象牙質に関連する症状または疾患を予防または治療する組成物及び方法
【課題】象牙質に関連する症状または疾患を予防または治療する組成物及び方法を提供する。
【解決手段】本発明は、カルシウムイオン担体と、前記カルシウムイオン担体に担持されたカルシウムを含有する粒子と、を含む口歯用製剤を提供する。これにより、本発明の口歯用製剤は、象牙質に関連する症状または疾患を予防または速やかに治療することができ、さらに、予防または治療の効果を持続的に提供することができる。
【解決手段】本発明は、カルシウムイオン担体と、前記カルシウムイオン担体に担持されたカルシウムを含有する粒子と、を含む口歯用製剤を提供する。これにより、本発明の口歯用製剤は、象牙質に関連する症状または疾患を予防または速やかに治療することができ、さらに、予防または治療の効果を持続的に提供することができる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、口歯用製剤、特に、象牙質に関連する症状または疾患を予防また治療する口歯用製剤に関する。
【背景技術】
【0002】
象牙質(dentin)は、歯の主体を構成する組織であり、エナメル質と歯髄の間に位置しており、その組成は70%が無機質、20%が有機物、10%が水分である。硬度はエナメル質より低いが、セメント質より高い。象牙細管(dentinal tubule)は象牙質全体を貫き、歯髄の表面からエナメル質に向って放射状に配列しており、また、象牙細管は、歯髄の側に近づくほど太く、表面の側に近づくほど細く、走行中に多数の側枝が分岐している。
【0003】
よく見られる象牙質に関連する疾患または症状は痛みを生じ、例えば、齲歯(dental caries)、歯の摩耗(tooth wearing)、エナメル質の欠損(enamel loss)、または象牙質知覚過敏症(dentin hypersensitivity)などを含む。
【0004】
象牙質知覚過敏症については、歯の知覚過敏症(tooth hypersensitivity)または知覚過敏性象牙質(hypersensitive dentin)とも呼ばれ、これまで象牙質知覚過敏症を緩和する様々な商品や方法が続々と開発されてきたが、速やかにかつ持続的な緩和効果を提供することができる商品や方法は未だに実現されていない。
【0005】
一般的に、象牙質知覚過敏症についての臨床治療法は、以下の2種類のタイプを含む:(1)化学的減感作療法、及び(2)物理的減感作療法。
【0006】
化学的減感作療法としては、従来、コルチコステロイド(corticosteroids)を用いることにより炎症反応を抑制する。しかし、この方法で提供される治療効果は芳しくない。
【0007】
また、同じく化学的減感作療法であるタンパク質沈殿法(protein precipitation)は、化学薬剤を利用して、象牙細管内のタンパク質を凝固させ変性させる。例えば、硝酸銀、フェノール、ホルムアルデヒドまたは塩化ストロンチウムを含有する製剤を使用して、象牙細管内または周縁の歯肉におけるコラーゲンを破壊し、さらに象牙細管の開口を塞ぐ沈殿物を形成する。しかし、このような製剤は、歯髄と歯肉を刺激し、しかも再発率が極めて高い。それだけでなく、硝酸銀は歯を永久的に黒く染める。
【0008】
さらに、化学的減感作療法は、歯髄神経を麻痺させる治療法も含む。例えば、市販の脱感作歯磨きペーストは、硝酸カリウムを使用することにより、歯髄神経が刺激される能力を抑制する。しかし、臨床症例によると、脱感作歯磨きペーストを2週間使用し続けなければ患者の痛みを緩和することができず、しかも治療効果も数ヶ月しかもたない。すなわち、前記の歯髄神経を麻痺させる治療法では、速やかにかつ長期的な治療効果を提供することができず、しかも硝酸カリウムを長期間使用すると、歯髄神経を麻痺させる関連疾患をもたらすことになる。
【0009】
一方、物理的減感作療法としては、例えば、樹脂、グラスアイオノマーセメント(glass ionomer cement)またはその類似物を含む象牙細管封止剤(sealant)を使用し、象牙細管の開口を直接封鎖することが挙げられる。例えば、Jensenらによって、1987年に、樹脂型象牙質接着剤(bonding agent)を使用して象牙細管を直接封鎖する方法が発表された(非特許文献1:“A comparative study of two clinical techniques for treatment of root surface hypersensitivity,” Gen. Dent. 35:128-132.)。この方法では、象牙質知覚過敏症による痛みをすぐに緩和することができるが、長期的な治療効果を提供することができない。詳しく述べると、臨床症例によれば、治療6ヶ月後、樹脂型接着剤が歯の表面から大量に脱落することになる。グラスアイオノマーセメントについては、Lowらによって、1981年に、グラスアイオノマーを使用して象牙質知覚過敏症を治療することが発表された(非特許文献2:“The treatment of hypersensitive cervical abrasion cavities using ASPA cement,” J. Oral Rehabil. 8(1):81-9.)。グラスアイオノマーは治療効果を提供することができるが、このような材料は、恒常的な歯磨きによって除去される。また、Hansenらによって、1992年に、樹脂補強型グラスアイオノマーを使用して象牙質知覚過敏症を治療することが発表されたが、同様に長期的な治療効果を提供することができない(非特許文献3:“Dentin hypersensitivity treated with a fluoride-containing varnish or a light-cured glass-ionomer liner,” Scand. J. Dent. Res. 100(6):305-9)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】“A comparative study of two clinical techniques for treatment of root surface hypersensitivity,” Gen. Dent. 35:128-132., 1987年
【非特許文献2】“The treatment of hypersensitive cervical abrasion cavities using ASPA cement,” J. Oral Rehabil. 8(1):81-9., 1981年
【非特許文献3】“Dentin hypersensitivity treated with a fluoride-containing varnish or a light-cured glass-ionomer liner,” Scand. J. Dent. Res. 100(6):305-9., 1992年
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
上記のように、象牙質に関連する症状または疾患について、如何にして、速やかにかつ持続的な緩和効果を提供するかが、早期解決が望まれる課題となっている。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題に鑑みて、本発明は、カルシウムイオン担体と、前記カルシウムイオン担体に担持された、カルシウムを含有する粒子と、を含む口歯用製剤を提供する。これにより、本発明の口歯用製剤は、象牙質に関連する症状または疾患を予防または速やかに治療することができ、さらに、持続的な予防または治療の効果を提供することができる。
【0013】
また、本発明は、個体の口腔に対して本発明の上記口歯用製剤を適用することを含む、象牙質に関連する症状または疾患を予防または治療する方法を提供する。
【0014】
また、本発明は、カルシウムを含有する粒子、カルシウム及びリンを含有する粒子、フッ素を含有する粒子又はそれらの組み合わせを含む微粒子の組成物を提供する工程と、前記組成物と酸性溶液を混合して製剤を形成する工程と、個体の口腔に対して前記製剤を適用する工程とを含む歯科治療方法を提供する。
【0015】
また、本発明は、各微粒子が複数の孔を有し、孔の孔径が1nm〜100nmである複数の微粒子と、カルシウムを含有する成分、リンを含有する成分、カルシウム及びリンを含有する成分、フッ素を含有する成分又はそれらの組み合わせと、を含む口腔ケア用組成物を提供する。これにより、本発明の口腔ケア用組成物は、象牙質に関連する症状または疾患を予防または速やかに治療することができ、さらに、持続的な予防または治療の効果を提供することができる。
【0016】
また、本発明は、個体の口腔に対して本発明の上記口腔ケア用組成物を適用することを含む、象牙質に関連する症状または疾患を予防または治療する方法を提供する。
【0017】
また、本発明は、本発明の上記口腔ケア用組成物を含む製品であって、歯科用品、歯磨きペースト、歯磨き粉、口内軟膏、チューインガム、チュアブル錠、トローチ、口内洗浄液、歯ブラシ又は貼付シートなどの製品を提供する。
【発明の効果】
【0018】
従って、本発明によれば、象牙質に関連する症状または疾患を予防または速やかに治療することができ、さらに、持続的な予防または治療の効果を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の実施例のCa-Siベース多孔質粒子のSEM観察結果を示す図である。
【図2a】本発明の実施例のCaCO3@孔SiO2製剤が塗布された象牙質試験片のSEM観察結果を示す図である。
【図2b】本発明の比較例のSeal&Protect(登録商標)が塗布された象牙質試験片のSEM観察結果を示す図である。
【図3a】本発明の実施例のCaCO3@孔SiO2製剤が塗布された犬生体の象牙質試験片のSEM観察結果を示す図である。
【図3b】本発明の比較例のSeal&Protect(登録商標)が塗布された犬生体の象牙質試験片のSEM観察結果を示す図である。
【図4a】本発明の実施例のCaCO3@孔SiO2製剤が塗布された犬生体の象牙質試験片の歯髄組織形態の観察結果を示す図である。
【図4b】本発明の比較例のSeal&Protect(登録商標)が塗布された犬生体の象牙質試験片の歯髄組織形態の観察結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、特定の具体的な実施例により、本発明を実施するための形態を説明する。本技術分野に習熟した者は、本明細書に開示された内容によって簡単に本発明の他の利点や効果を理解することができる。本発明は、他の異なる具体的な実施例によって施行又は応用することもでき、本明細書における各項の詳しい内容も、異なる観点と応用に基づいて、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、異なる修正と変更を施すことができる。
【0021】
従来の課題を解決するために、様々な実験を行った後、本発明の発明者は、カルシウムイオン担体と、前記カルシウムイオン担体に担持されたカルシウムを含有する粒子と、を含む口歯用製剤を完成させた。
【0022】
本発明の口歯用製剤の示すに形態は、制限がなく、好ましくはゲル状、ペースト状(paste)、スラリー状(slurry)、エマルション状又はグルー状(glue)である。
【0023】
本発明のカルシウムイオン担体にも制限がなく、有機物または無機物で構成されることができる。さらに、いくつかの好ましい実施例において、カルシウムイオン担体を構成する有機物はポリマーであってもよく、好ましくは多孔質ポリマーである。いくつかの好ましい実施例において、カルシウムイオン担体を構成する有機物はエステル系ポリマー又はオレフィン系ポリマーであってもよい。例えば、好ましいエステル系ポリマーはアクリル系ポリマーまたはポリスチレンを含んでもよく、好ましいオレフィン系ポリマーはナイロンを含んでもよい。また、カルシウムイオン担体は、アクリル系ポリマー、ポリスチレン及びナイロンの組み合わせで構成されてもよい。
【0024】
また、カルシウムイオン担体を構成する無機物について、いくつかの好ましい実施例において、用いることができる無機物は酸化物を含む。カルシウムイオン担体を構成する酸化物には制限がなく、好ましい酸化物は、例えば、二酸化ケイ素、アルミノケイ酸塩、二酸化チタン、酸化亜鉛、酸化アルミニウムまたはそれらの組み合わせを含む。
【0025】
本発明の口腔ケア用製剤の好ましい実施例において、本発明のカルシウムイオン担体は複数の孔を有する微粒子である。さらに、本発明のカルシウムイオン担体にカルシウム粒子を担持させる方法には制限がなく、好ましくは前記微粒子の孔に吸着させる。
【0026】
本発明のカルシウムを含有する粒子には制限がなく、好ましくは、酸化カルシウム、塩化カルシウム、炭酸カルシウム、硝酸カルシウム、水酸化カルシウム、カルシウム塩またはそれらの組み合わせで構成される。いくつかの好ましい実施例において、カルシウムを含有する粒子は、リンをさらに含んでも良い。さらに、本発明のリンを含むカルシウムを含有する粒子には制限がなく、好ましくは、リン酸カルシウム、ヒドロキシアパタイト(hydroxyapatite)、リン酸三カルシウム、リン酸四カルシウム、リン酸水素カルシウム(CaHPO4)、リン酸八カルシウム(Ca8H2(PO4)6・5H2O)、ピロリン酸カルシウム(Ca2P2O7)、バイオガラス(Na2O-CaO-SiO2-P2O5)またはそれらの組み合わせで構成される。
【0027】
本発明の口腔ケア用製剤の好ましい実施例において、本発明の口歯用製剤のpH値は2〜10の範囲であって、好ましくは7〜10の範囲である。
【0028】
本発明の口歯用製剤に含まれる上記成分は、本発明の好ましい実施例を説明するためのものに過ぎず、本発明の範囲を限定するものではない。すなわち、本発明の口歯用製剤は、カルシウムイオン担体に担持されたカルシウムを含有する粒子からカルシウムイオンを放出させるカルシウムイオン放出剤をさらに含むことができる。具体的には、本発明のカルシウムイオン放出剤は酸性溶液であってもよく、好ましくはリン酸、シュウ酸及びクエン酸からなる群から選ばれる少なくとも一つであり、より好ましくはリン酸である。前記酸性溶液は、リン酸、シュウ酸及びクエン酸のいずれかに関連または類似する有機酸または無機酸であってもよい。
