説明

護岸用ブロック

【課題】 比較的狭い作業現場であっても護岸用ブロックの製造が可能であり、また養生期間も必要とせず、結果的に低コストの施工を可能とする新規な護岸用ブロックを開発することを課題とする。
【解決手段】 本発明の護岸用ブロックBは、複数本の脚状部12を具えた適宜の質量を有するブロック体が、他のブロック体における脚状部12と相互に絡み合うように設置されて用いられる護岸用のブロックBにおいて、このものは外殻体1を樹脂素材で形成し、その内部を中空充填部13としてここに砂利、砂を含む個粒状の充填材2を充填したことを特徴として成る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、海岸、河川等における潮波、水流等のエネルギーを減衰させる護岸用ブロックに関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えばコンクリート製の多脚ブロックを用い、これらを複数基それぞれの脚状部が絡み合うように組み合わせて海岸、河川堰堤等に設置し、護岸作用を効果的に発揮させている。このような護岸用ブロックを準備するにあたっては、通常設置現場近くに護岸用ブロックの成形作業場所いわゆるヤードを確保し、そこで金型を組み立てた上、金型内キャビティーに生コンクリートを流し込んで成形し、例えば2〜3日程度経た後、金型を外し、その後1カ月程度の養生を行い完成させている。そしてその後、比較的至近位置にある設置現場に重機等により移送して設置している。このため護岸用ブロックの成形作業場所は現場近くであって、且つ広大な作業面積を確保しなければならず、更に加えてコンクリート養生期間を確保しなければならなかった。このため作業能率の向上あるいはコスト低減等には自ずと限界が生じていた。
【0003】
また仮に設置現場近くに適当な護岸用ブロックの成形作業場所が確保できない状況の場合には、成形した護岸用ブロックを一般道路を利用して貨物車両等で設置現場まで搬送しなければならず、しかも極めて重量が重いため、大型トラックといえども1台当たりの搬送個数も1〜3個程度であり、その作業能率も上げ得ない。このように従来手法にあっては、工事期間の短縮やコスト低減を図るにせよ、一定の限界があることは止むを得ないこととされ、それ以上の改善、工夫の提案はされていない。
因みに護岸用ブロックの設置後の耐久性を考慮して、表面近くにFRP素材を適用した消波ブロックの提案もあるが(特開昭48−81335号:特許文献1)、コンクリート養生を前提とすることについては従来技術と変わりがない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開昭48−81335号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明はこのような背景を考慮してなされたものであって、比較的狭い作業現場であっても護岸用ブロックの製造が可能であり、また養生期間も必要とせず、結果的に低コストの施工を可能とする新規な護岸用ブロックを提案するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1記載の護岸用ブロックは、複数本の脚状部を具えた適宜の質量を有するブロック体が、他のブロック体における脚状部と相互に絡み合うように設置されて用いられる護岸用のブロックにおいて、このものは外殻体を樹脂素材で形成し、その内部を中空充填部としてここに砂利、砂を含む個粒状の充填材を充填したことを特徴として成るものである。
【0007】
請求項2記載の護岸用ブロックは、前記要件に加え、前記脚状部については、等四脚状に形成されていることを特徴として成るものである。
【0008】
請求項3記載の護岸用ブロックは、前記要件に加え、前記外殻体については、複数片の分割体が組み合わされて形成され、それらの組み合わせは接合部において内フランジ接合されていることを特徴として成るものである。
【発明の効果】
【0009】
まず請求項1記載の発明によれば、護岸用ブロックは、一定の強度を有する外殻体内に砂利、砂を含む充填材が充填された形態であり、外殻体を工場生産等により構成する一方、現場近くの作業は充填材の充填作業のみで済むものであり、多数基にわたる護岸用ブロックの養生を図るための広い作業面積や、作業場所の長期の占有時間も必要とせず、結果的に低コストの施工を可能とする。
