説明

負極板、該負極板を備えた円筒形電池

【課題】円筒形電池の製造効率を向上させる。
【解決手段】本発明は、セパレータ23を介して正極板21と負極板22とを重ねて負極板22が外側になるように渦巻き状に巻いた電極体20が有底円筒形状の外装缶10に収容された円筒形電池の負極板22であって、電極体20を構成する状態で両面がセパレータ23を介して正極板21と対向する第1負極部22aと、電極体20の最内周となる部分であり、電極体20を構成する状態で片面のみがセパレータ23を介して正極板21と対向し、第1負極部22aよりも負極活物質の密度が低い第2負極部22bとを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、正極活物質を保持する正極板、負極活物質を保持する負極板、正極板と負極板とを分離するセパレータを含み、セパレータを介して正極板と負極板とを重ねて負極板が外側になるように渦巻き状に巻いた電極体が有底円筒形状の外装缶に収容された円筒形電池、その円筒形電池の負極板に関する。
【背景技術】
【0002】
円筒形のニカド電池、ニッケル水素電池、リチウムイオン電池等は、正極活物質を保持する正極板、負極活物質を保持する負極板、正極板と負極板とを分離するセパレータを含み、セパレータを介して正極板と負極板とを重ねて負極板が外側になるように渦巻き状に巻いた電極体が有底円筒形状の外装缶に収容されている。このような円筒形電池において負極板は、例えばパンチングメタル等の導電性を有する多孔体からなる負極芯体に負極活物質を塗布し、それを圧延等したものが用いられる。
【0003】
このような円筒形電池において高容量化を目的とした従来技術としては、例えば電極体の最内周部と最外周部となる部分の負極板の厚みがそれ以外の部分の負極板の厚みの半分となるように構成した円筒形電池が公知である(例えば特許文献1を参照)。また例えば電極体を構成する状態で片面のみがセパレータを介して正極板と対向する片面対向部の活物質密度より、電極体を構成する状態で両面がセパレータを介して正極板と対向する両面対向部の活物質密度を低くした負極板を用いた円筒形電池が公知である(例えば特許文献2を参照)。また例えば正極板の厚みを増大させるとともに、負極板の電極体の最外周面を構成する部分の厚みを小さくしたものが公知である(例えば特許文献3を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平06−267583号公報
【特許文献2】特開2004−303484号公報
【特許文献3】特許第4359099号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記のような円筒形電池は、概ね以下のような工程を経て製造される。まずセパレータを介して正極板と負極板とを重ねて負極板が外側になるように渦巻き状に巻いて電極体を構成する。次に電極体を有底円筒形状の外装缶に収容し、その電極体の上に正極集電板を実装する。次に正極集電板の中央に形成されている孔から外装缶に電解液を注液した後、正極リード等を実装し、最後に電池の正極となる蓋体で外装缶を密閉する。
【0006】
上記のように電解液は、正極集電板の中央に形成されている孔から注液されるので、電極体の中心部分の空間(電極体の最内周となる部分に生ずる空間)に注液されることになる。それによって電解液は、電極体の中心部分から外側へ向けて、セパレータ、正極板及び負極板に浸透しながら徐々に外装缶に充填されていくことになる。このとき電極体に対する電解液の浸透が不十分であると、電極体の全体を均一に活性化することができないため、サイクル特性や高率放電特性が低下してしまう虞が生ずる。したがって円筒形電池の製造時においては、電極体に対して電解液を十分に浸透させる必要がある。
【0007】
しかしながら例えば特許文献2に記載された電池のように、電極体の最内周に位置する負極板の巻き始め部分の負極活物質の密度が高くなっていると、電極体に対する電解液の浸透性が大幅に低下することとなり、その結果、必要量の電解液を充填して電極体に十分に電解液を浸透させるのに多大な時間を要することになってしまう。そして電解液の充填に要する時間が長くなると、それによって円筒形電池の製造効率が低下するという課題が生ずる。
【0008】
