説明

識別装置および識別媒体

【課題】光学系の構成を簡易にすることができる識別装置、および、偽造を困難にすることのできる識別媒体を提供することを目的とする。
【解決手段】出射光軸を中心に回転しながら光の偏光を半導体レーザ光源で識別媒体に照射し、照射された識別媒体からの反射光の偏光を偏光板に透過させ、偏光板で透過された光の偏光を検出光として検出し、検出した検出光の量を測定してその値を出力し、出力された値から当該識別媒体の光学特性が所定の光学特性の情報と一致するか否かを判定する。判定結果が肯定である場合はクレジットカードが真正品であると判断し、判断結果が否定である場合は、クレジットカードが偽造品であると判断する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、識別装置および当該装置に用いる識別媒体に関し、特に、クレジットカードや紙幣、高級ブランド品などの対象物の真贋を識別するための識別装置および識別媒体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、小切手、紙幣、クレジットカード、高級ブランド品などの真贋判定には、磁気記録部に記録されている情報が使われてきた。しかし、これら真贋判定の対象となる物(対象物)の表面に貼付された磁気媒体に磁気的にデータが書き込まれているため、第三者が比較的容易にデータにアクセスできるという欠点があり、データの改竄や変造、複製が容易に行われ、深刻な社会問題にまで発展している。この問題を解決すべく、これらの使用に当たって真贋の識別を必要とする対象物にICチップを内蔵したものが開発された。クレジットカードを一例に取れば、いわゆるICカードである。ICカードは、ICチップに内蔵された不揮発性メモリ(例えば、EEPROM(Electrically Erasable Programmable Read Only Memory))に情報を記録するため、第三者が容易にアクセスすることができない。また、マイクロプロセッサを内蔵したカードでは、メモリへのアクセスを全てマイクロプロセッサが管理するので、情報の不正な読み出しや改竄は極めて困難とされてきた。しかし、いわゆるハッカーに一度解読されてしまうと、容易に不正使用を許してしまう危険性が指摘されている。以上のような状況から、光学的に特殊な特性を持つ媒体(識別媒体)を対象物に設け、これを光学的装置により光学特性を測定することで、真贋の識別を行う方法が開発されている(特許文献1)。
【0003】
特許文献1に記載の従来技術は、固有の回折領域を有する回折格子若しくはホログラムからなる真の識別部と、上記固有の回折特性と異なる回折特性を有する1種若しくは2種以上の回折格子若しくはホログラムからなる識別部とで、識別領域を構成し、リーダライタにより真の識別部のみ光学的に識別する構成となっている。具体的には、図77に示すように、模様3は、対象物(カード)200の表面の磁気記録部220のない箇所に設けられており、想像線で囲んだ4つの部分を真の識別部3aとして該部分にのみ、図78に示す投受光ユニット5にて識別し得る固有の回折特性を有するホログラムOが形成されている。ここで、ホログラムOの回折特性は、投受光ユニット5に正対したときにその方向からの光を回折し、反射して受光素子8の各部分のうち発光素子6を挟むいずれか2つの対象部分に向けて反射するものである。また、模様3における真の識別部3a以外の部分には、ホログラムOと異なる回折特性を有する複数の種類のホログラムP、Q、Rなどで構成された擬識別部3bが形成されている。対象物(カード)200の真贋を識別する場合は、対象物(カード)200を投受光ユニット5の発光素子6に各真の識別部3aを正対させる。すると、発光素子6から真の識別部3aに向けて波長780nmの照明光が照射される。そして、真の識別部3aにより回折され、反射された光が受光素子8の各部分のいずれか対称な2つの部分に受光され、その受光強度により対象物(カード)200が真正品の対象物(カード)200であると識別する。特許文献1に記載の従来技術により、不正偽造者は、真の識別部3aと偽識別部3bとを区別して真の識別部を特定することが困難になるので、識別媒体の偽造を困難にすることができる。
【0004】
また、対象物に設けられる媒体(識別媒体)の中に、使用する光波長に対して十分小さな金属クラスターを入れる技術が開発されている(特許文献2)。
【0005】
特許文献2に記載の従来技術は、図79に示すように、第1および第2表面を有する透明プラスチック膜1を含み、これにより複数の膜が第2表面に塗布される。そして、第1表面から見た場合、前記複数の膜の色は見る角度により変化し、前記複数の膜は第2表面に設けられた吸収層(金属クラスター4)、その吸収層に重なるスペーサー層3、およびそのスペーサー層3に重なるミラー層2から形成され、この吸収層(金属クラスター4)に入射する光の角度と反射される光の波長分散特性の関係から対象物の真贋を識別するものである。この金属クラスター4は、その大きさが5〜35nm程度なので、容易に作製はできず、また、識別媒体中に所定の光学特性を有するように配列するためには高い技術と特殊な装置を要するので、識別媒体の偽造を困難にすることができる。
【0006】
なお、これらに関連する従来技術として特許文献3が存在する。特許文献3に記載の従来技術は、図4に示すように、光学素子(識別媒体(optical device))210は、シリコンウエファ基板(silicon substrate layer)212上に、非常に平滑な金薄膜(金属構造体(gold layer))214により形成されている。金薄膜(金属構造体)214は固定化された形状にパターンニングされている。その形は左手系の卍型をしている。この卍型パターンは700nmから4μmの大きさであり、規則的に正方格子状に配列されている。この光学素子(識別媒体)210に光が照射されると、卍型金パターンアレイにより、透過光の偏光が回転し(図80参照)、また、反射光の偏光が回転する(図81参照)。これらの回転角は卍形状に依存する。
【0007】
また、直線偏光の照射光の入射角(β)に対して、反射光の偏光は楕円偏光になることが知られている。この楕円偏光の長軸角度(アジマス角)と入射光の直線偏光角度との差Δθ(図5−1参照)は、識別媒体210の表面と直交する軸と照射光軸との角度(β)に対して変化することが知られており(図5−2参照)、また、図9に示すように楕円率も変化することが知られている(非特許文献1,2)。
【0008】
また、非特許文献3に記載の金属構造体(gold nanoparticles)は、図23に示すように、100nm四方のL字型の金薄膜パターンが格子状にアレイ化されて形成されている。上記特許文献3に記載の従来技術と同様に、光学素子(識別媒体)への入射光に対して透過光の偏光が回転することが知られている。
【0009】
また、非特許文献3に記載の金属構造体は、図82の(a)に示すように、入射光の偏光角度(Polarization)によって透過光および反射光の波長スペクトル(Wavelength[nm], Optical density/ρ[arb.units])が異なることが知られている。また、入射光の偏光角度によって透過光に入射光の二次高調波が含まれることが知られている。つまり、この金属構造体は、図82の(b)に示すように、SHGのような波長変換素子になっている(非特許文献4)。
【0010】
なお、基体上の少なくとも一部に、狭帯域の光吸収ピークを有する光吸収物質からなる識別材料をランダムなパターンとなるように設けた固有情報部を設けた偽造防止媒体が加持されている(特許文献4)。この技術によれば、吸収ピーク波長における偽造防止媒体の第1の反射率と比較波長における偽造防止媒体の第2の反射率とを比較するので、特定の材料以外で構成された偽造防止媒体を確実に偽者と判定でき、偽造防止媒体の真偽判定の精度を向上させることができる。
【0011】
また、光学的特性に影響を与えない腐食防止剤の実質的な単分子層を含むワイヤーグリッド偏光子などの偏光デバイスに関する技術が開示されている(特許文献5)。この技術によれば、腐食または反応性を阻止することができ、光の直行する偏光を分離する性能の低下を防止することができる。
【0012】
また、ポリマー鎖がおのおの末端で結合したブロックコポリマーから形成されるラメラ構造のミクロ相分離構造から成り、当該ミクロ相分離構造における一方のポリマー相内に金属超微粒子が選択的に含有され列上に配置されている金属・有機ポリマー複合構造体が開示されている(特許文献6)。この技術によれば、製造が簡便で、かつ、ミクロ相分離構造の一方のポリマー相内に金属超微粒子が規則的に配列された新しいタイプの金属・有機ポリマー複合体を得ることができる。
【0013】
また、金属錯体蒸気をフィルム上ポリマーに接触させるだけのドライプロセスにより、金属微粒子を高分子フィルム中にナノスケールで配列させる技術が開示されている(非特許文献5)。
【0014】
【特許文献1】特開平7−210071号公報
【特許文献2】特表2004−538586号公報
【特許文献3】国際公開第03/054592号パンフレット
【特許文献4】特開2000−306058号公報
【特許文献5】特表2006−507517号公報
【特許文献6】特許第2980899号公報
【非特許文献1】“Optical Manifestations of Planar Chirality”, PHYSICAL REVIEW LETTERS 14 MARCH 2003
【非特許文献2】“Optical activity in subwavelength−period arrays of chiral metallic particles”, APPLIED PHYSICS LETTERS 14 JULY 2003
【非特許文献3】“Extraordinary polarization sensitivity of nanoparticle arrays to structural asymmetry”, Brian K. Canfield, et al, IWG6 Proceedings of CLE/IQEC2004
【非特許文献4】“Effects of polarization and grating period on second−harmonic generation from arrays of anisotropic gold nanoparticles”, Sami Kujala, et al, IFE1 Proceedings of CLE/IQEC 2004
【非特許文献5】ナノ構造制御材料 ―金属微粒子をポリマーフィルム内に並べる― 堀内 伸、AIST Today 2001.9, pp13
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
しかしながら、特許文献1に記載の従来技術では、偽識別部の配置場所情報が盗まれた場合は、ホログラムが容易に偽造されてしまうため、識別媒体も同様に簡単に偽造されてしまうという問題がある。
【0016】
また、特許文献2に記載の従来技術では、識別媒体からの反射光波長スペクトルを測定するためには複数の光源を要するため、識別装置の光学系が複雑になるという問題がある。また、白色光源を使用する方法もあるが、白色光源で最も一般的な白熱電球を使用した場合は、その寿命、発熱、耐環境性、エネルギーの効率の面で問題がある。また、近年性能の向上が著しい白色LEDを用いた場合は、先の白熱電球を使用した場合の問題は解決できるが、発光スペクトルの問題がある。
【0017】
つまり、特許文献2に記載の従来技術に関する発光スペクトルの制約から装置構成が複雑になるという問題がある。図83は、特許文献2の一実施例の識別媒体における反射光スペクトルを示す図である。同図に示すように、波長500〜700nmの間で反射光の視野角に対して大きなピークシフトが生じる。この特長を活かし、図84に示すように、波長510nmと700nmにおける視野角に対する反射光強度を測定し、その比から真正性を判定する方式を提案している。これは反射スペクトルを可視領域全体に渡って調べる必要がなく、簡易に対象物の真贋を識別することができる。一方、白熱電球と白色LEDの発光スペクトルの比較を図85に示す。同図に示すように、白色LEDは、700〜800nmの光が白熱電球に比べて極端に少ない。したがって、白色LEDを特許文献2に記載の従来技術に適用することは極めて困難である。また、金属クラスターの大きさや材料を工夫することにより、視野角に対してピークシフトが生じる波長をもっと短波長側に移せる可能性がある。しかし、発光スペクトルを改善した種々の白色LEDでも、その発光スペクトルは図86に示すように、白熱電球に比べて著しく急峻であるため、白色LEDを照明光とした場合は、視野角に対する反射光スペクトルのシフトを精確に測定することができない。すなわち、レーザ光源またはLED光源を単数にして構成することができないため、装置の構成が複雑になるという問題がある。
【0018】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、光学系の構成を簡易にすることができる識別装置、および、偽造を困難にすることのできる識別媒体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0019】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明は、対象物に設けられた識別媒体を光学的に識別する識別装置において、前記識別媒体に光を照射する照射手段と、前記照射手段から前記識別媒体に照射された光の反射光、および透過光のうち少なくとも一つの光に含まれる特定の偏光を透過および/または反射させる透過反射手段と、前記透過反射手段で透過および/または反射された特定の偏光を検出する検出手段と、前記検出手段で検出した値に基づいて前記識別媒体を識別する識別手段と、前記照射手段から照射される光の偏光を制御する偏光制御手段、前記照射手段から照射される光の光軸と前記識別媒体との角度を変化させる照射角度変化手段、前記識別媒体から前記検出手段に至るまでの光の光軸と前記識別媒体との角度を変化させる検出角度変化手段のうち少なくとも一つの手段と、を備えたことを特徴とする。
【0020】
また、本発明は、対象物に設けられた識別媒体を光学的に識別する識別装置において、前記識別媒体に光を照射する照射手段と、前記照射手段から照射される光の偏光を制御する偏光制御手段と、前記照射手段から前記識別媒体に照射された光の反射光、および透過光のうち少なくとも一つの光に含まれる複数の波長の光を透過および/または反射させる透過反射手段と、前記透過反射手段で透過および/または反射された複数の波長の光を検出する検出手段と、前記検出手段で検出した値に基づいて前記識別媒体を識別する識別手段と、を備えたことを特徴とする。
【0021】
また、本発明は、対象物に設けられた識別媒体を光学的に識別する識別装置において、前記識別媒体に波長λ(λは任意の値)の光を照射する照射手段と、前記照射手段から照射される光の偏光を制御する偏光制御手段と、前記照射手段から前記識別媒体に照射された光の反射光、および透過光のうち少なくとも一つの光に含まれる波長λ/2の光を透過または反射させる透過反射手段と、前記透過反射手段で透過および/または反射された波長λ/2の光を検出する検出手段と、前記検出手段で検出した値に基づいて前記識別媒体を識別する識別手段と、を備えたことを特徴とする。
【0022】
また、本発明の識別装置の構成において、前記識別媒体は、光学特性が異なる複数の光学領域から構成されており、前記照射手段で照射する光を前記識別媒体の光学特性が異なる複数の光学領域に、一次元、二次元、または三次元的に走査する走査手段をさらに備え、前記検出手段は、前記走査手段の走査に同期して検出することを特徴とする。
【0023】
また、本発明の識別装置の構成において、前記識別媒体は、光学特性が異なる複数の光学領域から構成されており、前記照射手段で照射する光を前記識別媒体の光学特性が異なる複数の光学領域に、一次元、二次元、または三次元的に走査する走査手段をさらに備え、前記検出手段は、前記走査手段の走査に同期して検出し、前記識別手段は、前記検出手段で検出した値から検出識別番号または検出記号を求め、求めた前記検出識別番号または前記検出記号と、前記対象物に固有の識別番号または記号と、を比較して識別することを特徴とする。
【0024】
また、本発明は、対象物に設けられる識別媒体であって、当該識別媒体に照射される光の波長以下の大きさの金属構造体を有し、かつ、光学特性が異なる複数の光学領域で構成され、前記光学特性は、当該識別媒体に照射される光の偏光、当該識別媒体に照射される光の光軸と当該識別媒体との角度、当該識別媒体からの反射光、および透過光のうち少なくとも一つの光が所定の検出手段に到達するまでの光の光軸と当該識別媒体との角度、当該識別媒体に照射される光の波長、当該識別媒体に照射される光の波長λに対するλ/2の波長の少なくともいずれか一つの光学特性であることを特徴とする。
【0025】
また、本発明は、対象物に設けられる識別媒体であって、当該識別媒体に照射される光の波長以下の大きさの金属構造体を有し、かつ、光学特性が異なる複数の光学領域で構成され、前記光学特性は、当該識別媒体に照射される光の偏光、当該識別媒体に照射される光の光軸と当該識別媒体との角度、当該識別媒体からの反射光、および透過光のうち少なくとも一つの光が所定の検出手段に到達するまでの光の光軸と当該識別媒体との角度、当該識別媒体に照射される光の波長、当該識別媒体に照射される光の波長λに対するλ/2の波長の少なくともいずれか一つの光学特性であり、前記金属構造体は、パターン形状を有し、前記パターン形状は、前記対象物に固有の識別番号または記号に基づいて前記光学特性を決定し、決定した光学特性に基づいて前記パターンを設計し、前記設計したパターンに基づいて作製されたものであることを特徴とする。
【0026】
また、本発明は、対象物に設けられる識別媒体において、照射される光の波長以下の大きさであって、かつ、パターン形状の金属構造体を有することを特徴とする。
【0027】
また、本発明の識別媒体の構成において、前記金属構造体は、ランダムに作製されたパターン形状を有することを特徴とする。
【0028】
また、本発明の識別媒体の構成において、前記パターン形状は、電子的に発生された乱数に基づいて作製されたものであることを特徴とする。
【0029】
また、本発明の識別媒体の構成において、前記パターン形状は、前記金属構造体となる金属材料に転写されるブロック共重合体のミクロ相分離構造に基づいて作製されたものであることを特徴とする。
【0030】
また、本発明の識別媒体の構成において、前記パターン形状は、ブロック共重合体の自己組織化により形成されるミクロ相分離構造に基づいて作製されたものであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0031】
本発明によれば、識別媒体に光を照射し、識別媒体に照射された光の反射光、および透過光のうち少なくとも一つの光に含まれる特定の偏光を透過および/または反射させ、透過および/または反射された特定の偏光を検出し、検出した値に基づいて識別媒体を識別する場合において、所定の照射手段から照射される光の偏光の制御、所定の照射手段から照射される光の光軸と識別媒体との角度の変化、識別媒体から所定の検出手段に至るまでの光の光軸と識別媒体との角度の変化のうち、少なくとも一つを実行するので、光学系の構成を簡易にすることができるという効果を奏する。
【0032】
また、本発明によれば、識別媒体に光を照射し、照射される光の偏光を制御し、識別媒体に照射された光の反射光、および透過光のうち少なくとも一つの光に含まれる複数の波長の光を透過および/または反射させ、透過および/または反射された複数の波長の光を検出し、検出した値に基づいて識別媒体を識別するので、光学系の構成を簡易にすることができるという効果を奏する。
【0033】
また、本発明によれば、識別媒体に波長λ(λは任意の値)の光を照射し、照射される光の偏光を制御し、識別媒体に照射された光の反射光、および透過光のうち少なくとも一つの光に含まれる波長λ/2の光を透過または反射させ、透過および/または反射された波長λ/2の光を検出し、検出した値に基づいて識別媒体を識別するので、光学系の構成を簡易にすることができるという効果を奏する。
【0034】
また、本発明によれば、識別媒体は、光学特性が異なる複数の光学領域から構成されており、照射する光を識別媒体の光学特性が異なる複数の光学領域に、一次元、二次元、または三次元的に走査し、走査に同期して検出するので、偽造が困難な識別媒体を用いて対象物の真贋を識別することができるという効果を奏する。
【0035】
また、本発明によれば、識別媒体は、光学特性が異なる複数の光学領域から構成されており、照射する光を識別媒体の光学特性が異なる複数の光学領域に、一次元、二次元、または三次元的に走査し、走査に同期して検出し、検出した値から検出識別番号または検出記号を求め、求めた検出識別番号または検出記号と、対象物に固有の識別番号または記号と、を比較するので、より偽造が困難な識別媒体を用いて対象物の真贋を識別することができるという効果を奏する。
【0036】
また、本発明によれば、識別媒体に照射される光の波長以下の大きさの金属構造体を有し、かつ、光学特性が異なる複数の光学領域で構成され、光学特性は、当該識別媒体に照射される光の偏光、当該識別媒体に照射される光の光軸と当該識別媒体との角度、当該識別媒体からの反射光、および透過光のうち少なくとも一つの光が所定の検出手段に到達するまでの光の光軸と当該識別媒体との角度、当該識別媒体に照射される光の波長、当該識別媒体に照射される光の波長λに対するλ/2の波長の少なくともいずれか一つの光学特性であるので、識別媒体の偽造を困難にすることができるという効果を奏する。
【0037】
また、本発明によれば、識別媒体に照射される光の波長以下の大きさの金属構造体を有し、かつ、光学特性が異なる複数の光学領域で構成され、光学特性は、当該識別媒体に照射される光の偏光、当該識別媒体に照射される光の光軸と当該識別媒体との角度、当該識別媒体からの反射光、および透過光のうち少なくとも一つの光が所定の検出手段に到達するまでの光の光軸と当該識別媒体との角度、当該識別媒体に照射される光の波長、当該識別媒体に照射される光の波長λに対するλ/2の波長の少なくともいずれか一つの光学特性であり、金属構造体は、パターン形状を有し、パターン形状は、対象物に固有の識別番号または記号に基づいて光学特性を決定し、決定した光学特性に基づいてパターンを設計し、設計したパターンに基づいて作製されたものであるので、識別媒体の偽造をより困難にすることができるという効果を奏する。
【0038】
また、本発明によれば、照射される光の波長以下の大きさであって、かつ、パターン形状の金属構造体を有するので、不正偽造者には偽造が困難である識別媒体の作製を簡易にすることができるという効果を奏する。
【0039】
また、本発明によれば、金属構造体は、ランダムに作製されたパターン形状を有するので、個々の識別媒体の偽造を極めて困難にすることができるという効果を奏する。
【0040】
また、本発明によれば、パターン形状は、電子的に発生された乱数に基づいて作製されたものであるので、個々の識別媒体の偽造を極めて困難にすることができるという効果を奏する。
【0041】
また、本発明によれば、パターン形状は、金属構造体となる金属材料に転写されるブロック共重合体のミクロ相分離構造に基づいて作製されたものであるので、個々の識別媒体の偽造を極めて困難にすることができるという効果を奏する。
【0042】
また、本発明によれば、パターン形状は、ブロック共重合体の自己組織化により形成されるミクロ相分離構造に基づいて作製されたものであるので、個々の識別媒体の偽造を極めて困難にすることができるという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0043】
以下に添付図面を参照して、この発明にかかる識別装置および当該装置に用いる識別媒体の最良な実施の形態を詳細に説明する。なお、この実施の形態によりこの発明が限定されるものではない。
【0044】
(第1の実施の形態)
図1を参照して、第1の実施の形態の識別装置100の構成について説明する。図1は、第1の実施の形態の識別装置100の構成を示す図である。同図に示すように、識別装置100は、真贋を識別する対象物であるクレジットカード200と、クレジットカード200に設けられた識別媒体210に向けて光を照射する半導体レーザ光源300と、半導体レーザ光源300が照射した光を集光して像を形成するための対物レンズ400と、識別媒体210からの光を平行な光束にするためのコリメートレンズ410と、コリメートレンズ410で集光して平行にした光に含まれる特定の偏光を透過させる偏光板500と、偏光板500を透過した偏光を検出光として検出するフォトダイオード600と、識別装置100を構成する各種部材の制御および各種データの処理を行う情報処理装置700(図2参照)と、で構成される。なお、本実施の形態の識別装置100を構成する部材および装置は、それぞれ単数で構成されているが、複数で構成されていてもよい。
【0045】
図3は、対象物の一例を示す図である。対象物とは、真贋を識別する対象となる物をいう。本実施の形態における対象物は、具体的にはクレジットカード200であり、その表面に識別媒体210、磁気記録部220、ICチップ230を設けている。なお、本実施の形態では、クレジットカード200を対象物としているが、これに限定されるものではなく、商品を梱包したパッケージ、パスポート、カード、紙幣、金券、証券、証書、商品券、絵画、切符、公共競技投票券、ブランドロゴ・マークを表すタグ、シール、ラベルなどの平面的な物であってもよく、また、高級ブランド品である皮革製品、化粧品、時計など立体的な物を対象物としてもよい。
