説明

警告装置、警告システム及び警告方法

【課題】速度感を喪失しがちな運転者に警告を与えること。
【解決手段】警告装置1は、車両前方の風景を示す風景データを取得するステップS103の制御手順と、車両の走行速度を示す速度データを取得するステップS350の制御手順と、速度データによって示される速度が規制速度を超過した際に車両の運転者に対して警告を出力するステップS351、ステップS400a、及びステップS400bの制御手順と、風景データによって示される風景が、運転者が速度を上げる傾向のある風景である際に、車両の現在の走行速度が規制速度以下であっても、警告を出力させるステップS100、ステップS200、及びステップS300の制御手順と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、運転者に対して警告を出力する警告装置等に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、安全運転への意識を高めるべく様々な技術が開発されている。一般的に運転者は、例えば、視野が開けた風景を目の前にした場合、やや遠方だが大きな建築物を視認することができる場合又は道路幅の広い道路を目の前にする場合には、自車の速度を実際の速度よりも低く錯覚してしまうことから速度超過に陥りやすい。
【0003】
これらいずれの場合も、走行時には近くの対象物は早く通り過ぎ(或いは近づき)、遠くの対象物はゆっくりと通り過ぎる(或いは近づく)という遠近の錯覚により、速度感が鈍っていることに起因するものである。
【0004】
従来の警告装置においては、このように速度感が鈍り運転者が制限速度を超えて運転するなどしていたことが検出され、かつ、車両前方の風景に動体物が検出された場合、運転者に対して警報する技術が存在していた(特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2007−172462号公報(段落番号0027、図2)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述した従来の警告装置は、運転者が錯覚により速度感が鈍った後に警告を出力しているが、そのような状況になった後に運転者に対して警告を与えても、結局のところ一時的にではあるが、運転者が安全とは言い難い状態で運転をするに至っている。
【0006】
本発明が解決しようとする課題には、上記した問題が一例として挙げられる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、請求項1に記載の発明は、警告装置であって、車両前方の風景を示す風景データを取得する風景取得手段と、前記車両の走行速度を示す速度データを取得する速度取得手段と、前記速度データによって示される速度が規制速度を超過した際に前記車両の運転者に対して警告を出力する警告出力手段と、前記風景データによって示される風景が、運転者が速度を上げる傾向のある風景である際に、前記車両の現在の走行速度が規制速度以下であっても、前記警告出力手段に警告を出力させる制御手段と、を備える。
【0008】
上記課題を解決するために、請求項3に記載の発明は、警告装置により実行される警告方法であって、車両前方の風景を示す風景データを取得する風景取得工程と、前記車両の走行速度を示す速度データを取得する速度取得工程と、前記速度データによって示される速度が規制速度を超過した際に前記車両の運転者に対して警告を出力する警告出力工程と、前記風景データによって示される風景が、運転者が速度を上げる傾向のある風景である際に、前記車両の現在の走行速度が規制速度以下であっても、前記警告出力工程で警告を出力させる制御工程と、を有する。
【0009】
上記課題を解決するために、請求項4に記載の発明は、警告プログラムであって、請求項3に記載の警告方法を、コンピュータにより実行させる。また、上記課題を解決するために、請求項5に記載の発明は、記録媒体であって、請求項4に記載の警告プログラムが、前記コンピュータにより読み取り可能に記憶されている。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明の一実施の形態を図面を参照しつつ説明する。
【0011】
<第1実施形態>
図1は、本実施形態における車両の車内の一部の構成例を示す斜視図である。
【0012】
車両は、その車内に、左右のシート6a,6b、サイドブレーキ7、ハンドル4、メータ3、警告装置1及びダッシュボード9などを有する。
【0013】
警告装置1は、カメラ7、表示装置5及び制御装置9を有する。カメラ7は撮影手段に相当し、車両前方などの周囲の風景を撮影して撮影データを生成する機能を有する。カメラ7は、例えばCCD(Charge Coupled Device)を利用したカメラである。表示装置5は、例えばカーナビゲーション装置又はテレビジョン受像機の表示装置としての機能を有する。
