説明

貨幣識別装置のプログラム更新システム及び、貨幣識別装置のプログラム更新方法

【課題】貨幣識別装置間相互の更新用プログラムの不正利用を確実に防止することで、開発コストの回収を図る。
【解決手段】識別プログラムに基づき紙幣を識別する紙幣識別部6と、装置単位で付与したPINコードを入力する操作部2Bと、PINコードを装置コードで暗号化して確認コードを作成する確認コード作成部21と、確認コードが許可コードに合致した場合、SDカードに格納した更新用プログラムを復号化するプログラム復号部22と、復号化した更新用プログラムの利用を可能にし、この更新用プログラムに基づき、紙幣識別部6の識別プログラムを更新する更新制御部23とを有している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、識別プログラムに基づき、貨幣を識別する貨幣識別装置のプログラム更新システム及び、貨幣識別装置のプログラム更新方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の貨幣識別装置では、識別プログラムに基づき、貨幣を識別する貨幣識別部を備え、例えば、仕向国での貨幣改刷や貨幣偽造等が生じた場合、これら貨幣改刷に伴う金種識別や偽造紙幣の識別等の新たな識別内容に応じて、貨幣識別部の識別プログラムを変更する必要が生じる。
【0003】
そこで、従来の貨幣識別装置では、新たな識別内容に応じて、識別プログラムを更新する更新用プログラムを格納したSDカード等の記録媒体を挿入し、この記録媒体から更新用プログラムを読み出し、読み出した更新用プログラムに基づき、貨幣識別部の識別プログラムを更新する(例えば、特許文献1及び特許文献2参照)。
【0004】
その結果、従来の貨幣識別装置では、記録媒体から更新用プログラムを読み出し、読み出した更新用プログラムに基づき、貨幣識別部の識別プログラムを更新するようにしたので、新たな識別内容に十分適合できるものである。
【0005】
また、特許文献1では、識別プログラムの更新時にバージョン適合性の確認作業を全て自動化することで、人為的なミスで発生する識別プログラムのバージョン不整合による各種動作不良を確実に防止できる。
【0006】
また、このような更新用プログラムの開発にはコストがかかるため、更新用プログラムを格納した記録媒体を有料販売して、その記録媒体の販売売上で開発コストを回収する必要がある。しかしながら、正規購入した記録媒体を再利用することで、同一機種の他の貨幣識別装置の識別プログラムを更新できるため、貨幣識別装置の台数に比例した枚数分の記録媒体が売れず、その開発コストを回収できていない。
【0007】
そこで、特許文献2では、更新用プログラムを格納した記録媒体を使用して貨幣識別部の識別プログラムを更新した後、記録媒体の所定エリアに更新用プログラムの利用不可を書き込んで記録媒体の更新用プログラムの再利用を不可とし、貨幣識別装置間相互の更新用プログラムの不正利用を防止することで、その開発コストの回収を図ることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特許第3805548号公報(請求項1及び図1参照)
【特許文献2】特開2007−199927号公報(要約書及び図1参照)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、特許文献2では、更新用プログラムを格納した記録媒体の所定エリアに利用不可を書き込んだとしても、顧客側の所定操作に応じて利用不可を解除することができ、その記録媒体の更新用プログラムを再利用して何度でも他の貨幣識別装置の識別プログラムを更新できてしまうため、更新用プログラムの開発コストを回収できない。
【0010】
本発明は上記点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、貨幣識別装置間相互の更新用プログラムの不正利用を確実に防止することで、開発コストの回収を図ることができる貨幣識別装置のプログラム更新システム及び、貨幣識別装置のプログラム更新方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するために本発明の貨幣識別装置のプログラム更新システムは、識別プログラムに基づき、貨幣を識別する貨幣識別部と、装置本体毎に付与された暗証コードを入力する入力部と、前記入力部で入力された暗証コード及び、前記装置本体を特定する装置コードに基づき、所定アルゴリズムで確認コードを作成する確認コード作成部と、前記確認コード作成部にて作成した前記確認コードが許可条件に合致した場合、この更新用プログラムの利用を可能にし、この更新用プログラムに基づき、前記貨幣識別部の識別プログラムを更新する更新制御部とを有する。
【0012】
