説明

貝類の吸引式採取装置

【課題】コンパクトで、かつ、極めて効率よく貝類を採取することができ、砂の吸引による目詰まりの問題を可及的に回避することができる貝類の吸引採取装置を提供する。
【解決手段】作業船上に設置されたポンプ2と、ポンプ2の吸入口2aに接続された海水吸引用ホース7aと、ポンプ2の排出口2bに接続された海水吐出用ホース7bと、海水吐出用ホース7bの先端に接続されたエジェクター3と、エジェクター3に接続された貝類吸引用ホース7c及び貝類吐出用ホース7dと、貝類吸引用ホース7cの先端に接続された鋤簾4と、貝類吐出用ホース7dの先端に接続された回収ネット8と、鋤簾4が載置される橇5とによって、貝類の吸引採取装置1を構成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アサリを始めとする貝類を吸引して連続的に採取する装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、アサリ等の貝類の採取作業は、鋤簾と呼ばれる器具を用いて人力で行われている。また、船上に設置したポンプを駆動させて、海底面付近に保持させたパイプから、貝類を、その周辺の砂ごと吸い込んで採取する装置(吸引式採取装置)も開発されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−208591号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
鋤簾を用いた、人力による貝類の採取方法は、作業者において強い体力が要求され、また、潮汐との関係で、水深が1m以下の限られた時間帯においてのみ作業が可能であり、人的及び時間的な制約がある。また、採取しようとする貝類が低密度で広範囲に分布しているような場合、捕獲効率が低いという問題もある。
【0005】
一方、従来の吸引式採取装置は、操作性が良好とは言い難く、効率的に作業を進めることができないという問題がある。
【0006】
本発明は、上記のような従来技術における課題を解決しようとするものであって、コンパクトで、操作性がよく、かつ、極めて効率よく貝類を採取することができる貝類の吸引採取装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る貝類の吸引採取装置は、作業船上に設置されたポンプと、ポンプの吸入口に接続された海水吸引用ホースと、ポンプの排出口に接続された海水吐出用ホースと、海水吐出用ホースの先端に接続されたエジェクターと、エジェクターに接続された貝類吸引用ホース及び貝類吐出用ホースと、貝類吸引用ホースの先端に接続され、海底面上を移動して貝類を吸引する吸引部と、貝類吐出用ホースの先端に接続された回収ネットと、によって構成され、エジェクターは、への字状に湾曲或いは屈曲した形状のベンド管と、流入口側に対して流出口側の口径が絞られた絞り管とによって構成され、ベンド管は、ベンド角が、40〜60°の範囲内において設定され、内径及び口径が、ポンプの排出口の口径の1〜2倍の範囲内において設定され、絞り管は、流出口が、ベンド管の内壁面において開口し、ベンド管内部と連通するようにベンド管に対して接続され、流出口の口径が、ポンプの排出口の口径の40〜70%の範囲内において設定され、絞り管は、その中心軸線が、ベンド管の後半直状部の中心軸線と一致する向きで、又は、ベンド管の後半直状部の中心軸線と平行になるように、又は、ベンド管の後半直状部の中心軸線に対し、絞り管の中心軸線の傾斜角度が5°以内となる向きで、ベンド管に対して接続され、吸引部は、全方向に対応できる環状の橇と、当該橇の中央の空間において保持された吸入パイプと、によって構成されていることを特徴としている。
【0008】
尚、吸入パイプの下端には、吸い込みフードが取り付けられていることが好ましく、また、吸入パイプは、取付位置を上下方向へ変更できるような状態で保持されていることが好ましい。更に、吸入パイプには、吸引部を牽引する際に用いる牽引ロープを係止するための牽引ロープ係止用リングが、吸入パイプの外周面周りに回動自在なように取り付けられていることが好ましい。また、橇として、中空パイプ材を環状に繋いで構成したものを用いることが好ましい。
【0009】
