段として利用することができる。
【0027】
図5は、紐(糸)或いはロープを長尺体とし、その内部にRFIDを入れた例である。110がロープ本体、111がRFIDを装着したテープ、22はRFIDインレットである。RFIDテープ111を、ロープを構成する素材と一緒に束ね織り込む事によりRFIDロープを製造する事ができる。ロープの場合、テープと比べ屈曲方向に対する制限がないため、テープに比べ自由な位置に設置できる利点がある。
【0028】
図6は、筒状の形状のもの(配管、ホースなど)を長尺体とし、その中にRFIDを埋め込んだ例である。120が筒状の形状、22がRFIDインレットである。RFIDインレット22の埋め込み方法は、RFIDテープを作りそれを筒状形状に埋め込んでも良いし、RFIDインレット単独のままで埋め込んでも良い。各種製造プラント・発電プラントなどでは多数の配管が利用されている。従って、この配管を位置検知の手段として利用することができる。
【0029】
なお、図2乃至図6において、ID情報のユニーク性に関しては、この長尺体26などを利用するエリアを限定するための手段がある場合、敷設されるエリア内でユニーク性が確保出来ればよい。
【0030】
以上、長尺体の例について説明したが、それぞれの種類のRFID長尺体を複合して利用することも可能である。なお、ここでの長尺体は、直線配置することも可能であるが、いずれも曲線配置することができるために、建屋内の任意箇所に位置づけすることが可能である。
【0031】
また、ここでは識別符号発信手段として、RFIDとバーコードの例を説明したが、他の原理のものであってもよい。また、識別符号発信手段としては、原理的に自ら信号を積極的に発信するもの以外に、光などが照射されたときにその反射波が変化することを利用し、結果的に信号を発信したとすることができるものであってもよい。
【0032】
次に、長尺体の製造について、図7、図8を用いて説明する。RFID長尺体26は、例えば図2、図3のようなRFID長尺体26とする。RFID長尺体26は、図7のようにして製造される。ここでは、長尺体26の一例としてポリエチレン等で作られたテープに、RFIDインレット22を取り付ける工程を示している。なお、長尺体26の材料は、紙や布その他テープ状に加工出来る材料であればなんでも良い。また、テープを例にしているが、紐状やパイプ状の物でも同様に製造可能である。
【0033】
この工程において、まず40は長尺体26(ポリエチレンテープ)が巻き付けられているボビンである。長尺体26は、ボビン40から引き出され、RFIDインレット22の取付機43を通過する。ここではRFIDインレット22を、接着剤等を利用して長尺体26の表面に張り付けて行く。
【0034】
RFIDインレット22を取り付けた長尺体26は、次にRFIDインレット22を読み取るためのリーダアンテナ44を通過する。続いて、長尺体26の移動距離を計測するエンコーダ46を通過する。リーダアンテナ44と、エンコーダ46の距離(差分情報)は予め計測されており、リーダアンテナ44内を通過した位置を、この差分情報により補正する。
【0035】
なお、リーダアンテナ44は、移動方向に幅を持った通信可能エリアが存在する場合がある。この場合にはRFIDの位置の代表点として、最初に読み取れた位置としてもかまわないし、読取エリアの中心点としてもかまわない。また、図7ではリーダアンテナ44の後にエンコーダを取り付けているが44の前でも構わない。
【0036】
アンテナ44で受信したRF信号41は、RFIDリーダ装置45を用いて読み取られ、ID情報48としてPC47へ出力される。また、エンコーダ46で計測した移動距離の情報42も、PC47へ出力される。PC47では、読み取ったID情報48と移動距離情報42を対応付けて、RFID配置距離情報データベースDB1へ登録する。最後に、RFIDインレット22を取り付けた長尺体26は、巻き取りボビン40に巻き取られる。
【0037】
図7の製造設備により製造され、巻き取りボビン40に巻き取られた長尺体26については、RFIDインレット22に関連する情報がRFID配置距離情報データベースDB1に登録されるが、この登録された情報は、図8のように関連つけて記録されている。
【0038】
図8において、縦欄901は、長尺体に埋め込んだRFIDの順番を示すシリアル番号であり、縦欄902には、読み込んだRFIDのID情報、縦欄903には、そのID情報を読み込んだ距離が記載されている。つまり、長尺体26上で連続するRFIDインレット22ごとに、ID情報と、そのID情報を読み込んだ距離が互いに関連つけて記録されている。
【0039】
なお、901は単なるシリアル番号であるが、距離情報903があれば、シリアル番号間の距離を計算で求める事ができる。また、距離情報903はシリアル番号1からの距離となっているが、一つ前のRFIDまでの距離が記録されていてもかまわない。
【0040】
また、図7からも分かるように、RFID22は等間隔で長尺体26に取り付けられているとは限らない。つまり、等間隔に取り付けるためには、製造時の取り付け精度が必要になる。そこで、不規則な間隔に取り付けられても良いように、長尺体26に取り付けたRFIDの距離を実測し、RFID配置距離情報データベースDB1へ登録している。
【0041】
また、図7では製造時にRFIDの位置を計測しRFID配置距離情報データベースDB1へ登録する例を示したが、RFIDインレット22を取り付けた長尺体26を製造し、再度巻き取りながらID情報48と位置42の対応情報を作成してもかまわない。この場合、図7においてRFID22を取り付けた長尺体26を、ボビン40に巻き付け、RFIDインレット取付機43を取り除いた構成となる。このようにしてRFID配置距離情報データベースDB1は作成される。
【0042】
いずれの場合であっても、長尺体は長尺体自身と、長尺体に設置されたRFIDの配置距離に関する情報とが一体となって作成される。また、長尺体の敷設、使用にあたっては、RFID配置距離情報データベースDB1の情報が、後述する位置検知装置において使用されることになる。
【0043】
次に、長尺体の敷設について説明する。先にも述べたように、長尺体を敷設する場所は、特に建屋の所定階の床などの平面的広がりを有する領域、更には高さ方向への空間的広がりを有する領域において行われるのがよく、ここでは平面領域を想定している。但し、建屋内に限定されるものではなく、車両や飛行機、船などの移動体内に敷設されるものにも適用可能である。さらには屋外であっても、プラントなどのようにGPSで位置検出ができない構造物の陰になる部分での適用が可能である。
【0044】
また本発明において、敷設は、床面などの任意の場所に敷設することを前提とするのではなく、予め定まった経路に沿って敷設するものとする。RFID長尺体の敷設経路は、予め敷設経路情報データベースDB2に登録されているものとする。
【0045】
図9に、敷設経路情報データベースDB2に登録されている敷設経路の一例を示す。敷設経路とはRFID長尺体を敷設する経路である。図9の例では、敷設経路には4つの頂点P1、P2、P3,P4があり、その頂点を屈曲点としてP1→P2→P3→P4の順に通過させ、点線50で示した、折れ曲がった線分で敷設経路を表現している。なお、図9は説明の簡素化のために2次元空間での敷設経路を表現しているが、3次元空間での経路表現も3次元座標値を用いて同様に表現できる。
【0046】
4つの頂点P1、P2、P3,P4は、それぞれX軸座標と、Y軸座標により、図9に示すように表現されている。つまり、敷設経路情報データベースDB2には、4つの頂点P1(x1、y1)、P2(x2、y2)、P3(x3、y3),P4(x4、y4)が、それぞれX軸座標と、Y軸座標により表現された位置情報として予め作成されて、登録されている。これらはあくまでも頂点の位置情報であるが、これらの位置情報を連続する情報として認識すると、これは経路情報として利用することができる。
【0047】
敷設現場では、図7の巻取りボビン49からRFID長尺体26を巻きだして、敷設経路に沿って敷設する。このとき、敷設する長尺体の始点及び終点のRFIDのID情報を入手する。
【0048】
例えば、図8の情報が登録されているRFID長尺体を経路に沿って敷設したとする。敷設後にRFID長尺体26の始点位置にあるRFIDを読取ったら[1FBA]、終点位置のRFIDを読取ったら[10A1]であったとする。この場合、敷設したRFID長尺体は、図8の(251)行から(671)行までのRFIDが取り付けられたRFID長尺体を敷設した事となる。
【0049】
