説明

警光灯システム

【課題】従来の警光灯システムの持っている点滅変化パターンが単調であり十分な注意を喚起できないという課題を解決する。
【解決手段】駆動装置4から、LED警光灯1に対して、所定周期でLEDを点滅させるLED点滅信号を送り出すとともに、サイレン音を再生するスピーカ3に対して所定周波数のサイレン信号を送り出す。LEDを点滅させる周期は、サイレン信号の周波数の変化周期と同期がとられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、緊急自動車等に備え付けられる警光灯システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
緊急自動車に搭載される従来の警光灯は、回転灯ユニット、点滅灯ユニット、スピーカ、反射板などを同一基台上に配置してなり、電源が供給されることにより回転灯及び点滅灯が作動し、全周囲に警光灯を散乱照射させるものであった。
回転灯の光源は電球であり、閃光数は使用されるモータによって決定されるため、常に一定であった。点滅灯の光源も電球で、点滅回数も点滅を制御する電子回路によって決定されており、常に一定であった。
【0003】
緊急自動車には警察車両、消防車両、救急車両など様々な目的車両があるが、すべて同様の警光灯が搭載されていた。
最近はLEDを光源とした警光灯が開発されており、その警光灯システムの回路ブロック図を図8に示す。
警光灯システムは、車両の屋根などに取り付けられたLED警光灯1aと、LED警光灯1aを点灯駆動するための駆動装置4aとを有している。
【0004】
LED警光灯1aは、その中に、複数のLEDユニット2、スピーカ3、点灯/点滅回路9を備えている。
スピーカ3は、サイレン音などを発声する。点灯/点滅回路9は、周囲の人や車両の注意を喚起するためにLEDユニット2を点灯/点滅させる。
一方、駆動装置4aは、CPUやメモリを含む制御部5aと、パワーアンプ7とを備えている。制御部5aは、制御装置の前面操作部に備えられたサイレンスイッチ6の手動操作に応じて、サイレン音の信号生成や、点灯/点滅回路9のオンオフ信号を出力する。
【0005】
制御部5aは、前記生成したサイレン音の信号をパワーアンプ7に供給する。パワーアンプ7は、スピーカを駆動するのに十分な電力を発生して、回線を通じてLED警光灯のスピーカに供給する。
さらに制御部5aから出力されるオンオフ信号は、回線を通して、LED警光灯1a内の点灯/点滅回路9を起動/停止する。すなわち、制御部5aから点灯/点滅回路9にオン信号が送られると、点灯/点滅回路9は、LEDユニット2を所定のパターンで点灯/点滅させる。
【特許文献1】実開平9−85号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
この点灯/点滅パターンは、点灯/点滅回路9内部の設定ファイル又はメモリに記述されており、駆動装置4a側から容易に変更できないものである。点灯/点滅パターンを変えようとすれば、点灯/点滅回路9の設定を変えるか、点灯/点滅回路9ごと交換しなければならず、変更のために余分な費用が発生してしまう。
つまり、この警光灯システムも基本的には、警光灯に電源を供給するだけで作動するという、従来の電球式の警光灯と同じ考えで構成されているといえる。
【0007】
また、警光灯システムは、周囲の歩行者や走行車両の安全確保のために緊急自動車や道路維持作業車に主に設置されるものであり、そのため、警光灯の存在又は警光灯の存在とともに緊急自動車等の挙動をより早く気づかせるための工夫が求められている。
前記「緊急自動車等の挙動」としては、緊急走行、通常走行、作業/停止中であるのか、交差点で直進、右折、左折するのかなどがある。
【0008】
これらの緊急自動車等の挙動を、警光灯システムの点灯/点滅状態に、情報として盛り込むことができれば、周囲の歩行者や走行車両(以下「看者」と略す)へ、より適切に注意を喚起することができる。
そこで、本発明は、従来の警光灯システムの持っている点灯/点滅パターンを容易に変更することができないために生ずる課題を解決し、緊急自動車等の挙動情報を視覚情報、すなわちLEDユニットの発光パターンとして容易に利用できるようにした警光灯システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の警光灯システムは、スピーカ及び複数個の発光ユニットが基台に配置されてなる警光灯と、前記警光灯の各発光ユニットを独立して点灯制御することのできる制御装置とを備え、前記制御装置は、前記警光灯に対して、所定周期で発光ユニットを点滅させる点滅信号を送り出すとともに、前記スピーカに対して周波数が周期的に変化するサイレン信号を送り出すものであり、前記発光ユニットを点滅させる周期は、サイレン信号の周波数の変化周期と同期がとられていることを特徴とする(請求項1)。