【0046】
つぎに、識別媒体210について図4を参照して説明する。図4は、識別媒体210の一例を示す図である。識別媒体210とは、対象物の真贋を識別するために対象物に設けられる媒体をいう。識別媒体210には、図4にしめすように、金属の微細構造体(以下、金属構造体214)が形成されている。金属構造体214は本実施の形態の識別装置100で使用する光源波長に対して十分小さな構造を持つ。具体的には、光源波長に対して少なくとも1/2以下の最小線幅を持つ。例えば、波長800nmのレーザ光源を使用した場合は、構造体の最小線幅は400nm以下にする。望ましくは100nm以下にする。金属構造体214は、通常のフォトリソ・エッチングにより作成しても良い。その露光装置としては液浸レンズを用いたUV露光装置や電子線(EB)描画装置などを用いるが、最近開発が進んでいるE−UV装置やシンクロトロン放射などでもよい。さらに、装置コストなどを考えて、ナノインプリントやUVナノインプリントなどを用いてもよい。いずれにしても、これらの装置はナノメータオーダの加工が必要なために、装置コストが著しく高価(数十億円)である。たとえ、装置を入手したとしても、必要な加工精度を得るためには、非常に高度な作製技術やノウハウが必要である。したがって、不正に複製、すなわち偽物を作製しようとしても、不正使用により得られる利益よりも多大な費用や時間がかかるため、かかる不正行為を行う動機を失わせ、犯罪行為を未然に防止することができる。
【0047】
図1に戻り、半導体レーザ光源300は、識別媒体210に向けて光の偏光を照射するためのものであり、識別媒体210に光の偏光を照射できる位置に配設される。第1の実施の形態の半導体レーザ光源300は、出射光軸を中心に回転する構成となっており、回転しながら光の偏光を照射する。半導体レーザ光源300が照射する光は、金属(識別媒体210に形成される金属構造体214)が反射する波長範囲であればよく、金属が反射し、かつ、現存する半導体レーザ光源300が発光可能な波長範囲がよい。400nm近辺の近紫外線から1500nm近辺の近赤外までの波長範囲は、フォトダイオード600が検出可能な波長範囲内であることからも好ましい。なお、識別媒体210に向けて照射する光源は、半導体レーザ光源300に限定されるものではなく、レーザであれば種々の固体レーザ、ガスレーザ、色素レーザ、ファイバレーザなども用いることができる。また、特に、コヒーレントな光である必要もなく、白熱電球、ハロゲンランプ、高圧水銀ランプ、蛍光灯、LEDなどでもよい。また、光検出器も特にシリコンフォトダイオードに限定されることはなく、Geフォトダイオード、InGaAsやGaAsなどのGa系、PbSなどのPb系、InSなどのIn系等々の化合物半導体、光電子増倍管などの電子管でもよい。
【0048】
対物レンズ400は、半導体レーザ光源300で照射した光を集光して像を形成するためのものであり、同図に示すように、半導体レーザ光源300と識別媒体210との間に配設される。
【0049】
コリメートレンズ410は、識別媒体210からの光を平行な光束にするためのものであり、同図に示すように、識別媒体210とフォトダイオード600との間に配設される。
【0050】
偏光板500は、コリメートレンズ410で集光して平行にした光に含まれる特定の偏光を透過させるためのものであり、同図に示すように、識別媒体210とフォトダイオード600との間に配設される。偏光板500は、当該板の中央部分を中心に回転する構成となっており、識別媒体210で反射された光の偏光を回転しながら透過させる。なお、偏光板500は、当該板の中央部分を中心に回転しないで光の偏光を透過させてもよい。
【0051】
フォトダイオード600は、偏光板500で透過された特定の偏光を検出光として検出するためのものであり、同図に示すように、識別媒体210からの光を検出できる位置に配設される。フォトダイオード600は、検出した検出光の量を測定してその値を出力する。
【0052】
図2は、第1の実施の形態の情報処理装置700の構成を示す図である。情報処理装置700は、同図に示すように、大別して、制御部710と、記憶部720と、通信インターフェース部730と、で構成され、これら各部がバスを介して通信可能に接続されている。
【0053】
制御部710は、OS(Operating System)を代表とする制御プログラムや各種の処理手順を規定したプログラムや所要データを格納するための内部メモリを有し、これらのプログラムに基づいて種々の処理を実行する。また、制御部710は、光源回転部710aと、偏光板回転部710bと、対象物真贋判定部710cと、をさらに含んで構成される。
【0054】
光源回転部710aは、半導体レーザ光源300が出射光軸を中心に回転するように制御する。したがって、半導体レーザ光源300は、光源回転部710aによる制御により、識別媒体210に向けて照射したときの光軸を中心に回転する。
【0055】
偏光板回転部710bは、偏光板500が当該板の中央部分を中心に回転するように制御する。したがって、偏光板500は、偏光板回転部710bによる制御により、当該板の中央部分を中心に回転する。
【0056】
対象物真贋判定部710cは、フォトダイオード600で検出光の量を測定して出力された値に基づいて、対象物であるクレジットカード200の真贋を判定する。具体的には、フォトダイオード600での出力値に基づいて、識別媒体210の光学特性と所定の光学特性とが一致するか否かを判定し、判定結果が肯定である場合は、クレジットカード200が真正品であると判断する。一方、判定結果が否定である場合は、クレジットカード200が偽造品であると判断する。
【0057】
記憶部720は、情報処理装置700を構成する各部を制御するための各種プログラム、ファイルなどを格納し、具体的には、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)、HDD(Hard Disk Drive)、光ディスク、フレキシブルディスク、不揮発性メモリなどにより実現することができる。なお、記憶部720は、フォトダイオード600で出力されるべき値のデータを予め格納している。すなわち、真正の識別媒体210に形成されている金属構造体214の光学特性に関する情報を予め格納している。したがって、対象物真贋判定部710cは、記憶部720に予め格納された真正の識別媒体210の光学特性に関する情報を参照して、クレジットカード200の真贋を判定する。
【0058】
通信インターフェース部730は、情報処理装置700と当該装置に接続された各部材(例えば、半導体レーザ光源300や偏光板500など)との間における通信を媒介する。
【0059】
ここで、半導体レーザ光源300の回転角と、偏光板500の回転角と、フォトダイオード600での出力値との関係について図5−1および図5−2を参照して説明する。半導体レーザ光源300は、光源回転部710aによる制御により、識別媒体210に向けて照射したときの光軸を中心に回転する。半導体レーザ光源300の発光は一般的に直線偏光であるため、識別媒体210への照射光の直線偏光も回転することになる。これは、図5−1において、照射光の直線偏光のアジマス(方位)角φを変化させるのと同じことである。この場合においては、図5−2に示すように、識別媒体210からの反射光のアジマス角と入射光アジマス角との差Δθおよび反射光の楕円率が変化する。識別媒体210からの反射光は、これを拾うコリメートレンズ410を通り、偏光板500を通り検出光となって、フォトダイオード600に入る。したがって、半導体レーザ光源300の回転角(すなわちアジマス角φ)の変化に基づいて、フォトダイオード600での出力値も変化する。また、偏光板500は、偏光板回転部710bによる制御により、当該板の中央部分を中心に回転しながら識別媒体210からの光の偏光を透過させる。そこで、半導体レーザ光源300が回転を行わずに、偏光板500を回転させもフォトダイオード600での出力値は変化する。また、半導体レーザ光源300と偏光板500の両者を回転させても同様である。いずれにしても、半導体レーザ光源300と偏光板500の、両方の回転角の組み合わせにより、フォトダイオード600での出力値は変化する。
【0060】
以上の構成において、第1の実施の形態の識別装置100で行われるクレジットカード200の真贋の判定処理について図6を参照して説明する。図6は、第1の実施の形態の識別装置100で行われるクレジットカード200の真贋の判定処理の手順を示すフローチャートである。
【0061】
まず、半導体レーザ光源300は、所定の位置にセットされたクレジットカード200に設けられている識別媒体210に向けて光の偏光を照射する(ステップSA−1)。この際に、半導体レーザ光源300は、光源回転部710aの制御により回転しながら照射をする。すなわち、照射光の直線偏光のアジマス(方位)角φを変化させながら照射する。ついで、識別媒体210は、ステップSA−1で照射された光の偏光を反射させる(ステップSA−2)。ついで、偏光板500は、ステップSA−2で、識別媒体210で反射された光の偏光を偏光板500に透過させる(ステップSA−3)。ついで、フォトダイオード600は、ステップSA−3で偏光板500から透過した光の偏光を検出光として検出し、検出した検出光の量を測定してその値を出力する(ステップSA−4)。ついで、対象物真贋判定部710cは、ステップSA−4で出力された値から、当該識別媒体210の光学特性が、記憶部720に記憶されている所定の光学特性の情報と一致するか否かを判定する(ステップSA−5)。なお、ステップSA−5の処理により、識別媒体210が真正品であるか否かを判断することができる。ステップSA−5での判定結果が肯定である場合(ステップSA−6:Yes)、対象物真贋判定部710cは、クレジットカード200は真正品であると判断する(ステップSA−7)。一方、ステップSA−5での判断結果が否定である場合(ステップSA−6:No)、対象物真贋判定部710cは、クレジットカード200は偽造品であると判断する(ステップSA−8)。
【0062】
以上説明したように、第1の実施の形態の識別装置100は、半導体レーザ光源300を回転させながら識別媒体210に光の偏光を照射し、識別媒体210から反射した光を回転している偏光板500に透過させ、偏光板500を透過した光の偏光をフォトダイオード600で検出し、識別媒体210の持つ光学特性と所定の光学特性とが一致するか否かを対象物真贋判定部710cで判定し、当該判定結果に基づいて、クレジットカード200が真正品であるか否かを判断する。
【0063】
したがって、第1の実施の形態の識別装置100によれば、識別媒体210に向けて照射したときの光軸を中心に回転させながら半導体レーザ光源300で識別媒体210に光の偏光を照射することにより、識別媒体210に形成される金属構造体214のパターンに基づいた値をフォトダイオード600で出力できるので、識別媒体210に照射する半導体レーザ光源300が単数であっても、識別媒体210が真正品であるか否かを判定することができ、結果として、クレジットカード200の真贋を判定することもできる。
【0064】
(第2の実施の形態)
つぎに、本発明の第2の実施の形態にかかる識別装置100について説明する。なお、第2の実施の形態の説明においては、上述した第1の実施の形態の識別装置100の説明と重複する説明を省略する場合がある。
【0065】
図7は、第2の実施の形態の識別装置100の構成を示す図である。第2の実施の形態の識別装置100は、半導体レーザ光源300が回転するのではなく、半導体レーザ光源300から照射する光の光軸と識別媒体210との角度を変化させながら、また、識別媒体210からフォトダイオード600に至るまでの光の光軸と識別媒体との角度を変化させながら照射する点において、第1の実施の形態の識別装置100と異なる。
【0066】
半導体レーザ光源300は、照射される光の光軸と識別媒体210との角度(入射角度(β1))を変化させるために、同図に示すように、所定の方向に駆動することができる。具体的には、同図に示す矢印の方向に駆動することができる。なお、半導体レーザ光源300が駆動する方向に伴って、対物レンズ400も所定の方向に駆動する。
【0067】
フォトダイオード600は、識別媒体210からフォトダイオード600に至るまでの光の光軸と識別媒体210との角度(反射光軸角度(β2))を変化させるために、所定の方向に駆動することができる。具体的には、同図に示す矢印の方向に駆動する。なお、フォトダイオード600が駆動する方向に伴って、コリメートレンズ410および偏光板500も所定の方向に駆動する。
【0068】
図8は、第2の実施の形態の情報処理装置700の構成を示す図である。同図に示すように、制御部710は、対象物真贋判定部710cと、入射角度変化部710dと、反射角度変化部710eと、をさらに含んで構成される。
【0069】
入射角度変化部710dは、半導体レーザ光源300および対物レンズ400を制御することにより、半導体レーザ光源300から識別媒体210に向けて照射する光の入射角度(β1)を変化させる。したがって、半導体レーザ光源300は、入射角度変化部710dの制御により、所定の方向に駆動し、入射角度(β1)を変化させる。
【0070】
反射角度変化部710eは、反射光軸角度(β2)を変化させるために、フォトダイオード600を制御する。したがって、フォトダイオード600は、反射角度変化部710eの制御により、所定の方向に駆動し、反射光軸角度(β2)を変化させる。
【0071】
なお、入射角度変化部710dで半導体レーザ光源300を所定の方向に駆動するように制御して入射角度(β1)のみを変化させてもよいし、反射角度変化部710eでフォトダイオード600を所定の方向に駆動するように制御して反射光軸角度(β2)のみを変化させてもよい。
【0072】
ここで、入射角度(β1)と、反射光軸角度(β2)と、フォトダイオード600での出力値との関係について図5−1および図9を参照して説明する。半導体レーザ光源300は、入射角度変化部710dによる制御により、識別媒体210に向けて照射する光の入射角度(β1)を変化させる。これは、図5−1において、照射光軸と識別媒体210との入射角度(β)を変化させることと同じである。この場合、図9に示すように、識別媒体210からの反射光のアジマス角と入射光アジマス角との差Δθおよび反射光の楕円率が変化する。識別媒体210からの反射光は、これを拾うコリメートレンズ410を通り、偏光板500を通り検出光となって、フォトダイオード600に入る。したがって、入射角度(β1)の変化に基づいて、フォトダイオード600での出力値も変化する。また、入射角度(β1)を固定し、反射光軸角度(β2)を変化させた場合も、フォトダイオード600での出力値は変化する。また、反射光軸角度(β2)を固定して入射角度(β1)を変化させた場合も同様である。いずれにしても、入射角度(β1)と反射光軸角度(β2)との両方の組み合せにより、フォトダイオード600での出力値は変化する。
【0073】
なお、第2の実施の形態の識別装置100は、制御部710に、対象物真贋判定部710c、入射角度変化部710d、反射角度変化部710eに加えて、光源回転部710aや偏光板回転部710bをさらに含む構成とし、半導体レーザ光源300や偏光板500が回転するようにしてもよい。
【0074】
以上の構成において、第2の実施の形態の識別装置100で行われるクレジットカード200の真贋の判定処理について図10を参照して説明する。図10は、第2の実施の形態の識別装置100で行われるクレジットカード200の真贋の判定処理の手順を示すフローチャートである。
【0075】
まず、半導体レーザ光源300は、所定の位置にセットされたクレジットカード200に設けられている識別媒体210に向けて光の偏光を照射する(ステップSB−1)。この際に、半導体レーザ光源300は、入射角度変化部710dまたは反射角度変化部710eによる制御により、入射角度(β1)や反射光軸角度(β2)を変化させている状態において照射する。ついで、識別媒体210は、ステップSB−1で照射された光の偏光を反射させる(ステップSB−2)。ついで、偏光板500は、ステップSB−2で識別媒体210からの反射の光の偏光を透過させる(ステップSB−3)。ついで、フォトダイオード600は、ステップSB−3で透過された光の偏光を検出光として検出し、検出した検出光の量を測定してその値を出力する(ステップSB−4)。ついで、対象物真贋判定部710cは、ステップSB−4で出力された値から、当該識別媒体210の光学特性が、記憶部720に記憶されている所定の光学特性の情報と一致するか否かを判定する(ステップSB−5)。ステップSB−5での判定結果が肯定である場合(ステップSB−6:Yes)、対象物真贋判定部710cは、クレジットカード200は真正品であると判断する(ステップSB−7)。一方、ステップSB−5での判定結果が否定である場合(ステップSB−6:No)、対象物真贋判定部710cは、クレジットカード200は偽造品であると判断する(ステップSB−8)。
【0076】
以上説明したように、第2の実施の形態の識別装置100は、入射角度(β1)や反射光軸角度(β2)を変化させながら識別媒体210に光の偏光を半導体レーザ光源300で照射し、識別媒体210からの反射の光の偏光を、偏光板500で透過させ、透過された光の偏光を、反射光軸角度(β2)を変化させながらフォトダイオード600で検出光として検出し、当該識別媒体210の持つ光学特性と所定の光学特性とが一致するか否かを対象物真贋判定部710cで判定し、当該判定結果に基づいて、クレジットカード200が真正品であるか否かを判断する。
【0077】
したがって、第2の実施の形態の識別装置100によれば、入射角度(β1)や反射光軸角度(β2)を変化させながら半導体レーザ光源300で識別媒体210に光の偏光を照射することにより、当該識別媒体210に形成される金属構造体214のパターンに基づいた値をフォトダイオード600で出力できるので、識別媒体210に照射する半導体レーザ光源300が単数であっても、識別媒体210が真正品であるか否かを判定することができ、結果として、クレジットカード200の真贋を判定することもできる。
【0078】
(第3の実施の形態)
つぎに、本発明の第3の実施の形態にかかる識別装置100について説明する。なお、第3の実施の形態の説明においては、上述した第1および第2の実施の形態の識別装置100の説明と重複する説明を省略する場合がある。なお、第3の実施の形態の識別装置100は、偏光ビームスプリッタプリズム510を配設し、識別媒体210からの反射光を分離する点において、第1の実施の形態の識別装置100と異なる。
【0079】
図11は、第3の実施の形態の識別装置100の構成を示す図である。同図に示すように、第3の実施の形態の識別装置100は、第1の実施の形態の識別装置100を構成する偏光板500に替えて、偏光ビームスプリッタプリズム(PBSプリズム)510をフォトダイオード600の前に配設している構成となっている。また、フォトダイオード600は単数ではなく複数で構成されている。なお、制御部710は、光源回転部710aと、対象物真贋判定部710cと、をさらに含んで構成される。
【0080】
偏光ビームスプリッタプリズム510は、識別媒体210からの光の偏光をs偏光とp偏光とに分離するためのものであり、同図に示すように、識別媒体210と第1のフォトダイオード600aとの間に配設される。
【0081】
第1のフォトダイオード600aと第2のフォトダイオード600bは、偏光ビームスプリッタプリズム510からの光の偏光を検出光として検出するためのものであり、同図に示すように、光を検出できる位置に配設される。第1のフォトダイオード600aは、偏光ビームスプリッタプリズム510で透過された光の偏光(s偏光)を検出光として検出する。また、第2のフォトダイオード600bは、偏光ビームスプリッタプリズム510で反射された光の偏光(p偏光)を検出光として検出する。
【0082】
ここで、半導体レーザ光源300の回転角と、第1のフォトダイオード600aおよび第2のフォトダイオード600bでの出力値との関係について図5−1、図5−2などを参照して説明する。半導体レーザ光源300は、光源回転部710aによる制御により、識別媒体210に向けて照射したときの光軸を中心に回転する。これは、図5−1において、照射光の直線偏光のアジマス角φを変化させるのと同じことである。そして、この場合においては、図5−2に示すように、識別媒体210からの反射光のアジマス角と入射光のアジマス角との差Δθおよび反射光の楕円率が変化する。したがって、半導体レーザ光源300の回転角(入射光アジマス角φ度)の変化に基づいて、図12に示すように、第1のフォトダイオード600a(PD1(s))での出力値および第2のフォトダイオード600b(PD2(p))での出力値(受光素子出力)も変化する。
【0083】
以上の構成において、第3の実施の形態の識別装置100で行われるクレジットカード200の真贋の判定処理について図13を参照して説明する。図13は、第3の実施の形態の識別装置100で行われるクレジットカード200の真贋の判定処理の手順を示すフローチャートである。
【0084】
回転している半導体レーザ光源300が光の偏光を照射し(ステップSC−1)、識別媒体210がステップSC−1で照射された光の偏光を反射すると(ステップSC−2)、偏光ビームスプリッタプリズム510は、ステップSC−2で反射された光の偏光をs偏光とp偏光とに分離する(ステップSC−3)。ついで、第1のフォトダイオード600aは、ステップSC−3で分離されたs偏光を検出光として検出して出力し、また、第2のフォトダイオード600bは、ステップSC−3で分離されたp偏光を検出光として検出して出力する(ステップSC−4)。ステップSC−4で第1のフォトダイオード600aおよび第2のフォトダイオード600bが出力する値は、図12に示すように、ステップSC−1で半導体レーザ光源300が照射するときの回転角度に基づいて変化する。ついで、対象物真贋判定部710cは、ステップSC−4で出力された値から、当該識別媒体210の光学特性が、記憶部720に記憶されている所定の光学特性の情報と一致するか否かを判定する(ステップSC−5)。ステップSC−5での判定結果が肯定である場合(ステップSC−6:Yes)、対象物真贋判定部710cは、クレジットカード200は真正品であると判断する(ステップSC−7)。一方、ステップSC−5での判断結果が否定である場合(ステップSC−6:No)、対象物真贋判定部710cは、クレジットカード200は偽造品であると判断する(ステップSC−8)。
【0085】
以上説明したように、第3の実施の形態の識別装置100は、半導体レーザ光源300を回転させながら識別媒体210に光の偏光を照射し、識別媒体210からの反射の光の偏光を、偏光ビームスプリッタプリズム510でs編光とp偏光とに分離し、分離したs偏光とp偏光とを第1のフォトダイオード600aと第2のフォトダイオード600bとでそれぞれ検出光として検出し、当該識別媒体210の持つ光学特性と所定の光学特性とが一致するか否かを対象物真贋判定部710cで判定し、当該判定結果に基づいて、クレジットカード200が真正品であるか否かを判断する。
【0086】
したがって、第3の実施の形態の識別装置100によれば、識別媒体210に向けて照射したときの光軸を中心に回転させながら半導体レーザ光源300で識別媒体210に光の偏光を照射することにより、識別媒体210に形成される金属構造体214のパターンに基づいた値を第1のフォトダイオード600aおよび第2のフォトダイオード600bで出力できるので、識別媒体210に照射する半導体レーザ光源300が単数であっても、識別媒体210が真正品であるか否かを判定することができ、結果として、クレジットカード200の真贋を判定することもできる。
【0087】
(第4の実施の形態)
つぎに、本発明の第4の実施の形態にかかる識別装置100について説明する。なお、第4の実施の形態の説明においては、上述した第1から第3の実施の形態の識別装置100の説明と重複する説明を省略する場合がある。なお、第4の実施の形態の識別装置100は、偏光ビームスプリッタプリズム510を配設し、識別媒体210からの反射光を分離する点において、第2の実施の形態の識別装置100と異なる。
【0088】
図14は、第4の実施の形態の識別装置100の構成を示す図である。識別装置100は、第3の実施の形態の識別装置100と同様に、フォトダイオード600の前に偏光ビームスプリッタプリズム510を配設している構成となっている。なお、制御部710は、対象物真贋判定部710cと、入射角度変化部710dと、反射角度変化部710eと、をさらに含んで構成される。
【0089】
ここで、入射角度(β1)と、反射光軸角度(β2)と、第1のフォトダイオード600aおよび第2のフォトダイオード600bでの出力値との関係について図5−1および図9を参照して説明する。半導体レーザ光源300は、入射角度変化部710dによる制御により、識別媒体210に向けて照射する光の入射角度(β1)を変化させる。これは、図5−1において、照射光軸と識別媒体210との入射角度(β)を変化させるのと同じことである。この場合、図9に示すように、識別媒体210からの反射光のアジマス角と入射光のアジマス角との差Δθおよび反射光の楕円率が変化する。したがって、入射角度(β1)の変化に基づいて、第1のフォトダイオード600aでの出力値および第2のフォトダイオード600bでの出力値も変化する。また、入射角度(β1)を固定し、反射角度変化部710eによる制御により、反射光軸角度(β2)を変化させた場合も、第1のフォトダイオード600aおよび第2のフォトダイオード600bでの出力値はそれぞれ変化する。また、反射光軸角度(β2)を固定して入射角度(β1)を変化させた場合も同様である。いずれにしても、入射角度(β1)と反射光軸角度(β2)との両方の組み合わせにより、第1のフォトダイオード600aおよび第2のフォトダイオード600bでの出力値は変化する。
