説明

貨物用車両

【課題】走行空気抵抗が増大せず、かつ美観を損ねることのない、吸気ダクトと導風板とを備えた貨物用車両を提供する。
【解決手段】外気に開放された吸引部38をキャブ12の上部に有し、キャブ12に設けられた内燃機関16に外気を導くキャブ12の後方に設けられた吸気ダクト26と、キャブ12の後方に設けられた荷箱14の上面とキャブ12の前部との間を斜めに連結するキャブ12の上方に設けられた導風板24とを備え、更に導風板24に形成された切欠き部32を通して導風板24の外方に吸引部38を、導風板24と同一面となるように露出させて貨物用車両10を構成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、キャブ上部に導風板を備え、かつ内燃機関へ外気を案内する吸気ダクトをキャブ後方に設けた貨物用車両に関する。
【0002】
吸気口に関する。
【背景技術】
【0003】
貨物用車両のキャブ上部に、導風板を設け、走行中の空気抵抗を低減させることが行われている。導風板は、例えばFRP(繊維強化樹脂)を用いて、前方が狭く、後方に行くに従い広く、また高さが高くなるように、上板と側板から三角台形状に形成されている。導風板は、キャブルーフ上に、キャブルーフとキャブ後方に設けられた荷箱との間に斜めに設けられ、前方からの走行風を整流して、走行中の空気抵抗を低減させている。
【0004】
またキャブの後方に荷箱などを備えた貨物用車両では、一般にキャブの下部にエンジン(内燃機関)を搭載している。内燃機関への燃焼用空気を、キャブの後方から導入させると、エンジンで暖められた外気を吸引し、エンジンの燃焼効率が低下することがある。そこで吸気ダクトをキャブの後方に設け、キャブの上方に設けられた開口部から、エンジンの排熱の影響を受けない外気を吸引することが行われている。また近年吸気ダクトを大型化させ、内燃機関への吸気抵抗を低減させることが行われている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−283919号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら吸気ダクトを大型化させると吸気ダクトに当たる走行風が増加し、空気抵抗の増大により車両の燃費などに影響を与えることが考慮される。また、導風板を備えた車両に、大型化した吸気ダクトを取り付けると、両者がそれぞれ個別に配置され、車両外観が整わなくなるという問題が生じていた。
【0007】
本発明は上記課題を解決し、キャブの上部に導風板と吸気ダクトの開口部とを設けた貨物用車両において、吸気ダクトの大型化による走行空気抵抗の増大を抑え、しかも車両の美観を損なうことのない貨物用車両を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、貨物用車両を次のように構成した。
キャブルーフに設けられた導風板には、導風板の左右いずれかの側壁に、切欠きを形成する。キャブの後方に、キャブの下方に搭載された内燃機関に燃焼用空気としての外気を案内する吸気ダクトを設ける。
【0009】
吸気ダクトの上端に、吸気ダクト内に外気を導入させる吸引部を設け、かかる吸引部を導風板の切欠きに合わせる。更に、吸気ダクトの吸引部の開口面は、吸気部を導風板に形成された切欠きに組み付けたとき、導風板と連続した同一面を構成するように形成する。
【発明の効果】
【0010】
貨物用車両は、吸気ダクトの開口面が、導風板に沿って設けられているので、吸気ダクトにより走行空気抵抗が増大しない。したがって、吸気ダクトを大型化させ、開口面積が拡大されても、走行空気抵抗増大による燃費の低下などを発生させない。
【0011】
吸気ダクトの開口面が導風板に沿って形成され、導風板や車両の外周部分から吸気ダクトが突出しないことから、車両の外観を連続させることができ、車両の美観が損なわれることがない。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の一実施形態にかかる貨物用車両を示す斜視図である。
【図2】同貨物用車両を示す斜視図である。
【図3】同貨物用車両に設けられる導風板を示す分解斜視図である。
【図4】同貨物用車両に設けられる吸気ダクトを示す正面図である。
【図5】同貨物用車両に設けられる吸気ダクトを示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明にかかる貨物用車両の一実施形態について説明する。
図1に、貨物用車両10を示す。貨物用車両10は、前方にキャブ12を備え、キャブ12の後方に荷箱14が設けられている。キャブ12には、図2に示すようにエンジン16が搭載されている。エンジン16は、ディーゼルエンジンなど内燃機関である。
