説明

負極板、リチウムイオン二次電池、車両、電池使用機器及び負極板の製造方法

【課題】 電池容量を大きくすることができると共に、耐久性を高くすることができる負極板、これを備えるリチウムイオン二次電池等を提供すること。
【解決手段】 負極板131は、負極集電板132と、この負極集電板132上に形成された負極活物質層133とを備えるリチウムイオン二次電池用の負極板である。このうち、負極活物質層133は、リチウムイオンと反応して合金を生成することにより、リチウムイオンを吸蔵する負極活物質を含み、粒子状をなし、自身の一部がこの負極活物質層133の表面133hに露出してなる負極活物質粒子135と、この負極活物質粒子135を保持しつつ、負極集電板132に密着する粒子保持層136とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属集電板とこの上に形成された負極活物質層とを備えるリチウムイオン二次電池用の負極板に関する。また、この負極板を備えるリチウムイオン二次電池、このリチウムイオン二次電池を搭載する車両及び電池使用機器に関する。また、この負極板の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、リチウムイオン二次電池用の負極板として、金属集電板とこの上に形成された負極活物質層とを有するものが知られている。負極活物質層を構成する負極活物質には、主に黒鉛などの炭素系材料が利用されてきたが、炭素系材料は、リチウムイオンを吸蔵可能な容量が小さいため、電池容量を大きくするのが難しいという問題があった。そこで、近年は、例えば結晶性シリコンや結晶性酸化スズなど、リチウムイオンと反応して合金を生成することによりリチウムイオンを吸蔵する材料を、負極活物質として利用することが検討されている。
なお、例えば特許文献1,2に、このようなリチウムイオンと反応して合金化する負極活物質を用いたリチウム二次電池が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003−109589号公報
【特許文献2】WO01/029913号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、前述のようなリチウムイオンと反応して合金化する負極活物質を用いて負極活物質層を形成したリチウムイオン二次電池では、充放電によるリチウムイオンの吸蔵・放出に伴い、負極活物質層が大きく膨張・収縮する。このため、充放電を繰り返し行ううちに、負極活物質層にクラックが発生して負極活物質層が金属集電板から剥離する不具合が生じ、耐久性が良好ではなかった。
【0005】
本発明は、かかる現状に鑑みてなされたものであって、電池容量を大きくすることができると共に、耐久性を高くすることができる負極板、及び、この負極板を備えるリチウムイオン二次電池を提供することを目的とする。また、このリチウムイオン二次電池を搭載する車両及び電池使用機器を提供することを目的とする。また、この負極板の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するための本発明の一態様は、金属集電板と、この金属集電板上に形成された負極活物質層とを備える、リチウムイオン二次電池用の負極板であって、前記負極活物質層は、リチウムイオンと反応して合金を生成することにより、リチウムイオンを吸蔵する負極活物質を含み、粒子状をなし、自身の一部がこの負極活物質層の表面に露出してなる負極活物質粒子と、この負極活物質粒子を保持しつつ、前記金属集電板に密着する粒子保持層と、を有する負極板である。
【0007】
この負極板は、リチウムイオンと反応して合金を生成することにより、リチウムイオンを吸蔵する負極活物質を含むので、この負極板を用いてリチウムイオン二次電池を製造すれば、電池容量を大きくすることができる。
しかも、この負極板では、負極活物質層が前述の負極活物質粒子と粒子保持層とを有するので、この負極板を用いたリチウムイオン二次電池では、充放電によるリチウムイオンの吸蔵・放出に伴い、負極活物質粒子が膨張・収縮するものの、個々の負極活物質粒子がそれぞれ独立して膨張・収縮するので、負極活物質粒子にクラックが生じ難い。このため、充放電の繰り返しにより負極活物質層が金属集電板から剥離するのを抑制でき、リチウムイオン二次電池の耐久性を高くすることができる。
