説明

貨物自動車における荷台の開閉ゲート上部ヒンジ

【課題】 ヒンジピンの取付強度を高く維持しつつ上部ヒンジが建機や農機等と干渉しないようにする。
【解決手段】 2枚の支持プレート39,41上端にヒンジピン43が橋絡された第1ヒンジ構成部材33をテールゲート15上縁部の両端にそれぞれ外側方へ突出するように固設する。ヒンジピン43が係脱可能に係合する係合溝47を上端に有する第2ヒンジ構成部材35をテールゲート15の両側に隣接するサイドゲート13上縁部の各々の端部に固設する。第2ヒンジ構成部材35の係合溝47とでヒンジピン43を挟持する係合溝53を先端に有する操作ハンドル37を第2ヒンジ構成部材35の上端に上下方向に回動可能に設け、操作ハンドル37の下方への回動操作によりヒンジピン43の挟持状態を保持する一方、操作ハンドル37の上方への回動操作によりヒンジピン43の挟持状態を解除する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、貨物自動車の車台に搭載された荷台の上開きと下開きとに切り換え可能な開閉ゲートを下開き時に回動支持する上部ヒンジの改良に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、荷台を車体後方に向かって前下がりに傾動させて土砂等を排出(ダンプ)する排出作業と、建機や農機等を荷台に積み込んで運搬する運搬作業とを兼用したダンプ車が開示されている。このダンプ車では、荷台のテールゲートが、建機や農機等の積み降ろし時には下部ヒンジを支点に上方から下方に回動して上開きする一方、土砂等を排出するダンプ時には上部ヒンジを支点に下方から上方に回動して下開きするようになっている。これら上部ヒンジ及び下部ヒンジは共に、テールゲートを上開きと下開きとに切り換える必要があることから、2つの部材に分離可能に構成されている。
【0003】
上記の特許文献1の上部ヒンジは、テールゲート上縁部の車幅方向両端にそれぞれ固設された第1ヒンジ構成部材と、両サイドゲート上縁部の車体後端にそれぞれ固設された第2ヒンジ構成部材と、この第2ヒンジ構成部材上端に上下方向に回動可能に設けられた操作ハンドルとで構成されている。そして、上記操作ハンドルの下方への回動操作により、上記第2ヒンジ構成部材上端の係合溝と上記操作ハンドル先端の係合溝とで、上記第1ヒンジ構成部材上端のヒンジピンの挟持状態を保持する一方、上記操作ハンドルの上方への回動操作により、上記ヒンジピンの挟持状態を解除するようになっている。
【特許文献1】実用新案登録第2556543号公報(第2頁、図1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記の特許文献1の上部ヒンジを構成する第1ヒンジ構成部材は、支持ブラケット上端にヒンジピンが車体外側方に向かって突設された片持ち支持であるため、上記支持ブラケットをテールゲートの車幅方向内側に延設してヒンジピンの取付強度を保障している。
【0005】
しかし、このように、支持ブラケットをテールゲートの車幅方向内側に延設した構造では、建機や農機等の積み降ろし時に荷台後端を接地させてテールゲートを上開きすると、建機や農機等がテールゲートを通過する際に支持ブラケットに乗り上げて支持ブラケットが変形したり損傷し、ヒンジ機能に支障を来すおそれがある。さりとて、支持ブラケットの車幅方向内側への延出量を少なくすると、ヒンジピンの取付強度が低下する。
【0006】
この発明はかかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、ヒンジピンの取付強度を高く維持しつつ上部ヒンジが建機や農機等と干渉しないようにすることである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するため、この発明は、ヒンジピンを開閉ゲートの外側方で両持ち支持にしたことを特徴とする。
【0008】
具体的には、この発明は、床板とこの床板の外周全体に亘って立設された縦板とからなる荷台が車台に搭載された貨物自動車において、上記荷台の縦板の一部を構成し、上方から下方に回動して上開きする一方、下方から上方に回動して下開きする開閉ゲートを下開き時に回動支持する上部ヒンジを対象とし、次のような解決手段を講じた。
【0009】
すなわち、請求項1に記載の発明は、上記開閉ゲート上縁部の両端にそれぞれ外側方へ突出するように固設され、2枚の支持プレート上端にヒンジピンが橋絡された第1ヒンジ構成部材と、上記開閉ゲートの両側に隣接する縦板上縁部の各々の端部に固設され、上記第1ヒンジ構成部材のヒンジピンが係脱可能に係合する係合溝を上端に有する第2ヒンジ構成部材と、この第2ヒンジ構成部材の上端に上下方向に回動可能に設けられ、第2ヒンジ構成部材の係合溝とで上記ヒンジピンを挟持する係合溝を先端に有し、下方への回動操作によりヒンジピンの挟持状態を保持する一方、上方への回動操作によりヒンジピンの挟持状態を解除する操作ハンドルとで構成されていることを特徴とする。