【0090】
以上の構成において、第4の実施の形態の識別装置100で行われるクレジットカード200の真贋の判定処理について図15を参照して説明する。図15は、第4の実施の形態の識別装置100で行われるクレジットカード200の真贋の判定処理の手順を示すフローチャートである。
【0091】
入射角度変化部710dや反射角度変化部710eによる制御により、入射角度(β1)や反射光軸角度(β2)を変化させている状態において光の偏光を半導体レーザ光源300で照射し(ステップSD−1)、ステップSD−1で照射された光の偏光が識別媒体210から反射されると(ステップSD−2)、偏光ビームスプリッタプリズム510は、ステップSD−2で反射された光の偏光をs偏光とp偏光とに分離する(ステップSD−3)。ついで、第1のフォトダイオード600aは、ステップSD−3で分離されたs偏光を検出光として検出して出力し、また、第2のフォトダイオード600bは、ステップSC−3で分離されたp偏光を検出光として検出して出力する(ステップSD−4)。ついで、対象物真贋判定部710cは、ステップSD−4で出力された値から、識別媒体210の光学特性が、記憶部720に記憶されている所定の光学特性の情報と一致するか否かを判定する(ステップSD−5)。ステップSD−5での判定結果が肯定である場合(ステップSD−6:Yes)、対象物真贋判定部710cは、クレジットカード200は真正品であると判断する(ステップSD−7)。一方、ステップSD−5での判断結果が否定である場合(ステップSD−6:No)、対象物真贋判定部710cは、クレジットカード200は偽造品であると判断する(ステップSD−8)。
【0092】
以上説明したように、第4の実施の形態の識別装置100は、入射角度(β1)や反射光軸角度(β2)を変化させながら光の偏光を半導体レーザ光源300で識別媒体210に照射し、識別媒体210からの反射の光の偏光を、偏光ビームスプリッタプリズム510でs編光とp偏光とに分離し、分離されたs偏光とp偏光を第1のフォトダイオード600aと第2のフォトダイオード600bとでそれぞれ検出光として検出し、当該識別媒体210の持つ光学特性と所定の光学特性とが一致するか否かを対象物真贋判定部710cで判定し、当該判定結果に基づいて、クレジットカード200が真正品であるか否かを判断する。
【0093】
したがって、第4の実施の形態の識別装置100によれば、入射角度(β1)や反射光軸角度(β2)を変化させながら半導体レーザ光源300で識別媒体210に光の偏光を照射することにより、当該識別媒体210に形成される金属構造体214のパターンに基づいた値を第1のフォトダイオード600aおよび第2のフォトダイオード600bで出力できるので、識別媒体210に照射する半導体レーザ光源300が単数であっても、識別媒体210が真正品であるか否かを判定することができ、結果として、クレジットカード200の真贋を判定することもできる。
【0094】
(第5の実施の形態)
つぎに、本発明の第5の実施の形態にかかる識別装置100について説明する。なお、第5の実施の形態の説明においては、上述した第1から第4の実施の形態の識別装置100の説明と重複する説明を省略する場合がある。なお、第5の実施の形態の識別装置100は、半導体レーザ光源300が回転しない点において、また、1/4波長板520を配設している点において、第1の実施の形態と異なる。
【0095】
図16は、第5の実施の形態の識別装置100の構成を示す図である。第5の実施の形態の識別装置100は、第1の実施の形態の識別装置100の構成に加えて、同図に示すように、半導体レーザ光源300と対物レンズ400との間に1/4波長板520をさらに配設している。
【0096】
1/4波長板520は、半導体レーザ光源300が識別媒体210に向けて照射した直線偏光を円偏光や楕円偏光に変換させるためのものであり、同図に示すように、半導体レーザ光源300と対物レンズ400との間に配設される。識別媒体210からの反射の光の偏光は、識別媒体210に照射される円偏光や楕円偏光の偏光状態に対して変化するので、フォトダイオード600での出力値の変化パターンからクレジットカード200の真贋を判定することができる。そこで、半導体レーザ光源300と対物レンズ400との間に1/4波長板520を配設することで、半導体レーザ光源300から識別媒体210に向けて照射する直接偏光を円偏光や楕円偏光に変換している。
【0097】
図17は、第5の実施の形態の情報処理装置700の構成を示す図である。同図に示すように、第5の実施の形態の制御部710は、偏光板回転部710bと、対象物真贋判定部710cと、波長板回転部710fと、をさらに含んで構成される。
【0098】
波長板回転部710fは、1/4波長板520が当該板の中央部分を中心に回転するように制御する。したがって、1/4波長板520は、波長板回転部710fによる制御により、当該板の中央部分を中心に回転する。
【0099】
ここで、1/4波長板520の回転角とフォトダイオード600での出力値との関係について説明する。まず、半導体レーザ光源300からの照射光の偏光楕円率は1/4波長板520の回転角(α)520aにより決まる。そして、識別媒体210からの反射の光の偏光は、識別媒体210に照射される円偏光や楕円偏光の偏光状態に対して変化する。したがって、1/4波長板520の回転角(α)520aに基づいてフォトダイオード600での出力値が変化し、このフォトダイオード600での出力値の変化パターンから対象物の真贋を判定することができる。
【0100】
以上の構成において、第5の実施の形態の識別装置100で行われるクレジットカード200の真贋の判定処理について図18を参照して説明する。図18は、第5の実施の形態の識別装置100で行われるクレジットカード200の真贋の判定処理の手順を示すフローチャートである。
【0101】
まず、半導体レーザ光源300は、光の偏光を照射する(ステップSE−1)。ついで、波長板回転部710fの制御により回転している1/4波長板520は、ステップSE−1で照射された光の偏光を透過させることにより、当該光の偏光を円偏光や楕円偏光に変換する(ステップSE−2)。なお、ステップSE−2で変換された楕円偏光の楕円率は、1/4波長板520を透過するときの1/4透過板520の回転角(α)520aによって決まるものである。ついで、識別媒体210は、ステップSE−2で変換された円偏光や楕円偏光を反射する(ステップSE−3)。ついで、偏光板500は、ステップSE−3で、識別媒体210で反射された光の偏光を透過させる(ステップSE−4)。ついで、フォトダイオード600は、ステップSE−4で偏光板500から透過した光の偏光を検出光として検出し、検出した検出光の量を測定してその値を出力する(ステップSE−5)。ついで、対象物真贋判定部710cは、ステップSE−5で出力された値から、識別媒体210の光学特性が、記憶部720に記憶されている所定の光学特性の情報と一致するか否かを判定する(ステップSE−6)。ステップSE−6での判定結果が肯定である場合(ステップSE−7:Yes)、対象物真贋判定部710cは、クレジットカード200は真正品であると判断する(ステップSE−8)。一方、ステップSE−6での判断結果が否定である場合(ステップSE−7:No)、対象物真贋判定部710cは、クレジットカード200は偽造品であると判断する(ステップSE−9)。
【0102】
以上説明したように、第5の実施の形態の識別装置100は、光の偏光を半導体レーザ光源300で照射し、照射された光の偏光を1/4波長板520に透過させることにより円偏光や楕円偏光に変換し、1/4波長板520の回転角(α)520aに基づいた楕円率を有する円偏光や楕円偏光を識別媒体210に照射させ、識別媒体210からの反射の円偏光や楕円偏光を偏光板500に透過させ、偏光板500で透過された円偏光や楕円偏光をフォトダイオード600で検出光として検出し、識別媒体210の持つ光学特性と所定の光学特性とが一致するか否かを対象物真贋判定部710cで判定し、当該判定結果に基づいて、クレジットカード200が真正品であるか否かを判断する。
【0103】
したがって、第5の実施の形態の識別装置100によれば、半導体レーザ光源300からの光の偏光を1/4波長板520で円偏光や楕円偏光に変換させることにより、識別媒体210に形成される金属構造体214のパターンにより決まる独特の変化をフォトダイオード600での出力値に反映させることができるので、半導体レーザ光源300が単数であっても、識別媒体210が真正品であるか否かを判定することができ、結果として、クレジットカード200の真贋を判定することもできる。
【0104】
(第6の実施の形態)
つぎに、本発明の第6の実施の形態にかかる識別装置100について説明する。なお、第6の実施の形態の説明においては、上述した第1から第5の実施の形態の識別装置100の説明と重複する説明を省略する場合がある。なお、第6の実施の形態の識別装置100は、半導体レーザ光源300と対物レンズ400との間に1/4波長板520を配設している点において、第2の実施の形態の識別装置100と異なる。
【0105】
図19は、第6の実施の形態の識別装置100の構成を示す図である。第6の実施の形態の識別装置100は、第2の実施の形態の識別装置100の構成に加えて、同図に示すように、半導体レーザ光源300と対物レンズ400との間に1/4波長板520をさらに配設している。なお、制御部700は、対象物真贋判定部710cと、入射角度変化部710dと、反射角度変化部710eと、波長板回転部710fと、をさらに含んで構成される。
【0106】
ここで、入射角度(β1)と、反射光軸角度(β2)と、フォトダイオード600での出力値との関係について説明する。識別媒体210で反射する光の偏光に対する出力値は、直線偏光を識別媒体210に照射させた場合だけではなく、円偏光や楕円偏光を識別媒体210に照射させた場合であっても、入射角度(β1)や反射光軸角度(β2)に対して変化する。また、入射角度(β1)を固定し、反射角度変化部710eによる制御により、反射光軸角度(β2)を変化させた場合も、フォトダイオード600での出力値は変化する。また、反射光軸角度(β2)を固定して入射角度(β1)を変化させた場合も同様である。いずれにしても、入射角度(β1)と反射光軸角度(β2)の、両方の組み合わせにより、フォトダイオード600での出力値は変化する。
【0107】
以上の構成において、第6の実施の形態の識別装置100で行われるクレジットカード200の真贋の判定処理について図20を参照して簡単に説明する。図20は、第6の実施の形態の識別装置100で行われるクレジットカード200の真贋の判定処理の手順を示すフローチャートである。
【0108】
まず、半導体レーザ光源300は、入射角度(β1)や反射光軸角度(β2)を変化させている状態において、光の偏光を照射する(ステップSF−1)。ついで、1/4波長板520は、ステップSF−1で照射された光の偏光を透過させることにより、円偏光や楕円偏光に変換する(ステップSF−2)。ついで、識別媒体210は、ステップSF−2で変換された円偏光や楕円偏光を反射する(ステップSF−3)。ついで、偏光板500は、ステップSF−3で、識別媒体210で反射された光の偏光を透過させる(ステップSF−4)。ついで、フォトダイオード600は、ステップSF−4で偏光板500から透過した光の偏光を検出光として検出し、検出した検出光の量を測定してその値を出力する(ステップSF−5)。ついで、対象物真贋判定部710cは、ステップSF−5で出力された値から、当該識別媒体210の光学特性が、記憶部720に記憶されている所定の光学特性の情報と一致するか否かを判定する(ステップSF−6)。ステップSF−6での判定結果が肯定である場合(ステップSF−7:Yes)、対象物真贋判定部710cは、クレジットカード200は真正品であると判断する(ステップSF−8)。一方、ステップSF−6での判断結果が否定である場合(ステップSF−7:No)、対象物真贋判定部710cは、クレジットカード200は偽造品であると判断する(ステップSF−9)。
【0109】
以上説明したように、第6の実施の形態の識別装置100は、入射角度(β1)や反射光軸角度(β2)を変化ながら光の偏光を半導体レーザ光源300で照射し、照射された光の偏光を1/4波長板520に透過させることにより円偏光や楕円偏光に変換し、変換された円偏光や楕円偏光を識別媒体210に照射させ、識別媒体210からの反射の光の円偏光や楕円偏光を偏光板500に透過させ、偏光板500で透過された円偏光や楕円偏光をフォトダイオード600で検出光として検出し、当該識別媒体210の持つ光学特性と所定の光学特性とが一致するか否かを対象物真贋判定部710cで判定し、当該判定結果に基づいて、クレジットカード200が真正品であるか否かを判断する。
【0110】
したがって、第6の実施の形態の識別装置100によれば、入射角度(β1)や反射光軸角度(β2)を変化させながら識別媒体210に光の円偏光や楕円偏光を照射することにより、当該識別媒体210に形成される金属構造体214のパターンに基づいた値をフォトダイオード600で出力できるので、識別媒体210に照射する半導体レーザ光源300が単数であっても、識別媒体210が真正品であるか否かを判定することができ、結果として、クレジットカード200の真贋を判定することもできる。
【0111】
(第7の実施の形態)
つぎに、本発明の第7の実施の形態にかかる識別装置100について説明する。なお、第7の実施の形態の説明においては、上述した第1から第6の実施の形態の識別装置100の説明と重複する説明を省略する場合がある。
【0112】
図21は、第7の実施の形態の識別装置100の構成を示す図である。第7の実施の形態の識別装置100は、同図に示すように、対象物であるクレジットカード200と、複数の半導体レーザ光源300と、複数の対物レンズ400と、複数のコリメートレンズ410と、複数のダイクロイックミラー530と、複数のフォトダイオード600と、情報処理装置700(図示なし)と、で構成される。なお、図22は、第7の実施の形態のクレジットカード200の上側(識別媒体210がクレジットカード200に設けられている側)から見た図である。なお、制御部710は、対象物真贋判定部710cをさらに含んで構成される。
【0113】
第1の半導体レーザ光源300aと第2の半導体レーザ光源300bは、識別媒体210に光を照射するためのものであり、同図に示すように、それぞれ異なる箇所に配設される。第1の半導体レーザ光源300aが照射する光(波長λ1)と第2の半導体レーザ光源300bが照射する光(波長λ2)は、それぞれ波長が異なるものである。なお、第1の半導体レーザ光源300aから照射された直線偏光の向きは、同図に示すように、y方向になっている。また、第2の半導体レーザ光源300bから照射された直線偏光の向きは、同図に示すように、x方向になっている。
【0114】
図23は、識別媒体210に形成される金属構造体214に照射させる光の偏光の向きを表す図である。第1の半導体レーザ光源300aから照射された偏光は、同図に示すy方向に照射される。また、第2の半導体レーザ光源300bから照射された偏光は、同図に示すx方向に照射される。なお、同図中におけるxとyそれぞれの方向に向けて光の偏光を識別媒体210に照射すると、識別媒体210(金属構造体214)からの透過光の波長スペクトルは図24に示すようになる。図24において、第2の半導体レーザ光源300bの波長はλ2であり、偏光方向はx方向の直線偏光である。また、第1の半導体レーザ光源300aの波長はλ1であり、偏光方向はy方向の直線偏光である。
【0115】
図21に戻り、クレジットカード200は、同図に示すように、第1の半導体レーザ光源300aおよび第2の半導体レーザ光源300bが照射する側の表面に識別媒体210を設けると共に、識別媒体210が設けられた表面とは反対側の表面に透明窓240が配設されている。すなわち、第1から第6の実施の形態の識別媒体210は、半導体レーザ光源300で照射された光を反射させる構成となっているが、第7の実施の形態の識別媒体210は、照射された光を透過させる構成となっている。
【0116】
第1のダイクロイックミラー530aは、第1の半導体レーザ光源300aと第2の半導体レーザ光源300bから照射された光の一部の波長帯域を反射し、残りを透過させるためのものであり、同図に示すように、第1の半導体レーザ光源300aと識別媒体210との間に配設される。具体的には、第1の半導体レーザ光源300aで照射された光を透過させ、第2の半導体レーザ光源300bで照射された光を反射させる。したがって、同図に示すように、第1の半導体レーザ光源300aから照射された光と第2の半導体レーザ光源300bから照射された光は同じ光軸で識別媒体210に照射することになる。第2のダイクロイックミラー530bは、識別媒体210を透過した光を波長λ1の光と波長λ2の光に分離させるためのものであり、同図に示すように、透明窓240と第1のフォトダイオード600aとの間に配設される。
【0117】
第1のフォトダイオード600aは、第2のダイクロイックミラー530bで分離された波長λ1の光を検出光として検出し、検出した波長λ1の検出光の量を測定してその値を出力する。一方、第2のフォトダイオード600bは、第2のダイクロイックミラー530bで分離された波長λ2の光を検出光として検出し、検出した波長λ2の検出光の量を測定してその値を出力する。
【0118】
ここで、識別媒体210の透過光強度について再び図24を参照して説明する。同図に示すように、第1の半導体レーザ光源300aで照射された光(y方向の波長λ1)に対する識別媒体210の透過光強度(Optical density/ρ(a.u.))はy1となり、第2の半導体レーザ光源300bの光(x方向の波長λ2)に対する識別媒体210の透過光強度はx2となる。y1とx2の両者の比は、識別媒体210に形成される金属構造体214のパターンにより独自に決まるものである。
【0119】
以上の構成において、第7の実施の形態の識別装置100で行われるクレジットカード200の真贋の判定処理について図25を参照して簡単に説明する。図25は、第7の実施の形態の識別装置100で行われるクレジットカード200の真贋の判定処理の手順を示すフローチャートである。なお、第1の半導体レーザ光源300aは、波長λ1の光の偏光をy方向に照射するものとし、また、第2の半導体レーザ光源300bは、波長λ2の光の偏光をx方向に照射するものとする。
【0120】
まず、第1の半導体レーザ光源300aおよび第2の半導体レーザ光源300bは、光の偏光を照射する(ステップSG−1)。ついで、第1のダイクロイックミラー530aは、ステップSG−1で照射された光の波長(λ1)を透過させ、また、ステップSG−1で照射された光の波長(λ2)を反射させる(ステップSG−2)。ついで、識別媒体210は、ステップSG−2で透過された光の波長(λ1)および反射された光の波長(λ2)を透過させる(SG−3)。ついで、第2のダイクロイックミラー530bは、ステップSG−3で識別媒体210から透過された光の波長(λ1)を透過させ、また、ステップSG−3で識別媒体210から透過された光の波長(λ2)を反射させる(ステップSG−4)。ついで、第1のフォトダイオード600aは、ステップSG−4でダイクロイックミラー530aで透過された光(λ1)を検出光として検出して、その値を出力する。また、第2のフォトダイオード600bは、ステップSG−4で反射された光(λ2)を検出光として検出して、その値を出力する(ステップSG−5)。ついで、対象物真贋判定部710cは、ステップSG−5で出力された値から、識別媒体210の光学特性が、記憶部720に記憶されている所定の光学特性の情報と一致するか否かを判定する(ステップSG−6)。ステップSG−6での判定結果が肯定である場合(ステップSG−7:Yes)、対象物真贋判定部710cは、クレジットカード200は真正品であると判断する(ステップSG−8)。一方、ステップSG−6での判断結果が否定である場合(ステップSG−7:No)、対象物真贋判定部710cは、クレジットカード200は偽造品であると判断する(ステップSG−9)。
【0121】
以上説明したように、第7の実施の形態の識別装置100は、波長の異なる二つの光の偏光を第1の半導体レーザ光源300aと第2の半導体レーザ光源300bとで照射し、照射された波長の異なる二つの光の偏光を、それぞれ、第1のダイクロイックミラー530aで透過、反射させ、第1のダイクロイックミラー530aで透過、反射された光を識別媒体210に透過させる。そして、識別媒体210からの透過の光の偏光を第2のダイクロイックミラー530bで透過、反射させ、第2のダイクロイックミラー530bで透過、反射された光の偏光をそれぞれ第1のフォトダイオード600aと第2のフォトダイオード600bとで検出光として検出し、対象物真贋判定部710cは、識別媒体の持つ光学特性と所定の光学特性とが一致するか否かを判定し、当該判定結果に基づいて、クレジットカード200が真正品であるか否かを判断する。
【0122】
したがって、第7の実施の形態の識別装置100によれば、波長の異なる二つの光の偏光をそれぞれ異なる方向に向けて識別媒体210に照射し、当該識別媒体210を透過した複数の波長の光の偏光を検出して二つの出力値を得ることができるので、識別媒体210の偽造を困難にすることができると共に、識別媒体210が真正品であるか否かを判定することができ、結果として、クレジットカード200の真贋を判定することもできる。
【0123】
(第8の実施の形態)
つぎに、本発明の第8の実施の形態にかかる識別装置100について説明する。なお、第8の実施の形態の説明においては、上述した第1から第7の実施の形態の識別装置100の説明と重複する説明を省略する場合がある。なお、第8の実施の形態の識別装置100は、液晶パネル540を配設している点において、第7の実施の形態の識別装置100と異なる。
【0124】
図26は、第8の実施の形態の識別装置100の構成を示す図である。第8の実施の形態の識別装置100は、第7の実施の形態の識別装置100の構成に加えて、同図に示すように、第1のダイクロイックミラー530aと識別媒体210との間に液晶パネル540をさらに配設している。
【0125】
液晶パネル540は、第1のダイクロイックミラー530aからの透過光や反射光である光の偏光の向きを切り替えるためのものであり、第1のダイクロイックミラー530aと識別媒体210との間に配設している。液晶パネル540は、半導体レーザ光源300から照射された光の偏光を、その向きを切り替えずに透過させることができるし、その向きを切り替えて透過させることもできる。したがって、波長λ1と波長λ2のy方向の光の偏光が識別媒体210に照射される場合と、波長λ1と波長λ2のx方向の光の偏光が識別媒体210に照射される場合とがある。
【0126】
なお、第1の半導体レーザ光源300aから照射された光の偏光の向きは、同図に示すように、y方向となっている。また、第2の半導体レーザ光源300bから照射された光の偏光の向きも、同図に示すように、y方向となっている。しかし、半導体レーザ光源300から照射される光の偏光の向きはこれに限定されるものではない。
【0127】
図27は、第8の実施の形態の情報処理装置700の構成を示す図である。第8の実施の形態の制御部710は、同図に示すように、対象物真贋判定部710cと、液晶パネル切替部710gと、をさらに含んで構成される。
【0128】
液晶パネル切替部710gは、液晶パネル540が半導体レーザ光源300で照射された光の偏光の向きを切り替えるように制御する。具体的には、液晶パネル540に印加する電圧の値を制御することにより、光の偏光の向きを切り替えさせる。したがって、液晶パネル540は、液晶パネル切替部710gによる制御により、偏光の向きを切り替える。
【0129】
ここで、液晶パネル540で切り替えられた光の偏光の向きと、第1のフォトダイオード600aおよび第2のフォトダイオード600bでの出力値との関係について図24を参照して説明する。液晶パネル540での切り替えにより、波長λ1と波長λ2のy方向に向けた光の偏光が識別媒体210に照射された場合は、第1のフォトダイオード600aでの出力値はy1となり、第2のフォトダイオード600bでの出力値はy2となる。また、液晶パネル540での切り替えにより、波長λ1と波長λ2のx方向に向けた光の偏光が識別媒体210に照射された場合は、第1のフォトダイオード600aでの出力値はx1となり、第2のフォトダイオード600bでの出力値はx2となる。これら4つの値の組み合わせは6通りになるが、これらの比は、識別媒体210に形成される金属構造体214のパターンにより独自に決まるものである。
【0130】
以上の構成において、第8の実施の形態の識別装置100で行われるクレジットカード200の真贋の判定処理について図28を参照して簡単に説明する。図28は、第8の実施の形態の識別装置100で行われるクレジットカード200の真贋の判定処理の手順を示すフローチャートである。なお、ここでの判定処理においては、第1の半導体レーザ光源300aは、波長λ1の光の偏光をy方向に照射するものとし、また、第2の半導体レーザ光源300bも、波長λ2の光の偏光をy方向に照射するものとする。
