説明

貨物自動車の荷台

【課題】開閉ゲートの上開き作業及び上開き後の閉作業を1人で安全にかつ容易に行う。
【解決手段】ダンプ車1の車台に搭載された荷台7のテールゲート15の上開き動作及び上開き後の閉動作を開閉ゲートアシスト装置49により補助する。開閉ゲートアシスト装置49はコイルスプリング69にて常時伸長するように付勢された伸縮ロッド51により押され、第2枢軸75回りに上向きに回動付勢され、テールゲート15の上開き動作時にテールゲート15の下端を支持してテールゲート15の上開き動作を補助する一方、上開き後の閉動作時にテールゲート15の下端を押してテールゲート15の閉動作を補助する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、貨物自動車の車台に搭載された荷台の改良に関し、特に上開きタイプの開閉ゲートの取扱い対策に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、荷台を車体後方に向かって前下がりに傾動させて土砂等を排出(ダンプ)する排出作業と、建機や農機等を荷台に積み込んで運搬する運搬作業とを兼用したダンプ車が開示されている。このダンプ車では、荷台のテールゲートが、建機や農機等の積み降ろし時には下部ヒンジを支点に上方から下方に回動して上開きする一方、土砂等を排出するダンプ時には上部ヒンジを支点に下方から上方に回動して下開きするようになっている。
【特許文献1】実用新案登録第2556543号公報(第2頁、図1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、この種の貨物自動車における荷台の開閉ゲートは、ダンプ時にロック装置が解除されて自動的に下開きするようになっている。一方、開閉ゲートを上開きする場合は、作業者が手で開閉ゲートを支えてゆっくりと下方に回動させている。上開きした開閉ゲートを閉じる場合も、作業者が手で開閉ゲートを支えてゆっくりと上方に回動させている。一般に、これら開閉ゲートの上開き作業及び上開き後の閉作業は1人で行っている。
【0004】
特に、開閉ゲートは非常に重いため、開閉ゲートを上開きしたりその後に閉じる際には、作業者は相当の注意を払っている。しかし、作業者の手が滑ったり、あるいは重さに耐えきれずに途中で手が離れると、開閉ゲートが急激に開き非常に危険である。さりとて、アルミニウム合金等の軽金属で開閉ゲートを製作すると、積み降ろし時に掛かる建機や農機等の重量に耐えきれない。
【0005】
この発明はかかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、開閉ゲートの上開き作業及び上開き後の閉作業を1人で安全にかつ容易に行うことである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するため、この発明は、開閉ゲートの上開き動作及び上開き後の閉動作を補助するようにしたことを特徴とする。
【0007】
具体的には、この発明は、床板とこの床板の外周全体に亘って立設された縦板とからなり、少なくとも下部ヒンジを支点に上方から下方に回動して上開きする開閉ゲートが上記縦板の一部で構成され、貨物自動車の車台に搭載された荷台を対象とし、次のような解決手段を講じた。
【0008】
すなわち、請求項1に記載の発明は、上記開閉ゲートは、開閉ゲートアシスト装置により上開き動作及び上開き後の閉動作が補助されるように構成されていることを特徴とする。
【0009】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、開閉ゲートアシスト装置は、基端が床面裏側に第1枢軸で枢支され付勢手段により常時伸長するように付勢された伸縮ロッドと、上記床板裏側に第2枢軸で枢支されているとともに上記伸縮ロッド先端に第3枢軸で枢支され、伸縮ロッドにより押されて第2枢軸回りに上向きに回動付勢され、開閉ゲートの上開き動作時に開閉ゲート下端を支持して開閉ゲートの上開き動作を補助する一方、開閉ゲートの上開き後の閉動作時に開閉ゲート下端を押して開閉ゲートの閉動作を補助する開閉補助部材とを備えていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