【0029】
本発明の口腔ケア用製剤の好ましい実施例において、リン酸の濃度は1%〜65%の範囲であって、好ましくは25%〜45%の範囲であり、より好ましくは31%〜40%の範囲である。
【0030】
本発明の口腔ケア用製剤の別の好ましい実施例において、カルシウムイオン放出剤が酸性溶液である場合、カルシウムを含有する粒子を担持したカルシウムイオン担体に対して、酸性溶液の含有量の比率は1〜10mL/gの範囲であって、より好ましくは、カルシウムを含有する粒子を担持したカルシウムイオン担体に対して、酸性溶液の含有量の比率は2〜5mL/gの範囲である。
【0031】
上記のように、本発明の口腔ケア用製剤は、必要に応じて、酸性溶液を含有するかまたは含有しなくてもよく、そのpH値は2〜10の範囲である。一つの具体的な実施例において、そのpH値は7〜10の範囲である。また、酸性溶液を含有する場合、本発明の口歯用製剤のpH値は4〜7の範囲であって、好ましくは5〜6の範囲である。
【0032】
また、本発明の口歯用製剤は、上記成分以外の他の成分をさらに含んでもよい。具体的には、本発明の口歯用製剤は、フッ素を含有する成分をさらに含んでもよく、前記フッ素を含有する成分は、フッ素を含有する化合物、例えばフッ化物塩であってもよい。好ましくは、前記フッ素を含有する成分は、上記本発明のカルシウムイオン担体に担持される。いくつかの好ましい実施例において、フッ素を含有する成分は、フッ化アンモニウム、フッ化カルシウム、フッ化ナトリウム、フッ化カリウム、フッ化スズ(stannous fluoride)、フッ化アルミニウム、モノフルオロリン酸ナトリウム(sodium monofluorophosphate)、ヘキサフルオロケイ酸ナトリウム(sodium hexafluorosilicate)及びそれらの組み合わせからなる群から選ばれる一つである。また、本発明の口歯用製剤はpH値安定剤をさらに含んでも良い。
【0033】
本発明の口腔ケア用製剤の別の好ましい実施例において、微粒子の粒径は0.1μm〜100μmの範囲であり、孔の孔径は1nm〜100nmの範囲である。好ましくは、孔の孔径は2nm〜50nmの範囲である。
【0034】
本発明の別の態様によれば、本発明は、個体の口腔に対して本発明の上記製剤を適用することを含む、象牙質に関連する症状または疾患を予防または治療する方法をさらに提供する。詳しく述べると、上記方法で予防または治療することができる象牙質に関連する症状には制限がなく、本発明の方法で予防または治療することができる象牙質に関連する症状としては、象牙質知覚過敏症、亀裂歯症候群(crack tooth syndrome)、エナメル質の欠損(enamel loss)、象牙質の欠損、セメント質の欠損、または歯科手術後の知覚過敏症を含む。上記エナメル質の欠損、象牙質の欠損またはセメント質の欠損は、通常、歯が腐食、摩損、摩耗または亀裂することにより引き起こされる。上記歯科手術後の知覚過敏症は、通常、歯の漂白、補綴または修復の歯科手術後に生じる。
【0035】
一方、本発明の方法で予防または治療することができる象牙質に関連する疾患には制限がなく、好ましくは、齲歯(dental caries)、歯根部齲蝕(root caries)、歯の破折(tooth fracture)、歯根部破折(root fracture)、歯頸部摩耗(cervical abrasion)、歯の摩耗(tooth wearing)、または象牙質に関連する歯髄疾患である。
【0036】
本発明のまた別の態様によれば、本発明は、カルシウムを含有する粒子、カルシウム及びリンを含有する粒子、フッ素を含有する粒子又はそれらの組み合わせを含む微粒子の組成物を提供する工程と、前記組成物と酸性溶液を混合して製剤を形成する工程と、個体の口腔に対して前記製剤を適用する工程とを含む歯科治療方法を提供する。
【0037】
本発明の歯科治療方法の好ましい実施例において、微粒子は、孔径が1nm〜100nmである複数の孔を有しており、カルシウムを含有する粒子、カルシウム及びリンを含有する粒子、フッ素を含有する粒子又はそれらの組み合わせが、前記微粒子の前記複数の孔に吸着される。
【0038】
本発明の歯科治療方法の別の好ましい実施例において、上記酸性溶液は、リン酸、シュウ酸及びクエン酸からなる群から選ばれる少なくとも一つである。前記酸性溶液はリン酸であることが好ましく、この場合、リン酸の濃度は1%〜65%の範囲であってもよく、好ましくは25%〜45%の範囲であり、より好ましくは31%〜40%の範囲である。
【0039】
本発明の歯科治療方法のまた別の好ましい実施例において、製剤を形成する工程において、前記カルシウムを含有する粒子、前記カルシウム及びリンを含有する粒子、前記フッ素を含有する粒子又はそれらの組み合わせが吸着された微粒子に対して、酸性溶液の含有量の比率は1〜10mL/gの範囲である。好ましくは、製剤を形成する工程において、前記カルシウムを含有する粒子、前記カルシウム及びリンを含有する粒子、前記フッ素を含有する粒子又はそれらの組み合わせが吸着した微粒子に対して、酸性溶液の含有量の比率は2〜5mL/gの範囲である。また、製剤を形成する工程において、形成された製剤はゲル状(gel)、ペースト状(paste)、スラリー状(slurry)、エマルション状又はグルー状(glue)を呈することが好ましい。
【0040】
別の好ましい実施例において、本発明の歯科治療方法は、個体の口腔に対してpH値が7以上の水溶液を適用する工程をさらに含む。本発明の歯科治療方法で適用される水溶液には制限がなく、好ましくはアルカリ性水、または実験室で調製されたアルカリ性溶液であってもよい。上記アルカリ性水としては、任意の供給源から得られたアルカリ性水、例えば、市販のアルカリ性水、または実験室で調製されたアルカリ性水であってもよく、また、上記アルカリ性水のpH値が7より大きいことが好ましい。
【0041】
また別の好ましい実施例において、本発明の歯科治療方法は、個体の口腔に対して水を適用する工程をさらに含む。より好ましくは、個体の口腔に対してアルカリ性溶液を適用する前に、予め上記個体の口腔に対して水を適用しておく。さらに、個体の口腔に対して水を適用する回数には制限がなく、好ましくは少なくとも2回である。
【0042】
本発明の別の態様によれば、本発明は、それぞれ複数の孔を有し、孔の孔径が1nm〜100nmである複数の微粒子と、カルシウムを含有する成分、リンを含有する成分、カルシウム及びリンを含有する成分、フッ素を含有する成分又はそれらの組み合わせと、を含む口腔ケア用組成物を提供する。
【0043】
本発明の口腔ケア用組成物の好ましい実施例において、本発明のカルシウムを含有する成分、リンを含有する成分、カルシウム及びリンを含有する成分、フッ素を含有する成分又はそれらの組み合わせは、複数の微粒子の孔に吸着される。
【0044】
本発明の微粒子を構成する材料には制限がなく、無機物で構成されることが好ましく、酸化物で構成されることもできる。例えば、微粒子を構成するための好ましい酸化物は、二酸化ケイ素、アルミノケイ酸塩、二酸化チタン、酸化亜鉛、酸化アルミニウムまたはそれらの組み合わせを含む。より好ましくは、本発明の微粒子は二酸化ケイ素で構成される。
【0045】
二酸化ケイ素で構成される微粒子について、二酸化ケイ素の供給源には制限がなく、二酸化ケイ素を含む有機物または二酸化ケイ素を含む無機物であってもよい。具体的には、二酸化ケイ素微粒子は、好ましくはケイ酸塩、水ガラスまたはテトラアルコキシシランで形成されることができる。
【0046】
また、本発明のカルシウムを含有する成分には制限がなく、好ましくは、酸化カルシウム、塩化カルシウム、炭酸カルシウム、硝酸カルシウム、水酸化カルシウム、カルシウム塩及びそれらの組み合わせからなる群から選ばれる。
【0047】
本発明のリンを含有する成分には制限がなく、好ましくは、リン酸、リン酸ナトリウム、リン酸カリウム、リン酸塩、リン酸水素塩(hydrogen phosphate)、リン酸二水素塩(dihydrogen phosphate)及びそれらの組み合わせからなる群から選ばれる。
【0048】
本発明のカルシウム及びリンを含有する成分には制限がなく、好ましくは、リン酸カルシウム、ヒドロキシアパタイト(hydroxyapatite)、リン酸三カルシウム、リン酸四カルシウム、リン酸水素カルシウム(無水リン酸水素カルシウム(CaHPO4)、リン酸水素カルシウム水和物(CaHPO4・2H2O))、リン酸八カルシウム、ピロリン酸カルシウム(Ca2P2O7)及びバイオガラス(Na2O-CaO-SiO2-P2O5)からなる群から選ばれる。
【0049】
本発明のフッ素を含有する成分には制限がなく、好ましくは、フッ化ナトリウム、フッ素を含有する化合物及び塩類からなる群から選ばれるものであり、より好ましくはフッ化ナトリウムである。
【0050】
また、本発明の口腔ケア用組成物に含まれる上記成分は、本発明の好ましい実施例を説明するためのものに過ぎず、本発明の範囲を限定するものではない。すなわち、本発明の口腔ケア用組成物は、上記成分以外の他の成分をさらに含んでも良い。
【0051】
例えば、上記本発明の口歯用製剤と同様に、本発明の口腔ケア用組成物は、フッ素を含有する成分をさらに含んでもよい。前記フッ素を含有する成分は、フッ素を含有する化合物、例えばフッ化物塩であってもよい。好ましくは、前記フッ素を含有する成分は、フッ化アンモニウム、フッ化カルシウム、フッ化ナトリウム、フッ化カリウム、フッ化スズ(stannous fluoride)、フッ化アルミニウム、モノフルオロリン酸ナトリウム(sodium monofluorophosphate)、ヘキサフルオロケイ酸ナトリウム(sodium hexafluorosilicate)及びそれらの組み合わせからなる群から選ばれる。また、本発明の口腔ケア用組成物はpH値安定剤をさらに含んでも良い。
【0052】
本発明の口腔ケア用組成物の別の好ましい実施例において、微粒子における孔の孔径が2nm〜50nmの範囲であり、微粒子の粒径は0.1μm〜100μmの範囲である。
【0053】
本発明の口腔ケア用組成物のまた別の好ましい実施例において、本発明の口腔ケア用組成物のpH値には制限がなく、好ましくはpH値は2〜10の範囲であり、より好ましくは、実際の必要に応じて、7〜10、4〜7、または5〜6のいずれかの範囲である。
【0054】
また、本発明の口腔ケア用組成物の製造方法には制限がない。例えば、順次ゾルゲル法(sol-gel)を用いることにより、複数の孔を有する微粒子を形成し、また、含浸法(impregnation)を用いることにより、カルシウムを含有する成分、リンを含有する成分、カルシウム及びリンを含有する成分、フッ素を含有する成分又はそれらの組み合わせを微粒子の孔に吸着させ、それにより本発明の口腔ケア用組成物を製造することができる。
【0055】
本発明のまた別の態様によれば、本発明は、個体の口腔に対して本発明の上記組成物を適用することを含む、象牙質に関連する症状または疾患を予防または治療する方法をさらに提供する。詳しく述べると、上記本発明の組成物を適用する方法で予防または治療することができる象牙質に関連する症状には制限がなく、好ましくは、象牙質知覚過敏症、亀裂歯症候群(crack tooth syndrome)、エナメル質の欠損(enamel loss)、象牙質の欠損、セメント質の欠損、または歯科手術後の知覚過敏症を含む。一方、上記本発明の組成物を適用する方法で予防または治療することができる象牙質に関連する疾患には制限がなく、好ましくは、齲歯(dental caries)、歯根部齲食(root caries)、歯の破折(tooth fracture)、歯根部破折(root fracture)、歯頸部摩耗(cervical abrasion)、歯の摩耗(tooth wearing)、または象牙質に関連する歯髄疾患を含む。
【0056】
本発明の別の態様によれば、本発明は、上記本発明の組成物を含む製品であって、歯科用品、歯磨きペースト、歯磨き粉、口内軟膏、チューインガム、チュアブル錠、トローチ、口内洗浄液、歯ブラシ又は貼付シートを含む製品を提供する。好ましくは、上記本発明の組成物に係る歯科用品は、歯科用セメント(dental cement)、歯科用接着剤(dental bonding agent)、歯科用磁質粉末(dental porcelain powder)、歯髄覆罩材(pulp capping materials)、逆根管充填材(retrograde filling material)、根管充填材(root canal filling materials)またはコンポジットレジン充填材(composite resin filling materials)を含む。
【0057】
特に、生活歯髄療法(vital pulp therapy)を行うとき、上記歯髄覆罩材を用いて直接または間接的に覆髄処置を行うことができる。また、上記逆根管充填材は、充填材として歯根尖切除術に用いられることができる。
【実施例】
【0058】
実施例1:二酸化ケイ素からなる多孔質微粒子の合成
ゼラチン1gを脱イオン水25gに加え、40℃の恒温水槽に置いて、完全に溶解するまで約15分間攪拌し、ゼラチン水溶液を形成した。
【0059】
続いて、ケイ酸ナトリウム4gを水100gに溶かして、40℃の恒温水槽に置いて約2分間攪拌し、ケイ酸ナトリウム水溶液を形成した。
【0060】
一方、6Mの硫酸溶液(約3.0mL)を水100gに加え、均一に攪拌し、pH値が約1である酸性水溶液を調製した。ケイ酸ナトリウム水溶液と酸性水溶液とを混合し、pH値を5程度に調整した。続いて、ケイ酸ナトリウムを3分間熟成させ、さらに上記ゼラチン水溶液を加え、40℃の恒温水槽に置いて、完全に反応するまで約2時間攪拌した。
【0061】