【0008】
なお、「負極活物質」としては、例えば、結晶性シリコンや結晶性酸化スズなどが挙げられる。また、「粒子保持層」の材質は、負極活物質粒子との結合性、導電性などを考慮して、適宜変更できる。「粒子保持層」の材質としては、例えば、アモルファスシリコンやアモルファスカーボン、アモルファス酸化スズなどが挙げられる。また、「粒子保持層」の材質には、リチウムイオンを吸蔵・放出する材料を用いることもできる。
また、負極板の形状は、特に限定されないが、矩形板状や円板状、長尺板状などが挙げられる。
【0009】
更に、上記の負極板であって、前記負極活物質は、結晶性シリコンであり、前記粒子保持層は、アモルファスシリコンからなる負極板とすると良い。
【0010】
結晶性シリコンは、黒鉛に比して、例えば12倍程度のリチウムイオンを吸蔵できるので、結晶性シリコンを負極活物質に用いることにより、電池容量を特に大きくすることができる。また、アモルファスシリコン(非晶質シリコン)は、結晶性シリコンと強く結合できるので、アモルファスシリコンを用いて粒子保持層を形成することにより、負極活物質粒子と粒子保持層との結合力を大きくすることができ、負極活物質粒子が金属集電板から脱落するのを防止できる。
【0011】
更に、上記の負極板であって、前記負極活物質粒子は、平均粒径が0.3〜10.0μmである負極板とすると良い。
【0012】
負極活物質粒子が大き過ぎると、具体的には、負極活物質粒子の平均粒径が10.0μmよりも大きいと、充放電に伴う膨張・収縮により負極活物質粒子にクラックが入り、負極活物質粒子が金属集電板から脱落し易くなる。一方、負極活物質粒子が小さ過ぎると、具体的には、負極活物質粒子の平均粒径が0.3μmよりも小さいと、負極活物質層に含まれる負極活物質の量が少なくなり、電池容量も小さくなる。
これに対し、この負極板では、負極活物質粒子の平均粒径を0.3〜10.0μmとしているので、充放電に伴う膨張・収縮により負極活物質粒子にクラックが入るのを抑制しつつ、電池容量を大きくすることができる。
【0013】
更に、上記の負極板であって、前記粒子保持層の厚みが、前記負極活物質粒子の平均粒径の1/2以下である負極板とすると良い。
【0014】
この負極板では、粒子保持層の厚みを、負極活物質粒子の平均粒径の1/2以下に抑えているので、負極活物質粒子のうち、負極活物質層の表面に露出する部分の面積を大きくすることができる。このように負極活物質粒子の露出面積を大きくすることにより、リチウムイオンとの反応性を向上させることができる。
【0015】
また、他の態様は、上記のいずれかに記載の負極板を備えるリチウムイオン二次電池である。
【0016】
負極板は、前述のように、多くのリチウムイオンの吸蔵・放出できると共に、負極活物質粒子にクラックが入りにくく耐久性が高いので、この負極板を用いたリチウムイオン二次電池の電池容量を大きくすることができると共に、リチウムイオン二次電池の耐久性を高くすることができる。
なお、リチウムイオン二次電池の形状は、特に限定されないが、例えば、コイン型、円筒型、角型などが挙げられる。
【0017】
また、他の態様は、上記のリチウムイオン二次電池を搭載し、このリチウムイオン二次電池に蓄えた電気エネルギを、駆動源の駆動エネルギの全部または一部として使用する車両である。
【0018】
リチウムイオン二次電池は、前述のように、電池容量を大きくすることができると共に、耐久性を高くすることができるので、このリチウムイオン二次電池を搭載した車両の性能を高くできる、或いは性能をそのままに軽量化できる。また、車両の耐久性を高くすることができる。
【0019】
また、他の態様は、上記のリチウムイオン二次電池を搭載し、このリチウムイオン二次電池をエネルギ源の少なくとも1つとして使用する電池使用機器である。
【0020】
リチウムイオン二次電池は、前述のように、電池容量を大きくすることができると共に、耐久性を高くすることができるので、このリチウムイオン二次電池を搭載した電池使用機器の性能を高くできる、或いは性能をそのままに軽量化できる。また、車両の耐久性を高くすることができる。
【0021】
