説明

貨物用車両のキャビン前面構造

【課題】車両の前面を保護し、フロントバンパ上での作業が安全に行え、更に空調用の熱交換器に十分な冷却風が導入され、キャビンにおける快適な空調環境が得られる貨物用車両のキャビン前面構造を提供する。
【解決手段】貨物用の車両10に設けられたフロントバンパ24と、フロントバンパ24の上部に設けられたフロントパネル22と、フロントバンパ24とフロントパネル22との間に、間隙aを有し、フロントバンパ24上に足載せ部38を、キャビン12の前面の横幅方向全体に渡り形成するフロントガード26と、フロントバンパ24の後方を通り、フロントバンパ24の左右両側の少なくとも一方の端部から上方に延び、フロントガード26の下縁を越えた位置でキャビン12の幅方向外方に湾曲して制御装置に接続されるハーネスと、を備えて構成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、貨物用車両のフロントバンパとフロントガードとを含む、貨物用車両のキャビン前面構造に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に貨物用車両は、前方に運転室となるキャビンを備え、キャビンの前面にフロントバンパを設け、車両前面の保護を図っている。フロントバンパの後方には、例えばラジエータやインタークーラなどの熱交換器やキャビン空調用の熱交換器等が設けられ、導風ファンにより熱交換器の前面から外気を引き込み、熱交換器を通過させて各冷媒を冷却している。
【0003】
一方、総輪駆動の貨物用車両においては、前輪に設けられた駆動機構等により、後輪駆動の貨物用車両よりキャビンが高い位置に設けられる。そのため、フロントバンパとキャビンとの間が後輪駆動の貨物車両より広くなる。その箇所を空けたままであると、前方から飛び込んでくる小石や枝などで内部機構に損傷を生じさせるおそれがあるため、フロントバンパとキャビンとの間にフロントガードを設けて空隙を塞ぎ、空隙の後方に設けられている内部機構の保護を図っている。
【0004】
又、貨物用車両は、フロントバンパの上縁に足を載せる足載せ部が適宜設けてあり、フロントウィンドガラス(前面風防ガラス)を清掃したり、フロントウィンドガラスの払拭機構等を点検整備等する際に、足載せ部に作業者が載って作業が行えるようにしている。
【0005】
又、特許文献1には、車両の前方を保護するガードバーの取付構造の発明が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】実開平5−19066号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら従来、総輪駆動の貨物用車両においては、制御装置に接続されるハーネス(電線束)がフロントバンパの後方を通ってキャビンの左右側方に引き回されており、足載せ部をフロントバンパの左右両側に形成すると、足載せ部からハーネスが露出してハーネス等キャビン内側に設けられている内部機構の保護が十分になされなくなることがあった。そのため、車両の中央部分のみに足載せ部を形成し、バンパの左右両側には足載せ部が形成されていなかった。
【0008】
したがって、フロントバンパでの作業者の立ち位置に制約が生じ、フロントガラスの清掃や払拭機構の点検整備等の、キャビンの前面全体に渡る作業において、作業者に無理な姿勢を強いて、安全に作業ができない場合が考えられた。
【0009】
又、フロントガードによりフロントバンパとキャビンとの間が閉塞され、車両前面に空隙が少なくなり、特に、フロントバンパの後方に設けられている空調用の熱交換器への通風性が低下し、キャビンにおいて十分な空調効果が得られないことが考えられた。
【0010】
本発明は前記課題を解決し、車両の前面を保護し、フロントバンパ上での作業が安全に行え、更に空調用の熱交換器に十分な冷却風が導入され、キャビンにおける快適な空調環境が得られる貨物用車両のキャビン前面構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記課題を解決し、目的を達成するため、本発明では、貨物用車両のキャビン前面構造が次のように構成されている。
【0012】
