説明

警報器

【課題】広範囲又は遠距離から効果的に視認することできる警報表示を行う警報器を提供する。
【解決手段】警報器1は、センサ部を収容する本体部2と、本体部2に設けられた高輝度LEDを含み、CPUからの警報信号に応答して、この高輝度LEDからの光LTを本体部2の周囲に投影する投影部35a〜35cとを有している。これにより、広範囲又は遠距離から効果的に視認することできる警報表示を行うことができるので、警報として有効に注意喚起を促すことができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、警報器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、火災、都市ガス若しくはLPガスといったガス漏れ、又は、燃焼機器の不完全燃料に伴う一酸化炭素漏れといった警報対象を検出して警報を発する警報器が知られている。この類の警報器は、センサ部により警報対象を検出した場合、発光ダイオード(LED)、バルブ、ランプ等の警報表示部を動作させることにより、火災等の発生を周囲に警報している。
【0003】
例えば特許文献1には、火災表示用の確認灯を備える火災報知器が開示されている。この火災報知器は、警報器の本体部の底面にリング上の透光表示部を備え、当該透光表示部にLEDからの光を導光させることにより、警報表示を行っている。また、特許文献2,3も同様に、警報器は、警報器の本体部の底面の近傍に環状の光ガイド部材を備え、当該光ガイド部材にLEDからの光を導光させることにより、警報表示を行っている。さらに、特許文献4では、警報器は、光透過材によって形成された棒状のライドガイドにより、表示灯の発する光を本体部の外部に案内している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平8−180273号公報
【特許文献2】特開2001−14570号公報
【特許文献3】特開2003−36488号公報
【特許文献4】特開2009−245102号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1から4に開示された手法によれば、光源からの光を導光させることにより、発光領域を拡大させて全方位からの視認性を高めているものの、本体部における表面の範囲内で発光がなされるのみである。そのため、観測する方向や距離によっては警報表示が認識し難いことがあり、広範囲又は遠距離から効果的に視認することできる警報表示が望まれていた。
【0006】
本発明はかかる事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、広範囲又は遠距離から効果的に視認することできる警報表示を行う警報器を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
かかる課題を解決するために、本発明は、監視領域で発生する警報対象を所定の周期で検出する検出手段と、予め定められた閾値を記憶する記憶手段と、所定の周期で検出手段の検出結果を閾値と比較し、検出結果が閾値を超えたときに警報信号を出力する検出処理手段と、検出処理手段から出力される警報信号に応答して音響又は表示により警報を発生する警報手段と、を備えた警報器を提供する。ここで、警報器は、検出手段を収容する本体部と、本体部又は本体部内に設けられた光源を含み検出処理手段から出力される警報信号に応答して当該光源からの光を本体部の周囲に投影する投影部とを有している。
【0008】
ここで、本発明において、投影部は、上方に向かって光源からの光を投影することが好ましい。を特徴とする請求項1に記載された警報器。
【0009】
また、本発明において、投影部は、警報対象に応じて光の投影方向が設定されることが好ましい。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、警報表示を行う場合には、光源からの光が警報器の本体部の周囲に投影され、その投影光によって周囲の面が照らされることとなる。このように、投影光が広い範囲を照らし出すことで、本体部のみが発光する場合と比較して、周囲から視認可能な範囲が広がることとなる。これにより、広範囲又は遠距離から効果的に視認することできる警報表示を行うことができるので、警報として有効に注意喚起を促すことができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本実施形態にかかる警報器を模式的に示す正面図
【図2】警報器の構成を模式的に示すブロック図
【図3】本実施形態にかかる警報器の動作形態を示す説明図
【発明を実施するための形態】
【0012】