そして、すべての溶液(原液を含む)を材質がポリプロペン(polypropene、PP)である水熱瓶(hydrothermal bottle)に注入し、100℃のオーブンに置いて水熱反応を1日間行った。得られた生成物をろ過、水洗い、乾燥した後、ゼラチン分子を含有する多孔質二酸化ケイ素材料を得た。最後に、600℃で12時間焼成し、有機物を除去した後、二酸化ケイ素の多孔質微粒子を得た。
【0062】
また、溶液のpH値及び水熱反応の日数を調整することにより、二酸化ケイ素材料の孔の大きさを制御することができ、さらに、酸化ケイ素の供給源及びゼラチン分子との重量割合を変更することにより、必要に応じて異なるサイズの微粒子を製造することができる。
【0063】
実施例2:炭酸カルシウムを含有する二酸化ケイ素の多孔質微粒子の製造
シュウ酸0.09gを脱イオン水10gに溶かして、炭酸カルシウム0.84gを加え、第1中間溶液を形成した。続いて、アルコール10gを第1中間溶液に加え、攪拌した後、実施例1で合成された二酸化ケイ素からなる多孔質微粒子0.5gを加え、第2中間溶液を形成した。
【0064】
上記第2中間溶液を乾燥するまで攪拌し、オーブンに入れ、100℃で1日間静置した。続いて、オーブンから取り出した生成物を空気が流れる高温炉に入れ、200℃〜400℃に昇温し、温度を5時間保持した。最後に、炭酸カルシウムを含有する二酸化ケイ素の多孔質微粒子(以下、Ca-Siベース多孔質粒子(Ca-Si based porous particle)と略称する)を得た。図1に、本実施例のCa-Siベース多孔質粒子のSEM観察結果を示す。
【0065】
ここで、理解すべきことは、本実施例は例示的に本発明の内容を説明するものに過ぎず、本発明の範囲を限定するものではないことである。すなわち、炭酸カルシウムを除いて、本実施例の方法は、必要に応じて他の成分を含有する多孔質微粒子、例えば、リン酸カルシウムを含有する二酸化ケイ素の多孔質微粒子の製造に用いられることができる。さらに、リン酸カルシウムを含有する二酸化ケイ素の多孔質微粒子の製造方法は、本実施例の方法とは大体同じであって、主な相違点は、第1中間溶液を形成する工程において、炭酸カルシウムの代わりにリン酸カルシウムを使用することのみである。
【0066】
実施例3:Ca-Siベース多孔質粒子を含有する製剤の製造
脱イオン水で、市販の85.7%リン酸(J.T. BAKER NALYZED, USA)を濃度31%のリン酸溶液に希釈した。実施例2で得られたCa-Siベース多孔質粒子0.05gと濃度31%のリン酸溶液0.15mLとを混合し、炭酸カルシウムを含有する二酸化ケイ素の多孔質微粒子の製剤(以下、CaCO3@孔SiO2製剤と略称する)を調製した。
【0067】
比較例1:Seal&Protect(登録商標)製剤
市販のSeal&Protect(登録商標)(Desensitizer、Dentsply DeTrey、Konstanz、Germany)の樹脂型象牙質接着剤を提供した。Seal&Protect(登録商標)は光硬化性自己粘着型封止剤(light-curing and self-adhesive sealant)であり、ウレタンジメタクリレート樹脂(urethane dimethacrylate resin)、重合性トリメタクリレート樹脂(polymerizable trimethacrylate resins)、ジペンタエリスリトールペンタアクリレートホスフェート(dipentaerythritol pentaacrylate phosphate)及び非晶質二酸化ケイ素(amorphous silicon dioxide)といった成分からなる。
【0068】
<試験例1:インビトロにおける、象牙細管に対する封鎖効果>
抜いた直後のヒトの大臼歯と小臼歯を合わせて20本を集めた。それらの歯冠は完全であり、齲蝕がなく、充填材も一切なかった。歯科用超音波洗浄機(Sonicflex 2000、Kayo Co Biberbach、Germany)で、それらの大臼歯と小臼歯の表面の歯石と歯周組織を除去した。続いて、それらの大臼歯と小臼歯を4℃の蒸留水に保存し、象牙質の鮮度を保持した。
【0069】
製剤を塗布する前に、歯を取り出し、低速切断機(Isomet low speed saw、Buehler LTD.,)を用いて、すべての歯の咬合面のエナメル質を水平方向に除去し、さらに歯頸部の方向に沿って1.5mmの長さを切断し、象牙質試験片を得た。続いて、尖形裂溝状バー(196l tapered fissure bur)を用いて、試験片の実験領域の裏面に溝を形成し、試験片が切断されるべき方向に導く。37.5%のリン酸エッチングゲル(Gel etchant、Kerr Co USA)を用いて、象牙質試験片を40秒間酸エッチングした。そして、大量の蒸留水で塗布層を洗い流し、試験片の表面を風で吹き乾かした。
【0070】
実施例3の製剤と比較例1のSeal&Protect(登録商標)をそれぞれ用いて、下記の各操作方法により試験片に塗布した。
実施例3のCaCO3@孔SiO2製剤については、小さなブラシで製剤を試験片の表面に塗布してきつく押し付けた。3分間経った後、清水で表面の薬剤を洗い流した。続いて、上記工程を3回繰り返し、3回目は、pH値が9であるアルカリ性水で表面の薬剤を洗い流した。
【0071】
比較例1のSeal&Protect(登録商標)については、Seal&Protect(登録商標)を歯のサンプルの表面に塗布し、20秒間作用させた。続いて、5秒間空気を吹きつけ、10秒間光を照射した。そして、再びSeal&Protect(登録商標)を歯のサンプルの表面に塗布した。続いて、5秒間空気を吹きつけ、10秒間光を照射した。これにより、Seal&Protect(登録商標)の塗布を完了した。
【0072】
最後に、電界放射型走査電子顕微鏡(SEM、Field Emission Scanning Electronic Microscope、Hitachi S-800、Hitachi Co., Tokyo, Japan)を利用して、各組の試験片において、象牙細管内の沈殿物の深さを観察した。
【0073】
図2aと図2bはそれぞれ各組の試験片のSEM観察結果を示す。詳しく述べると、図2aは実施例3のCaCO3@孔SiO2製剤が塗布された象牙質試験片のSEM観察結果を示し、図2bは比較例1のSeal&Protect(登録商標)が塗布された象牙質試験片のSEM観察結果を示す。
【0074】
比較した結果、象牙細管内において、比較例1のSeal&Protect(登録商標)で提供された沈殿物の深さは僅か10μmであり、沈殿物と象牙細管壁との間にはまだ間隙が存在し、象牙細管を完全に封鎖することができない(図2bを参照)のに対し、実施例3の製剤は約60μmの長い沈殿物の深さを提供し、しかも象牙細管をほとんど100%封鎖したことが分かった。すなわち、実施例3のCaCO3@孔SiO2製剤は、象牙質に対する好ましい封鎖効果を提供することができる。
【0075】
<試験例2:インビトロにおける、象牙細管に対する浸透性試験>
フローモデル試験により、実施例3の製剤と比較例1のSeal&Protect(登録商標)がそれぞれ塗布された象牙質が示す浸透性を評価した。測定された浸透性が低いほど、象牙質を封鎖する効果がより優れることを示す。
【0076】
フローモデル試験の操作については、まず、ガラス管1本を提供して、ガラス管の一方の端を象牙質試験片で封止し、ガラス管のもう一方の端に0.15 g/cm2の圧力源を提供し、ガラス管において1個の気泡を形成した。72時間が経った後、基準距離(base line)として気泡の移動距離を測定した。続いて、圧力を持続的に与える状態で、前記象牙質試験片に塗布し、72時間が経った後、再び気泡の移動距離、すなわち、浸透距離を測定した。最後に、基準距離と浸透距離を下記式に代入し、象牙質の浸透性を計算した。
【0077】
浸透性(%)=基準距離/浸透距離×100%
【0078】
象牙質試験片に塗布する工程は、塗布材料によって異なる。
【0079】
詳しく述べると、実施例3の製剤については、製剤を象牙質試験片の表面に塗布し、緻密になるまで押し付けた。10分が経った後、水で象牙質試験片の表面を洗い流した。
【0080】
比較例1のSeal&Protect(登録商標)については、Seal&Protect(登録商標)を歯のサンプルの表面に塗布し、20秒間作用させた。続いて、5秒間空気を吹きつけ、10秒間光を照射した。そして、再びSeal&Protect(登録商標)を歯のサンプルの表面に塗布した。続いて、5秒間空気を吹きつけ、10秒間光を照射した。結果は、比較例1のSeal&Protect(登録商標)の象牙質試験片の示す浸透性が約40%であり、実施例3のCaCO3@孔SiO2製剤が塗布された象牙質試験片の示す浸透性が約15%であることを示した。すなわち、本発明の実施例3のCaCO3@孔SiO2製剤は、より好ましい象牙質封鎖効果を提供する。
【0081】
<試験例3:動物実験における、象牙細管に対する封鎖効果>
犬に麻酔を施し、歯科用の噴射ノズルを備えた高速ハンドピースで、犬の両側の上犬歯、下犬歯及び第一大臼歯における頬側の歯頸部に、長さが約5mm、幅が約3mm、深さが約1.5〜2mmの窩洞を開けた。続いて、歯科用の濃度37.5%のリン酸エッチングゲル(Gel etchant、Kerr Co. CA, USA)を使用して、40秒間酸エッチングし、塗布層を除去した。この後、大量の清水で、歯の表面の酸エッチングゲルを洗い流し、充填対象となる歯のサンプルを形成した。
【0082】
実施例3の製剤と比較例1の製剤をそれぞれ用いて、下記の各操作方法により歯のサンプルに充填した。
【0083】
実施例3の製剤については、象牙質窩洞によって暴露された歯のサンプルの表面に、製剤を塗布してきつく押し付けた。3分が経った後、塗布された歯のサンプルを、蒸留水で濡らした綿球で拭いた。続いて、上記拭く工程を3回繰り返し、3回目は、pH値が9であるアルカリ性水で濡らした綿球で拭いた。そして、自己重合性グラスアイオノマー(GC Fuji II(登録商標)、GC、Tokyo、Japan)を用いて窩洞を充填した。
【0084】
比較例1のSeal&Protect(登録商標)については、Seal&Protect(登録商標)を歯のサンプルの表面に塗布し、20秒間作用させた。続いて、5秒間空気を吹きつけ、10秒間光を照射した。そして、再びSeal&Protect(登録商標)を歯のサンプルの表面に塗布した。続いて、5秒間空気を吹きつけ、10秒間光を照射した。Seal&Protect(登録商標)の塗布が完了した後、自己重合性グラスアイオノマー(GC Fuji II(登録商標)、GC、Tokyo、Japan)を用いて窩洞を充填した。
【0085】
一週間後、各組の歯のサンプルを抜いた。続いて、歯のサンプルを切開し、試験片を作製した。そして、電界放射型走査電子顕微鏡(Field Emission Scanning Electronic Microscope、Hitachi S-800, Hitachi Co., Tokyo, Japan)を利用して、各組の試験片における、象牙細管内の沈殿物の深さを観察した。
【0086】
図3aと図3bはそれぞれ各組の試験片のSEM観察結果を示す。詳しく述べると、図3aは実施例3のCaCO3@孔SiO2製剤が塗布された犬生体の象牙質試験片のSEM観察結果を示し、図3bは比較例1のSeal&Protect(登録商標)が塗布された犬生体の象牙質試験片のSEM観察結果を示す。
【0087】
比較した結果、象牙細管内において、比較例1のSeal&Protect(登録商標)は象牙質表面に1層の樹脂層が覆いかぶさり、その樹脂層と象牙質表面とは密着せず、象牙細管内に入る樹脂も僅か5μmである(図3bを参照)のに対し、実施例3の製剤は約40μmの長い沈殿物の深さを提供し、しかもほとんど完全に象牙細管を封鎖した(図3aを参照)ことが分かった。すなわち、実施例3のCaCO3@孔SiO2製剤は、象牙質により好ましい封鎖効果を提供することができる。
【0088】
<試験例4:歯髄刺激性の評価>
ISO-7405歯髄刺激性試験(pulp irritation test)の規定に従って、歯髄刺激性を評価した。
【0089】
まず、犬に麻酔を施した後、歯科用の噴射ノズルを備えた高速ハンドピースで、犬の両側の上犬歯、下犬歯及び第一大臼歯における頬側の歯頸部に、長さが約5mm、幅が約3mm、深さが約1.5〜2mmの窩洞を開けた。続いて、歯科用の濃度37.5%のリン酸エッチングゲル(Gel etchant、Kerr Co. CA、USA)を使用して、40秒間酸エッチングし、塗布層を除去した。この後、大量の清水で、歯の表面の酸エッチングゲルを洗い流し、充填対象となる歯のサンプルを形成した。
【0090】
実施例3の製剤と比較例1のSeal&Protect(登録商標)をそれぞれ用いて、下記の各操作方法により歯のサンプルに充填した。
【0091】
実施例3のCaCO3@孔SiO2製剤については、象牙質窩洞によって暴露された歯のサンプルの表面に、製剤を塗布してきつく押し付けた。3分が経った後、塗布された歯のサンプルを、蒸留水で濡らした綿球で拭いた。続いて、上記拭く工程を3回繰り返し、3回目は、pH値が9であるアルカリ性水で濡らした綿球で拭いた。そして、自己重合性グラスアイオノマー(GC Fuji II(登録商標)、GC、Tokyo、Japan)を用いて窩洞を充填した。
【0092】
比較例1のSeal&Protect(登録商標)については、Seal&Protect(登録商標)を歯のサンプルの表面に塗布し、20秒間作用させた。続いて、5秒間空気を吹きつけ、10秒間光を照射した。そして、再びSeal&Protect(登録商標)を歯のサンプルの表面に塗布した。続いて、5秒間空気を吹きつけ、10秒間光を照射した。Seal&Protect(登録商標)の塗布が完了した後、自己重合性グラスアイオノマー(GC Fuji II(登録商標)、GC、Tokyo、Japan)を用いて窩洞を充填した。
【0093】
続いて、7日目、28日目、70日目にて、それぞれISO-7405歯髄刺激性試験(pulp irritation test)の規定に従って、各組の充填された歯のサンプルを取り、歯髄刺激性試験片を作製した。次に、光学顕微鏡を利用して、各組の試験片における、歯髄腔内の細胞炎症の程度を観察した。
【0094】