また、吸引部としては、鋤簾と、鋤簾が載置される橇とによって構成されたものを用いることもでき、この場合、鋤簾は、櫛歯状底部と、貝類吸引用ホースが接続された吸い込みフード又は吸入パイプと、を有し、櫛歯状底部の先端部が、橇の底面よりも下方へ突出するような状態で、橇上に固定されていることが好ましい。
【0010】
尚、吸い込みフードの下縁、又は、吸入パイプの先端には、海底面又は底質(砂等)の塊の表面に対する吸い込みフードの下縁又は吸入パイプの先端の密着を防ぐためのブラシを取り付けることが好ましい。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係る貝類の吸引採取装置は、極めて効率よく貝類を採取することができ、また、水深1〜5mでの連続的な採取作業が可能となり、潮汐との関係においても、時間的な制約を少なくすることができる。また、エジェクターや貝類の吸入口(吸い込みフード等)の形状、構造を工夫することにより、漁業用小型船舶に対して人力による作業だけで簡単に着脱できるほどコンパクトで、かつ、効率的な吸引が可能な構成を実現することができる。
【0012】
また、鋤簾から回収ネットまでの捕集貝類の移送経路を、すべて海中において形成することができるため、海水、捕集貝類、及び、砂を、海底から一旦船上まで移送する従来の吸引採取装置と比べて、ポンプの能力(出力)、エジェクターの吸引力、移送経路内の流速、及び、流量を小さくすることができ、その結果、大量の砂の吸引による経路の目詰まりという問題を好適に回避することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】図1は、本発明の第1実施形態に係る吸引採取装置1の構成図である。
【図2】図2は、図1に示したエジェクター3の断面拡大図である。
【図3】図3は、図1に示した鋤簾4、及び、橇5の側面図である。
【図4】図4は、図1に示した鋤簾4、及び、橇5の平面図である。
【図5】図5は、本発明の第2実施形態に係る吸引採取装置において使用される吸引部20の斜視図である。
【図6】図6は、図5に示した吸引部20の垂直断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明を実施するための形態(第1実施形態、及び、第2実施形態)について説明する。図1は、本発明の第1実施形態に係る吸引採取装置1の構成図であり、図示されているように、この吸引採取装置1は、ポンプ2、エジェクター3、吸引部20(鋤簾4、橇5)、ストレーナ6、ホース7(海水吸引用ホース7a、海水吐出用ホース7b、貝類吸引用ホース7c、及び、貝類吐出用ホース7d)、回収ネット8、及び、牽引ロープ9とによって構成されている。
【0015】
本実施形態においては、ポンプ2として、ガソリンエンジンによって駆動するエンジンポンプ(最大吐出量:1.36m/min以上、最大定格出力:5kw以上)が使用され、このポンプ2は、作業船10(船外機付きの漁業用小型船舶等)に搭載される。ポンプ2の吸入口2aには、海水吸引用ホース7aが接続され、その先端にはストレーナ6が取り付けられている。また、ポンプ2の排出口2b(口径80mm)には、海水吐出用ホース7bが接続され、その先端は、エジェクター3に接続されている。エジェクター3には、貝類吸引用ホース7c、及び、貝類吐出用ホース7dが接続され、貝類吸引用ホース7cの先端は鋤簾4に、貝類吐出用ホース7dの先端は回収ネット8に、それぞれ接続されている。
【0016】
エジェクター3は、図2に示すように、「へ」の字状に湾曲(或いは屈曲)した形状のベンド管11と、流入口側に対して流出口側の口径が絞られた絞り管12とによって構成されている。これらのうち、ベンド管11は、吸入口11a側の前半直状部11bと、吐出口11c側の後半直状部11dと、これらの間の湾曲部11eとによって構成され、ベンド角(前半直状部11bの中心軸線CL1に対する後半直状部11dの中心軸線CL2の傾斜角度)は45°に設定されている。
【0017】
絞り管12は、流入口12a側の前半部12bと、流出口12c側の後半部12dと、これらの間の絞り部12eとによって構成され、流出口12cが、ベンド管11の内壁面において開口し、ベンド管11内部と連通するように、かつ、中心軸線CL3が、ベンド管11の後半直状部11dの中心軸線CL2と一致する向きで、ベンド管11に対して接続されている。
【0018】