図1は、本実施形態にかかる警報器1を模式的に示す正面図であり、図2は、警報器1の構成を模式的に示すブロック図である。本実施形態にかかる警報器1は、ガス漏れ、一酸化炭素(COガス)漏れや火災発生を検出して警報を行うガス警報器である。この警報器1は、台所や厨房といった所定の監視領域に設置されており、本体部2の背面側に設けられた固定部材を介して壁面等に固定される。例えばガス漏れの検出対象が都市ガスといった空気よりも軽いガスである場合には、警報器1は、横壁における天井近傍の所定位置に固定的に設置される。この警報器1は、商用電源等からなる電源部から供給される電力によって動作する。
【0013】
警報器1は、センサ部10と、マイクロプロセッサユニット(MPU)20と、警報部30と、点検スイッチ40と、電源・故障表示ランプ50とを主体に構成されている。
【0014】
センサ部10は、中空箱状の筐体で構成される本体部2に収容されており、MPU20と電気的に接続されている。センサ部10は、監視領域で発生する警報対象を所定の周期で検出する検出手段としての機能を担っている。警報対象としては、例えば火災、都市ガス、COガスなどを挙げることができる。センサ部10は、例えば、火災の発生を検出する火災検出部と、都市ガス漏れを検出するガス検出部と、不完全燃焼により発生するCOガスを検出するCO検出部とを備え、各検出部はMPU20にそれぞれ接続されている。
【0015】
火災検出部は、例えば、熱センサ、煙センサ等の周知の火災センサが用いられる。火災センサは、本体部2の正面に形成した貫通孔から筐体の外部に露出した状態で設けられ、その貫通孔の周囲に設けられた保護部材によって保護されている。火災検出部は、設置場所における火災(熱や煙の有無又は程度)に関する状態信号をMPU20に出力する。
【0016】
ガス検出部は、例えば、半導体ガスセンサ、接触燃焼式ガスセンサ等の周知のガスセンサが用いられる。ガス検出部は、本体部2の正面の右上部分から側面にかけて形成した複数のスリット等から流入する都市ガスの濃度を検出し、その濃度に応じた検出信号をMPU20に出力する。
【0017】
CO検出部は、例えば、接触燃焼式などのCOセンサが用いられる。CO検出部は、ガス検出部と同様に、スリット等から流入するCOガスの濃度を検出し、その濃度に応じた検出信号をMPU20に出力する。
【0018】
MPU20は、周知のように、予め定めたプログラムに従って各種の処理や制御などを行う中央演算処理装置(CPU)21と、CPU21のためのプログラム等を格納した読み出し専用のメモリであるROM22、各種のデータを格納するとともにCPU21の処理作業に必要なエリアを有する読み出し書き込み自在のメモリであるRAM23等で構成されている。このMPU20は、センサ部10を構成する各検出部からの信号に基づいて、火災の発生、都市ガス漏れ、或いは、COガス漏れを判断した場合には、警報部30を動作させて、警報を行う。
【0019】
具体的には、MPU20において、記憶手段としてのROM22は、予め定められた閾値を記憶している。例えば、この閾値は、センサ部10を構成する各検出部(火災検出部、ガス検出部及びCO検出部)のそれぞれに対応して設けられている。そして、CPU21は、所定の周期でセンサ部10の検出結果を閾値と比較し、検出結果が閾値を超えた場合に警報信号を出力する(検出処理手段)。この場合、CPU21は、センサ部10を構成する検出部毎に検出結果と閾値との比較を行う。
【0020】
警報部30は、MPU20と電気的に接続されており、MPU20(具体的にはCPU21)から出力される警報信号に応答して音響や表示により警報を発生する。この警報手段としての警報部30は、警報表示部31と、警報音出力部36とを有している。
【0021】
警報表示部31は、表示により警報を行う機能を担っており、本体表示部32と、投影表示部34とを備えている。
【0022】
本体表示部32は、本体部2を構成する任意の面(例えば正面)にて行われる表示を利用して警報を行うものである。この本体表示部32は、本体部2の内部に配置された複数の光源(図示せず)と、本体部2の表面に配置された表示プレート33とを含んで構成されている。当該光源としては、LED、バルブ、ランプ等を利用することができる。
【0023】
具体的には、本体表示部32は、赤色等のLEDにより表示プレート33を背面側から照射し、表示プレート33上の火災発生に対応するシンボル33aを透過光を通じて点灯又は点滅することにより、火災の発生を警報する。また、本体表示部32は、黄色等のLEDにより表示プレート33を背面側から照射し、表示プレート33上のCOガス漏れに対応するシンボル33bを透過光を通じて点灯又は点滅することにより、COガス漏れを警報する。さらに、本体表示部32は、赤色等のLEDにより表示プレート33を背面側から照射し、表示プレート33上の都市ガス漏れに対応するシンボル33cを透過光を通じて点灯又は点滅させることにより、都市ガス漏れを警報する。なお、個々のシンボル33a〜33cは、警報対象を示す図形で構成されているが、文字等であってもよい。
【0024】
一方、投影表示部34は、本体部2の周囲に投影した光を利用して警報を行うものである。投影表示部34は、警報器1の設置状態を基準として、本体部2の上面2aに配設された第1から第3の投影部35a〜35cで構成されている。なお、投影表示部34を構成する第1から第3の投影部35a〜35cは、本体部2自体(本実施形態では、本体部2の筐体面)に設けるのみならず、本体部2内の基板に設けてもよい。