【0014】
以下、貨物用車両10の前進方向を前方とし、その逆を後方とし、それを基準に左右を定め、更に重力の方向を下方、その逆を上方として説明する。キャブ12には、運転席が設けられ、キャブ12の下方には前輪20が取り付けられている。
【0015】
またキャブ12の天井板(キャブルーフ)22には、導風板24および吸気ダクト26が取り付けられている。導風板24を図3に示す。導風板24は、例えばFRP(繊維強化樹脂)製で、外板としての上板28と側板30から構成されている。上板28は、若干上に凸に湾曲したほぼ平板状で、前方は高さが低く、横幅が狭く、後方になるにつれ高さが高く、幅が広くなるように形成されている。側板30はほぼ三角形で、上板28の左右にそれぞれ、上板28の下方を覆うように設けられている。更に右の側板30(図では左となる。)には、後述する吸引部39に対応した切欠き部32が形成されている。尚導風板24は、FRP製に限らず金属製、その他でもよい。導風板24は、図3に示すフレーム34により、キャブルーフ22に取り付けられている。
【0016】
次にフレーム34について説明する。フレーム34は、前部フレーム40と後部フレーム42からなり、前部フレーム40と後部フレーム42は連結竿41により連結されている。前部フレーム40は、前主フレーム44と、取付部材46から形成されている。前主フレーム44は棒状部材で、前主フレーム44の左右に取付部材46が一対、対称に設けられている。
【0017】
左の取付部材46は、基部50と、基部50の左右に立ち上げられた左側壁部52および右側壁部54と、左側壁部52の上端に設けられた左取付片56と、右側壁部54の上端に設けられた右取付片58からなり、例えば1枚の金属板を屈曲させて形成されている。
【0018】
基部50は平板状で、連結竿41の前端に溶接あるいはねじ止めにより固定されている。基部50には、ねじ孔が、キャブルーフ22に設けられている取付ねじ孔(いずれも図示せず。)に対応して形成されている。左側壁部52および右側壁部54は、基部50から鈍角な角度でそれぞれ左右の方向に設けられている。したがって、左側壁部52と右側壁部54の間が上部で開くように形成されている。
【0019】
左取付片56および右取付片58は、それぞれ左側壁部52および右側壁部54の上端から外方に広がるように設けられている。左取付片56および右取付片58は、フレーム34に導風板24を取り付けた際、導風板24の内面に沿うように、左側壁部52および右側壁部54から屈曲し、かつ各左取付片56と右取付片58の長手方向に沿って湾曲形成されている。右の取付部材46は、左の取付部材46と左右対称であるので説明を省略する。
【0020】
後部フレーム42は、後主フレーム60と後主フレーム60に取り付けられた副フレーム62などから形成されている。後主フレーム60は、後主フレーム60の左右端部に取付台64を備え、取付台64を介してキャブルーフ22の取付ねじ孔(図示せず。)にねじ止めされる。
【0021】
副フレーム62は、後主フレーム60の右端部近傍に設けられ、後主フレーム60からほぼ垂直に取り付けられた縦フレーム66と縦フレーム66から水平方向に設けられた横フレーム68とから形成されている。副フレーム62は、貨物用車両10を正面から見たとき貨物用車両10の左側に設けられている。
【0022】
後主フレーム60の左端、縦フレーム66の上端、横フレーム68の右端には、それぞれ取付片70、72、74が設けられている。取付片70は、導風板24にフレーム34を取り付けた際、導風板24の左側壁の内側に位置するように配置されている。
【0023】
取付片72は、導風板24にフレーム34を取り付けた際、導風板24の上壁の内面に位置するように配置されている。取付片72は、導風板24にフレーム34を取り付けた際、導風板24の右側壁の内面に位置するように配置されている。尚、後部フレーム42は、従来と同様の構成のフレームであってもよい。導風板24とフレーム34は、接着剤と、例えばガラス繊維に硬化性樹脂を含浸させたシート材などを用いて取り付けられている。
【0024】
図4および図5に、吸気ダクト26を示す。吸気ダクト26は、筒体部36と筒体部36の上端に設けられた吸引部38から構成されている。吸気ダクト26は、図1および図2に示すようにキャブ12の後方右側に設けられている。吸気ダクト26の下端は、塵埃除去器37やエアクリーナ(図示せず。)などを介してエンジン16の吸気部(図示せず。)に接続されている。
【0025】