請求項1に係る発明によれば、開閉ゲートの上開き動作及び上開き後の閉動作を開閉ゲートアシスト装置により補助するようにしたので、その分だけ人力による開閉力が軽減し、開閉ゲートを上開きしたりその後に閉じる際に、1人の作業者で簡単に支えることができて開閉ゲートの上開き作業及び上開き後の閉作業を安全にかつ容易に行うことができる。
【0011】
請求項2に係る発明によれば、開閉ゲートアシスト装置の具体的な構成が明示されている。これによれば、開閉補助部材を床面裏側と伸縮ロッド先端とに枢支して開閉ゲートとは分離しているので、ダンプ時の開閉ゲートの下開き動作を支障なく行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、この発明の実施の形態について図面に基づいて説明する。
【0013】
図4及び図5は貨物自動車としてのダンプ車1を示し、3はキャブ、5はキャブ3後方の車台であり、この車台5に荷台7が搭載されている。
【0014】
上記荷台7は矩形床板9を備え、この床板9の車体前端には前面板11が立設されているとともに、車幅方向両端には一対のサイドゲート13が立設されている。さらに、床板9の車体後端には、開閉ゲートとしてのテールゲート15が上開き又は下開きに切り換え可能に立設され、これら前面板11、サイドゲート13及びテールゲート15により上記床板9の外周全体に亘って立設された縦板を構成している。このダンプ車1は、荷台7を車体後方に向かって前下がりに傾動させて土砂等を排出(ダンプ)する排出作業と、建機や農機等を積み込んで運搬する運搬作業とを兼用したタイプであり、図4は荷台7をスライド傾斜装置(図示せず)の作動により車体後方にスライドさせて車体後方に向かって前下がりに傾斜した姿勢で荷台7後端のテールパネル17を接地させ、かつテールゲート15を上開きにした状態であり、荷台7には建機としてのショベルカー19が積み込まれている。図5は荷台7をホイストシリンダ(図示せず)の伸長作動により車体後方に向かって前下がりに傾動させてテールゲート15を下開きにした状態である。
【0015】
図3に示すように、上記テールゲート15は、車幅方向両端に設けられた2個の上部ヒンジ21を支点に下方から上方に回動して下開きする一方、車幅方向両端寄りに設けられた2個の下部ヒンジ23を支点に上方から下方に回動して上開きするようになっている。上記各下部ヒンジ23は、テールゲート15下端に固設された2個の第1ヒンジブラケット25と、上記荷台7後端のテールパネル17に固設された2個の第2ヒンジブラケット27とを重合させ、各々のヒンジブラケット25,27に形成されたピン孔25a,27a(図5参照)にヒンジピン29を挿入することで構成されている。このヒンジピン29は、先端の掛止片29aの向きを90°変えることでヒンジブラケット25,27からの脱落が防止され、また、紛失しないようにチェーン31でテールパネル17に取り付けられている。
【0016】
一方、上記各上部ヒンジ21は、テールゲート15上縁部の車幅方向両端に固設され、車幅方向外側方に突出するヒンジピン33を有する第1ヒンジ構成部材35と、各サイドゲート13上縁部の車体後端に固設され、上記ヒンジピン33が係脱可能に係合する略U字状の係合溝(図示せず)を先端に有する第2ヒンジ構成部材37と、この第2ヒンジ構成部材37の上端に上下方向に回動可能に設けられ、第2ヒンジ構成部材37の係合溝とで上記ヒンジピン33を挟持する略U字状の係合溝(図示せず)を先端に有し、下方への回動操作によりヒンジピン33の挟持状態を保持する一方、上方への回動操作によりヒンジピン33の挟持状態を解除する操作ハンドル39とで構成されている。
【0017】
また、上記テールゲート15は、土砂等を排出するダンプ時にロック装置41が解除されて上部ヒンジ21を支点に下方から上方に回動して自動的に下開きするようになっている。このロック装置41は、2個のブラケット43に橋絡されてテールゲート15下端に固設された係止ピン45と、テールパネル17に設けられたフック47とで構成され、両下部ヒンジ23から車幅方向内寄りに1個ずつ配設されている。