貨物用車両の前面に設けられたフロントバンパと、貨物用車両のキャビンの前面で、フロントバンパの上方に設けられたフロントパネルと、フロントバンパとフロントパネルとの間に設けられ、フロントバンパとの間に間隙を有し、フロントバンパ上に足を載せる足載せ部を、キャビンの前面の横幅方向全体に渡り形成するフロントガードと、フロントバンパの後方を通り、フロントバンパの左右両側の少なくとも一方の端部から上方に、フロントガードの下縁を越える位置まで延び、かつフロントガードの下縁を越えた位置でキャビンの幅方向外方に湾曲して制御装置に接続されるハーネスと、を備えて構成した。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、車両の前面を保護し、フロントバンパ上での作業が安全に行え、更に空調用の熱交換器に十分な冷却風が導入され、キャビンにおいて快適な空調環境が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の一実施形態にかかる貨物用車両のキャビン前面構造を示す斜視図。
【図2】同貨物用車両のキャビン前面構造を示す正面図。
【図3】同貨物用車両のキャビン前面構造の一部を示す部分正面図。
【図4】同貨物用車両のキャビン前面構造の一部を示す側断面図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明にかかる貨物用車両のキャビン前面構造の一実施形態について説明する。図1は、本発明の一実施形態にかかる貨物用車両のキャビン前面構造を示す斜視図、図2は、同キャビン前面構造を示す正面図、図3は、同キャビン前面構造の一部を示す部分正面図である。
【0016】
貨物用車両としての車両10の前面を、図1、図2に示す。車両10は、前方にキャビン12を備え、キャビン12の後方に荷台14を有し、車両10の前方には前輪16が、荷台14の下部には後輪が設けられている。車両10は、前輪16と後輪のいずれも駆動可能な総輪駆動車である。
【0017】
車両10の下部にはフレーム30(図3参照。)が前端から車両10の後端まで連続して設けられている。フレーム30は、いわゆるラダー型といわれるフレームで、サイドフレーム32と、左右のサイドフレーム32間に車幅方向に渡されたクロスメンバ34などから構成されている。サイドフレーム32は、概ね断面コの字状で、コの字状の開口面を向かい合わせにして、車両10の前後方向に2本平行に設けられている。
【0018】
フレーム30には、図2に示すように、駆動機構としてのエンジン18と、エンジン18の熱交換器としてのラジエータ及びインタークーラ42等が据え付けられている。エンジン18は、例えばインタークーラ付きターボチャージドディーゼルエンジンであり、エンジン18から、前輪16及び後輪に駆動軸が連結可能に延びている。
【0019】
キャビン12は、前輪16の上部に設けられ、内部に運転席を有し、前面にフロントガラス20、フロントパネル22、フロントバンパ24、フロントガード26などを備えている。キャビン12の左右側面には、それぞれドア28が開閉自在に設けられている。
【0020】
フロントガラス20は、風防ガラスであり、フロントガラス20の下部にフロントパネル22が設けられている。フロントパネル22は、キャビン12の前面で、フロントガラス20の下部からキャビン12の下端までを指し、フロントパネル22と言うときは、キャビン12の内部機構の点検、整備等のため、キャビン12に開閉自在に取り付けられている開閉蓋23及びライトベーゼル29が設けられているグリル27を含むものとする。ここで、グリル27は、ライトベーゼル29を備え、ライトベーゼル29には、標識灯・運転灯、ターンランプ、ポジションランプ等からなるコンビネーションランプ25が設けられている。
【0021】
フロントバンパ24は、キャビン12の左右の横幅とほぼ等しい横幅を有し、ブラケットを介してフレーム30に固定されている。フロントバンパ24には、後方に、図3に示すようにハーネス36が取り付けられている。
【0022】
ハーネス36は、信号線や電力線を束ねた電線束で、フロントバンパ24の後方にフロントバンパ24に沿わせて取り付けられ、フロントバンパ24の左右の端部から上方に延び、フロントガード26の下縁を越えて湾曲し、更にキャビン12の下面に沿って外方に延び、制御装置に接続している。このように、ハーネス36は、フロントバンパ24からフロントガード26の下縁を越えた位置でキャビン12の下面に当たり車両外方に屈曲している。
【0023】
フロントバンパ24の上部には、フロントガード26が設けられている。フロントガード26は、フロントバンパ24とフロントパネル22の下端との間に形成された空隙を覆うに十分な高さ幅と、フロントバンパ24とほぼ等しい横幅を有し、かつ、フロントバンパ24との間に所定の間隙aを有して取り付けてある。フロントバンパ24との間の間隙aは、フロントバンパ24の横幅全体に渡って形成してあり、これにより、フロントバンパ24の上面ほぼ全体に作業者が足を載せる足載せ部38が形成されている。
【0024】