以上、本発明においてその前提となる長尺体と、その製造並びに設置に関して、図2乃至図9を用いて説明した。
【0050】
次に、長尺体に取り付けたRFIDからの信号を用いて位置検出する位置検知装置として備えるべき機能、処理フローあるいはデータについて図1、図10乃至図14を用いて説明する。
【0051】
図1は、本発明の位置検知装置として備えるべき機能を処理フローとして示した図である。図1において、DB1はRFID配置距離情報データベースであり、この記憶内容と、作成の手法については既に図7と図8で説明したとおりである。DB2は、敷設経路情報データベースであり、これは図9に例示されるような、敷設現場の経路情報である。これら2つのデータベースは、敷設以前に準備されている。
【0052】
これに対し、長尺体敷設時には、敷設する長尺体の始点及び終点のRFIDのID情報を入手する。図1において、3が敷設する長尺体の始終点のID情報入力手段である。
【0053】
図1の、基準RFID以外のRFID位置推定部4では、以上のデータベースDB1,DB2の既知情報と、ID情報入力手段3からの敷設時情報とから、任意のRFID位置を推定し、RFID位置情報データベースDB3を構築する。
【0054】
次に、RFID位置情報データベースDB3に記憶する任意RFIDの位置情報の作成手法について、図10から図12を用いて説明する。
【0055】
図10は、基準RFID以外のRFID位置推定部4の処理フローである。図10の処理ステップS60では、図9に示す敷設経路の線分の長さL1,L2,L3を求める。なお、敷設経路の線分の長さL1,L2,L3は、図9に示すように、それぞれ4つの頂点P1(x1、y1)、P2(x2、y2)、P3(x3、y3),P4(x4、y4)間の距離であり、線分の長さL1は、頂点P1―P2間、L2は、頂点P2―P3間、L3は、頂点P3―P4間の長さである。この処理は、あくまでも予め計画され予定された施設経路上での頂点間距離を求めるものである。
【0056】
例えばL1の場合(1)式のように求める。なお、L2,L3は線分の始点、終点の位置座標を変更して同様に求めることができることは言うまでもない。図9には、各線分の長さL1,L2,L3を(1)式により表現している。
【0057】
【数1】
【0058】
この演算は、敷設経路情報データベースDB2に記憶された位置情報を用いて行うものであり、予定の敷設計画経路に基づいて算出された実敷設経路長である。図12の上部には、線分を伸ばして直線状に配置したときの各点P1、P2、P3,P4と、線分の長さL1,L2,L3を示している。
【0059】
他方、もうひとつのデータベースであるRFID配置距離情報データベースDB1に蓄積記憶されたRFID長尺体の距離情報(図8の欄903)に着目する。図8には、縦欄901に、長尺体に埋め込んだRFIDの順番を示すシリアル番号、縦欄902に、読み込んだRFIDのID情報、縦欄903には、そのID情報を読み込んだ距離が記載されている。
【0060】
そして、図9の計画経路に敷設されたときの始点P1と終点P4におけるシリアル番号903が、251と671であった。またこのときの、長尺体先頭からの距離(903)は、それぞれ(6025cm)と(17002cm)であった。従って、この間の距離の差が、敷設した長尺体上での始点P1と終点P4間の距離ということになる。
【0061】
以上の説明から理解できるように、(1)式で求めた線分は、あくまでも計画値から求めた理想の長さであり、実際には長尺体を直線状に配置できるわけではないので、両者の距離、或いは位置には差異を生じている。
【0062】
そこで、次に処理ステップS61においては、図9の敷設経路の線分の長さL1,L2,L3に対応する長尺体上での線分の長さ(図11)について、(2)式により算出する。具体的には、敷設したRFID長尺体上の距離差((6025cm)と(17002cm)の差)CLを、L1:L2:L3の比率で分割し、RFID長尺体を分割した長さを、CL1,CL2,CL3とする。なお、CL2,CL3は(2)式の分子のL1を、L2及びL3に変更する事により求める事ができる。
【0063】
【数2】
【0064】
また、この演算結果からは、分割長さから敷設経路の線分P2−P3に対応するRFID長尺体の始点距離(83)及び線分P3−P4に対応する始点距離(84)が求まる。図12の下には、このようにして求めた距離CL1,CL2,CL3や位置(83−86)を、直線状に表記している。
【0065】
この場合、RFID長尺体に伸び縮みがなければ敷設経路全体の長さLと敷設したRFID長尺体の全体の長さCLは等しくなり、さらにL1=CL1,L2=CL2,L3=CL3となるが、実際には敷設時にRFID長尺体のたるみや伸びにより等しくならないことを考慮してこのような処理を行っている。
【0066】
次に、処理ステップS62では、分割した長さCL1,CL2,CL3をもとに、RFID配置位置情報DB1に登録されている各RFIDが、どの線分に属しているかを判定する。これは、次に示すどの線分に属する補間関数を用いるかの判断材料になる。
【0067】
処理ステップS63では各線分の直線の方程式を媒介変数表示で求める。この直線の方程式はRFIDが直線上のどの位置にあるかを求める補間関数である。媒介変数表示を行う事により線分の始点位置では媒介変数t=0、終点位置ではt=1と表現できる。また、媒介変数tの比率で線分を分割することが出来るために、RFID配置位置情報DB1に登録されている距離情報と同じ比率で線分上の座標値を求める事ができる。
【0068】
例えば線分P1−P2の直線の方程式は(3)式のようになる。同様に線分P2−P3及び線分P3−P4の直線の方程式は始終点の座標値を変更して求める事ができ、(X2(t),Y2(t))、(X3(t),Y3(t))とする。
【0069】
【数3】
【0070】
処理ステップS64では、RFID長尺体の分割点からの位置を求めようとするRFIDの距離から線分上での媒介変数の値を求める。つまり長さCL1の区間では、始点ID(図8シリアル番号251、従ってIDが1FBAのRFID)の距離(6025cm)を基準として、RFID配置位置までの距離を求める。長さCL2及びCL3の区間では、各区間の始点位置(83及び84)の距離を基準として、RFID配置位置までの距離を求める。
【0071】
長尺体上の表示を示す図12の下の線分において、RFIDが87の位置にあり、始点85からの距離がCL1nであったとすると、この区間の線分の長さCL1に対して87の距離は(4)式右辺のようになる。この値は正しく媒介変数tnの値を表している。
【0072】
【数4】
【0073】
処理ステップS65では、求めた媒介変数tnを用い、(5)式により2次元座標系での位置に変換する。その他の分割区間に関しても同様の処理を実行し2次元座標系での位置に変換する。
【0074】
【数5】
【0075】
処理ステップS65では、このようにして求めた座標値を、RFIDの位置情報データベースDB3に登録する。
【0076】
図13は、座標位置への変換処理を行った後のRFIDの位置情報データベースDB3の一例である。図10に処理フローを示す基準RFID以外のRFID位置推定部4の処理により、図8の記憶情報に加えて、位置に関する縦欄906が追加されている。また、本処理では長尺体について、横欄(251)から(672)の部分を敷設に使用したので、この間の縦欄906に位置座標値が追加されている。
【0077】
なお、本処理では図11の85及び86の位置を基準点として、途中のRFIDの位置を推定している。しかし、RFID長尺体のたるみや伸びは局所的に起きる場合も想定される。そこで、経路途中の基準点である点P2や点P3を追加の基準点とすることで、このような問題を解決することができる。この場合、点P1を始点位置、点P2を終点位置としてRFIDの位置の推定処理を行う事になるために推定精度が向上する。なお、上記は屈曲点を基準点として説明したが、直線経路上でも位置のわかる基準点をRFID長尺体が通過した場合にその位置を新たな始点或いは終点として推定処理を行ってもかまわない。
【0078】
また、補間関数として(3)式に示す直線関数を一例として示しているが、曲線部分等は直線関数(一次関数)ではなく、多項式やスプライン関数等の曲線近時関数を用いる方が精度が向上する。このような場合には、敷設経路に適した補間関数を選択して同様な処理を行う事もできる。
【0079】