また、本発明の貨幣識別装置のプログラム更新システムは、上記発明の構成において、前記更新制御部は、前記確認コードが前記許可条件に合致しなかった場合、この更新用プログラムの利用を不可とする。
【0013】
また、本発明の貨幣識別装置のプログラム更新システムは、上記発明の構成において、前記更新制御部は、前記確認コードが前記許可条件に合致した場合、当該確認コードに基づき前記更新用プログラムを復号化して当該更新用プログラムの利用を可能にする復号部を有する。
【0014】
また、本発明の貨幣識別装置のプログラム更新システムは、上記発明の構成において、前記許可条件は、前記更新用プログラムと一緒に記憶されている。
【0015】
また、本発明の貨幣識別装置のプログラム更新システムは、上記発明の構成において、前記更新制御部は、前記更新用プログラムを格納した記録媒体の挿入動作に応じて、当該記録媒体に格納した前記更新用プログラムを読み出し、読み出した更新用プログラムに基づき、前記貨幣識別装置の識別プログラムを更新する。
【0016】
また、本発明の貨幣識別装置のプログラム更新システムは、上記発明の構成において、前記更新制御部は、前記更新用プログラムを管理した管理装置との通信接続動作に応じて、前記管理装置から前記更新用プログラムを受信し、受信した更新用プログラムに基づき、前記貨幣識別装置の識別プログラムを更新する。
【0017】
また、本発明の貨幣識別装置のプログラム更新システムは、上記発明の構成において、前記更新用プログラム更新対象の貨幣識別装置本体の前記装置コード及び、当該更新用プログラムの利用を可能にする前記許可条件に基づき、前記所定アルゴリズムで、前記更新用プログラム更新対象の貨幣識別装置に付与する前記暗証コードを作成する暗証コード作成部を有する。
【0018】
また、本発明の貨幣識別装置のプログラム更新システムは、上記発明の構成において、前記許可条件は、当該更新用プログラムの利用を可能にする共通の許可コードにした。
【0019】
上記目的を達成するために本発明の貨幣識別装置のプログラム更新方法は、識別プログラムに基づき、貨幣を識別する貨幣識別装置のプログラム更新方法であって、装置本体毎に付与された暗証コードを入力する入力ステップと、入力された暗証コード及び、前記装置本体を特定する装置コードに基づき、所定アルゴリズムで確認コードを作成する確認コード作成ステップと、作成した確認コードが許可条件に合致した場合、この更新用プログラムの利用を可能にし、この更新用プログラムに基づき、前記識別プログラムを更新する更新制御ステップとを含む。
【0020】
また、本発明の貨幣識別装置のプログラム更新方法は、上記方法において、前記更新用プログラム更新対象の貨幣識別装置本体の装置コード及び、当該更新用プログラムの利用を許可する許可条件に基づき、前記所定アルゴリズムで、前記更新用プログラム更新対象の貨幣識別装置に付与する暗証コードを作成する暗証コード作成ステップを含む。
【発明の効果】
【0021】
上記のように構成された本発明の貨幣識別装置のプログラム更新システムでは、装置単位の暗証コード及び装置コードを利用して確認コードを作成し、この確認コードが許可条件に合致した場合、この更新用プログラムを利用可能にし、この更新用プログラムに基づき識別プログラムを更新する。その結果、本発明では、暗証コードを装置単位で付与することになるため、他の貨幣識別装置に同一暗証コードを入力したとしても、装置コードが異なるため、許可条件に合致した確認コードを作成することができず、貨幣識別装置間相互の更新用プログラムの不正利用を確実に防止できるという効果を奏する。
【0022】
つまり、貨幣識別装置側の顧客は、更新用プログラムを正規購入したことで付与される装置単位の暗証コードを利用して識別プログラムを更新できるという効果を奏する。更に、貨幣識別装置側の製造者は、更新用プログラムを正規購入した顧客に対して装置単位で暗証コードを提供することになるため、貨幣識別装置間相互の更新用プログラムの不正利用を確実に防止しながら、その開発コストの回収を図ることができるという効果を奏する。
【0023】
また、本発明の貨幣識別装置のプログラム更新システムでは、上記発明の効果に加えて、確認コードが許可条件に合致しなかった場合、この更新用プログラムの利用を不可とする。その結果、本発明では、入力した暗証コードが正しくない場合、確認コードが許可条件に合致しないことになるため、更新用プログラムの不正利用を確実に防止できるという効果を奏する。
【0024】
また、本発明の貨幣識別装置のプログラム更新システムでは、上記発明の効果に加えて、確認コードが許可条件に合致した場合、当該確認コードに基づき更新用プログラムを復号化して当該更新用プログラムの利用を可能にする。その結果、本発明では、暗号化した更新用プログラムを確認コードで復号化できるという効果を奏する。
【0025】