【0010】
この構成によれば、サイレン信号の周波数が高くなる期間中は、発光ユニットを点滅させる周期を短く又は長くし、サイレン信号の周波数が低くなる期間中は、発光ユニットを点滅させる周期を長く又は短くするという制御を行うことができる。
したがって、一定周期の発光ユニット点滅変化パターンに固定される従来の場合と比べて、サイレン音に同期した変化のある点滅変化パターンを作り出すことができ、看者がいち早く警察車両、緊急車両などの区別をすることが可能となり、的確な注意を喚起することができる。
【0011】
また、前記制御装置は、車両が停車中か走行中かを判定するための信号が入力され、この信号に基づく車両の走行/停車状態に応じて、前記発光ユニットを点滅させる周期を変化させるものでもよい(請求項2)。これにより、車両が停車中と走行中で、発光ユニットを点滅させる周期を変えることができるので、看者に対し、緊急自動車等が停車中か走行中かの情報を、視覚的に伝えることができる。
【0012】
また、前記制御装置は、車両が右左折するのかどうかを判定するためのウィンカー信号が入力され、このウィンカー信号に基づく車両の右左折判定に応じて、前記警光灯を流動表示させるものでもよい(請求項3)。この警光灯を流動表示により、車両が右左折する情報を補うことができ、周囲の歩行者や走行車両へ、緊急自動車等の右左折情報を視覚的にわかりやすく伝えることができる。
【0013】
前記制御装置は、車両の速度信号を入力し、この車両の速度信号に基づく車両の速度に応じて、前記発光ユニットを点滅させる周期を変化させるものでもよい(請求項4)。これによれば、車両が高速で走行する期間中は、発光ユニットを点滅させる周期を短く又は長くし、車両が低速で走行する期間中は、発光ユニットを点滅させる周期を長く又は短くするという制御を行うことができる。したがって、固定周期の発光ユニット点滅変化パターンよりも、車両の速度に応じた変化のある点滅変化パターンを作り出すことができ、滅灯状態の走行距離が減少することで、通行人や走行車両からの緊急自動車等の認知度が向上し、また点滅速度から、車両の速度情報を得ることができるため、看者の安全向上にもつながる。
【発明の効果】
【0014】
以上のように本発明の警光灯システムによれば、従来の警光灯システムと比べて発光ユニットの点灯/点滅変化パターンを、当該緊急自動車等の挙動に応じて多くの情報を伝達することができ、十分な注意喚起が行える。
また、従来の警光灯では、点滅させるための専用電子回路を警光灯内に別途設ける必要があったが、制御装置より警光灯の点滅信号を送信することで、この専用電子回路を廃止でき、コスト削減にもつながる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態を、添付図面を参照しながら詳細に説明する。
図1は、本発明の警光灯システムの一部を構成するLED警光灯1の平面図を示す。
LED警光灯1はアルミ材などからなる細長い基台8に、LEDユニット2が多数個配置されたものである。基台8は、車両の屋根に、基台の短手方向が走行方向と一致するように取り付けられる。基台8の中心部には、前方に向けてスピーカ3を取り付けている。
【0016】
LEDユニット2の設置数は限定されないが、図1の例では、前後左右にそれぞれ3つずつ、合計12個取り付けられる。1つのLEDユニット2には、LEDが複数個(例えば3個)並べられている。
図2は、本発明の警光灯システムの回路図である。警光灯システムは、LED警光灯1及びLED警光灯1を駆動するための駆動装置4を備えている。
【0017】
LED警光灯1には、スピーカ3と、LEDユニット2の回路がそれぞれ設置されている。
LEDユニット2は、前記駆動装置4からの各信号線にゲートが接続されたFETを備え、このFETに対して、前記複数個のLEDが並列に接続された構成になっている。このようなLEDユニット2が、前述したように12個配置されている。
【0018】
駆動装置4は、車両内部の操作しやすい場所に取り付けられるもので、制御部5と、この制御部5に付属するサイレンスイッチ6と、LED警光灯1のスピーカ3を駆動するパワーアンプ7とを有する。
前記サイレンスイッチ6は、緊急走行のためにLED警光灯1の点灯や警報音をスピーカ3から発生させる場合などに操作されるスイッチである。
【0019】
前記制御部5は、前記スイッチ6の操作に応じて、信号線に、LED点滅信号を送り出すとともに、前記パワーアンプ7に所定周波数のサイレン信号を送り出す。また、制御部5は、タコメータなどから車両の速度信号と、車両が右左折するのかどうかを判定するためのウィンカー信号を入力している。
