説明

警報装置及び火災検出方法

【課題】COセンサのみの信号により火災を検出して、ロジックの複雑化を抑制することが可能な警報装置及び火災検出方法を提供する。
【解決手段】警報装置1は、周囲の一酸化炭素濃度を検出するCOセンサ10と、COセンサ10により検出された一酸化炭素濃度の上昇度合いから、火災を判断する火災判断部21とを備えている。この火災判断部21は、COセンサ10により検出された一酸化炭素濃度の上昇度合いが増加傾向にある場合、燻焼火災であると判断する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、警報装置及び火災検出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電気化学式COセンサには、燃料電池作動型と定電位電解型とがある。燃料電池作動型は、Nafion(登録商標)膜で代表されるパーフルオロスルホン酸構造を持つ膜(PEM膜)にPt(白金)が担持された電極をホットプレス等で圧着し、これにより作製したMEA(膜電極複合体)がセンサとして利用されている。このセンサは、精度が高く、また湿度の影響も受けにくい特徴を有している。このため、10ppmという低濃度のCOについても精度良く検出可能となっている。
【0003】
また、火災センサには、煙検知式センサと熱検知式センサとがある。ここで、煙検知式センサの場合、水蒸気により誤報したり、燻焼火災のような煙が発生し難い火災では警報までに時間が掛かり逃げ遅れの原因となったりしてしまう。また、熱検知式センサの場合、熱が上昇し難い火災や台所での使用が困難となってしまう。
【0004】
平成22年火災白書によると、火災による死者のうち逃げ遅れが原因のものは55.8%である。また死亡した原因としてCO中毒・窒息によるものが41%と最も多い結果となっている。住宅火災の発火源別死者数ではたばこが起因したものが18.9%と最も多い。
【0005】
また東京消防庁によると、CO中毒事故に至った原因の8割は換気不足であるとしている。発生場所は住宅の居室が最も多く72.1%(調理、暖をとっていた)発生している。主な事例としては、居室で火鉢に木炭を入れて暖をとっていた、台所で練炭火鉢を使用していた等が報告されている。
【0006】
従来CO、火災警報器に関する特許は多数提案されている。例えばCOセンサと火災センサの出力を判断し所定の判別レベルを超えたときに火災と判別するものが提案されている(特許文献1参照)。また、温度センサ、煙センサ、及びCOセンサそれぞれの信号を入力し、これらの微分値を用いて火災を判定するものも提案されている(特許文献2参照)。
【0007】
さらに、初期火災、本格火災の検知にCOセンサ等のガスセンサを利用し、初期火災であると判定した場合に初期火災警報を出力するものも提案されている(特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特許3761142号公報
【特許文献2】特許3032402号公報
【特許文献3】特許4425119号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかし、特許文献1〜3に記載の警報器では、COセンサ等のガスセンサと火災センサを組み合わせたり、単独のセンサの場合でも予備警報を発するロジックとなっていたりするため、COセンサのみで火災、非火災警報を出力することができない。特に、特許文献1及び2に記載の警報器では、COセンサと他のセンサと組み合わせて検出するため、ロジックが複雑となってしまう。
【0010】
本発明はこのような従来の課題を解決するためになされたものであり、その目的とするところは、COセンサのみの信号により火災を検出して、ロジックの複雑化を抑制することが可能な警報装置及び火災検出方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の警報装置は、周囲の一酸化炭素濃度を検出するCOセンサと、COセンサにより検出された一酸化炭素濃度の上昇度合いから、火災を判断する火災判断手段と、を備えることを特徴とする。
【0012】