また、本発明の貨幣識別装置のプログラム更新システムでは、上記発明の効果に加えて、許可条件を更新用プログラムと一緒に記憶できるという効果を奏する。
【0026】
また、本発明の貨幣識別装置のプログラム更新システムでは、上記発明の効果に加えて、記録媒体を通じて更新用プログラムを取得し、この更新用プログラムに基づき、貨幣識別装置の識別プログラムを更新できるという効果を奏する。
【0027】
また、本発明の貨幣識別装置のプログラム更新システムでは、上記発明の効果に加えて、管理装置を通じて更新用プログラムを取得し、この更新用プログラムに基づき、貨幣識別装置の識別プログラムを更新できるという効果を奏する。
【0028】
また、本発明の貨幣識別装置のプログラム更新システムでは、上記発明の効果に加えて、更新用プログラム更新対象の貨幣識別装置本体の装置コード及び、当該更新用プログラムの利用を可能にする許可条件に基づき、所定アルゴリズムで、更新用プログラム更新対象の貨幣識別装置に付与する暗証コードを作成する。その結果、貨幣識別装置側の製造者は、更新用プログラムを正規購入した顧客に対して装置単位で暗証コードを提供することになるため、貨幣識別装置間相互の更新用プログラムの不正利用を確実に防止しながら、その開発コストの回収を図ることができるという効果を奏する。
【0029】
また、本発明の貨幣識別装置のプログラム更新システムでは、上記発明の効果に加えて、更新用プログラムの利用を可能にする許可条件を共通の許可コードにすることで、更新用プログラム単位の許可条件を管理する負担を大幅に軽減できるという効果を奏する。
【0030】
また、上記のように構成された本発明の貨幣識別装置のプログラム更新方法では、装置単位の暗証コード及び装置コードを利用して確認コードを作成し、この確認コードが許可条件に合致した場合、この更新用プログラムを利用可能にし、この更新用プログラムに基づき識別プログラムを更新する。その結果、貨幣識別装置側の顧客は、更新用プログラムを正規購入したことで付与される装置単位の暗証コードを利用して識別プログラムを更新できるという効果を奏する。更に、貨幣識別装置側の製造者は、更新用プログラムを正規購入した顧客に対して装置単位で暗証コードを提供することになるため、貨幣識別装置間相互の更新用プログラムの不正利用を確実に防止しながら、その開発コストの回収を図ることができるという効果を奏する。
【0031】
また、本発明の貨幣識別装置のプログラム更新方法では、上記発明の効果に加えて、更新用プログラム更新対象の貨幣識別装置本体の装置コード及び、当該更新用プログラムの利用を可能にする許可条件に基づき、所定アルゴリズムで、更新用プログラム更新対象の貨幣識別装置に付与する暗証コードを作成する。その結果、貨幣識別装置側の製造者は、更新用プログラムを正規購入した顧客に対して装置単位で暗証コードを提供することになるため、貨幣識別装置間相互の更新用プログラムの不正利用を確実に防止しながら、その開発コストの回収を図ることができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】図1は、本実施例の紙幣識別装置内部の概略構成を示す説明図である。
【図2】図2は、本実施例の紙幣識別装置内部の概略構成を示すブロック図である。
【図3】図3は、更新用プログラムの暗号化方法を端的に示す説明図である。
【図4】図4は、PINコードの作成方法を端的に示す説明図である。
【図5】図5は、更新用プログラムの復号化方法を端的に示す説明図である。
【図6】図6は、更新用プログラム毎のPINコード、装置コード、確認コード及び許可コードを端的に示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下、図面に基づき本発明の貨幣識別装置のプログラム更新システム及び貨幣識別装置のプログラム更新方法に関わる実施例を示す紙幣識別装置について詳細に説明する。
【0034】
まず、最初に本実施例の概要を説明するとすれば、その概要は、識別プログラムに基づき、紙幣を識別する紙幣識別部を備えた紙幣識別装置であって、装置本体毎に付与されたPIN(Personal Identification Number)コードを入力する入力部と、入力されたPINコード及び、装置本体を特定する装置コードに基づき、所定アルゴリズムで確認コードを作成する確認コード作成部とを有している。
【0035】
ここで、プログラムとは、例えば、紙幣識別用の識別プログラム、紙幣種別毎に判定基準を定めた識別テーブル、及び紙幣識別装置の制御用プログラムの何れか、又は、これらの組合せを指す。
【0036】
更に、紙幣識別装置は、確認コード作成部にて作成した確認コードが許可コードに合致した場合、この更新用プログラムの利用を可能にし、この更新用プログラムに基づき、紙幣識別部の識別プログラムを更新する更新制御部を有している。
【0037】
