説明

豆乳加工品

【課題】風味、食感を豊かにしたペースト状、ゾル状あるいはゲル状の豆乳加工品を提供しようとする。
【解決手段】豆乳に糊化した澱粉を加えることにより調製されたペースト状、ゾル状あるいはゲル状の豆乳加工品であり、大豆由来の豆乳に対して、29重量%〜52重量%の澱粉を加熱処理することにより糊化された澱粉を加えた豆乳加工品である。本豆乳加工品には、澱粉中のアミロペクチン含量が少なくとも90%である澱粉が好適に利用できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ペースト状、ゾル状あるいはゲル状の豆乳加工品に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、成人病や肥満等の健康管理に対する植物性蛋白食品の価値が見直されており、その中でも、大豆蛋白質を主成分とする豆乳への関心が高まっている。また、加工技術の進歩から大豆臭が改善されて、豆乳が飲みやすくなったため、飲用ばかりでなく牛乳のかわりとして種々の加工食品への豆乳の利用が試みられてきた。そのような状況下、種々の豆乳の加工方法の技術やそれを適用した食品が開示されている。例えば、特許文献1には大豆蛋白素材,還元澱粉分解物を配合し、さらにキレート剤存在下で二価金属イオンと大豆蛋白質を反応させることで、嚥下困難者に適した、離水が少なくまとまりのある食塊を形成する、豆腐様ゲル状食品が開示されている。特許文献2には、微結晶セルロース、ガム質、および化工澱粉から選ばれる1種又は2種以上、ならびにココナッツミルクを配合することを特徴とする豆乳スープが開示されている。特許文献3には豆乳、熱凝固性タンパク質及び澱粉を含むことを特徴とする常温流通可能な豆腐様食品が開示されている。特許文献4には、人参ジュース、粉砕された茶と液体状油脂との混合物が乳化剤で乳化されてなる茶ペースト、野菜の乾燥粉末と液体状油脂との混合物が乳化剤で乳化されてなる野菜ペースト、から選択される添加剤、豆乳、該豆乳に対して0.5〜3重量%の澱粉、豆乳を凝固する凝固剤を混合した配合豆腐が開示されている。その他数多くの文献が開示されている。豆乳にレモン汁を添加するとチーズ様になることも広く知られている。
【0003】
しかし、これらは何れも、豆乳に種々の添加剤または凝固剤を添加することによる、豆乳をゲル化させた固形食品やスープ食品である。ゲル状とスープ状の中間的な状態であるゾル状あるいはペースト状の豆乳加工品が提供できれば、豆乳の食材としての利用範囲が大幅に拡大されることになるが、今までそのようなものは入手できなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−201363号公報
【特許文献2】特開2009−159912号公報
【特許文献3】特開2004−298152号公報
【特許文献4】特開2008−228639号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、豆乳を主成分としてペースト状、ゾル状あるいはゲル状の豆乳加工品を提供するものである。本発明者は、上記目的を達成すべく配合原料について鋭意研究を重ねた結果、豆乳に糊化した澱粉を加えることによりペースト状、ゾル状あるいはゲル状の豆乳加工品が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、
(1)豆乳を主成分とする豆乳加工品であり、大豆由来の豆乳に対して、29重量%〜52重量%の澱粉を加熱処理することにより糊化された澱粉を加えた豆乳加工品。
(2)前記澱粉は、澱粉中のアミロペクチン含量が少なくとも90%である澱粉から選択される。
【発明の効果】
【0007】
本発明によると、溶液状の豆乳をペースト状、ゾル状あるいはゲル状に変換された豆乳加工品を提供できる。粘度の調整が簡単で、しかも、豆乳本来の風味、味覚を保持したままの豆乳加工品である。食感は食品の価値に重要な因子であるが、従来の豆腐や豆乳原体とは異なったまろやかな、クリーミーな食感を有する豆乳加工品を提供できる。従って、通常の副食、デザート類、あるいは嚥下食品等への応用が可能である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明における豆乳とは、豆乳類の日本農林規格(昭和56年11月16日農林水産省告示第1800号)に記載されている大豆豆乳液、つまり、大豆(粉末状のもの及び脱脂したものを除く)から熱水等により蛋白質その他の成分を溶出させ、繊維質を除去して得られた乳状の飲料であって、大豆固形分が8%以上のもの、及び調製脱脂大豆豆乳液、つまり、脱脂加工大豆(大豆を加えたものを含む。)から、熱水等により蛋白質その他の成分を溶出させ、繊維質を除去して得られたものに大豆油その他の植物油脂及び砂糖類、食塩等の調味料を加えた乳状の飲料であって、大豆固形分が6%以上のもののことをいう。
【0009】
本発明で用いる澱粉は、食用として供されるもので、加熱処理により糊化され、豆乳と混合攪拌して豆乳液をペースト状に変換しうるものであれば特に限定するものではない。豆乳をペースト状に変換しうる澱粉の例として、例えば、イモ類由来澱粉、コーンスターチ、片栗由来澱粉、もち米由来澱粉、うるち米由来澱粉、小麦由来澱粉、その他植物由来澱粉の中から選択される。そして、種々の粉体として市販されているものを用いることが出来る。その例として、片栗粉、葛粉、白玉粉などが挙げられる。澱粉の配合量は、29%〜52%が好ましく、40%〜50%がより好ましい。澱粉の配合量が前記範囲より少なくなると、豆乳をペースト状、ゾル状あるいはゲル状に変換する効果が得られにくくなり、一方、前記範囲より多くなると、豆乳加工品の粘度が高くなり、本来の食感が得られなくなる傾向が見られるため、好ましくない。
【0010】
本発明で用いる澱粉は、糊化作用が強いものが好適であり、その構成成分のアミロペクチンが少なくとも90%であるものが好適に用いられる。
【0011】
調製しようとする豆乳に対して29重量%〜52重量%の澱粉を準備し、それを調製しようとする豆乳の一部で練り団子状の塊を調製する。その塊を沸騰しているお湯にいれて数分加熱すると、澱粉が糊化される。その糊化した塊と、調製しようとする豆乳をミキサー等で均一に混和することによりペースト状、ゾル状あるいはゲル状の豆乳加工品が得られる。
【0012】
本発明においては、本発明の効果を損なわない範囲で豆乳加工品に一般的に使用されている原料を適宜選択し配合してもよい。このような原料としては、例えば、砂糖、水飴、蜂蜜等の糖類、スクラロース、ステビア、アスパルテーム等の高甘味度甘味料、エリスリトール、マルチトール等の糖アルコール、ブイヨン、コーン、カボチャ等のペースト状物、食塩、重曹、無機塩類、梅酢、柑橘果汁等の各種調味料、植物油類、クエン酸、酒石酸、コハク酸、リンゴ酸等の有機酸又はその塩、香辛料、アスコルビン酸、ビタミンE等の酸化防止剤、色素、香料、乳酸菌類あるいは豆腐等を混和して、粘度の調整、食感の調整、味付け、色付け、香り付け等を行ったものも本発明に含まれる。
【0013】
その他、本発明は、主旨を逸脱しない範囲で当業者の知識に基づき種々なる改良、修正、変更を加えた態様で実施できるものである。
【実施例】
【0014】
[実施例1]
豆乳:135g、もち米由来100%の澱粉(商品名:白玉粉 株式会社神戸物産KM製):60g(澱粉量(豆乳に対する比率%)は、約44.4%)を準備し、澱粉に少量の豆乳を加え、練り合わせ団子を作成した、その団子を親指の大きさ程度にちぎり取り、沸騰水中で5分間加熱した。浮き上がった団子を残りの豆乳に混ぜ、ミキサーにかけ均一になるまで混合した(約10分間)。上記工程により、豆乳はペースト状に変換された。器にいれたペーストを茶匙で持ち上げて、切れずに持ち上がる高さを測定しペーストの性状を検討したところ、10cmの高さまで伸びた。該ペーストの食感は、なめらか、まろやか、クリーミーであった。
【0015】
[実施例2及び比較例1]
澱粉(商品名:白玉粉 株式会社神戸物産KM製)の量を70g、40g、30g、20gと変化させた以外は実施例1と同様に操作してペーストを調製した。器にいれたペーストを茶匙で持ち上げて、切れずに持ち上がる高さを測定しペーストの性状を検討した。その結果を表1に示した。
【0016】
【表1】