【0010】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、操作ハンドルは、第1ヒンジ構成部材の2枚の支持プレート間に対応位置し、開閉ゲートの下開き時に両支持プレート間を通過するようになっていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
請求項1に係る発明によれば、ヒンジピンを2枚の支持プレートで両持ち支持しているので、ヒンジピンを開閉ゲート上縁部に強固に取り付けることができる。しかも、ヒンジピン及び支持プレートは開閉ゲート上縁部の外側方に突出しているので、建機や農機等の積み降ろし時に開閉ゲートを通過する建機や農機等が支持プレートに乗り上げる事態がなく、支持プレートの変形や損傷をなくしてヒンジ機能に支障を来さないようにすることができる。
【0012】
請求項2に係る発明によれば、開閉ゲートを下開きしても、操作ハンドルが両支持プレートに干渉せず、したがって、操作ハンドルが上方に回動してヒンジピンの挟持状態を解除することがなく、ダンプ時の開閉ゲートの下開き動作を支障なく行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、この発明の実施の形態について図面に基づいて説明する。
【0014】
図6及び図7は貨物自動車としてのダンプ車1を示し、3はキャブ、5はキャブ3後方の車台であり、この車台5に荷台7が搭載されている。
【0015】
上記荷台7は矩形床板9を備え、この床板9の車体前端には前面板11が立設されているとともに、車幅方向両端には一対のサイドゲート13が立設されている。さらに、床板9の車体後端には、開閉ゲートとしてのテールゲート15が上開きと下開きとに切り換え可能に立設され、これら前面板11、サイドゲート13及びテールゲート15により上記床板9の外周全体に亘って立設された縦板を構成している。上記テールゲート15上縁部の車幅方向両端には、建機や農機等を積み降ろしする際に車輪が通過する歩み板部16がそれぞれ延設されている。このダンプ車1は、荷台7を車体後方に向かって前下がりに傾動させて土砂等を排出(ダンプ)する排出作業と、建機や農機等を積み込んで運搬する運搬作業とを兼用したタイプであり、図6は荷台7をスライド傾斜装置(図示せず)の作動により車体後方にスライドさせて車体後方に向かって前下がりに傾斜した姿勢で荷台7後端のテールパネル17を接地させ、かつテールゲート15を上開きにした状態であり、荷台7には建機としてのショベルカー19が積み込まれている。図7は荷台7をホイストシリンダ(図示せず)の伸長作動により車体後方に向かって前下がりに傾動させてテールゲート15を下開きにした状態である。
【0016】
図1及び図2に示すように、上記テールゲート15は、車幅方向両端に設けられた2個の上部ヒンジ21を支点に下方から上方に回動して下開きする(図5参照)一方、車幅方向両端寄りに設けられた2個の下部ヒンジ23を支点に上方から下方に回動して上開きするようになっている(図4参照)。上記各下部ヒンジ23は、テールゲート15下端に固設された2個の第1ヒンジブラケット25と、上記荷台7後端のテールパネル17に固設された2個の第2ヒンジブラケット27とを重合させ、各々のヒンジブラケット25,27に形成されたピン孔25a,27a(図5及び図7参照)にヒンジピン29を挿入することで構成されている。このヒンジピン29は、先端の掛止片29aの向きを90°変えることでヒンジブラケット25,27からの脱落が防止され、また、紛失しないようにチェーン31でテールパネル17に取り付けられている。
【0017】
一方、上記各上部ヒンジ21は、図3にも示すように、上記テールゲート15上縁部の車幅方向両端(歩み板部16延出端部)にそれぞれ外側方へ突出するように固設された第1ヒンジ構成部材33(図3(b)参照)と、上記テールゲート15の両側に隣接するサイドゲート13上縁部の各々の車体後端に固設された第2ヒンジ構成部材35(図3(a)参照)と、この第2ヒンジ構成部材35の上端に上下方向に回動可能に設けられた操作ハンドル37(図3(a)参照)とで構成されている。上記第1ヒンジ構成部材33は、長さの異なる2枚の支持プレート39,41上端にヒンジピン43が橋絡されて構成されている。上記第2ヒンジ構成部材35は、2枚の板状ホルダ45が上端に内部空間を有するようにかつ内部空間が車体後方に開放するように重合して構成され、上記ヒンジピン43が係脱可能に係合する略U字状の係合溝47が車体後方に開口するように上端に形成されている。上記操作ハンドル37は、テールゲート15の下開き時に両支持プレート39,41間を通過できるように両支持プレート39,41間に対応位置するハンドル本体部49と、このハンドル本体部49先端に一体に設けられて上記ホルダ45上端に内部空間内に回動自在に収容された円形係合部51とで構成され、この円形係合部51には、上記第2ヒンジ構成部材35の係合溝47とで上記ヒンジピン43を挟持する略U字状の係合溝53が形成されている(図3(a)参照)。
【0018】