ベンド管11の吸入口11aには、図1に示すように貝類吸引用ホース7cが接続され、吐出口11cには、貝類吐出用ホース7d(図1参照)が接続される。また、絞り管12の流入口12aには、海水吐出用ホース7b(図1参照)が接続される。
【0019】
尚、本実施形態においては、ベンド管11の吸入口11a、及び、吐出口11cの口径は100mm(ポンプ2の排出口2bの口径の1.25倍)に設定されており、前半直状部11b、後半直状部11d、及び、湾曲部11eの内径も、100mmに設定されている。また、絞り管12の流入口12aの口径は80mm、流出口12cの口径は40mmに設定されている。
【0020】
但し、これらの寸法には限定されず、ベンド管11の口径及び内径については、ポンプ2の排出口2bの口径の1〜2倍の範囲内において、また、絞り管12の流出口12cの口径については、ポンプ2の排出口2bの口径の40〜70%の範囲内において、適宜設定を変更することができる。また、ベンド管11におけるベンド角については、40〜60°の範囲内において、適宜設定を変更することができる。更に、絞り管12については、必ずしも、中心軸線CL3が、ベンド管11の後半直状部11dの中心軸線CL2と一致していなくともよく、これらの中心軸線CL2,CL3が平行となるように、若しくは、ベンド管11の後半直状部11dの中心軸線CL2に対し、絞り管12の中心軸線CL3の傾斜角度が5°以内となるように、絞り管12をベンド管11に対して接続してもよい。
【0021】
吸引部20は、鋤簾4及び橇5によって構成されている。これらのうち、鋤簾4は、図3及び図4に示すように、櫛歯状底部13と、その両側縁及び後端縁から上方へそれぞれ立設させた側方メッシュ部14及び後方メッシュ部15と、それらの上方に配置される上方メッシュ部16と、吸い込みフード17とによって構成され、橇5の前方中央部に載置されている。櫛歯状底部13は、従来の一般的な鋤簾(人力による貝類採取作業に用いられている鋤簾)と同様に、前方側が低くなるように傾斜しており、また、先端部13aが、側方メッシュ部14等に対し前方へ突出した構成となっている。
【0022】
そして、従来の一般的な鋤簾と異なり、後端上部に、吸い込みフード17が取り付けられている。図示されているように、この吸い込みフード17は、下方へ向かって拡開するように構成され、上部には、ホース取付口17aが上方へ向かって突出するように形成されており、このホース取付口17aには、貝類吸引用ホース7cが接続される。尚、側方メッシュ部14及び後方メッシュ部15については、メッシュ状の部材に替えて、板状の部材、或いは、パンチングメタルを使用してもよい。
【0023】
橇5は、図3及び図4に示すように、二枚の橇板18a,18bと、矩形状に組まれたフレーム材19とによって構成されており、二枚の橇板18a,18bは、フレーム材19の両側部19a,19bにそれぞれ取り付けられることにより、所定の間隔を置いて、平行な状態で保持されるようになっている。尚、鋤簾4は、櫛歯状底部13の先端部13aが、橇板18a,18bの底面よりも下方へ突出するような状態で、橇5上に固定されている。
【0024】
ここで、本実施形態の吸引採取装置1の使用方法と作用について説明する。図1に示すように、作業船10にポンプ2を搭載し、ポンプ2の吸入口2aに接続した海水吸引用ホース7aの先端側を海中に浸し、また、ポンプ2の排出口2bに接続した海水吐出用ホース7b、その先端に接続したエジェクター3、及び、エジェクター3に接続した貝類吸引用ホース7c、貝類吐出用ホース7d、更に、これらのホースに接続した鋤簾4(及び橇5)、回収ネット8を海中に下ろし、橇5を海底に着底させる。
【0025】
次に、この状態でポンプ2を駆動させる。そうすると、ストレーナ6から海水が連続的に吸引され、この吸引された海水は、海水吸引用ホース7aを通って吸入口2aからポンプ2内に流入するとともに、排出口2bから排出され、海水吐出用ホース7bを通ってエジェクター3の絞り管12へと流下する。絞り管12は、流入口12a側に対して流出口12c側の口径が絞られているため、その分だけ流速が増加し、ジェット噴流となって流出口12cから流出する。
【0026】
絞り管12の流出口12cから流出した海水のジェット噴流は、ベンド管11の後半直状部11d内に流入する。このとき、ベンド管11の内径は、ポンプ2の排出口2bの口径の1.25倍、絞り管12の流出口12cの口径の2.5倍の大きさに設定されているため、ベンド管11の後半直状部11d内において負圧が生じることになる。この負圧によって、ベンド管11の吸入口11aからベンド管11内へ向かって吸引力が生じ、この吸引力によって、貝類吸引用ホース7cの先端に接続されている鋤簾4の吸い込みフード17から海水が連続的に吸引され、ベンド管11内に流入する。
