説明

貨物用車両の導風装置

【課題】取付強度が高く、かつ容易に取付けられる貨物用車両のキャブルーフに取付けられる導風装置を提供する。
【解決手段】導風板12を取り付けるフレーム14に、取付部材46を用いた。取付部材46は、基部と、基部の両側に立ち上げられた右および左の側壁と、各側壁の上部に左右外方に拡がるように取り付けられた取付片とから形成した。そして基部を車両側に固定し、取付片を導風板12の内面に固定して、導風板12を車両に取り付ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、貨物用車両のキャブ上部に設けられる導風装置に関する。
【背景技術】
【0002】
導風装置は、貨物用車両などのキャブルーフに、キャブルーフとキャブ後方に設けられた荷箱との間を斜めに設けられ、走行風を整流し、貨物用車両の空気抵抗を低減させる装置である。
【0003】
一般に導風装置は、導風板と導風板を支持するフレームから構成されている。導風板は、例えばFRP(繊維強化樹脂)などで形成された、通常三角台形状に形成された板状の部材である。導風板は、上板と側板から構成され、前方が狭く、後方に行くに従い広く、また高さが高くなるように形成されている。
【0004】
フレームは、例えば特許文献1に記載されているようにキャブルーフの前方に取り付けられる前部フレームと後方に取り付けられる後部フレームとを備え、それぞれに所定の高さの支持部を有し、導風板を導風板の内側からねじなどで固定している。前部フレームと後部フレームは、それぞれ左右端部に設けられている脚部を、キャブルーフの上面に設けられている取付部にねじで固定されている。また前部フレームと後部フレームは、2本のほぼ平行な連結部材により連結されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】実公平6−44775号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら従来の導風装置は、導風板を固定しているフレームの取付片の面積が十分でなく、走行中に取付片にかかる単位面積当たりの風圧が大きくなっていた。
【0007】
また取付片は、フレームの端部や支持部の所定位置に固定して取り付けられている。そのため、導風板やフレームにゆがみなどが生じていると、フレーム側のねじ孔と導風板側のねじ孔が一致しなかったり、ねじ孔にボルトが通らないなどの不都合が発生し、導風板にフレームを固定する作業に手間取ることがあった。更に、取付片の位置が固定されていることから、各取付片における組み付け状態を均等にさせることが難しい。そのため、導風板にかかる風圧が各取付片に均一に分散されず、特定の取付片に応力が集中して、損傷しやすくなるということが考えられている。
【0008】
本発明は上記課題を解決し、各取付片において強度が十分に保持でき、しかも取付作業が容易な導風装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、貨物用車両の導風装置を次のように構成した。
導風装置は、導風板と、導風板を支持するフレームとから構成されている。フレームは、キャブルーフの前方に取り付けられ、導風板の前部を支持する前部フレームと、キャブルーフの後方に取り付けられ、導風板の後部を支持する後部フレームとを備えている。
【0010】
前部フレームは、キャブルーフに固定される基部と、基部の左右両側から立ち上げられた右縦壁及び左縦壁と、左右の縦壁のそれぞれの上端に、それぞれ左方および右方に広がるように設けられた右取付片および左取付片とから構成された取付部材を備えている。そして、右取付片および左取付片を導風板の内面に取り付けて、導風板をフレームに固定している。
【0011】
また連続した1枚の金属板から、取付部材、すなわち基部と右縦壁と左縦壁と右取付片と左取付片とを形成した。前部フレームの左右に取付部材を一対設けて構成した。
【発明の効果】
【0012】
導風板は、取付部材の取付片を介して固定されることから、従来より広い面積で固定され、取付片に接する導風板の単位面積あたりの応力を小さくできる。取付部材が、適宜変形することから、導風板にかかる圧力が各取付片に分散され、特定の取付片に応力が集中することがない。
【0013】
取付片の取付位置を変位させることにより、導風板やフレームに成形上のゆがみなどが生じていても、容易に導風板をフレームに固定できる。また、取付片を変形させたり、異なる取付部材を用いることにより、導風板を異なる角度に取り付けたり、形状が異なる導風板を容易に取り付けることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の一実施形態にかかる導風装置を示す分解斜視図である。