ここまでの処理により、RFIDのID情報に対応する位置情報のデータベースDB3の作成が完了した。ここまでの処理により実行され、情報が確立した範囲を図1の9として点線で示している。上記機能は、位置検知装置として備えるべき機能のうち、RFIDのID情報に対応する位置情報のデータベースDB3の作成に関する部分であり、続いてこのデータベースを利用して、敷設したRFID長尺体のID情報を読み込み位置を検知する処理について図1で説明する。
【0080】
図1において、RFID読取り手段6は、RFID長尺体に取り付けられたRFIDを読取る装置である。読取り装置の構成図を図14に示す。90は敷設後のRFID長尺体、93は位置を計測しようとするRFIDインレット、91は読取りアンテナ、92はRFIDリーダ、94はRFIDリーダの制御を行うPCである。
【0081】
利用者が読取りアンテナ91をRFIDインレット93の位置にかざすと、RFIDリーダ92のRF信号が91より送信され93よりID情報を符号化した応答信号が返ってくる。RFIDリーダ92はこれを受信した後、復号し受信したID情報として制御用PC94へ出力する。ここまでが敷設する長尺体の始終点のID情報入力手段となる。なお、バーコードを利用した長尺体ではRFIDリーダ部分をバーコードリーダとすることで同様の処理を実行できる。
【0082】
次に図1のIDから位置を検索する手段7における処理を実行する。この処理はID情報をもとにID情報に対応する位置情報を探索する処理である。例えば、RFIDのID情報に対応する位置情報のデータベースDB3を使った場合、RFIDのID情報[EF86]を受信したとする。すると検索手段7では列(253)より[EF86]を探索しこのIDに対応する位置座標である(141,251)を出力する。この探索処理は図14の制御用PC94に処理させる事もできる。また、RFIDの位置情報データベースDB3はPC94の内蔵記憶装置に記録しても良いし、ネットワーク等を介して外部の記憶装置に記録されていてもかまわない。このような処理を行い、最終的に図1の位置出力8として出力される。
【0083】
本実施形態によれば、敷設経路情報(データベースDB1)と、RFID長尺体のRFIDの配置距離情報(データベースDB2)から、敷設後の各RFIDの空間的な位置を推定することが可能となり、RFID長尺体のRFIDを読み取る事により読み取った地点の空間上の位置を検知することができる。
【0084】
最後に、位置検知活用事例と、具体的な検知手法について図で説明する。図15に、ケーブルのRFID長尺体(RFIDケーブル)を利用して位置を検知する例を示す。図15は、建物内の配置図である。この図において、130は機器A、134は制御盤Aであり、この間を点線で囲まれたケーブルトレイ132に沿って配線する。ケーブルトレイ132は、配線経路として登録されており、ケーブルの敷設経路となっている。137は敷設したRFIDケーブルであり、敷設経路以外には、その他の機器138などがあり、ケーブルを通過させる事はできない。
【0085】
RFIDケーブル137は、IDがaの位置135を始点とし、IDがkの位置134を終点としており、この間に適宜ID:b〜ID:jまでのRFIDが配置されている。従って、図1で説明した手順を用いて各点における位置情報を推定することができる。図中には、機器やケーブルトレイの位置座標を明記していないが、図面及び内部データから読取る事ができる。また、屈曲点に関してもケーブルトレイの屈曲点の位置を代表点とすることができる。
【0086】
位置情報を特定するための利用時には、RFIDケーブル137内の任意位置のRFIDのID情報を、図14の装置を用いて読み取り、RFIDの位置情報データベースDB3を参照すれば良い。例えば、IDがgの位置133を読み取れば、RFIDの位置情報データベースDB3を参照し、位置座標(XXcm,YYcm,ZZcm)を得る事ができる。
【0087】
また、例えばIDがfである136の位置は、ケーブルトレイの屈曲点であり、図面を参照する事により正確な位置座標を読み取る事ができる。そこで、先に説明したようにID:gを新たな始点・終点位置としてRFIDの位置推定処理を行い、位置精度の向上操作を行う事もできる。
【0088】
また、RFIDケーブルを用いて取得した位置情報を利用して新たなケーブルを敷設する場合のガイドとして利用することができる。例えば、図15において制御盤A(131)から、機器B(1303)へケーブルを敷設することを想定する。この事例では、正しい経路である経路A(1301)以外に、経路B(139)が近くに存在している。
【0089】
2つの経路付近の形状が非常に似通っている場合、間違えた経路にケーブルを敷設する可能性がある。そこで既に敷設が終っているRFIDケーブル137のRFIDを読み取る事により正確な経路を選択する。例えばIDがgの位置133を読んだ場合、正確な経路の分岐点であることが、判明するので経路A(1301)へ分岐させて敷設させることが可能となる。尚、この場合に、図15のごとき建屋配置図が、その座標情報と共に記憶され、経路Aの入り口座標が、予め記憶されており、IDがgの位置133近傍であることが予め知られていることはいうまでもない。また、この判定処理の中で、IDがeで位置が1302を読んだ場合に、そこは今回新たに敷設しようとしている経路B(139)の分岐点ではないことが判明し、敷設をやり直してIDがgの場所から分岐させることを可能とする。このように、本発明はケーブル(長尺体全体)の敷設支援システムに利用することもできる。
【0090】
また、別の応用として、RFIDケーブルを敷設経路(施工図)通りに敷設したか否かを判断するシステムとして利用することもできる。図16の敷設後ケーブル配置において、点線で示す145が施工図の経路、実線で示す140が実際に敷設された経路である。この場合に、例えばIDがeを読み込んで得た位置情報と、実際の経路の位置情報との間には位置の差分143が発生する。この差分143が基準値以上であれば、敷設経路の誤りと判定する事ができる。
【0091】
また、ケーブルの余り144が、巻いてあるとする。ケーブルを巻くことにより、障害が発生するようなケーブルの場合、このような施工を行っていると事故になる危険性がある。IDがhの位置146は、点線で示す敷設経路145上を通過しており、巻いてある部分144が見えない場合目視で判定することはできない。ところがIDがhの位置を読み込みRFIDの位置情報データベースDB3を参照する事により、IDがhの位置座標は、現在存在する位置とかなり離れた位置にあることになる。従って、IDがhの位置を読み込み、実際の位置と比較する事により途中経路に誤りのあることが判定できる。
【0092】
別の応用として、人やロボット・車両等移動体のナビゲーション・位置検知を行う場合に利用する例を、図17を用いて説明する。図17において、151は床に敷設したRFID長尺体であり、150は敷設経路のガイドに使うマーカである。マーカ150の位置を正確に測量しておけば、マーカ以外のRFID長尺体のRFIDの位置は図10の手順を行う事により推定できる。152は移動体の一例としてロボットである。ロボット152には、RFIDリーダ153が取付けられており床に埋め込まれたRFID長尺体のID情報を読み取ることが出来る。従って、このID情報を元に自分の位置を検知し、目的の移動経路154の経路を進むことができる。このように、移動体の位置検知及びナビゲーションシステムの位置検知手段として利用することができる。
【0093】
図18では、RFID長尺体で得られた位置を位置検知用ビーコン発信装置の基準点として利用する例について説明する。パッシブ型のRFIDを利用する場合、通信距離が非常に狭くRFID長尺体から離れてしまうと位置検知が困難になってくる。そこで、遠距離でも位置検知が可能なビーコンを利用した位置検知装置と組み合わせて利用する。
【0094】
166はRFID長尺体であり、RFIDは163,164,165の位置に埋め込まれている。ビーコン装置1600は、IDリーダ162、変調器161、LED160より構成される。ビーコン装置1600を、163のID位置に設置し、IDリーダ162を用いてIDを読み込み、そのIDを変調装置161を介してLED160を点滅させる。つまり位置163のID情報を、LED160を用いて点滅送信していることになる。LED160の点滅情報は、動画カメラ167で撮影する。動画映像より、163の位置のID情報から、復号装置168を用いてID情報を取り出す。処理169において、撮影された各LEDの画像上の位置及びLEDのID(=RFID長尺体のRFIDのID)より、RFID位置情報データベースDB3を参照して求めた位置より逆投影変換を用いて撮影を推定する。
【0095】
