説明

貫入ロッド

【課題】地中の各深度において地盤の真の比抵抗を測定し、この測定値に基づいて地盤性状を評価することにより、正確な土質判定を行うための貫入ロッドを提供する。
【解決手段】本発明の貫入ロッド1は、地中に貫入するロッド本体2を有し、このロッド本体2には地盤の比抵抗を測定する地盤比抵抗測定手段6a,6b,6c,6dと、地盤間隙水の比抵抗を測定する間隙水比抵抗測定手段7a,7b,7c,7dとが取付けられている。これにより、各深度において地盤固有の間隙水の比抵抗を考慮した真の比抵抗を得ることができ、地盤性状および土質を正確かつ多角的に評価することが可能である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気検層方法に基づき、地盤のみかけの比抵抗と、地盤間隙水の比抵抗とを測定し、これら比抵抗から算出される地盤の真の比抵抗に基づいて地盤性状を調査するための貫入ロッドに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から電気検層は、貯油層や帯水層の検出などを目的として地下資源開発分野で古くから発展してきた。地盤工学分野においても、地層区分、地層対比および帯水層の判定を目的として広く普及している。
【0003】
前記電気検層は、非特許文献1に示すように、社団法人地盤工学会において規格化されており、その方法は、地層の単位長さ、単位断面積あたりの電気抵抗である比抵抗をボーリング孔内において測定するものである。また、当該比抵抗は、ボーリング孔内に、所定の間隔をおいて配置される一対の電流電極および電位電極による測定値(電流値および電位差)から算出する。この測定をボーリング孔内の各深度で行い、比抵抗の変動を読みとることにより、地層の区分あるいは対比が可能である。ところで、上記電気検層方法によって測定した比抵抗は、間隙水の影響を受けており、つまり、みかけの比抵抗であって真の比抵抗ではない。そこで、孔内水を予め採取してその比抵抗を測定し、これを間隙水の比抵抗とみなし、これに基づいてみかけの比抵抗を補正して地盤の真の比抵抗が算出されていた。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】社団法人地盤工学会規格(JGS1121−2003)「地盤の電気検層方法」
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、地盤の間隙水の比抵抗は、イオン濃度、粘土鉱物等の影響により各深度で異なり、例えば頁岩・泥岩・粘土・塩水を含む層では小さく、一方淡水を含む砂・礫・クラックの少ない溶岩・石灰岩では大きくなる。このように、各深度における間隙水の比抵抗の違いから、全ての深度で間隙水の比抵抗を一律とみなす上記電気検層方法では、実際には各深度における地盤の真の比抵抗を正確に得ることができなかった。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の貫入ロッドは、上記課題に鑑みて創成されたものであり、地中に貫入して地盤の比抵抗を測定しこの比抵抗に基づいて地盤性状を調査するための貫入ロッドにおいて、地中に貫入するロッド本体を有し、このロッド本体には地盤の比抵抗を測定する地盤比抵抗測定手段と、地盤間隙水の比抵抗を測定する間隙水比抵抗測定手段とが取付けられている。
【0007】
また、前記間隙水比抵抗測定手段は、表面がフィルタで覆われ、このフィルタに吸収された地盤間隙水の比抵抗を測定するように構成されていることが望ましい。
【0008】
さらに、前記フィルタと間隙水比抵抗測定手段とは密着させてあり、地盤間隙水を吸収したフィルタの比抵抗を当該間隙水比抵抗測定手段で測定しこの測定値を、フィルタ固有特性に基づいて予め設定された補正係数で補正して、地盤間隙水の比抵抗を算出するように構成されていることが望ましい。
【発明の効果】
【0009】
本発明の貫入ロッドにおいては、地盤比抵抗測定手段と、地盤間隙水の比抵抗を測定する間隙水比抵抗測定手段とを備えている。そのため、地盤比抵抗測定手段により検出される地盤のみかけの比抵抗と、地盤間隙水の比抵抗とを所定の深度到達毎に直ちに測定して得ることができる。これにより、地盤のみかけの比抵抗を、地盤間隙水の比抵抗で補正して真の比抵抗値を得ることができる。従って、各深度において地盤固有の間隙水の比抵抗を考慮した地盤の真の比抵抗を得ることができ、地盤性状を正確かつ多角的に評価することが可能となる。
【0010】