【0018】
この発明の特徴として、上記荷台7後端の車幅方向両端の床板9裏側には、図1及び図2に拡大詳示するように、開閉ゲートアシスト装置49が設置され、この開閉ゲートアシスト装置49により上記テールゲート15の上開き動作及び上開き後の閉動作が補助されるように構成されている。
【0019】
具体的には、上記開閉ゲートアシスト装置49は、車体後方に延びる伸縮ロッド51を備えている。この伸縮ロッド51は、円形の挿入穴53aを有する基端側ロッド53と、先端側ロッド55とからなり、先端側ロッド55は、上記基端側ロッド53の挿入穴53aに移動自在に挿入された円柱部材57と、この円柱部材57に螺合連結され先端側が略くの字形に湾曲した板状部材59とで構成されている。上記基端側ロッド53の基端は、床板9裏側にフレーム材61及びブラケット63を介して第1枢軸65で枢支されている。また、上記基端側ロッド53の基端と先端側ロッド55の中程(円柱部材57の先端寄り)とには、スプリング座67がそれぞれ設けられ、この両スプリング座67間の伸縮ロッド51には、付勢手段としてのコイルスプリング69が外嵌めされ、コイルスプリング69のバネ力により板状部材59がテールパネル17のスリット孔17aから車体後方に突出するように先端側ロッド55を常時車体後方に付勢している(図1実線参照)。つまり、先端側ロッド55はコイルスプリング69のバネ力により基端側ロッド53の挿入穴53aから進出し、伸縮ロッド51が全体として伸長するようになっている。
【0020】
上記荷台7後端の車幅方向両端の床板9裏側には、断面略コの字形の開閉補助部材71下端の一側がテールパネル17の外側でブラケット73を介して第2枢軸75で枢支されている。また、上記開閉補助部材71下端の他側が上記伸縮ロッド51の板状部材59先端に第3枢軸77で枢支されている。これにより、開閉補助部材71は、伸縮ロッド51により押されて第2枢軸75回りに上向きに回動付勢され、伸縮ロッド51の伸長状態でテールパネル17のスリット孔17aから全体が車体後方に突出する(図1実線参照)一方、伸縮ロッド51の収縮状態で第2枢軸75回りに下向きに反転して上記スリット孔17aからテールパネル17裏側に略半分が隠れるようになっている(図1二点鎖線参照)。一方、上記テールゲート15下端の車幅方向両端には、上記開閉補助部材71が当接する当て板79が突設されている。そして、上記開閉補助部材71は、図1に一点鎖線で示すように、テールゲート15の上開き動作時にテールゲート15下端の当て板79を支えてテールゲート15の上開き動作を補助する一方、図1に二点鎖線で示すように、テールゲート15の上開き後の閉動作時にテールゲート15下端の当て板79を押してテールゲート15の閉動作を補助するようになっている。
【0021】
このように構成されたテールゲート15を建機や農機等を積み降ろしするために上開きする際には、上部ヒンジ21の操作ハンドル39を上方に回動することにより、第1ヒンジ構成部材35のヒンジピン33の挟持状態を解除し、テールゲート15を下部ヒンジ23を支点に上方から下方に回動させて上開きすればよい。その際、テールゲート15の上開き動作が開閉ゲートアシスト装置49により補助される。つまり、テールゲート15の荷重が開閉補助部材71に掛かり、開閉補助部材71が第2枢軸75を支点に上方から下方に回動して反転姿勢になり、この動作に連動して先端側ロッド55がコイルスプリング69のバネ力に抗して後退して伸縮ロッド51が収縮する。この際に生ずる反力によりテールゲート15が開閉補助部材71で支えられ、テールゲート15の上開き動作が開閉ゲートアシスト装置49により補助されるのである。このように、テールゲート15が開閉補助部材71で支えられるので、その分だけ人力による開閉力が軽減し、テールゲート15を上開きする際に、1人の作業者で簡単に支えることができてテールゲート15の上開き作業を安全にかつ容易に行うことができる。
【0022】
