説明

貝殻肥料製造装置および製造方法

【課題】低コストな製造装置でもって、カキ殻のヒダ間に付着した塩水、油分等を完全に除去することができると共に、カキ殻の粒径約3mm以上の粗破砕物を粒径3mm以下になるまで短い稼働時間で効率良く細破砕することができる貝殻肥料製造装置および製造方法を提供する。
【解決手段】水を投入しながら貝殻を粒径約3〜5cm程度に粗破砕するロールクラッシャー3と、この粗破砕物を品温が約200℃以内となるよう熱風乾燥するトンネル型ドライヤ4と、トンネル型ドライヤ4の排出部から篩7を介して設置し、粒径約3mm以上の粗破砕物を、粒径3mm以下になるまで細破砕するハンマーミル8とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カキ・ホタテ・ハマグリ・アサリ・シジミ・バカ貝・ホッキ貝等の種々の貝殻類を使った肥料・土壌改良材・飼料等の製造装置および製造方法に係り、主としてカキ殻を顆粒状に破砕するための貝殻肥料製造装置および製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、廃棄対象とされていたカキ殻等の貝殻を処理して、新しい資源として有効利用を図ることが広く普及されつつある。このような貝殻肥料の使用方法としては、例えば特許文献1に開示されているように、カキ殻を破砕したカキ殻粉粒体を土壌に混入して当該土壌の通気性を良好にし、土壌の熱や酸素の保有を向上させた土壌改良剤なる技術が存在する。
【0003】
また、従来の貝殻肥料製造方法としては、特許文献2に開示されているように、粗砕し洗浄されたカキ殻を、この有機質骨格構造の崩壊温度より充分に低温の127℃以下の温度に保持して乾燥し、この乾燥物を摩砕型の縄折込動作式の円筒型遠心流動破砕機により粒径2μm程度に摩砕する活性吸収型カルシウム粉体の製造方法が存在する。
【0004】
また、特許文献3に開示されているように、カキ殻を破砕機で微破砕し、これに水溶性バインダーを添加・混連して粒状カキ殻を得て、これに粒状燐酸肥料・粒状苦土肥料・粒状珪酸質肥料・粒状腐植肥料を適量混合して成る粒状カキ殻の粒子混合肥料なる技術がある。
【0005】
また、特許文献4に開示されているように、易分解性有機物とカキ殻を混合して、醗酵槽内で空気の供給下、70℃以上の醗酵温度で処理する醗酵工程と、得られた醗酵物から醗酵カキ殻を篩装置で分解する分離工程と、分離した醗酵カキ殻を、風化槽にて湿度30〜60%に調湿し、風化させることによりカキ殻のキチン質を脱アセチル化してカキ殻処理素材を得る土壌改良剤の製造方法および混合有機肥料なる技術が存在する。
【特許文献1】特開平10−46146号公報
【特許文献2】特開平5−155775号公報
【特許文献3】特開平5−157077号公報
【特許文献4】特開2002−265944号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、従来においては、何層ものヒダ状となって殻が形成されている所謂ミルフィーユ状のカキ殻は、そのヒダ間に塩水、油分等が多量に付着しており、最初の水洗いではこれらの完全除去が不可能である。また、カキ殻の粒径約3mm以上の粗破砕物を、粒径3mm以下になるまで細破砕させる際に、この破砕作業が不十分であると、細破砕物が粗破砕物と混在したままの状態で製品サイロに送られてしまう虞れがある。しかも、従来のように、摩砕型の縄折込動作式の円筒型遠心流動破砕機等を使う場合には、作業時間が掛かりすぎてしまい、したがって装置自体はもちろん、製品もコスト高となってしまうという問題点を有していた。
【0007】
そこで、本発明は、叙上のような従来存した諸事情に鑑み案出されたもので、低コストな製造装置でもって、カキ殻のヒダ間に付着した塩水、油分等を完全に除去することができると共に、カキ殻の粒径約3mm以上の粗破砕物を粒径3mm以下になるまで短い稼働時間で効率良く細破砕させることができ、かつ低コスト製品の製造が可能である貝殻肥料製造装置および製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述した課題を解決するため、本発明に係る貝殻肥料製造装置における請求項1にあっては、水を投入しながら貝殻を粗破砕するロールクラッシャーと、この粗破砕物を品温が約200℃以内となるよう熱風乾燥するトンネル型ドライヤと、該トンネル型ドライヤの排出部から篩を介して設置され、粒径約3mm以上の粗破砕物を、粒径3mm以下になるまで細破砕させるハンマーミルと、を備えたことを特徴とする。