この場合には、検出位置精度はビーコンの位置精度に左右される。ビーコンの敷設位置を測量するのは非常に手間のかかる作業であるが、壁面・床面・天井を通過するRFID長尺体を探し出し、その位置にビーコン1600を設置するだけで位置の測量が完了し工数削減ができる。また、ビーコンの位置設定が簡単に行えるために、撮影場所から見えない場所に配置されているビーコンを臨機応変に移動させることも可能になる。
【産業上の利用可能性】
【0096】
本発明は、特に建屋内や車両、飛行機など、GPSでの計測が困難な場所での位置測定に適している。
【符号の説明】
【0097】
1:RFID配置距離情報DB
2:敷設経路情報DB
4:基準RFID以外のRFID位置推定部
5:RFIDの位置情報DB
7:IDから位置を検索する手段
8:位置出力
【技術分野】
【0001】
本発明は、識別符号発信手段を用いて位置を検知するシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
識別符号発信手段の一つであるRFID(RADIO FREQUENCY IDENTIFICATION)タグを利用して位置を検出するシステムの例が特許文献1に開示されている。特許文献1のシステムでは、RFIDタグを直線状或いは行列状に一定間隔で配置(IDは連番)したシートを予め製作し、位置測定地点に設置する。シート敷設時には、基準になるRFIDの位置座標を指定し、基準以外のRFIDの位置は、基準位置と基準位置からのタグの数に配置間隔を乗じて、読み取ったRFIDタグの位置を検出する。
【0003】
また、特許文献2に開示されているシステムでは、識別符号発信手段の一つであるRFIDを取り付けたケーブルを敷設し、GPS等の別の位置検知手法を用いてケーブルに取り付けられたRFIDの位置を検知し、RFIDのIDと位置を対応させるデータベースDBを作成する。ケーブルの移設によりRFIDの位置した事を再度GPS等の別の位置検知手法を用いてIDと位置の対応DBを探索し位置が異なる場合ケーブルが移設されたと判定する設備管理システムが述べられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−170853号公報
【特許文献2】特開2008−21238号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に開示された手法では、RFIDタグを直線状或いは行列状に一定間隔で配置したことを想定しているので、RFIDタグを紐のように自由に折れ曲がるような物体に張り付けた場合については考慮されていない。
【0006】
この点、特許文献2は、自由に折れ曲がるケーブルの位置検知に関して述べられている。しかし、すべてのRFIDの位置を予め別な位置検知手法で計測しており、位置計測を行っていないRFIDの位置に関しては述べられていない。
【0007】
以上のことから本発明においては、GPS等の別の位置検知手法が使用できない建屋内などの環境下において、任意箇所の位置計測を可能とする識別符号発信手段を用いた位置検知システムを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
その長手方向に複数の識別符号発信手段を取り付けられた長尺体と、識別符号発信手段を配置した長尺体長手方向の距離と識別符号発信手段の識別符号を対応付けて記憶すると共に、長尺体の敷設経路情報を記憶する記憶手段と、長尺体に取り付けられた識別符号発信手段の識別符号を読み取る読み取り手段を備え、長尺体を敷設経路情報に従って配置するとともに、読み取り手段で読み取った識別符号を記憶手段で参照することにより、その位置を検出する。
【0009】
その長手方向に複数の識別符号発信手段を取り付けられた長尺体と、敷設する長尺体の始点及び終点の識別符号情報と長尺体の敷設経路情報を有し、長尺体内の識別符号発信手段の位置を推定し識別符号情報と経路上の位置を対応付けて記録する記憶手段と、長尺体に取り付けられた識別符号発信手段の識別符号を読み取る読み取り手段を備え、長尺体を敷設経路情報に従って配置するとともに、読み取り手段で読み取った識別符号を記憶手段で参照することにより、その位置を検出する。
【0010】
長尺体は、曲線配置が可能な材質とされる。
【0011】
検知した位置情報を、敷設経路あるいは移動経路のナビゲーションとして利用する。
【0012】
検知した位置情報を利用して、実際に敷設した経路と敷設計画時の経路を比較し、経路の差分が決められた値以上の場合、敷設経路の誤りと判定する。
【0013】
検知した位置情報を利用して、別の位置検知手段の基準点として位置を計測する。
【0014】
その長手方向の適宜の箇所に複数の識別符号発信手段を取り付けられた長尺体と、識別符号発信手段を配置した長尺体長手方向の距離と識別符号発信手段の識別符号を対応付けて記憶する記憶手段が一体に備えられる。
【発明の効果】
【0015】
一列に並んだRFIDを敷設し、基準となるRFIDの位置を指定する事により様々な配置経路においても基準RFID以外のRFIDの位置を推定する事ができるようになり位置検知用RFIDの設置が容易にできる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】位置検知装置として備えるべき機能を処理フローとして示した図。
【図2a】単体のRFIDインレットの一例を示す図。
【図2b】RFIDインレットを複数備えたRFID長尺体の一例を示す図。
【図3】二次元バーコードを取付けた長尺体の一例を示す図。
【図4】ケーブルの中にRFIDを挿入したRFID長尺体の例を示す図。
【図5】紐(糸)或いはロープ内にRFIDを入れた例を示す図。
【図6】筒状の形状(配管、ホースなど)にRFIDを埋め込んだ例を示す図。
【図7】長尺体の製造手法を示す図。
【図8】RFID配置距離情報データベースに登録された情報を示す図。
【図9】敷設経路情報データベースに登録されている敷設経路の一例を示す図。
【図10】基準RFID以外のRFID位置推定部4の処理フローを示す図。
【図11】長尺体上の敷設位置を示す図。
【図12】敷設系路上の位置と、長尺体上の敷設位置を比較して示した図。
【図13】RFIDの位置情報データベースDB3の一例を示す図。
【図14】読取り装置の構成を示す図。
【図15】RFIDケーブルを利用して位置を検知する例を示す図。
【図16】敷設経路通りに敷設したことを判断するシステムを示す図。
【図17】移動体のナビゲーション・位置検知を行う場合に利用する例を示す図。
【図18】位置検知用ビーコン発信装置の基準点として利用する例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
次に、本発明を実施するための形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0018】
本発明に係る識別符号発信手段による位置検知システムは、特に建屋内の位置測定に利用されるのがよい。例えば、建屋の所定階の床などの平面的広がりを有する領域、更には高さ方向への空間的広がりを有する領域における任意箇所の位置を測定するのに適する。
【0019】
このために本発明においては、識別符号発信手段として、例えばRFIDを取り付けた長尺体を使用する。長尺体としては、テープ、ケーブル、ロープなどが利用できるので、長尺体は建屋内の平面的、空間的領域の任意箇所に設置されることになる。長尺体と、その製造並びに設置に関して、図2乃至図9で説明する。
【0020】
また、長尺体に取り付けたRFIDからの信号を用いて位置検出する位置検知装置を備えている。位置検知装置として備えるべき機能、処理フロー、あるいはデータについて図1、図10乃至図14で説明する。
【0021】
また、識別符号発信手段による位置検知システムは、建屋内に設置されて建屋内の平面的、空間的領域の任意箇所の位置を検知するわけであるが、位置検知活用事例と、具体的な検知手法について図15乃至図18で説明する。
【0022】
まず、長尺体と、その製造並びに設置に関して、図2乃至図9で説明する。本実施形態で用いることができる長尺体の例を図2乃至図6に示す。
【0023】
図2aは、識別符号発信手段の一つである単体のRFIDの一例である。20がRFIDチップ、21がアンテナであり、RFIDチップ20にアンテナ21を取付けた構成22をRFIDインレットと言う。RFIDインレット22は、アンテナ21で捉えた電磁波をRFIDチップ20に供給して、RFIDチップ20に記録されているID情報や各種記録情報の読み書きを行うことができる。
