説明

豆腐を主成分とした菓子類及びその製法

【課題】 公知の高カロリーな大豆蛋白含有菓子類について、健康ニーズに沿った低カロリーにすること、および、バランスの採れた栄養素を含み、ソフトな食感を維持して美味しく食せるようにすると共に、香味を失わないで長期に保存できるようにすること。
【解決手段】 本発明に係る豆腐を主成分とした菓子類は、粉砕してクリーム状に形成した主原料の豆腐を8重量部と、卵白を1.5重量部と、調味料としての砂糖を2重量部と、小麦粉を2.5重量部と、植物油を0.35重量部と、膨張剤を0.05重量部とからなり、前記クリーム状の豆腐をベースにして、前記卵白と、調味料と、小麦粉と植物油と膨張剤とを加えて均一に混合・練捏して菓子生地とし、該菓子生地を270℃(±5℃)の温度で少なくとも20分間焼成して得られたものであって、豆腐を粉砕してクリーム状にしたものが使用されることによって、アミノ酸バランスの良い良質の植物性タンパク質が主体であるため、低カロリーで全体がスポンジ状のケーキになるのであり、しかも、カルシウム、マグネシウム、大豆イソフラボン等の栄養素も含まれているので、健康ニーズに沿った菓子であり、また、長期に亘って香味・風味およびソフトな質感が劣化または変質しないのである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主原料として大豆タンパク質が凝集した豆腐を使用し、これに所要の栄養成分及び調味成分を加えて焼成した菓子類及びその製法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、肥満解消などの健康ニーズから、大豆タンパクを利用した食品に関心が高まっており、この種の菓子類分野においても、以前から健康食品として大豆タンパクを用いた製品が開発されて公知になっている。その第1の公知例としては、分離大豆蛋白と小麦粉の配合比が夫々30〜70:70〜30(重量比)からなる混合物100重量部に対し、少なくとも卵白および全卵の何れか一方が10〜30重量部、および膨化剤0.2〜3重量部の割合の混合物を、送風条件下、マイクロ波加熱処理することを特徴とする膨化食品の製造方法であり、混合物(生地)については、実施例1で具体的に記載しているように、混捏器に卵白10部、バター5部、ベーキングパウダー0.2部、水80部を入れ均一に混合し、これに分離大豆蛋白60部、小麦粉40部を加え、よく撹拌したものである(特許文献1参照)。
【0003】
この製造方法で得られた膨化食品は、膨化率2〜8倍程度、固形分55〜90重量%程度のケーキ様、パン様、クッキー様等の膨化食品で、スナック食品、菓子、食品素材など多方面に利用できる。また、膨化食品は、大豆蛋白を高度に含有し、栄養的に優れると共に風味、食感等の嗜好性をも十分に満足させ得る食品が得られる。さらに、固形分80〜90重量%の製品は保存性にもすぐれていると共に水分および澱粉が少ないので食品の老化現象を防止でき、よい風味を長期間保つことができるというものである。
【0004】
また、第2の公知例は、大豆蛋白及び凝固剤を含む小麦粉ドウを焼成する焼菓子の製造法であり、具体的には、小麦粉ドウが、小麦粉100重量部に対して、大豆蛋白固形分1〜20重量部、アルカリ土類金属塩の凝固剤0.1〜1重量部、主成分が炭酸水素アンモニウムである膨張剤を0.1〜3部含有する焼菓子の製造法である(特許文献2参照)。
【0005】
この製造法で得られた焼菓子は、ビスケットやクッキーであって、製造法において、大豆蛋白及び凝固剤を用いることにより、製造プロセス上の問題がなく、乳成分を使用せずとも乳味・こく味を呈する風味良好な焼菓子を得られ、また大豆蛋白を比較的多量に用い特定の膨張剤を使用することによって、卵成分に依拠せずとも、卵成分使用製品に匹敵しうる食感・外観の製品を売ることができるというものである。
【0006】
さらに、第3の公知例は、小麦、乳、卵を含まない菓子生地であって、大豆蛋白、小麦を除く澱粉含有物及び油脂を含む大豆蛋白含有菓子生地であり、具体的には、大豆蛋白質含量が50重量%以上である大豆蛋白、小麦を除く澱粉含有物及び油脂を含み、大豆蛋白含有菓子生地中の大豆蛋白質含量が0.7〜12重量%の範囲にあり、大豆蛋白含有菓子生地の比重が0.44〜0.81であることを特徴とする大豆蛋白含有菓子生地と、その菓子生地を加熱してなる大豆蛋白含有菓子である(特許文献3参照)。