以上の実施例1,2の結果より、澱粉量は45%前後が好適であることがわかった。
【0017】
[実施例3]
用いる澱粉の成分による違いを調べるために、100%アミロペクチンからなるもち米由来の澱粉と、80%のアミロペクチンと20%アミロースと分析されているうるち米由来の澱粉を各比率で混合した澱粉を用いて実施例1と同様に操作してペーストを調製した。
調製したペーストの評価を実施例2と同様に行った。
その結果を表2に示した。
【0018】
【表2】

以上より、澱粉中のアミロペクチンの比率が90%少なくともあれことが有効であることがわかった。なお、ここでの「フワフワ」とはスポンジのような状態であることを指す。
【0019】
[比較例1]
豆乳:135g、うるち米由来100%の澱粉(商品名:料理・ケーキ用米粉「コメッ粉」 五百城ニユートリイ株式会社製):60gを準備し、澱粉に少量の豆乳を加え、練り合わせ団子を作成した、その団子を親指の大きさ程度にちぎり取り、残りの豆乳に混ぜ、ミキサーにかけ均一になるまで混合し、さらに1時間ミキサーにかけたが、豆乳はペースト状にならなかった。従って、澱粉を糊化することが必須であることが判った。
【0020】
[比較例2]
豆乳の代わりに、大豆の煮汁を用いて、実施例1と同様に操作してペーストが出来るか否かを確かめた。ペーストは形成されなかった。従って、ペースト形成には豆乳成分が必須であることが分かった。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
大豆由来の豆乳に対して、29重量%〜52重量%の澱粉を加熱処理することにより糊化された澱粉を加えた豆乳加工品。
【請求項2】
澱粉中のアミロペクチン含量が少なくとも90%である請求項1に記載の豆乳加工品。

【公開番号】特開2013−85520(P2013−85520A)
【公開日】平成25年5月13日(2013.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−229306(P2011−229306)
【出願日】平成23年10月18日(2011.10.18)
【出願人】(511270941)株式会社あんじんさん (1)
【Fターム(参考)】