制御装置9はカメラ7及び表示装置5に接続されており、これらカメラ7及び表示装置5を制御している。この制御装置9の詳細については後述する。
【0014】
左右のシート6a,6bは、運転者及び同乗者が着席するための座席である。ハンドル4は、運転者が運転にあたり操作する操作部材である。サイドブレーキ7は、車両が停車した状態でその車両がそれ以上移動しないように、その場所に固定するための制動装置の一種である。メータ3は、車両100のスピード、エンジン回転数及び水温などを表示する表示部である。ダッシュボード9は、左右のシート6a,6bのうち助手席側の目の前の部材を表している。
【0015】
図2は、図1に示す制御装置9の機能の一例を示すブロック図である。制御装置9は解析部11及び判定部13を有する。なお制御部9は管理テーブル12を有していても良い。
【0016】
解析部11はいわゆる風景解析を行う。解析部11は解析手段に相当し、カメラ7によって撮影された風景に含まれる建築物などの対象物に関する数的要素及びその風景自体の視覚的要素の少なくとも一方を解析し、その風景に関して視覚的な複雑度を決定する。このうち数的要素は、車両の位置との関係において相対的に数値を用いて特定可能な要素を表している。
【0017】
ここでいう「数的要素」としては、自らの車両から対象物までの距離、カメラ7によって撮影された風景に含まれる建築物などの数などを挙げることができる。解析部11は、数的要素として、カメラ7によって撮影された風景に含まれる複数の対象物の時間経過に伴う相対的な移動状態に基づいて複数の対象物までの各々の距離を算出し、複数の対象物までの各々の距離及び対象物の数に基づいて複雑度を決定する。
【0018】
一方、「風景自体の視覚的要素」としては、例えば風景に占める建築物の面積、配色、色彩のばらつきにより視覚的に生ずる視覚的効果を現す単調度をいい、運転者が感覚的に感じ取る開放感に関わる要素を表している。解析部11は、風景自体の視覚的要素として、カメラ7によって撮影された風景に占める建築物の面積に基づいて複雑度を決定する。解析部11は、風景自体の視覚的要素として、カメラ7によって撮影された風景に含まれる色彩の多様性に応じて複雑度を決定する。解析部11は、風景自体の視覚的要素として、カメラ7によって撮影された風景内における対象物の配列状態が単調であるか否かに応じて複雑度を決定する。
【0019】
ここで解析部11による風景解析によって得られる複雑度の一例としては、車両前方又は周囲の風景の複雑度であってもよい。ここでいう複雑度とは、例えば周囲にさほど建築物や山肌が無く視界が開けているのか否か、これらが存在しても風景としてさほど移動による変化がなく単調であるか否か、或いは、建築物が密集している場合のように視界が開けていないか否かなどに基づいて解析された結果である。それらの複雑度は、それぞれ、例えば対象物の一例としての建築物や山などの個々のランドマークの数や大きさを取得して解析された結果に基づき算出されても良いし、色の変化が例えば空のように単調であるかが解析された結果に基づき算出されても良いし、例えば建築物が密集しているように複雑であるかが解析された結果に基づき算出されても良い。
【0020】
また解析部11による風景解析によって得られる複雑度の一例としては、自らの車両と周囲の遮蔽物との距離感の度合いであっても良い。この遮蔽物としては、建築物、塀、山などを挙げることができる。ここでいう複雑度とは、自らの車両と周囲の遮蔽物との距離感をレーダーや画像から取得し、その距離の大小や、大小の傾向が解析された結果に基づき算出されても良い。ここでいう距離の大小の傾向とは、自らの車両から近い遮蔽物が多いか遠い遮蔽物が多いかに関する状態を示している。
【0021】
また解析部11による風景解析によって得られる複雑度の一例としては、自らの車両と周囲の遮蔽物との距離感を基準とした度合いであっても良い。ここでいう複雑度とは、道路幅をレーダーや画像が解析された結果に基づき算出されても良い。
【0022】
判定部13は判定手段に相当し、解析部11によって決定された複雑度が規定の閾値複雑度以下(又は未満)であるか否かを判断する。この閾値複雑度は必要に応じて所望の値に設定されている。判定部13は、その決定された複雑度が当該閾値複雑度以下(又は未満)であると判定された場合、表示装置5に、警告を出力させる。たとえば、目の前の風景が開けていると、運転者の心理作用として現在の速度が実際の速度よりも低いものであると錯覚してしまう。たとえば、実際の速度が40km/hであるにも拘らず、運転者はそれより低い速度で走行していると錯覚してしまい、当該40km/hを超過する速度まで上げようとしてしまう。つまり、速度超過に陥りやすくなってしまう。よって、当該速度超過を防ぐために警告を出力する。本実施形態では、表示装置5は警告出力手段に相当し、判定部13によって複雑度が閾値複雑度以下(又は未満)であると判定された場合、警告を表示する。
