説明

負荷を通る電流を調節するための回路構成

【課題】負荷を通る電流を調節するための回路構成を提供する。
【解決手段】負荷Rを通る電流Iを調節するための回路構成1は、負荷電流Iによる電圧降下を、負荷電流Iを調節するための制御変数Xとして生じる抵抗と、負荷電流Iを調節するためのコマンド変数Wの働きをする基準電圧Vrefのためのタップ点Pと、コマンド変数Wと制御変数Xの間の制御偏差W−Xを増幅するための差動増幅器とを備え、負荷電流Iを負荷電圧Vの関数として調節するために、トランジスタQ4と、コレクタ抵抗R2およびエミッタ抵抗R6とが設けられ、トランジスタQ4のベース−エミッタ部分とエミッタ抵抗R6との直列接続は、負荷Rと並列に配置され、基準電圧のためのタップ点Pは、コレクタ抵抗R2とトランジスタQ4の間に配置される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、負荷を通る電流を調節するための回路構成であって、抵抗であって、その抵抗を通って負荷電流が流れ、その抵抗の両端に、負荷電流を調節するための制御変数の働きをする電圧の降下が生じる抵抗と、負荷電流を調節するためのコマンド変数の働きをする基準電圧のためのタップ点と、コマンド変数と制御変数の間の制御偏差を増幅するための差動増幅器とを備えた回路構成に関する。
【背景技術】
【0002】
この回路構成によって、たとえば、自動車両ファンにおける負荷として働くファンモータ用の制御回路を実現することができ、制御回路はファンモータのための短絡および過電流保護の機能を受け持つ。これによって、過電流保護は電流制限機能を用いて実施され、すなわちファンレギュレータ内には制御回路が配置され、制御回路は、モータ電流が規定された閾値より低いままとなるように、作動素子として働くパワートランジスタの制御電圧を制限的に制御する。
【0003】
このタイプの回路構成10は、自動車両ファンのファンモータ用の制御回路として、図2に示される。回路構成10は、車両電池および/または発電機(図示せず)から供給される14Vの電源電圧Vによって動作する。図2で負荷抵抗Rとして示されるファンモータを通る負荷電流Iは、作動素子として働くパワートランジスタM1(MOS−FET)の制御電圧を調整することによって、最大値を超えないように制御される。負荷電流Iが流れ、値がmΩの範囲である、負荷電流回路内に配置されたシャント抵抗Rの両端の電圧降下Vは、これによって制御変数Xとして働く。負荷電流Iを調節するためのコマンド変数Wとして、タップ点Pに基準電圧Vrefが供給され、この電圧は、短絡の場合に負荷電流Iに対する基準として働き、mVの範囲になり得る。回路構成10はさらに、パワートランジスタM1の制御電圧を制限的に調節するために、コマンド変数Wと制御変数Xの間の制御偏差W−Xを増幅するための差動増幅器OVを有する。
【0004】
図2の回路構成は、基準電圧Vrefによって決定される一定値に、負荷電流Iを制限する。しかし、自動車両ファンの通常動作では、有効な短絡保護に加えて、大きなモータ電流が流れることも保証されるべきであり、これは、最大負荷電流Iを、負荷の両端、すなわちファンモータの両端に生じる電圧Vの関数とすることで実現することができ、すなわち以下の関係式、I=f(V)が成り立つべきであり、ここで最大のモータ電流の引き込みは、電圧Vの増加と共に増加する。
【0005】
さらに、図2に示される回路構成10はまた、負荷抵抗Rによる電力消費が一定でなく、たとえば周囲温度の関数である場合は、最適な結果をもたらさない。これはたとえば、特に高温空気は空気分子のより高速な動きにより、低温空気よりもファンモータに対してより大きな流動抵抗を生ずるので、自動車両ファンのファンモータの場合にそうであり、なぜなら高温空気では、低温空気より所与の時間および空間体積内において分子間の衝突事象が統計的に、より頻繁に存在するためである。電子の移動度が温度と共に低下し電気抵抗が増加する金属導電体内の電子ガスに類似して、HVAC(暖房、換気および空調)システム内の空気流に対する流動抵抗も、気体温度と共に上昇する。空気がゆっくり流れる場合は、高速の空気流速度の場合よりも、ファンモータが引き込む電流は小さくなる。したがって、多くの空調システムは、所与のモータ電圧では高温条件下より低温条件下で、より大きな電流を引き込む特性を有する。