【0027】
絞り管12の流出口12c、及び、ベンド管11の吸入口11aからベンド管11内に流入した海水は、吐出口11cから排出され、貝類吐出用ホース7dを通って回収ネット8へと流下し、海中へ放出される。このように、ポンプ2を駆動させると、エジェクター3の作用によって、鋤簾4の吸い込みフード17から貝類吸引用ホース7c、ベンド管11、及び、貝類吐出用ホース7dを経て、回収ネット8へと向かう海水の循環経路(捕集貝類の移送経路)を、海中において形成することができる。
【0028】
一方、橇5を牽引ロープ9で引っ張りながら、作業船10を前進させると、橇5は、海底面に沿って作業船10と共に前進していくことになる。上述の通り、橇5上に載置されている鋤簾4は、櫛歯状底部13の先端部13aが、橇板18a,18bの底面よりも下方へ突出するような状態となっているため、櫛歯状底部13の先端部13aが、海底の砂の中に潜った状態で、砂を掘り返しながら、橇5が前進していくことになり、このとき、砂の中に棲息している貝類が、櫛歯状底部13上に捕捉される。
【0029】
作業船10及び橇5の前進に伴って、櫛歯状底部13上に捕捉された貝類は、順次捕捉されていく後続の貝類に押しやられて、次第に櫛歯状底部13の傾斜を登っていき、最終的に鋤簾4の後端部まで移動する。上述の通り、ポンプ2の駆動中においては、吸い込みフード17から海水が連続的に吸引され、回収ネット8へ向かって流下するようになっているため、上方において吸い込みフード17が開口する鋤簾4の後端部まで移動した貝類は、海水とともに吸い込みフード17から吸引され、貝類吸引用ホース7c、ベンド管11、及び、貝類吐出用ホース7dからなる捕集貝類の移送経路を介して回収ネット8へ移送される。この作業をある程度の時間にわたって継続し、回収ネット8内に、十分な量の貝類が捕集されたら、作業を一旦停止して、回収ネット8を作業船10上に引き揚げて、貝類を採取する。
【0030】
尚、本実施形態においては、貝類吸引用ホース7cの先端に、鋤簾4の吸い込みフード17が取り付けられているが、この吸い込みフード17の替わりに、貝類吸引用ホース7cの口径とほぼ同一口径で、鋤簾4の後端部において吸入口が開口するように固定された吸入パイプを接続してもよい。また、吸い込みフード17の下縁、又は、吸入パイプの先端にブラシを取り付けるようにしてもよい。この場合、鋤簾4内に蓄積した砂、その他の底質の塊の表面に対して吸い込みフード17の下縁又は吸入パイプの先端が密着してしまうことを防ぐことができ、その結果、貝類吸引用ホース7c内への海水の流入量の低下に起因する貝類等の吸引量、移送量、及び、移送効率の低下を防止することができる。
【0031】
続いて、本発明の第2実施形態について説明する。本実施形態に係る吸引採取装置は、図5及び図6に示すように、吸引部20が、円環状の橇5、吸入パイプ21、吸い込みフード17等によって構成されており、鋤簾が用いられていない点、及び、橇5として、全方向に対応できるものが用いられている点で、図1に示した第1実施形態の吸引採取装置1と異なっている。
【0032】
より具体的に説明すると、橇5は、外径15〜20cm程度の中空パイプ材を円環状に繋いで構成されており、海底面上において、前後、左右、斜めのいずれの方向に対しても円滑に移動させることができるようになっている。橇5の中央の空間には、リング状ベース22が、四本のフレーム材19(一端が橇5に対してそれぞれ固定されている)によって保持されている。
【0033】
吸入パイプ21は、下端に吸い込みフード17(下方へ向かって拡開している)が取り付けられており、上端には、ホース取付口21aが形成されている。尚、このホース取付口21aには、貝類吸引用ホース7cが接続される。また、吸い込みフード17の下縁には、ブラシ26が取り付けられており、これにより、海底面に対し、吸い込みフード17の下縁が密着することを好適に防止することができる。
【0034】
