説明

貫通孔を有する窓貼り用積層フィルム

【課題】大面積でも簡易に空気等を抜くことができ、貼り剥がしが容易で吸着面に剥がし後を残さない積層フィルムを提供すること。
【解決手段】プラスチックフィルム層と、窓との吸着面を有するシリコーンゴム層とを含む、100平方cm当たり1個以上の貫通孔を有する窓貼り用積層フィルムであって、前記シリコーンゴム層は、接着性あるいは粘着性を有さず、さらに粘着付与剤を含まない、窓貼り用積層フィルムを提供することにより解決される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プラスチックフィルム層と、ガラス、アクリルなどの窓に吸着する、シリコーンゴム層を含む積層フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
建築物の窓などには、日射遮蔽、およびガラス飛散防止を目的とした、窓貼り用フィルムが利用されている。最近では、赤外線などを遮蔽することができ、太陽光線による変退色が少ないフィルムや、窓ガラスに貼り付けた後で糊残りなく剥がすことを目的とした粘着剤を有する窓貼り用フィルム、また窓貼り用フィルム面上に、基材および粘着剤を貫通する穴を多数設けることにより、窓ガラスに貼り付ける際に、窓貼り用フィルムと被着面との間に空気が残りにくくすることを目的とした窓貼り用フィルムなどがあり、これらに関連するのものとして、以下の文献が挙げられる。
【0003】
特許文献1には、二軸配向ポリエステルフィルムの片面に、アクリル系樹脂(A)と飽和ポリエステル系樹脂(B)を主成分とする被膜形成樹脂と当該被膜形成樹脂100重量部に対して5〜40重量部の紫外線吸収剤(C)とを含有する被膜層を形成し、他の片面に、粘着剤層を形成して成る窓貼り用フィルムが記載されている。
【0004】
特許文献2には、プラスチックフィルム(A)の少なくとも片面に粘着剤層(B)を設けた積層フィルムであって、該積層フィルムの粘着剤層側の面をガラス板に貼り合せたときの特性が、
(1)常態粘着力が300g/cm以上。
(2)荷重1kg、温度80℃の条件で保持力を測定したときのズレが1時間後で3mm以下。
(3)水噴霧後のガラス板に貼り合せた後6時間維持後の粘着力が常態粘着力の20%以上。
(4)ガラス板と貼り合せ、温度70℃の条件で1週間維持した後、剥離したときの、ガラス板上に付着する1mm角サイズ以上の粘着剤残留物が100cm2当り1個以下、
の条件を全て満足することを特徴とする窓貼り用積層フィルムが記載されている。
【0005】
特許文献3には、耐候性を有する二軸配向ポリエステルフィルムを基材(A)とし、該基材の少なくとも片面に熱線反射層(B)および表面保護層(C)を設けた積層フィルムであって、該積層フィルムの可視光線透過率が50%以上、近赤外線反射率が50%以上、かつヘーズ値が5%以下であることを特徴とする屋外使用に適した熱線反射フィルムが記載されている。
【0006】
特許文献4には、所定の厚みで所定の形状を成し、透明プラスチック樹脂から形成されたフィルム本体と、当該フィルム本体の裏面に所定の厚さで粘着形成した接着剤層と、所定の厚みで所定の形状を成した透明プラスチック樹脂から形成され、上記フィルム本体の接着剤層に着脱自在に接合する剥離フィルムとから構成された車両のガラス面に貼着する日除用カーフィルムにおいて、上記フィルム本体の表面から、上記接着剤層を介して上記剥離フィルムの一部分まで貫通形成した空気抜穴を所定の間隔で多数設けたことを特徴とする車両のガラス面に貼着する日除用カーフィルムが記載されている。
【0007】
特許文献5には、基材と粘着剤層とを備え、一方の面から他方の面に貫通する貫通孔が複数形成されている粘着シートであって、前記貫通孔の前記基材および粘着剤層における孔径は0.1〜300μmであり、孔密度は30〜50,000個/100cmであることを特徴とする粘着シートが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平10−250004号公報