このような状況に鑑み本発明は成されたものであり、その目的は、円筒形電池の製造効率を向上させることにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
<本発明の第1の態様>
本発明の第1の態様は、正極活物質を保持する正極板、負極活物質を保持する負極板、前記正極板と前記負極板とを分離するセパレータを含み、前記セパレータを介して前記正極板と前記負極板とを重ねて前記負極板が外側になるように渦巻き状に巻いた電極体が有底円筒形状の外装缶に収容された円筒形電池の前記負極板であって、前記電極体を構成する状態で両面が前記セパレータを介して前記正極板と対向する第1負極部と、前記電極体の最内周となる部分であり、前記電極体を構成する状態で片面のみが前記セパレータを介して前記正極板と対向し、前記第1負極部よりも負極活物質の密度が低い第2負極部と、を備える、ことを特徴とする負極板である。
【0010】
負極板の第2負極部は、電極体を構成する状態で片面のみがセパレータを介して正極板と対向する部分であり、電極体の最内周となる部分である。そして負極板の第2負極部は、第1負極部よりも負極活物質の密度が低いので、相対的に電解液の浸透性(浸透速度)が高くなる。したがって円筒形電池の製造工程において、電極体の中心部分の空間(電極体の最内周となる部分に生ずる空間)に電解液が注液されるときに、その電極体に対する電解液の浸透性を向上させることができる。それによって円筒形電池の製造工程において、必要量の電解液を外装缶に充填して電極体に電解液を充分に浸透させるのに要する時間を短縮することができる。
【0011】
そして負極板に保持させる負極活物質の総量が従来と同じであれば、外装缶に充填可能な電解液の量も変わらないはずである。従来と同じ総量で第2負極部の負極活物質の密度を低くすると、見かけ上の第2負極部の負極活物質の体積は大きくなるため外装缶の電解液が充填される容積は減少するが、その分だけ第2負極部の負極活物質の内部に浸透する電解液の量は増加することになるからである。つまり第2負極部の負極活物質の密度を低くしても従来と同じ容量を維持することができるので、本発明の負極板によって円筒形電池の容量が低下することはない。
【0012】
これにより本発明の第1の態様によれば、円筒形電池の製造効率を向上させることができるという作用効果が得られる。
【0013】
またセパレータを介して正極板と負極板とを重ねて負極板が外側になるように渦巻き状に巻いて構成する電極体は、電極体の最内周となる負極板の巻き始め部分の巻き径が最も小さくなるため、この部分に最も大きな負荷が掛かることになる。そのため円筒形電池の製造工程において電極体を構成する際には、その巻き始め部分で負極板に負極活物質の剥離や破断等が最も生じやすくなる。本発明の第1の態様によれば、電極体を構成する際に巻き始め部分となる負極板の第2負極部は、負極活物質の密度が相対的に低いので柔軟性が向上することになる。それによって円筒形電池の製造工程において電極体を構成する際に、その巻き始め部分で負極板に負極活物質の剥離や破断等が生ずる虞を低減させることができる。
【0014】
<本発明の第2の態様>
本発明の第2の態様は、前述した本発明の第1の態様において、前記第2負極部の負極活物質の密度は、前記第1負極部の負極活物質の密度の0%を越えて75%以下である、ことを特徴とする負極板である。
このような特徴によれば、負極板の第2負極部(電極体の最内周となる部分)における電解液の浸透性をより向上させることができるので、円筒形電池の製造工程において、必要量の電解液を外装缶に充填して電極体に電解液を充分に浸透させるのに要する時間をさらに短縮することができる。
【0015】
<本発明の第3の態様>
本発明の第3の態様は、前述した本発明の第1の態様又は第2の態様において、前記第2負極部は、前記第1負極部より厚みが小さい、ことを特徴とする負極板である。
このような特徴によれば、電極体の体積効率を向上させることができるので、より高容量の円筒形電池を実現することができる。
【0016】
<本発明の第4の態様>