【0006】
したがって、モータ電流の引き込みは、温度と共に減少する。リニアなファンレギュレータを用いたファンモータの制御には、この特性は望ましいものとなり、なぜならモータ電流消費が減少すると共に、ファンレギュレータ内のパワートランジスタ内の電力消費も減少するからである。ファンレギュレータの最大許容電力消費は周囲温度の上昇と共に減少するので、したがって最大負荷電流Iが温度上昇と共に減少すれば、すなわち温度Tの関数(I=f(T))となれば有益である。
【0007】
最大負荷電流を温度の関数として調節することを実現するためには、当技術分野では温度センサを用いることが知られている。しかし、関連する回路構成を有するこのような温度センサは、特にその機能が−30℃から150℃の大きな温度範囲にわたって保証されなければならない自動車両の用途には、高いコストが伴う。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、負荷電流を負荷の両端の電圧降下の関数として、好ましくは温度の関数として調節することができる、負荷、特にファンモータによる電流を調節するための、少数の構成要素からなる、コスト効率の良い回路構成を実現することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この目的は、序文で述べたタイプの回路構成によって実現され、この回路構成では負荷電流を負荷電圧の関数として調節するために、トランジスタと、コレクタ抵抗およびエミッタ抵抗とが設けられ、トランジスタのベース−エミッタ部分とエミッタ抵抗の直列接続は、負荷と並列に配置され、基準電圧のタップ点は、コレクタ抵抗とトランジスタの間に配置される。このようにして、タップ点での基準電圧を調整するために最も重要である、トランジスタのコレクタ電流が、負荷電圧に比例する成分を含むので、負荷電流が負荷電圧に比例して増加することを実現することができる。この応用例との関連において、コレクタ抵抗およびエミッタ抵抗は、それぞれ関連するコレクタおよびエミッタ回路内に配置された個別部品であることを理解されたい。
【0010】
好ましい実施の形態では、差動増幅器は、第1および第2のベースが結合されたトランジスタを有する。入力段が通例、エミッタが結合されたトランジスタから形成され、それによって高い入力インピーダンスを得る従来型の差動増幅器とは異なり、本発明の回路では、回路構成内に用いられるシャント抵抗が低抵抗として実施されるので、差動増幅器の高入力抵抗は必要ない。したがって、本発明による回路構成では、ベースが結合されたトランジスタを差動増幅器内に用いることができる。
【0011】
この実施の形態の他の有利な発展形態では、回路構成は、ベースが結合されたトランジスタを通るコレクタ静止電流の一定比率を調整するための素子を有し、これは好ましくは2つの抵抗によって形成される。本発明者は、回路構成の特性、すなわちこの回路構成の個々の構成要素の定義された温度特性によって、温度の関数として負荷電流を調節することが実施できることを認識した。このようにして温度センサの使用を避けることができる。
【0012】
ここでは温度センサ信号として、特にトランジスタが、異なるように重み付けされたコレクタ静止電流で動作する(ベースが結合された)差動増幅器のオフセット電圧が用いられる。このようにして、負荷電流が、2つのベースが結合されたトランジスタのベース−エミッタ電圧の差の関数である回路構成内では、一定の温度係数、すなわち負荷電流と温度の間の直線的な関係を実現することができる。これによって温度係数は、大きさおよび符号の両方における、互いの電流の比の関数として定義することができる。したがって、回路は、低温度ではより大きな電流が可能となり、温度の上昇と共に電流が減少することが可能になるように寸法設定することができ、したがって回路自体が負荷の温度特性に対して調整し、回路の温度特性は専ら構成要素の寸法設定によって実現される。したがって温度制御機能のためには、他の構成要素は不要になる。
【0013】
