説明

警報器

【課題】ブザーの故障診断について精度の向上を図ることが可能な警報器を提供する。
【解決手段】警報器1は、異常状態を検出した場合にブザー40から警報音を出力して異常状態を報知するものである。この警報器1は、ブザー40への印加電圧が閾値以下である場合にブザー40の故障であると判断する故障診断部22と、電池電圧の低下に応じて閾値を低下させる閾値設定部23とを備えている。また、閾値設定部23は、故障診断部22がブザー40の故障を診断する直前の電池電圧の情報に基づいて閾値を設定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、警報器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ガス漏れや火災などの異常状態を検出した場合に、ブザーから警報音を出力して異常状態を報知する警報器が提案されている。この警報器においては、警報音の報知機能について故障が発生していないかを診断することが肝要である。このような警報器では、例えば圧電ブザーやスピーカにより警報音を出力している。特に圧電ブザーは、金属板端子から針状生成物であるSnウィスカが伸び、これが圧電素子電極に接触することによる短絡不良が発生してしまい、警報音の発生に異常を来たす可能性がある。
【0003】
そこで、ガス漏れや火災などの異常状態が発生していない場合に、非可聴周波数域の警報音を発する警報器が提案されている。この警報器によれば、異常状態が発生していないときの警報音は人に聴こえることがないため、警報音が騒音となることなくスピーカの診断を行うことができる(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平7−129875号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、警報器は一般的に電池駆動である。このため、例えばブザーの故障をブザーへの印加電圧の低下に基づいて判断しようとした場合、ブザーに短絡不良が発生して印加電圧が低下したのか、電池電圧が低下して印加電圧が低下したのかを判断することができず、電池電圧の低下にも拘わらずブザー故障であると判断してしまう可能性がある。
【0006】
本発明はこのような従来の課題を解決するためになされたものであり、その発明の目的とするところは、ブザーの故障診断について精度の向上を図ることが可能な警報器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の警報器は、異常状態を検出した場合にブザーから警報音を出力して異常状態を報知する警報器であって、ブザーへの印加電圧が閾値以下である場合にブザーの故障であると判断する故障診断手段と、電池電圧の低下に応じて閾値を低下させる閾値設定手段と、を備えることを特徴とする。
【0008】
この警報器によれば、電池電圧の低下に応じて閾値を低下させるため、閾値が固定されている場合のように電池電圧の低下時においてブザーへの印加電圧が低下して短絡が発生しているなどの誤判断をしてしまう事態を防止することができる。従って、ブザーの故障診断について精度の向上を図ることができる。
【0009】
また、本発明の警報器において、閾値設定手段は、故障診断手段がブザーの故障を診断する直前の電池電圧の情報に基づいて閾値を設定することが好ましい。
【0010】
この警報器によれば、ブザーの故障を診断する直前に電池電圧の情報に基づいて閾値を設定するため、過去の古い電池電圧に基づいて閾値が設定されることがなく、ブザーの故障診断についてより精度の向上を図ることができる。
【0011】
また、本発明の警報器のブザー故障診断方法は、異常状態を検出した場合にブザーから警報音を出力して異常状態を報知する警報器のブザー故障診断方法であって、ブザーへの印加電圧が閾値以下である場合にブザーの故障であると判断する故障診断工程と、電池電圧の低下に応じて閾値を低下させる閾値設定工程と、を有することを特徴とする。
【0012】
この警報器のブザー故障診断方法によれば、電池電圧の低下に応じて閾値を低下させるため、閾値が固定されている場合のように電池電圧の低下時においてブザーへの印加電圧が低下して短絡が発生しているなどの誤判断を行ってしまう事態を防止することができる。従って、ブザーの故障診断について精度の向上を図ることができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、ブザーの故障診断について精度の向上を図ることが可能な警報器を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の実施形態に係る警報器を示す構成図である。
【図2】図1に示したブザー駆動回路、ブザー及び電池電圧入力回路の一例を示す回路図である。
【図3】本実施形態に係る警報器のブザー故障診断を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の好適な実施形態を図面に基づいて説明する。図1は、本発明の実施形態に係る警報器を示す構成図である。図1に示すように、警報器1は、ガスセンサ10と、CPU(Central Processing Unit)20と、ブザー駆動回路30と、ブザー40と、電池電圧入力回路50とを備え、ガス漏れ(異常状態)を検出した場合に、ブザー40から警報音を出力して異常状態を報知するものである。このような警報器1は、例えば家庭等に設置され、ガス漏れを家庭のユーザに報知するものである。