【図2】同導風装置の取付部材を示す斜視図である。
【図3】同導風装置を備えた車両の一部を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明にかかる貨物用車両の導風装置の一実施形態について説明する。
図1に、導風装置10を示す。導風装置10は、導風板12とフレーム14からなり、図3に示すように、車両16のキャブルーフ18に設けられている。以下、車両16の前進方向を前方とし、その逆を後方とし、それを基準に左右を定め、更に重力の方向を下方、その逆を上方として説明する。車両16は、前部にキャブ20を有し、キャブ20の後方に荷箱22が装着された貨物用の車両である。キャブ20には、運転席24が設けられ、キャブ20の下方には前輪26が取り付けられている。
【0016】
導風板12は、例えばFRP(繊維強化樹脂)製で、図1に示すように上板28と側板30から構成されている。上板28は、若干上に凸に湾曲したほぼ平板状で、前方は高さが低く、横幅が狭く、後方になるにつれ高さが高く、幅が広くなるように形成されている。側板30はほぼ三角形で、上板28の左右にそれぞれ、上板28の下方を覆うように設けられている。尚導風板12は、FRP製に限らず金属製、その他でもよい。
【0017】
フレーム14は、前部フレーム40と後部フレーム42からなり、前部フレーム40と後部フレーム42は連結竿41により連結されている。前部フレーム40は、前主フレーム44と、取付部材46から形成されている。前主フレーム44は棒状部材で、前主フレーム44の左右に取付部材46が一対、左右対称に設けられている。
【0018】
図2に、前主フレーム44の左側に取り付けられる取付部材46を示す。右側に取り付けられる取付部材46は、左側に取り付けられる取付部材46と左右対称であり、説明を省略する。尚、各部の左右は車両16の左右に従っているため、図では左右が逆に記されている。
【0019】
左の取付部材46は、基部50と、基部50の左右に立ち上げられた左側壁部52および右側壁部54と、左側壁部52の上端に設けられた左取付片56と、右側壁部54の上端に設けられた右取付片58からなり、例えば1枚の金属板を屈曲させて形成されている。
【0020】
基部50は平板状で、連結竿41の前端に溶接により固定されている。尚、ねじ止め、その他の締結手段で固定されていてもよい。基部50には、ねじ孔51が設けられている。ねじ孔51は、キャブルーフ18に設けられている取付ねじ孔(図示せず。)に対応して形成されている。尚、ねじ孔51でなく、前主フレーム44の左右両端を左右に延長させ、その延長端等をキャブルーフ18に設けられている取付ねじ孔に取り付けるようにしてもよい。
【0021】
左側壁部52および右側壁部54は、基部50から鈍角な角度でそれぞれ左右の方向に設けられている。したがって、左側壁部52と右側壁部54の間が上部で開くように形成されている。
【0022】
左取付片56および右取付片58は、それぞれ左側壁部52および右側壁部54の上端から外方に広がるように設けられている。左取付片56および右取付片58は、フレーム14に導風板12を取り付けた際、導風板12の内面に沿うように、左側壁部52および右側壁部54から屈曲し、かつ各左取付片56と右取付片58の長手方向に沿って湾曲形成されている。
【0023】
後部フレーム42は、後主フレーム60と後主フレーム60に取り付けられた副フレーム62などから形成されている。後主フレーム60は、後主フレーム60の左右端部に取付台64を備え、取付台64を介してキャブルーフ18の取付ねじ孔(図示せず。)にねじ止めされる。
【0024】
副フレーム62は、後主フレーム60の右端部近傍に設けられ、後主フレーム60からほぼ垂直に取り付けられた縦フレーム66と縦フレーム66から水平方向に設けられた横フレーム68とから形成されている。副フレーム62は、車両16を正面から見たとき車両16の左側に設けられている。
【0025】
後主フレーム60の左端、縦フレーム66の上端、横フレーム68の右端には、それぞれ取付片70、72、74が設けられている。取付片70は、導風板12にフレーム14を取り付けた際、導風板12の左側壁の内側に位置するように配置されている。
【0026】
取付片72は、導風板12にフレーム14を取り付けた際、導風板12の上壁の内面に位置するように配置されている。取付片72は、導風板12にフレーム14を取り付けた際、導風板12の右側壁の内面に位置するように配置されている。尚、後部フレーム42は、従来と同様の構成のフレームであってもよい。
【0027】
次に、導風板12をフレーム14に取り付けた状態について説明する。
【0028】