吸入パイプ21は、中心軸線が垂直となる向き(上下方向へ延在する向き)で、かつ、取付位置を上下方向へ変更できるような状態で、リング状ベース22に対して取り付けられている。より詳細には、リング状ベース22には、中心を挟んで対向する二箇所から、中心方向へ向かって突出する一対の平板状のブラケット23,23が取り付けられ、一方、吸入パイプ21には、外周面から外側へ向かって突出する一対の垂直なフラップ24,24が取り付けられており、これら一対のブラケット23,23とフラップ24,24とが、それぞれの孔に挿通されたボルトの締結によって連結され、これにより、リング状ベース22に対して吸入パイプ21が保持固定されている。
【0035】
尚、図5及び図6に示すように、フラップ24,24には、複数個のボルト挿通孔が、縦方向へ所定の間隔をおいた位置に開設されており、ボルトを挿通する孔を変更することにより、リング状ベース22及び橇5に対する吸入パイプ21の高さ位置を自在に変更することができる。
【0036】
吸入パイプ21の中間部付近には、作業船から吸引部20を牽引する際に用いる牽引ロープを係止するための、牽引ロープ係止用リング25が取り付けられている。この牽引ロープ係止用リング25は、吸入パイプ21の外周面上において摺動可能なように、即ち、吸入パイプ21の周りを自在に回動できるように取り付けられている。
【0037】
本実施形態に係る吸引採取装置において使用される吸引部20は、上述の通り、橇5として、全方向に対して円滑に移動できるものが使用され、また、牽引ロープ係止用リング25が、橇5の中央において垂直に保持された吸入パイプ21の周りを自在に回動できるように構成されているため、作業船から、吸引部20を牽引ロープで引っ張りながら貝類の採取作業を行う際、作業船の進路変更に対して、吸引部20を好適に追随させることができ、採取作業を円滑に継続することができる。
【0038】
尚、本実施形態においては、橇5として、中空パイプ材を円環状に繋いで構成したものが使用されているが、中空パイプ材を多角形状(例えば、五角形、六角形、或いは、八角形の環状)に繋いで構成したものを使用することもできる。また、橇5の構成材料としては、必ずしも中空パイプ材には限定されず、環状に形成した板材の外周縁及び内周縁がそれぞれ上方へ反り上がった橇板を用いることもできる。
【産業上の利用可能性】
【0039】
現在、アサリ漁においては、資源の枯渇を防止するために、動力を使用した機械的な手段による漁獲方法が禁じられていることが多いが、本発明の吸引採取装置は、極めて効率的に貝類の採取を行うことができるため、将来的にアサリを始めとする貝類の漁獲の省力化が必要になった場合等に、好適に利用することができる。また、現状においても、漁場環境改善を目的とした調査用器材として利用することができる。更に、アサリの稚貝の斃死を防ぐ目的で、稚貝の一部を一時的に採取して移動させ、適切な環境下においてアサリを生育させるような場合にも利用することができ、漁場環境の保全、修復を図ることができる。
【符号の説明】
【0040】
1:吸引採取装置、
2:ポンプ、
2a:吸入口、
2b:排出口、
3:エジェクター、
4:鋤簾、
5:橇、
6:ストレーナ、
7:ホース、
7a:海水吸引用ホース、
7b:海水吐出用ホース、
7c:貝類吸引用ホース、
7d:貝類吐出用ホース、
8:回収ネット、
9:牽引ロープ、
10:作業船、
11:ベンド管、
11a:吸入口、
11b:前半直状部、
11c:吐出口、
11d:後半直状部、
11e:湾曲部、
12:絞り管、
12a:流入口、
12b:前半部、
12c:流出口、
12d:後半部、
12e:絞り部、
13:櫛歯状底部、
13a:先端部、
14:側方メッシュ部、
15:後方メッシュ部、
16:上方メッシュ部、
17:吸い込みフード、
17a:ホース取付口、
18a,18b:橇板、
19:フレーム材、
19a,19b:側部、
20:吸引部、
21:吸入パイプ、
21a:ホース取付口、
22:リング状ベース、
23:ブラケット、
24:フラップ、
25:牽引ロープ係止用リング、
26:ブラシ、
CL1,CL2,CL3:中心軸線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
作業船上に設置されたポンプと、ポンプの吸入口に接続された海水吸引用ホースと、ポンプの排出口に接続された海水吐出用ホースと、海水吐出用ホースの先端に接続されたエジェクターと、エジェクターに接続された貝類吸引用ホース及び貝類吐出用ホースと、貝類吸引用ホースの先端に接続され、海底面上を移動して貝類を吸引する吸引部と、貝類吐出用ホースの先端に接続された回収ネットと、によって構成され、