そして、荷台7をスライド傾斜装置の作動により車体後方にスライドさせて車体後方に向かって前下がりに傾斜した姿勢で上記操作ハンドル37の上方への回動操作により、操作ハンドル37の係合溝53を車体後方に向けてヒンジピン43の挟持状態を解除し、荷台7後端のテールゲート15を上開きにし、テールパネル17を接地させて建機や農機等の積み降ろしを行う(図4及び図6参照)。一方、上記操作ハンドル37の下方への回動操作により、ヒンジピン43を第2ヒンジ構成部材35の係合溝47と操作ハンドル37の係合溝53とで取り囲んでヒンジピン43の挟持状態を保持し、この状態から荷台7をホイストシリンダの伸長作動により車体後方に向かって前下がりに傾動させてテールゲート15を下開きにし、土砂等を排出する(図5及び図7参照)。この際、操作ハンドル37が両支持プレート39,41間を通過するようになっている。
【0019】
また、上記テールゲート15は、土砂等を排出するダンプ時にロック装置55が解除されて上部ヒンジ21を支点に下方から上方に回動して自動的に下開きするようになっている。このロック装置55は、2個のブラケット57に橋絡されてテールゲート15下端に固設された係止ピン59と、テールパネル17に設けられたフック61とで構成され、両下部ヒンジ23から車幅方向内寄りに1個ずつ配設されている。
【0020】
このように、この実施の形態では、上部ヒンジ21のヒンジピン43を2枚の支持プレート39,41で両持ち支持しているので、ヒンジピン43をテールゲート15上縁部に強固に取り付けることができる。しかも、ヒンジピン43及び支持プレート39,41をテールゲート15上縁部の外側方に突出させることで、建機や農機等の積み降ろし時にテールゲート15を通過する建機や農機等が支持プレート39,41に乗り上げる事態を回避でき、支持プレート39,41の変形や損傷をなくしてヒンジ機能に支障を来さないようにすることができる。
【0021】
また、テールゲート15を下開きした際に、操作ハンドル37の両支持プレート39,41への干渉をなくして、操作ハンドル37が押し上げられて上方に回動することでヒンジピン43の挟持状態を解除する事態を回避でき、ダンプ時のテールゲート15の下開き動作を支障なく行うことができる。
【0022】
なお、この実施の形態では、開閉ゲートとしてテールゲート15を例示したが、サイドゲートにも適用することができるものである。
【産業上の利用可能性】
【0023】
この発明は、貨物自動車の車台に搭載された荷台の上開きと下開きとに切り換え可能な開閉ゲートを下開き時に回動支持する上部ヒンジとして有用である。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】テールゲートの車幅方向一側を車体後方から見た図である。
【図2】荷台後端の側面図である。
【図3】(a)は第2ヒンジ構成部材の斜視図、(b)は第1ヒンジ構成部材の斜視図、(c)は上部ヒンジの側面図である。
【図4】テールゲートを上開きにした状態の側面図である。
【図5】テールゲートを下開きにした状態の側面図である。
【図6】荷台後端を接地させてテールゲートを上開きにした状態のダンプ車の斜視図である。
【図7】ダンプ時にテールゲートを下開きにした状態のダンプ車の斜視図である。
【符号の説明】
【0025】
1 ダンプ車(貨物自動車)
5 車台
7 荷台
9 床板
11 前面板(縦板)
13 サイドゲート(縦板)
15 テールゲート(開閉ゲート、縦板)
21 上部ヒンジ
33 第1ヒンジ構成部材
35 第2ヒンジ構成部材
37 操作ハンドル
39,41 支持プレート
43 ヒンジピン
47 係合溝
53 係合溝

【特許請求の範囲】
【請求項1】
床板とこの床板の外周全体に亘って立設された縦板とからなる荷台が車台に搭載された貨物自動車において、上記荷台の縦板の一部を構成し、上方から下方に回動して上開きする一方、下方から上方に回動して下開きする開閉ゲートを下開き時に回動支持する上部ヒンジであって、
上記開閉ゲート上縁部の両端にそれぞれ外側方へ突出するように固設され、2枚の支持プレート上端にヒンジピンが橋絡された第1ヒンジ構成部材と、
上記開閉ゲートの両側に隣接する縦板上縁部の各々の端部に固設され、上記第1ヒンジ構成部材のヒンジピンが係脱可能に係合する係合溝を上端に有する第2ヒンジ構成部材と、
この第2ヒンジ構成部材の上端に上下方向に回動可能に設けられ、第2ヒンジ構成部材の係合溝とで上記ヒンジピンを挟持する係合溝を先端に有し、下方への回動操作によりヒンジピンの挟持状態を保持する一方、上方への回動操作によりヒンジピンの挟持状態を解除する操作ハンドルとで構成されていることを特徴とする貨物自動車における荷台の開閉ゲート上部ヒンジ。
【請求項2】
請求項1に記載の貨物自動車における荷台の開閉ゲート上部ヒンジにおいて、
操作ハンドルは、第1ヒンジ構成部材の2枚の支持プレート間に対応位置し、開閉ゲートの下開き時に両支持プレート間を通過するようになっていることを特徴とする貨物自動車における荷台の開閉ゲート上部ヒンジ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2006−36113(P2006−36113A)
【公開日】平成18年2月9日(2006.2.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−221557(P2004−221557)
【出願日】平成16年7月29日(2004.7.29)
【出願人】(000002358)新明和工業株式会社 (919)
【Fターム(参考)】