また、他の態様は、金属集電板と、この金属集電板上に形成された負極活物質層とを備える、リチウムイオン二次電池用の負極板であって、前記負極活物質層は、リチウムイオンと反応して合金を生成することにより、リチウムイオンを吸蔵する負極活物質を含み、粒子状をなし、自身の一部がこの負極活物質層の表面に露出してなる負極活物質粒子と、この負極活物質粒子を保持しつつ、前記金属集電板に密着する粒子保持層と、を有する負極板の製造方法であって、フィルターレスアークイオンプレーティング法またはパルスレーザーデポジション法により、前記金属集電板上に前記負極活物質粒子及び前記粒子保持層を同時に堆積させて、前記負極活物質層を形成する同時堆積工程を備える負極板の製造方法である。
【0022】
この負極板の製造方法では、同時堆積工程において、フィルターレスアークイオンプレーティング法またはパルスレーザーデポジション法により、負極活物質からなるターゲットに、アーク放電或いはレーザ光照射を行い、金属集電板上に、負極活物質粒子及び粒子保持層を同時に堆積させて、負極活物質層を形成する。このようにすることで、負極活物質粒子と粒子保持層とを有する負極活物質層を一度に形成できるので、製造工程を簡素化できる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】実施形態1に係るリチウムイオン二次電池の縦断面図である。
【図2】実施形態1に係る負極板の断面図である。
【図3】実施形態1に係る負極板の製造方法に関し、フィルターレスアークイオンプレーティング装置を示す説明図である。
【図4】実施形態2に係る車両を示す説明図である。
【図5】実施形態3に係るハンマードリルを示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
(実施形態1)
以下、本発明の実施の形態を、図面を参照しつつ説明する。図1に、本実施形態1に係るリチウムイオン二次電池100を示す。また、図2に、本実施形態1に係る負極板131を示す。リチウム二次電池100は、コインセルであり、電池ケース110、この電池ケース110内に収容された正極板121、負極板131、セパレータ141、ガスケット150等から構成されている。
【0025】
このうち電池ケース110は、正極側(図1中、下側)に位置する概略有底円筒状の正極側ケース111と、負極側(図1中、上側)に位置する概略有底円筒状の負極側ケース113とからなる。正極側ケース111と負極側ケース113とは、概略円環状に形成された絶縁性のガスケット150を介して、互いに電気的に絶縁されると共に、電池ケース110内を封止している。
【0026】
電池ケース110内には、正極板121と負極板131とがセパレータ141を介して積層されている。具体的には、正極板121は、正極側ケース111の底部111tの中央に配置され、正極側ケース111と電気的に接続している。一方、負極板131は、負極側ケース113の底部113tの中央に配置され、負極側ケース133と電気的に接続している。また、電池ケース110内には、非水電解液160が充填されている。
【0027】
セパレータ141は、円板状をなし、公知の樹脂高分子化合物の多孔膜から形成されている。また、正極板121は、円板状をなし、リチウムメタルから形成されている。一方、負極板131は、円板状をなし、銅箔からなる負極集電板(金属集電板)132と、この負極集電板132上に形成された負極活物質層133とからなる(図1及び図2参照)。
【0028】
このうち、負極活物質層133は、リチウムイオンと反応して合金を生成することにより、リチウムイオンを吸蔵する負極活物質からなり、粒子状をなす多数の負極活物質粒子135,135,…と、これらの負極活物質粒子135,135,…を保持しつつ、負極集電板132に密着する粒子保持層136とから構成されている。各々の負極活物質粒子135,135,…は、負極集電板132上に分散して配置され、自身の一部が負極活物質層133の表面133hに露出した状態で、粒子保持層136に保持されている。
【0029】
本実施形態1では、負極活物質として結晶性シリコンを用いている。また、粒子保持層136を、アモルファスシリコンにより形成している。また、負極活物質粒子135,135,…の平均粒径Daを1.0μmとしている。一方、粒子保持層136の厚みTtを0.5μmとしている。従って、粒子保持層136の厚みTtが、負極活物質粒子135の平均粒径Daよりも小さくなっている。