【0009】
また、請求項2にあっては、貝殻の細破砕物を製品化するよう集塵機を備えた製品サイロを含むとなっている。
【0010】
さらに、請求項3にあっては、内部空気を窒素ガス等の不活性ガスでガス置換させて、貝殻の細破砕物を包装する包装機を含むとなっている。
【0011】
一方、本発明に係る貝殻肥料製造方法における請求項4にあっては、水洗いした身剥ぎ貝殻に含まれる金属屑類の不純物を磁気選別機あるいは手作業で取り除く不純物除去工程と、ロールクラッシャーにて、ミセル水を投入しながら貝殻を粒径約3〜5cm程度に粗破砕する粗破砕工程と、この粗破砕物をトンネル型ドライヤへ送って品温が約200℃以内となるよう熱風乾燥する乾燥工程と、トンネル型ドライヤの排出部近傍に設置されたバグフィルターにより、粗破砕時に粗破砕物に混在した状態で生成されたカキ殻パウダーだけを捕集するカキ殻パウダー捕集工程と、約2%程度の水分を含んだ粗破砕物を、篩を介してハンマーミルに投入し、ここで粒径約3mm以上の粗破砕物を粒径3mm以下に細破砕する細破砕工程と、集塵機を備えた製品サイロに送って貝殻の細破砕物を製品化する製品化工程とから成ることを特徴とする。
【0012】
また、請求項5にあっては、粒径3mm以下の粗細破物は、ハンマーミルに入ることなく、次の製品サイロへ直接移送させる工程を含むとなっている。
【0013】
さらに、請求項6にあっては、包装機により、内部空気を窒素ガス等の不活性ガスでガス置換させ、且つ貝殻の細破砕物を適宜の重量に区分して包装する包装工程を含むものとなっている。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、低コストな製造装置でもって、カキ殻のヒダ間に付着した塩水、油分等を完全に除去することができると共に、カキ殻の粒径約3mm以上の粗破砕物を粒径3mm以下になるまで短い稼働時間で効率良く細破砕させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、図面を参照して本発明を実施するための最良の一形態を説明する。
図において示される符号Pは、貝殻肥料を製造するための装置本体であり、該装置本体Pは、図1および図2に示すように、水洗いした状態の身剥ぎカキ殻を投入する原料投入ホッパー1と、水を投入しながら粒径約3〜5cm程度に粗破砕するロールクラッシャー3と、粗破砕物を品温が約200℃以内となるよう熱風乾燥するトンネル型ドライヤ4と、トンネル型ドライヤ4の排出部近傍に設置されたバグフィルター5と、篩7下方に設置されたハンマーミル8と、投入ホッパーおよび集塵機を備えた製品サイロ9と、内部空気を窒素ガス等の不活性ガスでガス置換させて包装する包装機10とから概ね構成されている。
【0016】
図3乃至図5に示すように、原料投入ホッパー1の下方からロールクラッシャー3の上方にかけてコンベアベルト2が配置され、このコンベアベルト2に沿った上側には、身剥ぎカキ殻に含まれる金属屑等の不純物を除去するための磁気選別機2aが設置されている。また、原料投入ホッパー1の排出口内側には、モータ1bによって回転される多数の円形羽根を備えた撹拌バー1aが設置されている。
【0017】
ロールクラッシャー3は、水、特に親水性部分と親油性部分とを有する物質の高分子集合体である所謂エアロゾルと称されるミセル水を投入しながら原料を粒径約3〜5cm程度に粗破砕するものである。したがって、何層ものヒダ状となって殻が形成されている所謂ミルフィーユ状のカキ殻の当該ヒダ間に含まれている塩水、油分等は、ロールクラッシャー3においてミセル水をかけながら破砕することで略完全に洗い流せる。
【0018】
ミセル水は、ステンレス製の水槽内で、ネオジウム鉄ボロンまたはフェライト等の永久磁石のN極同士を対向させ、その近傍にゲルマニウム内在黒雲母を配置させ、この反発磁界の内部に20℃または40℃の温度の水を通過させると共に、加圧気体強制溶存−爆裂破泡器に連結させて、遠赤外線共鳴吸収振動水と、空気または窒素ガスを循環させることにより製造される。
【0019】