前記エジェクターは、への字状に湾曲或いは屈曲した形状のベンド管と、流入口側に対して流出口側の口径が絞られた絞り管とによって構成され、
前記ベンド管は、ベンド角が、40〜60°の範囲内において設定され、内径及び口径が、ポンプの排出口の口径の1〜2倍の範囲内において設定され、
前記絞り管は、流出口が、ベンド管の内壁面において開口し、ベンド管内部と連通するようにベンド管に対して接続され、流出口の口径が、ポンプの排出口の口径の40〜70%の範囲内において設定され、
前記絞り管は、その中心軸線が、ベンド管の後半直状部の中心軸線と一致する向きで、又は、ベンド管の後半直状部の中心軸線と平行になるように、又は、ベンド管の後半直状部の中心軸線に対し、絞り管の中心軸線の傾斜角度が5°以内となる向きで、ベンド管に対して接続され、
前記吸引部は、全方向に対応できる環状の橇と、当該橇の中央の空間において保持された吸入パイプと、によって構成されていることを特徴とする貝類の吸引採取装置。
【請求項2】
前記吸入パイプの下端に、吸い込みフードが取り付けられていることを特徴とする、請求項1に記載の貝類の吸引採取装置。
【請求項3】
前記吸入パイプは、取付位置を上下方向へ変更できるような状態で保持されていることを特徴とする、請求項1に記載の貝類の吸引採取装置。
【請求項4】
前記吸入パイプには、吸引部を牽引する際に用いる牽引ロープを係止するための牽引ロープ係止用リングが、吸入パイプの外周面周りに回動自在なように取り付けられていることを特徴とする、請求項1に記載の貝類の吸引採取装置。
【請求項5】
前記橇として、中空パイプ材を環状に繋いで構成したものを用いたことを特徴とする、請求項1に記載の貝類の吸引採取装置。
【請求項6】
作業船上に設置されたポンプと、ポンプの吸入口に接続された海水吸引用ホースと、ポンプの排出口に接続された海水吐出用ホースと、海水吐出用ホースの先端に接続されたエジェクターと、エジェクターに接続された貝類吸引用ホース及び貝類吐出用ホースと、貝類吸引用ホースの先端に接続され、海底面上を移動して貝類を吸引する吸引部と、貝類吐出用ホースの先端に接続された回収ネットと、によって構成され、
前記エジェクターは、への字状に湾曲或いは屈曲した形状のベンド管と、流入口側に対して流出口側の口径が絞られた絞り管とによって構成され、
前記ベンド管は、ベンド角が、40〜60°の範囲内において設定され、内径及び口径が、ポンプの排出口の口径の1〜2倍の範囲内において設定され、
前記絞り管は、流出口が、ベンド管の内壁面において開口し、ベンド管内部と連通するようにベンド管に対して接続され、流出口の口径が、ポンプの排出口の口径の40〜70%の範囲内において設定され、
前記絞り管は、その中心軸線が、ベンド管の後半直状部の中心軸線と一致する向きで、又は、ベンド管の後半直状部の中心軸線と平行になるように、又は、ベンド管の後半直状部の中心軸線に対し、絞り管の中心軸線の傾斜角度が5°以内となる向きで、ベンド管に対して接続され、
前記吸引部は、鋤簾と、鋤簾が載置される橇と、によって構成され、
前記鋤簾は、櫛歯状底部と、貝類吸引用ホースが接続された吸い込みフード又は吸入パイプと、を有し、
前記櫛歯状底部は、先端部が、橇の底面よりも下方へ突出するような状態で、橇上に固定されていることを特徴とする貝類の吸引採取装置。
【請求項7】
前記吸い込みフードの下縁、又は、前記吸入ノズルの先端に、海底面又は底質の塊の表面に対する吸い込みフードの下縁又は吸入パイプの先端の密着を防ぐためのブラシを取り付けたことを特徴とする、請求項1〜6のいずれかに記載の貝類の吸引採取装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−78282(P2013−78282A)
【公開日】平成25年5月2日(2013.5.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−219952(P2011−219952)
【出願日】平成23年10月4日(2011.10.4)
【出願人】(501168814)独立行政法人水産総合研究センター (103)
【出願人】(511240140)日本アスピー株式会社 (2)
【出願人】(511240151)有限会社前興 (2)
【Fターム(参考)】