つまり、紙幣識別装置では、装置単位の暗証コード及び装置コードを利用して確認コードを作成し、この確認コードが許可コードに合致した場合、更新用プログラムに基づき、貨幣識別部の識別プログラムを更新する。
【0038】
その結果、紙幣識別装置側の顧客は、例えば、更新用プログラムを正規購入したことで付与される装置単位のPINコードを利用して識別プログラムを更新できる。更に、紙幣識別装置側の製造者は、紙幣識別装置毎にPINコードを提供することで、紙幣識別装置間相互の更新用プログラムの不正利用を確実に防止しながら、その開発コストの回収を図るというものである。
【実施例】
【0039】
図1は、本実施例の紙幣識別装置内部の概略構成を示す説明図である。
【0040】
図1に示す紙幣識別装置1は、各種情報を画面表示し、この画面表示上で各種コマンドを入力する操作/表示部2と、取引紙幣を装置内に投入するホッパ部3と、このホッパ部3に投入した紙幣を1枚単位で繰り出す繰出部4とを有している。
【0041】
更に、紙幣識別装置1は、この繰出部4にて繰り出した紙幣を搬送する搬送ベルト等の紙幣搬送部5と、この紙幣搬送部5で搬送した紙幣の金種、真偽、方向等の種別を識別する紙幣識別部6とを有している。
【0042】
更に、紙幣識別装置1は、紙幣識別部6にて搬送紙幣の種別を識別し、この識別結果に基づき、搬送紙幣を順次集積する集積部7と、識別不能の紙幣や、設定により対象外となった紙幣をリジェクトするリジェクト部8とを有している。
【0043】
また、紙幣識別装置1内の紙幣搬送路上の分岐箇所には、紙幣搬送路上を搬送する搬送紙幣を集積部7又はリジェクト部8に振り分ける分岐部9を配置している。尚、分岐部9は、検知センサ10Aを通じて搬送紙幣の先端の進入を検知すると、図示せぬソレノイドが駆動することで搬送紙幣を振り分けるものである。
【0044】
また、集積部7は、搬送紙幣を1枚単位で紙幣集積空間内の所定位置に集積する羽根車7Aと、紙幣集積空間内に集積した紙幣を取出可能にすべく、紙幣集積空間の紙幣取出口を開閉するシャッタ7Bとを備えている。
【0045】
また、紙幣識別部6は、搬送紙幣の表面及び裏面を光学的に検知し、その検知結果に基づき搬送紙幣を識別するラインセンサ6Aを備えている。
【0046】
更に、紙幣識別装置1は、紙幣識別部6の識別プログラムを更新する更新用プログラムを格納したSDカードを挿入するSDカード挿入部11を有している。
【0047】
図2は、本実施例の紙幣識別装置1内部の概略構成を示すブロック図である。
【0048】
図2に示す紙幣識別装置1は、表示部2A及び操作部2Bを備えた操作/表示部2と、SDカード挿入部11と、検知センサ10A等のセンサ部10と、紙幣搬送部5、羽根車7A、シャッタ7Bや分岐部9等を駆動する駆動部13と、ラインセンサ6A等の紙幣識別部6とを有している。
【0049】
更に、紙幣識別装置1は、紙幣識別部6を制御する識別制御部14と、この紙幣識別装置1全体を制御する本体制御部15とを有している。
【0050】
識別制御部14は、紙幣識別部6の固定設定内容を記憶した識別制御用ROM14Aと、識別制御部14の識別プログラム等を記憶する識別制御用RAM14Bと、識別制御部14全体を制御する識別制御用CPU14Cとを有している。尚、識別プログラムは、搬送紙幣の金種、真偽や方向等の種別を識別するために種別毎の判定情報やプログラムが含まれているものとする。
【0051】
本体制御部15は、紙幣識別装置1の固定設定内容を記憶した制御用ROM15Aと、本体制御部15の各種プログラムや各種設定内容を記憶した制御用RAM15Bと、本体制御部15全体を制御する制御用CPU15Cとを有している。
【0052】
制御用RAM15Bは、揮発性記憶領域151及び不揮発性記憶領域152で構成し、その不揮発性記憶領域152には、紙幣識別装置1の製造番号の他に、例えば、紙幣識別装置1の製造時等に、当該紙幣識別装置1を識別する装置コードが格納してある。尚、装置コードは、例えば、製造者側では把握しているものの、顧客に対しては隠匿した構成としているため、顧客による装置コードの不正利用を回避できるものである。
【0053】
制御用CPU15Cは、例えば、更新用プログラム正規購入後に付与される装置単位のPINコードを制御用RAM15Bに格納した装置コードで復号化することで、確認コードを作成する確認コード作成部21を有している。
【0054】
更に、制御用CPU15Cは、確認コード作成部21にて作成した確認コードが更新用プログラムを復号化する許可コードと合致した場合、SDカードに格納した更新用プログラムを復号化するプログラム復号部22を有している。
【0055】
更に、制御用CPU15Cは、プログラム復号部22にて更新用プログラムを復号化し、この復号化した更新用プログラムに基づき、識別制御用RAM14Bに格納した識別プログラムを更新する更新制御部23を有している。
【0056】