また、間隙水比抵抗測定手段は、フィルタで覆われ、当該フィルタに吸収された地盤間隙水の比抵抗を測定するように構成されている。これにより、フィルタを透過した間隙水が一定量貯留するまで待たずとも、地盤間隙水の比抵抗を測定することができる。
【0011】
さらに、前記間隙水比抵抗測定手段はフィルタで覆われてこれと密着させてあり、間隙水を吸収したフィルタの比抵抗を当該間隙水比抵抗測定手段で測定し、フィルタ固有特性に基づいて予め設定された補正係数で補正して地盤間隙水の比抵抗を算出するように構成されている。これにより、間隙水がフィルタに吸収されているにもかかわらず、地盤間隙水だけの比抵抗を即座に算出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明に係る貫入ロッドを示す全体図である。
【図2】本発明に係る貫入ロッドのロッド本体を示す拡大断面図である。
【図3】本発明に係る貫入ロッドのロッド本体の要部を示す一部切欠拡大断面図である。
【図4】本発明に係る貫入ロッドの延長用ロッドを示す一部切欠拡大断面図である。
【図5】本発明に係る貫入ロッドのロータリコネクタを示す一部切欠拡大断面図である。
【図6】本発明に係る貫入ロッドの打撃ブロックを示す一部切欠拡大断面図である。
【図7】(a)は本発明の貫入ロッドの地盤比抵抗測定手段の回路図であり、(b)は間隙水比抵抗測定手段の回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。図1において、1は貫入ロッドであり、中空状のロッド本体2と、必要に応じてこのロッド本体の後端に取付けられる延長用ロッド3とを備えている。また、ロッド本体2の先端にはスタッドボルト4を介してスクリューポイント5が取付けられており、これにより、貫入ロッド1は標準貫入試験機(図示せず)に取付られて地中に貫入するように構成されている。
【0014】
図2および図3に示すように、前記ロッド本体2には絶縁カラー10が外装させてあり、この絶縁カラー10には2つの地盤比抵抗測定用電流電極6a,6bと、その間には2つの地盤比抵抗測定用電位電極6c,6dとが検出面を外周に露出させるようにして取付けられている。なお、これら地盤比抵抗測定用電流電極6a,6bと、地盤比抵抗測定用電位電極6c,6dとから、特許請求の範囲に記載の地盤比抵抗測定手段が構成されている。
【0015】
ここで、地盤の比抵抗の算出方法として、図7(a)には前記地盤比抵抗測定手段の回路図が示されており、各電極間には地盤の抵抗としてRz1,Rz2,Rz3が存在する。なお、これら電極間の地盤の抵抗Rz1,Rz2,Rz3は、全て等しいものとする。そして、前記ロッド本体2を地中に貫入して電極6a,6bから電流Izを流すことにより、電極6c,6d間の電位差Vzを測定するように構成されている。これら電位差Vzおよび電流値Izから、地盤の比抵抗ρzが、ρz=Vz/Iz×αにより求まる。ここで、αは各電極間の距離L、並びにロッド形状に応じて分布する電界の特性に基づいて定められた補正係数である。
【0016】
また、前記ロッド本体2には2つの間隙水比抵抗測定用電流電極7a,7bと、その間には2つの間隙水比抵抗測定用電位電極7c,7dが取付けられている。さらに、これら電極7a,7b,7c,7dの表面を覆うようにしてフィルタ8が密着させてあり、このフィルタ8は地盤に含まれる間隙水を吸収するように構成されている。そして、間隙水比抵抗測定用電流電極7a,7bと、間隙水比抵抗測定用電位電極7c,7dとから構成される間隙水比抵抗測定手段が、間隙水を含むフィルタ8の比抵抗を測定して、間隙水の比抵抗を算出するように構成されている。
【0017】
ここで、間隙水の比抵抗の算出方法として、図7(b)には前記間隙水比抵抗測定手段の回路図が示されており、各電極間には間隙水を吸収したフィルタ8の抵抗としてRw1,Rw2,Rw3が存在する。なお、これら電極間の抵抗Rw1,Rw2,Rw3は、全て等しいもとする。そして、前記ロッド本体2を地中に貫入して電極7a,7bから電流Iwを流すことにより、電極7c,7d間の電位差Vwを測定するように構成されている。これら電位差Vwおよび電流値Iwから、間隙水を含むフィルタの比抵抗ρ’wが、ρ’w=Vw/Iw×βにより求まる。ここで、βは各電極間の距離L’、並びにロッド形状に応じて分布する電界の特性に基づいて定められた補正係数である。ここで、フィルタ8に吸収された間隙水だけの比抵抗ρwを求めるべく、フィルタ8の固有特性(材質、空間率および孔径)に基づいて定められた補正係数χを用いて、間隙水だけの比抵抗ρwが、ρw=ρ’w×χにより求まる。