吸引部38は、周囲を壁体で囲まれた閉空間であり、後方に筒体部36の上端が連通し、壁体の一面が開口面39となっている。開口面39は、スリットや網などにより外部に連通しており、開口面39を通して外気を吸引部38内に導入可能となっている。吸引部38は、前述したように外形が導風板24の切欠き部32に対応して形成されている。また開口面39は、導風板24をキャブ12に取り付けると、導風板24の側板30と、ほぼ同一の面を構成するように形成されている。
【0026】
次に、導風板24と吸気ダクト26の組付け状態について説明する。吸気ダクト26をキャブ12に取り付けると、吸気ダクト26の下端が前述したようにエンジン16に接続され、かつ開口面39が、キャブルーフ22上で、開口面39を貨物用車両10の左側面に向けて配置される。
【0027】
また導風板24をキャブ12にフレーム34により取り付けると、図1や図2に示すように、切欠き部32が吸引部38に嵌合され、また上板28がキャブルーフ22の前端から荷箱14の前端上部までの間を斜めに連続させる。更に吸気ダクト26の開口面39は、導風板24の右の側板30とほぼ同一の面を形成する。したがって、貨物用車両10は、導風板24によりキャブ12と荷箱14間が斜めに連続し、走行風が整流されるとともに、吸気ダクト26により走行空気抵抗の増大を発生させることなく、吸気ダクト26の開口面39を通してエンジン16への燃焼用空気が効率よく吸引される。
【0028】
更に、開口面39は、導風板24と同一面を形成することから、導風板24の外形が連続し、貨物用車両10の美観が損なわれることがない。また、切欠き部32と吸引部38との間にシール剤などを塗布し、目止めを行うとより好ましい。
【0029】
尚、吸引部38の形状は上記形状に限るものではない。また吸気ダクト26は、車両10の左右いずれに設けられていてもよい。また開口面39は、導風板24の側板30と完全に同一面を形成していなくともよい。また、開口面39は、導風板24の側板30でなく、上板28、あるいは導風板24の前面など、その他の位置に設けられていてもよい。更に、切欠き部32により導風板24の強度が低下するおそれがある場合は、切欠き部32に対応した補強を、導風板24にリブなどを形成して行うことが好ましい。更に、吸気ダクト26は、キャブ12の後方でなく、側方に設けられていてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0030】
本発明は、導風板と吸気ダクトとを備えた貨物用車両に用いられる。
【符号の説明】
【0031】
10…貨物用車両 12…キャブ 14…荷箱 16…エンジン 22…キャブルーフ 24…導風板 26…吸気ダクト 28…上板 30…側板 32…切欠き部 36…筒体部 38…吸引部 39…開口面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
キャブの後方に設けられ、外気に開放された吸引部を前記キャブの上部に有し、前記キャブに設けられた内燃機関に前記外気を導く吸気ダクトと、
前記キャブの上方に設けられ、前記キャブの後方に設けられた荷箱上面と前記キャブの前部との間を斜めに連結する導風板と、を備え、
前記導風板に形成された切欠き部を通して、前記導風板の外方に前記吸引部を露出させたことを特徴とする貨物用車両。
【請求項2】
前記吸引部の開口面を、前記導風板と連続する面としたことを特徴とする請求項1に記載の貨物用車両。
【請求項3】
キャブと該キャブの後方に荷箱を備え、前記キャブの下方に走行用の内燃機関を搭載した貨物用車両において、
前記キャブの後方に、前記内燃機関に一端が接続され、他端が前記キャブの上部に設けられた吸引部を介して外部に開口した吸気ダクトを備え、
かつ前記キャブの上部に、該キャブの前部と前記荷箱の前端上部とを斜めに連続させる導風板を備え、
前記導風板に、前記吸引部を該導風板の外方に露出させる切欠き部を形成し、更に前記吸引部に形成された開口面と前記導風板の外板とを連続した面に形成するように、前記導風板と前記吸気ダクトとを設けたことを特徴とする貨物用車両。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−136121(P2012−136121A)
【公開日】平成24年7月19日(2012.7.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−288870(P2010−288870)
【出願日】平成22年12月24日(2010.12.24)
【出願人】(598051819)ダイムラー・アクチェンゲゼルシャフト (1,147)
【氏名又は名称原語表記】Daimler AG
【住所又は居所原語表記】Mercedesstrasse 137,70327 Stuttgart,Deutschland