図4aと図4bは、各組の試験片の7日目での歯髄腔内の細胞炎症の程度の観察結果をそれぞれ示す。詳しく述べると、図4aは実施例3のCaCO3@孔SiO2製剤が塗布された犬生体の象牙質試験片の歯髄組織形態の観察結果を示し、図4bは比較例1のSeal&Protect(登録商標)が塗布された犬生体の象牙質試験片の歯髄組織形態の観察結果を示す。
【0095】
図4bに示されるように、比較例1のSeal&Protect(登録商標)が充填された試験片は中等度炎症を示した。詳しく述べると、その歯髄組織内において、細胞の密度が高めであり、リンパ球が浸潤し、血管に赤血球が充満することが観察された。
【0096】
逆に、図4aに示されるように、実施例3のCaCO3@孔SiO2製剤が充填された試験片は、炎症がなく、またはあったとしても軽度炎症の状態を示した。詳しく述べると、その歯髄組織は正常な歯髄組織とは見た目が同じであり、組織において、炎症細胞がなく、またはあったとしても僅かな炎症細胞があるに過ぎず、血管新生または赤血球の歯髄組織への漏出もない。
【0097】
試験例4の結果より、実施例3のCaCO3@孔SiO2製剤は、長期間にわたる強い抗炎症能力を提供することが分かる。これにより、本発明の実施例3のCaCO3@孔SiO2製剤は、より長い期間の治療効果を提供することができる。
【0098】
上記の実施例は例示的に本発明の組成物とその製造方法を述べるものに過ぎず、本発明を限定するものではない。本技術分野に習熟した者は、本発明の趣旨及び範囲から逸脱しない限り、上記の実施例に各種修正と変更を施すことができる。従って、本発明の主張する権利範囲は、特許請求の範囲に記載される通りである。
【技術分野】
【0001】
本発明は、口歯用製剤、特に、象牙質に関連する症状または疾患を予防また治療する口歯用製剤に関する。
【背景技術】
【0002】
象牙質(dentin)は、歯の主体を構成する組織であり、エナメル質と歯髄の間に位置しており、その組成は70%が無機質、20%が有機物、10%が水分である。硬度はエナメル質より低いが、セメント質より高い。象牙細管(dentinal tubule)は象牙質全体を貫き、歯髄の表面からエナメル質に向って放射状に配列しており、また、象牙細管は、歯髄の側に近づくほど太く、表面の側に近づくほど細く、走行中に多数の側枝が分岐している。
【0003】
よく見られる象牙質に関連する疾患または症状は痛みを生じ、例えば、齲歯(dental caries)、歯の摩耗(tooth wearing)、エナメル質の欠損(enamel loss)、または象牙質知覚過敏症(dentin hypersensitivity)などを含む。
【0004】
象牙質知覚過敏症については、歯の知覚過敏症(tooth hypersensitivity)または知覚過敏性象牙質(hypersensitive dentin)とも呼ばれ、これまで象牙質知覚過敏症を緩和する様々な商品や方法が続々と開発されてきたが、速やかにかつ持続的な緩和効果を提供することができる商品や方法は未だに実現されていない。
【0005】
一般的に、象牙質知覚過敏症についての臨床治療法は、以下の2種類のタイプを含む:(1)化学的減感作療法、及び(2)物理的減感作療法。
【0006】
化学的減感作療法としては、従来、コルチコステロイド(corticosteroids)を用いることにより炎症反応を抑制する。しかし、この方法で提供される治療効果は芳しくない。
【0007】
また、同じく化学的減感作療法であるタンパク質沈殿法(protein precipitation)は、化学薬剤を利用して、象牙細管内のタンパク質を凝固させ変性させる。例えば、硝酸銀、フェノール、ホルムアルデヒドまたは塩化ストロンチウムを含有する製剤を使用して、象牙細管内または周縁の歯肉におけるコラーゲンを破壊し、さらに象牙細管の開口を塞ぐ沈殿物を形成する。しかし、このような製剤は、歯髄と歯肉を刺激し、しかも再発率が極めて高い。それだけでなく、硝酸銀は歯を永久的に黒く染める。
【0008】
さらに、化学的減感作療法は、歯髄神経を麻痺させる治療法も含む。例えば、市販の脱感作歯磨きペーストは、硝酸カリウムを使用することにより、歯髄神経が刺激される能力を抑制する。しかし、臨床症例によると、脱感作歯磨きペーストを2週間使用し続けなければ患者の痛みを緩和することができず、しかも治療効果も数ヶ月しかもたない。すなわち、前記の歯髄神経を麻痺させる治療法では、速やかにかつ長期的な治療効果を提供することができず、しかも硝酸カリウムを長期間使用すると、歯髄神経を麻痺させる関連疾患をもたらすことになる。
【0009】
一方、物理的減感作療法としては、例えば、樹脂、グラスアイオノマーセメント(glass ionomer cement)またはその類似物を含む象牙細管封止剤(sealant)を使用し、象牙細管の開口を直接封鎖することが挙げられる。例えば、Jensenらによって、1987年に、樹脂型象牙質接着剤(bonding agent)を使用して象牙細管を直接封鎖する方法が発表された(非特許文献1:“A comparative study of two clinical techniques for treatment of root surface hypersensitivity,” Gen. Dent. 35:128-132.)。この方法では、象牙質知覚過敏症による痛みをすぐに緩和することができるが、長期的な治療効果を提供することができない。詳しく述べると、臨床症例によれば、治療6ヶ月後、樹脂型接着剤が歯の表面から大量に脱落することになる。グラスアイオノマーセメントについては、Lowらによって、1981年に、グラスアイオノマーを使用して象牙質知覚過敏症を治療することが発表された(非特許文献2:“The treatment of hypersensitive cervical abrasion cavities using ASPA cement,” J. Oral Rehabil. 8(1):81-9.)。グラスアイオノマーは治療効果を提供することができるが、このような材料は、恒常的な歯磨きによって除去される。また、Hansenらによって、1992年に、樹脂補強型グラスアイオノマーを使用して象牙質知覚過敏症を治療することが発表されたが、同様に長期的な治療効果を提供することができない(非特許文献3:“Dentin hypersensitivity treated with a fluoride-containing varnish or a light-cured glass-ionomer liner,” Scand. J. Dent. Res. 100(6):305-9)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】“A comparative study of two clinical techniques for treatment of root surface hypersensitivity,” Gen. Dent. 35:128-132., 1987年
【非特許文献2】“The treatment of hypersensitive cervical abrasion cavities using ASPA cement,” J. Oral Rehabil. 8(1):81-9., 1981年
【非特許文献3】“Dentin hypersensitivity treated with a fluoride-containing varnish or a light-cured glass-ionomer liner,” Scand. J. Dent. Res. 100(6):305-9., 1992年
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
上記のように、象牙質に関連する症状または疾患について、如何にして、速やかにかつ持続的な緩和効果を提供するかが、早期解決が望まれる課題となっている。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題に鑑みて、本発明は、カルシウムイオン担体と、前記カルシウムイオン担体に担持された、カルシウムを含有する粒子と、を含む口歯用製剤を提供する。これにより、本発明の口歯用製剤は、象牙質に関連する症状または疾患を予防または速やかに治療することができ、さらに、持続的な予防または治療の効果を提供することができる。
【0013】
また、本発明は、個体の口腔に対して本発明の上記口歯用製剤を適用することを含む、象牙質に関連する症状または疾患を予防または治療する方法を提供する。
【0014】
また、本発明は、カルシウムを含有する粒子、カルシウム及びリンを含有する粒子、フッ素を含有する粒子又はそれらの組み合わせを含む微粒子の組成物を提供する工程と、前記組成物と酸性溶液を混合して製剤を形成する工程と、個体の口腔に対して前記製剤を適用する工程とを含む歯科治療方法を提供する。
【0015】
また、本発明は、各微粒子が複数の孔を有し、孔の孔径が1nm〜100nmである複数の微粒子と、カルシウムを含有する成分、リンを含有する成分、カルシウム及びリンを含有する成分、フッ素を含有する成分又はそれらの組み合わせと、を含む口腔ケア用組成物を提供する。これにより、本発明の口腔ケア用組成物は、象牙質に関連する症状または疾患を予防または速やかに治療することができ、さらに、持続的な予防または治療の効果を提供することができる。
【0016】
また、本発明は、個体の口腔に対して本発明の上記口腔ケア用組成物を適用することを含む、象牙質に関連する症状または疾患を予防または治療する方法を提供する。
【0017】
また、本発明は、本発明の上記口腔ケア用組成物を含む製品であって、歯科用品、歯磨きペースト、歯磨き粉、口内軟膏、チューインガム、チュアブル錠、トローチ、口内洗浄液、歯ブラシ又は貼付シートなどの製品を提供する。
【発明の効果】
【0018】
従って、本発明によれば、象牙質に関連する症状または疾患を予防または速やかに治療することができ、さらに、持続的な予防または治療の効果を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の実施例のCa-Siベース多孔質粒子のSEM観察結果を示す図である。
【図2a】本発明の実施例のCaCO3@孔SiO2製剤が塗布された象牙質試験片のSEM観察結果を示す図である。
【図2b】本発明の比較例のSeal&Protect(登録商標)が塗布された象牙質試験片のSEM観察結果を示す図である。
【図3a】本発明の実施例のCaCO3@孔SiO2製剤が塗布された犬生体の象牙質試験片のSEM観察結果を示す図である。
【図3b】本発明の比較例のSeal&Protect(登録商標)が塗布された犬生体の象牙質試験片のSEM観察結果を示す図である。
【図4a】本発明の実施例のCaCO3@孔SiO2製剤が塗布された犬生体の象牙質試験片の歯髄組織形態の観察結果を示す図である。
【図4b】本発明の比較例のSeal&Protect(登録商標)が塗布された犬生体の象牙質試験片の歯髄組織形態の観察結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、特定の具体的な実施例により、本発明を実施するための形態を説明する。本技術分野に習熟した者は、本明細書に開示された内容によって簡単に本発明の他の利点や効果を理解することができる。本発明は、他の異なる具体的な実施例によって施行又は応用することもでき、本明細書における各項の詳しい内容も、異なる観点と応用に基づいて、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、異なる修正と変更を施すことができる。
【0021】
従来の課題を解決するために、様々な実験を行った後、本発明の発明者は、カルシウムイオン担体と、前記カルシウムイオン担体に担持されたカルシウムを含有する粒子と、を含む口歯用製剤を完成させた。
【0022】
本発明の口歯用製剤の示すに形態は、制限がなく、好ましくはゲル状、ペースト状(paste)、スラリー状(slurry)、エマルション状又はグルー状(glue)である。
【0023】
本発明のカルシウムイオン担体にも制限がなく、有機物または無機物で構成されることができる。さらに、いくつかの好ましい実施例において、カルシウムイオン担体を構成する有機物はポリマーであってもよく、好ましくは多孔質ポリマーである。いくつかの好ましい実施例において、カルシウムイオン担体を構成する有機物はエステル系ポリマー又はオレフィン系ポリマーであってもよい。例えば、好ましいエステル系ポリマーはアクリル系ポリマーまたはポリスチレンを含んでもよく、好ましいオレフィン系ポリマーはナイロンを含んでもよい。また、カルシウムイオン担体は、アクリル系ポリマー、ポリスチレン及びナイロンの組み合わせで構成されてもよい。
【0024】
また、カルシウムイオン担体を構成する無機物について、いくつかの好ましい実施例において、用いることができる無機物は酸化物を含む。カルシウムイオン担体を構成する酸化物には制限がなく、好ましい酸化物は、例えば、二酸化ケイ素、アルミノケイ酸塩、二酸化チタン、酸化亜鉛、酸化アルミニウムまたはそれらの組み合わせを含む。
【0025】
本発明の口腔ケア用製剤の好ましい実施例において、本発明のカルシウムイオン担体は複数の孔を有する微粒子である。さらに、本発明のカルシウムイオン担体にカルシウム粒子を担持させる方法には制限がなく、好ましくは前記微粒子の孔に吸着させる。
【0026】
本発明のカルシウムを含有する粒子には制限がなく、好ましくは、酸化カルシウム、塩化カルシウム、炭酸カルシウム、硝酸カルシウム、水酸化カルシウム、カルシウム塩またはそれらの組み合わせで構成される。いくつかの好ましい実施例において、カルシウムを含有する粒子は、リンをさらに含んでも良い。さらに、本発明のリンを含むカルシウムを含有する粒子には制限がなく、好ましくは、リン酸カルシウム、ヒドロキシアパタイト(hydroxyapatite)、リン酸三カルシウム、リン酸四カルシウム、リン酸水素カルシウム(CaHPO4)、リン酸八カルシウム(Ca8H2(PO4)6・5H2O)、ピロリン酸カルシウム(Ca2P2O7)、バイオガラス(Na2O-CaO-SiO2-P2O5)またはそれらの組み合わせで構成される。