負荷電流は、2つのベースが結合されたトランジスタが熱的に結合された、周囲の媒体、特に空調システムの空気流または冷却水回路の冷却流体の温度の関数として調節することができる。別法または追加として、2つのベースが結合されたトランジスタが、作動素子として働くパワートランジスタまたは負荷と熱的に結合される場合は、それぞれパワートランジスタの温度または負荷の温度の関数として、負荷電流を調節することができる。このようにして、これらの構成部品の熱的な過熱を防止することができる。
【0014】
自動車両ファンの調節においては、このような回路では、たとえば冬季に電子システムが低温であるとき、モータ電流が大きくなることがあり得る。周囲温度の上昇と共に、電流制限レギュレータの介入閾値が低くなり、それによりファンレギュレータ電子回路だけでなく、コネクタ接点、ライン、および最後にファンモータも熱応力から保護される。しかしながら、電子回路は温度が決定的に重要でない場合は、高い性能を実現する。空調システムの一部の部品の寸法設定は、このような回路構成を用いることによって、より改善され、コスト効率がより良いものとすることができる。
【0015】
好ましくは、素子は2つの抵抗を用いて形成され、回路構成はコレクタ電流の比がほぼ抵抗の比によって与えられるように寸法設定される。ここで抵抗は、それぞれのトランジスタのコレクタ回路内に配置される。別法として、たとえばコレクタ電流の一定比率を調整するために、2つの定電流源を設けることもできる。温度調節のためには、2つのベースが結合されたトランジスタのコレクタ−エミッタ電圧が同じであればさらに有利である。
【0016】
特に好ましい実施の形態では、差動増幅器の、ベースが結合されたトランジスタはデュアルトランジスタによって形成される。この場合、2つのトランジスタは熱的に結合され、対の特性を有し、これは回路の温度依存性の、規定された調整のために有益である。
【0017】
有利な実施の形態は、好ましくはパワートランジスタである、負荷電流を操作するための作動素子としての少なくとも1つの追加トランジスタを有する。パワートランジスタは、たとえば自動車両のファンモータなどで生ずる、大きな電流の制御のために必要になる。パワートランジスタは好ましくはMOSFETとして設計され、負荷電流の調整は電圧制御的に、すなわち実質的に制御電流なしに行うことが可能である。
【0018】
好ましい実施の形態では、制御回路は、追加トランジスタの制御電圧を制限的に調節するための、第3のトランジスタを有する。パワートランジスタの制御電圧は、第3のトランジスタによって最大値に制限される。たとえば抵抗を用いた、トランジスタの適切な相互接続により、第3のトランジスタのコレクタ電流が増加した場合に、パワートランジスタのゲート電圧を減少させることができる。
【0019】
さらに有利な他の発展形態では、第3のトランジスタが追加トランジスタの制御電圧を制御偏差の関数として調整するように、差動増幅器および第3のトランジスタが回路内に配置される。これにより、特に簡単な形で制御回路を実施することが可能になる。
【0020】
特に、回路構成を個別部品から構成することが好ましい。このような回路はロバストであり、したがって150℃までの高温度で動作させることもできる。さらに、回路構成を比較的少ない構成部品で実施することが可能であり、特に温度センサは不要である。
【0021】
本発明はまた、前記請求項のいずれか一項による回路構成を用いて自動車両ファン内に実施され、負荷はファンモータによって形成される。温度および負荷電圧の関数として制御される電流制御システムを用いて、モータの電流−電圧特性全体にわたってモータ電流を監視するファンレギュレータ内に、過大電流および短絡保護を実施することが可能である。ここで回路は、現実的に存在するモータ電圧まで適合するモータ電流を可能にする。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、負荷電流を負荷の両端の電圧降下の関数として、好ましくは温度の関数として調節することができる、負荷、特にファンモータによる電流を調節するための、少数の構成要素からなる、コスト効率の良い回路構成を実現することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
本発明による回路構成の実施の形態の例は、概略図面に表され、以下の説明で明らかになるだろう。
【0024】