制御部5は、中央処理回路(CPU)及びメモリを備えており、車載電源で動作し、LED点滅信号及び所定周波数のサイレン信号を生成する機能を有する。
【0020】
制御部5は、LEDユニット2ごとに異なったパターンの点滅信号を供給できる。つまり、各LEDユニット2を独立して駆動することができるため、複数のLEDユニット2を、1つLEDユニットであるかのように視認させることも可能である。さらに、LED点滅信号パターンをサイレン信号の変化パターンと連動させることでより効果的な注意喚起ができる。車両が停車中か走行中かに応じてLED点滅信号パターンを変えることで、停車・作業中の緊急自動車等への追突防止ができる。車両が右折するか左折するかに応じてLED点滅信号パターンを変えることで交差点などでより早く緊急自動車等の挙動を理解でき、より交通安全への寄与や道路維持作業の作業効率向上などにつながる。
【0021】
図3は、サイレン信号の変化パターンと、これに連動したLED点滅信号パターンの波形を示すグラフである。図3(a)は、サイレン信号の周波数の変化を示し、図3(b)は、LED点滅信号波形を示す。横軸は時間tであり、原点t=0でサイレンスイッチ6をオンにしたものとする。サイレン信号の周波数はなめらかに変化している。これは、パトカーの「ウーウー」という音に相当する。
【0022】
図3(a)に示されるように、サイレン信号は、周波数0から立ち上がり、周波数850Hzと450Hzとの間を往復する。LED点滅信号は、矩形波状のパルス信号からなり、その点滅周期は、速い状態と遅い状態とを繰り返す。
本発明では、サイレン信号の変化と同期してLED点滅信号の点滅パターンを変化させている。すなわち、図3(b)に示したように、サイレン信号の周波数が高い期間には、LEDユニット2の点滅を速くし、サイレン信号の周波数の低い期間には、LEDユニット2の点滅を遅くする。このため、サイレン音の高低の変化とLED警光灯1の点滅の速さが同期して、LED警光灯1が点滅するので、緊急自動車等の接近などを、視覚を通じ、より的確に看者に伝えることができる。
【0023】
図4は、サイレン信号の変化パターンと、これに連動したLED点滅信号パターンのさらに他の関係を示すグラフである。図4(a)は、サイレン信号の周波数の変化を示し、図4(b)は、LED点滅信号波形を示す。サイレン信号の周波数は、780Hzと960Hzとの間をステップ状に変化する。これは、「ピーポーピーポー」という音に相当する。一方、LED点滅信号は、矩形波状のパルス信号からなり、その点滅周期は、速い状態と遅い状態とを繰り返す。
【0024】
この実施例でも、サイレン信号の変化と同期してLED点滅信号の点滅パターンを変化させている。すなわち、図4(b)に示すように、サイレン信号の周波数が高い期間には、LEDユニット2の点滅を速くし、サイレン信号の周波数の低い期間には、LEDユニット2の点滅を遅くする。このため、サイレン音の高低の変化とLED警光灯1の点滅の速さが同期して表示されるので、緊急自動車の接近などを、視覚を通じ、より的確に看者に伝えることができる。
【0025】
図5は、さらに他の実施形態における、LED点滅信号波形を示すグラフである。
この実施形態では、制御部5は、車両の速度信号に基づき、車両が停車中か走行中かを判定する。車両が走行中であると判定すると、LED点滅を短くし、車両が停車中であると判定すると、LED点滅を長くする。したがって、周囲の歩行者や走行車両等の看者に対して、車両が停車中か走行中かの情報を、視覚的に伝えることができ、交通の安全を図ることができる。
【0026】
なお、車両が停車中か走行中かを判定するのに、車両の速度信号以外に、パーキングブレーキの状態信号を利用することも可能である。
図6は、LED警光灯1の正面図である。制御部5は、ドライバが右左折しようとする時に操作するウィンカー信号に基づいて、車両が直進しようとするのか、右折又は左折しようとするのかを判定する。車両が直進すると判定すると、すべてのLEDユニット2の点滅は同時に行うが、車両が左折しようとするときは、点灯したLEDユニット2が右から左に流れるようにLEDユニット2の点滅の位相を調整し(図6(a))、車両が右折しようとするときは、点灯したLEDユニット2が左から右に流れるようにLEDユニット2の点滅の位相を調整する(図6(b))。
【0027】
LED警光灯1は、車両の屋根の上などに設置されているため、これにより、車両の挙動を通行人や走行車両に、車両の右左折情報を目立つようにして伝えることができ、交通の安全を図ることができる。