【0024】
RFID長尺体とは、図2bに示すように、複数のRFIDインレット22を、テープや紐状の長尺体26に取付けた物である。RFIDインレット22に書かれているID情報部分はユニークであり、同じIDを持つRFIDインレット22は存在しない。なお、長尺体26に取付けるRFIDのID情報は連番でなくても良い。
【0025】
図3はRFIDインレット22の代わりに、二次元バーコード31を取付けた(或いは印刷した)長尺体の例である。31が二次元バーコードであり、26が長尺体である。二次元バーコードの場合もバーコード内のID情報はユニークである必要がある。
【0026】
図4は、ケーブルを長尺体とし、その中にRFIDを挿入したRFID長尺体の例である。100は導線或いは光ファイバーなどが通るケーブル心線、101は心線の保護を目的に絶縁性の樹脂などで構成されるシース部分、そして22は心線とシースの間に挿入されたRFIDインレットである。ケーブルは、電力ケーブルや信号ケーブルなど様々な目的で利用される。従って、建築物や車両・航空機などでは非常にたくさんのケーブルが利用されている。このケーブルを電力及び信号の伝送以外に、位置検知の手段として利用することができる。
【0027】
図5は、紐(糸)或いはロープを長尺体とし、その内部にRFIDを入れた例である。110がロープ本体、111がRFIDを装着したテープ、22はRFIDインレットである。RFIDテープ111を、ロープを構成する素材と一緒に束ね織り込む事によりRFIDロープを製造する事ができる。ロープの場合、テープと比べ屈曲方向に対する制限がないため、テープに比べ自由な位置に設置できる利点がある。
【0028】
図6は、筒状の形状のもの(配管、ホースなど)を長尺体とし、その中にRFIDを埋め込んだ例である。120が筒状の形状、22がRFIDインレットである。RFIDインレット22の埋め込み方法は、RFIDテープを作りそれを筒状形状に埋め込んでも良いし、RFIDインレット単独のままで埋め込んでも良い。各種製造プラント・発電プラントなどでは多数の配管が利用されている。従って、この配管を位置検知の手段として利用することができる。
【0029】
なお、図2乃至図6において、ID情報のユニーク性に関しては、この長尺体26などを利用するエリアを限定するための手段がある場合、敷設されるエリア内でユニーク性が確保出来ればよい。
【0030】
以上、長尺体の例について説明したが、それぞれの種類のRFID長尺体を複合して利用することも可能である。なお、ここでの長尺体は、直線配置することも可能であるが、いずれも曲線配置することができるために、建屋内の任意箇所に位置づけすることが可能である。
【0031】
また、ここでは識別符号発信手段として、RFIDとバーコードの例を説明したが、他の原理のものであってもよい。また、識別符号発信手段としては、原理的に自ら信号を積極的に発信するもの以外に、光などが照射されたときにその反射波が変化することを利用し、結果的に信号を発信したとすることができるものであってもよい。
【0032】
次に、長尺体の製造について、図7、図8を用いて説明する。RFID長尺体26は、例えば図2、図3のようなRFID長尺体26とする。RFID長尺体26は、図7のようにして製造される。ここでは、長尺体26の一例としてポリエチレン等で作られたテープに、RFIDインレット22を取り付ける工程を示している。なお、長尺体26の材料は、紙や布その他テープ状に加工出来る材料であればなんでも良い。また、テープを例にしているが、紐状やパイプ状の物でも同様に製造可能である。
【0033】
この工程において、まず40は長尺体26(ポリエチレンテープ)が巻き付けられているボビンである。長尺体26は、ボビン40から引き出され、RFIDインレット22の取付機43を通過する。ここではRFIDインレット22を、接着剤等を利用して長尺体26の表面に張り付けて行く。
【0034】
RFIDインレット22を取り付けた長尺体26は、次にRFIDインレット22を読み取るためのリーダアンテナ44を通過する。続いて、長尺体26の移動距離を計測するエンコーダ46を通過する。リーダアンテナ44と、エンコーダ46の距離(差分情報)は予め計測されており、リーダアンテナ44内を通過した位置を、この差分情報により補正する。
【0035】
なお、リーダアンテナ44は、移動方向に幅を持った通信可能エリアが存在する場合がある。この場合にはRFIDの位置の代表点として、最初に読み取れた位置としてもかまわないし、読取エリアの中心点としてもかまわない。また、図7ではリーダアンテナ44の後にエンコーダを取り付けているが44の前でも構わない。
【0036】
アンテナ44で受信したRF信号41は、RFIDリーダ装置45を用いて読み取られ、ID情報48としてPC47へ出力される。また、エンコーダ46で計測した移動距離の情報42も、PC47へ出力される。PC47では、読み取ったID情報48と移動距離情報42を対応付けて、RFID配置距離情報データベースDB1へ登録する。最後に、RFIDインレット22を取り付けた長尺体26は、巻き取りボビン40に巻き取られる。
【0037】
図7の製造設備により製造され、巻き取りボビン40に巻き取られた長尺体26については、RFIDインレット22に関連する情報がRFID配置距離情報データベースDB1に登録されるが、この登録された情報は、図8のように関連つけて記録されている。
【0038】
図8において、縦欄901は、長尺体に埋め込んだRFIDの順番を示すシリアル番号であり、縦欄902には、読み込んだRFIDのID情報、縦欄903には、そのID情報を読み込んだ距離が記載されている。つまり、長尺体26上で連続するRFIDインレット22ごとに、ID情報と、そのID情報を読み込んだ距離が互いに関連つけて記録されている。
【0039】
なお、901は単なるシリアル番号であるが、距離情報903があれば、シリアル番号間の距離を計算で求める事ができる。また、距離情報903はシリアル番号1からの距離となっているが、一つ前のRFIDまでの距離が記録されていてもかまわない。
【0040】
また、図7からも分かるように、RFID22は等間隔で長尺体26に取り付けられているとは限らない。つまり、等間隔に取り付けるためには、製造時の取り付け精度が必要になる。そこで、不規則な間隔に取り付けられても良いように、長尺体26に取り付けたRFIDの距離を実測し、RFID配置距離情報データベースDB1へ登録している。
【0041】
また、図7では製造時にRFIDの位置を計測しRFID配置距離情報データベースDB1へ登録する例を示したが、RFIDインレット22を取り付けた長尺体26を製造し、再度巻き取りながらID情報48と位置42の対応情報を作成してもかまわない。この場合、図7においてRFID22を取り付けた長尺体26を、ボビン40に巻き付け、RFIDインレット取付機43を取り除いた構成となる。このようにしてRFID配置距離情報データベースDB1は作成される。
【0042】
いずれの場合であっても、長尺体は長尺体自身と、長尺体に設置されたRFIDの配置距離に関する情報とが一体となって作成される。また、長尺体の敷設、使用にあたっては、RFID配置距離情報データベースDB1の情報が、後述する位置検知装置において使用されることになる。
【0043】
次に、長尺体の敷設について説明する。先にも述べたように、長尺体を敷設する場所は、特に建屋の所定階の床などの平面的広がりを有する領域、更には高さ方向への空間的広がりを有する領域において行われるのがよく、ここでは平面領域を想定している。但し、建屋内に限定されるものではなく、車両や飛行機、船などの移動体内に敷設されるものにも適用可能である。さらには屋外であっても、プラントなどのようにGPSで位置検出ができない構造物の陰になる部分での適用が可能である。
【0044】
また本発明において、敷設は、床面などの任意の場所に敷設することを前提とするのではなく、予め定まった経路に沿って敷設するものとする。RFID長尺体の敷設経路は、予め敷設経路情報データベースDB2に登録されているものとする。
【0045】
図9に、敷設経路情報データベースDB2に登録されている敷設経路の一例を示す。敷設経路とはRFID長尺体を敷設する経路である。図9の例では、敷設経路には4つの頂点P1、P2、P3,P4があり、その頂点を屈曲点としてP1→P2→P3→P4の順に通過させ、点線50で示した、折れ曲がった線分で敷設経路を表現している。なお、図9は説明の簡素化のために2次元空間での敷設経路を表現しているが、3次元空間での経路表現も3次元座標値を用いて同様に表現できる。
【0046】