【0025】
個々の投影部35a〜35cは、光源を含み、当該光源からの光を本体部2の周囲に投影する。この光源は、CPU21によって制御され、CPU21からの警報信号に応答して発光する。光源としては、LED、バルブ、ランプ等を利用することができるが、投影される光に対する周囲からの視認性を高めるためにも高輝度LEDを利用することが好ましい。本実施形態では、投影部35a〜35cが本体部2の上面2aに配置されている関係上、光源からの光は、警報器1よりも上方の横壁や天井に投影される。
【0026】
第1の投影部35aは、火災の発生を警報する機能を担っており、光源として、例えば本体表示部32と対応する色(赤色等)の高輝度LEDを備えている。この第1の投影部35aは、光源である赤色等の高輝度LEDを点灯又は点滅させ、この光を横壁や天井に投影させることにより、火災の発生を報知する。また、第2の投影部35bは、COガス漏れの発生を警報する機能を担っており、光源として、例えば本体表示部32と対応する色(黄色等)の高輝度LEDを備えている。この第2の投影部35bは、光源である黄色等の高輝度LEDを点灯又は点滅させ、この光を横壁や天井に投影させることにより、COガス漏れを報知する。さらに、第3の投影部35cは、都市ガス漏れの発生を警報する機能を担っており、光源として、例えば本体表示部32と対応する色(赤色等)の高輝度LEDを備えている。この第3の投影部35cは、光源である赤色等の高輝度LEDを点灯又は点滅させ、この光を横壁や天井に投影させることにより、都市ガス漏れを報知する。
【0027】
警報音出力部36は、MPU20と電気的に接続され、図示しない警報音声出力回路とスピーカとを有している。警報音声出力回路は、CPU21によって制御され、CPU21からの警報信号に応答して、音響、例えば警報音声や警報音に対応した信号をスピーカに出力する。スピーカは、警報音声出力回路から入力された信号に基づいて外部に音響を出力する。
【0028】
点検スイッチ40は、MPU20と電気的に接続され、警報器1の外部に引き出された引き紐41が接続され、作業員等によって点検時に引き紐41を介して押下される操作スイッチ等が用いられる。この点検スイッチ40は、引き紐41が引かれたときにオン状態となり、このオン状態となったことを示すオン信号をMPU20に出力する。また、引き紐41を放したときオフ状態となったことを示すオフ信号をMPU20に出力する。MPU20は、点検スイッチ40からのオン信号を「開始信号」として入力し、後述する単独点検及び連動点検については、点検スイッチ40からのオフ信号によって確定され、警報確認モードにおいては予め定めた所定時間(本実施形態では6秒)以上経過したことで確定される。
【0029】
電源・故障表示ランプ50は、MPU20と電気的に接続され、当該MPU20によって点灯又は消灯が制御される緑色のLED等が用いられる。電源・故障表示ランプ50は、前述の表示プレート33を背面側から照射し、表示プレート33に描画された電源を示すシンボル51を透過光を通じて点灯又は点滅させることにより、電源状態又は故障状態を表示する。例えば、電源・故障表示ランプ50は、警報器1が電力の供給を受けて動作している通常モードのときは点灯状態、点検モードのときは点滅状態となる。
【0030】
図3は、本実施形態にかかる警報器1の動作形態を示す説明図である。例えば、警報器1は、例えばガス栓G1やガスコンロG2を備える台所に配置されており、本体部2の背面側に設けられた固定部材を介して室内を画定する横壁S1に固定されている。ガス漏れの検出対象が都市ガスである場合、警報器1は、天井S2近傍の横壁S1といった所定位置に固定的に設置される。警報器1は、商用電源等からなる電源部PWから供給される電力によって動作している。
【0031】
このような使用環境において、警報器1は、センサ部10を収容する本体部2と、本体部2に設けられた高輝度LEDを含み、CPU21からの警報信号に応答して、この高輝度LEDからの光LTを本体部2の周囲に投影する投影部35a〜35cとを有している。
【0032】
かかる構成の警報器1によれば、警報表示を行う場合には、高輝度LEDからの光LTが本体部2の周囲に投影され、その投影光LTによって周囲の面が照らされることとなる。このように、投影光LTが広い範囲を照らし出すことで、本体部2のみが発光する場合と比較して、周囲から視認可能な範囲が広がることとなる。これにより、広範囲又は遠距離から効果的に視認することできる警報表示を行うことができるので、警報として有効に注意喚起を促すことができる。
【0033】
また、本実施形態では、光源として高輝度LEDを用いることにより、投影光LTの強度を高めることができるので、周囲からの視認性を高めることができる。
【0034】