また、プログラム復号部22は、確認コードが許可コードに合致しなかった場合、SDカードに格納した更新用プログラムを復号化できず、この処理動作を終了する。つまり、更新制御部23は、更新用プログラムが復号化できないため、識別制御用RAM14Bに格納した識別プログラムの更新ができないことになる。
【0057】
ここで、本実施例で使用するPINコード、装置コード、確認コード及び許可コードの各種コードについて説明する。
【0058】
許可コードは、更新用プログラムを暗号化又は復号化する、紙幣識別装置1の製造者側で設定したコードに相当するものである。
【0059】
また、PINコードは、例えば、更新対象の紙幣識別装置1側顧客の更新用プログラムの正規購入に応じて、更新用プログラムの許可コードを更新対象の紙幣識別装置1の装置コードで暗号化した、正規購入者に付与するコードに相当するものである。
【0060】
更に、確認コードは、PINコードを装置コードで復号化することで、SDカードに格納した更新用プログラムを復号化するためのコードに相当するものである。
【0061】
尚、プログラム復号部22は、確認コードが許可コードに合致した場合、SDカードに格納した更新用プログラムを復号化して当該更新用プログラムを利用可能とし、確認コードが許可コードに合致しなかった場合、SDカードに格納した更新用プログラムを復号化できず、当該更新用プログラムを利用不可とするものである。
【0062】
すなわち、紙幣識別装置1の制御用CPU15Cでは、例えば、PINコード*装置コード=確認コードのアルゴリズムが成立し、当該紙幣識別装置1に対する正しいPINコードが入力された場合、PINコード*装置コード=確認コード=許可コードのアルゴリズムが成立することになる。
【0063】
尚、請求項記載の貨幣識別装置は紙幣識別装置1、貨幣識別部は紙幣識別部6、入力部は操作部2B、確認コード作成部は確認コード作成部21、暗証コードはPINコード、許可条件は許可コード、更新制御部はプログラム復号部22及び更新制御部23、暗証コード作成部は図示せぬ製造者側のパソコン端末等に夫々対応するものである。
【0064】
次に、本実施例の紙幣識別装置1の動作について説明する。図3は、更新用プログラムの暗号化方法を端的に示す説明図、図4は、PINコードの作成方法を端的に示す説明図、図5は、更新用プログラムの復号化方法を端的に示す説明図、図6は、更新用プログラム毎のPINコード、装置コード、確認コード及び許可コードを端的に示す説明図である。
【0065】
紙幣識別装置1の製造者側では、例えば、紙幣改刷に応じた各金種の識別内容に適合すべく、紙幣識別部6の識別プログラムを更新する更新用プログラムを開発したとする。
【0066】
更に、製造者側では、更新用プログラムの利用を可能にすべく、当該更新用プログラムを暗号化又は復号化する許可コードを設定する。
【0067】
製造者側は、図3に示すように、更新用プログラムA1を許可コードD1で暗号化し、この暗号化した更新用プログラムA1をSDカードに格納する。
【0068】
更に、製造者側では、例えば、パソコン端末等を利用して、図4に示すように、紙幣識別装置1毎に、更新用プログラムA1を復号化する許可コードD1を当該紙幣識別装置1の装置コードB1で暗号化して装置単位のPINコードC1を作成する。
【0069】
製造者側では、更新用プログラムA1の正規購入契約に応じて、暗号化した更新用プログラムA1を格納したSDカードを各正規購入者に配布する。更に、製造者側では、同正規購入者の使用する更新対象の紙幣識別装置1に対応した装置単位のPINコードC1を同正規購入者に付与する。
【0070】
正規購入者は、配布されたSDカードをSDカード挿入部11に挿入すると共に、操作部2Bを通じて、製造者側から付与された装置単位のPINコードC1を入力する。
【0071】
紙幣識別装置1内の制御用CPU15Cは、図5に示すように、確認コード作成部21を通じて、PINコードC1を当該紙幣識別装置1の装置コードB1で復号化して確認コードE1を作成する。
【0072】
制御用CPU15Cは、確認コードE1を作成すると、確認コードE1が許可コードD1に合致した場合、SDカードに格納した更新用プログラムA1を確認コードE1で復号化することで、利用可能な更新用プログラムA1を得る。
【0073】
制御用CPU15Cは、更新制御部23を通じて、復号化された更新用プログラムA1に基づき、識別制御用RAM14Bに格納された識別プログラムA1を更新する。
【0074】
その結果、正規購入者は、更新用プログラムの正規購入で付与された装置単位のPINコードを紙幣識別装置1に入力した場合、SDカードに格納した更新用プログラムA1を復号化して、この更新用プログラムA1に基づき、当該紙幣識別装置1内の識別プログラムを更新できる。
【0075】