4つの頂点P1、P2、P3,P4は、それぞれX軸座標と、Y軸座標により、図9に示すように表現されている。つまり、敷設経路情報データベースDB2には、4つの頂点P1(x1、y1)、P2(x2、y2)、P3(x3、y3),P4(x4、y4)が、それぞれX軸座標と、Y軸座標により表現された位置情報として予め作成されて、登録されている。これらはあくまでも頂点の位置情報であるが、これらの位置情報を連続する情報として認識すると、これは経路情報として利用することができる。
【0047】
敷設現場では、図7の巻取りボビン49からRFID長尺体26を巻きだして、敷設経路に沿って敷設する。このとき、敷設する長尺体の始点及び終点のRFIDのID情報を入手する。
【0048】
例えば、図8の情報が登録されているRFID長尺体を経路に沿って敷設したとする。敷設後にRFID長尺体26の始点位置にあるRFIDを読取ったら[1FBA]、終点位置のRFIDを読取ったら[10A1]であったとする。この場合、敷設したRFID長尺体は、図8の(251)行から(671)行までのRFIDが取り付けられたRFID長尺体を敷設した事となる。
【0049】
以上、本発明においてその前提となる長尺体と、その製造並びに設置に関して、図2乃至図9を用いて説明した。
【0050】
次に、長尺体に取り付けたRFIDからの信号を用いて位置検出する位置検知装置として備えるべき機能、処理フローあるいはデータについて図1、図10乃至図14を用いて説明する。
【0051】
図1は、本発明の位置検知装置として備えるべき機能を処理フローとして示した図である。図1において、DB1はRFID配置距離情報データベースであり、この記憶内容と、作成の手法については既に図7と図8で説明したとおりである。DB2は、敷設経路情報データベースであり、これは図9に例示されるような、敷設現場の経路情報である。これら2つのデータベースは、敷設以前に準備されている。
【0052】
これに対し、長尺体敷設時には、敷設する長尺体の始点及び終点のRFIDのID情報を入手する。図1において、3が敷設する長尺体の始終点のID情報入力手段である。
【0053】
図1の、基準RFID以外のRFID位置推定部4では、以上のデータベースDB1,DB2の既知情報と、ID情報入力手段3からの敷設時情報とから、任意のRFID位置を推定し、RFID位置情報データベースDB3を構築する。
【0054】
次に、RFID位置情報データベースDB3に記憶する任意RFIDの位置情報の作成手法について、図10から図12を用いて説明する。
【0055】
図10は、基準RFID以外のRFID位置推定部4の処理フローである。図10の処理ステップS60では、図9に示す敷設経路の線分の長さL1,L2,L3を求める。なお、敷設経路の線分の長さL1,L2,L3は、図9に示すように、それぞれ4つの頂点P1(x1、y1)、P2(x2、y2)、P3(x3、y3),P4(x4、y4)間の距離であり、線分の長さL1は、頂点P1―P2間、L2は、頂点P2―P3間、L3は、頂点P3―P4間の長さである。この処理は、あくまでも予め計画され予定された施設経路上での頂点間距離を求めるものである。
【0056】
例えばL1の場合(1)式のように求める。なお、L2,L3は線分の始点、終点の位置座標を変更して同様に求めることができることは言うまでもない。図9には、各線分の長さL1,L2,L3を(1)式により表現している。
【0057】
【数1】
【0058】
この演算は、敷設経路情報データベースDB2に記憶された位置情報を用いて行うものであり、予定の敷設計画経路に基づいて算出された実敷設経路長である。図12の上部には、線分を伸ばして直線状に配置したときの各点P1、P2、P3,P4と、線分の長さL1,L2,L3を示している。
【0059】
他方、もうひとつのデータベースであるRFID配置距離情報データベースDB1に蓄積記憶されたRFID長尺体の距離情報(図8の欄903)に着目する。図8には、縦欄901に、長尺体に埋め込んだRFIDの順番を示すシリアル番号、縦欄902に、読み込んだRFIDのID情報、縦欄903には、そのID情報を読み込んだ距離が記載されている。
【0060】
そして、図9の計画経路に敷設されたときの始点P1と終点P4におけるシリアル番号903が、251と671であった。またこのときの、長尺体先頭からの距離(903)は、それぞれ(6025cm)と(17002cm)であった。従って、この間の距離の差が、敷設した長尺体上での始点P1と終点P4間の距離ということになる。
【0061】
以上の説明から理解できるように、(1)式で求めた線分は、あくまでも計画値から求めた理想の長さであり、実際には長尺体を直線状に配置できるわけではないので、両者の距離、或いは位置には差異を生じている。
【0062】
そこで、次に処理ステップS61においては、図9の敷設経路の線分の長さL1,L2,L3に対応する長尺体上での線分の長さ(図11)について、(2)式により算出する。具体的には、敷設したRFID長尺体上の距離差((6025cm)と(17002cm)の差)CLを、L1:L2:L3の比率で分割し、RFID長尺体を分割した長さを、CL1,CL2,CL3とする。なお、CL2,CL3は(2)式の分子のL1を、L2及びL3に変更する事により求める事ができる。
【0063】
【数2】
【0064】
また、この演算結果からは、分割長さから敷設経路の線分P2−P3に対応するRFID長尺体の始点距離(83)及び線分P3−P4に対応する始点距離(84)が求まる。図12の下には、このようにして求めた距離CL1,CL2,CL3や位置(83−86)を、直線状に表記している。
【0065】
この場合、RFID長尺体に伸び縮みがなければ敷設経路全体の長さLと敷設したRFID長尺体の全体の長さCLは等しくなり、さらにL1=CL1,L2=CL2,L3=CL3となるが、実際には敷設時にRFID長尺体のたるみや伸びにより等しくならないことを考慮してこのような処理を行っている。
【0066】
次に、処理ステップS62では、分割した長さCL1,CL2,CL3をもとに、RFID配置位置情報DB1に登録されている各RFIDが、どの線分に属しているかを判定する。これは、次に示すどの線分に属する補間関数を用いるかの判断材料になる。
【0067】
処理ステップS63では各線分の直線の方程式を媒介変数表示で求める。この直線の方程式はRFIDが直線上のどの位置にあるかを求める補間関数である。媒介変数表示を行う事により線分の始点位置では媒介変数t=0、終点位置ではt=1と表現できる。また、媒介変数tの比率で線分を分割することが出来るために、RFID配置位置情報DB1に登録されている距離情報と同じ比率で線分上の座標値を求める事ができる。
【0068】
例えば線分P1−P2の直線の方程式は(3)式のようになる。同様に線分P2−P3及び線分P3−P4の直線の方程式は始終点の座標値を変更して求める事ができ、(X2(t),Y2(t))、(X3(t),Y3(t))とする。
【0069】
【数3】
【0070】
処理ステップS64では、RFID長尺体の分割点からの位置を求めようとするRFIDの距離から線分上での媒介変数の値を求める。つまり長さCL1の区間では、始点ID(図8シリアル番号251、従ってIDが1FBAのRFID)の距離(6025cm)を基準として、RFID配置位置までの距離を求める。長さCL2及びCL3の区間では、各区間の始点位置(83及び84)の距離を基準として、RFID配置位置までの距離を求める。
【0071】
長尺体上の表示を示す図12の下の線分において、RFIDが87の位置にあり、始点85からの距離がCL1nであったとすると、この区間の線分の長さCL1に対して87の距離は(4)式右辺のようになる。この値は正しく媒介変数tnの値を表している。
【0072】
【数4】
【0073】
処理ステップS65では、求めた媒介変数tnを用い、(5)式により2次元座標系での位置に変換する。その他の分割区間に関しても同様の処理を実行し2次元座標系での位置に変換する。
【0074】
【数5】
【0075】
処理ステップS65では、このようにして求めた座標値を、RFIDの位置情報データベースDB3に登録する。
【0076】
図13は、座標位置への変換処理を行った後のRFIDの位置情報データベースDB3の一例である。図10に処理フローを示す基準RFID以外のRFID位置推定部4の処理により、図8の記憶情報に加えて、位置に関する縦欄906が追加されている。また、本処理では長尺体について、横欄(251)から(672)の部分を敷設に使用したので、この間の縦欄906に位置座標値が追加されている。