【0007】
そして、従来の菓子に使用されてきた小麦、乳、卵及びこれらの加工品を使用しないで、大豆蛋白を主要原料にして、具体的にはスポンジケーキ、バターケーキ、クッキー等の大豆蛋白含有菓子を提供することが可能になった。また、アレルギー食品表示に関して、小麦、そば、卵、乳及び落花生の5品目がアレルギー物質を含む特定原材料に挙げられており、上記の大豆蛋白含有菓子が、これらの原料を使用しないのでアレルギー物質表示がいらないというものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平01−144936号公報
【特許文献2】特開平11−169063号公報
【特許文献3】特開2006−61029号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、前記特許文献1に記載された分離大豆蛋白としては、市販の粉末状分離大豆蛋白が使用されることを明確にしており、しかも、実施例として、卵白10部、バター5部、ベーキングパウダー0.2部、水80部を入れ均一に混合し、これに分離大豆蛋白60部、小麦粉40部を加え、よく練捏するとしており、最初に水を加えて液状物を造ってから粉末状の材料を入れて練捏することが要件であり、しかも、マイクロ波により3分の短時間で焼成することが特定されており、それでは、量的な要素にもよるが十分な焼成(水分蒸発)ができないのであり、商品の劣化(賞味期限が短い)は免れないばかりでなく、小麦粉の使用量が多いので高カロリーになっているという問題点を有する。
【0010】
また、前記特許文献2に記載された大豆蛋白は、具体的に豆乳、濃縮大豆蛋白、分離大豆蛋白であり、しかも、小麦粉100重量部に対して、大豆蛋白を1〜20重量部を混合しており、依然として小麦粉の量が多いことからして、高カロリーであって肥満解消などの健康ニーズに反するという問題点を有している。
【0011】
さらに、前記特許文献3に記載された菓子生地は、小麦粉、乳、卵を除外して、しかも、菓子生地中の大豆蛋白含量が0.7〜12重量%の範囲にあるとしており、大豆蛋白の使用量が少なく他の澱粉含量が多いので、低カロリーにはならないのであり、やはり、肥満解消などの健康ニーズに反するという問題点を有している。
【0012】
従って、従来公知の大豆蛋白含有菓子類は、依然として、高カロリーであって、健康ニーズに沿った低カロリーにすること、および、バランスの採れた栄養素を含み、ソフトな食感を維持して美味しく食せるようにすると共に、香味を失わないで長期に保存できるようにすることに解決課題を有する。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、前述の従来例の課題を解決する具体的手段として、第1の発明は、粉砕してクリーム状に形成した主原料の豆腐を8重量部と、卵白を1.5重量部と、調味料としての砂糖を2重量部と、小麦粉を2.5重量部と、植物油を0.35重量部と、膨張剤を0.05重量部とからなり、前記クリーム状の豆腐をベースにして、前記卵白と、調味料と、小麦粉と植物油と膨張剤とを加えて均一に混合・練捏して菓子生地とし、該菓子生地を270℃の温度で少なくとも20分間焼成して得られた豆腐を主成分とした菓子類である。
【0014】
この発明の菓子類において、主原料の豆腐が、絹漉し豆腐、木綿豆腐、絞り豆腐のいずれかであること;及び100g中にカルシウムを15mg以上と、マグネシウム15mg以上とを含み、カロリーが210kcal以下で、水分を38%以下にしたこと、を付加的な要件として含むものである。
【0015】
また、第2の発明は、主原料として8重量部の豆腐をミキサーに入れ3分間駆動してクリーム状にする工程と、該クリーム状豆腐の中に、1.5重量部の卵白と、2.0重量部の白砂糖と、2.5重量部の小麦粉と、0.35重量部の植物油と、0.05重量部の膨張剤とを加えて均一に混合・捏混して生地を造る工程と、該生地を所要大きさの容器に所要量入れる工程と、該容器をオーブンに入れて270℃(±5℃)で少なくとも20分間焼成する工程とからなることを特徴とする豆腐を主成分とした菓子類の製法である。