【0131】
まず、第1の半導体レーザ光源300aおよび第2の半導体レーザ光源300bはそれぞれ波長の異なる光の偏光をy方向に照射する(ステップSH−1)。ついで、第1のダイクロイックミラー530aは、ステップSH−1で照射された光の波長(λ1)を透過させ、また、ステップSH−1で照射された光の波長(λ2)を反射させる(ステップSH−2)。ついで、液晶パネル540は、ステップSH−2で透過された光の波長(λ1、y方向)とステップSH−2で反射された光の波長(λ2、y方向)を透過させる(ステップSH−3)。ついで、液晶パネル切替部710gは、第1のダイクロイックミラー530aで透過、反射された光の偏光の向きを切り替えるように制御する(ステップSH−4)。ついで、液晶パネル540は、ステップSH−4での液晶パネル切替部710gの制御により、ステップSH−2で第1のダイクロイックミラー530aを透過した光の波長(λ1、x方向)とステップSH−2で第1のダイクロイックミラー530aで反射した光の波長(λ2、x方向)を透過させる(ステップSH−5)。ついで、識別媒体210は、ステップSH−3およびステップSH−5で液晶パネル540を透過した光の波長(y方向のλ1、y方向のλ2、x方向のλ1、x方向のλ2)を透過させる(ステップSH−6)。ついで、第2のダイクロイックミラー530bは、ステップSH−6で識別媒体210を透過した光の波長(x方向のλ1、y方向のλ1)を透過させ、また、ステップSH−6で識別媒体210を透過した光の波長(x方向のλ2、y方向のλ2)を反射させる(ステップSH−7)。ついで、第1のフォトダイオード600aは、ステップSH−7で第2のダイクロイックミラー530bを透過した光(x方向のλ1、y方向のλ1)を検出光として検出して、その値を出力する。また、第2のフォトダイオード600bは、ステップSH−7で反射した光(x方向のλ2、y方向のλ2)を検出光として検出して、その値を出力する(ステップSH−8)。ついで、対象物真贋判定部710cは、ステップSH−8で出力された値から、識別媒体210の光学特性が、記憶部720に記憶されている所定の光学特性の情報と一致するか否かを判定する(ステップSH−9)。ステップSH−9での判定結果が肯定である場合(ステップSH−10:Yes)、対象物真贋判定部710cは、クレジットカード200は真正品であると判断する(ステップSH−11)。一方、ステップSH−9での判断結果が否定である場合(ステップSH−10:No)、対象物真贋判定部710cは、クレジットカード200は偽造品であると判断する(ステップSH−12)。
【0132】
以上説明したように、第8の実施の形態の識別装置100は、波長の異なる光の偏光を第1の半導体レーザ光源300aと第2の半導体レーザ光源300bとで、x方向とy方向の両方向に照射し、照射された光の偏光を第1のダイクロイックミラー530aでそれぞれ透過、反射させ、第1のダイクロイックミラー530aで透過、反射された光を液晶パネル540に透過させ、また、液晶パネル540で方向を切り替えられた光の偏光を識別媒体210に透過させる。そして、識別媒体210からの透過光の偏光を第2のダイクロイックミラー530bで透過、反射させ、第2のダイクロイックミラー530bで透過、反射された光の偏光をそれぞれ第1のフォトダイオード600aと第2のフォトダイオード600bで検出光として検出し、識別媒体の持つ光学特性と所定の光学特性とが一致するか否かを対象物真贋判定部710cで判定し、当該判定結果に基づいて、クレジットカード200が真正品であるか否かを判断する。
【0133】
したがって、第8の実施の形態の識別装置100によれば、波長が異なる二つの光の偏光をそれぞれ識別媒体210に照射し、さらに、当該光の偏光の方向を切り替えて識別媒体210に照射し、識別媒体210から透過した光の偏光を検出して四つの出力値を得ることができるので、識別媒体210の偽造をより困難にすることができる共に、識別媒体210が真正品であるか否かを判定することができ、結果として、クレジットカード200の真贋を判定することもできる。
【0134】
(第9の実施の形態)
つぎに、本発明の第9の実施の形態にかかる識別装置100について説明する。なお、第9の実施の形態の説明においては、上述した第1から第8の実施の形態の識別装置100の説明と重複する説明を省略する場合がある。なお、第9の実施の形態の識別装置100は、半導体レーザ光源300が単数で構成されている点において、第8の実施の形態の識別装置100と異なる。なお、制御部700は、対象物真贋判定部710cと、液晶パネル切替部710gと、をさらに含んで構成される。
【0135】
図29は、第9の実施の形態の識別装置100の構成を示す図である。第9の実施の形態の識別装置100は、同図に示すように、主として、半導体レーザ光源300と、液晶パネル540と、クレジットカード200と、フォトダイオード600と、で構成される。なお、対物レンズ400およびコリメートレンズ410は、それぞれ所定の位置に配設されている。
【0136】
半導体レーザ光源300は、同図に示すように、単数である。なお、半導体レーザ光源300から照射される光の偏光の向きは、x方向でもよく、y方向でもよい。
【0137】
ここで、液晶パネル540で切り替えられる光の偏光の向きとフォトダイオード600での出力値との関係について図24を参照して説明する。なお、半導体レーザ光源300の波長としては、同図に示すλ1を用いるものとする。液晶パネル540により、y方向の光の偏光が識別媒体210に照射された場合は、フォトダイオード600での出力値はy1となる。また、液晶パネル540により、x方向の光の偏光が識別媒体210に照射された場合は、フォトダイオード600での出力値はx1となる。これら二つの出力値の比は、識別媒体210に形成される金属構造体214のパターンにより独自に決まるものである。
【0138】
以上の構成において、第9の実施の形態の識別装置100で行われるクレジットカード200の真贋の判定処理について図30を参照して簡単に説明する。図30は、第9の実施の形態の識別装置100で行われるクレジットカード200の真贋の判定処理の手順を示すフローチャートである。なお、ここでの判定処理においては、半導体レーザ光源300は、x方向の光の波長(λ1)を照射するものとする。
【0139】
まず、半導体レーザ光源300は、光の偏光(λ1、x方向)を照射する(ステップSI−1)。ついで、液晶パネル540は、ステップSI−1で照射された光の偏光(λ1、x方向)を透過させる(ステップSI−2)。ついで、液晶パネル切替部710gは、ステップSI−1で照射された光の偏光の向きを切り替えるように液晶パネル540を制御する(ステップSI−3)。ついで、液晶パネル540は、ステップSI−1で照射された光の偏光の方向をy方向に切り替えて透過させる(ステップSI−4)。ついで、識別媒体210は、ステップSI−2およびステップSI−4で液晶パネル540を透過した光の偏光(x方向のλ1、y方向のλ1)を透過させる(ステップSI−5)。ついで、フォトダイオードは、ステップSI−5で識別媒体を透過した光の偏光(x方向のλ1、y方向のλ1)を検出光として検出して、その値を出力する(ステップSI−6)。ついで、対象物真贋判定部710cは、ステップSI−6で出力された値から、識別媒体210の光学特性が、記憶部720に記憶されている所定の光学特性の情報と一致するか否かを判定する(ステップSI−7)。ステップSI−7での判定結果が肯定である場合(ステップSI−8:Yes)、対象物真贋判定部710cは、クレジットカード200は真正品であると判断する(ステップSI−9)。一方、ステップSI−7での判断結果が否定である場合(ステップSI−8:No)、対象物真贋判定部710cは、クレジットカード200は偽造品であると判断する(ステップSI−10)。
【0140】
以上説明したように、第9の実施の形態の識別装置100は、光の偏光を半導体レーザ光源300で照射し、照射された光の偏光を液晶パネル540に透過させ、また、液晶パネル540で方向を切り替えた光の偏光を液晶パネル540にさらに透過させる。そして、液晶パネル540で透過された光の偏光を識別媒体210に透過させ、識別媒体210で透過された光の偏光を検出光としてフォトダイオード600で検出し、識別媒体の持つ光学特性と所定の光学特性とが一致するか否かを対象物真贋判定部710cで判定し、当該判定結果に基づいて、クレジットカード200が真正品であるか否かを判断する。
【0141】
したがって、第9の実施の形態の識別装置100によれば、照射された光の偏光の向きを切り替え、相互に方向が異なる光の偏光を識別媒体210に透過させ、識別媒体210で透過された光の偏光を検出して二つの出力値を得ることができるので、識別媒体210の偽造を困難にすることができる共に、識別媒体210に照射する光源が一つであっても識別媒体210が真正品であるか否かを判定することができ、結果として、クレジットカード200の真贋を判定することもできる。
【0142】
(第10の実施の形態)
つぎに、本発明の第10の実施の形態にかかる識別装置100について説明する。なお、第10の実施の形態の説明においては、上述した第1から第9の実施の形態の識別装置100の説明と重複する説明を省略する場合がある。なお、第10の実施の形態の識別装置100は、波長フィルタ550が配設されている点において、第9の実施の形態の識別装置100と異なる。なお、制御部700は、対象物真贋判定部710cと、液晶パネル切替部710gと、をさらに含んで構成される。
【0143】
図31は、第10の実施の形態の識別装置100の構成を示す図である。第10の実施の形態の識別装置100は、第9の実施の形態の識別装置100の構成に加えて、同図に示すように、透明窓240とフォトダイオード600との間に波長フィルタ550を配設している。なお、制御部710は、主として、液晶パネル540切替部と対象物真贋判定部710cをさらに含んで構成される。
【0144】
波長フィルタ550は、半導体レーザ光源300から照射された光の波長λの1/2の波長λ/2の光を透過させ、波長λの光をカットするためのものであり、透明窓240とフォトダイオード600との間に配設される。波長フィルタ550を配設することにより、識別媒体210からの波長λ/2の光だけがフォトダイオード600により検出される。なお、半導体レーザ光源300から照射される光の波長λは任意の値である。
【0145】
ここで、識別媒体210へ照射する光の偏光の向きとフォトダイオード600での出力値との関係について図32を参照して説明する。液晶パネル540により、y方向の光の偏光が識別媒体210に照射された場合は、フォトダイオード600での出力値(SHG/ρ2(a.u.))は、y1となる。また、液晶パネル540により、x方向の光の偏光が識別媒体210に照射された場合は、フォトダイオード600での出力値(SHG/ρ2(a.u.))は、x1となる。これら二つの出力値の比は、識別媒体210に形成される金属構造体214のパターンにより独自に決まるものである。
【0146】
以上の構成において、第10の実施の形態の識別装置100で行われるクレジットカード200の真贋の判定処理について図33を参照して簡単に説明する。図33は、第10の実施の形態の識別装置100で行われるクレジットカード200の真贋の判定処理の手順を示すフローチャートである。なお、半導体レーザ光源300は、x方向の光の波長λを照射するものとする。なお、半導体レーザ光源300から照射される光の波長λは任意の値である。
【0147】
光の偏光(λ、x方向)を半導体レーザ光源300で照射し(ステップSJ−1)、照射された光の偏光(λ、x方向)を液晶パネル540に透過させ(ステップSJ−2)、液晶パネル切替部710gの制御によりステップSJ−1で照射された光の偏光の向きをy方向に切り替え(ステップSJ−3)、ステップSJ−3でy方向に切り替えられた光の偏光を透過させる(ステップSJ−4)。ついで、ステップSJ−2およびステップSJ−4で液晶パネル540を透過した光の偏光(x方向のλ、y方向のλ)を識別媒体210に透過させると(ステップSJ−5)、波長フィルタ550は、ステップSJ−5で識別媒体210を透過した光の波長λの1/2の波長である波長λ/2の光を透過させ、波長λの光をカットする(ステップSJ−6)。ついで、フォトダイオード600は、ステップSJ−6で透過された波長λ/2の光を検出光として検出して、その値を出力する(ステップSJ−7)。ついで、対象物真贋判定部710cは、ステップSJ−7で出力された値から、当該識別媒体210の光学特性が、記憶部720に記憶されている所定の光学特性の情報と一致するか否かを判定する(ステップSJ−8)。ステップSJ−8での判定結果が肯定である場合(ステップSJ−9:Yes)、対象物真贋判定部710cは、クレジットカード200は真正品であると判断する(ステップSJ−10)。一方、ステップSJ−8での判断結果が否定である場合(ステップSJ−9:No)、対象物真贋判定部710cは、クレジットカード200は偽造品であると判断する(ステップSJ−11)。
【0148】
以上説明したように、第10の実施の形態の識別装置100は、光の偏光を半導体レーザ光源300で照射し、照射された光の偏光を液晶パネル540に透過させ、また、液晶パネル540で方向を切り替えた光の偏光を液晶パネル540にさらに透過させる。そして、液晶パネル540で透過された光の偏光を識別媒体210に透過させ、識別媒体210で透過された光の波長λの1/2の波長λ/2の光を波長フィルタ550に透過させることで波長λの光をカットし、波長フィルタ550を透過した光の波長λ/2をフォトダイオード600で検出し、当該識別媒体210の持つ光学特性と所定の光学特性とが一致するか否かを対象物真贋判定部710cで判定し、当該判定結果に基づいて、クレジットカード200が真正品であるか否かを判断する。
【0149】
したがって、第10の実施の形態の識別装置100によれば、照射された光の偏光の向きを切り替え、相互に方向が異なる複数の光の偏光を識別媒体210に透過させ、識別媒体210で透過された波長λの光をカットして波長λ/2の光を検出して出力値を得ることができるので、半導体レーザ光源300が単数であっても、波長変換素子としての識別媒体210を使用したクレジットカード200の真贋の判定を行うことができ、また、識別媒体210の偽造をより困難にすることができる。
【0150】
(第11の実施の形態)
つぎに、本発明の第11の実施の形態にかかる識別装置100について説明する。なお、第11の実施の形態の説明においては、上述した第1から第10の実施の形態の識別装置100の説明と重複する説明を省略する場合がある。なお、第11の実施の形態の識別装置100は、識別媒体210全面に等しいパターンの金属構造体214があるわけではなく、識別媒体210をいくつかの光学領域に分割し、それぞれに異なるパターンの金属構造体214を設けている点において、第1から第10の実施の形態の識別装置100と異なる。また、ビームスキャナ560を配設している点において、第1の実施の形態の識別装置100と異なる。
【0151】
まず、第11の実施の形態のクレジットカード200に設けられる識別媒体210について図34を参照して説明する。
【0152】
図34は、第11の実施の形態の識別媒体210の構成を示す図である。第11の実施の形態の識別媒体210は、同図に示すように、複数の光学領域に分割され、各光学領域におけるパターン(L字、ダミー、卍)がそれぞれ異なっている。したがって、各光学領域の光学特性も異なる。ここでの光学特性とは、識別媒体210に照射される光の偏光、識別媒体210に照射する光の光軸と識別媒体210との角度(すなわち入射角度(β1))、識別媒体210からの反射の光の偏光がフォトダイオード600に到達するまでの光の光軸と識別媒体210との角度(すなわち反射光軸角度(β2))、識別媒体210に照射される光の波長、識別媒体210に照射される光の波長λに対するλ/2の波長などを指す。光学領域の大きさは、半導体レーザ光源300で照射する波長λより大きければよいが、通常のバルクの光学素子(複屈折や非線型光学特性を有する光学結晶を用いた素子)により、この識別媒体210の光学特性に近い光学特性を持つ識別媒体210を偽造できる可能性もある。そこで、識別媒体210の偽造防止のために、異なる光学特性を持つ光学領域を10λ四方に並べるのが好ましい。この光学領域には、上記で挙げた光学特性を持たないダミーのパターンも含まれている。なお、第11の実施の形態の識別媒体210は、複数のクレジットカード200間で同一のパターンを持っている。
【0153】
なお、第11の実施の形態の識別媒体210は、後述する第12から第16の実施の形態の識別装置100を構成するクレジットカード200にも設けられるものである。なお、当該識別媒体210の作製方法については後述する。
【0154】
つぎに、第11の実施の形態の識別装置100の構成について図35を参照して説明する。
【0155】
図35は、第11の実施の形態の識別装置100の構成を示す図である。第11の実施の形態の識別装置100は、第1の実施の形態の識別装置100の構成に加えて、同図に示すように、半導体レーザ光源300と識別媒体210との間にビームスキャナ560を配設している。
【0156】
ビームスキャナ560は、識別媒体210の光学特性が異なる複数の光学領域に、半導体レーザ光源300で照射された光を二次元に走査するためのものであり、同図に示すように、半導体レーザ光源300と識別媒体210との間に配設される。上述したように、第11の実施の形態の識別媒体210は、複数の光学領域に分割され、各光学領域には、それぞれに異なるパターンの金属構造体214を設けている。したがって、各光学領域での光学特性も異なるので、識別媒体210の特定の光学領域だけではなく、複数の光学領域に照射光を走査する必要があるため、このビームスキャナ560が配設されている。なお、ビームスキャナ560には、半導体レーザ光源300で照射された光を集光して像を形成するための対物レンズ400が含まれている構成となっている。
【0157】
半導体レーザ光源300は、出射光軸を中心に回転する点において、第1の実施の形態の半導体レーザ光源300と共通するが、光の偏光を照射している間は回転しない点において、光の偏光を照射しながら回転する第1の実施の形態の半導体レーザ光源300と異なる。第11の実施の形態の半導体レーザ光源300は、光の偏光を照射する前に所定の角度だけ回転する。
【0158】
フォトダイオード600は、半導体レーザ光源300からの照射光の走査に同期して、偏光板500を透過した光の偏光を検出光として検出し、検出した検出光の量を測定してその値を出力する。
【0159】
偏光板500は、当該板の中央部分を中心に回転する点において、第1の実施の形態の偏光板500と共通するが、識別媒体210からの反射の光の偏光を透過させている間は回転しない点において、回転しながら識別媒体210からの反射の光の偏光を透過させる第1の実施の形態の偏光板500と異なる。第11の実施の形態の偏光板500は、光の偏光を透過させる前に所定の角度だけ回転する。
【0160】
図36は、第11の実施の形態の情報処理装置700の構成を示す図である。制御部710は、同図に示すように、光源回転部710aと、偏光板回転部710bと、対象物真贋判定部710cと、照射光走査部710hと、をさらに含んで構成される。
【0161】
照射光走査部710hは、ビームスキャナ560が半導体レーザ光源300からの照射光を二次元に走査するように制御する。したがって、ビームスキャナ560は、照射光走査部710hの制御により、識別媒体210の光学特性が異なる複数の光学領域に、半導体レーザ光源300からの照射光を二次元に走査する。
【0162】
光源回転部710aは、半導体レーザ光源300が光の偏光を照射する前に、半導体レーザ光源300が所定の角度だけ回転するように制御する。光源回転部710aによるこの制御により、半導体レーザ光源300は、照射光の直線偏光のアジマス角を固定しつつ識別媒体に光の偏光を照射する。
【0163】
偏光板回転部710bは、半導体レーザ光源300が光の偏光を照射する前に、偏光板500が所定の角度だけ回転するように制御する。
【0164】
記憶部720は、フォトダイオード600で出力した値を記憶する。すなわち、識別媒体210における個々の光学領域毎の出力値を記憶する。
【0165】
以上の構成において、第11の実施の形態の識別装置100で行われるクレジットカード200の真贋の判定処理について図37を参照して説明する。図37は、第11の実施の形態の識別装置100で行われるクレジットカード200の真贋の判定処理の手順を示すフローチャートである。
【0166】
半導体レーザ光源300の回転角度を固定しつつ、半導体レーザ光源300は、光の偏光を照射し(ステップSK−1)、ビームスキャナ560は、ステップSK−1で照射された光の偏光を識別媒体210の光学特性が異なる複数の光学領域に、二次元に走査し(ステップSK−2)、識別媒体210は、ステップSK−2で走査された光の偏光を反射させ(ステップSK−3)、偏光板500は、ステップSK−3で識別媒体210から反射した光の偏光を透過させ(ステップSK−4)、フォトダイオード600は、ステップSK−4で偏光板500から透過された光の偏光を検出光として検出し、検出した検出光の量を測定してその値を出力する(ステップSK−5)。ここまでの処理を、光源回転部710aによる制御により半導体レーザ光源300が回転角度を変えて繰り返し行い、出力値データを蓄積する(ステップSK−6)。ついで、対象物真贋判定部710cは、ステップSK−6で蓄積した出力値データから、識別媒体210の複数の光学領域が記憶部720に記憶されている所定の光学特性であるか否かを判定する(ステップSK−7)。ステップSK−7での判定結果が肯定である場合(ステップSA−8:Yes)、対象物真贋判定部710cは、クレジットカード200は真正品であると判断する(ステップSK−9)。一方、ステップSK−8での判断結果が否定である場合(ステップSK−8:No)、対象物真贋判定部710cは、クレジットカード200は偽造品であると判断する(ステップSK−10)。
【0167】
以上説明したように、第11の実施の形態の識別装置100は、半導体レーザ光源300で照射された光の偏光をビームスキャナ560で識別媒体の複数の光学領域に走査し、識別媒体からの光の偏光を偏光板500に透過させ、透過された光の偏光をフォトダイオード600で検出する。そして、半導体レーザ光源300が回転角度を変えた場合の出力値データを蓄積し、蓄積した出力値データから当該識別媒体210の持つ光学特性と所定の光学特性とが一致するか否かを対象物真贋判定部710cで判定し、当該判定結果に基づいて、クレジットカード200が真正品であるか否かを判断する。
【0168】
したがって、第11の実施の形態の識別装置100によれば、識別媒体210に光の偏光を走査して照射させ、光学特性の異なる複数の光学領域から構成される識別媒体210からの反射光を検出して複数の出力値を得ることができるので、より偽造が困難な識別媒体210を用いることができ、また、半導体レーザ光源300が単数であっても、識別媒体210が真正品であるか否かを判定することができ、結果として、クレジットカード200の真贋を判定することもできる。
【0169】
(第12の実施の形態)
つぎに、本発明の第12の実施の形態にかかる識別装置100について説明する。なお、第12の実施の形態の説明においては、上述した第1から第11の実施の形態の識別装置100の説明と重複する説明を省略する場合がある。なお、第12の実施の形態の識別装置100は、ビームスキャナ560を配設している点において、第2の実施の形態の識別装置100と異なる。
【0170】
図38は、第12の実施の形態の識別装置100の構成を示す図である。第12の実施の形態の識別装置100は、第2の実施の形態の識別装置100の構成に加えて、同図に示すように、半導体レーザ光源300と識別媒体210との間にビームスキャナ560を配設している。なお、制御部700は、対象物真贋判定部710cと、入射角度変化部710dと、反射角度変化部710eと、照射光操作部710hと、をさらに含んで構成される。
【0171】
入射角度変化部710dは、ビームスキャナ560が二次元に走査し終えると、半導体レーザ光源300およびビームスキャナ560を制御することにより、半導体レーザ光源300から識別媒体210に向けて照射する光の入射角度(β1)を変化させる。すなわち、連続的に入射角度(β1)を変化させるように制御するのではなく、所定の角度だけ変化させるように制御するので、照射光の入射角度(β1)を固定できる。
【0172】
反射角度変化部710eは、コリメートレンズ410、偏光板500、および、フォトダイオード600を制御することにより、反射光軸角度(β2)を変化させる。すなわち、連続的に反射光軸角度(β2)を変化させるように制御するのではなく、所定の角度だけ変化させるように制御するので、反射光軸角度(β2)を固定できる。
【0173】
以上の構成において、第12の実施の形態の識別装置100で行われるクレジットカード200の真贋の判定処理について図39を参照して説明する。図39は、第12の実施の形態の識別装置100で行われるクレジットカード200の真贋の判定処理の手順を示すフローチャートである。
【0174】