【0027】
本発明の口腔ケア用製剤の好ましい実施例において、本発明の口歯用製剤のpH値は2〜10の範囲であって、好ましくは7〜10の範囲である。
【0028】
本発明の口歯用製剤に含まれる上記成分は、本発明の好ましい実施例を説明するためのものに過ぎず、本発明の範囲を限定するものではない。すなわち、本発明の口歯用製剤は、カルシウムイオン担体に担持されたカルシウムを含有する粒子からカルシウムイオンを放出させるカルシウムイオン放出剤をさらに含むことができる。具体的には、本発明のカルシウムイオン放出剤は酸性溶液であってもよく、好ましくはリン酸、シュウ酸及びクエン酸からなる群から選ばれる少なくとも一つであり、より好ましくはリン酸である。前記酸性溶液は、リン酸、シュウ酸及びクエン酸のいずれかに関連または類似する有機酸または無機酸であってもよい。
【0029】
本発明の口腔ケア用製剤の好ましい実施例において、リン酸の濃度は1%〜65%の範囲であって、好ましくは25%〜45%の範囲であり、より好ましくは31%〜40%の範囲である。
【0030】
本発明の口腔ケア用製剤の別の好ましい実施例において、カルシウムイオン放出剤が酸性溶液である場合、カルシウムを含有する粒子を担持したカルシウムイオン担体に対して、酸性溶液の含有量の比率は1〜10mL/gの範囲であって、より好ましくは、カルシウムを含有する粒子を担持したカルシウムイオン担体に対して、酸性溶液の含有量の比率は2〜5mL/gの範囲である。
【0031】
上記のように、本発明の口腔ケア用製剤は、必要に応じて、酸性溶液を含有するかまたは含有しなくてもよく、そのpH値は2〜10の範囲である。一つの具体的な実施例において、そのpH値は7〜10の範囲である。また、酸性溶液を含有する場合、本発明の口歯用製剤のpH値は4〜7の範囲であって、好ましくは5〜6の範囲である。
【0032】
また、本発明の口歯用製剤は、上記成分以外の他の成分をさらに含んでもよい。具体的には、本発明の口歯用製剤は、フッ素を含有する成分をさらに含んでもよく、前記フッ素を含有する成分は、フッ素を含有する化合物、例えばフッ化物塩であってもよい。好ましくは、前記フッ素を含有する成分は、上記本発明のカルシウムイオン担体に担持される。いくつかの好ましい実施例において、フッ素を含有する成分は、フッ化アンモニウム、フッ化カルシウム、フッ化ナトリウム、フッ化カリウム、フッ化スズ(stannous fluoride)、フッ化アルミニウム、モノフルオロリン酸ナトリウム(sodium monofluorophosphate)、ヘキサフルオロケイ酸ナトリウム(sodium hexafluorosilicate)及びそれらの組み合わせからなる群から選ばれる一つである。また、本発明の口歯用製剤はpH値安定剤をさらに含んでも良い。
【0033】
本発明の口腔ケア用製剤の別の好ましい実施例において、微粒子の粒径は0.1μm〜100μmの範囲であり、孔の孔径は1nm〜100nmの範囲である。好ましくは、孔の孔径は2nm〜50nmの範囲である。
【0034】
本発明の別の態様によれば、本発明は、個体の口腔に対して本発明の上記製剤を適用することを含む、象牙質に関連する症状または疾患を予防または治療する方法をさらに提供する。詳しく述べると、上記方法で予防または治療することができる象牙質に関連する症状には制限がなく、本発明の方法で予防または治療することができる象牙質に関連する症状としては、象牙質知覚過敏症、亀裂歯症候群(crack tooth syndrome)、エナメル質の欠損(enamel loss)、象牙質の欠損、セメント質の欠損、または歯科手術後の知覚過敏症を含む。上記エナメル質の欠損、象牙質の欠損またはセメント質の欠損は、通常、歯が腐食、摩損、摩耗または亀裂することにより引き起こされる。上記歯科手術後の知覚過敏症は、通常、歯の漂白、補綴または修復の歯科手術後に生じる。
【0035】
一方、本発明の方法で予防または治療することができる象牙質に関連する疾患には制限がなく、好ましくは、齲歯(dental caries)、歯根部齲蝕(root caries)、歯の破折(tooth fracture)、歯根部破折(root fracture)、歯頸部摩耗(cervical abrasion)、歯の摩耗(tooth wearing)、または象牙質に関連する歯髄疾患である。
【0036】
本発明のまた別の態様によれば、本発明は、カルシウムを含有する粒子、カルシウム及びリンを含有する粒子、フッ素を含有する粒子又はそれらの組み合わせを含む微粒子の組成物を提供する工程と、前記組成物と酸性溶液を混合して製剤を形成する工程と、個体の口腔に対して前記製剤を適用する工程とを含む歯科治療方法を提供する。
【0037】
本発明の歯科治療方法の好ましい実施例において、微粒子は、孔径が1nm〜100nmである複数の孔を有しており、カルシウムを含有する粒子、カルシウム及びリンを含有する粒子、フッ素を含有する粒子又はそれらの組み合わせが、前記微粒子の前記複数の孔に吸着される。
【0038】
本発明の歯科治療方法の別の好ましい実施例において、上記酸性溶液は、リン酸、シュウ酸及びクエン酸からなる群から選ばれる少なくとも一つである。前記酸性溶液はリン酸であることが好ましく、この場合、リン酸の濃度は1%〜65%の範囲であってもよく、好ましくは25%〜45%の範囲であり、より好ましくは31%〜40%の範囲である。
【0039】
本発明の歯科治療方法のまた別の好ましい実施例において、製剤を形成する工程において、前記カルシウムを含有する粒子、前記カルシウム及びリンを含有する粒子、前記フッ素を含有する粒子又はそれらの組み合わせが吸着された微粒子に対して、酸性溶液の含有量の比率は1〜10mL/gの範囲である。好ましくは、製剤を形成する工程において、前記カルシウムを含有する粒子、前記カルシウム及びリンを含有する粒子、前記フッ素を含有する粒子又はそれらの組み合わせが吸着した微粒子に対して、酸性溶液の含有量の比率は2〜5mL/gの範囲である。また、製剤を形成する工程において、形成された製剤はゲル状(gel)、ペースト状(paste)、スラリー状(slurry)、エマルション状又はグルー状(glue)を呈することが好ましい。
【0040】
別の好ましい実施例において、本発明の歯科治療方法は、個体の口腔に対してpH値が7以上の水溶液を適用する工程をさらに含む。本発明の歯科治療方法で適用される水溶液には制限がなく、好ましくはアルカリ性水、または実験室で調製されたアルカリ性溶液であってもよい。上記アルカリ性水としては、任意の供給源から得られたアルカリ性水、例えば、市販のアルカリ性水、または実験室で調製されたアルカリ性水であってもよく、また、上記アルカリ性水のpH値が7より大きいことが好ましい。
【0041】
また別の好ましい実施例において、本発明の歯科治療方法は、個体の口腔に対して水を適用する工程をさらに含む。より好ましくは、個体の口腔に対してアルカリ性溶液を適用する前に、予め上記個体の口腔に対して水を適用しておく。さらに、個体の口腔に対して水を適用する回数には制限がなく、好ましくは少なくとも2回である。
【0042】
本発明の別の態様によれば、本発明は、それぞれ複数の孔を有し、孔の孔径が1nm〜100nmである複数の微粒子と、カルシウムを含有する成分、リンを含有する成分、カルシウム及びリンを含有する成分、フッ素を含有する成分又はそれらの組み合わせと、を含む口腔ケア用組成物を提供する。
【0043】
本発明の口腔ケア用組成物の好ましい実施例において、本発明のカルシウムを含有する成分、リンを含有する成分、カルシウム及びリンを含有する成分、フッ素を含有する成分又はそれらの組み合わせは、複数の微粒子の孔に吸着される。
【0044】
本発明の微粒子を構成する材料には制限がなく、無機物で構成されることが好ましく、酸化物で構成されることもできる。例えば、微粒子を構成するための好ましい酸化物は、二酸化ケイ素、アルミノケイ酸塩、二酸化チタン、酸化亜鉛、酸化アルミニウムまたはそれらの組み合わせを含む。より好ましくは、本発明の微粒子は二酸化ケイ素で構成される。
【0045】
二酸化ケイ素で構成される微粒子について、二酸化ケイ素の供給源には制限がなく、二酸化ケイ素を含む有機物または二酸化ケイ素を含む無機物であってもよい。具体的には、二酸化ケイ素微粒子は、好ましくはケイ酸塩、水ガラスまたはテトラアルコキシシランで形成されることができる。
【0046】
また、本発明のカルシウムを含有する成分には制限がなく、好ましくは、酸化カルシウム、塩化カルシウム、炭酸カルシウム、硝酸カルシウム、水酸化カルシウム、カルシウム塩及びそれらの組み合わせからなる群から選ばれる。
【0047】
本発明のリンを含有する成分には制限がなく、好ましくは、リン酸、リン酸ナトリウム、リン酸カリウム、リン酸塩、リン酸水素塩(hydrogen phosphate)、リン酸二水素塩(dihydrogen phosphate)及びそれらの組み合わせからなる群から選ばれる。
【0048】
本発明のカルシウム及びリンを含有する成分には制限がなく、好ましくは、リン酸カルシウム、ヒドロキシアパタイト(hydroxyapatite)、リン酸三カルシウム、リン酸四カルシウム、リン酸水素カルシウム(無水リン酸水素カルシウム(CaHPO4)、リン酸水素カルシウム水和物(CaHPO4・2H2O))、リン酸八カルシウム、ピロリン酸カルシウム(Ca2P2O7)及びバイオガラス(Na2O-CaO-SiO2-P2O5)からなる群から選ばれる。
【0049】
本発明のフッ素を含有する成分には制限がなく、好ましくは、フッ化ナトリウム、フッ素を含有する化合物及び塩類からなる群から選ばれるものであり、より好ましくはフッ化ナトリウムである。
【0050】
また、本発明の口腔ケア用組成物に含まれる上記成分は、本発明の好ましい実施例を説明するためのものに過ぎず、本発明の範囲を限定するものではない。すなわち、本発明の口腔ケア用組成物は、上記成分以外の他の成分をさらに含んでも良い。
【0051】
例えば、上記本発明の口歯用製剤と同様に、本発明の口腔ケア用組成物は、フッ素を含有する成分をさらに含んでもよい。前記フッ素を含有する成分は、フッ素を含有する化合物、例えばフッ化物塩であってもよい。好ましくは、前記フッ素を含有する成分は、フッ化アンモニウム、フッ化カルシウム、フッ化ナトリウム、フッ化カリウム、フッ化スズ(stannous fluoride)、フッ化アルミニウム、モノフルオロリン酸ナトリウム(sodium monofluorophosphate)、ヘキサフルオロケイ酸ナトリウム(sodium hexafluorosilicate)及びそれらの組み合わせからなる群から選ばれる。また、本発明の口腔ケア用組成物はpH値安定剤をさらに含んでも良い。
【0052】
本発明の口腔ケア用組成物の別の好ましい実施例において、微粒子における孔の孔径が2nm〜50nmの範囲であり、微粒子の粒径は0.1μm〜100μmの範囲である。
【0053】
本発明の口腔ケア用組成物のまた別の好ましい実施例において、本発明の口腔ケア用組成物のpH値には制限がなく、好ましくはpH値は2〜10の範囲であり、より好ましくは、実際の必要に応じて、7〜10、4〜7、または5〜6のいずれかの範囲である。
【0054】
また、本発明の口腔ケア用組成物の製造方法には制限がない。例えば、順次ゾルゲル法(sol-gel)を用いることにより、複数の孔を有する微粒子を形成し、また、含浸法(impregnation)を用いることにより、カルシウムを含有する成分、リンを含有する成分、カルシウム及びリンを含有する成分、フッ素を含有する成分又はそれらの組み合わせを微粒子の孔に吸着させ、それにより本発明の口腔ケア用組成物を製造することができる。
【0055】
本発明のまた別の態様によれば、本発明は、個体の口腔に対して本発明の上記組成物を適用することを含む、象牙質に関連する症状または疾患を予防または治療する方法をさらに提供する。詳しく述べると、上記本発明の組成物を適用する方法で予防または治療することができる象牙質に関連する症状には制限がなく、好ましくは、象牙質知覚過敏症、亀裂歯症候群(crack tooth syndrome)、エナメル質の欠損(enamel loss)、象牙質の欠損、セメント質の欠損、または歯科手術後の知覚過敏症を含む。一方、上記本発明の組成物を適用する方法で予防または治療することができる象牙質に関連する疾患には制限がなく、好ましくは、齲歯(dental caries)、歯根部齲食(root caries)、歯の破折(tooth fracture)、歯根部破折(root fracture)、歯頸部摩耗(cervical abrasion)、歯の摩耗(tooth wearing)、または象牙質に関連する歯髄疾患を含む。
【0056】
本発明の別の態様によれば、本発明は、上記本発明の組成物を含む製品であって、歯科用品、歯磨きペースト、歯磨き粉、口内軟膏、チューインガム、チュアブル錠、トローチ、口内洗浄液、歯ブラシ又は貼付シートを含む製品を提供する。好ましくは、上記本発明の組成物に係る歯科用品は、歯科用セメント(dental cement)、歯科用接着剤(dental bonding agent)、歯科用磁質粉末(dental porcelain powder)、歯髄覆罩材(pulp capping materials)、逆根管充填材(retrograde filling material)、根管充填材(root canal filling materials)またはコンポジットレジン充填材(composite resin filling materials)を含む。
【0057】
特に、生活歯髄療法(vital pulp therapy)を行うとき、上記歯髄覆罩材を用いて直接または間接的に覆髄処置を行うことができる。また、上記逆根管充填材は、充填材として歯根尖切除術に用いられることができる。
【実施例】
【0058】
実施例1:二酸化ケイ素からなる多孔質微粒子の合成
ゼラチン1gを脱イオン水25gに加え、40℃の恒温水槽に置いて、完全に溶解するまで約15分間攪拌し、ゼラチン水溶液を形成した。
【0059】