【0023】
判定部13は、上述した解析部11による風景解析の結果及び実際の走行速度の相関関係に基づいて、その運転者が速度を出し易い固有の風景を解析して求め、そのような条件に該当する場合に表示装置5に警告を表示させるようにしても良い。ここで走行速度は、その風景に含まれる複数の対象物の時間的な相対的な移動状態から導き出されても良いし、或いは車両自体が取得している車両情報に含まれる速度情報から取得しても良い。
【0024】
また判定部13は、その決定された複雑度が当該閾値複雑度以下(又は未満)であり、かつ速度に関するその他の条件を満たした(たとえば、現在の速度が速度規制値以下である)と判定された場合に、表示装置5に、警告を表示させる。また、たとえば、現在の速度が速度規制値を超えている場合には、減速する旨の比較的強制的な表現を用いた警告を表示させる。
【0025】
つまり、判定部13は、当該条件の一例として、取得された速度が速度規制値を超えており、かつ、複雑度が閾値複雑度以下(又は未満)であると判定した場合、例えば運転者が腕を過信しているか精神的にパニックを生じていることが考えられるので冷静になるべき旨を比較的強制的な表現を用いて、表示装置5に表示させる。このようにすると、判定部13は、運転者の心理的に与える影響または影響を加味した行動分析に応じて、運転者に対して注意喚起や警告を与えることもできる。
【0026】
なお、表示装置5に代えて音声出力装置を用いて警告を音声出力させるようにしてもよく、また、表示装置5と音声出力装置を併用して警告を表示および音声出力させるようにしてもよい。さらには、両装置を現在の速度に応じて使い分けるようにしてもよい。たとえば、複雑度が閾値複雑度以下(又は未満)であって、現在の速度が速度規制値以下である場合には、音声出力のみで警告を出し、現在の速度が速度規制値を超えている場合には、音声出力と表示の両方で警告を出すようにしてもよい。

【0027】
管理テーブル12は管理手段に相当し、解析部11による風景解析結果を管理している。管理テーブル12には、風景解析結果を複数の運転者ごとに管理しておくようにしても良い。この場合、警告装置1は、車内を撮影可能なカメラを有し、そのカメラによって撮影された画像に基づいて各運転者が画像認識される。管理テーブル12は、例えば複数の運転者ごとに、さらに、ある風景に接した後の走行状態がどのようであったかに関する履歴情報を管理しておいても良い。
【0028】
さらに管理テーブル12は、例えば平均的な運転者が速度を上げる傾向のある風景を求め、解析結果情報として管理しておいても良い。この解析結果情報は、例えば個々の解析結果に対して速度を出し過ぎた運転者がどの程度存在していたかに関する情報を含んでいても良いし、その速度の大小に応じて速度の出し易さを判定した結果の情報を含んでいても良い。
【0029】
<変形例>
解析部11は、上述したように風景の複雑度や、その風景内の対象物までの距離の遠近を解析する代わりに、例えば風景や対象物が運転者の目を引くか否かという視覚的な基準に基づき風景解析を行うようにしても良い。このようにすると、例えば風景に運転者の目を引く対象物が含まれている場合、表示装置5には、例えば脇見を防止させるための警告を表示させることができる。ここで風景又は対象物が運転者の目を引くか否かについては、例えばある風景を構成する色の数が多い多色な風景であるか否かを基準として解析されても良いし、ある風景を構成する色が目立つか否かを基準として解析されても良い。
【0030】
なお警告装置1は、車内を撮影する車内カメラを有しており、そのカメラを用いて運転者を撮影しておき、実際に運転者が脇見をしているかどうかをも監視するようにしても良い。このとき運転者が脇見をしているか否かに関しては、例えば、検知した運転者の視線に基づいて判断しても良いし、撮影された顔の向きに基づいて判断しても良い。
【0031】
警告装置1は以上のような一構成例であり、次に図1及び図2を参照しつつ当該一構成例による警告方法の一例について説明する。
【0032】
図3は、警告処理の手順の一例を示すフローチャートである。このフローチャートは制御装置9によって実行される手順例を示している。
【0033】
最初に解析部11が風景を解析すべき要素に応じて、事前に判定要素フラグが設定されている。つまり解析部11に数的指標に基づいて風景解析を行わせたい場合には判定要素フラグを1と設定しておき、解析部11に風景自体の視覚的要素に基づいて風景解析を行わせたい場合には判定要素フラグを2と設定しておく。なお解析部11に数的指標及び風景自体の視覚的要素の両者に基づいて風景解析を行わせたい場合には判定要素フラグを0と設定しておく。