この警報装置によれば、COセンサにより検出された一酸化炭素濃度の上昇度合いから、火災を判断する。ここで、本件発明者は、火災発生時と不完全燃焼時等とでは、一酸化炭素濃度の上昇度合いに相違があることを見出した。このため、一酸化炭素濃度の上昇度合いから、火災を判断することで、COセンサのみの信号により火災を検出して、ロジックの複雑化を抑制することができる。
【0013】
また、本発明の警報装置において、火災判断手段は、COセンサにより検出された一酸化炭素濃度が略一定の割合で上昇する場合、燃焼機器の不完全燃焼であると判断することが好ましい。
【0014】
この警報装置によれば、COセンサにより検出された一酸化炭素濃度が略一定の割合で上昇する場合、燃焼機器の不完全燃焼であると判断する。ここで、本件発明者は、不完全燃焼時に、一酸化炭素濃度が略一定の割合で上昇することを見出した。このため、一酸化炭素濃度が略一定の割合で上昇する場合、燃焼機器の不完全燃焼であると判断することで、COセンサのみの信号により、火災と誤判断してしまう可能性を低減することができる。
【0015】
また、本発明の警報装置において、火災判断手段は、COセンサにより検出された一酸化炭素濃度の上昇度合いが減少傾向にある場合、炭火又は練炭の使用であると判断することが好ましい。
【0016】
この警報装置によれば、COセンサにより検出された一酸化炭素濃度の上昇度合いが減少傾向にある場合、炭火又は練炭の使用であると判断する。ここで、本件発明者は、炭火又は練炭の使用時に、一酸化炭素濃度の上昇度合いが減少傾向にあることを見出した。このため、一酸化炭素濃度の上昇度合いが減少傾向にある場合、炭火又は練炭の使用であると判断することで、COセンサのみの信号により、火災と誤判断してしまう可能性を低減することができる。
【0017】
また、本発明の警報装置において、火災判断手段は、COセンサにより検出された一酸化炭素濃度の上昇度合いが増加傾向にある場合、燻焼火災であると判断することが好ましい。
【0018】
この警報装置によれば、COセンサにより検出された一酸化炭素濃度の上昇度合いが増加傾向にある場合、燻焼火災であると判断する。ここで、本件発明者は、燻焼火災時に、一酸化炭素濃度の上昇度合いが増加傾向にあることを見出した。このため、一酸化炭素濃度の上昇度合いが増加傾向にある場合、燻焼火災であると判断すると判断することで、COセンサのみの信号により、精度良く火災を判断することができる。
【0019】
また、本発明の警報装置の火災検出方法は、周囲の一酸化炭素濃度を検出するCOセンサからの信号を入力する第1工程と、第1工程において入力した信号から一酸化炭素濃度を算出する第2工程と、第2工程により算出された一酸化炭素の上昇度合いから、火災を判断する第3工程と、を備えることを特徴とする。
【0020】
この警報装置の火災検出方法によれば、COセンサにより検出された一酸化炭素濃度の上昇度合いから、火災を判断する。ここで、本件発明者は、火災発生時と不完全燃焼時等とでは、一酸化炭素濃度の上昇度合いに相違があることを見出した。このため、一酸化炭素濃度の上昇度合いから、火災を判断することで、COセンサのみの信号により火災を検出して、ロジックの複雑化を抑制することができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、COセンサのみの信号により火災を検出して、ロジックの複雑化を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の実施形態に係る警報装置のブロック図である。
【図2】図1に示したCOセンサの原理図である。
【図3】図2に示した電気化学式COセンサの構成図である。
【図4】給湯器やファンヒータ等の燃焼機器の不完全燃焼時における一酸化炭素濃度と温度との関係を示すグラフである。
【図5】炭火や練炭を使用した場合における一酸化炭素濃度と温度との関係を示すグラフである。
【図6】燻焼火災における一酸化炭素濃度と温度との関係を示すグラフである。
【図7】図4から図6に示した一酸化炭素濃度の微分値を示すグラフである。
【図8】本発明の実施形態に係る警報装置の火災検出方法の詳細を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の好適な実施形態を図面に基づいて説明する。図1は、本発明の実施形態に係る警報装置1のブロック図である。図1に示すように、本実施形態に係る警報装置1は、火災を判断して警報動作を実施するものであって、COセンサ10と、CPU20と、警報部30とから構成されている。