【0030】
このように、本実施形態1に係る負極板131は、リチウムイオンと反応して合金を生成することにより、リチウムイオンを吸蔵する負極活物質を含むので、この負極板131を用いたリチウムイオン二次電池100の電池容量を大きくすることができる。特に、本実施形態1では、結晶性シリコンを負極活物質に用いているので、電池容量を特に大きくすることができる。
【0031】
また、この負極板131では、負極活物質層133が負極活物質粒子135と粒子保持層136とを有するので、充放電によるリチウムイオンの吸蔵・放出に伴い、負極活物質粒子135が膨張・収縮するものの、個々の負極活物質粒子135がそれぞれ独立して膨張・収縮するので、負極活物質粒子135にクラックが生じ難い。その上、本実施形態1では、結晶性シリコンと強く結合できるアモルファスシリコンを用いて粒子保持層136を形成しているので、負極活物質粒子135と粒子保持層136との結合力を大きくすることができ、負極活物質粒子135が負極集電板132から脱落するのを防止できる。従って、リチウムイオン二次電池100では、充放電の繰り返しにより負極活物質層133が負極集電板132から剥離するのを抑制でき、電池の耐久性を高くすることができる。
【0032】
更に、本実施形態1では、負極活物質粒子135の平均粒径Daを10.0μm以下としているので、充放電に伴う膨張・収縮により負極活物質粒子135にクラックが入り難く、負極活物質粒子135が負極集電板132から脱落し難い。一方、負極活物質粒子135の平均粒径Daを0.3μm以上としているので、負極活物質層133に含まれる負極活物質の量を多くすることができ、電池容量を大きくすることができる。
また、本実施形態1では、粒子保持層136の厚みTtを、負極活物質粒子135の平均粒径Daの1/2以下に小さくしているので、負極活物質粒子135のうち、負極活物質層133の表面133hに露出する部分の面積を大きくすることができる。これにより、リチウムイオンとの反応性を向上させることができる。
【0033】
次いで、上記負極板131及び上記リチウムイオン二次電池100の製造方法について説明する。
まず、負極板131を製造する。即ち、銅箔からなる負極集電板132を用意する。そして、この負極集電板132の一方の主面に、負極活物質層133を形成する。本実施形態1では、図3に概略を示すフィルターレスアークイオンプレーティング装置200を用いたフィルターレスアークイオンプレーティング法により、負極集電板132上に負極活物質層133を形成する。
【0034】
フィルターレスアークイオンプレーティング装置200は、真空容器201と、保持治具203と、ターゲット205と、陽極207と、アーク電源209と、バイアス電源211とを有する。真空容器201は、図示外の真空排気ポンプにより内部が真空となるように構成されている。また、保持治具203は、被処理物である負極集電板132を保持可能に構成されている。また、ターゲット205は、陰極を構成する。本実施形態1では、ターゲット205にシリコン結晶を用いている。また、アーク電源209は、陰極(ターゲット205)と陽極207との間に接続されている。また、バイアス電源211は、負極集電板132にバイアス電圧を印加するように構成されている。
【0035】
負極集電板132上に負極活物質粒子135と粒子保持層136とを同時形成するには、同時堆積工程において、まず、アーク電源209を起動させ、陽極207とターゲット205との間でアーク放電AHを生じさせる。このアーク放電AHにより、ターゲット205の一部は、Siイオンとなって放出される。更に、アーク放電AHの衝撃によって、ターゲット205の一部が未溶解の粒子(ドロップレット)DPとなって、負極集電板132に向けて飛び出し、負極集電板132に付着する。
【0036】
Siイオンは、バイアス電源211からバイアス電圧を負極集電板132に印加することにより加速されて、負極集電板132上に堆積する。これにより、負極集電板132上には、アモルファスシリコンからなる粒子保持層136が形成されると共に、結晶性シリコンからなる負極活物質粒子135,135,…が形成される。かくして、前述の負極板131ができあがる(図2参照)。