続いて、ケイ酸ナトリウム4gを水100gに溶かして、40℃の恒温水槽に置いて約2分間攪拌し、ケイ酸ナトリウム水溶液を形成した。
【0060】
一方、6Mの硫酸溶液(約3.0mL)を水100gに加え、均一に攪拌し、pH値が約1である酸性水溶液を調製した。ケイ酸ナトリウム水溶液と酸性水溶液とを混合し、pH値を5程度に調整した。続いて、ケイ酸ナトリウムを3分間熟成させ、さらに上記ゼラチン水溶液を加え、40℃の恒温水槽に置いて、完全に反応するまで約2時間攪拌した。
【0061】
そして、すべての溶液(原液を含む)を材質がポリプロペン(polypropene、PP)である水熱瓶(hydrothermal bottle)に注入し、100℃のオーブンに置いて水熱反応を1日間行った。得られた生成物をろ過、水洗い、乾燥した後、ゼラチン分子を含有する多孔質二酸化ケイ素材料を得た。最後に、600℃で12時間焼成し、有機物を除去した後、二酸化ケイ素の多孔質微粒子を得た。
【0062】
また、溶液のpH値及び水熱反応の日数を調整することにより、二酸化ケイ素材料の孔の大きさを制御することができ、さらに、酸化ケイ素の供給源及びゼラチン分子との重量割合を変更することにより、必要に応じて異なるサイズの微粒子を製造することができる。
【0063】
実施例2:炭酸カルシウムを含有する二酸化ケイ素の多孔質微粒子の製造
シュウ酸0.09gを脱イオン水10gに溶かして、炭酸カルシウム0.84gを加え、第1中間溶液を形成した。続いて、アルコール10gを第1中間溶液に加え、攪拌した後、実施例1で合成された二酸化ケイ素からなる多孔質微粒子0.5gを加え、第2中間溶液を形成した。
【0064】
上記第2中間溶液を乾燥するまで攪拌し、オーブンに入れ、100℃で1日間静置した。続いて、オーブンから取り出した生成物を空気が流れる高温炉に入れ、200℃〜400℃に昇温し、温度を5時間保持した。最後に、炭酸カルシウムを含有する二酸化ケイ素の多孔質微粒子(以下、Ca-Siベース多孔質粒子(Ca-Si based porous particle)と略称する)を得た。図1に、本実施例のCa-Siベース多孔質粒子のSEM観察結果を示す。
【0065】
ここで、理解すべきことは、本実施例は例示的に本発明の内容を説明するものに過ぎず、本発明の範囲を限定するものではないことである。すなわち、炭酸カルシウムを除いて、本実施例の方法は、必要に応じて他の成分を含有する多孔質微粒子、例えば、リン酸カルシウムを含有する二酸化ケイ素の多孔質微粒子の製造に用いられることができる。さらに、リン酸カルシウムを含有する二酸化ケイ素の多孔質微粒子の製造方法は、本実施例の方法とは大体同じであって、主な相違点は、第1中間溶液を形成する工程において、炭酸カルシウムの代わりにリン酸カルシウムを使用することのみである。
【0066】
実施例3:Ca-Siベース多孔質粒子を含有する製剤の製造
脱イオン水で、市販の85.7%リン酸(J.T. BAKER NALYZED, USA)を濃度31%のリン酸溶液に希釈した。実施例2で得られたCa-Siベース多孔質粒子0.05gと濃度31%のリン酸溶液0.15mLとを混合し、炭酸カルシウムを含有する二酸化ケイ素の多孔質微粒子の製剤(以下、CaCO3@孔SiO2製剤と略称する)を調製した。
【0067】
比較例1:Seal&Protect(登録商標)製剤
市販のSeal&Protect(登録商標)(Desensitizer、Dentsply DeTrey、Konstanz、Germany)の樹脂型象牙質接着剤を提供した。Seal&Protect(登録商標)は光硬化性自己粘着型封止剤(light-curing and self-adhesive sealant)であり、ウレタンジメタクリレート樹脂(urethane dimethacrylate resin)、重合性トリメタクリレート樹脂(polymerizable trimethacrylate resins)、ジペンタエリスリトールペンタアクリレートホスフェート(dipentaerythritol pentaacrylate phosphate)及び非晶質二酸化ケイ素(amorphous silicon dioxide)といった成分からなる。
【0068】
<試験例1:インビトロにおける、象牙細管に対する封鎖効果>
抜いた直後のヒトの大臼歯と小臼歯を合わせて20本を集めた。それらの歯冠は完全であり、齲蝕がなく、充填材も一切なかった。歯科用超音波洗浄機(Sonicflex 2000、Kayo Co Biberbach、Germany)で、それらの大臼歯と小臼歯の表面の歯石と歯周組織を除去した。続いて、それらの大臼歯と小臼歯を4℃の蒸留水に保存し、象牙質の鮮度を保持した。
【0069】
製剤を塗布する前に、歯を取り出し、低速切断機(Isomet low speed saw、Buehler LTD.,)を用いて、すべての歯の咬合面のエナメル質を水平方向に除去し、さらに歯頸部の方向に沿って1.5mmの長さを切断し、象牙質試験片を得た。続いて、尖形裂溝状バー(196l tapered fissure bur)を用いて、試験片の実験領域の裏面に溝を形成し、試験片が切断されるべき方向に導く。37.5%のリン酸エッチングゲル(Gel etchant、Kerr Co USA)を用いて、象牙質試験片を40秒間酸エッチングした。そして、大量の蒸留水で塗布層を洗い流し、試験片の表面を風で吹き乾かした。
【0070】
実施例3の製剤と比較例1のSeal&Protect(登録商標)をそれぞれ用いて、下記の各操作方法により試験片に塗布した。
実施例3のCaCO3@孔SiO2製剤については、小さなブラシで製剤を試験片の表面に塗布してきつく押し付けた。3分間経った後、清水で表面の薬剤を洗い流した。続いて、上記工程を3回繰り返し、3回目は、pH値が9であるアルカリ性水で表面の薬剤を洗い流した。
【0071】
比較例1のSeal&Protect(登録商標)については、Seal&Protect(登録商標)を歯のサンプルの表面に塗布し、20秒間作用させた。続いて、5秒間空気を吹きつけ、10秒間光を照射した。そして、再びSeal&Protect(登録商標)を歯のサンプルの表面に塗布した。続いて、5秒間空気を吹きつけ、10秒間光を照射した。これにより、Seal&Protect(登録商標)の塗布を完了した。
【0072】
最後に、電界放射型走査電子顕微鏡(SEM、Field Emission Scanning Electronic Microscope、Hitachi S-800、Hitachi Co., Tokyo, Japan)を利用して、各組の試験片において、象牙細管内の沈殿物の深さを観察した。
【0073】
図2aと図2bはそれぞれ各組の試験片のSEM観察結果を示す。詳しく述べると、図2aは実施例3のCaCO3@孔SiO2製剤が塗布された象牙質試験片のSEM観察結果を示し、図2bは比較例1のSeal&Protect(登録商標)が塗布された象牙質試験片のSEM観察結果を示す。
【0074】
比較した結果、象牙細管内において、比較例1のSeal&Protect(登録商標)で提供された沈殿物の深さは僅か10μmであり、沈殿物と象牙細管壁との間にはまだ間隙が存在し、象牙細管を完全に封鎖することができない(図2bを参照)のに対し、実施例3の製剤は約60μmの長い沈殿物の深さを提供し、しかも象牙細管をほとんど100%封鎖したことが分かった。すなわち、実施例3のCaCO3@孔SiO2製剤は、象牙質に対する好ましい封鎖効果を提供することができる。
【0075】
<試験例2:インビトロにおける、象牙細管に対する浸透性試験>
フローモデル試験により、実施例3の製剤と比較例1のSeal&Protect(登録商標)がそれぞれ塗布された象牙質が示す浸透性を評価した。測定された浸透性が低いほど、象牙質を封鎖する効果がより優れることを示す。
【0076】
フローモデル試験の操作については、まず、ガラス管1本を提供して、ガラス管の一方の端を象牙質試験片で封止し、ガラス管のもう一方の端に0.15 g/cm2の圧力源を提供し、ガラス管において1個の気泡を形成した。72時間が経った後、基準距離(base line)として気泡の移動距離を測定した。続いて、圧力を持続的に与える状態で、前記象牙質試験片に塗布し、72時間が経った後、再び気泡の移動距離、すなわち、浸透距離を測定した。最後に、基準距離と浸透距離を下記式に代入し、象牙質の浸透性を計算した。
【0077】
浸透性(%)=基準距離/浸透距離×100%
【0078】
象牙質試験片に塗布する工程は、塗布材料によって異なる。
【0079】
詳しく述べると、実施例3の製剤については、製剤を象牙質試験片の表面に塗布し、緻密になるまで押し付けた。10分が経った後、水で象牙質試験片の表面を洗い流した。
【0080】
比較例1のSeal&Protect(登録商標)については、Seal&Protect(登録商標)を歯のサンプルの表面に塗布し、20秒間作用させた。続いて、5秒間空気を吹きつけ、10秒間光を照射した。そして、再びSeal&Protect(登録商標)を歯のサンプルの表面に塗布した。続いて、5秒間空気を吹きつけ、10秒間光を照射した。結果は、比較例1のSeal&Protect(登録商標)の象牙質試験片の示す浸透性が約40%であり、実施例3のCaCO3@孔SiO2製剤が塗布された象牙質試験片の示す浸透性が約15%であることを示した。すなわち、本発明の実施例3のCaCO3@孔SiO2製剤は、より好ましい象牙質封鎖効果を提供する。
【0081】
<試験例3:動物実験における、象牙細管に対する封鎖効果>
犬に麻酔を施し、歯科用の噴射ノズルを備えた高速ハンドピースで、犬の両側の上犬歯、下犬歯及び第一大臼歯における頬側の歯頸部に、長さが約5mm、幅が約3mm、深さが約1.5〜2mmの窩洞を開けた。続いて、歯科用の濃度37.5%のリン酸エッチングゲル(Gel etchant、Kerr Co. CA, USA)を使用して、40秒間酸エッチングし、塗布層を除去した。この後、大量の清水で、歯の表面の酸エッチングゲルを洗い流し、充填対象となる歯のサンプルを形成した。
【0082】
実施例3の製剤と比較例1の製剤をそれぞれ用いて、下記の各操作方法により歯のサンプルに充填した。
【0083】
実施例3の製剤については、象牙質窩洞によって暴露された歯のサンプルの表面に、製剤を塗布してきつく押し付けた。3分が経った後、塗布された歯のサンプルを、蒸留水で濡らした綿球で拭いた。続いて、上記拭く工程を3回繰り返し、3回目は、pH値が9であるアルカリ性水で濡らした綿球で拭いた。そして、自己重合性グラスアイオノマー(GC Fuji II(登録商標)、GC、Tokyo、Japan)を用いて窩洞を充填した。
【0084】
比較例1のSeal&Protect(登録商標)については、Seal&Protect(登録商標)を歯のサンプルの表面に塗布し、20秒間作用させた。続いて、5秒間空気を吹きつけ、10秒間光を照射した。そして、再びSeal&Protect(登録商標)を歯のサンプルの表面に塗布した。続いて、5秒間空気を吹きつけ、10秒間光を照射した。Seal&Protect(登録商標)の塗布が完了した後、自己重合性グラスアイオノマー(GC Fuji II(登録商標)、GC、Tokyo、Japan)を用いて窩洞を充填した。
【0085】
一週間後、各組の歯のサンプルを抜いた。続いて、歯のサンプルを切開し、試験片を作製した。そして、電界放射型走査電子顕微鏡(Field Emission Scanning Electronic Microscope、Hitachi S-800, Hitachi Co., Tokyo, Japan)を利用して、各組の試験片における、象牙細管内の沈殿物の深さを観察した。
【0086】
図3aと図3bはそれぞれ各組の試験片のSEM観察結果を示す。詳しく述べると、図3aは実施例3のCaCO3@孔SiO2製剤が塗布された犬生体の象牙質試験片のSEM観察結果を示し、図3bは比較例1のSeal&Protect(登録商標)が塗布された犬生体の象牙質試験片のSEM観察結果を示す。
【0087】
比較した結果、象牙細管内において、比較例1のSeal&Protect(登録商標)は象牙質表面に1層の樹脂層が覆いかぶさり、その樹脂層と象牙質表面とは密着せず、象牙細管内に入る樹脂も僅か5μmである(図3bを参照)のに対し、実施例3の製剤は約40μmの長い沈殿物の深さを提供し、しかもほとんど完全に象牙細管を封鎖した(図3aを参照)ことが分かった。すなわち、実施例3のCaCO3@孔SiO2製剤は、象牙質により好ましい封鎖効果を提供することができる。
【0088】
<試験例4:歯髄刺激性の評価>
ISO-7405歯髄刺激性試験(pulp irritation test)の規定に従って、歯髄刺激性を評価した。
【0089】
まず、犬に麻酔を施した後、歯科用の噴射ノズルを備えた高速ハンドピースで、犬の両側の上犬歯、下犬歯及び第一大臼歯における頬側の歯頸部に、長さが約5mm、幅が約3mm、深さが約1.5〜2mmの窩洞を開けた。続いて、歯科用の濃度37.5%のリン酸エッチングゲル(Gel etchant、Kerr Co. CA、USA)を使用して、40秒間酸エッチングし、塗布層を除去した。この後、大量の清水で、歯の表面の酸エッチングゲルを洗い流し、充填対象となる歯のサンプルを形成した。
【0090】
実施例3の製剤と比較例1のSeal&Protect(登録商標)をそれぞれ用いて、下記の各操作方法により歯のサンプルに充填した。
【0091】
実施例3のCaCO3@孔SiO2製剤については、象牙質窩洞によって暴露された歯のサンプルの表面に、製剤を塗布してきつく押し付けた。3分が経った後、塗布された歯のサンプルを、蒸留水で濡らした綿球で拭いた。続いて、上記拭く工程を3回繰り返し、3回目は、pH値が9であるアルカリ性水で濡らした綿球で拭いた。そして、自己重合性グラスアイオノマー(GC Fuji II(登録商標)、GC、Tokyo、Japan)を用いて窩洞を充填した。
【0092】