例えば、図6に示すように、更新用プログラムA1を復号化する許可コードD1とし、当該紙幣識別装置1が装置コードB1の場合、装置コードB1に対応した装置単位のPINコードC1を付与し、装置コードB1*PINコードC1で確認コードE1を取得する。また、装置コードB4の場合、装置コードB4に対応した装置単位のPINコードC4を付与し、装置コードB4*PINコードC4で確認コードE4を取得する。つまり、紙幣識別装置1毎に装置コードが異なるため、装置単位のPINコードも夫々異なる。
【0076】
また、正規購入で付与された装置単位のPINコードC1を他の紙幣識別装置1(例えば、装置コードB2の紙幣識別装置1)に入力した場合、制御用CPU15Cは、PINコードC1を当該紙幣識別装置1の装置コードB2で復号化することで確認コードE2を得る。
【0077】
しかしながら、制御用CPU15Cは、確認コードE2を取得したとしても、PINコードC1が装置コードB2に対応していないため、確認コードE2が許可コードD1に合致せず、SDカードに格納した更新用プログラムA1を確認コードE2で復号化できない。
【0078】
その結果、正規購入で付与された装置単位のPINコードを他の紙幣識別装置1に使用したとしても、装置コードが異なるため、SDカードに格納した更新用プログラムを復号化することができないため、当該紙幣識別装置1内の識別プログラムを更新できないということになる。
【0079】
また、図6に示すように、更新用プログラムA1とはバージョン等が異なる更新用プログラムA2を復号化する許可コードD2とし、当該紙幣識別装置1が装置コードB4の場合、装置コードB4に対応した装置単位のPINコードC14を付与し、装置コードB4*PINコードC14で確認コードE14を取得する。つまり、更新用プログラム毎に許可コードが異なるため、装置単位のPINコードも夫々異なる。
【0080】
本実施例では、装置単位のPINコード及び装置コードを利用して確認コードを作成し、この確認コードが許可コードに合致した場合、この更新用プログラムを利用可能にし、この更新用プログラムに基づき識別プログラムを更新する。その結果、本実施例では、PINコードを装置単位で付与することになるため、他の紙幣識別装置1に同一PINコードを入力したとしても、装置コードが異なるため、許可コードに合致した確認コードを作成することができず、紙幣識別装置1間相互間の更新用プログラムの不正利用を確実に防止できる。
【0081】
また、紙幣識別装置1側の顧客は、更新用プログラムを正規購入したことで付与される装置単位のPINコードを利用して識別プログラムを更新できる。更に、紙幣識別装置1の製造者は、更新用プログラムを正規購入した顧客に対して装置単位でPINコードを提供することになるため、紙幣識別装置1間相互の更新用プログラムの不正利用を確実に防止しながら、その開発コストの回収を図ることができる。
【0082】
本実施例では、確認コードが許可コードに合致しなかった場合、この更新用プログラムの利用を不可とする。その結果、本実施例では、入力したPINコードが正しくない場合、確認コードが許可コードに合致しないことになるため、更新用プログラムの不正利用を確実に防止できる。
【0083】
本実施例では、確認コードが許可コードに合致した場合、当該確認コードに基づき更新用プログラムを復号化して当該更新用プログラムの利用を可能にする。その結果、本実施例では、暗号化した更新用プログラムを確認コードで復号化できる。
【0084】
本実施例では、SDカードを通じて更新用プログラムを取得し、この更新用プログラムに基づき、紙幣識別部6の識別プログラムを更新できる。
【0085】
本実施例では、更新用プログラム更新対象の紙幣識別装置1の装置コード及び、当該更新用プログラムの利用を可能にする許可コードに基づき、更新用プログラム更新対象の紙幣識別装置1に付与するPINコードを作成する。その結果、紙幣識別装置1の製造者は、更新用プログラムを正規購入した顧客に対して装置単位でPINコードを提供することになるため、紙幣識別装置1間相互の更新用プログラムの不正利用を確実に防止しながら、その開発コストの回収を図ることができる。
【0086】
本実施例では、更新用プログラムの利用を可能にする許可条件を共通の許可コードにすることで、更新用プログラム単位の許可コードを管理する負担を大幅に軽減できる。
【0087】
本実施例では、暗号化された更新用プログラムを復号化する許可コードを更新用プログラム共通の許可コードで設定し、更新対象の紙幣識別装置1の装置単位でPINコードを作成することになる。その結果、本実施例では、同一更新用プログラムで共通の許可コードに設定することで、紙幣識別装置1毎に装置コードが異なるため、装置単位のPINコードも夫々異なることから、紙幣識別装置1間相互の更新用プログラムの不正利用を確実に防止できる。
【0088】