【0024】
COセンサ10は、周囲の一酸化炭素濃度を検出するものであって、具体的には図2に示す電気化学式COセンサが用いられている。図2は、図1に示したCOセンサの原理図である。電気化学式COセンサ10は、アノード電極11と、カソード電極12と、固体電解質膜13とを有している。
【0025】
アノード電極11は、一酸化炭素雰囲気に晒される部位であり、カーボンにより構成されている。カソード電極12は、アノード電極11に対向して設けられており、アノード電極11と同様にカーボンにより構成されている。また、アノード電極11及びカソード電極12には白金が担持されている。固体電解質膜13は、イオン導電性を有する固体膜である。この固体電解質膜13はアノード電極11とカソード電極12とに挟まれて配置されている。
【0026】
電気化学式COセンサ10では、アノード電極11が一酸化炭素に晒されることにより、一酸化炭素濃度に応じてアノード電極11及びカソード電極12間を電流が流れる。具体的にアノード電極11とカソード電極12とには以下のような原理で電流が流れる。
【0027】
まず、アノード電極11が一酸化炭素雰囲気に晒されると、アノード電極11に供給される水と共に以下の反応が起こる。
CO+HO→CO+2H+2e・・・・(1)
【0028】
そして、発生した水素イオンは固体電解質膜13中を移動し、カソード電極12に到達する。また、発生した電子は固体電解質膜13を介することなく配線等を介してカソード電極12に移動する。そして、カソード電極12において以下の反応が起こる。
1/2O+2H+2e→HO・・・・・(2)
【0029】
従って、トータルでは以下の反応が起こるといえる。
CO+1/2O→CO・・・・(3)
このように、電気化学式COセンサ1では一酸化炭素を二酸化炭素に変換することとなり、この過程において電子の移動が発生する。電子の移動量はアノード電極11に晒される一酸化炭素の濃度に依存するため、COセンサ10の配線等を流れる電流の値をCPU20により入力して演算することにより、一酸化炭素の濃度を算出できることとなる。
【0030】
図3は、図2に示した電気化学式COセンサ10の構成図である。図3に示すように、本実施形態に係る電気化学式COセンサ10は、図1に示したアノード電極11、カソード電極12、及び固体電解質膜13に加えて、ハウジング14と、拡散制御板15とを備えている。
【0031】
ハウジング14は、アノード電極11、カソード電極12及び固体電解質膜13等を覆う筐体であって、複数のガス導入孔14aが形成されている。このガス導入孔14aは、一酸化炭素を含む気体を導入してアノード電極11に導く役割を果たす。拡散制御板15は、ハウジング14のガス導入孔14a形成側とアノード電極11との間に介在され、導入した一酸化炭素を含む気体を拡散してアノード電極11に導くものである。
【0032】
さらに、電気化学式COセンサ10は、水タンク16、及びワッシャ17を備えている。水タンク16は、固体電解質膜13に供給する水を蓄えたものであって、ハウジング14の下部に設置され、下部から固体電解質膜13に水を供給する構成となっている。ワッシャ17は、ハウジング14を水タンク16との間に介在されたものである。水タンク16の水は、ワッシャ17の貫通孔17aを介して固体電解質膜13に供給される。
【0033】
再度、図1を参照する。CPU20は、COセンサ10からの電流値に基づいて一酸化炭素濃度を算出するものである。また、CPU20は、火災判断部(火災判断手段)21を備えている。火災判断部21は、CPU20により算出された一酸化炭素濃度に基づいて、火災を判断するものである。警報部30は、火災判断部21により火災等が判断された場合に、その旨の警報を発するものである。
【0034】
特に、本実施形態において火災判断部21は、COセンサ10からの信号(電流値)のみから火災が判断可能となっており、COセンサ10により検出された一酸化炭素濃度の上昇度合いから、火災を判断する。
【0035】
ここで、一般家庭の居室を想定した場合、一酸化炭素の発生源として以下の3点が殆どである。1つ目は、給湯器やファンヒータ等の燃焼機器が不完全燃焼することである。2つ目は、炭火や練炭の使用(例えば調理や暖をとる場合)である。3つ目は、燻焼火災である。
【0036】