又、図2に示すようにラジエータ及びインタークーラ42は、フロントガード26とフロントバンパ24の後方に当たる位置に前後に重ねて設けられている。更に、図3に示すように車両10の左端(図では、向かって右)で、フロントバンパ24の後方に、キャビン12の空調機構の熱交換器(コンデンサ)44が取り付けられている。
【0025】
次に、上記本実施形態にかかる貨物用車両のキャビン前面構造の作用、効果について説明する。
【0026】
フロントガード26が、フロントバンパ24とフロントパネル22の下端との間に設けられ、それらの空間を覆っているので、走行中に前方から小石等が飛んできても、キャビン12の内部に侵入することはなく、キャビン12の内部機構が保護される。
【0027】
フロントバンパ24の上部に、車両10の中央を含め、左右端部まで足載せ部38が形成されているので、キャビン12の前面の作業において、フロントバンパ24の全体のいずれの位置にも作業者が立つことができ、作業者は無理な体勢をとる必要がなくなり、安全に作業できる。
【0028】
足載せ部38により、フロントバンパ24とフロントガード26との間に空隙が形成されるので、フロントバンパ24の後方に設置されているラジエータやインタークーラ42などの熱交換器へ十分な冷却風Wを流通させることができる。
【0029】
更に、足載せ部38がフロントバンパ24の左右端部に形成されているので、図4に示すようにフロントバンパ24の左右端部いずれかの後方に設けられているキャビン12の空調装置用の熱交換器44へ冷却風Wを十分に供給でき、キャビン12内の空調環境を良好にできる。
【0030】
フロントバンパ24の後方に設けられているハーネス36を、フロントガード26の後方を通りフロントガード26の下縁を越えた位置でキャビン12の外方に湾曲させているので、制御装置用のハーネス36が、足載せ部38からキャビン12の前面に大きく露出せず、車両10の前方からの飛び石などによるハーネス36の損傷を防止することができる。
【0031】
フロントガード26とフロントバンパ24を個別に成形して取り付けられているので、キャビン12の前面形状が異なる他の車両にも、これらフロントガード26やフロントバンパ24を適用し、部品の共通化を図ることができる。
【0032】
尚、本発明は、前記実施形態に限定されるものではなく、この他種々の実施形態や変形が可能である。
【産業上の利用可能性】
【0033】
本発明は、フロントバンパとキャビンとの間にフロントガードを備えた、貨物用車両のキャビン前面構造に用いられる。
【符号の説明】
【0034】
10…車両、12…キャビン、16…前輪、18…エンジン、22…フロントパネル、24…フロントバンパ、26…フロントガード、27…グリル、30…フレーム、32…サイドフレーム、36…ハーネス、38…足載せ部、42…インタークーラ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
貨物用車両の前面に設けられたフロントバンパと、
前記貨物用車両のキャビンの前面で、前記フロントバンパの上方に設けられたフロントパネルと、
前記フロントバンパと前記フロントパネルとの間に設けられ、前記フロントバンパとの間に間隙を有し、該フロントバンパ上に足を載せる足載せ部を、前記キャビンの前面の横幅方向全体に渡り形成するフロントガードと、
前記フロントバンパの後方を通り、前記フロントバンパの左右両側の少なくとも一方の端部から上方に、前記フロントガードの下縁を越える位置まで延び、前記フロントガードの下縁を越えた位置で、前記キャビンの幅方向外方に湾曲して制御装置に接続されるハーネスと、を備えたことを特徴とする貨物用車両のキャビン前面構造。
【請求項2】
前記貨物用車両は、駆動機構の駆動力が前記貨物用車両の全輪に伝達される総輪駆動の貨物用車両であることを特徴とする請求項1に記載の貨物用車両のキャビン前面構造。
【請求項3】
前記フロントバンパの左右いずれか一方の端部の後方に、前記キャビン内の空調を行う空調装置の熱交換器が設けられていることを特徴とする請求項1又は2に記載の貨物用車両のキャビン前面構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−82244(P2013−82244A)
【公開日】平成25年5月9日(2013.5.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−221780(P2011−221780)
【出願日】平成23年10月6日(2011.10.6)
【出願人】(598051819)ダイムラー・アクチェンゲゼルシャフト (1,147)
【氏名又は名称原語表記】Daimler AG
【住所又は居所原語表記】Mercedesstrasse 137,70327 Stuttgart,Deutschland