【0018】
前記電極7a,7b,7c,7dは、絶縁性のホルダ9によって保持され、かつ近傍の導通性部材までの距離よりも十分に小さな間隔をおいて配置されている。これにより、電極7c,7dで測定される電位差は近傍の導通性部材の影響を受けることなく、所望の測定値を得ることができる。
【0019】
前記ロッド本体2は中空状を成している。このロッド本体2の後端には雌コネクタ部11が取付けられており、ロッド本体2の中空穴2aに当該雌コネクタ部11の係合片11aを挿入して固定されている。また、電極6a,6b,6c,6dの背面からは導線19、並びに電極7a,7b,7c,7dの背面からは導線20が当該雌コネクタ部11まで延びており、電極6a,6b,6c,6dおよび電極7a,7b,7c,7dの検出信号を伝送するように構成されている。さらに、ロッド本体2の後端には雄ねじ部12が形成されており、前記延長用ロッド3と螺合接続するように構成されている。
【0020】
図4に示すように、前記延長用ロッド3は、外管13と、この外管13に挿入される内管16とによる二重構造を成している。外管13には、その先端に前記ロッド本体2の雄ねじ部12に螺合可能な雌ねじ部14が形成されており、一方後端にはロッド本体2の雄ねじ部12と形状を同じくする雄ねじ部15が形成されている。一方、内管16は、その先端に前記ロッド本体2の雌コネクタ部11に接続可能な雄コネクタ部17を有しており、後端には当該ロッド本体2の雌コネクタ部11と形状を同じくする雌コネクタ部18を有している。そして、内管の雄コネクタ部17と雌コネクタ部18とは、内管16の内部に通された導線21で接続されており、雄コネクタ部17から雌コネクタ部18へ電極による検出信号を伝送するように構成されている。
【0021】
また、雌コネクタ部11,17は、ロッド本体2の中空穴2aの内径および外管13の貫通穴13aの内径よりも大きな外径を成している。従って、外管13および内管16は全長を同じくするものであるが、内管16の挿入時には、雌コネクタ部17が外管13の後端から露出するように位置する。つまり、延長用ロッド3の後端部は、前記ロッド本体2の後端部と同様の構成である。
【0022】
また、前記延長用ロッド3の外管13の外周には長手方向に延びる長溝13bが形成されており、例えば特許4287704号公報に示される貫入試験機のロッドチャックに取付けることができる。
【0023】
図1および図5に示すように、前記延長用ロッド3の内管16の雌コネクタ部14にはロータリコネクタ21が接続されている。さらに、このロータリコネクタ21にはケーブル22が接続されている。ロータリコネクタ21は、回転側(延長用ロッド側)と固定側(ケーブル側)との間における検出信号の伝送を行う電気部品であり、前記導線19,20および各コネクタ部11,17,18を介して伝送される検出信号をケーブル22に伝送するように構成されている。一方ケーブル22は計測器(図示せず)に接続されてこれに当該検出信号を伝送するものである。
【0024】
以下、本発明に係る貫入ロッド1の使用方法を説明する。まず、ロッド本体2に延長用ロッド3を1本接続した状態の貫入ロッド1を、前述の方法で貫入試験機に装着するとともに、当該延長用ロッド3の雌コネクタ部18にロータリコネクタ21を接続する。そして、貫入試験機を作動させて貫入ロッド1を所定の深度まで回転貫入する。このとき、ロッド本体2、延長用ロッド3の外管13および内管16は、一体に回転する。さらに深い位置まで貫入ロッド1を貫入させるには、延長用ロッド3を継ぎ足す。
【0025】
ここで、延長用ロッド3を継ぎ足す方法を図4に沿って説明する。なお、図4は、ロッド本体2と延長用ロッド3の接続を示す図であるが、ロッド本体2の後端部は延長用ロッド3の後端部と構成を同じくするものである。従って、便宜上、以下の説明においては、ロッド本体2の後端部を延長用ロッド3の後端部と仮定して説明する。まず、ロータリコネクタ21を取り外してから、1本目の延長用ロッド3の外管13の雄ねじ部15に、次の延長用ロッド3の外管13の雌ねじ部14を螺合接続する。次に、当該外管13に内管16を挿入して、その雄コネクタ部17を1本目の延長用ロッド3の内管16の雌コネクタ部18に挿入して接続する。最後に、最後尾の延長用ロッド3の内管16の雌コネクタ部18にロータリコネクタ21を接続して、継ぎ足し作業は終了する。このように延長用ロッド3を順次継ぎ足すことにより、貫入ロッド1は所望の深度まで貫入する。
【0026】