【特許文献2】特開2000−96009号公報
【特許文献3】特開2000−117918号公報
【特許文献4】特開平07−164873号公報
【特許文献5】国際公開第2004−061032A1号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上記のごとき、窓ガラス接着性フィルムは、窓ガラスの飛散を防止する機能を備えるために、窓ガラスに対して充分な接着力を有することから、そもそも、ガラスから剥がすことができないか、または特殊な薬剤等を用いなければ剥がすことができず、取り扱いが難しかった。そして、空気抜き穴を有する窓ガラス接着性フィルムには、窓ガラスの飛散を防止する機能のための高接着力から、たとえ粘着剤を用いたタイプのフィルムであっても、一般の消費者にとっては、1)大面積化するとハンドリングが悪くなり貼り付けが困難、2)気泡を残さないようにするには単位面積当り多数の穴を設けることが必要で不透明感を生じる、3)気泡を抜くためには指などで強くしごくこと等が必要、4)フィルムを剥がす必要性が生じた場合にも、粘着剤の残り無くきれいに剥がすことが困難といったことがあった。
【0010】
本発明の課題は、職人等でない一般消費者によっても、特に建物、自動車等の窓に、大面積であっても容易に吸着させることができ、さらに気泡の発生を抑え、また、微細な気泡が残ったとしても、簡単なスキージ等を軽く行うことにより容易に気泡を充分に除去できて大幅に作業時間が短く、さらに吸着層の残りまたは吸着跡を生じることなく窓から容易に剥がすことができる、耐候性が高く、透明性が高く、審美性の高い窓貼り用積層フィルムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、接着性あるいは粘着性を有さず窓と吸着し、吸着力に応じた孔直径および孔ピッチを有する貫通孔を設けた積層フィルムを提供することにより、上記問題を解決できることを見いだし、本発明に至ったものである。
【0012】
本発明によれば、プラスチックフィルム層と、窓との吸着面を有するシリコーンゴム層とを含む、100平方cm当たり1個以上の貫通孔を有する窓貼り用積層フィルムであって、前記シリコーンゴム層は、接着性あるいは粘着性を有さない、窓貼り用積層フィルムが提供される。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係る100平方cm当たり1個以上の貫通孔を有する積層フィルムによれば、積層フィルム中のシリコーンゴム層が、接着性あるいは粘着性を有さず、窓と吸着するため、シリコーンゴム層の吸着残りおよび/または吸着跡なく窓から容易に剥がすことができ、さらに吸着力に応じた孔直径および孔ピッチの貫通孔を有する積層フィルムを使用することにより、職人等でない一般消費者であっても、簡易な操作で容易に充分に空気抜きを行いつつ大面積のフィルムを短時間で容易に吸着でき、また、微細な気泡が残ったとしても、簡単なスキージ等を軽く行うことにより容易に気泡を充分に除去できて大幅に作業時間が短く、さらに吸着層の残りまたは吸着跡を生じることなく窓から容易に剥がすことができる、耐候性が高く、透明性が高く、審美性の高い積層フィルムを得ることができるものである。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】図1は、本開示に係る貫通孔を有する積層フィルムの断面図を記載する。
【図2】図2は、本開示に係る貫通孔を有する積層フィルムの上面図を記載する。
【図3】図3は、本開示に係る貫通孔を有する積層フィルムと被吸着面との間の空気または水が、移動する様子を示した模式図である。
【図4】図4は、プラスチックフィルム層上の、シリコーンゴム層側に金属層が積層された、本開示に係る貫通孔を有する積層フィルムを記載する。
