説明

負荷時タツプ切換器

【目的】 切換開閉器の切換動作に伴って昇温する限流抵抗器を効率良く冷却し、切換開閉器の切換速度の制御を可能にする。
【構成】 蓄勢装置1へ直決された駆動軸2に固着され、主、抵抗バルブを開閉させるための開閉溝をもつカム7を設け、このカムのリブ部をフィン状に形成し、回転時に駆動軸2方向にガス流を生じさせこれを限流抵抗に導く。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、気中またはガス中で使用される抵抗式負荷時タップ切換器の改良に関する。
【0002】
【従来の技術】現在最も普及している油中遮断方式の負荷時タップ切換器は、電気的絶縁媒体、電流遮断時の消弧媒体、または、限流抵抗器の冷却媒体として絶縁油が用いられている。一方、都市の過密化に伴ない、電気機器は不燃化の要求が高まっており、不燃料性ガスを封入した絶縁機器が急速に発達してきた。それに伴なって負荷時タップ切換器も、電流遮断要素に真空バルブを用いたものが数多く製品化されるようになってきた。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】そこで、従来の油中式負荷時タップ切換器を、そのままガス絶縁式に適用することが望まれるが、例えば、タップ間短絡時に循環電流を抑制するために配設される限流抵抗器の冷却特性が、両方式において大幅に異なるため、限流抵抗器の大形化につながり、負荷時タップ切換器も大形化し、コストアップの要因となっていた。従って、従来の油中式のままガス絶縁式に置換えるには、両者の冷却効率の低下分の冷却を、別の手段で補うことが必要となってくる。
【0004】ところで、この限流抵抗器の発熱が、切換過程においてどのようになっているかを、図4と図5を用いて説明する。なお、負荷時タップ切換器の切換方式については種々あるが、ここでは既に公知の2抵抗式を用いて説明する。図4は2抵抗式切換開閉器の回路図、図5の(A)は切換動作、(B)は抵抗通電時間、および(C)は抵抗の発熱状態を示している。図4において、TWはタップ巻線、T1 ,T2 は前記巻線のタップ、M1 ,M2 は前記タップを無電流状態で選択するタップ選択器である。HA ,HB は主バルブ、WA ,WB は抵抗バルブ、6A,6B が本発明の課題となっている限流抵抗器である。また、図5の(A)は切換シーケンス図を示しており、主バルブHA が開いてから、t1 後に抵抗バルブWB が閉じ、t2 後に抵抗バルブWA が開く。さらにt3 後、主バルブHB が閉じて、1過程を終了する。なお、図においては、閉状態を太線で示してある。図5(B)は、前述した過程における限流抵抗器6A ,6B の通電時間を示した図である。限流抵抗器6A は主バルブHA のアーク時間ta 後通電され、抵抗バルブWA のアーク時間tb 後(消弧)の時間T1 の間、通電される。また、限流抵抗器6B は、抵抗バルブWB が閉じた時点から主バルブHB が閉じるまでの時間T2 間、通電される。なお、図においては、通電状態を太線で示してある。図5(C)は、前述した抵抗通電時間に相応した、抵抗の発熱状態を示した図で、抵抗の発熱量は通電時間T1 ,T2 に比例して増加し、T1 ,T2 後が最大となる。なお、切換開閉器の動作時間Tは主バルブ及び抵抗バルブが確実に遮断できる時間に設定されている。また、交流消弧は電流零点で行なわれることから、この消弧時間の確保と限流抵抗通電時間を極力抑制し、大形化を回避することを考慮し、40〜50ms程度となっている。従って、限流抵抗を冷却する上で、最も効率的な冷却方法は、発熱量が最高となる点の近傍において、冷却する手段を作用させればよいことになる。
【0005】また、前記蓄勢装置の蓄勢力によって、切換開閉器を電流遮断させる動作においては、蓄勢装置の従動側から、回動力として駆動軸に伝達して、切換開閉器を動作させている。この動作は、油中式では抵抗力となる絶縁油があるため、その回転速度を制御することができ、電流遮断調整を行うことができた。しかしながら、ガス絶縁式に利用する場合には、絶縁油のような抵抗力となるものがなく、蓄勢装置からの蓄勢力が、無抵抗のまま回動力として駆動軸に伝達されることになるため、速度制御を行なうことができず、大容量化に伴う、蓄勢力の増加に比例して、切換開閉器の動作が速くなり、増々電流遮断調整が困難となっている。
【0006】本発明は、以上の欠点を解決するために提案されたもので、その目的は、切換動作に伴なって昇温する限流抵抗器を効率良く冷却し、また同時に切換速度を制御することのできる負荷時タップ切換器を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】本発明は限流抵抗器の冷却効率向上と切換速度制御の2つの機能を同時に達成する手段として蓄勢装置へ直結された駆動に固着され、主、抵抗バルブを開閉させるための開閉溝をもつカムを設ける。このカムのリブ部をフィン状に形成し、回転時駆動軸方向にガス流が生じるように構成する。そしてガス流の方向に限流抵抗を配置する。
【0008】
【作用】このようにすると発熱する抵抗帯に極力ガス流が生じる。カムは主、抵抗バルブの開閉を行なうと同期して前記フィンの送風作用によって生ずるガス流を限流抵抗に当て、熱を有効に奪うようにする。更に、一方ではこのフィンに受ける気体抵抗は回転速度の2乗に比例し増加する。したがって負荷時タップ切換器の蓄勢装置のように駆動源になね系を用いる装置においては前記気体抵抗による回転速度を制御することは容易に行なうことができる。
【0009】このように構成することにより、カムのバルブ開閉機能に加え、ガス流による抵抗帯の冷却および自己の回転速度制御を行わせることによりコンパクトに構成することができる。