導風板12は、FRPなどから所定の形状に形成してある。フレーム14は、導風板12の内部に配置し、左右の取付部材46の左右の取付片56、58をそれぞれ導風板12の前部の内面に、接着剤と、例えばガラス繊維に硬化性樹脂を含浸させたシート材などを用いて導風板12に取り付ける。
【0029】
更に、取付片70、72、74も、同様にして、接着剤と例えばガラス繊維に硬化性樹脂を含浸させたシート材などを用いて導風板12に取り付ける。導風板12の内側にフレーム14を取り付けたなら、車両16のキャブルーフ18に導風装置10を載せ、前部フレーム40の取付部材46のねじ孔51と後部フレーム42の取付台64のねじ孔にねじを通して、キャブルーフ18にフレーム14を固定する。
【0030】
以上述べたように、導風装置10によれば、前部フレーム40の取付部材46が、左右の側壁部52、54を介して左右の取付片56、58を有し、この左右の取付片56、58に導風板12を固定しているので、取付片の取付面積が従来と比較してほぼ2倍となり、取付片56等が受ける単位面積当たりの応力を小さくできる。
【0031】
左右の側壁部52、54の上端に左右の取付片56、58が設けられているので、左右の側壁部52、54等が弾性変形したり、撓むことにより、導風板12を柔軟に保持させることができる。したがって、導風板12に力が加えられたとき、左右の各側壁部52、54が適度に湾曲し、一部の取付片にのみ応力が集中して過大な加重が加えられることを防止できる。
【0032】
左右の側壁部52、54を適宜変形させることにより、導風板12やフレーム14の形状に若干のひずみやゆがみがあっても容易に取り付けることができる。更に左右の側壁部52、54を適宜屈曲させたり、あるいは取付部材46を変更することにより、導風板12を、キャブルーフ18に対する取付角度を変更して取り付けたり、異なる形状の導風板12を容易に取り付けることができる。
【産業上の利用可能性】
【0033】
本発明は、貨物用車両のキャブに取り付けられる導風装置に用いられる。
【符号の説明】
【0034】
10…導風装置 12…導風板 14…フレーム 16…車両 18…キャブルーフ 20…キャブ 22…荷箱 28…上板 30…側板 40…前部フレーム 41…連結竿 42…後部フレーム 44…前主フレーム 46…取付部材 50…基部 51…ねじ孔 52…左側壁部 54…右側壁部 56…左取付片 58…右取付片 60…後主フレーム 62…副フレーム 64…取付台 66…縦フレーム 68…横フレーム 70、72…取付片

【特許請求の範囲】
【請求項1】
導風板と該導風板を支持するフレームとからなり、車両のキャブルーフに取り付けて荷箱前面による空気抵抗を低減させる貨物用車両の導風装置において、
前記フレームに、前記車両側に固定される基部と、前記基部の右側に設けられた右縦壁と、前記基部の左側に設けられた左縦壁と、前記左縦壁と前記右縦壁のそれぞれの上端に設けられた右取付片および左取付片と、からなる取付部材を設け、
前記右取付片および前記左取付片を前記導風板の内面に固定させたことを特徴とする貨物用車両の導風装置。
【請求項2】
導風板と該導風板を支持するフレームとからなり、車両のキャブルーフに取り付けて荷箱前面による空気抵抗を低減させる貨物用車両の導風装置において、
前記フレームは、前記キャブルーフの前方に取り付けられる前部フレームと前記キャブルーフの後方に取り付けられる後部フレームとからなり、
前記前部フレームに、該前部フレームに固定される基部と、前記基部の右側に設けられた右縦壁と、前記基部の左側に設けられた左縦壁と、前記左縦壁と前記右縦壁のそれぞれの上端に設けられた右取付片および左取付片とからなる取付部材を、前記前部フレームの左右に一対設け、
前記導風板の前部内面に、前記取付部材の前記右取付片および前記左取付片を固定させたことを特徴とする貨物用車両の導風装置。
【請求項3】
前記取付部材は、前記基部、前記右縦壁、前記左縦壁、前記右取付片、および前記左取付片が、連続した金属板から形成され、かつ前記右縦壁と前記左縦壁を、前記右縦壁と前記左縦壁の上部が開くように前記基部に設けられていることを特徴とした請求項1または2に記載の貨物用車両の導風装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−136120(P2012−136120A)
【公開日】平成24年7月19日(2012.7.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−288869(P2010−288869)
【出願日】平成22年12月24日(2010.12.24)
【出願人】(303002158)三菱ふそうトラック・バス株式会社 (1,037)