本発明の第4の態様は、正極活物質を保持する正極板、負極活物質を保持する負極板、前記正極板と前記負極板とを分離するセパレータを含み、前記セパレータを介して前記正極板と前記負極板とを重ねて前記負極板が外側になるように渦巻き状に巻いた電極体と、前記電極体を収容する有底円筒形状の外装缶と、を備え、前記負極板は、前記電極体を構成する状態で両面が前記セパレータを介して前記正極板と対向する第1負極部と、前記電極体の最内周となる部分であり、前記電極体を構成する状態で片面のみが前記セパレータを介して前記正極板と対向し、前記第1負極部よりも負極活物質の密度が低い第2負極部と、を含む、ことを特徴とする円筒形電池である。
本発明の第4の態様によれば、セパレータを介して正極板と負極板とを重ねて負極板が外側になるように渦巻き状に巻いた電極体を有底円筒形状の外装缶に収容した円筒形電池において、前述した本発明の第1の態様と同様の作用効果を得ることができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、円筒形電池の製造効率を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】ニッケル水素二次電池の縦断面を図示した斜視図。
【図2】ニッケル水素二次電池における正極板と正極集電板及び負極板と負極集電板との接続部を示す断面図。
【図3】図1のI−I線におけるニッケル水素二次電池の横断面図。
【図4】負極板の正面視の断面図。
【図5】負極板の製造工程を模式的に図示した平面図。
【図6】図5の負極板材のII−II線及びIII−III線における断面図。
【図7】本発明に係る負極板の変形例を図示した正面視の断面図。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。
【0020】
<ニッケル水素二次電池の構成>
ニッケル水素二次電池1の構成について、図1〜図3を参照しながら説明する。
図1は、ニッケル水素二次電池1の縦断面を図示した斜視図である。図2は、ニッケル水素二次電池1の横断面を図示した平面図である。図3は、図1のI−I線におけるニッケル水素二次電池1の横断面図である。
【0021】
「円筒形電池」の一例である円筒型のニッケル水素二次電池1は、外装缶10、電極体20及び蓋構造体30を備える。外装缶10は、一端が開口した有底円筒形状の部材であり導電性を有している。電極体20は、セパレータ23を介して正極板21と負極板22とを重ねて負極板22が外側になるように渦巻き状に巻くことによって略円筒状に構成されている。蓋構造体30は、外装缶10の開口部を閉塞する構造体である。ニッケル水素二次電池1は、外装缶10に電極体20が収容され、さらにアルカリ電解液(図示せず)が充填され、外装缶10の開口が蓋構造体30に閉塞されて構成されている。
【0022】
正極板21は、非焼結式ニッケル極であり、正極芯体(図示せず)と正極芯体に保持された正極合剤とからなる。正極芯体は耐アルカリ性を有する金属材料からなる。耐アルカリ性を有する金属材料としては、例えばニッケルを用いることができる。正極合剤は、正極活物質粒子、正極板の特性を改善するための種々の添加剤粒子、これら正極活物質粒子及び添加剤粒子の混合粒子を正極芯体に結着するための結着剤からなる。
【0023】
正極活物質粒子は水酸化ニッケル粒子である。水酸化ニッケル粒子は、ニッケルの平均価数が2よりも大の高次水酸化ニッケル粒子であってもよい。また水酸化ニッケル粒子は、コバルト、亜鉛、カドミウム等を固溶していてもよく、あるいはコバルト化合物で表面が被覆されていてもよい。添加剤は、酸化イットリウムの他に、酸化コバルト、金属コバルト、水酸化コバルト等のコバルト化合物、金属亜鉛、酸化亜鉛、水酸化亜鉛等の亜鉛化合物、酸化エルビウム等の希土類化合物等を用いることができる。結着剤は、親水性又は疎水性のポリマー等を用いることができる。より具体的には結着剤は、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)、カルボキシメチルセルロース(CMC)、ポリアクリル酸ナトリウム(SPA)のうちから選択される1種以上を使用することができる。結着剤は、例えば正極活物質粒子100質量部に対して0.1質量部以上0.5質量部以下となるようにすればよい。
【0024】
負極板22は、帯状をなす導電性の負極芯体(図示せず)に負極合剤が保持されて形成されている。負極芯体は、複数の貫通孔を有するシート状の金属材からなり、例えばパンチングメタル、金属粉末焼結体基板、エキスパンデッドメタル、ニッケルネット等を用いることができる。特にパンチングメタルや金属粉末を成型してから焼結した金属粉末焼結体基板は負極芯体に好適である。