図7は、さらに他の実施形態における、LED点滅信号波形を示すグラフである。制御部5は、車両の速度信号に基づき、車両の速度を判定する。車両が高速で走行中であると判定すると、LED点滅を短くし、車両が低速で走行中であると判定すると、LED点滅を長くする。
【0028】
図7(a)は、車両の速度の変化を示し、図7(b)は、LED点滅信号波形を示す。図7(a)に示されるように、車両が停止状態からスタートし、速度を上げていくと、LEDの点滅周期は、徐々に短くなっていく。車両が速度を低下させ始めると、LEDの点滅周期は、徐々に長くなる。このように、車両の速度と連動してLED点滅信号の点滅のスピードを変化させることにより、緊急自動車等の動態情報をさらに的確に看者に伝えることができる。
【0029】
以上で、本発明の実施の形態を説明したが、本発明の実施は、前記の形態に限定されるものではない。例えば、警光灯に備えられた発光ユニットとして、発光ダイオード(LED)以外にプラズマ発光素子など他の発光素子を採用することも可能である。その他本発明の範囲内で種々の変更を施すことが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明の警光灯システムの一部を構成するLED警光灯1の平面図である。
【図2】LED警光灯1及びLED警光灯1を駆動するための駆動装置4の回路図である。
【図3】サイレン信号の変化パターンと、これに連動したLED点滅信号パターンの連係波形を示すグラフである。
【図4】サイレン信号の変化パターンと、これに連動したLED点滅信号パターンのさらに他の連係波形を示すグラフである。
【図5】さらに他の実施形態における、LED点滅信号波形を示すグラフである。
【図6】流動表示中のLED警光灯1の正面図である。
【図7】さらに他の実施形態における、LED点滅信号波形を示すグラフである。
【図8】緊急自動車等に備え付けられた従来の警光灯システムの回路ブロック図である。
【符号の説明】
【0031】
1 基台
3 スピーカ
2 LEDユニット
4 駆動装置
5 制御部
6 サイレンスイッチ
7 パワーアンプ


【特許請求の範囲】
【請求項1】
スピーカ及び複数個の発光ユニットが基台に配置されてなる警光灯と、
前記警光灯の各発光ユニットを独立して点灯制御することのできる制御装置とを備え、
前記制御装置は、前記警光灯に対して、所定周期で発光ユニットを点滅させる点滅信号を送り出すとともに、前記スピーカに対して周波数が周期的に変化するサイレン信号を送り出すものであり、
前記発光ユニットを点滅させる周期は、サイレン信号の周波数の変化周期と同期がとられていることを特徴とする警光灯システム。
【請求項2】
複数個の発光ユニットが基台に配置されてなる警光灯と、
前記警光灯の各発光ユニットを独立して点灯制御することのできる制御装置とを備え、
前記制御装置は、前記警光灯に対して、所定周期で発光ユニットを点滅させる点滅信号を送り出すものであり、
前記制御装置は、車両が停車中か走行中かを判定するための信号を入力し、この信号に基づく車両の走行/停車状態に応じて、前記発光ユニットを点滅させる周期を変化させることを特徴とする警光灯システム。
【請求項3】
複数個の発光ユニットが基台に配置されてなる警光灯と、前記警光灯の各発光ユニットを独立して点灯制御することのできる制御装置とを備え、
前記制御装置は、前記警光灯に対して、所定周期で発光ユニットを点滅させる点滅信号を送り出すものであり、
前記制御装置は、車両が右左折するのかどうかを判定するためのウィンカー信号を入力し、このウィンカー信号に基づく車両の右左折判定に応じて、前記警光灯を流動表示させることを特徴とする警光灯システム。
【請求項4】
複数個の発光ユニットが基台に配置されてなる警光灯と、前記警光灯の各発光ユニットを独立して点灯制御することのできる制御装置とを備え、
前記制御装置は、前記警光灯に対して、所定周期で発光ユニットを点滅させる点滅信号を送り出すものであり、
前記制御装置は、車両の速度信号を入力し、この車両の速度信号に基づく車両の速度に応じて、前記発光ユニットを点滅させる周期を変化させることを特徴とする警光灯システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2006−123813(P2006−123813A)
【公開日】平成18年5月18日(2006.5.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−316706(P2004−316706)
【出願日】平成16年10月29日(2004.10.29)
【出願人】(000143695)株式会社パトライト (39)
【Fターム(参考)】