入射角度(β1)および反射光軸角度(β2)を固定しつつ、半導体レーザ光源300は光の偏光を照射し(ステップSL−1)、ビームスキャナ560は、ステップSL−1で照射された光の偏光を識別媒体210の光学特性が異なる複数の光学領域に、二次元に走査し(ステップSL−2)。識別媒体210は、ステップSL−2で走査された光の偏光を反射させ(ステップSL−3)、偏光板500は、ステップSL−3で識別媒体210で反射された光の偏光を透過させ(ステップSL−4)、フォトダイオード600は、ステップSL−4で偏光板500から透過した光の偏光を検出光として検出し、検出した検出光の量を測定してその値を出力する(ステップSL−5)。ここまでの処理を、入射角度変化部710dと反射角度変化部710eによる制御により入射角度(β1)と反射光軸角度(β2)を変えて繰り返し行い、出力値データを蓄積する(ステップSL−6)。ついで、対象物真贋判定部710cは、ステップSL−6で蓄積した出力値データから、識別媒体210の複数の光学領域の光学特性が記憶部720に記憶されている所定の光学特性であるか否かを判定する(ステップSL−7)。ステップSL−7での判定結果が肯定である場合(ステップSL−8:Yes)、対象物真贋判定部710cは、クレジットカード200は真正品であると判断する(ステップSL−9)。一方、ステップSL−7での判断結果が否定である場合(ステップSL−8:No)、対象物真贋判定部710cは、クレジットカード200は偽造品であると判断する(ステップSL−10)。
【0175】
以上説明したように、第12の実施の形態の識別装置100は、半導体レーザ光源300で照射された光の偏光をビームスキャナ560で識別媒体の複数の光学領域に走査し、識別媒体210からの光の偏光を偏光板500に透過させ、透過された光の偏光をフォトダイオード600で検出する。そして、入射角度(β1)と反射光軸角度(β2)を変えた場合の出力値データを蓄積し、蓄積した出力値データから当該識別媒体210の持つ光学特性と所定の光学特性とが一致するか否かを対象物真贋判定部710cで判定し、当該判定結果に基づいて、クレジットカード200が真正品であるか否かを判断する。
【0176】
したがって、第12の実施の形態の識別装置100によれば、識別媒体210に光の偏光を走査して照射し、光学特性の異なる複数の光学領域で構成される識別媒体210からの反射光を検出して複数の出力値を得ることができるので、より偽造が困難な識別媒体210を用いることができ、また、半導体レーザ光源300が単数であっても、識別媒体210が真正品であるか否かを判定することができ、結果として、クレジットカード200の真贋を判定することもできる。
【0177】
(第13の実施の形態)
つぎに、本発明の第13の実施の形態にかかる識別装置100について説明する。なお、第13の実施の形態の説明においては、上述した第1から第12の実施の形態の識別装置100の説明と重複する説明を省略する場合がある。なお、第13の実施の形態の識別装置100は、ビームスキャナ560を配設している点において、第3の実施の形態の識別装置100と異なる。
【0178】
図40は、第13の実施の形態の識別装置100の構成を示す図である。第13の実施の形態の識別装置100は、第3の実施の形態の識別装置100の構成に加えて、同図に示すように、半導体レーザ光源300と識別媒体210との間にビームスキャナ560を配設している。なお、制御部710は、主として、光源回転部710aと、対象物真贋部710cと、照射光走査部710hと、をさらに含んで構成される。
【0179】
以上の構成において、第13の実施の形態の識別装置100で行われるクレジットカード200の真贋の判定処理について図41を参照して説明する。図41は、第13の実施の形態の識別装置100で行われるクレジットカード200の真贋の判定処理の手順を示すフローチャートである。
【0180】
半導体レーザ光源300の回転角度を固定しつつ、半導体レーザ光源300は、光の偏光を照射し(ステップSM−1)、ビームスキャナ560は、ステップSM−1で照射された光の偏光を識別媒体210の光学特性が異なる複数の光学領域に、二次元に走査し(ステップSM−2)、識別媒体210は、ステップSM−2で走査された光の偏光を反射させ(ステップSM−3)、偏光ビームスプリッタプリズム510は、ステップSM−3で識別媒体210から反射した光の偏光をs偏光とp偏光とに分離し(ステップSM−4)、第1のフォトダイオード600aは、ステップSM−4で分離されたs偏光を検出光として検出して出力し、また、第2のフォトダイオード600bは、ステップSM−4で分離されたp偏光を検出光として検出して出力する(ステップSM−5)。ここまでの処理を、光源回転部710aによる制御により半導体レーザ光源300が回転角度を変えて繰り返し行い、出力値データを蓄積する(ステップSM−6)。ついで、対象物真贋判定部710cは、ステップSM−6で蓄積した出力値データから、識別媒体210の複数の光学領域の光学特性が、記憶部720に記憶されている所定の光学特性であるか否かを判定する(ステップSM−7)。ステップSM−7での判定結果が肯定である場合(ステップSM−8:Yes)、対象物真贋判定部710cは、クレジットカード200は真正品であると判断する(ステップSM−9)。一方、ステップSM−7での判断結果が否定である場合(ステップSM−8:No)、対象物真贋判定部710cは、クレジットカード200は偽造品であると判断する(ステップSM−10)。
【0181】
以上説明したように、第13の実施の形態の識別装置100は、半導体レーザ光源300で照射された光の偏光をビームスキャナ560で識別媒体210の複数の光学領域に走査し、識別媒体210からの光の偏光を偏光ビームスプリッタプリズム510でs偏光とp偏光とに分離し、分離されたs偏光を第1のフォトダイオード600aで検出し、分離されたp偏光を第2のフォトダイオード600bで検出し、当該識別媒体210の持つ光学特性と所定の光学特性とが一致するか否かを対象物真贋判定部710cで判定し、当該判定結果に基づいて、クレジットカード200が真正品であるか否かを判断する。
【0182】
したがって、第13の実施の形態の識別装置100によれば、識別媒体210に光の偏光を走査して照射させ、光学特性が異なる複数の光学領域から構成される識別媒体210の反射光をs偏光とp偏光とに分離し、分離されたs偏光とp偏光とを検出して複数の出力値を得ることができるので、より偽造が困難な識別媒体210を用いることができ、また、半導体レーザ光源300が単数であっても、識別媒体210が真正品であるか否かを判定することができ、結果として、クレジットカード200の真贋を判定することもできる。
【0183】
(第14の実施の形態)
つぎに、本発明の第14の実施の形態にかかる識別装置100について説明する。なお、第14の実施の形態の説明においては、上述した第1から第13の実施の形態の識別装置100の説明と重複する説明を省略する場合がある。なお、第14の実施の形態の識別装置100は、ビームスキャナ560を配設している点において、第4の実施の形態の識別装置100と異なる。
【0184】
図42は、第14の実施の形態の識別装置100の構成を示す図である。第14の実施の形態の識別装置100は、第4の実施の形態の識別装置100の構成に加えて、同図に示すように、半導体レーザ光源300と識別媒体210との間にビームスキャナ560を配設している。なお、制御部700は、対象物真贋判定部710cと、入射角度変化部710d、反射角度変化部710eと、照射光走査部710hと、をさらに含んで構成される。
【0185】
以上の構成において、第14の実施の形態の識別装置100で行われるクレジットカード200の真贋の判定処理について図43を参照して説明する。図43は、第14の実施の形態の識別装置100で行われるクレジットカード200の真贋の判定処理の手順を示すフローチャートである。
【0186】
まず、入射角度(β1)および反射光軸角度(β2)を固定しつつ、半導体レーザ光源300は、光の偏光を照射し(ステップSN−1)、ビームスキャナ560は、ステップSN−1で照射された光の偏光を識別媒体210の光学特性が異なる複数の光学領域に、二次元に走査し(ステップSN−2)、識別媒体210は、ステップSN−2で走査された光の偏光を反射させ(ステップSN−3)、偏光ビームスプリッタプリズム510は、ステップSN−3で識別媒体210から反射した光の偏光をs偏光とp偏光とに分離し(ステップSN−4)、第1のフォトダイオード600aは、ステップSN−4で分離されたs偏光を検出光として検出して出力し、また、第2のフォトダイオード600bは、ステップSN−4で分離されたp偏光を検出光として検出して出力する(ステップSN−5)。ここまでの処理を、入射角度変化部710dと反射角度変化部710eによる制御により入射角度(β1)と反射光軸角度(β2)を変えて繰り返し行い、出力値データを蓄積する(ステップSN−6)。ついで、対象物真贋判定部710cは、ステップSN−6で蓄積した出力値データから、識別媒体210の複数の光学領域の光学特性が記憶部720に記憶されている所定の光学特性であるか否かを判定する(ステップSN−7)。ステップSN−7での判定結果が肯定である場合(ステップSN−8:Yes)、対象物真贋判定部710cは、クレジットカード200は真正品であると判断する(ステップSN−9)。一方、ステップSN−7での判断結果が否定である場合(ステップSN−8:No)、対象物真贋判定部710cは、クレジットカード200は偽造品であると判断する(ステップSN−10)。
【0187】
以上説明したように、第14の実施の形態の識別装置100は、半導体レーザ光源300で照射された光の偏光をビームスキャナ560で識別媒体210の複数の光学領域に走査し、識別媒体210からの光の偏光を偏光ビームスプリッタプリズム510でs偏光とp偏光とに分離し、分離されたs偏光を第1のフォトダイオード600aで検出し、分離されたp偏光を第2のフォトダイオード600bで検出し、当該識別媒体210の持つ光学特性と所定の光学特性とが一致するか否かを対象物真贋判定部710cで判定し、当該判定結果に基づいて、クレジットカード200が真正品であるか否かを判断する。
【0188】
したがって、第14の実施の形態の識別装置100によれば、識別媒体210に光の偏光を走査して照射させ、光学特性が異なる複数の光学領域から構成される識別媒体210の反射光をs偏光とp偏光とに分離し、分離されたs偏光とp偏光とを検出して複数の出力値を得ることができるので、より偽造が困難な識別媒体210を用いることができ、また、半導体レーザ光源300が単数であっても、識別媒体210が真正品であるか否かを判定することができ、結果として、クレジットカード200の真贋を判定することもできる。
【0189】
(第15の実施の形態)
つぎに、本発明の第15の実施の形態にかかる識別装置100について説明する。なお、第15の実施の形態の説明においては、上述した第1から第14の実施の形態の識別装置100の説明と重複する説明を省略する場合がある。なお、第15の実施の形態の識別装置100は、ビームスキャナ560を配設している点において、第8の実施の形態の識別装置100と異なる。
【0190】
図44は、第15の実施の形態の識別装置100の構成を示す図である。第15の実施の形態の識別装置100は、第8の実施の形態の識別装置100の構成に加えて、同図に示すように、液晶パネル540と識別媒体210との間にビームスキャナ560を配設している。なお、制御部700は、対象物真贋判定部710cと、液晶パネル切替部710gと、照射光走査部710hと、をさらに含んで構成される。
【0191】
以上の構成において、第15の実施の形態の識別装置100で行われるクレジットカード200の真贋の判定処理について図45を参照して説明する。図45は、第15の実施の形態の識別装置100で行われるクレジットカード200の真贋の判定処理の手順を示すフローチャートである。なお、ここでの判定処理においては、第1の半導体レーザ光源300aは、波長λ1の光の偏光をy方向に照射するものとし、また、第2の半導体レーザ光源300bも、波長λ2の光の偏光をy方向に照射するものとする。
【0192】
異なる波長(λ1、λ2)の光の偏光を第1の半導体レーザ光源300aおよび第2の半導体レーザ光源300bでそれぞれy方向に照射し(ステップSO−1)、ステップSO−1で照射された光の波長(λ1)の透過と、照射された光の波長(λ2)の反射と、を第1のダイクロイックミラー530aで行い(ステップSO−2)、ステップSO−2で透過された光の波長(λ1、y方向)と、反射された光の波長(λ2、y方向)と、を液晶パネル540で透過させると、(ステップSO−3)、ビームスキャナ560は、ステップSO−3で液晶パネル540から透過した光の波長(y方向のλ1とy方向のλ2)を識別媒体210の光学特性が異なる複数の光学領域に、二次元に走査する(ステップSO−4)。ついで、ステップSO−2で第1のダイクロイックミラー530aを透過した波長(λ1、y方向)と反射された光の波長(λ2、y方向)の方向を切り替えるように液晶パネル切替部710gで液晶パネル540を制御し(ステップSO−5)、x方向の波長(x方向のλ1、x方向のλ2)を液晶パネル540から透過させると(ステップSO−6)、ビームスキャナ560は、ステップSO−6で透過した光の波長(x方向のλ1、x方向のλ2)を識別媒体210の光学特性が異なる複数の光学領域に、二次元に走査する(ステップSO−7)。ついで、ステップSO−4およびステップSO−7で走査された光を識別媒体210に透過させると(ステップSO−8)、第2のダイクロイックミラー530bは、ステップSO−8で識別媒体210を透過した光の波長(x方向のλ1、y方向のλ1)を透過させ、また、ステップSO−8で識別媒体210を透過した光の波長(x方向のλ2、y方向のλ2)を反射させる(ステップSO−9)。ついで、第1のフォトダイオード600aは、ステップSO−9で第2のダイクロイックミラー530bを透過した光(x方向のλ1、y方向のλ1)を検出光として検出して、その値を出力する。また、第2のフォトダイオード600bは、ステップSO−9で反射された光(x方向のλ2、y方向のλ2)を検出光として検出して、その値を出力する(ステップSO−10)。ついで、対象物真贋判定部710cは、ステップSO−10で出力された値から、識別媒体210を構成する複数の光学領域の光学特性が、記憶部720に記憶されている所定の光学特性の情報と一致するか否かを判定する(ステップSO−11)。ステップSO−11での判定結果が肯定である場合(ステップSO−12:Yes)、対象物真贋判定部710cは、クレジットカード200は真正品であると判断する(ステップSO−13)。一方、ステップSO−11での判断結果が否定である場合(ステップSO−12:No)、対象物真贋判定部710cは、クレジットカード200は偽造品であると判断する(ステップSO−14)。
【0193】
以上説明したように、第15の実施の形態の識別装置100は、波長の異なる光の偏光を第1の半導体レーザ光源300aと第2の半導体レーザ光源300bとで照射し、照射された光の偏光を第1のダイクロイックミラー530aで透過、反射させ、第1のダイクロイックミラー530aで透過、反射された光を液晶パネル540に透過させ、さらに第1のダイクロイックミラー530aで透過、反射された光の偏光を液晶パネル540で方向を切り替えて、方向を切り替えた光の偏光を透過させる。そして、識別媒体210からの透過光の偏光を第2のダイクロイックミラー530bで透過、反射させ、第2のダイクロイックミラー530bで透過、反射された光の偏光をそれぞれ第1のフォトダイオード600aと第2のフォトダイオード600bとで検出光として検出し、識別媒体210の持つ光学特性と所定の光学特性とが一致するか否かを対象物真贋判定部710cで判定し、当該判定結果に基づいて、クレジットカード200が真正品であるか否かを判断する。
【0194】
したがって、第15の実施の形態の識別装置100によれば、光学特性が異なる複数の光学領域から構成される識別媒体210に、波長の異なる二つの光の偏光を二次元に走査しながら照射をし、当該波長の異なる二つの光の偏光の向きを切り替えてさらに二次元に走査しながら照射をし、識別媒体210からの透過光の偏光を検出して複数の出力値を得ることができるので、当該識別媒体210の偽造をさらに困難にすることができる共に、識別媒体210が真正品であるか否かを判定することができ、結果として、クレジットカード200の真贋を判定することもできる。
【0195】
(第16の実施の形態)
つぎに、本発明の第16の実施の形態にかかる識別装置100について説明する。なお、第16の実施の形態の説明においては、上述した第1から第15の実施の形態の識別装置100の説明と重複する説明を省略する場合がある。なお、第16の実施の形態の識別装置100は、ビームスキャナ560を配設している点において、第10の実施の形態の識別装置100と異なる。
【0196】
図46は、第16の実施の形態の識別装置100の構成を示す図である。第16の実施の形態の識別装置100は、第10の識別装置100の構成に加えて、同図に示すように、液晶パネル540と識別媒体210との間にビームスキャナ560を配設している。なお、制御部710は、対象物真贋判定部710cと、液晶パネル切替部710gと、照射光走査部710hと、をさらに含んで構成される。
【0197】
以上の構成において、第16の実施の形態の識別装置100で行われるクレジットカード200の真贋の判定処理について図47を参照して簡単に説明する。図47は、第16の実施の形態の識別装置100で行われるクレジットカード200の真贋の判定処理の手順を示すフローチャートである。なお、半導体レーザ光源300は、x方向の光の波長λを照射するものとする。なお、半導体レーザ光源300は、x方向の光の波長λを照射するものとする。なお、半導体レーザ光源300から照射される光の波長λは任意の値である。
【0198】
光の偏光(λ、x方向)を半導体レーザ光源300で照射し(ステップSP−1)、照射された光の偏光(λ、x方向)を液晶パネル540に透過させると(ステップSP−2)、ビームスキャナ560は、ステップSP−2で透過された光の偏光(λ、x方向)を識別媒体210の光学特性が異なる複数の光学領域に、二次元に走査する(ステップSP−3)。ついで、液晶パネル540は、液晶パネル切替部710gの制御により、ステップSP−2で透過された光の偏光の方向を切り換えさせ(ステップS−4)、方向を切り替えた光の偏光(λ、y方向)を透過させる(ステップSP−5)。ついで、ビームスキャナ560は、ステップSP−5で透過した光の偏光(λ、y方向)を識別媒体210の光学特性が異なる複数の光学領域に、二次元に走査する(ステップSP−6)。ついで、ステップSP−3およびステップSP−6で走査された光の偏光が、識別媒体210を透過すると(ステップSP−7)、波長フィルタ550は、ステップSP−7で識別媒体210を透過した光の波長λの光をカットして、波長λ/2の光を透過させる(ステップSP−8)。ついで、フォトダイオード600は、ステップSP−8で透過された波長λ/2の光を検出光として検出して、その値を出力する(ステップSP−9)。ついで、対象物真贋判定部710cは、ステップSP−9で出力された値から、当該識別媒体210の光学特性が、記憶部720に記憶されている所定の光学特性の情報と一致するか否かを判定する(ステップSP−10)。ステップSP−10での判定結果が肯定である場合(ステップSP−11:Yes)、対象物真贋判定部710cは、クレジットカード200は真正品であると判断する(ステップSP−12)。一方、ステップSP−10での判断結果が否定である場合(ステップSP−11:No)、対象物真贋判定部710cは、クレジットカード200は偽造品であると判断する(ステップSP−13)。
【0199】
以上説明したように、第16の実施の形態の識別装置100は、光の偏光を半導体レーザ光源300で照射し、照射された光の偏光を液晶パネル540で透過させ、また、液晶パネル540で方向を切り替えた光の偏光を液晶パネル540でさらに透過させる。そして、識別媒体210の光学特性の異なる複数の領域に、液晶パネル540で透過された光の偏光をビームスキャナ560で二次元に走査し、走査させた光の偏光を識別媒体210に透過させ、識別媒体210からの透過光の波長λの1/2の波長λ/2の光を波長フィルタ550で透過させることで波長λの光をカットし、波長フィルタ550で透過された光の波長λ/2をフォトダイオード600で検出し、当該識別媒体210の持つ光学特性と所定の光学特性とが一致するか否かを対象物真贋判定部710cで判定し、当該判定結果に基づいて、クレジットカード200が真正品であるか否かを判断する。
【0200】
したがって、第16の実施の形態の識別装置100によれば、光学特性が異なる複数の光学領域で構成される識別媒体210に、波長の異なる二つの光の偏光を二次元に走査しながら照射をし、当該波長の異なる二つの光の偏光の向きを切り替えてさらに二次元に走査しながら照射をし、識別媒体210を透過させた光の波長λの光をカットして波長λ/2の光を検出して出力値を得ることができるので、二次高調波特性を識別媒体210の光学特性とすることができ、識別媒体210の偽造をさらに困難にすることができる共に、半導体レーザ光源300が単数であっても、波長変換素子としての識別媒体210を使用したクレジットカード200の真贋の判定を行うことができ、また、識別媒体210の偽造をより困難にすることができる。
【0201】
(第17の実施の形態)
つぎに、本発明の第11から第16の実施の形態にかかる識別媒体210を作製するための識別媒体作製装置800について説明する。
【0202】
図48は、第17の実施の形態の識別媒体作製装置800の構成の一例を示す図である。第17の実施の形態の識別媒体作製装置800は、同図に示すように、ベースフィルム802を巻き付けておくための送り出しロール810と、ベースフィルム802上に金属膜804を形成するための金属膜連続形成装置820と、ベースフィルム802上にレジスト膜806を形成するためのレジスト連続塗布装置830と、レジスト膜806に原盤パターン842を露光するための円筒状フォトマスク840と、レジストパターンを形成するための現像剤スプレイ850と、金属膜804にレジストパターンを転写するためのICP連続エッチャー860と、レジスト膜806を除去するためのレジスト連続除去装置870と、ベースフィルム802を巻き取るための巻き取りロール880と、で構成される。なお、識別媒体作製装置800は、高効率に作製するために、いわゆるロール・ツー・ロール(roll to roll)方式を採用している。
【0203】
送り出しロール810は、予めPETフィルムなどのベースフィルム802を巻き付けておき、ベースフィルム802を金属膜連続形成装置820の位置する方へ送り出す。
【0204】
金属膜連続形成装置820は、送り出しロール810から送り出されたベースフィルム802上に金属膜804を形成し、ベースフィルム802をレジスト連続塗布装置830の位置する方へ送り出す。
【0205】
レジスト連続塗布装置830は、金属膜連続形成装置820から送り出されたベースフィルム802上にレジスト膜806を形成し、ベースフィルム802を円筒状フォトマスク840の位置する方へ送り出す。
【0206】
円筒状フォトマスク840は、識別媒体210に形成される金属構造体214のパターンの原盤となるパターン(原盤パターン842)を持つ透明円筒状基板を有し、また、その内側に紫外線ランプ844を有する。円筒状フォトマスク840は、レジスト連続塗布装置830から送り出されたベースフィルム802上のレジスト膜806に原盤パターン842を接触させながら紫外線ランプ844を点灯させることにより、レジスト膜806に原盤パターン842を露光し、ベースフィルム802を現像剤スプレイ850の位置する方へ送り出す。
【0207】
現像剤スプレイ850は、円筒状フォトマスク840から送り出されたベースフィルム802上のレジスト膜806に現像剤を吹きつけることにより、レジスト膜806上にレジストパターンを形成し、ベースフィルム802をICP連続エッチャー860の位置する方へ送り出す。
【0208】
ICP連続エッチャー860は、現像剤スプレイ850から送り出されたベースフィルム802上のレジスト膜806に形成されたレジストパターンを金属膜804に転写し、ベースフィルム802をレジスト連続除去装置870の位置する方へ送り出す。
【0209】
レジスト連続除去装置870は、ICP連続エッチャー860から送り出されたベースフィルム802上のレジスト膜806を除去する。この除去処理により、金属構造体214が形成されることになる。また、レジスト連続除去装置870は、ベースフィルム802を巻き取りロール880の位置する方へ送り出す。
【0210】
巻き取りロール880は、レジスト連続除去装置870から送り出されたベースフィルム802を巻き取る。
【0211】
以上に説明したように、第17の実施の形態の識別媒体作製装置800は、ベースフィルム802上に金属膜連続形成装置820とレジスト連続塗布装置830により金属膜804とレジスト膜806を形成し、レジスト膜806に円筒状フォトマスク840で原盤パターン842を露光し、レジストパターンを現像剤スプレイ850で形成し、形成したレジストパターンをICP連続エッチャー860で金属膜804に転写し、レジスト膜806をレジスト連続除去装置870で除去することで金属構造体214を形成し、ベースフィルム802を巻き取りロール880で巻き取るので複数の光学領域を有する識別媒体210を作製することができる。
【0212】
(第18の実施の形態)