トンネル型ドライヤ4は、図6および図7に示すように、円筒状のトンネル4aが前後下側にあるそれぞれ一対の支持ローラ4bに支持されながら、モータ4cによってトンネル4a自体が回転するロータリー式になっている。そして、トンネル4aの内周面には、中心方向に向けて複数の撹拌羽根4dが設けられ、投入部側からは、発熱部4fからの熱風をダクト4eを介してトンネル4a内に送り込むようにしてある。
【0020】
また、トンネル型ドライヤ4の投入部側は、前記ロールクラッシャー3とコンベアベルト6aを介して接続され、その接続箇所には、原料をトンネル4a内に送り込むためのスクリューコンベア4gが配されている。
【0021】
一方、トンネル型ドライヤ4の排出部側には、粗破砕時に粗破砕物に混在した状態で生成されたカキ殻パウダーだけを通過させて捕集するためのバグフィルター5あるいは製品サイロが設置され(図6参照)、該バグフィルター5はコンベアベルト6bを介して、ハンマーミル8上方の篩7に接続されている。
【0022】
ハンマーミル8は、原料を篩7を介して下方の当該ハンマーミル8に投入し、ここで粒径約3mm以上の粗破砕物を、粒径3mm以下になるまで細破砕させるためのものである。すなわち、ハンマーミル8は、図8および図9に示すように、上部に原料投入口8aおよび下部に破砕物排出口8bを設けて成る筒箱形の破砕回転ドラム格納部8c内に、外周に角棒状の破砕具8dを一体的に溶接等により固着周設した破砕回転ドラム8eを回動可能となるように装設し、破砕回転ドラム8eの回転軸一端から突出した駆動ローラ8gと、モータ8fの出力ローラ8hとの間をエンドレスベルト8iによって巻架連繋させてある。
【0023】
ハンマーミル8の使用に際し、破砕回転ドラム8eを回動させ、原料投入口8aよりカキ殻の粗破砕物を投入することにより、対向する破砕具8dの角部にて細かく破砕し、粒径3mm以下の細破砕状に破砕されたカキ殻を破砕物排出口8bより下方に排出する。
【0024】
次に、以上のように構成された最良の形態における貝殻肥料の製造方法について図1および図10に基づいて説明する。
尚、この工程で処理される例えばカキ等の貝殻には、酸化チタン41ppm、カルシウム45重量%、鉄6200ppm、亜鉛43.41ppm、マンガン1400ppm、カリウム320ppm、リン1600ppm、マグネシウム5200ppm、セレン52200ppm、モリブデン2748ppm、珪素7100ppm、銅8.61ppm、ナトリウム1.55重量%、ゲルマニウム5ppm未満、クロム1ppm未満、コバルト44重量%、ニッケル1ppm未満、リチウム2ppm未満、バナジウム2ppm未満、キチン質、炭素、ラミナリン、コンキオリン有機窒素15重量%、酸素、水素、硫黄、ヨウ素、フルボ酸等のように、植物の成長に有用なミネラル類が含まれている。
【0025】
先ず、水洗いした身剥ぎカキ殻を原料投入ホッパー1へ投入する。この投入された身剥ぎカキ殻は、コンベアベルト2を介してロールクラッシャー3へ移送される。
【0026】
(不純物除去工程A)
このコンベアベルト2での原料搬送に際し、身剥ぎカキ殻に含まれる金属屑等の不純物を磁気選別機あるいは手作業等で取り除く。これは、次工程のロールクラッシャー3で破砕するときに当該ロールクラッシャー3のロール表面を傷付けないようにするためである。
【0027】
(粗破砕工程B)
ミセル水を投入しながらロールクラッシャー3で粒径約3〜5cm程度に粗破砕する。このミセル水とは、親水性部分と親油性部分とを有する物質の高分子集合体である。また、何層ものヒダ状となって殻が形成されている所謂ミルフィーユ状のカキ殻は、そのヒダ間に塩水、油分等が含まれており、最初の水洗いではこれらの完全除去が不可能であるため、ミセルを含む水をかけながら破砕することで前記塩水、油分等が洗い流される。
【0028】
(乾燥工程C)
粗破砕物をコンベアベルト6aによりトンネル型ドライヤ4へ送る。このとき粗破砕物は、トンネル型ドライヤ4に投入する以前では約30%程度の水分を含んでいる。粗破砕物は、このトンネル型ドライヤ4により品温が約200℃以内となるよう熱風乾燥され、その結果、含有水分が約2%程度となってトンネル型ドライヤ4から排出される。
【0029】
(カキ殻パウダー捕集工程D)
このとき、トンネル型ドライヤ4の排出部近傍に設置されたバグフィルター5により、粗破砕時に粗破砕物に混在した状態で生成されたカキ殻パウダーだけが通過排出して捕集され、包装後にカキ殻肥料として販売使用される。
【0030】
(細破砕工程E)