【0016】
ガスセンサ10は、周囲に検出対象となるガスが存在する場合に、その濃度に応じた信号をCPU20に出力するものである。具体的にガスセンサ10は、半導体式センサ、接触燃焼式センサ、及び電気化学式センサなど種々のものが用いられる。
【0017】
CPU20は、警報器1の全体を制御するものである。このCPU20は、所定濃度以上の検出対象のガスがガスセンサ10により検知されると、ガス漏れが発生していると判断する。また、CPU20は、ブザー制御部21を備えている。ブザー制御部21は、ガス漏れが発生していると判断すると、その旨の信号をブザー駆動回路30に送信する。
【0018】
ブザー駆動回路30は、ブザー40を駆動させて発音させるものである。ブザー制御部21からは例えば4kHz(ブザー40の共振点)の駆動信号が入力され、ブザー駆動回路30は、この駆動信号に応じてブザー40から警報音を出力させる。
【0019】
さらに、CPU20は、故障診断部(故障診断手段)22、及び、閾値設定部(閾値設定手段)23を備えている。故障診断部22は、ブザー40への印加電圧に基づいてブザー40の故障を判断するものであって、具体的には印加電圧が閾値以下である場合にブザー40が故障であると判断する。また、閾値設定部23は、電池電圧に応じて閾値を設定するものであり、電池電圧の低下に応じて閾値を低下させるものである。
【0020】
電池電圧入力回路50は、電池電圧の情報をCPU20に対して送信するものである。このため、閾値設定部23は、電池電圧入力回路50を通じて入力される電池電圧の情報に基づいて閾値を設定することとなる。
【0021】
図2は、図1に示したブザー駆動回路30、ブザー40及び電池電圧入力回路50の一例を示す回路図である。なお、図2では説明の便宜上CPU20についても図示するものとする。
【0022】
図2に示すように、ブザー駆動回路30は、6つの抵抗R31〜R36と2つのnpnトランジスタQ31,Q32とにより構成されている。
【0023】
より詳細にブザー制御部21からは第1信号線31が伸びており、第1信号線31を介して第1抵抗R31に駆動信号が入力される。第1抵抗R31の他端は第1npnトランジスタQ31のベースに接続されていると共に、第2抵抗R32の一端に接続されている。第1npnトランジスタQ31のエミッタ及び第2抵抗R32の他端は、グランド接続されている。
【0024】
同様に、ブザー制御部21からは第2信号線32が伸びており、第2信号線32を介して第3抵抗R33に駆動信号が入力される。第3抵抗の他端は第2npnトランジスタQ32のベースに接続されていると共に、第4抵抗R34の一端に接続されている。第2npnトランジスタQ32のエミッタ及び第4抵抗R34の他端は、グランド接続されている
【0025】
また、第1npnトランジスタQ31のコレクタは第5抵抗R35の一端に接続されている。第5抵抗R35の他端は電源部(電池)に接続されている。同様に、第2npnトランジスタQ32のコレクタは第6抵抗R36の一端に接続されている。第6抵抗R36の他端は電源部(電池)に接続されている。
【0026】
ここで、第1npnトランジスタQ31のコレクタと第5抵抗R35との接続点をAとし、第2npnトランジスタQ32のコレクタと第6抵抗R36との接続点をBとすると、ブザー40は接続点Aと接続点Bとの間に接続されている。
【0027】
故障診断部22は、接続点Bの電圧を読み取って、ブザー40の故障を診断する。なお、ブザー駆動回路30の第1〜第4抵抗R31〜R34と2つのnpnトランジスタQ31,Q32とは、チップ化されていることが望ましい。
【0028】
また、電池電圧入力回路50は、第1及び第2抵抗R51,R52を備えている。第1抵抗R51は、一端が電源部(電池)に接続され、他端が第2抵抗R52の一端に接続されている。第2抵抗R52の他端はグランド接続されている。
【0029】
閾値設定部23は、第1抵抗R51の他端と第2抵抗R52の一端との接続点Cの電圧値を読み取ることで、電池電圧の情報を取得する。
【0030】
次に、本実施形態に係る警報音出力の概要について説明する。まず、ブザー制御部21は第1信号線31及び第2信号線32を介して駆動信号を出力する。このとき、ブザー制御部21は、250μsのパルス信号(周波数4kHz)を出力する。また、第1信号線31からの駆動信号と第2信号線32からの駆動信号とのハイロウのタイミングは互いに逆位相となっている。
【0031】
ここで、ブザー40が正常であり、第1信号線31からの駆動信号がHレベルであり、第2信号線32からの駆動信号がLレベルであるとする。この場合、第1npnトランジスタQ31がオンし、第2npnトランジスタQ32がオフする。そして、接続点AがLレベルとなり接続点BがHレベルとなり、ブザー40に電圧が印加される。
【0032】
一方、第1信号線31からの駆動信号がLレベルであり、第2信号線32からの駆動信号がHレベルであるとする。この場合、第1npnトランジスタQ31がオフし、第2npnトランジスタQ32がオンする。そして、接続点AがHレベルとなり接続点BがLレベルとなり、ブザー40に電圧が印加される。
【0033】
警報器1は、上記動作を繰り返すことによりブザー40から警報音を出力させる。
【0034】
次に、本実施形態に係る警報器1のブザー故障診断についてフローチャートを参照して説明する。図3は、本実施形態に係る警報器1のブザー故障診断を示すフローチャートである。