つぎに、本発明の第11から第16の実施の形態の識別媒体210を作製するための識別媒体作製装置800の別の一例について図49を参照して説明する。なお、第18の実施の形態の説明においては、上述した第17の実施の形態の識別媒体作製装置800の説明と重複する説明を省略する場合がある。
【0213】
図49は、第18の実施の形態の識別媒体作成装置800の構成の一例を示す図である。同図に示すように、第18の実施の形態の識別媒体作製装置800は、ベースフィル802を巻き付けておくための送り出しロール810と、ベースフィルム802上に金属膜804を形成するための金属膜連続形成装置820と、UV硬化樹脂をスプレイするためのUV硬化樹脂スプレイ852と、原盤パターンをUV樹脂に転写するための透明円筒状モールド846と、UV硬化樹脂パターンを金属膜804に転写するためのICP連続エッチャー860と、UV硬化樹脂を除去するためのUV硬化樹脂連続除去装置872と、ベースフィルム802を巻き取るための巻き取りロール880と、で構成される。
【0214】
UV硬化樹脂スプレイ852は、金属膜連続形成装置820から送り出されたベースフィルム802にスプレイ方式でUV硬化樹脂を塗布し、ベースフィルム802を透明円筒状モールド846の位置する方へ送り出す。
【0215】
透明円筒状モールド846は、識別媒体210に形成される金属構造体214のパターンの原盤となる凸凹パターンを持つ透明円筒状基板を有し、また、その内側に紫外線ランプ844を有する。透明円筒状モールド846は、UV硬化樹脂スプレイ852から送り出されたベースフィルム802上のUV硬化樹脂に凸凹パターンを接触させながら、かつ、凸部が樹脂内に食い込んだ後に、紫外線ランプ844を点灯させることにより、UV樹脂に凸凹パターンを転写し、ベースフィルム802をICPエッチャー860の位置する方へ送り出す。
【0216】
ICP連続エッチャー860は、金属膜804にUV硬化樹脂パターンを転写する。なお、透明円筒状モールド846から送り出されたベースフィルム802上にあるUV硬化樹脂の窪んだ箇所が金属膜804の表面まで達していないので、金属フィルムのエッチングができない。そこで、UV硬化樹脂の残渣を除去する。これは、主に酸素を中心とするガス雰囲気中でICPエッチングと同様に行う。また、ベースフィルム802をUV硬化樹脂連続除去装置872の位置する方へ送り出す。
【0217】
UV硬化樹脂連続除去装置872は、ICP連続エッチャー860から送り出されたベースフィルム802上のUV硬化樹脂を除去する。この除去処理により、金属構造体214が形成されることになる。また、UV硬化樹脂連続除去装置872は、ベースフィルム802を巻き取りロール880の位置する方へ送り出す。
【0218】
以上に説明したように、第18の実施の形態の識別媒体作製装置800によれば、ベースフィルム802上に金属膜連続形成装置820により金属膜804を形成し、形成した金属膜804にUV硬化樹脂をUV硬化樹脂スプレイ852で塗布し、UV硬化樹脂に原盤凸凹パターンを透明円筒状モールド846で転写し、UV硬化樹脂パターンをICP連続エッチャー860で金属膜804に転写し、UV硬化樹脂をUV硬化連続除去装置872で除去することで金属構造体214を形成し、ベースフィルム802を巻き取りロール880で巻き取るので、複数の光学領域を有する識別媒体210を作製することができる。
【0219】
(第19の実施の形態)
つぎに、識別媒体作製装置800の別の一例について説明する。なお、第19の実施の形態の説明では、上述した第17から第18の実施の形態の識別媒体装置800の説明と重複する説明を省略する場合がある。
【0220】
上記で説明した第11から第16の実施の形態の識別媒体210は、光学特性が異なる複数の光学領域から構成され、複数のクレジットカード200間で同一のパターンを持っているものである。
【0221】
一方で、個々のクレジットカード200毎に各光学領域に形成される金属構造体214のパターンが異なる識別媒体210を作製することができる。当該識別媒体210は、当該識別媒体210が貼付されるクレジットカード200に固有の番号(例えば暗証番号)に基づいて作製される。第19の実施の形態の識別媒体作製装置800は、このような識別媒体210を作製するためのものである。
【0222】
図50は、第19の実施の形態の識別媒体作製装置800の構成の一例を示す図である。第19の実施の形態の識別媒体作製装置800は、同図に示すように、送り出しロール810と、金属膜連続形成装置820と、レジスト連続塗布装置830と、現像剤スプレイ850と、ICP連続エッチャー860と、レジスト連続除去装置870と、巻き取りロール880と、パターン発生装置900と、電子線描画装置910と、をさらに含んで構成される。すなわち、図48に示す識別装置800を構成する円筒状フォトマスク840に替えてパターン発生装置900および電子線描画装置910を加えた構成となっている。
【0223】
パターン発生装置900は、識別媒体210に形成される金属構造体214のパターンを決定し、電子線描画装置910に対して決定したパターン情報を形成するように指示する。
【0224】
電子線描画装置910は、パターン発生装置900からの指示に基づいて、ベースフィルム802上のレジスト膜806にパターンを露光する。電子線描画装置910は、個々の識別媒体210毎に異なる金属構造体214のパターンを形成するために、オンデマンドにレジスト膜806に露光するパターンを識別媒体210毎に変更していくことが可能である。
【0225】
ここで、パターン発生装置900および電子線描画装置910で行われる金属構造体214のパターンの作製処理について図51を参照して説明する。図51は、パターン発生装置900および電子線描画装置910で行われる金属構造体214のパターンの作製処理の手順を示すフローチャートである。
【0226】
まず、パターン発生装置900は、クレジットカード200の会員番号や暗証番号を特定の関数により暗号を生成(コーディング)する(ステップSR−1)。クレジットカード200には、通常、個々のクレジットカード200毎に会員番号や暗証番号が存在し、これらの番号は個々のクレジットカード200毎に設けられている磁気記録部220やICチップ230内に記憶さているので、これを利用している。なお、対象物が有価証券である場合には証券番号を利用するなど、その対象物に関する固有の番号であればなんでもよい。ついで、パターン発生装置900は、ステップSR−1で生成した暗号から、各光学領域の光学特性を決める(ステップSR−2)。具体的には、照射光のアジマス角φ、入射角度(β1)、反射光軸角度(β2)、識別媒体210からの光(反射光・透過光・散乱光)間の偏光角の変化、楕円率、識別媒体210からの光の波長特性(分光特性)、二次高調波発生光量などを決定する。ついで、パターン発生装置910は、SR−2で決定した各光学領域に求められる光学特性から、金属構造体214のパターンを設計する(ステップSR−3)。金属構造体214のパターンの設計方法としては、FDTD法(有限差分時間領域法)や近接場光相互作用の理論を応用した方法などを用いることができる。ついで、電子線描画装置910は、ステップSR−3で設計したパターンに基づいて、金属構造体214のパターンを作製する(ステップSR−4)。なお、ステップSR−4で作製された金属構造体214のパターンは、レジスト連続塗布装置830により形成されたレジスト膜806に形成してパターンを露光する。
【0227】
以上に説明したように、第19の実施の形態の識別媒体作製装置800によれば、ベースフィルム802上に金属膜連続形成装置820とレジスト連続塗布装置830により金属膜804とレジスト膜806を形成し、パターン発生装置900で決定、設定したパターンに基づいて、ベースフィルム802上のレジスト膜806に電子線描画装置910で形成してパターンを露光し、レジストパターンを現像剤スプレイ850で形成し、形成したレジストパターンをICP連続エッチャー860で金属膜804に転写し、レジスト膜806をレジスト連続除去装置870で除去するので、個々のクレジットカード200毎に光学特性が異なる識別媒体210を作製することができる。
【0228】
不正偽造者が何らかの方法で手に入れた識別媒体210を偽造のクレジットカード200に貼り付けることにより、真正品であるクレジットカード200と見分けがつかなくなり、不正行為を可能にしてしまう。そこで、第19の実施の形態の識別媒体作製装置800により作製した識別媒体210によれば、個々のクレジットカード200毎に識別媒体210の光学領域を異なるものにすることができ、上記不正行為を防止することができる。
【0229】
次に、第19の実施の形態の識別媒体作製装置800によりクレジットカード200に固有の番号(会員番号や暗証番号)に基づいて作製された識別媒体210を設けたクレジットカード200の真贋の判定処理について図52を参照して説明する。なお、この判定処理を行う識別装置100の構成は、第11から第16の実施の形態の識別装置100の構成と同じであるので、構成の説明については省略し、対象物真贋判定部710cで行われる処理について説明する。
【0230】
図52は、クレジットカード200に固有の番号(会員番号や暗証番号)に基づいて作製された識別媒体210を設けたクレジットカード200の真贋の判定処理の手順を示すフローチャートである。なお、クレジットカード200の磁気記録部220やICチップ230に記憶されているクレジットカード200に固有の番号(会員番号や暗証番号)を既に取得しているものとする。
【0231】
まず、フォトダイオード600(第1のフォトダイオード600a、第2のフォトダイオード600b)で検出光を検出してその値を出力されると、対象物真贋判定部710cは、識別媒体210の光学特性情報(暗号)を解読(デコーディング)する(ステップSS−1)。ついで、対象物真贋判定部710cは、ステップSS−1で解読して得られた暗号と、予め取得したクレジットカード200に固有の番号(会員番号や暗証番号)と、を照合する(ステップSS−2)。ステップSS−2で照合し、ステップSS−1で解読して得られた番号と、クレジットカード200に固有の番号とが一致する場合(ステップSS−3:Yes)、対象物真贋判定部710cは、クレジットカード200は真正品であると判断する(ステップSS−4)。一方、ステップSS−1で解読して得られた番号と、クレジットカード200に固有の番号とが一致しない場合(ステップSS−3:No)、対象物真贋判定部710cは、クレジットカード200は偽造品であると判断する(ステップSS−5)。
【0232】
以上に説明したように、個々のクレジットカード200毎に、識別媒体210の光学特性から暗号を解読することで、クレジットカード200の真贋を判定できるので、当該識別媒体210をクレジットカード200に設けることにより、不正偽造者の不正行為をより困難にすることができる。
【0233】
(第20の実施の形態)
つぎに、本発明の第20の実施の形態にかかる識別媒体210について説明する。第20の実施の形態の識別媒体210は、ランダムなパターン形状である金属構造体214を有する点に特徴を有する。
【0234】
識別媒体210が有する金属構造体214が、複数のクレジットカード200間で、同一のパターン形状である場合には、その偏光特性、波長スペクトル、高調波発生特性もクレジットカード間で同一とある。従って、識別媒体210の光学特性が読み取られ、識別媒体210の偽造を一度でも行うことができれば、大量の識別媒体210の偽造を許すことになる。
【0235】
例えば、特開2000−306058号公報(特許文献4)に記載の識別媒体210(図53参照)は、基材252の上部に光吸収物質254(金属構造体214)がランダムなパターンで形成されているものであり、その吸光特性が狭帯域の光吸収ピークを有している特殊な材料となっている。識別に使う光として、吸収ピークと一致した波長の光とこれとわずかに発光波長のずれた光を用い、両者の反射光強度を比較する。識別媒体210が本物である場合には、両者に差が出るが、偽者である場合には、狭帯域の特殊な材料を使用しておらず、二つの波長に関して反射鏡強度の差が出ないため、偽者と判定することができる。また、同図に示す光吸収物質254(金属構造体214)は、周知のオフセット印刷法、スクリーン印刷法、グラビア印刷法、フレキソ印刷法、凸版印刷法などの印刷法、感熱転写法、加圧転写法などの転写法を用いて基材252の上部に配設されるものである。
【0236】
したがって、複数のクレジットカード間ではまったく同一のパターン形状となるので、一度、狭帯域の吸収スペクトルを持つ識別媒体210と同じ吸収スペクトルを持つ識別媒体210が入手できれば、容易に大量の識別媒体の偽造を行うことができる。即ち、光吸収スペクトルも、識別媒体210の移動に対する反射光変動も同一の偽物を大量に作製することができてしまう。
【0237】
そこで、識別媒体210が有する金属構造体214のパターン形状は、複数のクレジットカード200間で異なることが望ましい。
【0238】
図4に示す識別媒体210における卍の線の太さ、パターンの方向(Chirality)、字の折れている角度(図54中のφを参照)により、金属構造体214に光を照射した際に、これから反射または透過される偏光特性は変化する。また、図23に示す識別媒体210のL時構造の金属構造体214の寸法、大きさなどにより偏光特性、波長スペクトル、高調波発生特性が変化する。
【0239】
そこで、コンピュータなどを用いて発生させた乱数に基づいて、ランダムに個々の識別媒体210ごとに金属構造体214のパターンを変化させて識別媒体210を作製する。金属構造体214のパターンを変化させて識別媒体210を作製した場合は、個々の識別媒体210ごとに光学特性がランダムに異なることになる。即ち、識別媒体210の偏光特性、波長スペクトル、高調波発生特性に関し、識別媒体210ごとに個体差を持つことになる。さらにパターン寸法が100nm以下であるため、偽造は殆ど不可能にすることができる。
【0240】
第20の実施の形態の識別媒体210の作製処理について図55を参照して説明する。図55は、第20の実施の形態で行われる識別媒体210の作製処理の手順を示すフローチャートである。
【0241】
まず、個々の識別媒体210ごとにコンピュータなどにより乱数を発生させ(ステップST−1)、ステップST−1で発生させた乱数に基づいて、金属構造体214のパターンを設計する(ステップST−2)。
【0242】
ついで、ステップST−2で設計したパターンに基づいて、金属構造体214のパターンを作製する(ステップST−3)。ここでは、フォトリソグラフィ・エッチング、またはリフトオフで作製する。個々でのフォトリソ工程におけるパターン描画方法としては、パターンが個々の識別媒体210ごとに異なるので、いわゆるフォトマスクを使うことはできない。電子線(EB)直接描画、紫外線と米国テキサスインスツルメンツ社製DMD(Digital Micro-mirror Device)、FIB(Focused Ion Beam)、紫外線レーザのラスタスキャン、ベクトルスキャンなどを用いて、コンピュータ情報から直接描画を行う、いわゆるマスクレスフォトリソグラフィー技術を用いる。
【0243】
ついで、ステップST−3で作製した金属構造体214に照射光を照射し、識別媒体210からの反射光または透過光の波長特性、偏光特性(楕円率・長軸角)、二次高調波発生特性、およびこれらの角度依存特性などの光学特性を測定する(ステップST−4)。
【0244】
ついで、ステップST−4で測定した光学特性に基づいて、識別媒体210個体に対する暗号をコーディング(生成)する(ステップST−5)。ついで、ステップST−5で生成した暗号をクレジットカード200に付帯する磁気記録部220やICチップ230に記録する(ステップST−6)。なお、暗号をクレジットカードに印刷する構成であってもよい。ついで、ステップST−5で生成した暗号と、クレジットカード200の識別番号(会員番号や暗証番号)との関連付けをデータセンターなどに記録する(ステップST−7)。
【0245】
ここまでの処理を実行することにより、乱数に基づいて設計したパターンの金属構造体214を有する識別媒体210が作製される。
【0246】
上記で説明した処理を実行することにより、クレジットカード200の磁気記録部220やICチップ230には、コンピュータなどにより発生された乱数に基づいて生成された暗号が記録されることされることとなる。したがって、この暗号は個々の識別媒体210ごとに異なるものとなる。
【0247】
次に、上記で説明した、乱数に基づいて作製された識別媒体210を設けたクレジットカード200の真贋の判定処理について図56を参照して説明する。なお、この判定処理を行う識別装置100の構成は、第1から第10の実施の形態の識別装置100の構成と同一であるので、構成の説明については省略し、対象物真贋判定部710cで行われる処理について説明する。
【0248】
図56は、乱数に基づいて作製された識別媒体210を設けたクレジットカード200の真贋の判定処理の手順を示すフローチャートである。なお、暗号とクレジットカード200の識別情報とを関連付けた情報がデータセンターに予め登録されているものとする。
【0249】
まず、クレジットカード200の磁気記録部220やICチップ230に記録されている暗号を読み取る(ステップSU−1)。ついで、ステップSU−1で読み取った暗号をデコーディング(解読)する(ステップSU−2)。ステップSU−1およびステップSU−2の処理を実行する一方で、識別媒体210の光学特性を測定する(ステップSU−3)。
【0250】
ついで、ステップSU−2でデコーディングされた情報と、ステップSU−3で測定した識別媒体210の光学特性とを照合する(ステップSU−4)。ステップSU−4で照合し、一致する場合(ステップSU−5:Yes)、ステップSU−1で読み取った暗号と、クレジットカード200の識別情報(会員番号や暗証番号)との組み合わせと、予めデータセンターに登録されている暗号と識別番号との組み合わせとをさらに照合する(ステップSU−6)。ステップSU−6で照合し、一致する場合(ステップSU−7:Yes)、クレジットカード200は、真製品であると判断する(ステップSU−8)。
【0251】
また、ステップSU−4で照合し、一致しない場合(ステップSU−5:No)、またはステップSU−7で照合し、一致しない場合(ステップSU−8:No)、クレジットカード200は偽造品であると判断する(ステップSU−9)。
【0252】
第20の実施の形態の識別媒体210によれば、ICチップ230に盛り込まれた暗号キーが一度解読され、ICチップが偽造されたとしても、真製品に設けられた識別媒体210の持つ光学特性と異なっていれば、またデータセンターに登録されている暗号と異なっていれば偽造品と判断することができる。
【0253】
また、たとえ100nm以下のパターンを作製可能な方法で識別媒体210を偽造しようとしても、クレジットカード200毎にその光学特性が異なるので、本物と同じ光学特性を示す識別媒体210を作製することはできない。
【0254】
即ち、ナノメータオーダーの加工技術は非常に高度で、もともと容易に偽造することはできない上に、個々の識別媒体210の光学特性はランダムに異なっているため、偽造を非常に困難にすることができる。
【0255】
たとえ、上記作製方法に基づいて、識別媒体210を作製し、これの光学特性から得られる暗号を記録したICチップなどを含めて偽物を作製しても、データセンターには暗号と、識別情報との関連を示すデータがないので、偽物であると判断することができる。
【0256】
なお、上記で説明した、乱数に基づいて作製された金属構造体214を有する識別媒体210は、第11から第16の実施の形態に適用される識別媒体210と同様に、光学特性の異なる複数の光学領域から構成されるものであってもよい。
【0257】
なお、上記で説明した作製方法を、特表2006−507517号公報(特許文献5)に開示されているワイヤーグリッド偏光子256(図57参照)の作製に適用することができる。即ち、発生させた乱数に基づいて、ワイヤーグリッド偏光子256のグリッドの延長方向(同図参照)を決定することで、クレジットカード200間でパターンが異なる金属構造体214を有するワイヤーグリッド偏光子256などの偏光デバイス(識別媒体210)を作製することができる。
【0258】
(第21の実施の形態)
つぎに、本発明の第21の実施の形態にかかる識別媒体210について説明する。なお、第21の実施の形態の説明においては、上述した第20の実施の形態の識別媒体210の説明と重複する説明を省略する場合がある。
【0259】
第21の実施の形態の識別媒体210は、ブロック共重合体に作製される構造(一般的にはミクロ相分離構造)を用いて作製される。ブロック共重合体とはポリマー材料の一種である。通常、ポリマーは鎖のように細長い分子であるが、ブロック共重合体とは二種類以上の異なるポリマー分子が結合した複合ポリマーである。なお、ここでは、図58に示すように、二種類のポリマー分子鎖(ポリマー分子鎖Aとポリマー分子鎖B)からなるブロック共重合体を用いて作製される識別媒体210ついて説明する。
【0260】
ブロック共重合体を構成する二つのポリマー分子鎖は、大体の場合、水と油のようにはじく性質があり、お互いに分離しようとする。もしも、二つのポリマーを単に混ぜただけであれば、水と油のように分離してしまう。しかし、ブロック共重合体は、二つのポリマー分子鎖が分子レベルで互いに結合しているため、巨視的には分離することができない。その結果、即ち、数nm〜数百nm程度のナノサイズに相分離する。
【0261】
この相分離はミクロ相分離と呼ばれ、自己組織化によって発生するナノ構造である。ミクロ相分離によって生じるドメインの大きさは、ポリマー分子鎖の長さ(分子量)で決まる。ポリマー分子鎖が短いとドメインは小さく、長いと大きくなる。また、二つのポリマー分子鎖の長さの比を変化させることによって、図59に示すように、海島(ドット状)構造からシリンダ(円柱状)構造へ、さらには共連続(三次元網目状)構造、そしてラメラ(二つの相が平面状に相互に積層した層状)構造へと変化させることができる。
【0262】
つまり、ブロック共重合体を構成する二つのポリマー分子鎖の長さ、および長さの比を制御することによって、様々な形態及び大きさのナノ構造を自在に作ることが可能となる。分子量としては数万〜50万程度であり、その大きさで相分離構造の大きさが変わる。ポリマー分子の分子量比が概ね50/50である場合はラメラ構造に、65/35である場合にはシリンダ構造に、80/20である場合には海島構造になる。
【0263】
ブロック共重合体はリビング重合法やリビングアニオン重合と呼ばれる合成法により合成する。リビング重合法を用いることによって、所望のナノ構造に対応した長さ、および長さの比を持ったブロック共重合体を合成することができる。
【0264】
図60は、ブロック共重合体の自己組織化によって形成されたミクロ相分離構造の一例を示す図である。例えば、ポリマー分子鎖の長さの比を変化させることによって、ドット状(海島構造)から円柱状(シリンダ構造)へと変化させることができる。また、ポリマー分子鎖の長さの比を変化させることで、連続的なラメラ構造体(図61参照)を作製することもできる。
【0265】
このような構造は、キャスト法またはスピンコーティング法により、ブロック共重合体の溶液(一般的に数%〜0.1%程度の濃度)を基板上に塗布し、膜形成をする。その後、ブロック共重合体の二つのポリマーの両方に関してガラス転移点温度(Tg)以上の温度にアニールしてミクロ相分離構造を成長させる。
【0266】
ここで、第21の実施の形態で行われるミクロ相分離構造体を用いた金属構造体214の作製工程の一例について図62を参照して説明する。図62は、第21の実施の形態で行われるミクロ相分離構造体を用いた金属構造体214の作製工程の一例を示す図である。
【0267】
(1)金属構造体214を作製する上で必要なベース材料260を作製する。なお、ベース材料260としては、無機材料あるいは有機材料の固い基板、または柔らかいフィルムなどを用いる。
【0268】
(2)(1)で作製したベース材料260の上部に、金属構造体214となる金属膜262をスパッタや蒸着などにより薄膜として形成する(金属膜形成)。なお、金属膜260としては、好ましくは、金、銀、銅などを用いることができる。また、白金、アルミニウム、クロム、鉄などを用いることもできる。また、膜厚としては、数十nm〜数百nm程度が一般的であるが、必要な機能を得るためには特にこれに制限されるわけではない。
【0269】
(3)(2)で形成した薄膜の金属膜262上にブロック共重合体溶液を塗布し、前述したガラス転移温度(Tg)以上のアニールを適宜加え、ミクロ相分離構造264を金属膜上に作製する(ミクロ相分離構造膜形成)。この時のブロック共重合体材料としてはPS-b-PIやPS-b-PMMA(PS:ポリスチレン、PI:ポリイソプレン、PMMA:ポリメタクリル酸メチル)を用いる。ここでは一例として、PS-b-PIについては、PIが島として海島構造を形成するように、または、PS-b-PMMAについては、PSが島として海島構造を形成するように、ブロック共重合体のポリマー分子間の分子量比(概ね80/20)を定める。
【0270】