【0010】
【実施例】以下本発明の一実施例を図1乃至図3に基づいて具体的に説明する。
【0011】1は駆動源にコイルばねを用いた蓄勢装置で一定量コイルばねを蓄勢した後放勢し、駆動軸2へ回転力を伝達する。駆動軸2にはカム7が固定されており、駆動軸2とともに一定角度θ瞬発動作を行なう。このカム2には外周部に2条の開閉溝(72)を備えており、一方は主バルブ(HA ,HB )の開閉用他方は抵抗バルブ(WA ,WB )の開閉用としての役割をもっている。またリブ部は薄板状とし、中心点から放射方向へ等配に6ケ所設けられている。このリブは図3Bの通り、三角状を成しており、時計方向、反時計方向いずれの回転に対しても上方にガス流が生じるように形成されている。8,8’はカム溝に係合して主、バルブ(HA )抵抗バルブ(WA )を開閉する駆動ロッドである。
【0012】3は抵抗ケースで内部に抵抗帯4が収納されており、サポート5上に固定されている。限流抵抗6A 、6B は図1のとおり、放射方向等配に6ケ配置されている。6は前記抵抗帯4の真下に位置した導風路で、カム7からのガス流(図中矢印)を抵抗ケース3内に導き、抵抗帯4へ出来る機り多くのガス流が生じさせる役割をもたせている。11はサポートでサポート5とともに三本のスタッド10により、締付けられている。次に前述のように構成された切換開閉器のしゃ断機構の作用について説明する。
【0013】蓄勢装置1は図示しない電動操作機構からの動力を受けて、駆動源となるコイルばね(図示していない)に蓄勢エネルギーを蓄勢する所定量に達すると放勢して、回転力を駆動軸2へ伝達する。駆動軸2に固着されているカム7は回転し、バルブ開閉溝(72)の変位により、主バルブ(HA ,HB )、抵抗バルブ(WA,WB )を所定の順序で開閉させる。バルブの開閉にともない限流抵抗6A ,6B に電流が流れ、抵抗帯4が発熱する。この動作については図5に示されれており、詳細は従来装置の項で述べたので省略する。カム7の回転にともない、カムのフィン71により、ガス流が上方に生じ導風路6を通って抵抗帯4へ送ガスする。このガス流は図5に示すごとく、カム7の回転速度に比例して増量し、カムの回転角θ゜で最大となる。一方限流抵抗の発熱は図5(B),(C)に示されているように通電時間T1 ,T2 後が最も高い温度に達しているからこの点においてガス流を抵抗ケース内に送り込み、冷却することによって最も冷却効率も高め、抵抗帯4の最高点に温度を低減するのに有効な手段である。こゝでカム7の回転速度について注目して見ると駆動源にコイルばねを用いているため角変位に比例して回転速度は急上昇してゆく。この現象は気中またはガス中で使用する負荷時タップ切換器にとっては非常に不都合である。
【0014】なぜなら図5(A)に示す切換シーケンスにおいて主バルブHA 、抵抗バルブWA が電流しゃ断を行なう際消弧時間ta,tb なる時間が必ず必要となる。
【0015】前述の回転速度急上昇は切換時間t1 に対し、t3は小さくなる結果を招くこととなり、両者に不均衡が生じてくる。主、抵抗バルブのしゃ断電流は略同一であることから、t1 ,t3 は同じであることが理想である。油中式の場合には絶縁油では油の流体抵抗が高いため、この効果を受けて比較的容易に速度制御されているが気中、ガス中では密度が大幅に異なることから、何んらかの速度抑制策が必要となってくる。本実施例ではカム7のフィン71がその作用を成しており、t1 ,t3 は略同一に保つことができる。
【0016】
【発明の効果】以上説明したが本発明を実施することにより、以下の効果、利点を生じる。
【0017】(1)カム7に主、抵抗バルブの開閉機能、ガス流を発生せしめ、発熱する抵抗帯4を有効に冷却する機能、そして更には瞬発回動時の回転速度制御を備えさせていることから油中式並みのコンパンクなガス中および気中式の切換開閉器を提供することができる。
(2)抵抗帯4の最高温度時に最大のガス流を送り込むことができることから、効率の高い冷却機能が得られる。
【0018】(3)大容量化にともない、駆動源となるコイルばねの静的エネルギーが大きくなった場合でもカム7に備えたフィン71の受圧面積を変えることによって容易に回動速度を制御することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施例を示す平面図。
【図2】本発明の一実施例を示す図1のII−II断面図。
【図3】(A)は本発明の一実施例を示す図2のIII−III断面図、(B)は要部拡大図。
【図4】2抵抗式切換開閉器の回路図。
【図5】(A)〜(D)は本発明の動作説明図。
【符号の説明】
1…蓄勢装置 2…駆動軸
7…カム 71…カムに備えたフィン
72…カムに備えたバルブ開閉溝
4…抵抗帯 6…導風路
9…真空バルブ

【特許請求の範囲】
【請求項1】 電流しゃ断要素に真空バルブを用い、この真空バルブを所定の切換順序で開閉を行わせるカムと、前記カムに直結した駆動軸を介して所定の回動速度を付与する蓄勢装置と、タップ切換動作時タップ間短絡時の横流を制限する限流抵抗器を備えた気中またはガス中で使用される抵抗負荷時タップ切換器において、前記カムのリブ部に回転時前記駆動軸の軸方向に風量を生じせしめるフィンを備え、この風量を前記限流抵抗器の抵抗帯へ導く導風路を設け、タップ切換動作の際前記真空バルブの開閉、抵抗帯の冷却、そして回動速度制御の3つの機能を同期して行わせるカムを備えたことを特徴とする負荷時タップ切換器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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