【0010】
また請求項2記載の発明によれば、等四脚状の形態であり、安定性並びにこれらを複数基組み合わせたときにおける護岸用ブロック相互の絡み合いも確実であり、強固な護岸作用を呈する。
【0011】
また請求項3記載の発明によれば、前記護岸用ブロックにおける外殻体は、複数の分割体で形成されているものの、それらの組み合わせにあたっては、組み合わせを行うフランジはすべて内フランジタイプであり、外側に突出部材がなく、これに起因する破損等が生じない。また分割体はそれぞれ重ね合わせ状態での搬送荷役が可能であり、効率的な移送ができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の護岸用ブロックの一部破断斜視図である。
【図2】同上充填孔部における閉鎖蓋の取付構造を示す縦断側面図である。
【図3】本発明の護岸用ブロックの他の実施例を示す斜視図である。
【図4】同上更に他の実施例を示す斜視図である。
【図5】同上実施例における締結構造の他の実施例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の護岸用ブロックは、以下述べる実施例をその一つとするとともに、この技術思想に基づく種々の実施例、変形例をも含むものである。
【実施例】
【0014】
以下、本発明を図示の実施例に基づいて具体的に説明する。図1に示すように、護岸用ブロックBは外殻体1に対し、充填材2が充填されて形成されている。外殻体1は一例としてグラスファイバー強化プラスチック素材を適用した樹脂素材で形成されたものであり、土木計算上充分な強度を与えられたものとする。また充填材2は砂、砂利を主として用いるものである。
【0015】
以下更に詳細に説明すると、図に示す実施例は等四脚体の護岸用ブロックBであって、中胴部11に対し均等に放射方向に4本の脚状部12を突出させたものである。もちろん護岸用ブロックBの形態は、このような等四脚体のものに限らず、等六脚体、正四面枠状、正六面枠状等、適宜の形態がとり得る。等四脚体の護岸用ブロックBにあっては、その脚状部12は中胴部11側の基部側の径を太くするとともに、先端に向かうに従いやや細くなるような截頭円錐台状としている。そしてこの中胴部11と脚状部12はそれぞれ一体構成とされるものであり、内部を中空充填部13とする。なお脚状部12については、外殻体1を工場成形した後、充填材2を設置現場近くで充填作業することを考慮し、その一つは開孔脚状部12Aとして先端に充填孔14を具える。
【0016】
この充填孔14は図2(a)に示すように閉鎖蓋141により充填材2の充填が完了後閉鎖されるものであり、充填孔14と閉鎖蓋141とはネジ山15を形成することにより互いにねじ込まれて閉鎖状態を維持するものである。図中符号15Aは充填孔14の内側に形成されたメネジであり、15Bは閉鎖蓋141の外周に形成されたオネジである。そして閉鎖蓋141は、操作用凹部142を具えるものであり、適宜の締め付け器具T等の突起部を受け入れて、その締め付けが図られるようにしている。なお閉鎖蓋141を充填孔14に対し固定するにあたっては、このようなねじ込みのほか、例えば図2(b)に示すように締結体16を用いた手法でもよい。具体的には前記充填孔14の内側に張り出すようにメネジリング16Aを外殻体1と一体にモールド成形して固定し、このメネジリング16Aに適宜間隔毎にメネジ部16Cをタッピング形成するとともに、ボルト16Bにより閉鎖蓋141を固定するように図るものである。なおこのとき、ボルト16Bが閉鎖蓋141より突出しないように閉鎖蓋141にはボルト用凹部143を形成することが望ましい。
【0017】
このような構成とするときには、まず脚状部12と中胴部11とが一体に形成された外殻体1を適宜工場で生産し、これをトラック等により作業現場まで移送する。なおこのとき外殻体1は中空体であり、しかもグラスファイバー強化プラスチック等の樹脂素材であるから、極めて軽量であり、外形寸法の許す範囲で通常の大型トラック等により複数基容易に搬送できるものである。このような状態で搬送されてきた外殻体1に対し、図1(b)に示すように作業現場において充填孔14から充填材2を充填する。そして充填が完了した状態で閉鎖蓋141を充填孔14にあてがい、これを塞ぐように取り付ける。なお取り付けが前述のように、閉鎖蓋141全体をを回してねじ込んで取り付ける手法のほか、ボルト16Bをメネジリング16Aにねじ込むようなタイプの締結体16を用いてもよい。このようにした後には、その設置現場近くまで適宜の重機等により、例えばクローラ走行して移動し、所用場所に設置して工事を完了する。従って護岸用ブロックBの形成にあたっては、極端に言えば、外殻体1が作業現場に到着し、充填材2の充填が完了すれば、すぐに工事現場への設置が可能となる。