更に、本実施例では、更新用プログラム毎に許可コードが異なる場合でも、紙幣識別装置1毎に装置コードも異なることから、装置単位のPINコードも夫々異なるため、紙幣識別装置1間相互の更新用プログラムの不正利用を確実に防止できる。
【0089】
また、本実施例では、更新用プログラム正規購入時に付与された装置単位のPINコードを更新対象の紙幣識別装置1の装置コードで復号化して確認コードを作成する。その結果、更新用プログラム正規購入時に付与された装置単位のPINコード及び更新対象の紙幣識別装置1の装置コードを利用して確認コードを作成することになるため、紙幣識別装置1間相互の更新用プログラムの不正利用を確実に防止できる。しかも、確認コード作成に利用する装置コードは顧客に対して隠匿したコードであるため、確認コードを作成するには極めて困難である。
【0090】
また、本実施例では、暗号化した更新用プログラムをSDカードに格納し、この更新用プログラムを復号化する確認コードを作成するのに、装置単位の装置コード及びPINコードを利用することになるが、SDカードに不正利用を防止するための余計な細工をする必要がないため、SDカードの製造負担を軽減できる。
【0091】
尚、本実施例では、更新用プログラムを許可コードで暗号化又は復号化するようにしたが、更新用プログラムと一緒に許可コードを記憶しておき、確認コードが許可コードに合致した場合、SDカードに格納した更新用プログラムを展開可能にしても良く、同様の効果が得られることは言うまでもない。
【0092】
また、本実施例では、SDカードから更新用プログラムを取得するようにしたが、更新用プログラムを管理する管理サーバに対して紙幣識別装置1を通信接続し、PINコード及び装置コードに基づき作成した確認コードが許可コードに合致した場合、この管理サーバから更新用プログラムを紙幣識別装置1にダウンロードできるようにしても良く、同様の効果が得られることは言うまでもない。
【0093】
また、本実施例では、更新用プログラムの正規購入契約に応じて装置単位のPINコードを正規購入者に付与するようにしたが、例えば、更新対象の紙幣識別装置1と管理サーバとを通信接続し、当該管理サーバから更新対象の紙幣識別装置1にオンライン上でPINコードを通知するようにしても、同様の効果が得られることは言うまでもない。
【0094】
また、管理サーバから更新対象の紙幣識別装置1にオンライン上でPINコードを通知した場合、本実施例のようにPINコードを手入力するのではなく、PINコードを自動入力するようにしても、同様の効果が得られることは言うまでもない。
【0095】
また、本実施例では、装置コードとして顧客に対して隠匿性のあるコードを利用したが、顧客に対する隠匿性はないが、紙幣識別装置1固有の製造番号を装置コードとして利用し、これら装置単位の装置コード及びPINコードを利用したとしても、紙幣識別装置1間相互の更新用プログラムの不正利用を確実に防止することができる。
【0096】
また、上記実施例においては、紙幣を識別する機能を備えた紙幣識別装置1を例に挙げて説明したが、硬貨を識別する機能を備えた装置、更には、紙幣及び硬貨両方を識別する機能を備えた装置であっても、同様の効果が得られることは言うまでもない。
【0097】
以上、上記実施例について説明したが、本実施例によって本願の技術的思想の範囲が限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載した技術的思想の範囲を逸脱しない限り、各種様々な実施例が実施可能であることは言うまでもない。また、本実施例に記載した効果は、これに限定されるものではない。
【0098】
また、本実施例で説明した各種処理の内、自動的に行われるものとして説明した処理の全部又は一部を手動で行うことも可能であることは勿論のこと、その逆に、手動で行われるものとして説明した処理の全部又は一部を自動で行うことも可能であることは言うまでもない。また、本実施例で説明した処理手順、制御手順、具体的名称、各種データやパラメータを含む情報についても、特記した場合を除き、適宜変更可能であることは言うまでもない。
【0099】
また、図示した各装置の各構成要素は機能概念的に記載したものであって、必ずしも物理的に図示のように構成されるものではなく、その各装置の具体的な態様は図示のものに限縮されるものでは到底ないことは言うまでもない。
【0100】
さらに、各装置で行われる各種処理機能は、CPU(Central Processing Unit)、(又はMPU(Micro Processing Unit)、MCU(Micro Controller Unit)等のマイクロ・コンピュータ)上、又は同CPU(又はMPU、MCU等のマイクロ・コンピュータ)で解析実行するプログラム上、又はワイヤードロジックによるハードウェア上で、その全部又は任意の一部を実行するようにしても良いことは言うまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0101】