【0034】
ステップS100では解析部11が後述するように風景解析処理を実行し、警告フラグCFを設定する。ステップS300では判定部13によって警告フラグCFが1であるか否かが確認される。判定部13は、警告フラグCFが1でない場合にはステップS100に戻って実行し、警告フラグCFが1である場合にはステップS400を実行する。ステップS400では、制御装置9の判定部13が表示装置5または/および音声出力装置に対して警告を出力すべき旨の指示を行う。
【0035】
図4は、図3に示す風景解析処理の手順の一例を示すフローチャートである。このフローチャートは制御部9のうち解析部11によって実行される手順例を示している。
【0036】
最初にステップS101では、解析部11が警告フラグを0に初期化する。次にステップS102では、解析部11は判定要素フラグが1又は0であるか否かを判断する。解析部11は、判定要素フラグが1又は0でない場合には後述するステップS104を実行し、判定要素フラグが1又は0である場合にはステップS103を実行する。
【0037】
ステップS103では、解析部11が、カメラ7からのデジタル化された画像データに基づいて、カメラ7によって撮影された風景に含まれる対象物の数的要素を解析する。
【0038】
ステップS104では、解析部11が、解析部11は判定要素フラグが2又は0であるか否かを判断する。解析部11は、判定要素フラグが2又は0でない場合には後述するステップS106を実行し、判定要素フラグが2又は0である場合にはステップS105を実行する。
【0039】
ステップS105では、解析部11が、カメラ7からのデジタル化された画像データに基づいて、カメラ7によって撮影された風景自体の視覚的要素を解析する。解析部11は一例として次のような風景解析処理を実行する。
【0040】
<風景解析処理>
まず解析部11は、例えば撮影された風景を対角線で4つの領域に分割し、上方領域は背景領域、下方領域は道路領域、左右領域は風景領域とした上で、各領域に関して次のような風景解析処理を実行する。以下の説明では主として左右領域について説明する。
【0041】
風景解析処理では、例えば左右領域の各々の緑色率及び青色率が解析される。なおこれら左右領域のみならず背景領域を含めても良い。解析部11は、左右領域の各々について領域内の緑色部分(類似色を含む)の画素数を抽出し、緑色部分の画素数の領域内の総画素数に対する割合を緑色率とし、同様に、左右領域各々について領域内の青色部分(類似色を含む)の画素数を抽出し、青色部分の画素数の領域内の総画素数に対する割合を青色率とする。緑色率が左右領域各々の森林の割合となり、青色率が左右領域各々の海の割合となる。
【0042】
次に、解析部11は色分布解析を行う。色分布は左右領域各々の各色の画素数をヒストグラムとして算出することにより求める。解析部11は、このように得られた各値に応じて森林、海の割合、建築物、看板、ランドマークのいずれか又はこれらいずれかの組み合わせの多さ少なさに基づいて風景の複雑度を決定する。すなわち、緑色率及び青色率に応じて森林、海の割合、色分布に応じて看板の少なさなどに応じて風景の単調度が各々決定される。森林、海の割合、看板の少なさ及び単調度は、例えば各々の規定の基準値との類似度に応じて所定範囲の値が決定されるようにしてもよい。
【0043】
次にステップS106では、解析部11が、このような数的要素及び当該風景自体の視覚的要素に基づいて、その風景に関して視覚的な複雑度を決定する。つまり解析部11は、このように決定された森林、海の割合、看板、建築物などの多さ少なさ、それらまでの距離や各々の距離の平均値又は最も近い対象物までの距離を、左右領域などの各々において算出し、複雑度を決定する。
【0044】
図5は、図3に示す判定処理の手順例を示すフローチャートである。なおこのフローチャートは制御装置9のうち判定部13によって実行される手順例を示している。
【0045】
ステップS201では、判定部13が、解析部11によって決定された複雑度が所定の閾値複雑度以下(又は未満)となったか否かを判断する。判定部13は、当該複雑度が当該閾値複雑度を超えている(又は以上である)場合には警告フラグCFを1に設定し、当該複雑度が当該閾値複雑度以下(又は未満)である場合には判定処理を終了する。つまり警告フラグCFが0のままとなる。
【0046】
<変形例>
図6は、警告処理の手順の変形例を示すフローチャートである。このフローチャートは制御装置9によって実行される手順例を示している。なお図6に示すフローチャートは、上述した図3に示すフローチャートと同一の符号を付した手順はほぼ同様の手順であるので説明を省略し、図3に示すフローチャートとは異なる点を中心として説明する。