【0025】
「負極活物質」としての負極合剤は、水素を吸蔵及び放出可能な水素吸蔵合金粒子と結着剤とからなる。水素吸蔵合金粒子は、電池の充電時にアルカリ電解液中で電気化学的に発生させた水素を吸蔵でき、かつ放電時にその吸蔵水素を容易に放出できるものであればよい。このような水素吸蔵合金としては、特に限定されないが、例えばLaNiやMmNi(Mmはミッシュメタル)等のAB型系のものを用いることができる。また負極合剤は、水素吸蔵合金に代えて、例えばカドミウム化合物を用いることもできる。結着剤は、例えば親水性又は疎水性のポリマー等を用いることができる。
【0026】
セパレータ23は、例えばポリアミド繊維製不織布、ポリエチレンやポリプロピレンなどのポリオレフィン繊維製不織布に親水性官能基を付与したものを材料として用いることができる。
【0027】
蓋構造体30は、蓋板31、絶縁ガスケット32、弁体33、正極端子34、圧縮コイルばね35、正極リード36及び正極集電板37を含む。蓋板31は、略円形をなし、中央に弁孔311が設けられている。蓋板31は、絶縁ガスケット32が介装された状態で、外装缶10の開口縁をかしめ加工することによって外装缶10に固定されている。弁体33は、ゴムと金属板とを張り合わせた部材であり、弁孔311を閉塞するように蓋板31の外面上に設けられている。正極端子34は、フランジ付きの円筒形状をなし、弁体33を覆うように固定されている。圧縮コイルばね35は、正極端子34内に収容されており、弁体33を付勢している。正極リード36は、折り曲げられた状態で設けられており、蓋板31の内面に一端が溶接され、正極集電板37に他端が溶接されている。正極集電板37は、円板形状の部材であり、外装缶10にアルカリ電解液を注液するための孔371が中央に形成されている。
【0028】
正極板21の正極芯体は、正極集電板37側の端部に連結部211が形成されている。連結部211の径方向内面には、例えば溶接又は導電性接着剤によって、ニッケルリボン等からなる帯状の金属薄板212が固定されている。金属薄板212は、連結部211から突出して正極集電板37に当接している。つまり正極集電板37と正極板21とは、金属薄板212を介して電気的に接続されている。他方、負極板22は、ニッケル水素二次電池1の負極端子をなす外装缶10の内周面に接した状態で、その外装缶10と電気的に接続されている。
【0029】
<負極板の構造>
本発明に係る負極板22の構造について、図4を参照しながら説明する。
【0030】
図4は、本発明に係る負極板22の正面視の断面図である。
負極板22は、負極芯体221の両面に負極活物質222が保持されて形成されている。負極板22は、第1負極部22a及び第2負極部22bを含む。第1負極部22aは、電極体20を構成する状態で両面がセパレータ23を介して正極板21と対向する部分である。第2負極部22bは、電極体20の最内周となる部分であり、電極体20を構成する状態で片面のみがセパレータ23を介して正極板21と対向する部分である。
【0031】
負極板22の第2負極部22bは、負極活物質222の密度(以下、「負極活物質密度」という。)が第1負極部22aの負極活物質密度より低い。
尚、第2負極部22bの負極活物質密度は、第2負極部22bの全体にわたって均一でなくてもよい。例えば第2負極部22bの負極活物質密度が不均一であっても、第2負極部22bの負極活物質密度の平均密度が第1負極部22aの負極活物質密度より低ければよい。
【0032】
このような構成の負極板22は、第1負極部22aよりも第2負極部22bの方がアルカリ電解液の浸透性(浸透速度)が高くなる。そして負極板22の第2負極部22bは、電極体20の最内周となる部分である。したがってニッケル水素二次電池1の製造工程において、電極体20の中心部分の空間(電極体20の最内周となる部分に生ずる空間)にアルカリ電解液が注液されるときに、その電極体20に対するアルカリ電解液の浸透性を向上させることができる。それによってニッケル水素二次電池1の製造工程において、必要量のアルカリ電解液を外装缶10に充填して電極体20にアルカリ電解液を充分に浸透させるのに要する時間を短縮することができる。
【0033】