(4)(3)で形成したミクロ相分離構造体264の海部分266を除去する。具体的には、使用するジブロック共重合体がPS-b-PIの場合でPIが島部分になるようにジブロック共重合体のポリマー分子量比を定めた場合は、ミクロ相分離構造体264にOsO4(酸化オスミウム)を作用させることで、PI相を架橋させると同時にOsがドープされる。これによりPIのエッチング耐性が向上する。この後、ドライエッチングによりPSのみを除去することによりPIの島部分のみを残すことができる。また、使用するジブロック共重合体がPS-b-PMMAの場合(PSが島)、上記と同様にアニールなどで、ミクロ相分離構造264を形成した後、酸素プラズマエッチングにより、PMMAを除去し、PSの島のみを残す。これは、PSの酸素プラズマに対する耐性がPMMAの約3倍程度だからである。このようにしてポリマードット268を形成する(ポリマードット形成)。
【0271】
(5)塩素系のエッチングガスを用い、ICP(誘導性結合プラズマ)エッチャーなどのドライエッチングにより、金属膜262をエッチングする(金属膜エッチング)。この時、ポリマードットがいわゆるエッチングマスクとして働き、ミクロ相分離構造体の島部分のパターンが金属膜262に転写される(パターンニング)。
【0272】
(6)酸素プラズマ、または、PGMEA(プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート)などの溶剤により、ポリマードット268を除去する(ポリマードット除去)。これにより、金属膜262のパターニングが完了し、金属構造体214が作製される。この金属膜262のパターンはドット形状をしている。
【0273】
続けて、第21の実施の形態で行われるミクロ相分離構造体を用いた金属構造体214の作製工程の他の一例について図63を参照して説明する。図63は、第21の実施の形態で行われるミクロ相分離構造体を用いた金属構造体214の作製工程の一例を示す図である。なお、ここでは、いわゆるリフトオフ法による作製工程の一例を説明する。
【0274】
(1)金属構造体214を作製する上で必要なベース材料260を作製する。なお、ベース材料260としては、無機材料あるいは有機材料の固い基板、または柔らかいフィルムなどを用いる。
【0275】
(2)(1)のベース材料260の上部にミクロ相分離構造体264を形成する(ミクロ相分離構造膜形成)。一例を挙げれば、ブロック共重合体材料としてPS-b-PIを用いる場合、PIが島として海島構造を形成するように、ブロック共重合体のポリマー分子間の分子量比を定める。
【0276】
(3)(2)で形成したミクロ相分離構造体264におけるPIの島部分だけを、酸素プラズマによって除去することにより、孔をもつPS膜(ポリマー孔270)を形成する(ポリマー孔形成)。
【0277】
(4)(3)で形成したポリマー孔270の上部に金属構造体214となる金属膜262をスパッタや蒸着などで薄膜として形成する(金属膜形成)。なお、金属膜262としては、金、銀、銅などを用いる。また、膜厚としては、数十nm〜数百nm程度が一般的であるが、必要な機能を得るためには特にこれに制限されるわけではない。孔の部分は基板表面に金属が付着し、それ以外の部分はPS上に付着する。
【0278】
(5)溶剤、例えばトルエン、テトラヒドロフランなどにより、PSのみを除去すると同時に、PS上の金属膜262を除去する(リフトオフ)。これにより、PIの島部分のパターンが転写された金属パターン214が基板上に形成され、金属構造体214が作製される。この金属膜262のパターンはドット形状をしている。
【0279】
上記で説明した、ミクロ相分離構造体を用いた金属構造体214の作製工程によれば、金属構造体214のドットパターンは、容易に直径が数nm〜100nm程度のドットを作製することができる。
【0280】
さらに、大きな特徴は、ドットの直径、ドット間の間隔は必ずしも均一ではなく、多くの場合、バラツキが大きい。そのバラツキの程度は、ミクロ相分離構造体をスピンコートなどで基板上に形成する際に偶発的に決まる。
【0281】
したがって、形成される金属ドットの直径や間隔は作製される度に異なり、偶然に決定される。つまり、個体差が生じ、まったく同じパターンになるということがない。
【0282】
識別媒体210の真偽を判定する際に用いられる光の波長よりも充分小さい金属ドット構造体に光を照射した場合、そこからの反射光および透過光の偏光や波長スペクトルは金属ドットの大きさと間隔で決まる(実際は金属ドットの材料と周囲の誘電体の屈折率も影響するが、これらについてはここでは一定であるので、変化しない)。
【0283】
金属ドットの直径や間隔が偶然に決定され、個体差が生じるということは、この識別媒体210の識別を行う際に識別媒体210からの反射光や透過光も個々の識別媒体210について個体差が生じる。この反射光や透過光から、識別情報を作成すれば、偽造は不可能となる。
【0284】
なお、上述したミクロ相分離構造を用いて作製されるランダムなパターンの金属構造体214を有する識別媒体210の作製処理は、発生させた乱数に基づいて作製された金属構造体214を有する識別媒体210の作製処理と同様であるため、ここでは省略する。また、上述したミクロ相分離構造体を用いて作製される識別媒体210(金属構造体214)を設けたクレジットカード200の真贋の判定処理については、上述した乱数に基づいて作製された識別媒体210を設けたクレジットカード200の真贋の判定処理と同様であるため、ここでは省略する。
【0285】
このミクロ相分離構造を用いた金属構造体214を有する識別媒体210によれば、ICチップ230に盛り込まれた暗号キーが一度解読され、ICチップが偽造されたとしても、真製品に設けられた識別媒体210の持つ光学特性と異なっていれば、またデータセンターに登録されている暗号と異なっていれば偽造品と判断することができる。
【0286】
また、ミクロ相分離構造を用いて作製された金属構造体214を有する識別媒体210は、個体ごとにその光学特性が異なるので、たとえミクロ相分離構造を用いた方法により識別媒体210を偽造しても、本物と同じ光学特性を示す識別媒体は作製できない。
【0287】
また、ミクロ相分離構造によるナノメータオーダーの加工技術は非常に高度で、容易に偽造することはできないし、例えミクロ相分離構造のテクノロジーを偽造者が修得したとしても、その個々の特性は偶然で決まるため、偽造は非常に困難である。
【0288】
たとえ、ミクロ相分離構造を用いて金属構造体214を作製する方法で、識別媒体210を作製し、これの光学特性から得られる暗号を記録したICチップなどを含めて偽物を作製しても、データセンターには暗号と、識別情報との関連を示すデータがないので、偽物であると判断することができる。
【0289】
なお、上記で説明した、ミクロ相分離構造を用いて作製された金属構造体214を有する識別媒体210は、第11から第16の実施の形態に適用される識別媒体210と同様に、光学特性の異なる複数の光学領域から構成されるものであってもよい。
【0290】
また、ここでは、特に、ドット状(海島構造)のミクロ相分離構造体を用いた場合について説明したが、特にこれに制限されるものではなく、柱状、ジャイロイド状、ラメラ状のミクロ相分離構造についてもまったく同様の構成、作製方法、手順により、同様の効果を得ることができる。
【0291】
特に、図61に示すような連続的なラメラ構造を用いて金属薄膜をパターニングすると、特表2006−507517号公報(特許文献5)に開示されているワイヤーグリッド偏光子256と同じ原理により、偏光選択特性を有することとなる。即ち、照射される識別媒体210における各箇所で、選択される偏光方向をランダムに変化させることができる。
【0292】
(第22の実施の形態)
つぎに、本発明の第22の実施の形態にかかる識別媒体210について説明する。なお、第22の実施の形態の説明においては、上述した第20から第21の実施の形態の識別媒体210の説明と重複する説明を省略する場合がある。
【0293】
第22の実施の形態の識別媒体210は、ミクロ相分離構造体を用いて作製した金属構造体214を有するものである。具体的には、ブロック共重合体の自己組織化により形成されるミクロ相分離構造を用いて作製される金属構造体214を有するものである。なお、第22の実施の形態の識別媒体210は、特許第2980899号(特許文献6)、および上述した非特許文献5に記載の技術を利用して作製されるものである。
【0294】
第22の実施の形態で行われるミクロ相分離構造体を用いた金属構造体214の作製工程の一例について図64を参照して説明する。図64は、ミクロ相分離構造体を用いた金属構造体214の作製工程、詳細には、金属・有機ポリマー複合構造体の製造工程の一例を示す図である(特許文献6参照)。
【0295】
(1)金属と親和性のあるポリマー鎖と金属と親和性の無いまたは低いポリマー鎖とが各々の末端で結合したブロックコポリマー及び金属イオンを、それらが溶解可能な金属イオンを還元する能力がある高沸点の溶剤と低沸点の溶剤とから成る混合溶媒に溶解する。
【0296】
(2)(1)の工程によりブロックコポリマーと金属イオンを混合溶媒にした後、低温、すなわち、低沸点の溶剤の沸点温度に系を保持して、当該沸点溶剤を徐々に蒸発除去する。
【0297】
(3)(2)の工程により低沸点の溶剤が除去されてしまい、系がブロックコポリマーの極めて濃厚な溶液になると、涯ブロックコポリマーからミクロ層分離構造が形成され、それに応じて、金属はイオンの状態で、金属と親和性の或るポリマー鎖の相内に導入される。
【0298】
(4)(3)の工程の後、高温、すなわち、高沸点の溶剤の沸点温度に系を加熱することにより、当該高沸点溶剤を除去しながら金属イオンの還元反応を進行させる。
【0299】
(5)ミクロ相分離構造が次第に安定化するとともに、還元によって生じた金属構造体ミクロ相分離構造の一方のポリマーの相(金属構造体と親和性の或るポリマー鎖の相)内に配置された金属・有機ポリマー構造体が得られる。
【0300】
図65は、上記(1)〜(5)の工程を経て製造されたミクロ相分離構造を示す図である。同図に示すように、ミクロ相分離構造により自己組織的に形成される構造の中に、直径が数nm〜100nm程度の金属ドット(金属構造体214(Pdクラスター))が自己組織的に配置されている。
【0301】
このような構造は、金属ドットの直径、ドット間の間隔及び金属ドットの配置は必ずしも均一ではなく、多くの場合、バラツキが大きい。そのバラツキの程度は、ミクロ相分離構造体をスピンコートなどで基板上に形成する際に偶発的に決まる。
【0302】
したがって、形成される金属ドットの直径や間隔は作製される度に異なり、偶然に決定される。つまり、個体差が生じ、まったく同じパターンになるということがない。
【0303】
識別媒体210の真偽を判定する際に用いられる光の波長よりも充分小さい金属ドット構造体に光を照射した場合、そこからの反射光および透過光の偏光や波長スペクトルは金属ドットの大きさと間隔で決まる(実際は金属ドットの材料と周囲の誘電体の屈折率も影響するが、これらについてはここでは一定であるので、変化しない)。
【0304】
金属ドットの直径や間隔が偶然に決定され、個体差が生じるということは、この識別媒体210の識別を行う際に識別媒体210からの反射光や透過光も個々の識別媒体210について個体差が生じる。この反射光や透過光から、識別情報を作成すれば、偽造は不可能となる。
【0305】
なお、第22の実施の形態の識別媒体210の場合も、第20の実施の形態で説明した識別媒体210とそれからコーディングされる暗号を持つクレジットカード200の作製方法、及び、識別方法により真贋判定を行うことができる。また、偽造やハッキングが困難である効果も同様である。
【0306】
なお、上記で説明した、数nm〜100nm程度の金属ドットを包含するミクロ相分離構造としては、他に以下のようなものがある。
【0307】
(1)PS-b-P2VP + Ag 構造 / PS-b-P4VP + Ag 構造
PS-b-P2VP + Ag 構造またはPS-b-P4VP + Ag 構造の作製方法の一例として、Introduction of colloidal into poly(2-vinyl pyridine) microdomains of microphase separated poly(styrene-b-2-vinyl pyridine) film:3. Poly(2-viinyl pyridine) spherical microdomain, Reiko Saito, et.al, Polymer 34, 1183(1993)に、示されているものがある。
【0308】
分子量400000、組成比80/20のPS-b-P2VPをベンゼン溶液からキャスト膜を作製する。その膜に1,4-ジヨードブタンの蒸気を当ててP2VP部分を架橋する。さらに硝酸銀の水/ジオキサン混合溶媒を作用させると、銀イオンとヨウ素イオンが反応し、銀が還元されることにより、銀微粒子をP2VP側に偏析させている。
【0309】
(2)PI-b-P2VP + Pd 構造
分子量30000、分子量比51/49でラメラ構造になる。また、特許第2980899号(特許文献6)に開示の方法によれば、分子量100000、分子量比76/24でラメラ構造になる。ブロックコポリマーのベンジルアルコール/クロロホルム混合溶液にパラジウム(II)アセチルアセトン錯体を添加する。クロロホルムのみ飛ばし、140℃のホットプレート上でキャスト膜を形成する。
【0310】
(3)PS-b-PMMA + Pd 構造
上述した非特許文献5に記載の方法によれば、金属錯体蒸気をミクロ相分離構造に接触、還元させている。ミクロ相分離した膜にパラジウム(II)アセチルアセトン錯体を180℃/N2下で接触させると、PS内部で選択的に金属構造体214が析出される(図66参照)。膜を作る際の塗布溶剤についてはPGMEAが使用可能と思われる。
【0311】
なお、第22の実施の形態では、二種類のブロック共重合体で構成されるジブロックポリマーを用いた場合について説明したが、三種類のブロック共重合体で構成されるトリブロックポリマーや、それ以上の種類のブロック共重合体で構成されるマルチブロックポリマーなどを使用してもよい。
【0312】
つぎに、本発明の識別媒体210に形成される金属構造体214の形状、配列について説明する。
【0313】
従来の金属構造体214は、ナノサイズの金属パターンのカイラリティを利用して、直線偏光を楕円偏光に変換するなど、位相板に相当する機能を有しているが、構造が複雑であり、加工精度の問題から、均一なカイラリティを有する構造を精度良く作製するために、高精度な加工装置を要するという問題がある。また、形状のバラツキにより所望の光学特性が得られないという問題がある。
【0314】
この問題を解決するために、偏光や波長などを制御する金属構造体214として、円柱型形状あるいはドーム型形状(以下「ドット」と呼ぶ)を採用することができる。ドット形状は電子線描画やフォトリソグラフィにおいて最も作製しやすい形状であり、解像度が低い場合でも電子線描画時の電子線エネルギーやフォトリソにおける露光量の調整などにより所望の形状を作製することができる。効果としては構造が単純で作製がしやすく、またそのために特性が安定し、歩留まりが向上し、よってコストが低くなるところにある。
【0315】
図67は、識別媒体(偏光制御素子)210の構成を示す断面図である。識別媒体(偏光制御素子)210は、支持基板218(あるいはベースフィルム802)上に、入射光の回折限界(波長程度)以下のサイズを有する金属構造体(金属微小造体(円柱型構造体))214が波長以下の領域に隣接して配置された金属複合構造体216が、周期的に配列した構造を有している。光は上方の金属構造体(金属微小構造体)214の存在する面から入射され、反射型の識別媒体(偏光制御素子)214として利用する場合には反射光を、透過型の識別媒体(偏光制御素子)214として利用する場合には透過光を、成分分離型の識別媒体(偏光制御素子)214として利用する場合には透過光と反射光の両方の成分を、偏光制御された出射光として利用する。
【0316】
図68−1〜図68−3は、金属複合構造体216の周期配列の例を示しており、図68−1は正方格子上の格子点に配列した場合、図68−2は六方格子上の格子点に配列した場合、図68−3はストライプ状に配列した場合の構成を示す上方視図である。周期構造は識別媒体(偏光制御素子)210の角度依存性や波長依存性を与えるものであり、識別媒体(偏光制御素子)210の使用目的に応じて、対称性や周期、ピッチなどを調整する。
【0317】
この識別媒体(偏光制御素子)210に使用する支持基板218は、透過型の素子を構成する場合には、高効率化のために可視領域の波長において吸収の低い材料が好ましく、石英ガラスや、BK7、パイレックス(登録商標)などの硼珪酸ガラス、CaF2、Si、ZnSe、Al23などの光学結晶材料、PET(polyethylene terephthalate)やポリカーボネート(polycarbonate)などの樹脂基板あるいは樹脂フィルムなどを利用する。また、反射型の素子を構成する場合には、反射率の高い材料が好ましく、上記の光学ガラス、光学結晶材料、樹脂材料に、AlやAuなどの金属膜コーティングを施す。この際の膜厚は、金属中に光がしみ込む表皮深さよりも厚くする必要があり、30nmから100nm程度の膜厚とする。また、誘電体多層膜による全反射コーティングを施したものであっても良い。また、透過光と反射光の両方を利用する場合には、部分反射膜としてCrコーティングなどを利用する。
【0318】
つぎに、識別媒体(偏光制御素子)210における偏光状態を変調する機構となる金属構造体(金属微小構造体)214および金属構造体(金属微小構造体)214の集団による金属複合構造体216について説明する。金属構造体(金属微小構造体)214を構成する材料は表面プラズモンまたは局在表面プラズモンを励起できる材料である必要がある。ここで、表面プラズモンとは、金属と誘電体の界面領域の金属側に励起される電子の集団運動であり、局在表面プラズモンとは、金属による構造が微小になった場合に、金属材料全体に渡って励起される電子の集団運動である。以下では表面プラズモン、局在表面プラズモンを、ともにプラズモンと呼ぶ。プラズモンは、金属構造体(金属微小構造体)214近傍の電磁界と結合し、伝搬光成分に変換されて遠方場へ放出される。伝搬光への変換効率は、金属構造体(金属微小構造体)214により決まる共鳴周波長近傍で最大となる。プラズモンを励起できる金属材料としては、Au、Ag、Pt、Al、Cuなどが利用できる。このような金属構造体(金属微小構造体)214が二つないしは複数個、近接して配置された構造を金属複合構造体216と呼ぶ。
【0319】
図67に示す識別媒体(偏光制御素子)210は、二つの円筒形状の金属ドットが間隔dだけ離れた配置を有する金属複合構造体216により構成されている。各金属構造体(金属微小構造体)214の形状は円筒形状に限る必要はなく、加工の容易さから、半球形状などであっても構わない。ここで、本金属複合構造体216は、入射する光の回折限界に対して十分に小さな領域内に存在している必要があるため、金属構造体(金属微小構造体)214のサイズは制限され、10〜100nmのサイズが好ましい。遠方から照射される光、または遠方で観測される光においては、光の回折限界による制限から、本金属複合構造体216の配置や形状は観測されない。しかしながら、金属複合構造体216に生じるプラズモンおよび近接場光を介したプラズモンの相互作用により、出射される光強度や振動の向きに対する位相差が金属構造体(金属微小構造体)214の大きさや配置に依存して変化する。
【0320】
つぎに、このような方法で作製された金属複合構造体216に入射した光の偏光状態が、構造に依存して変化する原理を、数値計算結果に基づいて説明する。数値計算には、電磁界の運動を記述するマクスウェル方程式を時空間の差分方程式に近似して解く、有限時間領域差分法(FDTD法)を利用した。図69−1、図69−2は、数値計算に使用したモデルを表しており、空気中に存在するサイズ(直径)40nmの二つのAu球における近接する端部の間隔dを0〜80nmまで変化させた場合の、反射遠方場における偏光状態の変化を調べた。Auの光学定数は、屈折率n=0.072、k=1.496を用いた。この値は、金属球が50nm以下程度に小さくなった場合に、金属球のサイズに依存した光学定数の変化を考慮した値である。
【0321】
FDTD法により得られた金属複合構造体216(Au球)近傍の電界分布から遠方場光の特性を得るために、電界分布のフーリエ変換により角度θ=0°の成分を抽出し、図69−1、図69−2に示すx方向とy方向の振幅比と位相差を算出した。40nmのAu微小球のプラズモン共鳴波長近傍である波長544nmを用い、図69−1、図69−2に示すxy面内においてx軸から45°の方向に電界の振動方向をもつ平面波を照射する計算を行った。
【0322】
図70−1は、振幅比を示すグラフであり、dが大きな領域においては振幅比が1に近づき、偏光面(電界の振動方向)が入射光の偏光方向と一致していることがわかる。これに対し、d=0近傍に近づくにつれて、振幅比が増加し、すなわち偏光面がy方向へ傾く。一方、図70−2は、電界のx成分とy成分の位相差を表している。dがゼロに近づくほど、位相差が大きくなり、d=0の場合に位相差が45°程度となる。以上のFDTD法によるシミュレーションの結果から、Au微小球の間隔を制御することにより、偏光面を回転させることができ、また、偏光状態を、例えば直線偏光から楕円偏光に変換することができる。金属材料としてAg微小球を使用した場合にも、同様の計算結果が得られるが、この場合、偏光状態に変化の生じる波長領域はAg微小球のプラズモン共鳴波長近傍である波長400nm近傍であった。
【0323】
金属構造体(金属微小構造体)214は空気中に剥き出しになっている必要はなく、金属構造体(金属微小構造体)214ならびに金属複合構造体216の劣化を防ぐために、むしろ誘電体による保護膜を有しているほうが好ましい。この場合、金属構造体(金属微小構造体)214を被覆する材料の光学定数(屈折率、消衰係数)に依存して金属構造体(金属微小構造体)214内部に励起されるプラズモンの共鳴波長がシフトする。したがって、保護層はプラズモンの共鳴波長を調整する機能も有する。図71は誘電体薄膜(保護層)222により被覆された金属構造体(金属微小構造体)214ならびに金属複合構造体216を有する識別媒体(偏光制御素子)210の一例を示した図である。誘電体薄膜222は吸収の少ない材料により構成される必要があり、ZnS−SiO2などの光記録媒体の保護層として利用される遷移金属酸化物などが利用できる。
【0324】
プラズモンの共鳴波長は、被覆する誘電体材料に依存する他、金属構造体(金属微小構造体)214自身のサイズにも依存して変化する。図72は、ミー散乱理論により解析的に計算した空気中に配置された単一Au微小球の中心部における電界強度をプロットした図である。Au微小球の半径が5nm程度になると、ほとんどサイズには依存しなくなるが、半径25nmの場合と比較して約25nm程度の共鳴波長のシフトが生じ、サイズの増加に伴って電界強度が増強されることが確認された。共鳴波長のシフトと電界強度の増強は、金属材料や誘電体薄膜材料にも依存する。電界強度の増強はAu微小球の体積に比例した電気双極子モーメントの増大を意味しており、その結果、近接場光による相互作用も増強される。したがって、金属構造体(金属微小構造体)214のサイズを変えることにより、識別媒体(偏光制御素子)210の偏光制御特性および動作波長を制御することが可能である。
【0325】
以上の結果から、二つの金属構造体(金属微小構造体)214間の距離を制御することにより、識別媒体(偏光制御素子)210の偏光状態、すなわち旋光角と直交する二方向の位相差を制御できることがわかる。識別媒体(偏光制御素子)210は、支持基板218面内の金属構造体(金属微小構造体)214の配置により位相遅れを制御して偏光制御を行うことが可能であるので、高効率化が可能となっている。また、金属材料を用いているため耐熱性、耐光性に優れた識別媒体(偏光制御素子)210が実現できている。
【0326】
なお、図73−1〜図73−4に示すように、L字、T字、卍状に円柱形上の金属構造体214を支持基板218上に配置してもよい。これらの形状を2次元配列状に支持基板218上に形成することにより、設計自由度が高くすることができ、かつ金属構造とすることで耐熱性や耐光性を向上させることができる。
【0327】
また、図74や図75に示すように、相互に異なる金属材料を組み合わせた構造体(金属構造体214)を用いてもよい。相互に異なる金属材料を組み合わせることにより、金属の種類による光のプラズモン共鳴波長の違いを利用して透過光または反射光に位相差を生じさせ、かつ金属粒子で構成させることで耐熱性を向上させることができる。
【0328】
さらに、図76に示すように、サブ波長格子基板224を形成した上に、金属構造体214を形成してもよい。同図に示すようなサブ波長構造基板において、構造周期を一定とし、単位周期あたりの凹部と凸部の面積比を変調(フィルファクター変調)することにより、透過光の波面制御および偏光制御の双方を可能にすることができる。
【0329】
以上に説明したように、これらの構成を持つ識別媒体(偏光制御素子)210についても本発明の識別装置100に用いることができる。
【産業上の利用可能性】
【0330】
以上のように、本発明にかかる識別装置および当該装置に用いる識別媒体は、クレジットカード、商品券、株式証券、高級ブランド品のなどの真贋の判定をする場合に有用である。
【図面の簡単な説明】
【0331】
【図1】第1の実施の形態の識別装置100の構成を示す図である。
【図2】情報処理装置700の構成の一例を示す図である。
【図3】対象物の一例を示す図である。
【図4】識別媒体の一例を示す図である。
【図5−1】アジマス角φや入射角度(β)を説明するための図である。
【図5−2】反射光のアジマス角と入射光アジマス角との差Δθおよび反射光の楕円率を示す図である。