【0018】
〔他の実施例〕
更に本発明の護岸用ブロックは、このような外殻体1を一体形成したもののほか、更に搬送の便あるいは生産品のストック時における省スペース化等を図って分割形成することも可能である。まず図3に示すものは、外殻体1の分割体10であり、中胴部分割体101と、脚状部分割体102とにより構成され、全部で五体の分割体により構成されている。また図4に示す実施例は、合わせ形分割体103であって、このものはいわゆる最中状に組み合わせて用いられるものである。従って個々の合わせ形分割体103は、中胴部セグメント103Aと脚状部セグメント103Bとを一体に具えており、全体で3片の分割体により構成されている。いずれも各分割体10を接合させるにあたっては、合わせフランジ104の部位で行うものであり、これら合わせフランジ104はすべて護岸用ブロックBの内側、すなわち中空充填部13側に向かって張り出すような内フランジ状とする。これは完成時において護岸用ブロックBに突起部が存在すると、組み合わせ時に相互の重量によりその部分の破損が予想されるからであり、要はその外殻体1の外周面は突起部が生じないように図るためである。この合わせフランジ104において締結体16を用いて締結するにあたっては、最もシンプルには、図3(a)、図4(b)に示すように内側に張り出した合わせフランジ104を手作業で締結するものであり、この場合には例えば充填孔14から作業者が内部に入り手作業によりそれぞれの締結体16によるねじ止めを行う。
【0019】
もちろん更に作業性を考慮して、この締結を外部から行い得るようにすることも可能である。このときには図5に示すように締結体16が張り出さないように、合わせフランジ104の部位に外側に締結凹部105を形成し、その部位にボルト16B・ナット16D等から成る締結体16が収まるような状態とする。なお開孔脚状部12Aに関しては、例えば円弧状に分断はしているが、全体としてはリング状を呈するメネジリング16Aをモールド形成しておき、そこに閉鎖蓋141をあてがって固定するような形態をとる。
【符号の説明】
【0020】
1 外殻体
2 充填材
11 中胴部
12 脚状部
12A 開孔脚状部
13 中空充填部
14 充填孔
141 閉鎖蓋
142 操作用凹部
143 ボルト用凹部
15 ネジ山
15A メネジ
15B オネジ
16 締結体
16A メネジリング
16B ボルト
16C メネジ部
16D ナット
10 分割体
101 中胴部分割体
102 脚状部分割体
103 合わせ形分割体
103A 中胴部セグメント
103B 脚状部セグメント
104 合わせフランジ
105 締結凹部
B 護岸用ブロック
T 締め付け器具

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数本の脚状部を具えた適宜の質量を有するブロック体が、他のブロック体における脚状部と相互に絡み合うように設置されて用いられる護岸用のブロックにおいて、このものは外殻体を樹脂素材で形成し、その内部を中空充填部としてここに砂利、砂を含む個粒状の充填材を充填したことを特徴とする護岸用ブロック。
【請求項2】
前記脚状部は、等四脚状に形成されていることを特徴とする請求項1記載の護岸用ブロック。
【請求項3】
前記外殻体は、複数片の分割体が組み合わされて形成され、それらの組み合わせは接合部において内フランジ接合されていることを特徴とする請求項1または2記載の護岸用ブロック。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−214235(P2011−214235A)
【公開日】平成23年10月27日(2011.10.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−80725(P2010−80725)
【出願日】平成22年3月31日(2010.3.31)
【出願人】(510089890)
【Fターム(参考)】