図1は、負荷Rの負荷電流Iを、負荷電圧Vと周囲温度Tの関数、すなわち、I=f(V,T)として調節するための回路構成1を示す。回路構成1は、図2に関連して上述した構成要素を有し、ここではそれらは再び説明しない。図2に示される差動増幅器OVは、図1では個別部品の形で配置され、2つの、ベースが結合された対のパラメータを有するバイポーラトランジスタQ1およびQ2を有し、これらは熱的に結合される。2つのうちの第1のトランジスタQ1では、ベース−コレクタ部分はシャント接続により短絡される。第1のトランジスタQ1のコレクタ回路には、第1の抵抗R1(KΩの範囲)が配置され、第2のトランジスタQ2のコレクタ回路には、第3の抵抗R3(同様にKΩの範囲)が配置され、これらを用いて2つのトランジスタQ1、Q2のコレクタ電流(図示せず)の比を調整することができる。
【0025】
パワートランジスタM1に対する制御電圧を制限的に調節するために、回路構成内に第3のトランジスタQ3が設けられる。
【0026】
第3のトランジスタQ3は、パワートランジスタM1と電源電圧Vbの間の回路内に配置された第5の抵抗R5(同様にKΩの範囲)を通って流れる電流を制御し、それによりパワートランジスタM1の制御電圧は、第5の抵抗R5の両端の電圧降下によって調整することができる。制御偏差W−X、すなわち、タップ点Pの電圧(コマンド変数W)とシャント抵抗R(mΩの範囲)の電圧(制御変数X)の間の差は、2つのトランジスタQ1、Q2のベース−エミッタ部分と第4の抵抗R4(Ωの範囲)の直列接続の両端に生じる。ここで第3のトランジスタQ3のベースは、第2のトランジスタQ2のコレクタに接続され、それにより第3のトランジスタQ3のベース−エミッタ部分の両端には、第2のトランジスタQ2のコレクタ−エミッタ部分と第4の抵抗R4の直列接続の両端と同じ電圧降下が生じる。U(R4)<<UBE(Q3)となるように、第4の抵抗R4が十分に低くなるように寸法設定されている場合は、2つのトランジスタQ1とQ2がほぼ同じコレクタ−エミッタ電圧で動作することが確実になる。パワートランジスタM1の制御電圧は、第3のトランジスタQ3のコレクタ−エミッタ部分の両端で、制御偏差の関数として自己調整する。制御偏差W−Xが増加すると、第2のトランジスタQ2のベース−エミッタ電圧は増加し、それによりそのコレクタ電流が増加する。その結果、第3のトランジスタQ3のベース電位は低下し、そのコレクタ電流も減少する。その結果、第5の抵抗R5の両端の電圧降下が減少し、それによりパワートランジスタM1のゲート電位は上昇し、負荷電流Iも増加する。この結果としてシャント抵抗R上の制御変数Xは増加し、それにより制御偏差W−Xは減少し、したがって回路構成10は閉じた制御回路を形成する。
【0027】
負荷電流Iを、負荷電圧Vの関数として調節するために、回路構成1内に第4のトランジスタQ4と、コレクタ抵抗R2及びエミッタ抵抗R6とが設けられ、第4のトランジスタQ4のベース−エミッタ部分とエミッタ抵抗R6の直列接続は、負荷と並列に配置され、基準電圧用のタップ点Pは、コレクタ抵抗R2と第4のトランジスタQ4の間に配置される。これによってコレクタ抵抗R2の両端の電圧降下は、第4のトランジスタQ4のコレクタ電流Iによって調整され、それによりタップ点Pに発生される基準電圧は、一定の成分Vrefと、負荷電圧Vに依存する、コレクタ抵抗R2の両端の変化し得る電圧降下から構成されるようになる。ここでは、コレクタ電流Iはエミッタ抵抗R6の両端の電圧降下の関数であり、これは一定の加算項を別として負荷電圧Vに比例するということを利用している。
【0028】
以下では、負荷電流Iを調節するための動作時の回路構成1の機能について、図1に示される構成要素上の電流および電圧を関係付ける式を用いて説明する。以下の式中に出てくる記号は基本的に自明である。すなわち、たとえば、I(Q4)は第4のトランジスタQ4を通るコレクタ電流を表し、U(R4)は第4の抵抗の両端の電圧降下を表すなどである。
【0029】
ここで、構成要素としての抵抗を表すために用いられる記号R1〜R5は、それらの関連付けられた抵抗の値に結び付けられる。
【0030】
回路構成1が負荷電流Iを調節する場合は、少なくともトランジスタQ1〜Q3は、それらの線形動作点で動作する。ベース電流を無視すると、2つのトランジスタQ1およびQ2のベースの電位について、次の式を導き出すことができる。
【0031】
【数1】