【0077】
なお、本処理では図11の85及び86の位置を基準点として、途中のRFIDの位置を推定している。しかし、RFID長尺体のたるみや伸びは局所的に起きる場合も想定される。そこで、経路途中の基準点である点P2や点P3を追加の基準点とすることで、このような問題を解決することができる。この場合、点P1を始点位置、点P2を終点位置としてRFIDの位置の推定処理を行う事になるために推定精度が向上する。なお、上記は屈曲点を基準点として説明したが、直線経路上でも位置のわかる基準点をRFID長尺体が通過した場合にその位置を新たな始点或いは終点として推定処理を行ってもかまわない。
【0078】
また、補間関数として(3)式に示す直線関数を一例として示しているが、曲線部分等は直線関数(一次関数)ではなく、多項式やスプライン関数等の曲線近時関数を用いる方が精度が向上する。このような場合には、敷設経路に適した補間関数を選択して同様な処理を行う事もできる。
【0079】
ここまでの処理により、RFIDのID情報に対応する位置情報のデータベースDB3の作成が完了した。ここまでの処理により実行され、情報が確立した範囲を図1の9として点線で示している。上記機能は、位置検知装置として備えるべき機能のうち、RFIDのID情報に対応する位置情報のデータベースDB3の作成に関する部分であり、続いてこのデータベースを利用して、敷設したRFID長尺体のID情報を読み込み位置を検知する処理について図1で説明する。
【0080】
図1において、RFID読取り手段6は、RFID長尺体に取り付けられたRFIDを読取る装置である。読取り装置の構成図を図14に示す。90は敷設後のRFID長尺体、93は位置を計測しようとするRFIDインレット、91は読取りアンテナ、92はRFIDリーダ、94はRFIDリーダの制御を行うPCである。
【0081】
利用者が読取りアンテナ91をRFIDインレット93の位置にかざすと、RFIDリーダ92のRF信号が91より送信され93よりID情報を符号化した応答信号が返ってくる。RFIDリーダ92はこれを受信した後、復号し受信したID情報として制御用PC94へ出力する。ここまでが敷設する長尺体の始終点のID情報入力手段となる。なお、バーコードを利用した長尺体ではRFIDリーダ部分をバーコードリーダとすることで同様の処理を実行できる。
【0082】
次に図1のIDから位置を検索する手段7における処理を実行する。この処理はID情報をもとにID情報に対応する位置情報を探索する処理である。例えば、RFIDのID情報に対応する位置情報のデータベースDB3を使った場合、RFIDのID情報[EF86]を受信したとする。すると検索手段7では列(253)より[EF86]を探索しこのIDに対応する位置座標である(141,251)を出力する。この探索処理は図14の制御用PC94に処理させる事もできる。また、RFIDの位置情報データベースDB3はPC94の内蔵記憶装置に記録しても良いし、ネットワーク等を介して外部の記憶装置に記録されていてもかまわない。このような処理を行い、最終的に図1の位置出力8として出力される。
【0083】
本実施形態によれば、敷設経路情報(データベースDB1)と、RFID長尺体のRFIDの配置距離情報(データベースDB2)から、敷設後の各RFIDの空間的な位置を推定することが可能となり、RFID長尺体のRFIDを読み取る事により読み取った地点の空間上の位置を検知することができる。
【0084】
最後に、位置検知活用事例と、具体的な検知手法について図で説明する。図15に、ケーブルのRFID長尺体(RFIDケーブル)を利用して位置を検知する例を示す。図15は、建物内の配置図である。この図において、130は機器A、134は制御盤Aであり、この間を点線で囲まれたケーブルトレイ132に沿って配線する。ケーブルトレイ132は、配線経路として登録されており、ケーブルの敷設経路となっている。137は敷設したRFIDケーブルであり、敷設経路以外には、その他の機器138などがあり、ケーブルを通過させる事はできない。
【0085】
RFIDケーブル137は、IDがaの位置135を始点とし、IDがkの位置134を終点としており、この間に適宜ID:b〜ID:jまでのRFIDが配置されている。従って、図1で説明した手順を用いて各点における位置情報を推定することができる。図中には、機器やケーブルトレイの位置座標を明記していないが、図面及び内部データから読取る事ができる。また、屈曲点に関してもケーブルトレイの屈曲点の位置を代表点とすることができる。
【0086】
位置情報を特定するための利用時には、RFIDケーブル137内の任意位置のRFIDのID情報を、図14の装置を用いて読み取り、RFIDの位置情報データベースDB3を参照すれば良い。例えば、IDがgの位置133を読み取れば、RFIDの位置情報データベースDB3を参照し、位置座標(XXcm,YYcm,ZZcm)を得る事ができる。
【0087】
また、例えばIDがfである136の位置は、ケーブルトレイの屈曲点であり、図面を参照する事により正確な位置座標を読み取る事ができる。そこで、先に説明したようにID:gを新たな始点・終点位置としてRFIDの位置推定処理を行い、位置精度の向上操作を行う事もできる。
【0088】
また、RFIDケーブルを用いて取得した位置情報を利用して新たなケーブルを敷設する場合のガイドとして利用することができる。例えば、図15において制御盤A(131)から、機器B(1303)へケーブルを敷設することを想定する。この事例では、正しい経路である経路A(1301)以外に、経路B(139)が近くに存在している。
【0089】
2つの経路付近の形状が非常に似通っている場合、間違えた経路にケーブルを敷設する可能性がある。そこで既に敷設が終っているRFIDケーブル137のRFIDを読み取る事により正確な経路を選択する。例えばIDがgの位置133を読んだ場合、正確な経路の分岐点であることが、判明するので経路A(1301)へ分岐させて敷設させることが可能となる。尚、この場合に、図15のごとき建屋配置図が、その座標情報と共に記憶され、経路Aの入り口座標が、予め記憶されており、IDがgの位置133近傍であることが予め知られていることはいうまでもない。また、この判定処理の中で、IDがeで位置が1302を読んだ場合に、そこは今回新たに敷設しようとしている経路B(139)の分岐点ではないことが判明し、敷設をやり直してIDがgの場所から分岐させることを可能とする。このように、本発明はケーブル(長尺体全体)の敷設支援システムに利用することもできる。
【0090】
また、別の応用として、RFIDケーブルを敷設経路(施工図)通りに敷設したか否かを判断するシステムとして利用することもできる。図16の敷設後ケーブル配置において、点線で示す145が施工図の経路、実線で示す140が実際に敷設された経路である。この場合に、例えばIDがeを読み込んで得た位置情報と、実際の経路の位置情報との間には位置の差分143が発生する。この差分143が基準値以上であれば、敷設経路の誤りと判定する事ができる。
【0091】
また、ケーブルの余り144が、巻いてあるとする。ケーブルを巻くことにより、障害が発生するようなケーブルの場合、このような施工を行っていると事故になる危険性がある。IDがhの位置146は、点線で示す敷設経路145上を通過しており、巻いてある部分144が見えない場合目視で判定することはできない。ところがIDがhの位置を読み込みRFIDの位置情報データベースDB3を参照する事により、IDがhの位置座標は、現在存在する位置とかなり離れた位置にあることになる。従って、IDがhの位置を読み込み、実際の位置と比較する事により途中経路に誤りのあることが判定できる。
【0092】
別の応用として、人やロボット・車両等移動体のナビゲーション・位置検知を行う場合に利用する例を、図17を用いて説明する。図17において、151は床に敷設したRFID長尺体であり、150は敷設経路のガイドに使うマーカである。マーカ150の位置を正確に測量しておけば、マーカ以外のRFID長尺体のRFIDの位置は図10の手順を行う事により推定できる。152は移動体の一例としてロボットである。ロボット152には、RFIDリーダ153が取付けられており床に埋め込まれたRFID長尺体のID情報を読み取ることが出来る。従って、このID情報を元に自分の位置を検知し、目的の移動経路154の経路を進むことができる。このように、移動体の位置検知及びナビゲーションシステムの位置検知手段として利用することができる。
【0093】