【図5】図5は、プラスチックフィルム層上の、シリコーンゴム層側に印刷層が積層された、本開示に係る貫通孔を有する積層フィルムを記載する。
【図6】図6は、プラスチックフィルム層上の、シリコーンゴム層側の反対側に印刷層が積層された、本開示に係る貫通孔を有する積層フィルムを記載する。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の代表的な実施態様を例示する目的でより詳細に開示するが、本発明はこれらの実施態様に限定されない。
【0016】
本発明に係る窓貼り用積層フィルムは、プラスチックフィルム層と、窓との吸着面を有するシリコーンゴム層とを含む、100平方cm当たり1個以上の貫通孔を有する窓貼り用積層フィルムであって、前記シリコーンゴム層は、接着性あるいは粘着性を有さない、窓貼り用積層フィルムである。
【0017】
この積層フィルムは、接着性あるいは粘着性を有さず、窓と吸着するため、シリコーンゴム層の吸着残りおよび/または吸着跡なく窓から容易に剥がすことができる。そして吸着力に応じた孔直径および孔ピッチの貫通孔を有する積層フィルムを使用することにより、透明性が高く審美性に優れ、職人等でない一般消費者であっても、簡易な操作で容易に充分に空気抜きを行いつつ大面積のフィルムを短時間で容易に吸着でき、大面積であるために継ぎ目などが少なく、また審美性に優れた積層フィルムを得ることができるものである。
【0018】
図1に、本開示に係る100平方cm当たり1個以上の貫通孔を有する窓貼り用積層フィルムの断面図を示す。プラスチックフィルム層1の片面上に窓との吸着面21を有するシリコーンゴム層2が積層されていて、積層フィルムの上面11から吸着面21までを貫通する孔5を有し、そして吸着面21を介して窓に吸着できる。
図2に、本開示に係る100平方cm当たり1個以上の貫通孔を有する窓貼り用積層フィルムの上面11の方向から見た上面図を示す。幅W×長さLの積層フィルム中に、フィルムの端から孔の中心までPの距離、孔ピッチPで複数の直径Dの孔が設けられている。
図3に、本開示に係る100平方cm当たり1個以上の貫通孔を有する窓貼り用積層フィルムにおいて空気、水等が排出される様子を示す模式断面図を示す。例えばフィルムが被着面と吸着力Aで吸着している場合に、スキージ等により力Fを加えることで、これらの間にある空気、水等6が容易に移動し、直径Dを有する孔5から排出される。
図4に、上記とは異なる本開示に係る100平方cm当たり1個以上の貫通孔を有する窓貼り用積層フィルムの断面図を示す。プラスチックフィルム層1上の、シリコーンゴム層2側に金属層3が積層され、更に窓との吸着面21を有するシリコーンゴム層2が積層されている。
図5に、また別の本開示に係る100平方cm当たり1個以上の貫通孔を有する窓貼り用積層フィルムの断面図を示す。プラスチックフィルム層1上の、シリコーンゴム層2側に印刷層4が積層され、更に窓との吸着面21を有するシリコーンゴム層2が積層されている。
図6に、更に別の本開示に係る100平方cm当たり1個以上の貫通孔を有する窓貼り用積層フィルムの断面図を示す。プラスチックフィルム層1の片面上に、窓との吸着面21を有するシリコーンゴム層2が積層され、シリコーンゴム層2とは反対側のプラスチックフィルム層1の面上に、印刷層4が積層されている。
【0019】
本明細書中において、以下の用語はそれぞれ以下のような定義を有する。
「吸着」とは、接着あるいは粘着によらずに、付着物が被付着物と着脱可能に一体化し、付着物を剥がした後に、付着物の凝集破壊がないことをいう。
「粘着」とは、感圧接着をいい、接着に含んでもよい。
「粘着付与剤」とは、室温における弾性率を下げることによってガラスの微小表面への追従性およびアンカー効果を上げるためにシリコーンゴム層に添加される物質をいう。
「孔の直径」、「孔直径」または「孔径」とは、孔の貫通方向から観察して、孔の形状によらず、孔の大きさの最大寸法をいう。