【0035】
まず、閾値設定部23は、接続点Cの電圧値を読み取る(S1)。このとき、閾値設定部23は、接続点Cの電圧をA/D変換のうえ入力することで、接続点Cの電圧を読み取る。次いで、故障診断部22は、接続点Bの電圧値から印加電圧を判断する(S2)。この際においても故障診断部22は、接続点Bの電圧をA/D変換のうえ入力することで、ブザー40への印加電圧を判断する。
【0036】
その後、閾値設定部23は、接続点Cの電圧値からブザー40の故障診断に用いられる閾値を計算して設定する(S3)。このとき、閾値設定部23は、接続点Cの電圧値が小さくなるほど、閾値を小さくする。次いで、故障診断部22は、ブザー40の印加電圧が、閾値設定部23により設定された閾値以下であるか否かを判断する(S4)。
【0037】
ブザー40の印加電圧が、閾値設定部23により設定された閾値以下であると判断した場合(S4:YES)、電池電圧に対してブザー40への印加電圧が正常な範囲を超えて低下していると判断できる。このため、故障診断部22は、ブザー40に短絡等の故障が発生していると判断する(S5)。そして、図3に示す処理は終了する。なお、この際、警報器1は、図示しないLED(Light Emitting Diode)などからブザー40の故障を示す表示を行うようにしてもよい。
【0038】
一方、ブザー40の印加電圧が、閾値設定部23により設定された閾値以下でないと判断した場合(S4:YES)、電池電圧に対してブザー40への印加電圧が正常な範囲であると判断できる。このため、故障診断部22は、ブザー40に短絡等の故障が発生していないと判断する(S6)。そして、図3に示す処理は終了する。
【0039】
このようにして、本実施形態に係る警報器1及びそのブザー故障診断方法によれば、電池電圧の低下に応じて閾値を低下させるため、閾値が固定されている場合のように電池電圧の低下時においてブザー40への印加電圧が低下して短絡が発生しているなどの誤判断を行ってしまう事態を防止することができる。従って、ブザー40の故障診断について精度の向上を図ることができる。
【0040】
また、ブザー40の故障を診断する直前(すなわち一連処理においてブザー40の故障診断(S4)の前)に電池電圧の情報に基づいて閾値を設定するため、過去の古い電池電圧に基づいて閾値が設定されることがなく、ブザー40の故障診断についてより精度の向上を図ることができる。
【0041】
以上、実施形態に基づき本発明を説明したが、本発明は上記実施形態に限られるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、変更を加えてもよい。例えば、上記実施形態においては、図2に示す回路構成に限らず、他の回路構成であってもよい。
【0042】
また、上記実施形態では、ガス警報器について説明したが、これに限らず、火災警報器や、ガス火災警報器に適用されてもよいし、電池駆動であれば他の警報器に適用されてもよい。
【0043】
また、本実施形態では、閾値の設定、及び、ブザー40の故障診断を一連のフローで実行しているが、これに限らず、閾値の設定とブザー40の故障診断とは、例えば並行して別々のフローで実行されてもよい。この場合、閾値の設定処理のみ所定時間ごとに実行されるようにしてもよい。
【0044】
さらに、本実施形態では印加電圧が閾値以下である場合に、ブザー40の故障と判断しているが、この処理を複数回繰り返し、そのうち所定回数以上印加電圧が閾値以下である場合に、ブザー40の故障と判断してもよい。
【0045】
また、上記において印加電圧は、実際にブザー40から警報音を出力する際に印加される電圧のみを意味する概念でなく、待機状態にける電圧も含む概念である。例えば図2に示すように、ブザー制御部21から駆動信号が出力されない(すなわち第1及び第2駆動信号が共にLレベル)場合には、接続点BはHレベルとなり、この電圧を印加電圧とすることも含む概念である。
【符号の説明】
【0046】
1…警報器
10…ガスセンサ
20…CPU
21…ブザー制御部
22…故障診断部(故障診断手段)
23…閾値設定部(閾値設定手段)
30…ブザー駆動回路
40…ブザー
50…電池電圧入力回路
R31〜R36,R51,R52…抵抗
Q31,Q32…npnトランジスタ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
異常状態を検出した場合にブザーから警報音を出力して異常状態を報知する警報器であって、
前記ブザーへの印加電圧が閾値以下である場合に前記ブザーの故障であると判断する故障診断手段と、
電池電圧の低下に応じて前記閾値を低下させる閾値設定手段と、
を備えることを特徴とする警報器。
【請求項2】
前記閾値設定手段は、前記故障診断手段が前記ブザーの故障を診断する直前の電池電圧の情報に基づいて前記閾値を設定する
ことを特徴とする請求項1に記載の警報器。
【請求項3】
異常状態を検出した場合にブザーから警報音を出力して異常状態を報知する警報器のブザー故障診断方法であって、
前記ブザーへの印加電圧が閾値以下である場合に前記ブザーの故障であると判断する故障診断工程と、
電池電圧の低下に応じて前記閾値を低下させる閾値設定工程と、
を有することを特徴とする警報器のブザー故障診断方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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