【0016】
この発明の製造方法においては、主原料の豆腐が、絹漉し豆腐、木綿豆腐、絞り豆腐のいずれかであること、を付加的な要件として含むものである。
【発明の効果】
【0017】
本発明に係る豆腐を主成分とした菓子類は、豆腐を粉砕してクリーム状にしたものが使用されることによって、アミノ酸バランスの良い良質の植物性タンパク質が主体であるため、低カロリーで全体がスポンジ状のケーキになるのであり、しかも、カルシウム、マグネシウム、大豆イソフラボン等の栄養素も含まれているので、健康ニーズに沿った菓子であり、また、長期に亘って香味・風味およびソフトな質感が劣化または変質しないという優れた効果を奏する。
また、本発明に係る製法では、まず最初に、豆腐をミキサーでクリーム状に形成するので、クリーム状豆腐には、無数の細かい気泡が満遍なく含まれることによって、他の材料と混合し練捏する時に、全体が均等に混ざり易く、しかも、焼き上げた時にソフト感とシットリ感が顕著なスポンジ状ケーキ(カステラ)の菓子になるという優れた効果を奏する。
【発明を実施するための形態】
【0018】
次に、本発明を具体的な実施の形態に基づいて詳しく説明する。
まず、本発明では、前記従来例のような粉末状分離大豆蛋白を使用するのではなく、大豆蛋白が凝縮された豆腐を主原料として使用するのであり、その豆腐としては、絹漉し豆腐、木綿豆腐、絞り豆腐のいずれも使用できるが、その中でも、絹漉し豆腐を使用するのが好ましい。この主原料の豆腐を所要量、例えば、ミキサー等に投入し所要時間に亘って粉砕・撹拌してクリーム状にする。
【0019】
このクリーム状にした豆腐に、所要量の小麦粉と、卵白と、調味料と、植物油と、膨張剤などを入れて全体をよく混合し練捏して粘性のある生地を造る。この生地を所要大きさの容器(型箱)に入れ、該型箱をオーブンに入れて所要時間に亘って生地を焼き上げることにより、スポンジ状のケーキ(カステラ)の菓子が得られ、その後型箱から焼き上がったスポンジ状のケーキ(カステラ)の菓子を取り出して所要大きさに切断し、所要の容器等に詰めて商品とするのである。その他に、前記生地を小さな型に入れて焼くことにより、例えば、ビスケットなどの菓子類が得られるのである。
【0020】
このようにして得られたスポンジ状のケーキは、主原料が豆腐であるため、アミノ酸バランスの良い良質の植物性タンパク質であると共に、カルシウム、マグネシウム、大豆イソフラボン等の栄養素も含まれているので、低カロリーのケーキに仕上がるのであり、また、しっとりした食感やソフト感のあるケーキになるのである。また、ビスケットなどの菓子類は表面がカリッとした食感があって美味しく食することができるのである。
【実施例1】
【0021】
以下、本発明について具体的な実施例を挙げて説明する。即ち、次の工程によって製造される。
a. 絹漉し豆腐8,000gをミキサーに入れ、3分間駆動してクリーム状にする。
b. そのクリーム状豆腐の中(ミキサー内)に、卵白1,500g、白砂糖2,000g、小麦粉2,500g、植物油350g、膨張剤50gを加えて3分間駆動して混合・捏混することで生地を造る。
c. 容器(型箱)(480mm×380mm×65mm)好ましくは木製の型箱にグラシン紙を敷き、前記生地2,500gを入れて適宜のヘラで平らにする(6型箱分取れた)。
d. これら型箱をオーブンに入れ、270℃で約25分間焼成した。
e. オーブンより型箱を取り出し、スポンジ状に焼けたケーキを型箱から取り出して所要大きさに切断する。
f. 約1時間程度自然放冷した後に所要の容器に入れて包装し商品とする。
【0022】
これらの使用材料を重量部で表すと、要するに、粉砕してクリーム状にした豆腐を8重量部と、卵白を1.5重量部と、調味料としての砂糖を2重量部と、小麦粉を2.5重量部と、植物油を0.35重量部と、膨張剤を0.05重量部とを混合・練捏して菓子生地を造り、該菓子生地を所要の大きさの容器(型箱)に入れ、該容器をオーブンに入れて、270℃程度(±5℃)の温度で少なくとも20分間、好ましくは25分間程度焼成することにより、スポンジ状のケーキ(カステラ)を得るものである、といえるのである。この場合に、各使用材料の量については、それぞれ10%前後増減させることができるのであり、それによって、食感と味覚とが多少違ったりするが、基本的には豆腐を主原料として低カロリーを維持できるのであり、その範囲まで変更することは、本願発明の範疇に含まれるのである。また、包装については、外気をほぼ遮断できる所要の容器、例えば、プラスチック製容器を用いることが好ましい。