【0037】
このように、本実施形態1では、同時堆積工程において、フィルターレスアークイオンプレーティング法により、負極活物質(本実施形態1では、シリコン結晶)からなるターゲットに、アーク放電を行い、負極集電板132上に、結晶性シリコンからなる負極活物質粒子135及びアモルファスシリコンからなる粒子保持層136を同時に堆積させて、負極活物質層133を形成している。従って、負極活物質粒子135と粒子保持層136とを有する負極活物質層133を一度に形成できるので、製造工程を簡素化できる。
【0038】
なお、フィルターレスアークイオンプレーティング法に代えて、パルスレーザーデポジション法により、負極活物質層133を形成してもよい。即ち、負極活物質からなるターゲットに、レーザ光照射を行い、負極集電板132上に、負極活物質粒子135及び粒子保持層136を同時に堆積させて、負極活物質層133を形成することもできる。このようにしても、負極活物質粒子135と粒子保持層136とを有する負極活物質層133を一度に形成できるので、製造工程を簡素化できる。
【0039】
また別途、リチウムメタルからなる正極板121を用意する。また、セパレータ141、ガスケット150、正極側ケース111及び負極側ケース113、及び、非水電解液160を用意する。そして、正極側ケース111と負極側ケース113との間に、正極板121とセパレータ141と負極板131とのこの順に積層して配置する。また、正極側ケース111と負極側ケース113との間に、ガスケット150を配置すると共に、非水電解液160を注入する。その後、正極側ケース111の周縁部を加締めて、正極側ケース111と負極側ケース113との間をガスケット150を介して封止する。かくして、リチウムイオン二次電池100が完成する。
【0040】
(実施形態2)
次いで、第2の実施の形態について説明する。本実施形態2に係る車両700は、上記実施形態1のリチウムイオン二次電池100を複数搭載したものであり、図4に示すように、エンジン740、フロントモータ720及びリアモータ730を併用して駆動するハイブリッド自動車である。
【0041】
具体的には、この車両700は、車体790、エンジン740、これに取り付けられたフロントモータ720、リアモータ730、ケーブル750、インバータ760を備える。更に、この車両700は、複数のリチウムイオン二次電池100,100,…を自身の内部に有する組電池710を備え、この組電池710に蓄えられた電気エネルギを、フロントモータ720及びリアモータ730の駆動に利用している。
【0042】
前述したように、リチウムイオン二次電池100は、電池容量を大きくすることができると共に、耐久性を高くすることができるので、このリチウムイオン二次電池100を搭載した車両700の性能を高くすることができる、或いは性能をそのままに軽量化できる。また、車両700の耐久性を高くすることができる。
【0043】
(実施形態3)
次いで、第3の実施の形態について説明する。本実施形態3のハンマードリル800は、図5に示すように、上記実施形態1のリチウムイオン二次電池100を含むバッテリパック810を搭載した電池使用機器である。具体的には、このハンマードリル800は、本体820の底部821に、バッテリパック810が収容されており、このバッテリパック810を、ドリルを駆動するためのエネルギ源として利用している。
【0044】
前述したように、リチウムイオン二次電池100は、電池容量を大きくすることができると共に、耐久性を高くすることができるので、このリチウムイオン二次電池100を搭載したハンマードリル800の性能を高くすることができる、或いは性能をそのままに軽量化できる。また、ハンマードリル800の耐久性を高くすることができる。
【0045】
以上において、本発明を実施形態に即して説明したが、本発明は上述の実施形態1〜3に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で、適宜変更して適用できることは言うまでもない。