【0047】
ステップS350では、判定部13が現速度を取得する。次にステップS351では、判定部13は現速度が閾値速度以上となったか否かを判定する。判定部13は、現速度が閾値速度を超えている場合にはステップS400aを実行し、現速度が閾値速度以下の場合にはステップS400bを実行する。
【0048】
これらステップS400a,400bは、上述したステップS400とほぼ同様であるが、ステップS400aでは、判定部13が、表示装置5または/および音声出力装置に、速度を出し過ぎである旨の警告を出力する指示を行い、ステップS400bでは、判定部13が、表示装置5および/または音声出力装置に、速度を出し過ぎとなることを予防するための注意を警告する指示を行う。たとえば、ステップS400aでは、「速度が超過していますので、減速しなさい」なる比較的強制的な表現を用いた警告を音声出力または表示させる。また、ステップS400bでは、「そのままの速度で走行しましょう」や「法定速度を守り、速度超過に注意して安全走行しましょう」なる比較的柔らかな表現にて速度超過を予防する警告を音声出力または表示させる。
【0049】
<複雑度の決定方法>
<数的要素として距離に基づいて複雑度を算出>
図7は、複雑度の具体的な決定方法の一例を示す図である。この複雑度の決定は、上述のように判定部13によって実行される処理である。
【0050】
判定部13は、ランドマーク数を計測して複雑度を決定しても良い。具体的には、判定部13は周囲のランドマーク数が多い場合に複雑度を高く決定する。これは、常に車両100の至近に建築物などの対象物が存在し、それらの相対的な動きが速く見えるためである。つまり運転者は自らの車両の速度を速く感じる。
【0051】
図8は、複雑度の具体的な決定方法の一例を示す図である。この複雑度の決定は、上述のように判定部13によって実行される処理である。
【0052】
判定部13は、ランドマークの数を計測して複雑度を決定しても良い。具体的には、判定部13は周囲のランドマーク数が少ない場合に複雑度が低く決定する。これは、常に車両100の至近に建築物などの対象物が存在しないため、それらの相対的な動きが遅く見えるためである。つまり運転者は自らの車両の速度を実際よりも遅く感じる。この場合、判定部13は、表示装置5および/または音声出力装置に、上述のように速度を出し過ぎないように注意を案内させ、注意を喚起する。
【0053】
<距離に基づいて複雑度を決定する>
また図7に示す場合においては、判定部13は、個々のランドマークとの距離(の平均など)が短いことを認識する。運転者は、車両100の至近に建築物などがあり、それらの相対的な動きが速く見える。このようにすると、運転者は自らの車両100の速度を速めに感じるようになる。そこで判定部13は、車両100とランドマークとの距離に基づいて複雑度を決定するようにして運転者の錯覚を取り除くようにしても良い。
【0054】
図9は、複雑度の具体的な決定方法の一例を示す図である。この複雑度の決定は、上述のように判定部13によって実行される処理である。
【0055】
判定部13は、山や建築物などの個々のランドマークとの距離を計測して複雑度を決定しても良い。具体的には、判定部13は、個々のランドマークとの距離(の平均など)が長いことから、複雑度を低く設定する。これは、車両100の至近に建築物などのランドマークが存在することが少なく、運転者には周囲のランドマークとの相対的な動きを遅く見えるように錯覚するためである。つまり運転者は自らの車両の速度を実際よりも遅く感じる。この場合、判定部13は、表示装置5および/または音声出力装置を制御し、運転者が速度を出し過ぎないように注意を喚起する。
【0056】
以上説明したように、本実施形態における警告装置1は、車両前方の風景を示す風景データを取得する風景取得手段(ステップS103の手順に相当)と、前記車両の走行速度を示す速度データを取得する速度取得手段(ステップS350の手順に相当)と、前記速度データによって示される速度が規制速度(閾値速度に相当)を超過した際に前記車両の運転者に対して警告を出力する警告出力手段(ステップS351、ステップS400a、及びステップS400bの手順に相当)と、前記風景データによって示される風景が、運転者が速度を上げる傾向のある風景である際に、前記車両の現在の走行速度が規制速度以下であっても、前記警告出力手段に警告を出力させる制御手段(ステップS100、ステップS200、及びステップS300の手順に相当)と、を備えることを特徴とする。また、警告装置1は、車両前方の風景を撮影する撮影手段7(カメラに相当)と、前記撮影手段7によって撮影された風景に含まれる対象物に関する数的要素及び前記風景自体の視覚的要素の少なくとも一方を解析し、前記風景に関して視覚的な複雑度を決定する解析手段11(解析部に相当)と、前記複雑度が規定の閾値複雑度以下(又は未満)であるか否かを判断する判定手段13(判定部に相当)と、前記判定手段13によって前記複雑度が前記閾値複雑度以下(又は未満)であると判定された場合、警告を出力する警告出力手段5(表示装置や音声出力装置に相当)と、を有することを特徴とする。