また、本発明の貫入ロッド1においては、回転貫入中、先端が岩に接触すると、延長用ロッド3の外管13に応力が集中して折れてしまう場合がある。そこで、雌コネクタ部18の外径が内管16の貫通穴16aの内径よりも小さく形成されている。これにより、貫入ロッド1を引き上げるとき、外管13の後端と雌コネクタ部18が係合するため、破断部位よりも上方に連結されている内管16の全てを、地中に残すことなく確実に回収することができる。
【0027】
さらに、貫入中、先端が岩に接触したとき、作業効率の観点から、貫入ロッド1の後端に打撃を加えて岩を粉砕し、試験を続行する場合がある。そこで、打撃を加える場合、図6に示すように、ロータリコネクタ21を取り外し、外管13の雄ねじ部15には打撃用ブロック23が取付けられる。この打撃用ブロック23をハンマ(図示せず)で打撃することにより、岩を粉砕して試験を続行することができる。
【0028】
上記貫入方法により、貫入ロッド1は、各深度において電極6a,6b,6c,6dにより地盤の比抵抗、並びに電極7a,7b,7c,7dにより当該各深度における地盤の間隙水の比抵抗を試験データとして得る。ただし、電極6a,6b,6c,6dによる比抵抗は、間隙水の影響を含むみかけの比抵抗であり、地盤の真の比抵抗ではない。そこで、当該みかけの比抵抗と、電極7a,7b,7c,7dにより検出される間隙水の比抵抗との相関から、地盤の真の比抵抗を算出する。これにより、地盤の真の比抵抗が大きければ地盤の空間率は小さく、自沈の可能性が低い安全な地盤であり、一方当該比抵抗が小さければ空間率が大きく、自沈の可能性が高い危険な地盤であるとして、自沈地盤調査を行うことができる。
【0029】
また、本発明の貫入ロッド1を用いれば、さらに詳細な地盤性状の解析も可能である。その内容は、前述の方法により算出された真の比抵抗および間隙水の比抵抗から、地盤比抵抗係数(真の比抵抗/間隙水の比抵抗)を求めるものであり、この地盤比抵抗係数により、地盤の間隙率や水分飽和率などを各深度において、具体的かつ定量的に解析することが可能となる。
【0030】
さらに、本発明の貫入ロッド1では、ロッドの貫入量に基づくN値による標準貫入試験とは異なる観点から、自沈地盤調査を含めて地盤性状を調査することができるばかりか、当該N値とを併せて地盤性状を解析することにより、より多角的な評価を行うことが可能となる。
【符号の説明】
【0031】
1 貫入ロッド
2 ロッド本体
2a 中空穴
3 延長用ロッド
4 スタッドボルト
5 スクリューポイント
6a,6b 地盤比抵抗測定用電流電極
6c,6d 地盤比抵抗測定用電位電極
7a,7b 間隙水比抵抗測定用電流電極
7c,7d 間隙水比抵抗測定用電位電極
8 フィルタ
9 ホルダ
10 絶縁カラー
11 雌コネクタ部
11a 係合片
12 雄ねじ部
13 外管
13a 貫通穴
13b 長溝
14 雌ねじ部
15 雄ねじ部
16 内管
16a 貫通穴
17 雄コネクタ部
18 雌コネクタ部
19 導線
20 導線
21 導線
21 ロータリコネクタ
22 ケーブル
23 打撃用ブロック

【特許請求の範囲】
【請求項1】
地中に貫入して地盤の比抵抗を測定しこの比抵抗に基づいて地盤性状を調査するための貫入ロッドにおいて、
地中に貫入するロッド本体を有し、このロッド本体には地盤の比抵抗を測定する地盤比抵抗測定手段と、地盤間隙水の比抵抗を測定する間隙水比抵抗測定手段とが取付けられていることを特徴とする貫入ロッド。
【請求項2】
前記間隙水比抵抗測定手段は、表面がフィルタで覆われ、このフィルタに吸収された地盤間隙水の比抵抗を測定するように構成されていることを特徴とする請求項1に記載の貫入ロッド。
【請求項3】
前記フィルタと間隙水比抵抗測定手段とは密着させてあり、地盤間隙水を吸収したフィルタの比抵抗を当該間隙水比抵抗測定手段で測定しこの測定値を、フィルタ固有特性に基づいて予め設定された補正係数で補正して、地盤間隙水の比抵抗を算出するように構成されていることを特徴とする請求項2に記載の貫入ロッド。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−112506(P2011−112506A)
【公開日】平成23年6月9日(2011.6.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−269139(P2009−269139)
【出願日】平成21年11月26日(2009.11.26)
【出願人】(000227467)日東精工株式会社 (263)
【Fターム(参考)】