【0023】
この場合の具体的な配合例と、カロリーについては表1に示すとおりである。
【0024】
【表1】

なお、豆腐をミキサーに入れて粉砕してクリーム状にすることによって、細かい気泡を満遍なく抱き込んで流動性のある液状になるのであり、その後に加えられる材料と良く混ざり合うようになるのである。また、木綿漉しもしくは絞り豆腐を使用する場合には、必要があれば、水分、例えば、水または豆乳等を添加してもよい。
【0025】
このようにして焼成されたスポンジ状のケーキ(カステラ)は、その成分として100g中にカルシウムを15mg以上と、マグネシウム15mg以上とを含むと共に、カロリーが210kcal以下で、水分を38%以下にすることが好ましいのである。そして、焼成後に所要の容器に入れて包装した状態で、常温の室内で30日間保存した後においても、香味やソフトな質感に変わりがなく美味しく食せることが確認できたのである。したがって、長期間に亘って変質が生じないことが証明されているのである。
【産業上の利用可能性】
【0026】
このように本発明に係る豆腐を主原料とした菓子類は、アミノ酸バランスの良い良質の植物性タンパク質が主体であるため、低カロリーで全体がスポンジ状のケーキになるのであり、しかも、カルシウム、マグネシウム、大豆イソフラボン等の栄養素も含まれているので、健康食品として適しているのであり、また、絹漉し豆腐を使用することによって、菓子生地を造る際に、余分な水を使用しなくて適度な軟らかさの生地ができるのであり、さらに、木綿漉しまたは絞り豆腐を使用する場合には、例えば、ビスケット等の菓子生地として適しているのであり、あくまでも豆腐を主原料として多くの菓子類の製造に広く利用される可能性が大である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
粉砕してクリーム状に形成した主原料の豆腐を8重量部と、卵白を1.5重量部と、調味料としての砂糖を2重量部と、小麦粉を2.5重量部と、植物油を0.35重量部と、膨張剤を0.05重量部とからなり、
前記クリーム状の豆腐をベースにして、前記卵白と、調味料と、小麦粉と植物油と膨張剤とを加えて均一に混合・練捏して菓子生地とし、
該菓子生地を270℃(±5℃)の温度で少なくとも20分間焼成して得られた
豆腐を主成分とした菓子類。
【請求項2】
主原料の豆腐が、絹漉し豆腐、木綿豆腐、絞り豆腐のいずれかであること
を特徴とする請求項1に記載の豆腐を主成分とした菓子類。
【請求項3】
100g中にカルシウムを15mg以上と、マグネシウム15mg以上とを含み、カロリーが210kcal以下で、水分を38%以下にしたこと
を特徴とする請求項1乃至2に記載の菓子類。
【請求項4】
主原料として8重量部の豆腐をミキサーに入れ3分間駆動してクリーム状にする工程と、
該クリーム状豆腐の中に、1.5重量部の卵白と、2.0重量部の白砂糖と、2.5重量部の小麦粉と、0.35重量部の植物油と、0.05重量部の膨張剤とを加えて均一に混合・捏混して生地を造る工程と、
該生地を所要大きさの容器に所要量入れる工程と、
該容器をオーブンに入れて270℃(±5℃)で少なくとも20分間焼成する工程とからなること
を特徴とする豆腐を主成分とした菓子類の製法。
【請求項5】
主原料の豆腐が、絹漉し豆腐、木綿豆腐、絞り豆腐のいずれかであること
を特徴とする請求項4に記載の豆腐を主成分とした菓子類の製法。

【公開番号】特開2012−213329(P2012−213329A)
【公開日】平成24年11月8日(2012.11.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−78803(P2011−78803)
【出願日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【出願人】(598176695)大山豆腐株式会社 (6)
【Fターム(参考)】