これら3つには、一酸化炭素濃度の上昇度合いにおいて特徴がある。このため、火災判断部21は、COセンサ10のみから上記3つ目の燻焼火災を判断することができる。
【0037】
図4は、給湯器やファンヒータ等の燃焼機器の不完全燃焼時における一酸化炭素濃度と温度との関係を示すグラフである。図4に示すように、時刻0分において不完全燃焼が発生したとする。この際、最初の数分間で一酸化炭素濃度及び温度の上昇が見られないが、その後、一酸化炭素濃度及び温度は直線的に上昇を示す。
【0038】
図5は、炭火や練炭を使用した場合における一酸化炭素濃度と温度との関係を示すグラフである。図5に示すように、時刻0分において炭火や練炭を使用した調理等を開始したとする。この場合、35分間調理等を行っても温度上昇は殆ど見られなかった。これに対して、一酸化炭素濃度は35分後に約900ppmまで上昇しており、この時点でのCOHb濃度は約30%と頭痛等が発症する濃度となっている。また、図5から明らかなように、一酸化炭素濃度の上昇度合いは緩やかに減少しており、減少傾向にあるといえる。
【0039】
図6は、燻焼火災における一酸化炭素濃度と温度との関係を示すグラフである。図6に示すように、時刻0分において寝たばこ等により燻焼火災が発生したとする。この場合、一酸化炭素が発生するまで約30分掛かり、約150分後には600ppmもの一酸化炭素が発生していることが分かる。この時点でのCOHb濃度は約30%であった。また温度変化は最大で5℃と炭火等の使用時の結果と近い値となっている。また、図6から明らかなように、一酸化炭素濃度の上昇度合いは次第に増加しており、増加傾向にあるといえる。
【0040】
図7は、図4から図6に示した一酸化炭素濃度の微分値を示すグラフである。図7に示すように、不完全燃焼において一酸化炭素濃度は略直線的に上昇する。このため、微分値は略フラットとなる。また、炭火や練炭を使用した調理等において、一酸化炭素濃度は対数的な特性を示す。このため、時間の経過と共に傾きが小さくなる傾向(すなわち減少傾向)を示す。また、燻焼火災において、一酸化炭素濃度は50分程度100ppm以下で推移し、その後急激に上昇する傾向(すなわち増加傾向)を示す。このため、微分値についても50分程度まで変化が見られず、その後急激な変化が見られる結果となっている。
【0041】
火災判断部21は、このような特徴を捉えて火災を判断する。すなわち、火災判断部21は、図4及び図7に示したように、COセンサ10により検出された一酸化炭素濃度が略一定の割合で上昇する場合、燃焼機器の不完全燃焼であると判断する。また、火災判断部21は、図5及び図7に示したように、COセンサ10により検出された一酸化炭素濃度の上昇度合いが減少傾向にある場合、炭火又は練炭の使用であると判断する。火災判断部21は、図6及び図7に示したように、COセンサ10により検出された一酸化炭素濃度の上昇度合いが増加傾向にある場合、燻焼火災であると判断する。
【0042】
次に、本発明の実施形態に係る警報装置1の火災検出方法について説明する。図8は、本発明の実施形態に係る警報装置1の火災検出方法の詳細を示すフローチャートである。
【0043】
図8に示すように、まず、CPU20は、COセンサ10からの信号に基づいて一酸化炭素濃度が所定値(具体的には100ppm)以上であるか否かを判断する(S1)。一酸化炭素濃度が所定値(具体的には100ppm)以上であると判断した場合(S1:YES)、CPU20は、5秒から30秒の周期で一酸化炭素濃度を検出する。
【0044】
そして、火災判断部21は、蓄積された一酸化炭素濃度のデータから、一酸化炭素濃度が直線的に上昇しているか否かを判断する(S2)。ここで、直線的に上昇しているか否かは、一酸化炭素濃度の微分値が所定時間連続して所定範囲内に収まっているか否か等を判断することにより行われる。なお、直線的に上昇しているか否かの判断方法は、上記に限らず、微分値の平均値と所定の閾値との比較でもよいし、上記とは異なる他の方法であってもよい。
【0045】
一酸化炭素濃度が直線的に上昇していると判断した場合(S2:YES)、火災判断部21は、給湯器やファンヒータ等の燃焼機器の不完全燃焼であると判断する(S3)。そして、CPU20は、一酸化炭素濃度の算出を継続し、濃度が20COHbとなった段階で、警報装置30にその旨の信号を出力する。これにより、警報装置30は警報を行い(S4)、図8に示す処理は終了する。なお、この際の警報は、例えば「燃焼機器からCOが発生している可能性があります。」などの音声出力によって行われる。