【0057】
このようにすると、警告装置1は、車両前方を撮影した風景に対象物が含まれていた場合に単に警告を出力するのではなく、その風景に含まれる対象物に関する数的要素及びその風景自体の視覚的要素の少なくとも一方を解析し、その風景に関する視覚的な複雑度という客観的な数的指標を算出する。このため警告装置1は、その風景が運転者に与える可能性のある影響を正確に把握し、その運転者に対してより有効な警告を与えることができる。従って運転者は、走行場所の風景に応じた錯覚により速度感を喪失し易い場所にて適切なタイミングで警告を受けるため、速度感を喪失しにくく安全運転を継続することができる。また上記実施形態における警告装置1においては、前記警告出力手段(ステップS351、ステップS400a、及びステップS400bの手順に相当)は、前記車両の走行速度が、速度規制値を超える場合と速度規制値以下の場合とでは、異なる種類の警告を出力することを特徴とする。このようにすると、例えば、速度規制値を超える場合の比較的強制的な表現での警告と、速度規制値以下の場合の速度超過を予防するための比較的柔らかな表現での警告とを区別して表示、出力できる。
【0058】
また以上説明したように、本実施形態における警告装置により実行される警告方法は、車両前方の風景を示す風景データを取得する風景取得工程(ステップS103の手順に相当)と、前記車両の走行速度を示す速度データを取得する速度取得工程(ステップS350の手順に相当)と、前記速度データによって示される速度が規制速度(閾値速度に相当)を超過した際に前記車両の運転者に対して警告を出力する警告出力工程(ステップS351、ステップS400a、及びステップS400bの手順に相当)と、前記風景データによって示される風景が、運転者が速度を上げる傾向のある風景である際に、前記車両の現在の走行速度が規制速度以下であっても、前記警告出力工程で警告を出力させる制御工程(ステップS100、ステップS200、及びステップS300の手順に相当)と、を有することを特徴とする。また、警告方法は、車両前方の風景を撮影する撮影ステップと、前記撮影ステップにて撮影された風景に含まれる対象物に関する数的要素及び前記風景自体の視覚的要素の少なくとも一方を解析し、前記風景に関して視覚的な複雑度を決定する解析ステップと、前記複雑度が規定の閾値複雑度以下(又は未満)であるか否かを判断する判定ステップと、前記判定ステップにて前記複雑度が前記閾値複雑度以下(又は未満)であると判定された場合、警告を出力する警告出力ステップと、を有することを特徴とする。
【0059】
このような警告方法によれば、車両前方を撮影した風景に対象物が含まれていた場合に単に警告を出力するのではなく、まず、その風景に含まれる対象物に関する数的要素及びその風景自体の視覚的要素の少なくとも一方を解析し、その風景に関する視覚的な複雑度という客観的な数的指標を算出する。このため警告装置1は、その風景が運転者に与える可能性のある影響を正確に把握し、その運転者に対してより有効な警告を与えることができる。つまり運転者は、走行場所の風景に応じた錯覚により速度感を失いそうになり易い場所にて適切なタイミングで警告を受けるため、速度感を喪失しにくく安全運転を継続することができる。
【0060】
上記実施形態における警告装置1においては、上述した構成に加えてさらに、前記判定手段13は、取得された速度が速度規制値以上であり、かつ、前記複雑度が前記閾値複雑度以下(又は未満)であると判定した場合、前記警告出力手段5に前記警告を出力させることを特徴とする。
【0061】
このようにすると、上述したような錯覚による速度の出し過ぎのみならず、運転者は実際に速度を速度規制値を超える速度にまで上げ過ぎた場合にも、警告装置1によって警告が出力される。このため運転者は、出力された警告によって、速度の上げ過ぎに気づき安全運転を意識して運転を継続するようになる。
【0062】
上記実施形態における警告装置1においては、上述した構成に加えてさらに、前記解析手段11は、前記数的要素として、前記撮影手段7によって撮影された風景に含まれる複数の前記対象物の時間経過に伴う相対的な移動状態に基づいて算出した複数の前記対象物までの各々の距離又は、複数の前記対象物までの各々の距離及び前記対象物の数に基づいて前記複雑度を決定することを特徴とする。
【0063】