【0032】
シャント接続があるので、トランジスタQ1およびQ2のベースは、第1のトランジスタのコレクタと同じ電位にあり、すなわち、UCE(Q1)=UBE(Q1)およびさらに、UCE(Q2)=UBE(Q3)−U(R4)が成り立つ。
【0033】
R4の抵抗値が、U(R4)<<UBE(Q3)が成り立つように選ばれている場合は、回路が適切に寸法設定されたトランジスタQ1からQ3のベース−エミッタ電圧の大きさはほぼ同じであるので、2つのトランジスタQ1およびQ2のコレクタはほぼ同じ電位となる。Vb>>|V(Q1)−V(Q2)|であり、次式が良い近似で成り立つ。
【0034】
【数2】

式(2)を式(1)に代入し、Iについて解くと次式が得られる。
【0035】
【数3】

単純化した後、次式を得る。
【0036】
【数4】

R2=(R1×R4)/R3となるように選ぶと、これは図1の回路構成1では満たされると考えられ、Iは、I(Q1)に無関係となり、したがって電源電圧Vbにも無関係となる。
【0037】
【数5】

(Q4)は負荷電圧Vの関数であるので(上記を参照されたい)、負荷電流Iに対して成り立ち、Iは序文で必要とされたようにVの関数となる。
【0038】
【数6】

【0039】
ここで式(3)およびそれから導き出されるすべての式は、I(Q4)は負にならないので、厳密に言えばV≧UEB(Q4)に対してのみ正しいことに留意されなければならない。したがって、ケースごとに区別する必要がある。
<UEB(Q4)に対しては、次式が成り立つ。
【0040】
【数7】

【0041】
≧UEB(Q4)に対しては、式(3)が当てはまる。ここで説明する式は、主として関数的な意味で理解されるべきであり数学的な意味は二次的であるので、以下では、I>0のケースのみについて考慮し、説明する。
【0042】
式(3)から、序文で必要とされたように電流Iが、温度Tの定義された関数であることを理解するために、図3に、第2のトランジスタQ2が、関連するコレクタ、ベース、エミッタ電流I、I、Iと、ベース−エミッタ電圧UBEおよびコレクタ−エミッタ電圧UCEが示される。すなわち、
【0043】
【数8】

【0044】
ここでICOはコレクタ電流、IEOは小さなコレクタ−エミッタ電圧UCEでの通常動作時のエミッタ電流を表し、Bは、この場合の電流増幅率を表す。(4)を(5)に代入すると、
【0045】
【数9】

(4)を(6)で割ると、
【0046】
【数10】

コレクタ電流Iに対しては、一般に次式が成り立ち、
【0047】
【数11】

【0048】
ここでIはコレクタ−エミッタ電圧UCEの関数としてのコレクタ電流であり、Uはアーリー電圧である。ここで、コレクタ電流Iのコレクタ−エミッタ電圧UCEに対する依存性は、アーリー効果によって引き起こされる。ICOは上述のコレクタ電流であり、UCE<<Uであるようなコレクタ−エミッタ電圧UCEには無関係となり、すなわちアーリー効果を考慮しない場合のコレクタ電流である。
(7)を(8)に代入して次式を得る。
【0049】
【数12】

【0050】
以下では、トランジスタQ2のベースとエミッタの間(エミッタダイオード)に存在するような、PN接合を通って流れる電流と、PN接合の両端の電圧降下との関係を表したものを考える。すなわち、
【0051】
【数13】

【0052】
ただし、Iはダイオード(PN接合)を通って流れる電流を表し、Iは逆方向飽和電流を表し、Uは流れの方向におけるダイオードの両端の電圧降下を表し、nは放出係数、Uは温度電圧を表す。
【0053】
式(10)は、トランジスタの発明者ウイリアム・ショックレーの名をとって命名された、非常に良く知られているショックレーの式の形をとる。トランジスタQ2内のエミッタダイオードに対しては、これは同様に次のようになり、
【0054】
【数14】