【0046】
一方、一酸化炭素濃度が直線的に上昇していないと判断した場合(S2:NO)、火災判断部21は、蓄積された一酸化炭素濃度のデータから、一酸化炭素濃度の上昇度合いが減少傾向にあるか否かを判断する(S5)。ここで、一酸化炭素濃度の上昇度合いが減少傾向にあるか否かは、一酸化炭素濃度の微分値が所定時間連続して低下しているか否か等を判断することにより行われる。なお、減少傾向にあるか否かの判断方法は、上記に限らず、所定期間の微分値の平均値が低下しているか否かを判断してもよいし、上記とは異なる他の方法であってもよい。
【0047】
一酸化炭素濃度の上昇度合いが増加傾向にないと判断した場合(S5:NO)、処理はステップS1に移行する。一方、一酸化炭素濃度の上昇度合いが減少傾向にあると判断した場合(S5:YES)、火災判断部21は、炭火や練炭を使用した調理等による一酸化炭素の発生であると判断する(S6)。そして、CPU20は、一酸化炭素濃度の算出を継続し、濃度が20COHbとなった段階で、警報装置30にその旨の信号を出力する。これにより、警報装置30は警報を行い(S4)、図8に示す処理は終了する。なお、この際の警報は、例えば「調理、その他からCOが発生している可能性があります。」などの音声出力によって行われる。
【0048】
ところで、一酸化炭素濃度が所定値(具体的には100ppm)以上でないと判断した場合(S1:NO)、CPU20は、検知時間が所定時間(例えば30分)以上となったか否かを判断する(S7)。検知時間が30分以上でないと判断した場合(S7:NO)、処理はステップS1に移行する。ここで、検知時間は、例えば一酸化炭素濃度が10ppmなど、COセンサ10の分解能に相当する一酸化炭素濃度が検知されたときに開始される。なお、検知時間は上記のように開始される場合に限らず、20ppm検出時など、他のタイミングで開始されてもよい。
【0049】
一方、検知時間が30分以上であると判断した場合(S7:YES)、CPU20は、一酸化炭素濃度の監視状態に移行する。そして、CPU20は、一定時間だけCOセンサ10により検出される一酸化炭素濃度の情報を蓄積する。次いで、火災判断部21は、蓄積された一酸化炭素濃度のデータから、一酸化炭素濃度の上昇度合いが増加傾向にあるか否かを判断する(S8)。ここで、一酸化炭素濃度の上昇度合いが増加傾向にあるか否かは、一酸化炭素濃度について所定期間の微分値の平均値が連続して上昇しているか否か等を判断することにより行われる。なお、増加傾向にあるか否かの判断方法は、上記に限らず、上記とは異なる他の方法であってもよい。
【0050】
一酸化炭素濃度の上昇度合いが増加傾向にないと判断した場合(S8:NO)、処理はステップS1に移行する。一方、一酸化炭素濃度の上昇度合いが増加傾向にあると判断した場合(S8:YES)、火災判断部21は、燻焼火災による一酸化炭素の発生であると判断する(S9)。そして、CPU20は、一酸化炭素濃度の算出を継続し、濃度が20COHbとなった段階で、警報装置30にその旨の信号を出力する。これにより、警報装置30は警報を行い(S4)、図8に示す処理は終了する。なお、この際の警報は、例えば「煙が発生しない燻焼火災の可能性があります。」などの音声出力によって行われる。
【0051】
このようにして、本実施形態に係る警報装置1及び火災検出方法によれば、COセンサ10により検出された一酸化炭素濃度の上昇度合いから、火災を判断する。ここで、本件発明者は、火災発生時と不完全燃焼時等とでは、一酸化炭素濃度の上昇度合いに相違があることを見出した。このため、一酸化炭素濃度の上昇度合いから、火災を判断することで、COセンサ10のみの信号により火災を検出して、ロジックの複雑化を抑制することができる。
【0052】
また、COセンサ10により検出された一酸化炭素濃度が略一定の割合で上昇する場合、燃焼機器の不完全燃焼であると判断する。ここで、本件発明者は、不完全燃焼時に、一酸化炭素濃度が略一定の割合で上昇することを見出した。このため、一酸化炭素濃度が略一定の割合で上昇する場合、燃焼機器の不完全燃焼であると判断することで、COセンサ10のみの信号により、火災と誤判断してしまう可能性を低減することができる。