このようにすると、運転者は、錯覚により速度感を喪失し易い場所にて適切なタイミングで警告を受けるため、速度感を喪失しにくく安全運転を継続することができる。
【0064】
上記実施形態における警告装置1においては、上述した構成に加えてさらに、前記解析手段11は、前記風景自体の視覚的要素として、前記撮影手段7によって撮影された風景に占める前記対象物の面積に基づいて前記複雑度を決定することを特徴とする。
【0065】
このようにすると、運転者は、錯覚により速度感を喪失し易い場所にて適切なタイミングで警告を受けるため、速度感を喪失しにくく安全運転を継続することができる。
【0066】
上記実施形態における警告装置1においては、上述した構成に加えてさらに、前記解析手段11は、前記風景自体の視覚的要素として、前記撮影手段7によって撮影された風景に含まれる色彩の多様性に応じて前記複雑度を決定することを特徴とする。
【0067】
このようにすると、運転者は、錯覚により速度感を喪失し易い場所にて適切なタイミングで警告を受けるため、速度感を喪失しにくく安全運転を継続することができる。
【0068】
上記実施形態における警告装置1においては、上述した構成に加えてさらに、前記解析手段11は、前記風景自体の視覚的要素として、前記撮影手段7によって撮影された風景内における前記対象物の配列状態に応じて前記複雑度を決定することを特徴とする。
【0069】
このようにすると、運転者は、錯覚により速度感を喪失し易い場所にて適切なタイミングで警告を受けるため、速度感を喪失しにくく安全運転を継続することができる。
【0070】
<第2実施形態>
図10は、第2実施形態における警告システム10の構成例を示すブロック図である。第2実施形態における警告システム10は、第1実施形態とほぼ同様の構成及び動作の部分については同一の符号を付して説明を省略し、以下の説明では異なる点を中心として説明する。
【0071】
警告システム10は、警告装置1aが基地局8を経由してネットワーク14に接続されているとともに、警告サーバ20がそのネットワーク14に接続された構成となっている。警告装置1aは無線により基地局8との間でデータ通信を行う。
【0072】
第2実施形態では、警告サーバ20が、第1実施形態において図2の解析部11、判定部13及び、必要に応じて管理テーブル12を有する形態となっており、警告装置1aは、単にカメラ7で車両前方などの風景を撮影し、警告サーバ20からの指示に従って警告を出力する形態であっても良い。なお警告装置1aは、解析部11の機能を有しており、解析結果を警告サーバ20に引き渡し、警告サーバ20が上記判定処理を行った結果に応じて警告を出力する形態であっても良い。
【0073】
上記実施形態における警告システム10は、車両前方の風景を撮影する撮影手段7(カメラに相当)と、警告を出力する警告出力手段5(表示装置に相当)とを備える警告装置1aと、前記撮影手段7によって撮影された風景に含まれる対象物に関する数的要素及び前記風景自体の視覚的要素の少なくとも一方を解析し、前記風景に関して視覚的な複雑度を決定する解析手段11(解析部に相当)と、前記複雑度が規定の閾値複雑度以下(又は未満)であるか否かを判断する判定手段13(判定部に相当)とを備える警告サーバ20とを有し、前記警告装置1aは、前記判定手段13によって前記複雑度が前記閾値複雑度以下(又は未満)であると判定された場合、前記警告出力手段5に警告を出力させることを特徴とする。
【0074】
このようにすると、警告装置1aは、解析部11などを搭載する必要が無いことから構成が簡素化される。警告サーバ20は、警告装置1aによって撮影された車両前方の風景に含まれる対象物に関する数的要素及びその風景自体の視覚的要素の少なくとも一方を解析し、その風景に関する視覚的な複雑度という客観的な数的指標を用いてその風景の複雑度を算出する。
【0075】
従って警告装置1aは、自らそのような複雑度を算出することなく、その複雑度に基づき必要に応じて警告出力手段5に警告を出力させる。このため警告装置1aは、車両前方を撮影した風景に対象物が含まれていた場合に単に警告を出力するのではなく、その風景が運転者に与える可能性のある影響を正確に算出して、その運転者に対してより有効な警告を与えることができる。従って運転者は、走行場所の風景に応じた錯覚により速度感を喪失し易い場所にて適切なタイミングで警告を受けるため、速度感を喪失しにくく安全運転を継続することができる。
【0076】
なお、本実施形態は、上記に限られず、種々の変形が可能である。以下、そのような変形例を順を追って説明する。
【0077】
上述した第2実施形態においては、警告サーバ20による解析結果を、それ以降に、その解析結果に関する位置を走行する他の車両に提供するようにしても良い。当該他の車両は、上記警告装置1aを車載しているが、この場合、この警告装置1aはカメラ7を内蔵していなくても良い。