ただし、IESはエミッタダイオードの逆方向飽和電流を表す。(11)を(9)に代入して次式を得る。
【0055】
【数15】

【0056】
式(4)から(12)は通常動作、すなわちUCE≧UBE>0の場合のバイポーラトランジスタの特性を表すことを理解されたい。
式(12)を式(2)へ代入すると、次のようになる。
【0057】
【数16】

【0058】
図1の回路構成1のように、トランジスタQ1およびQ2として、対の特性を有する熱的に結合されたトランジスタ(デュアルトランジスタ)を用いた場合は、次が成り立つ。
【0059】
【数17】

【0060】
図1の回路構成1では、Q1およびQ2は、それらのアーリー電圧よりも大幅に小さなコレクタ−エミッタ電圧で動作する。図1の回路構成内でデュアルトランジスタとして用いられるBC846Bに対して、発明者はアーリー電圧を求めており、これは100Vより上にある。したがって、回路構成1に対しては、UCE<<U、かつ|UCE(Q1)−UCE(Q2)|<<<Uであり、すなわちアーリー効果の影響は確かに無視することができる。したがって、式(13)は、次のように簡単になる。
【0061】
【数18】

したがって、
【0062】
【数19】

すなわち次のようになる。
【0063】
【数20】

したがって式(14)を式(3)に代入すると、次のようになる。
【0064】
【数21】

【0065】
は温度電圧であり、熱励起された電子が平均して、温度Tでのその運動エネルギーに基づいて打ち勝つことができる電位差に相当する。したがって、
【0066】
【数22】

ただし、kはボルツマン定数、Tは絶対温度、およびeは素電荷を表す。(16)を(15)に代入して次式を得る。
【0067】
【数23】

式(17)を絶対温度Tに関して微分することにより、Iの温度係数が得られる(ここではUEB(Q4)の温度係数を無視する)。
【0068】
【数24】

【0069】
図1の回路構成1の場合が当てはまるような、通常動作において小さなコレクタ電流で用いられるバイポーラ小信号トランジスタは、通常、放出係数はn=1である。それらのベース−エミッタPN接合は高濃度にドープされ、理想PN接合の特性勾配に似た特性勾配を有し、ただし低い阻止能力しかない。したがって、図1による構成の温度依存性I=f(T)は、回路の寸法設定および温度電圧のみの関数となる。温度電圧は、物理定数に元をたどることができるので、同様に物理定数と見なすことができ、したがってI=f(T)が決まる。SPICEシミュレーションおよび実験室測定により、式(17)および(18)は良好な近似であることが確かめられ、その結果は図4に、3つの温度値T1=−25℃、T2=50℃、およびT3=125℃に対する、電流−電圧特性(I(V))について表されている。
【0070】
図1の回路構成1は、比較的少数の構成要素を備え、コスト効率良く個別部品の形で実施することができる。個別部品を備えるトランジスタ回路は通常、−40℃から+150℃の動作温度範囲を有し、比較的高温および低温の周囲温度が生じる自動車両での使用に特に適している。したがって、この構成は、自動車内のファンモータ用の短絡および閾値電流レギュレータとして、特に有利な用途がある。追加の能動構成要素が必要になり得るが、シャント抵抗Rの電圧Vの代わりに、たとえば電流センサの出力信号など、負荷電流Iに比例する他の変数を制御変数として選択することもできることを理解されたい。
【0071】
回路構成1は、ファンモータを調節するために用いることができるだけでなく、対応する変換を行うことにより他の形の温度特性を有する負荷用に設計することもできる。これは、たとえば負荷電流Iが温度上昇と共に増加する負荷がある場合に当てはまる。この場合は回路構成1は、具体的には第3の抵抗R3の第1の抵抗R1に対する比が1より大きくなるように選択することにより、正の温度係数をもつようにすることができる。これによって回路構成は、自動車両ではコスト上の理由から通例であるように、基準電圧Vrefがダイオード回路を用いて生成される場合は、生じ得る任意の温度依存性に対して補償を行う働きをすることができる。また、コレクタ静止電流を同一に選ぶことにより、特性が温度に依存しない回路構成を製造することができ、これは同様に温度依存性を示さない負荷の場合に特に有利となり得る。
【0072】
図1の回路構成は、負荷電圧Vおよび/または温度Tに対してほぼ正比例または反比例する、負荷電流Iの関数的依存性を有する。また、回路構成1を適切に変更することにより、その他のほとんどのI=f(V,T)の形の関数的依存性を調整することができ、それによって回路構成1は、多数の異なるタイプの負荷に適合することができることが理解されるべきである。
【図面の簡単な説明】
【0073】
【図1】ファンモータを通る負荷電流を調節するための、本発明による回路構成の一実施の形態の回路図である。
【図2】従来技術による、負荷電流を調節するための回路図である。
【図3】温度特性を説明するための、関連する電流および電圧と共に、図1の回路構成のトランジスタを示す図である。
【図4】様々な温度における、特定用途に寸法設定された、図1の電流制御回路の3つの電流−電圧特性を示す図である。
【符号の説明】
【0074】
1 回路構成
10 回路構成