本発明の貨幣識別装置のプログラム更新システム及び貨幣識別装置のプログラム更新方法では、暗証コードを装置単位で付与することになるため、他の貨幣識別装置に同一暗証コードを入力したとしても、装置コードが異なるため、許可条件に合致した確認コードを作成することができず、貨幣識別装置間相互の更新用プログラムの不正利用を確実に防止できるため、例えば、搬送紙幣を識別し、その識別結果に基づき搬送紙幣を集積する紙幣識別装置等に有用である。
【符号の説明】
【0102】
1 紙幣識別装置
2B 操作部
6 紙幣識別部
21 確認コード作成部
22 プログラム復号部
23 更新制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
識別プログラムに基づき、貨幣を識別する貨幣識別部と、
装置本体毎に付与された暗証コードを入力する入力部と、
前記入力部で入力された暗証コード及び、前記装置本体を特定する装置コードに基づき、所定アルゴリズムで確認コードを作成する確認コード作成部と、
前記確認コード作成部にて作成した前記確認コードが許可条件に合致した場合、この更新用プログラムの利用を可能にし、この更新用プログラムに基づき、前記貨幣識別部の識別プログラムを更新する更新制御部と
を有することを特徴とする貨幣識別装置のプログラム更新システム。
【請求項2】
前記更新制御部は、
前記確認コードが前記許可条件に合致しなかった場合、この更新用プログラムの利用を不可とすることを特徴とする請求項1記載の貨幣識別装置のプログラム更新システム。
【請求項3】
前記更新制御部は、
前記確認コードが前記許可条件に合致した場合、当該確認コードに基づき前記更新用プログラムを復号化して当該更新用プログラムの利用を可能にする復号部を有することを特徴とする請求項1又は2記載の貨幣識別装置のプログラム更新システム。
【請求項4】
前記許可条件は、
前記更新用プログラムと一緒に記憶されていることを特徴とする請求項1又は2記載の貨幣識別装置のプログラム更新システム。
【請求項5】
前記更新制御部は、
前記更新用プログラムを格納した記録媒体の挿入動作に応じて、当該記録媒体に格納した前記更新用プログラムを読み出し、読み出した更新用プログラムに基づき、前記貨幣識別装置の識別プログラムを更新することを特徴とする請求項1〜4の何れか一項に記載の貨幣識別装置のプログラム更新システム。
【請求項6】
前記更新制御部は、
前記更新用プログラムを管理した管理装置との通信接続動作に応じて、前記管理装置から前記更新用プログラムを受信し、受信した更新用プログラムに基づき、前記貨幣識別装置の識別プログラムを更新することを特徴とする請求項1〜4の何れか一項に記載の貨幣識別装置のプログラム更新システム。
【請求項7】
前記更新用プログラム更新対象の貨幣識別装置本体の前記装置コード及び、当該更新用プログラムの利用を可能にする前記許可条件に基づき、前記所定アルゴリズムで、前記更新用プログラム更新対象の貨幣識別装置に付与する前記暗証コードを作成する暗証コード作成部を有することを特徴とする請求項1〜6の何れか一項に記載の貨幣識別装置のプログラム更新システム。
【請求項8】
前記許可条件は、
当該更新用プログラムの利用を可能にする共通の許可コードであることを特徴とする請求項1〜7の何れか一項に記載の貨幣識別装置のプログラム更新システム。
【請求項9】
識別プログラムに基づき、貨幣を識別する貨幣識別装置のプログラム更新方法であって、
装置本体毎に付与された暗証コードを入力する入力ステップと、
入力された暗証コード及び、前記装置本体を特定する装置コードに基づき、所定アルゴリズムで確認コードを作成する確認コード作成ステップと、
作成した確認コードが許可条件に合致した場合、この更新用プログラムの利用を可能にし、この更新用プログラムに基づき、前記識別プログラムを更新する更新制御ステップと
を含むことを特徴とする貨幣識別装置のプログラム更新方法。
【請求項10】
前記更新用プログラム更新対象の貨幣識別装置本体の装置コード及び、当該更新用プログラムの利用を許可する許可条件に基づき、前記所定アルゴリズムで、前記更新用プログラム更新対象の貨幣識別装置に付与する暗証コードを作成する暗証コード作成ステップを含むことを特徴とする請求項9記載の貨幣識別装置のプログラム更新方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−14080(P2011−14080A)
【公開日】平成23年1月20日(2011.1.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−159847(P2009−159847)
【出願日】平成21年7月6日(2009.7.6)
【出願人】(000001432)グローリー株式会社 (1,344)
【Fターム(参考)】