一方、建機や農機等の積み降ろしが終わってテールゲート15を閉じる際には、テールゲート15の上開き後の閉動作が開閉ゲートアシスト装置49により補助される。つまり、テールゲート15を上方に持ち上げると、今までテールゲート15に押されて収縮状態にあった伸縮ロッド51の先端側ロッド55がコイルスプリング69のバネ力で押されて進出し、これによりテールゲート15が開閉補助部材71で押されて上方に持ち上げられるので、その分だけ人力による開閉力が軽減し、テールゲート15を上開き後に閉じる際に、1人の作業者で簡単に支えることができてテールゲート15の上開き後の閉作業を安全にかつ容易に行うことができる。テールゲート15を閉じた後は、上部ヒンジ21の操作ハンドル39を下方に回動して第1ヒンジ構成部材35のヒンジピン33の挟持状態を保持すればよい。
【0023】
また、開閉補助部材71を床板9裏側と伸縮ロッド51の板状部材59先端とに枢支してテールゲート15とは分離しているので、ダンプ時のテールゲート15の下開き動作を支障なく行うことができる。
【0024】
なお、この実施の形態では、荷台7を車体後方に向かって前下がりに傾動させて土砂等を排出する排出作業と、建機や農機等を荷台に積み込んで運搬する運搬作業とを兼用したダンプ車1、つまり、テールゲート15が上開き及び下開きするタイプの貨物自動車を例示したが、上開きだけで下開きしないタイプのテールゲートにも適用することができるものである。
【0025】
また、この実施の形態では、開閉ゲートとしてテールゲート15を例示したが、サイドゲートにも適用することができるものである。
【産業上の利用可能性】
【0026】
この発明は、貨物自動車の車台に搭載された荷台の上開きする開閉ゲートとして有用である。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】開閉ゲートアシスト装置の側面図である。
【図2】テールゲートの開閉ゲートアシスト装置設置箇所を車体後方から見た図である。
【図3】テールゲート全体を車体後方から見た図である。
【図4】荷台後端を接地させてテールゲートを上開きにした状態のダンプ車の斜視図である。
【図5】ダンプ時にテールゲートを下開きにした状態のダンプ車の斜視図である。
【符号の説明】
【0028】
1 ダンプ車(貨物自動車)
5 車台
7 荷台
9 床板
11 前面板(縦板)
13 サイドゲート(縦板)
15 テールゲート(開閉ゲート、縦板)
23 下部ヒンジ
49 開閉ゲートアシスト装置
51 伸縮ロッド
65 第1枢軸
69 コイルスプリング(付勢手段)
71 開閉補助部材
75 第2枢軸
77 第3枢軸

【特許請求の範囲】
【請求項1】
床板とこの床板の外周全体に亘って立設された縦板とからなり、少なくとも下部ヒンジを支点に上方から下方に回動して上開きする開閉ゲートが上記縦板の一部で構成され、貨物自動車の車台に搭載された荷台であって、
上記開閉ゲートは、開閉ゲートアシスト装置により上開き動作及び上開き後の閉動作が補助されるように構成されていることを特徴とする貨物自動車の荷台。
【請求項2】
請求項1に記載の貨物自動車の荷台において、
開閉ゲートアシスト装置は、基端が床面裏側に第1枢軸で枢支され付勢手段により常時伸長するように付勢された伸縮ロッドと、
上記床板裏側に第2枢軸で枢支されているとともに上記伸縮ロッド先端に第3枢軸で枢支され、伸縮ロッドにより押されて第2枢軸回りに上向きに回動付勢され、開閉ゲートの上開き動作時に開閉ゲート下端を支持して開閉ゲートの上開き動作を補助する一方、開閉ゲートの上開き後の閉動作時に開閉ゲート下端を押して開閉ゲートの閉動作を補助する開閉補助部材とを備えていることを特徴とする貨物自動車の荷台。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−44508(P2006−44508A)
【公開日】平成18年2月16日(2006.2.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−229732(P2004−229732)
【出願日】平成16年8月5日(2004.8.5)
【出願人】(000002358)新明和工業株式会社 (919)
【Fターム(参考)】