比較例1のSeal&Protect(登録商標)については、Seal&Protect(登録商標)を歯のサンプルの表面に塗布し、20秒間作用させた。続いて、5秒間空気を吹きつけ、10秒間光を照射した。そして、再びSeal&Protect(登録商標)を歯のサンプルの表面に塗布した。続いて、5秒間空気を吹きつけ、10秒間光を照射した。Seal&Protect(登録商標)の塗布が完了した後、自己重合性グラスアイオノマー(GC Fuji II(登録商標)、GC、Tokyo、Japan)を用いて窩洞を充填した。
【0093】
続いて、7日目、28日目、70日目にて、それぞれISO-7405歯髄刺激性試験(pulp irritation test)の規定に従って、各組の充填された歯のサンプルを取り、歯髄刺激性試験片を作製した。次に、光学顕微鏡を利用して、各組の試験片における、歯髄腔内の細胞炎症の程度を観察した。
【0094】
図4aと図4bは、各組の試験片の7日目での歯髄腔内の細胞炎症の程度の観察結果をそれぞれ示す。詳しく述べると、図4aは実施例3のCaCO3@孔SiO2製剤が塗布された犬生体の象牙質試験片の歯髄組織形態の観察結果を示し、図4bは比較例1のSeal&Protect(登録商標)が塗布された犬生体の象牙質試験片の歯髄組織形態の観察結果を示す。
【0095】
図4bに示されるように、比較例1のSeal&Protect(登録商標)が充填された試験片は中等度炎症を示した。詳しく述べると、その歯髄組織内において、細胞の密度が高めであり、リンパ球が浸潤し、血管に赤血球が充満することが観察された。
【0096】
逆に、図4aに示されるように、実施例3のCaCO3@孔SiO2製剤が充填された試験片は、炎症がなく、またはあったとしても軽度炎症の状態を示した。詳しく述べると、その歯髄組織は正常な歯髄組織とは見た目が同じであり、組織において、炎症細胞がなく、またはあったとしても僅かな炎症細胞があるに過ぎず、血管新生または赤血球の歯髄組織への漏出もない。
【0097】
試験例4の結果より、実施例3のCaCO3@孔SiO2製剤は、長期間にわたる強い抗炎症能力を提供することが分かる。これにより、本発明の実施例3のCaCO3@孔SiO2製剤は、より長い期間の治療効果を提供することができる。
【0098】
上記の実施例は例示的に本発明の組成物とその製造方法を述べるものに過ぎず、本発明を限定するものではない。本技術分野に習熟した者は、本発明の趣旨及び範囲から逸脱しない限り、上記の実施例に各種修正と変更を施すことができる。従って、本発明の主張する権利範囲は、特許請求の範囲に記載される通りである。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のカルシウムイオン担体と、
前記カルシウムイオン担体に担持された、複数のカルシウムを含有する粒子と、
を含む口歯用製剤。
【請求項2】
前記カルシウムイオン担体は、アクリル系ラテックス、ポリスチレン、ナイロン及びそれらの組み合わせからなる群から選ばれる少なくとも一つの有機物で構成される、請求項1に記載の製剤。
【請求項3】
前記カルシウムイオン担体は、二酸化ケイ素、アルミノケイ酸塩、二酸化チタン、酸化亜鉛、酸化アルミニウム及びそれらの組み合わせから選ばれる少なくとも一つの無機物で構成される、請求項1に記載の製剤。
【請求項4】
前記カルシウムイオン担体は、複数の孔を有する微粒子である、請求項1に記載の製剤。
【請求項5】
前記カルシウムを含有する粒子は、前記微粒子の孔に吸着される、請求項4に記載の製剤。
【請求項6】
前記微粒子の粒径は、0.1μm〜100μmの範囲である、請求項4に記載の製剤。
【請求項7】
前記孔の孔径は、1nm〜100nmの範囲である、請求項4に記載の製剤。
【請求項8】
前記孔の孔径は、2nm〜50nmである、請求項7に記載の製剤。
【請求項9】
前記カルシウムを含有する粒子は、炭酸カルシウム、塩化カルシウム、酸化カルシウム、硝酸カルシウム、水酸化カルシウム、カルシウム塩またはそれらの組み合わせで構成される、請求項1に記載の製剤。
【請求項10】
pH値は、2〜10の範囲である、請求項1に記載の製剤。
【請求項11】
前記pH値は、7〜10の範囲である、請求項10に記載の製剤。
【請求項12】
前記カルシウムイオン担体に担持された前記カルシウムを含有する粒子からカルシウムイオンを放出させるカルシウムイオン放出剤をさらに含む、請求項1に記載の製剤。
【請求項13】
前記カルシウムイオン放出剤は、酸性溶液である、請求項12に記載の製剤。
【請求項14】
前記酸性溶液は、リン酸、シュウ酸及びクエン酸からなる群から選ばれる少なくとも一つである、請求項13に記載の製剤。
【請求項15】
前記酸性溶液は、リン酸である、請求項14に記載の製剤。
【請求項16】
前記リン酸の濃度は、1%〜65%の範囲である、請求項15に記載の製剤。
【請求項17】
前記リン酸の濃度は、25%〜45%の範囲である、請求項16に記載の製剤。
【請求項18】
前記リン酸の濃度は、31%〜40%の範囲である、請求項17に記載の製剤。
【請求項19】
前記カルシウムを含有する粒子を担持した前記カルシウムイオン担体に対して、前記酸性溶液の含有量の比率は1〜10mL/gの範囲である、請求項13に記載の製剤。
【請求項20】
前記カルシウムを含有する粒子を担持した前記カルシウムイオン担体に対して、前記酸性溶液の含有量の比率が2〜5mL/gの範囲である、請求項19に記載の製剤。
【請求項21】
pH値は、4〜7の範囲である、請求項12に記載の製剤。
【請求項22】
前記pH値は、5〜6の範囲である、請求項21に記載の製剤。
【請求項23】
ゲル状、ペースト状、スラリー状、エマルション状又はグルー状を呈する、請求項12に記載の製剤。
【請求項24】
前記カルシウムを含有する粒子は、リンをさらに含む、請求項1に記載の製剤。
【請求項25】
前記リンを含むカルシウムを含有する粒子は、リン酸カルシウム、ヒドロキシアパタイト(hydroxyapatite)、リン酸三カルシウム、リン酸四カルシウム、リン酸水素カルシウム(CaHPO4)、リン酸八カルシウム(Ca8H2(PO4)6・5H2O)、ピロリン酸カルシウム(Ca2P2O7)、バイオガラス(Na2O-CaO-SiO2-P2O5)またはそれらの組み合わせで構成される、請求項24に記載の製剤。
【請求項26】
フッ素を含有する成分をさらに含む、請求項1に記載の製剤。
【請求項27】
前記フッ素を含有する成分は、前記カルシウムイオン担体に担持される、請求項26に記載の製剤。
【請求項28】
前記フッ素を含有する成分は、フッ化アンモニウム、フッ化カルシウム、フッ化ナトリウム、フッ化カリウム、フッ化スズ(stannous fluoride)、フッ化アルミニウム、モノフルオロリン酸ナトリウム(sodium monofluorophosphate)、ヘキサフルオロケイ酸ナトリウム(sodium hexafluorosilicate)及びそれらの組み合わせからなる群から選ばれる一つである、請求項26に記載の製剤。
【請求項29】
pH値安定剤をさらに含む、請求項1に記載の製剤。
【請求項30】
個体の口腔に対して請求項1に記載の製剤を適用することを含む、象牙質に関連する症状または疾患を予防または治療する方法。
【請求項31】
前記象牙質に関連する症状は、象牙質知覚過敏症、亀裂歯症候群(crack tooth syndrome)、エナメル質の欠損(enamel loss)、象牙質の欠損、セメント質の欠損、または歯科手術後の知覚過敏症を含む、請求項30に記載の方法。
【請求項32】
前記象牙質に関連する疾患は、齲歯(dental caries)、歯根部齲食(root caries)、歯の破折(tooth fracture)、歯根部破折(root fracture)、歯頸部摩耗(cervical abrasion)、歯の摩耗(tooth wearing)、または象牙質に関連する歯髄疾患を含む、請求項30に記載の方法。
【請求項33】
カルシウムを含有する粒子、カルシウム及びリンを含有する粒子、フッ素を含有する粒子又はそれらの組み合わせを含む微粒子の組成物を提供する工程と、
前記組成物と酸性溶液を混合して製剤を形成する工程と、
個体の口腔に対して前記製剤を適用する工程と、
を含む、歯科治療方法。
【請求項34】
前記微粒子は、孔径が1nm〜100nmである複数の孔を有しており、前記カルシウムを含有する粒子、前記カルシウム及びリンを含有する粒子、前記フッ素を含有する粒子又はそれらの組み合わせは、前記微粒子の前記複数の孔に吸着される、請求項33に記載の方法。
【請求項35】
前記酸性溶液は、リン酸、シュウ酸及びクエン酸からなる群から選ばれる少なくとも一つである、請求項33に記載の方法。
【請求項36】
前記酸性溶液は、リン酸である、請求項35に記載の方法。
【請求項37】
前記リン酸の濃度は、1%〜65%の範囲である、請求項36に記載の方法。
【請求項38】
前記リン酸の濃度は、25%〜45%の範囲である、請求項37に記載の方法。
【請求項39】
前記リン酸の濃度は、31%〜40%の範囲である請求項38に記載の方法。
【請求項40】
前記製剤を形成する工程において、前記カルシウムを含有する粒子、前記カルシウム及びリンを含有する粒子、前記フッ素を含有する粒子又はそれらの組み合わせが吸着された前記微粒子に対して、前記酸性溶液の含有量の比率は1〜10mL/gの範囲である、請求項33に記載の方法。
【請求項41】
前記製剤を形成する工程において、前記カルシウムを含有する粒子、前記カルシウム及びリンを含有する粒子、前記フッ素を含有する粒子又はそれらの組み合わせが吸着された前記微粒子に対して、前記酸性溶液の含有量の比率は2〜5mL/gの範囲である、請求項40に記載の方法。
【請求項42】
前記製剤は、ゲル状(gel)、ペースト状(paste)、スラリー状(slurry)、エマルション状又はグルー状(glue)を呈する、請求項33に記載の方法。
【請求項43】
前記個体の口腔に対してpH値が7以上の水溶液を適用する工程をさらに含む、請求項33に記載の方法。
【請求項44】
前記水溶液は、アルカリ性水またはアルカリ性溶液である、請求項43に記載の方法。
【請求項45】
前記個体の口腔に対して水を適用する工程をさらに含む、請求項33に記載の方法。
【請求項46】
それぞれ複数の孔を有し、前記孔の孔径が1nm〜100nmである複数の微粒子と、
カルシウムを含有する成分、リンを含有する成分、カルシウム及びリンを含有する成分、フッ素を含有する成分又はそれらの組み合わせと、
を含む口腔ケア用組成物。
【請求項47】
前記カルシウムを含有する成分、前記リンを含有する成分、前記カルシウム及びリンを含有する成分、前記フッ素を含有する成分又はそれらの組み合わせは、前記複数の微粒子の孔に吸着される、請求項46に記載の組成物。
【請求項48】
前記孔の孔径は、2nm〜50nmである、請求項46に記載の組成物。
【請求項49】
前記微粒子の粒径は、0.1μm〜100μmの範囲である、請求項46に記載の組成物。
【請求項50】
pH値は、2〜10の範囲である、請求項46に記載の組成物。
【請求項51】
前記pH値は、7〜10の範囲である、請求項50に記載の組成物。
【請求項52】
前記pH値は、4〜7の範囲である、請求項50に記載の組成物。
【請求項53】
前記pH値は、5〜6の範囲である、請求項52に記載の組成物。
【請求項54】
前記微粒子は、二酸化ケイ素、アルミノケイ酸塩、二酸化チタン、酸化亜鉛、酸化アルミニウム及びそれらの組み合わせからなる群から選ばれる少なくとも一つの無機物で構成される、請求項46に記載の組成物。
【請求項55】
前記二酸化ケイ素で構成される微粒子は、ケイ酸塩、水ガラスまたはテトラアルコキシシランで形成される、請求項54に記載の組成物。
【請求項56】
前記カルシウムを含有する成分は、炭酸カルシウム、酸化カルシウム、塩化カルシウム、硝酸カルシウム、水酸化カルシウム、カルシウム塩及びそれらの組み合わせからなる群から選ばれる一つである、請求項46に記載の組成物。
【請求項57】
前記リンを含有する成分は、リン酸、リン酸ナトリウム、リン酸カリウム、リン酸塩、リン酸水素塩(hydrogen phosphate)、リン酸二水素塩(dihydrogen phosphate)及びそれらの組み合わせからなる群から選ばれる一つである、請求項46に記載の組成物。
【請求項58】
前記カルシウム及びリンを含有する成分は、リン酸カルシウム、ヒドロキシアパタイト(hydroxyapatite)、リン酸三カルシウム、リン酸四カルシウム、リン酸水素カルシウム(CaHPO4)、リン酸八カルシウム(Ca8H2(PO4)6・5H2O)、ピロリン酸カルシウム(Ca2P2O7)、バイオガラス(Na2O-CaO-SiO2-P2O5)及びそれらの組み合わせからなる群から選ばれる一つである、請求項46に記載の組成物。
【請求項59】
前記フッ素を含有する成分は、フッ化アンモニウム、フッ化カルシウム、フッ化ナトリウム、フッ化カリウム、フッ化スズ(stannous fluoride)、フッ化アルミニウム、モノフルオロリン酸ナトリウム(sodium monofluorophosphate)、ヘキサフルオロケイ酸ナトリウム(sodium hexafluorosilicate)及びそれらの組み合わせからなる群から選ばれる一つである、請求項46に記載の組成物。
【請求項60】
pH値安定剤をさらに含む、請求項46に記載の組成物。
【請求項61】
個体の口腔に対して請求項46に記載の組成物を適用することを含む、象牙質に関連する症状または疾患を予防または治療する方法。
【請求項62】
前記象牙質に関連する症状は、象牙質知覚過敏症、亀裂歯症候群(crack tooth syndrome)、エナメル質の欠損(enamel loss)、象牙質の欠損、セメント質の欠損、または歯科手術後の知覚過敏症を含む、請求項61に記載の方法。
【請求項63】
前記象牙質に関連する疾患は、齲歯(dental caries)、歯根部齲食(root caries)、歯の破折(tooth fracture)、歯根部破折(root fracture)、歯頸部摩耗(cervical abrasion)、歯の摩耗(tooth wearing)、または象牙質に関連する歯髄疾患を含む請求項61に記載の方法。
【請求項64】
歯科用品、歯磨きペースト、歯磨き粉、口内軟膏、チューインガム、チュアブル錠、トローチ、口内洗浄液、歯ブラシ又は貼付シートであって、請求項46に記載の組成物を含む製品。