【0078】
このような構成の警告システム10においては、上述した解析部11はサーバ20の代わりに車両側(警告装置1a側)に搭載されており、警告サーバ20は、この解析部11を内蔵する警告装置1aが車載された車両から、地点と紐付いた解析結果を収集し、解析結果に関する地点や解析の結果、警告を与える必要があると判定した地点を通過する他の車両に提供しても良い。当該他の車両は、上記同様、そのような警告装置1aを車載しているが、この場合、この警告装置1aはその解析部11を内蔵していなくても良い。
【0079】
上述した各実施形態においては、警告を出力する警告出力手段として、視覚的に警告を与えることができる表示装置5を例示したがこれに限られず、例えば聴覚によって警告を与えることができるスピーカ等の音声出力装置、触覚によって警告を与えることができる振動提供装置などの他の手段を採用しても良い。
【0080】
また上記実施形態においては、判定部13は、上述した判定結果を履歴として、例えば運転者毎に管理しておき、次以降の判定の際に当該判定結果の履歴を利用するようにしても良い。
【0081】
また、以上既に述べた以外にも、上記実施形態や各変形例による手法を適宜組み合わせて利用しても良い。
【図面の簡単な説明】
【0082】
【図1】本実施形態における車両の車内の一部の構成例を示す斜視図である。
【図2】図1に示す制御装置の機能の一例を示すブロック図である。
【図3】警告処理の手順の一例を示すフローチャートである。このフローチャートは制御装置によって実行される手順例を示している。
【図4】図3に示す風景解析処理の手順の一例を示すフローチャートである。
【図5】図3に示す判定処理の手順例を示すフローチャートである。
【図6】警告処理の手順の変形例を示すフローチャートである。
【図7】複雑度の具体的な決定方法の一例を示す図である。
【図8】複雑度の具体的な決定方法の一例を示す図である。
【図9】複雑度の具体的な決定方法の一例を示す図である。
【図10】第2実施形態における警告システムの構成例を示すブロック図である。
【符号の説明】
【0083】
1 警告装置
1a 警告装置
5 表示装置(警告出力手段に相当)
7 カメラ(撮影手段に相当)
10 警告システム
11 解析部(解析手段に相当)
12 管理テーブル(管理手段に相当)
13 判定部(判定手段に相当)
20 警告サーバ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両前方の風景を示す風景データを取得する風景取得手段と、
前記車両の走行速度を示す速度データを取得する速度取得手段と、
前記速度データによって示される速度が規制速度を超過した際に前記車両の運転者に対して警告を出力する警告出力手段と、
前記風景データによって示される風景が、運転者が速度を上げる傾向のある風景である際に、前記車両の現在の走行速度が規制速度以下であっても、前記警告出力手段に警告を出力させる制御手段と、
を備えることを特徴とする警告装置。
【請求項2】
前記警告出力手段は、前記車両の走行速度が、速度規制値を超える場合と速度規制値以下の場合とでは、異なる種類の警告を出力することを特徴とする請求項1に記載の警告装置。
【請求項3】
警告装置により実行される警告方法であって、
車両前方の風景を示す風景データを取得する風景取得工程と、
前記車両の走行速度を示す速度データを取得する速度取得工程と、
前記速度データによって示される速度が規制速度を超過した際に前記車両の運転者に対して警告を出力する警告出力工程と、
前記風景データによって示される風景が、運転者が速度を上げる傾向のある風景である際に、前記車両の現在の走行速度が規制速度以下であっても、前記警告出力工程で警告を出力させる制御工程と、
を有することを特徴とする警告方法。
【請求項4】
請求項3に記載の警告方法を、コンピュータにより実行させる、ことを特徴とする警告プログラム。
【請求項5】
請求項4に記載の警告プログラムが、前記コンピュータにより読み取り可能に記憶されていることを特徴とする記録媒体。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−232741(P2012−232741A)
【公開日】平成24年11月29日(2012.11.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−141498(P2012−141498)
【出願日】平成24年6月22日(2012.6.22)
【分割の表示】特願2008−75628(P2008−75628)の分割
【原出願日】平成20年3月24日(2008.3.24)
【出願人】(000005016)パイオニア株式会社 (3,620)
【Fターム(参考)】