【特許請求の範囲】
【請求項1】
負荷(R)を通る電流(I)を調節するための回路構成(1、10)であって、
前記抵抗を通って負荷電流(I)が流れ、前記抵抗の両端に、前記負荷電流(I)を調節するための制御変数(X)の働きをする電圧(V)の降下が生じる抵抗(R)と、
前記負荷電流(I)を調節するためのコマンド変数(W)の働きをする基準電圧(Vref)のためのタップ点(P)と、
コマンド変数(W)と制御変数(X)の間の制御偏差(W−X)を増幅するための差動増幅器(OV)とを備える回路構成において、
前記負荷電流(I)を前記負荷電圧(V)の関数として調節するために、トランジスタ(Q4)と、コレクタ抵抗(R2)およびエミッタ抵抗(R6)とが設けられ、
前記第4のトランジスタ(Q4)のベース−エミッタ部分と前記エミッタ抵抗(R6)との直列接続が、前記負荷(R)と並列に配置され、
前記基準電圧のためのタップ点(P)が、前記コレクタ抵抗(R2)と前記トランジスタ(Q4)の間に配置されることを特徴とする回路構成。
【請求項2】
前記差動増幅器が、第1および第2のベースが結合されたトランジスタ(Q1、Q2)を有する請求項1に記載の回路構成。
【請求項3】
前記負荷電流(I)を温度の関数として調節するために、前記ベースが結合されたトランジスタ(Q1、Q2)を通るコレクタ静止電流の一定比率を調整するための素子であって、好ましくは2つの抵抗(R1、R3)によって形成される素子を有する請求項2に記載の回路構成。
【請求項4】
前記ベースが結合されたトランジスタ(Q1、Q2)が、同一のコレクタ−エミッタ電圧を有する請求項3に記載の回路構成。
【請求項5】
前記ベースが結合されたトランジスタ(Q1、Q2)が、デュアルトランジスタによって形成される請求項2乃至4のいずれか一項に記載の回路構成。
【請求項6】
前記負荷電流(I)を調整するための作動素子として、好ましくはパワートランジスタである、少なくとも1つの追加トランジスタ(M1)を有する請求項1乃至5のいずれか一項に記載の回路構成。
【請求項7】
前記追加トランジスタ(M1)の制御電圧を制限的に調節するための第3のトランジスタ(Q3)を有する請求項6に記載の回路構成。
【請求項8】
前記第3のトランジスタ(Q3)が、前記追加トランジスタ(M1)の前記制御電圧を前記制御偏差(W−X)の関数として調整するように、前記差動増幅器(Q1、Q2)および前記第3のトランジスタ(Q3)が回路内に配置される請求項7に記載の回路構成。
【請求項9】
個別部品から構成される請求項1乃至8のいずれか一項に記載の回路構成。
【請求項10】
前記負荷(R)がファンモータによって形成される請求項1乃至9のいずれか一項に記載の回路構成(1)を備える自動車両ファン。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−65638(P2009−65638A)
【公開日】平成21年3月26日(2009.3.26)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2008−166038(P2008−166038)
【出願日】平成20年6月25日(2008.6.25)
【出願人】(503145110)シトリニック ゲス フュール エレクトロテクニッシュ オウスルゥスタング エム ベー ハー ウント コー カー ゲー (12)
【氏名又は名称原語表記】sitronic Ges.  fur elektrotechnische Ausrustung mbH & Co. KG
【Fターム(参考)】