そして負極板22に保持させる負極活物質222の総量が従来と同じであれば、外装缶10に充填可能なアルカリ電解液の量も変わらないはずである。従来と同じ総量で第2負極部22bの負極活物質密度を低くすると、見かけ上の第2負極部22bの負極活物質222の体積は大きくなるため外装缶10のアルカリ電解液が充填される容積は減少するが、その分だけ第2負極部22bの負極活物質222の内部に浸透するアルカリ電解液の量は増加することになるからである。つまり第2負極部22bの負極活物質密度を低くしても従来と同じ容量を維持することができるので、本発明の負極板22によってニッケル水素二次電池1の容量が低下することはない。
【0034】
このようにして本発明によれば、円筒型のニッケル水素二次電池等の円筒形電池の製造効率を向上させることができる。
【0035】
またセパレータ23を介して正極板21と負極板22とを重ねて負極板22が外側になるように渦巻き状に巻いて構成する電極体20は、電極体20の最内周となる負極板22の巻き始め部分の巻き径が最も小さくなるため、この部分に最も大きな負荷が掛かることになる。そのためニッケル水素二次電池1の製造工程において電極体20を構成する際には、その巻き始め部分で負極板22に負極活物質222の剥離や破断等が最も生じやすくなる。それに対して本発明に係る負極板22は、第2負極部22bの負極活物質密度が相対的に低いので、その電極体20を構成する際に巻き始め部分となる第2負極部22bの柔軟性が向上することになる。それによってニッケル水素二次電池1の製造工程において電極体20を構成する際に、その巻き始め部分で負極板22に負極活物質222の剥離や破断等が生ずる虞を低減させることができる。
【0036】
本発明に係る負極板22は、第2負極部22bの負極活物質密度が第1負極部22aの負極活物質密度の0%を越えて75%以下であるのが好ましい。それによって負極板22の第2負極部22bにおけるアルカリ電解液の浸透性をより向上させることができる。例えば当該実施例の負極板22は、第1負極部22aの負極活物質密度が5.20g/cmであり、第2負極部22bの負極活物質密度が3.90g/cmである。
【0037】
<負極板の製造方法>
本発明に係る負極板22の製造方法の一例について、図5及び図6を参照しながら説明する。
図5は、負極板22の製造工程を模式的に図示した平面図である。図6は、負極板22の製造工程における負極板材40の断面図であり、図6(a)は、図5の負極板材40のII−II線における断面を図示したものであり、図6(b)は、図5の負極板材40のIII−III線における断面を図示したものである。
【0038】
まずパンチングメタル等の負極芯材41の両面に、水素吸蔵合金を含むスラリー状の負極活物質42を塗布して乾燥させることにより負極板材40を製作する。ここで負極板材40の幅方向の長さW1は、負極板22の巻き方向の長さLと略同じ長さとする。負極芯材41に対する負極活物質42の塗布は、負極板22の第1負極部22aに対応する領域A(以下、「第1負極領域A」という。)の厚みd1が負極板22の第2負極部22bに対応する領域B(以下、「第2負極領域B」という。)の厚みd2より大きくなるようにする(図6(a))。
【0039】
つづいて負極板材40を搬送方向Cへ搬送しながら、負極板材40の幅方向の長さW1より長尺な圧延ローラ50で圧延する。この負極板材40の圧延は、第1負極領域Aと第2負極領域Bとを圧延ローラ50で同時に圧延しながら、圧延後の負極活物質42の厚みが所定の厚みd3となるように行う(図6(b))。それによって相対的に負極活物質42の厚みが大きい第1負極領域Aは、負極活物質密度が相対的に高くなり、相対的に負極活物質42の厚みが小さい第2負極領域Bは、負極活物質密度が相対的に低くなる。
【0040】
そして圧延後の負極板材40を切断装置により切断位置Dで切断する。より具体的には、切断後の搬送方向Cの長さが負極板22の幅方向の長さWとなるように負極板材40を切断する。このような負極板材40の切断を順次行うことによって、巻き方向の長さL、幅方向の長さW、厚みd3で、第2負極部22bの負極活物質密度が第1負極部22aの負極活物質密度より低い負極板22を複数得ることができる。
【0041】