例えば、上記実施形態1〜3では、負極集電板132の一方の主面にのみ、負極活物質層133が形成された負極板131を例示したが、負極活物質層133は、負極集電板132の両主面に形成することもできる。
【0046】
また、上記実施形態1〜3では、1つの正極板121と1つの負極板131とがセパレータ141を介して積層されたリチウムイオン二次電池100を例示したが、電極体の形態はこれに限定されない。例えば、複数の正極板と複数の負極板とをセパレータを介して交互に積層した積層型の電極体としてもよいし、正極板と負極板とをセパレータを介して重ね、捲回した捲回型の電極体としてもよい。
【0047】
また、上記実施形態1〜3では、正極板121をリチウムメタルにより形成しているが、正極板121は、このようなものに限定されない。例えば、正極板を、金属箔からなる正極集電体板と、この正極集電板上に形成された正極活物質層とからなるものとしてもよい。正極活物質層は、例えば、正極活物質、導電剤及び結着剤から形成できる。
【符号の説明】
【0048】
100 リチウムイオン二次電池
121 正極板
131 負極板
132 負極集電板(金属集電板)
133 負極活物質層
133h 表面
135 負極活物質粒子
136 粒子保持層
700 車両
710 組電池
800 ハンマードリル(電池使用機器)
810 バッテリパック
Da (負極活物質粒子の)平均粒径
Tt (粒子保持層の)厚み

【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属集電板と、この金属集電板上に形成された負極活物質層とを備える、リチウムイオン二次電池用の負極板であって、
前記負極活物質層は、
リチウムイオンと反応して合金を生成することにより、リチウムイオンを吸蔵する負極活物質を含み、粒子状をなし、自身の一部がこの負極活物質層の表面に露出してなる負極活物質粒子と、
この負極活物質粒子を保持しつつ、前記金属集電板に密着する粒子保持層と、を有する
負極板。
【請求項2】
請求項1に記載の負極板であって、
前記負極活物質は、結晶性シリコンであり、
前記粒子保持層は、アモルファスシリコンからなる
負極板。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の負極板であって、
前記負極活物質粒子は、平均粒径が0.3〜10.0μmである
負極板。
【請求項4】
請求項3に記載の負極板であって、
前記粒子保持層の厚みが、前記負極活物質粒子の平均粒径の1/2以下である
負極板。
【請求項5】
請求項1〜請求項4のいずれか一項に記載の負極板を備えるリチウムイオン二次電池。
【請求項6】
請求項5に記載のリチウムイオン二次電池を搭載し、このリチウムイオン二次電池に蓄えた電気エネルギを、駆動源の駆動エネルギの全部または一部として使用する車両。
【請求項7】
請求項5に記載のリチウムイオン二次電池を搭載し、このリチウムイオン二次電池をエネルギ源の少なくとも1つとして使用する電池使用機器。
【請求項8】
金属集電板と、この金属集電板上に形成された負極活物質層とを備える、リチウムイオン二次電池用の負極板であって、
前記負極活物質層は、
リチウムイオンと反応して合金を生成することにより、リチウムイオンを吸蔵する負極活物質を含み、粒子状をなし、自身の一部がこの負極活物質層の表面に露出してなる負極活物質粒子と、
この負極活物質粒子を保持しつつ、前記金属集電板に密着する粒子保持層と、を有する
負極板の製造方法であって、
フィルターレスアークイオンプレーティング法またはパルスレーザーデポジション法により、前記金属集電板上に前記負極活物質粒子及び前記粒子保持層を同時に堆積させて、前記負極活物質層を形成する同時堆積工程を備える
負極板の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−253640(P2011−253640A)
【公開日】平成23年12月15日(2011.12.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−124934(P2010−124934)
【出願日】平成22年5月31日(2010.5.31)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】