【0053】
また、COセンサ10により検出された一酸化炭素濃度の上昇度合いが減少傾向にある場合、炭火又は練炭の使用であると判断する。ここで、本件発明者は、炭火又は練炭の使用時に、一酸化炭素濃度の上昇度合いが減少傾向にあることを見出した。このため、一酸化炭素濃度の上昇度合いが減少傾向にある場合、炭火又は練炭の使用であると判断することで、COセンサ10のみの信号により、火災と誤判断してしまう可能性を低減することができる。
【0054】
また、COセンサ10により検出された一酸化炭素濃度の上昇度合いが増加傾向にある場合、燻焼火災であると判断する。ここで、本件発明者は、燻焼火災時に、一酸化炭素濃度の上昇度合いが増加傾向にあることを見出した。このため、一酸化炭素濃度の上昇度合いが増加傾向にある場合、燻焼火災であると判断すると判断することで、COセンサ10のみの信号により、精度良く火災を判断することができる。
【0055】
以上、実施形態に基づき本発明を説明したが、本発明は上記実施形態に限られるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、変更を加えてもよい。例えば、本実施形態においてCOセンサ10の構成を、材料を挙げて説明したが、材料は特に上記記載のものに限られるものではなく、適宜変更可能である。
【0056】
また、本実施形態において電気化学式COセンサ10は図3に示した構成に限らず、図2に示す原理的構成を備える範囲で適宜変更可能である。さらに、COセンサ10は、図2に示す原理以外により一酸化炭素濃度を検出するものであってもよい。
【0057】
また、本実施形態において警報装置1は、一酸化炭素濃度の上昇度合いが増加傾向にあるか否かに基づいて燻焼火災を判断しているが、これに限らず、例えば図7に示すように、微分値が激しく変動することを捉えて燻焼火災と判断してもよい。また、燻焼火災発生時の一酸化炭素濃度の波形(微分値の波形を含む)を予め記憶しておき、記憶内容との類似度から燻焼火災を判断するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0058】
1…警報装置
10…COセンサ
11…アノード電極
12…カソード電極
13…固体電解質膜
14…ハウジング
14a…ガス導入孔
15…拡散制御板
16…水タンク
17…ワッシャ
17a…貫通孔
20…CPU
21…火災判断部(火災判断手段)
30…警報部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
周囲の一酸化炭素濃度を検出するCOセンサと、
前記COセンサにより検出された一酸化炭素濃度の上昇度合いから、火災を判断する火災判断手段と、
を備えることを特徴とする警報装置。
【請求項2】
前記火災判断手段は、前記COセンサにより検出された一酸化炭素濃度が略一定の割合で上昇する場合、燃焼機器の不完全燃焼であると判断する
ことを特徴とする請求項1に記載の警報装置。
【請求項3】
前記火災判断手段は、前記COセンサにより検出された一酸化炭素濃度の上昇度合いが減少傾向にある場合、炭火又は練炭の使用であると判断する
ことを特徴とする請求項1又は請求項2のいずれかに記載の警報装置。
【請求項4】
前記火災判断手段は、前記COセンサにより検出された一酸化炭素濃度の上昇度合いが増加傾向にある場合、燻焼火災であると判断する
ことを特徴とする請求項1から請求項3のいずれかに記載の警報装置。
【請求項5】
周囲の一酸化炭素濃度を検出するCOセンサからの信号を入力する第1工程と、
前記第1工程において入力した信号から一酸化炭素濃度を算出する第2工程と、
前記第2工程により算出された一酸化炭素の上昇度合いから、火災を判断する第3工程と、
を備えることを特徴とする警報装置の火災検出方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−12109(P2013−12109A)
【公開日】平成25年1月17日(2013.1.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−145244(P2011−145244)
【出願日】平成23年6月30日(2011.6.30)
【出願人】(501418498)矢崎エナジーシステム株式会社 (79)
【Fターム(参考)】