なお、各投影部35a〜35cにおいて、光源からの光を直接的に投影した場合には、光が拡散してしまうことも考えられるので、投影レンズなどを利用して、投影される光についての指向性を高めるような工夫を施してもよい。一方、光源からの光の指向性が高いような場合には、拡散板などを利用して、投影される光の範囲を拡大するような工夫を施してもよい。また、光源の近傍に、本体表示部32と同様のシンボルを備えた表示プレートを配置し、表示プレートを透過させた上で、高輝度LEDからの光を横壁や天井に投影させてもよい。これにより、表示プレート上のシンボルが像として横壁や天井に投影されるため、警報表示の内容を容易に理解することができる。
【0035】
また、本実施形態では、警報器1は、3つの投影部35a〜35cが存在しているが、少なくとも一つ存在すればよく、また、投影表示部34を備えているのであれば、本体表示部32は省略してもよい。
【0036】
また、本実施形態において、投影部35a〜35cは、本体部2の上面2aに配置されて、上方に向かって光源からの光LTを投影している。かかる構成によれば、広範囲又は遠距離からも視認がし易い、上方の天井S2や横壁S1面に光源からの光LTが投影されるので、広範囲又は遠距離から効果的に視認することできる警報表示を行うことができる。
【0037】
また、本実施形態では、警報器1の設置時を基準として、各投影部35a〜35cを本体部2の上面2aに配置し、光源からの光LTを警報器1よりも上方の横壁S1や天井S2に投影しているが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、上方に遮蔽物があるような場合には、各投影部35a〜35cを本体部2の側面に配置し、光源からの光を警報器1の側方の横壁S1や隣接する横壁S3に投影してもよい。また、各投影部35a〜35cが光を投影する方向は、一方向に限らず、上下左右といったように2つ以上の方向であってもよい。もっとも、警報表示が適切に認識されるようにするためには、本体部2の周囲に存在する面に光源からの光が投影されるように、各投影部35a〜35cによる投影方向を設定することが好ましい。
【0038】
これに対して、都市ガスを検出対象とする場合には、警報器1が天井S2や天井S2に近い横壁S1に配置されるが、空気よりも重いLPガスを検出する場合には、警報器1は床面S4に近い横壁S1に配置される。この場合には、警報器1の設置時を基準として、各投影部35a〜35cを本体部2の下面に配置し、光源からの光LTを警報器1よりも下方の横壁S1や床面S4に投影してもよい。これにより、例えば天井S2までの距離が長い場合や、上方に遮蔽物があるようなケースであっても、投影した光LTの視認性を高めることができる。このように、本実施形態の警報器1は、投影部35a〜35cは、警報対象に応じて光の投影方向が設定されてもよい。
【0039】
以上、本実施形態にかかる警報器について説明したが、本発明はこの実施形態に限定されることなく、その発明の範囲において種々の変更が可能である。本実施形態の警報器は、火災検出部と、ガス検出部と、CO検出部とを複合的に備えるものであるが、警報器は、これらのうちの検出部を少なくとも一つ備えていれば足りる。また、例えば、警報器のガス検出部は、種々の検出対象ガスを検出できればよく、検出対象ガスを、例えば、メタンガス、プロパンガス、水素ガス等とすることもできる。
【符号の説明】
【0040】
1 警報器
2 本体部
2a 上面
10 センサ部
20 MPU
21 CPU
22 ROM
23 RAM
30 警報部
31 警報表示部
32 本体表示部
33 表示プレート
33a〜33c シンボル
34 投影表示部
35a〜35c 投影部
36 警報音出力部
40 点検スイッチ
41 引き紐
50 電源・故障表示ランプ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
監視領域で発生する警報対象を所定の周期で検出する検出手段と、
予め定められた閾値を記憶する記憶手段と、
前記所定の周期で前記検出手段の検出結果を前記閾値と比較し、前記検出結果が前記閾値を超えたときに警報信号を出力する検出処理手段と、
前記検出処理手段から出力される警報信号に応答して音響又は表示により警報を発生する警報手段と、を備えた警報器において、
前記検出手段を収容する本体部と、
前記本体部又は本体部内に設けられた光源を含み、前記検出処理手段から出力される警報信号に応答して当該光源からの光を前記本体部の周囲に投影する投影部と、
を有することを特徴とする警報器。
【請求項2】
前記投影部は、上方に向かって光源からの光を投影することを特徴とする請求項1に記載された警報器。
【請求項3】
前記投影部は、前記警報対象に応じて前記光の投影方向が設定されることを特徴とする請求項1に記載された警報器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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