負極板22の第1負極部22aの負極活物質密度は、負極板材40の第1負極領域Aの圧延前における厚みd1と圧延後の厚みd3との比率を変更することによって調整することができる。同様に、負極板22の第2負極部22bの負極活物質密度は、負極板材40の第2負極領域Bの圧延前における厚みd2と圧延後の厚みd3との比率を変更することによって調整することができる。
【0042】
<他の実施例、変形例>
本発明は、上記説明した実施例に特に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された発明の範囲内で種々の変形が可能であること言うまでもない。
【0043】
例えば上記実施例では、第1負極部22a及び第2負極部22bが同じ厚みd3で形成された負極板22を例に説明したが、このような態様に本発明は特に限定されない。つまり本発明に係る負極板22は、第2負極部22bの負極活物質密度が第1負極部22aの負極活物質密度より低ければ、第1負極部22aの厚みと第2負極部22bの厚みとが相違していてもよい。また第1負極部22aの厚み及び第2負極部22bの厚みは、必ずしも均一である必要はなく、一部に厚みが異なる部分があってもよい。
【0044】
図7は、本発明に係る負極板22の変形例を図示した正面視の断面図である。
当該変形例の負極板22は、第2負極部22bの負極活物質密度が第1負極部22aの負極活物質密度より低いことに加えて、さらに第2負極部22bの厚みd4が第1負極部22aの厚みd5より小さい。このように第2負極部22bの厚みd4を小さくすることによって、外装缶10における電極体20の体積効率を向上させることができるので、より高容量のニッケル水素二次電池1を実現することができる。
【符号の説明】
【0045】
1 ニッケル水素二次電池
10 外装缶
20 電極体
21 正極板
22 負極板
23 セパレータ
30 蓋構造体
221 負極芯体
222 負極活物質
22a 第1負極部
22b 第2負極部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
正極活物質を保持する正極板、負極活物質を保持する負極板、前記正極板と前記負極板とを分離するセパレータを含み、前記セパレータを介して前記正極板と前記負極板とを重ねて前記負極板が外側になるように渦巻き状に巻いた電極体が有底円筒形状の外装缶に収容された円筒形電池の前記負極板であって、
前記電極体を構成する状態で両面が前記セパレータを介して前記正極板と対向する第1負極部と、
前記電極体の最内周となる部分であり、前記電極体を構成する状態で片面のみが前記セパレータを介して前記正極板と対向し、前記第1負極部よりも負極活物質の密度が低い第2負極部と、を備える、ことを特徴とする負極板。
【請求項2】
請求項1に記載の負極板において、前記第2負極部の負極活物質の密度は、前記第1負極部の負極活物質の密度の0%を越えて75%以下である、ことを特徴とする負極板。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の負極板において、前記第2負極部は、前記第1負極部より厚みが小さい、ことを特徴とする負極板。
【請求項4】
正極活物質を保持する正極板、負極活物質を保持する負極板、前記正極板と前記負極板とを分離するセパレータを含み、前記セパレータを介して前記正極板と前記負極板とを重ねて前記負極板が外側になるように渦巻き状に巻いた電極体と、
前記電極体を収容する有底円筒形状の外装缶と、を備え、
前記負極板は、前記電極体を構成する状態で両面が前記セパレータを介して前記正極板と対向する第1負極部と、前記電極体の最内周となる部分であり、前記電極体を構成する状態で片面のみが前記セパレータを介して前記正極板と対向し、前記第1負極部よりも負極活物質の密度が低い第2負極部と、を含む、ことを特徴とする円筒形電池。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−16260(P2013−16260A)
【公開日】平成25年1月24日(2013.1.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−146245(P2011−146245)
【出願日】平成23年6月30日(2011.6.30)
【出願人】(510206213)FDKトワイセル株式会社 (36)
【Fターム(参考)】