図18では、RFID長尺体で得られた位置を位置検知用ビーコン発信装置の基準点として利用する例について説明する。パッシブ型のRFIDを利用する場合、通信距離が非常に狭くRFID長尺体から離れてしまうと位置検知が困難になってくる。そこで、遠距離でも位置検知が可能なビーコンを利用した位置検知装置と組み合わせて利用する。
【0094】
166はRFID長尺体であり、RFIDは163,164,165の位置に埋め込まれている。ビーコン装置1600は、IDリーダ162、変調器161、LED160より構成される。ビーコン装置1600を、163のID位置に設置し、IDリーダ162を用いてIDを読み込み、そのIDを変調装置161を介してLED160を点滅させる。つまり位置163のID情報を、LED160を用いて点滅送信していることになる。LED160の点滅情報は、動画カメラ167で撮影する。動画映像より、163の位置のID情報から、復号装置168を用いてID情報を取り出す。処理169において、撮影された各LEDの画像上の位置及びLEDのID(=RFID長尺体のRFIDのID)より、RFID位置情報データベースDB3を参照して求めた位置より逆投影変換を用いて撮影を推定する。
【0095】
この場合には、検出位置精度はビーコンの位置精度に左右される。ビーコンの敷設位置を測量するのは非常に手間のかかる作業であるが、壁面・床面・天井を通過するRFID長尺体を探し出し、その位置にビーコン1600を設置するだけで位置の測量が完了し工数削減ができる。また、ビーコンの位置設定が簡単に行えるために、撮影場所から見えない場所に配置されているビーコンを臨機応変に移動させることも可能になる。
【産業上の利用可能性】
【0096】
本発明は、特に建屋内や車両、飛行機など、GPSでの計測が困難な場所での位置測定に適している。
【符号の説明】
【0097】
1:RFID配置距離情報DB
2:敷設経路情報DB
4:基準RFID以外のRFID位置推定部
5:RFIDの位置情報DB
7:IDから位置を検索する手段
8:位置出力
【特許請求の範囲】
【請求項1】
その長手方向に複数の識別符号発信手段を取り付けられた長尺体と、前記識別符号発信手段を配置した長尺体長手方向の距離と前記識別符号発信手段の識別符号を対応付けて記憶すると共に、長尺体の敷設経路情報を記憶する記憶手段と、長尺体に取り付けられた前記識別符号発信手段の識別符号を読み取る読み取り手段を備え、前記長尺体を前記敷設経路情報に従って配置するとともに、読み取り手段で読み取った識別符号を前記記憶手段で参照することにより、その位置を検出する事を特徴とする識別符号発信手段による位置検知システム。
【請求項2】
その長手方向に複数の識別符号発信手段を取り付けられた長尺体と、敷設する長尺体の始点及び終点の識別符号情報と長尺体の敷設経路情報を有し、長尺体内の識別符号発信手段の位置を推定し識別符号情報と経路上の位置を対応付けて記録する記憶手段と、長尺体に取り付けられた前記識別符号発信手段の識別符号を読み取る読み取り手段を備え、前記長尺体を前記敷設経路情報に従って配置するとともに、読み取り手段で読み取った識別符号を前記記憶手段で参照することにより、その位置を検出する事を特徴とする識別符号発信手段による位置検知システム。
【請求項3】
請求項1または請求項2の識別符号発信手段による位置検知システムにおいて、
前記長尺体は、曲線配置が可能な材質とされることを特徴とする識別符号発信手段による位置検知システム。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれかの識別符号発信手段による位置検知システムにおいて、
検知した位置情報を、敷設経路あるいは移動経路のナビゲーションとして利用することを特徴とする識別符号発信手段による位置検知システム。
【請求項5】
請求項1から請求項3のいずれかの識別符号発信手段による位置検知システムにおいて、
検知した位置情報を利用して、実際に敷設した経路と敷設計画時の経路を比較し、経路の差分が決められた値以上の場合、敷設経路の誤りと判定することを特徴とする識別符号発信手段による位置検知システム。
【請求項6】
請求項1から請求項3のいずれかの識別符号発信手段による位置検知システムにおいて、
検知した位置情報を利用して、別の位置検知手段の基準点として位置を計測することを特徴とする識別符号発信手段による位置検知システム。
【請求項7】
その長手方向の適宜の箇所に複数の識別符号発信手段を取り付けられた長尺体と、前記識別符号発信手段を配置した前記長尺体長手方向の距離と前記識別符号発信手段の識別符号を対応付けて記憶する記憶手段が一体に備えられ、これを用いる事を特徴とする識別符号発信手段による位置検知システム。
【請求項1】
その長手方向に複数の識別符号発信手段を取り付けられた長尺体と、前記識別符号発信手段を配置した長尺体長手方向の距離と前記識別符号発信手段の識別符号を対応付けて記憶すると共に、長尺体の敷設経路情報を記憶する記憶手段と、長尺体に取り付けられた前記識別符号発信手段の識別符号を読み取る読み取り手段を備え、前記長尺体を前記敷設経路情報に従って配置するとともに、読み取り手段で読み取った識別符号を前記記憶手段で参照することにより、その位置を検出する事を特徴とする識別符号発信手段による位置検知システム。
【請求項2】
その長手方向に複数の識別符号発信手段を取り付けられた長尺体と、敷設する長尺体の始点及び終点の識別符号情報と長尺体の敷設経路情報を有し、長尺体内の識別符号発信手段の位置を推定し識別符号情報と経路上の位置を対応付けて記録する記憶手段と、長尺体に取り付けられた前記識別符号発信手段の識別符号を読み取る読み取り手段を備え、前記長尺体を前記敷設経路情報に従って配置するとともに、読み取り手段で読み取った識別符号を前記記憶手段で参照することにより、その位置を検出する事を特徴とする識別符号発信手段による位置検知システム。
【請求項3】
請求項1または請求項2の識別符号発信手段による位置検知システムにおいて、
前記長尺体は、曲線配置が可能な材質とされることを特徴とする識別符号発信手段による位置検知システム。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれかの識別符号発信手段による位置検知システムにおいて、
検知した位置情報を、敷設経路あるいは移動経路のナビゲーションとして利用することを特徴とする識別符号発信手段による位置検知システム。
【請求項5】
請求項1から請求項3のいずれかの識別符号発信手段による位置検知システムにおいて、
検知した位置情報を利用して、実際に敷設した経路と敷設計画時の経路を比較し、経路の差分が決められた値以上の場合、敷設経路の誤りと判定することを特徴とする識別符号発信手段による位置検知システム。
【請求項6】
請求項1から請求項3のいずれかの識別符号発信手段による位置検知システムにおいて、
検知した位置情報を利用して、別の位置検知手段の基準点として位置を計測することを特徴とする識別符号発信手段による位置検知システム。
【請求項7】
その長手方向の適宜の箇所に複数の識別符号発信手段を取り付けられた長尺体と、前記識別符号発信手段を配置した前記長尺体長手方向の距離と前記識別符号発信手段の識別符号を対応付けて記憶する記憶手段が一体に備えられ、これを用いる事を特徴とする識別符号発信手段による位置検知システム。
【図1】
【図2a】
【図2b】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図2a】
【図2b】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【公開番号】特開2012−127720(P2012−127720A)
【公開日】平成24年7月5日(2012.7.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−277744(P2010−277744)
【出願日】平成22年12月14日(2010.12.14)
【出願人】(507250427)日立GEニュークリア・エナジー株式会社 (858)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年7月5日(2012.7.5)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年12月14日(2010.12.14)
【出願人】(507250427)日立GEニュークリア・エナジー株式会社 (858)
【Fターム(参考)】
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