一方、約2%の水分を含んだ粗破砕物はコンベアベルト6bを介して篩7へ搬入される。そして、この篩7下方に設置されているハンマーミル8に投入され、ここで粒径約3mm以上の粗破砕物は粒径3mm以下に細破砕される。また、粒径3mm以下の粗細破物はハンマーミル8に入ることなく、次の製品サイロ9の投入ホッパーへ直接投入される。
【0031】
(製品化工程F)
細破砕物は、次の製品サイロ9の投入ホッパーへ投入されて選別・貯蔵される。
【0032】
(包装工程G)
この細破砕物は、例えば3kg、5kg、20kgに区分されて、次工程に設置された包装機10で包装される。この包装の際には、包装内部の空気を窒素ガス等の不活性ガスでガス置換される。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明を実施するための最良の形態における貝殻肥料製造装置の構成概要を示す平面図である。
【図2】同じく貝殻肥料製造装置の構成概要を示す側面図である。
【図3】同じく原料投入ホッパーとロールクラッシャーとの概要を示す側面図である。
【図4】同じく原料投入ホッパーの概要を示す拡大された側面図である。
【図5】同じく原料投入ホッパーの概要を示す拡大された正面図である。
【図6】同じくトンネル型ドライヤの概要を示す側面図である。
【図7】図6中、A−A部分の断面図である。
【図8】同じくハンマーミルの概要を示す平面図である。
【図9】同じくハンマーミルの概要を示す側面図である。
【図10】本発明を実施するための最良の形態における貝殻肥料製造方法の作業工程を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0034】
P 装置本体
A 不純物除去工程
B 粗破砕工程
C 乾燥工程
D カキ殻パウダー捕集工程
E 細破砕工程
F 製品化工程
G 包装工程
1 原料投入ホッパー
2 コンベアベルト
3 ロールクラッシャー
4 トンネル型ドライヤ
5 バグフィルター
7 篩
8 ハンマーミル
9 製品サイロ
10 包装機

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水を投入しながら貝殻を粗破砕するロールクラッシャーと、この粗破砕物を、品温が約200℃以内となるよう熱風乾燥するトンネル型ドライヤと、該トンネル型ドライヤの排出部から篩を介して設置され、粒径約3mm以上の粗破砕物を、粒径3mm以下になるまで細破砕させるハンマーミルと、を備えたことを特徴とする貝殻肥料製造装置。
【請求項2】
貝殻の細破砕物を製品化するよう集塵機を備えた製品サイロを含む請求項1記載の貝殻肥料製造装置。
【請求項3】
内部空気を不活性ガスでガス置換させて、貝殻の細破砕物を包装する包装機を含む請求項1または2記載の貝殻肥料製造装置。
【請求項4】
水洗いした身剥ぎ貝殻に含まれる金属屑類の不純物を磁気選別機あるいは手作業で取り除く不純物除去工程と、ロールクラッシャーにて、ミセル水を投入しながら貝殻を粒径約3〜5cm程度に粗破砕する粗破砕工程と、この粗破砕物をトンネル型ドライヤへ送って品温が約200℃以内となるよう熱風乾燥する乾燥工程と、トンネル型ドライヤの排出部近傍に設置されたバグフィルターにより、粗破砕時に粗破砕物に混在した状態で生成されたカキ殻パウダーだけを捕集するカキ殻パウダー捕集工程と、約2%程度の水分を含んだ粗破砕物を、篩を介してハンマーミルに投入し、ここで粒径約3mm以上の粗破砕物を粒径3mm以下に細破砕する細破砕工程と、集塵機を備えた製品サイロに送って貝殻の細破砕物を製品化する製品化工程から成ることを特徴とした貝殻肥料製造方法。
【請求項5】
粒径3mm以下の粗細破物は、ハンマーミルに入ることなく、次の製品サイロへ直接移送させる工程を含む請求項4記載の貝殻肥料製造方法。
【請求項6】
包装機により、内部空気を窒素ガス等の不活性ガスでガス置換させ、且つ貝殻の細破砕物を適宜の重量に区分して包装する包装工程を含む請求項4または5記載の貝殻肥料製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2008−88029(P2008−88029A)
【公開日】平成20年4月17日(2008.4.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−272617(P2006−272617)
【出願日】平成18年10月4日(2006.10.4)
【出願人】(505450157)
【Fターム(参考)】