【請求項65】
前記歯科用品は、歯科用セメント(dental cement)、歯科用接着剤(dental bonding agent)、歯科用磁質粉末(dental porcelain powder)、歯髄覆罩材(pulp capping materials)、逆根管充填材(retrograde filling material)、根管充填材(root canal filling materials)またはコンポジットレジン充填材(composite resin filling materials)である、請求項64に記載の製品。
【請求項1】
複数のカルシウムイオン担体と、
前記カルシウムイオン担体に担持された、複数のカルシウムを含有する粒子と、
を含む口歯用製剤。
【請求項2】
前記カルシウムイオン担体は、アクリル系ラテックス、ポリスチレン、ナイロン及びそれらの組み合わせからなる群から選ばれる少なくとも一つの有機物で構成される、請求項1に記載の製剤。
【請求項3】
前記カルシウムイオン担体は、二酸化ケイ素、アルミノケイ酸塩、二酸化チタン、酸化亜鉛、酸化アルミニウム及びそれらの組み合わせから選ばれる少なくとも一つの無機物で構成される、請求項1に記載の製剤。
【請求項4】
前記カルシウムイオン担体は、複数の孔を有する微粒子である、請求項1に記載の製剤。
【請求項5】
前記カルシウムを含有する粒子は、前記微粒子の孔に吸着される、請求項4に記載の製剤。
【請求項6】
前記微粒子の粒径は、0.1μm〜100μmの範囲である、請求項4に記載の製剤。
【請求項7】
前記孔の孔径は、1nm〜100nmの範囲である、請求項4に記載の製剤。
【請求項8】
前記孔の孔径は、2nm〜50nmである、請求項7に記載の製剤。
【請求項9】
前記カルシウムを含有する粒子は、炭酸カルシウム、塩化カルシウム、酸化カルシウム、硝酸カルシウム、水酸化カルシウム、カルシウム塩またはそれらの組み合わせで構成される、請求項1に記載の製剤。
【請求項10】
pH値は、2〜10の範囲である、請求項1に記載の製剤。
【請求項11】
前記pH値は、7〜10の範囲である、請求項10に記載の製剤。
【請求項12】
前記カルシウムイオン担体に担持された前記カルシウムを含有する粒子からカルシウムイオンを放出させるカルシウムイオン放出剤をさらに含む、請求項1に記載の製剤。
【請求項13】
前記カルシウムイオン放出剤は、酸性溶液である、請求項12に記載の製剤。
【請求項14】
前記酸性溶液は、リン酸、シュウ酸及びクエン酸からなる群から選ばれる少なくとも一つである、請求項13に記載の製剤。
【請求項15】
前記酸性溶液は、リン酸である、請求項14に記載の製剤。
【請求項16】
前記リン酸の濃度は、1%〜65%の範囲である、請求項15に記載の製剤。
【請求項17】
前記リン酸の濃度は、25%〜45%の範囲である、請求項16に記載の製剤。
【請求項18】
前記リン酸の濃度は、31%〜40%の範囲である、請求項17に記載の製剤。
【請求項19】
前記カルシウムを含有する粒子を担持した前記カルシウムイオン担体に対して、前記酸性溶液の含有量の比率は1〜10mL/gの範囲である、請求項13に記載の製剤。
【請求項20】
前記カルシウムを含有する粒子を担持した前記カルシウムイオン担体に対して、前記酸性溶液の含有量の比率が2〜5mL/gの範囲である、請求項19に記載の製剤。
【請求項21】
pH値は、4〜7の範囲である、請求項12に記載の製剤。
【請求項22】
前記pH値は、5〜6の範囲である、請求項21に記載の製剤。
【請求項23】
ゲル状、ペースト状、スラリー状、エマルション状又はグルー状を呈する、請求項12に記載の製剤。
【請求項24】
前記カルシウムを含有する粒子は、リンをさらに含む、請求項1に記載の製剤。
【請求項25】
前記リンを含むカルシウムを含有する粒子は、リン酸カルシウム、ヒドロキシアパタイト(hydroxyapatite)、リン酸三カルシウム、リン酸四カルシウム、リン酸水素カルシウム(CaHPO4)、リン酸八カルシウム(Ca8H2(PO4)6・5H2O)、ピロリン酸カルシウム(Ca2P2O7)、バイオガラス(Na2O-CaO-SiO2-P2O5)またはそれらの組み合わせで構成される、請求項24に記載の製剤。
【請求項26】
フッ素を含有する成分をさらに含む、請求項1に記載の製剤。
【請求項27】
前記フッ素を含有する成分は、前記カルシウムイオン担体に担持される、請求項26に記載の製剤。
【請求項28】
前記フッ素を含有する成分は、フッ化アンモニウム、フッ化カルシウム、フッ化ナトリウム、フッ化カリウム、フッ化スズ(stannous fluoride)、フッ化アルミニウム、モノフルオロリン酸ナトリウム(sodium monofluorophosphate)、ヘキサフルオロケイ酸ナトリウム(sodium hexafluorosilicate)及びそれらの組み合わせからなる群から選ばれる一つである、請求項26に記載の製剤。
【請求項29】
pH値安定剤をさらに含む、請求項1に記載の製剤。
【請求項30】
個体の口腔に対して請求項1に記載の製剤を適用することを含む、象牙質に関連する症状または疾患を予防または治療する方法。
【請求項31】
前記象牙質に関連する症状は、象牙質知覚過敏症、亀裂歯症候群(crack tooth syndrome)、エナメル質の欠損(enamel loss)、象牙質の欠損、セメント質の欠損、または歯科手術後の知覚過敏症を含む、請求項30に記載の方法。
【請求項32】
前記象牙質に関連する疾患は、齲歯(dental caries)、歯根部齲食(root caries)、歯の破折(tooth fracture)、歯根部破折(root fracture)、歯頸部摩耗(cervical abrasion)、歯の摩耗(tooth wearing)、または象牙質に関連する歯髄疾患を含む、請求項30に記載の方法。
【請求項33】
カルシウムを含有する粒子、カルシウム及びリンを含有する粒子、フッ素を含有する粒子又はそれらの組み合わせを含む微粒子の組成物を提供する工程と、
前記組成物と酸性溶液を混合して製剤を形成する工程と、
個体の口腔に対して前記製剤を適用する工程と、
を含む、歯科治療方法。
【請求項34】
前記微粒子は、孔径が1nm〜100nmである複数の孔を有しており、前記カルシウムを含有する粒子、前記カルシウム及びリンを含有する粒子、前記フッ素を含有する粒子又はそれらの組み合わせは、前記微粒子の前記複数の孔に吸着される、請求項33に記載の方法。
【請求項35】
前記酸性溶液は、リン酸、シュウ酸及びクエン酸からなる群から選ばれる少なくとも一つである、請求項33に記載の方法。
【請求項36】
前記酸性溶液は、リン酸である、請求項35に記載の方法。
【請求項37】
前記リン酸の濃度は、1%〜65%の範囲である、請求項36に記載の方法。
【請求項38】
前記リン酸の濃度は、25%〜45%の範囲である、請求項37に記載の方法。
【請求項39】
前記リン酸の濃度は、31%〜40%の範囲である請求項38に記載の方法。
【請求項40】
前記製剤を形成する工程において、前記カルシウムを含有する粒子、前記カルシウム及びリンを含有する粒子、前記フッ素を含有する粒子又はそれらの組み合わせが吸着された前記微粒子に対して、前記酸性溶液の含有量の比率は1〜10mL/gの範囲である、請求項33に記載の方法。
【請求項41】
前記製剤を形成する工程において、前記カルシウムを含有する粒子、前記カルシウム及びリンを含有する粒子、前記フッ素を含有する粒子又はそれらの組み合わせが吸着された前記微粒子に対して、前記酸性溶液の含有量の比率は2〜5mL/gの範囲である、請求項40に記載の方法。
【請求項42】
前記製剤は、ゲル状(gel)、ペースト状(paste)、スラリー状(slurry)、エマルション状又はグルー状(glue)を呈する、請求項33に記載の方法。
【請求項43】
前記個体の口腔に対してpH値が7以上の水溶液を適用する工程をさらに含む、請求項33に記載の方法。
【請求項44】
前記水溶液は、アルカリ性水またはアルカリ性溶液である、請求項43に記載の方法。
【請求項45】
前記個体の口腔に対して水を適用する工程をさらに含む、請求項33に記載の方法。
【請求項46】
それぞれ複数の孔を有し、前記孔の孔径が1nm〜100nmである複数の微粒子と、
カルシウムを含有する成分、リンを含有する成分、カルシウム及びリンを含有する成分、フッ素を含有する成分又はそれらの組み合わせと、
を含む口腔ケア用組成物。
【請求項47】
前記カルシウムを含有する成分、前記リンを含有する成分、前記カルシウム及びリンを含有する成分、前記フッ素を含有する成分又はそれらの組み合わせは、前記複数の微粒子の孔に吸着される、請求項46に記載の組成物。
【請求項48】
前記孔の孔径は、2nm〜50nmである、請求項46に記載の組成物。
【請求項49】
前記微粒子の粒径は、0.1μm〜100μmの範囲である、請求項46に記載の組成物。
【請求項50】
pH値は、2〜10の範囲である、請求項46に記載の組成物。
【請求項51】
前記pH値は、7〜10の範囲である、請求項50に記載の組成物。
【請求項52】
前記pH値は、4〜7の範囲である、請求項50に記載の組成物。
【請求項53】
前記pH値は、5〜6の範囲である、請求項52に記載の組成物。
【請求項54】
前記微粒子は、二酸化ケイ素、アルミノケイ酸塩、二酸化チタン、酸化亜鉛、酸化アルミニウム及びそれらの組み合わせからなる群から選ばれる少なくとも一つの無機物で構成される、請求項46に記載の組成物。
【請求項55】
前記二酸化ケイ素で構成される微粒子は、ケイ酸塩、水ガラスまたはテトラアルコキシシランで形成される、請求項54に記載の組成物。
【請求項56】
前記カルシウムを含有する成分は、炭酸カルシウム、酸化カルシウム、塩化カルシウム、硝酸カルシウム、水酸化カルシウム、カルシウム塩及びそれらの組み合わせからなる群から選ばれる一つである、請求項46に記載の組成物。
【請求項57】
前記リンを含有する成分は、リン酸、リン酸ナトリウム、リン酸カリウム、リン酸塩、リン酸水素塩(hydrogen phosphate)、リン酸二水素塩(dihydrogen phosphate)及びそれらの組み合わせからなる群から選ばれる一つである、請求項46に記載の組成物。
【請求項58】
前記カルシウム及びリンを含有する成分は、リン酸カルシウム、ヒドロキシアパタイト(hydroxyapatite)、リン酸三カルシウム、リン酸四カルシウム、リン酸水素カルシウム(CaHPO4)、リン酸八カルシウム(Ca8H2(PO4)6・5H2O)、ピロリン酸カルシウム(Ca2P2O7)、バイオガラス(Na2O-CaO-SiO2-P2O5)及びそれらの組み合わせからなる群から選ばれる一つである、請求項46に記載の組成物。
【請求項59】
前記フッ素を含有する成分は、フッ化アンモニウム、フッ化カルシウム、フッ化ナトリウム、フッ化カリウム、フッ化スズ(stannous fluoride)、フッ化アルミニウム、モノフルオロリン酸ナトリウム(sodium monofluorophosphate)、ヘキサフルオロケイ酸ナトリウム(sodium hexafluorosilicate)及びそれらの組み合わせからなる群から選ばれる一つである、請求項46に記載の組成物。
【請求項60】
pH値安定剤をさらに含む、請求項46に記載の組成物。
【請求項61】
個体の口腔に対して請求項46に記載の組成物を適用することを含む、象牙質に関連する症状または疾患を予防または治療する方法。
【請求項62】
前記象牙質に関連する症状は、象牙質知覚過敏症、亀裂歯症候群(crack tooth syndrome)、エナメル質の欠損(enamel loss)、象牙質の欠損、セメント質の欠損、または歯科手術後の知覚過敏症を含む、請求項61に記載の方法。
【請求項63】
前記象牙質に関連する疾患は、齲歯(dental caries)、歯根部齲食(root caries)、歯の破折(tooth fracture)、歯根部破折(root fracture)、歯頸部摩耗(cervical abrasion)、歯の摩耗(tooth wearing)、または象牙質に関連する歯髄疾患を含む請求項61に記載の方法。
【請求項64】
歯科用品、歯磨きペースト、歯磨き粉、口内軟膏、チューインガム、チュアブル錠、トローチ、口内洗浄液、歯ブラシ又は貼付シートであって、請求項46に記載の組成物を含む製品。
【請求項65】
前記歯科用品は、歯科用セメント(dental cement)、歯科用接着剤(dental bonding agent)、歯科用磁質粉末(dental porcelain powder)、歯髄覆罩材(pulp capping materials)、逆根管充填材(retrograde filling material)、根管充填材(root canal filling materials)またはコンポジットレジン充填材(composite resin filling materials)である、請求項64に記載の製品。
【図1】
【図2a】
【図2b】
【図3a】
【図3b】
【図4a】
【図4b】
【図2a】
【図2b】
【図3a】
【図3b】
【図4a】
【図4b】
【公開番号】特開2013−67615(P2013−67615A)
【公開日】平成25年4月18日(2013.4.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−207966(P2012−207966)
【出願日】平成24年9月21日(2012.9.21)
【出願人】(512245850)英屬維京群島商聖凱瑟世界股▲フン▼有限公司 (1)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年4月18日(2013.4.18)
【国際特許分類】
【出願日】平成24年9月21日(2012.9.21)
【出願人】(512245850)英屬維京群島商聖凱瑟世界股▲フン▼有限公司 (1)
【Fターム(参考)】
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