【図6】第1の実施の形態の識別装置100で行われるクレジットカード200の真贋の判定処理の手順を示すフローチャートである。
【図7】第2の実施の形態の識別装置100の構成を示す図である。
【図8】情報処理装置700の構成の一例を示す図である。
【図9】反射光のアジマス角と入射光アジマス角との差Δθおよび反射光の楕円率を示す図である。
【図10】第2の実施の形態の識別装置100で行われるクレジットカード200の真贋の判定処理の手順を示すフローチャートである。
【図11】第3の実施の形態の識別装置100の構成を示す図である。
【図12】入射光のアジマス角と出力値との関係を示す図である。
【図13】第3の実施の形態の識別装置100で行われるクレジットカード200の真贋の判定処理の手順を示すフローチャートである。
【図14】第4の実施の形態の識別装置100の構成を示す図である。
【図15】第4の実施の形態の識別装置100で行われるクレジットカード200の真贋の判定処理の手順を示すフローチャートである。
【図16】第5の実施の形態の識別装置100の構成を示す図である。
【図17】情報処理装置700の構成の一例を示す図である。
【図18】第5の実施の形態の識別装置100で行われるクレジットカード200の真贋の判定処理の手順を示すフローチャートである。
【図19】第6の実施の形態の識別装置100の構成を示す図である。
【図20】第6の実施の形態の識別装置100で行われるクレジットカード200の真贋の判定処理手順を示すフローチャートである。
【図21】第7の実施の形態の識別装置100の構成を示す図である。
【図22】第7の実施の形態のクレジットカード200の上側(識別媒体210がクレジットカード200に設けられている側)から見た図である。
【図23】識別媒体210に形成される金属構造体214に照射させる光の偏光の向きを説明するための図である。
【図24】x方向とy方向とに識別媒体210に照射した場合の出力値を示す図である。
【図25】第7の実施の形態の識別装置100で行われるクレジットカード200の真贋の判定処理の手順を示すフローチャートである。
【図26】第8の実施の形態の識別装置100の構成を示す図である。
【図27】情報処理装置700の構成の一例を示す図である。
【図28】第8の実施の形態の識別装置100で行われるクレジットカード200の真贋の判定処理の手順を示すフローチャートである。
【図29】第9の実施の形態の識別装置100の構成を示す図である。
【図30】第9の実施の形態の識別装置100で行われるクレジットカード200の真贋の判定処理の手順を示すフローチャートである。
【図31】第10の実施の形態の識別装置100の構成の一例を示す図である。
【図32】識別媒体210へ照射する光の偏光の向きとフォトダイオード600での出力値との関係を示す図である。
【図33】第10の実施の形態の識別装置100で行われるクレジットカード200の真贋の判定処理の手順を示すフローチャートである。
【図34】識別媒体210の構成の一例を示す図である。
【図35】第11の実施の形態の識別装置100の構成を示す図である。
【図36】情報処理装置700の構成の一例を示す図である
【図37】第11の実施の形態の識別装置100で行われるクレジットカード200の真贋の判定処理の手順を示すフローチャートである。
【図38】第12の実施の形態の識別装置100の構成を示す図である。
【図39】第12の実施の形態の識別装置100で行われるクレジットカード200の真贋の判定処理の手順を示すフローチャートである。
【図40】第13の実施の形態の識別装置100の構成を示す図である。
【図41】第13の実施の形態の識別装置100で行われるクレジットカード200の真贋の判定処理の手順を示すフローチャートである。
【図42】第14の実施の形態の識別装置100の構成を示す図である。
【図43】第14の実施の形態の識別装置100で行われるクレジットカード200の真贋の判定処理の手順を示すフローチャートである。
【図44】第15の実施の形態の識別装置100の構成を示す図である。
【図45】第15の実施の形態の識別装置100で行われるクレジットカード200の真贋の判定処理の手順を示すフローチャートである。
【図46】第16の実施の形態の識別装置100の構成を示す図である。
【図47】第16の実施の形態の識別装置100で行われるクレジットカード200の真贋の判定処理の手順を示すフローチャートである。
【図48】識別媒体作製装置800の構成の一例を示す図である。
【図49】識別媒体作製装置800の構成の一例を示す図である。
【図50】第11から第16の実施の形態の識別媒体210を作製するための識別媒体作製装置800の構成の一例を示す図である。
【図51】パターン発生装置900および電子線描画装置910で行われる金属構造体214のパターンの作製処理の手順を示すフローチャートである。
【図52】クレジットカード200に固有の番号に基づいて作製された識別媒体210を設けたクレジットカード200の真贋の判定処理の手順を示すフローチャートである。
【図53】基材252の上部にランダムなパターンで形成されている光吸収物質254を示す図である。
【図54】卍型の金属構造体214を示す図である。
【図55】第20の実施の形態で行われる識別媒体210の作製処理の手順を示すフローチャートである。
【図56】乱数に基づいて作製された識別媒体210を設けたクレジットカード200の真贋の判定処理の手順を示すフローチャートである。
【図57】ワイヤーグリッド偏光子256を示す図である。
【図58】二種類のポリマー分子鎖(ポリマー分子鎖Aとポリマー分子鎖B)からなるブロック共重合体を示す図である。
【図59】ポリマー分子鎖の長さ、およびポリマー分子鎖の長さの比と、ミクロ相分離構造との関係を示す図である。
【図60】ブロック共重合体の自己組織化によって形成されたミクロ相分離構造の一例を示す図である。
【図61】連続的なラメラ構造を示す図である。
【図62】第21の実施の形態で行われるミクロ相分離構造体を用いた金属構造体214の作製工程の一例を示す図である。
【図63】第21の実施の形態で行われるミクロ相分離構造体を用いた金属構造体214の作製工程の一例を示す図である。
【図64】ミクロ相分離構造体を用いた金属構造体214の作製工程の一例を示す図である。
【図65】製造されたミクロ相分離構造を示す図である。
【図66】ポリスチレン(PS)内部で選択的に析出された金属構造体214を示す図である。
【図67】識別媒体(偏光制御素子)210の構成を示す断面図である。
【図68−1】金属複合構造体216の正方格子配列の例を示す図である。
【図68−2】金属構造体216の六方格子配列の例を示す図である。
【図68−3】金属構造体216のストライプ配列の例を示す図である。
【図69−1】数値計算に使用したモデルを示す図である。
【図69−2】数値計算に使用したモデルを示す図である。
【図70−1】数値計算により得られた振幅比を示すグラフである。
【図70−2】数値計算により得られた位相差を示すグラフである。
【図71】誘電体薄膜により被覆された金属構造体(金属微小構造体)214ならびに金属複合構造体216を有する識別媒体(偏光制御素子)210の一例を示す図である。
【図72】ミー散乱理論により解析的に計算した空気中に配置された単一Au微小球の中心部における電界強度をプロットしたグラフである。
【図73−1】識別媒体(偏光制御素子)210を構成する金属構造体(金属微小構造体)214の配列パターンを示す図である。
【図73−2】識別媒体(偏光制御素子)210を構成する金属構造体(金属微小構造体)214の配列パターンを示す図である。
【図73−3】識別媒体(偏光制御素子)210を構成する金属構造体(金属微小構造体)214の配列パターンを示す図である。
【図73−4】識別媒体(偏光制御素子)210を構成する金属構造体(金属微小構造体)214の配列パターンを示す図である。
【図74】識別媒体(偏光制御素子)210の構成を示す図である。
【図75】識別媒体(偏光制御素子)210における金属構造体(金属微小構造体)214のL型配置例を示す図である。
【図76】金属構造体(金属微小構造体)214を、高さが入射光の波長より小さい周期で変調されている周期構造を表面に有している支持基板218上に配置した例を示す図である。
【図77】特許文献1に記載の従来技術を説明するための図である。
【図78】特許文献1に記載の従来技術を説明するための図である。
【図79】特許文献2に記載の従来技術を説明するための図である。
【図80】特許文献3に記載の従来技術を説明するための図である。
【図81】特許文献3に記載の従来技術を説明するための図である。
【図82】非特許文献4に記載の従来技術を説明するための図である。
【図83】非特許文献4に記載の従来技術を説明するための図である。
【図84】反射光スペクトルを示す図である。
【図85】波長510nmと波長700nmにおける視野角に対する反射光強度を示す図である。
【図86】白色電球、蛍光灯、および、白色LEDの発光スペクトルを示す図である。
【符号の説明】
【0332】
100 識別装置
200 クレジットカード(対象物)
210 識別媒体
214 金属構造体
216 金属複合構造体
218 支持基板
220 磁気記録部
222 誘電体薄膜(保護層)
224 サブ波長格子基板
230 ICチップ
240 透明窓
252 基材
254 光吸収物質
256 ワイヤーグリッド偏光子
260 ベース材料
262 金属膜
264 ミクロ相分離構造膜
266 海部分
268 ポリマードット
270 ポリマー孔
300 半導体レーザ光源
300a 第1の半導体レーザ光源
300b 第2の半導体レーザ光源
400 対物レンズ
410 コリメートレンズ
500 偏光板
510 偏光ビームスプリッタプリズム(PBSプリズム)
520 1/4波長板
530 ダイクロイックミラー
530a 第1のダイクロイックミラー
530b 第2のダイクロイックミラー
540 液晶パネル
550 波長フィルタ
560 ビームスキャナ
600 フォトダイオード
600a 第1のフォトダイオード
600b 第2のフォトダイオード
700 情報処理装置
710 制御部
710a 光源回転部
710b 偏光板回転部
710c 対象物真贋判定部
710d 入射角度変化部
710e 反射角度変化部
710f 波長板回転部
710g 液晶パネル切替部
710h 照射光走査部
720 記憶部
730 通信インターフェース部
800 識別媒体作製装置
802 ベースフィルム
804 金属膜
806 レジスト
810 送り出しロール
820 金属膜連続形成装置
830 レジスト連続塗布装置
840 円筒状フォトマスク
842 原盤パターン
844 紫外線ランプ
846 透明円筒状モールド
850 現像剤スプレイ
852 UV硬化樹脂スプレイ
860 ICP連続エッチャー
870 レジスト連続除去装置
872 UV硬化樹脂連続除去装置
880 巻き取りロール
900 パターン発生装置
910 電子線描画装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象物に設けられた識別媒体を光学的に識別する識別装置において、
前記識別媒体に光を照射する照射手段と、
前記照射手段から前記識別媒体に照射された光の反射光、および透過光のうち少なくとも一つの光に含まれる特定の偏光を透過および/または反射させる透過反射手段と、
前記透過反射手段で透過および/または反射された特定の偏光を検出する検出手段と、
前記検出手段で検出した値に基づいて前記識別媒体を識別する識別手段と、
前記照射手段から照射される光の偏光を制御する偏光制御手段、前記照射手段から照射される光の光軸と前記識別媒体との角度を変化させる照射角度変化手段、前記識別媒体から前記検出手段に至るまでの光の光軸と前記識別媒体との角度を変化させる検出角度変化手段のうち少なくとも一つの手段と、
を備えたことを特徴とする識別装置。
【請求項2】
対象物に設けられた識別媒体を光学的に識別する識別装置において、
前記識別媒体に光を照射する照射手段と、
前記照射手段から照射される光の偏光を制御する偏光制御手段と、
前記照射手段から前記識別媒体に照射された光の反射光、および透過光のうち少なくとも一つの光に含まれる複数の波長の光を透過および/または反射させる透過反射手段と、
前記透過反射手段で透過および/または反射された複数の波長の光を検出する検出手段と、
前記検出手段で検出した値に基づいて前記識別媒体を識別する識別手段と、
を備えたことを特徴とする識別装置。
【請求項3】
対象物に設けられた識別媒体を光学的に識別する識別装置において、
前記識別媒体に波長λ(λは任意の値)の光を照射する照射手段と、
前記照射手段から照射される光の偏光を制御する偏光制御手段と、
前記照射手段から前記識別媒体に照射された光の反射光、および透過光のうち少なくとも一つの光に含まれる波長λ/2の光を透過または反射させる透過反射手段と、
前記透過反射手段で透過および/または反射された波長λ/2の光を検出する検出手段と、
前記検出手段で検出した値に基づいて前記識別媒体を識別する識別手段と、
を備えたことを特徴とする識別装置。
【請求項4】
前記識別媒体は、光学特性が異なる複数の光学領域から構成されており、
前記照射手段で照射する光を前記識別媒体の光学特性が異なる複数の光学領域に、一次元、二次元、または三次元的に走査する走査手段をさらに備え、
前記検出手段は、前記走査手段の走査に同期して検出すること
を特徴とする請求項1から3のいずれか一つに記載の識別装置。
【請求項5】
前記識別媒体は、光学特性が異なる複数の光学領域から構成されており、
前記照射手段で照射する光を前記識別媒体の光学特性が異なる複数の光学領域に、一次元、二次元、または三次元的に走査する走査手段をさらに備え、
前記検出手段は、前記走査手段の走査に同期して検出し、
前記識別手段は、前記検出手段で検出した値から検出識別番号または検出記号を求め、求めた前記検出識別番号または前記検出記号と、前記対象物に固有の識別番号または記号と、を比較して識別すること
を特徴とする請求項1から3のいずれか一つに記載の識別装置。
【請求項6】
対象物に設けられる識別媒体であって、
当該識別媒体に照射される光の波長以下の大きさの金属構造体を有し、かつ、光学特性が異なる複数の光学領域で構成され、
前記光学特性は、当該識別媒体に照射される光の偏光、当該識別媒体に照射される光の光軸と当該識別媒体との角度、当該識別媒体からの反射光、および透過光のうち少なくとも一つの光が所定の検出手段に到達するまでの光の光軸と当該識別媒体との角度、当該識別媒体に照射される光の波長、当該識別媒体に照射される光の波長λに対するλ/2の波長の少なくともいずれか一つの光学特性であること
を特徴とする識別媒体。
【請求項7】
対象物に設けられる識別媒体であって、
当該識別媒体に照射される光の波長以下の大きさの金属構造体を有し、かつ、光学特性が異なる複数の光学領域で構成され、
前記光学特性は、当該識別媒体に照射される光の偏光、当該識別媒体に照射される光の光軸と当該識別媒体との角度、当該識別媒体からの反射光、および透過光のうち少なくとも一つの光が所定の検出手段に到達するまでの光の光軸と当該識別媒体との角度、当該識別媒体に照射される光の波長、当該識別媒体に照射される光の波長λに対するλ/2の波長の少なくともいずれか一つの光学特性であり、
前記金属構造体は、パターン形状を有し、
前記パターン形状は、前記対象物に固有の識別番号または記号に基づいて前記光学特性を決定し、決定した光学特性に基づいて前記パターンを設計し、前記設計したパターンに基づいて作製されたものであること
を特徴とする識別媒体。
【請求項8】
対象物に設けられる識別媒体において、
照射される光の波長以下の大きさであって、かつ、パターン形状の金属構造体を有することを特徴とする識別媒体。
【請求項9】
前記金属構造体は、ランダムに作製されたパターン形状を有することを特徴とする請求項8に記載の識別媒体。
【請求項10】
前記パターン形状は、電子的に発生された乱数に基づいて作製されたものであることを特徴とする請求項9に記載の識別媒体。
【請求項11】
前記パターン形状は、前記金属構造体となる金属材料に転写されるブロック共重合体のミクロ相分離構造に基づいて作製されたものであることを特徴とする請求項9に記載の識別媒体。
【請求項12】
前記パターン形状は、ブロック共重合体の自己組織化により形成されるミクロ相分離構造に基づいて作製されたものであることを特徴とする請求項9に記載の識別媒体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5−1】
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【図5−2】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図32】
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【図33】
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【図34】
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【図35】
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【図36】
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【図37】
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【図38】
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【図39】
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【図40】
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【図41】
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【図42】
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【図43】
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【図44】
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【図45】
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【図46】
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【図47】
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【図48】
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【図49】
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【図50】
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【図51】
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【図52】
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【図53】
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【図54】
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【図55】
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【図56】
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【図57】
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【図58】
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【図59】
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【図60】
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【図61】
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【図62】
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【図63】
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【図64】
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【図65】
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【図66】
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【図67】
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【図68−1】
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【図68−2】
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【図68−3】
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【図69−1】
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【図69−2】
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【図70−1】
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【図70−2】
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【図71】
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【図72】
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【図73−1】
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【図73−2】
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【図73−3】
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【図73−4】
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【図74】
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【図75】
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【図76】
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【図77】
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【図78】
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【図79】
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【図80】
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【図81】
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【図82】
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【図83】
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【図84】
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【図85】
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【図86】
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【公開番号】特開2007−276444(P2007−276444A)
【公開日】平成19年10月25日(2007.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−293209(P2006−293209)
【出願日】平成18年10月27日(2006.10.27)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】