「孔ピッチ」とは、任意の1つの孔と、この孔から最も近い位置にある孔との中心点間の距離をいう。
「窓」とは、ガラス、プラスチック等でできた厚みを有する板をいう。
「透明」とは、可視光線、すなわち波長範囲380nm〜780nmにおいて、光線透過率が80%以上であることをいう。
【0020】
本発明に係るシリコーンゴム層としては、特に制約無く、シリコーンゴムとして一般的に知られているものを使用できる。特に、シリコーンゴム層としては、下記に詳細を示すように、反応性ポリジメチルシロキサン等を含むシリコーン主剤と、架橋剤とを混合させて触媒下、プラスチックフィルム層上で硬化させることにより得たものを用いると、プラスチックフィルム層とシリコーンゴム層との間の接着力が充分となり、かつ容易にシリコーンゴム層を得ることができる。シリコーン主剤、架橋剤、触媒の組み合わせとしては、(i)シリコーン主剤として末端水酸基含有ポリジメチルシロキサンおよび/またはポリジメチルシロキサンとポリジフェニルシロキサンの共重合体等を、架橋剤として多官能性−Si(OCH型架橋剤等を、触媒としてジブチルスズジラウレート等を用いる縮合型(湿気硬化型)、(ii)シリコーン主剤としてビニル基含有ポリジメチルシロキサンおよび/またはポリジメチルシロキサンとポリジフェニルシロキサンの共重合体等を、架橋剤としてSi−H含有シロキサン型架橋剤等を、触媒として白金触媒等を用いる付加型、(iii)シリコーン主剤として末端アミン基含有ポリジメチルシロキサンおよび/またはポリジメチルシロキサンとポリジフェニルシロキサンの共重合体等を、架橋剤としてポリイソシアネート基含有架橋剤等を、触媒としてジブチルスズジラウレート等を用いるシリコーンポリウレア型の3タイプをあげることができる。
【0021】
シリコーン主剤の重量平均分子量は、特に制約無く、約5万以上、約10万以上、約20万以上、約30万以上であることができ、約200万以下、約100万以下、約50万以下、約40万以下であることができる。シリコーン主剤の重量平均分子量は、約30万以上および約50万以下であると、適用しやすいため適する。
【0022】
1モルのシリコーン主剤中の反応基、すなわち、例えば、縮合型における末端水酸基、付加型におけるビニル基、シリコーンポリウレア型における末端アミノ基に対して使用される架橋剤のモル量は、硬化後に吸着性を妨げなければ、特に制限はないが、約0.5以上、約1.0以上、約1.5以上であることができ、約3.0以下、約2.0以下であることができる。
【0023】
1モルのシリコーン主剤に対する架橋剤のモル量は、硬化後に残留する未反応のシリコーン主剤や架橋剤等をなるべく残さないように、縮合型または付加型であれば約0.5〜約3.0であると適し、シリコーンポリウレア型であれば、約0.5〜約1.5であると適する。1モルのシリコーン主剤に対する架橋剤のモル量は、約1.0であれば当量となるため、好適である。
【0024】
シリコーン主剤と架橋剤との架橋の度合いは、下記に詳細を示すように、硬化後のシリコーンゴム層のゲル分率により表わすことができる。
なお、シリコーンゴム層が、下記に記載する粘着付与剤を含む場合には、このゲル分率には、粘着付与剤の含有量を含まない。
【0025】
ゲル分率は、約90%以上、約95%以上、約98%以上、約99%以上、約99.8%以上であることができ、約90%以上であれば、剥がし後にガラス面上に吸着跡等をほとんど残さず適しており、剥がし後にガラス面上に吸着跡等を全く認識できない程度に優れるという点では、約99%以上であれば、さらに好適であり、約99.8%以上であれば、特に好適である。
【0026】
シリコーン主剤と架橋剤との架橋反応では、必要に応じて、触媒を使用することができる。この場合、シリコーン主剤および架橋剤に対する触媒の量は、縮合型またはシリコーンポリウレア型であれば、重量で、約0.0001%以上、約0.00015%以上、約0.001%以上あることができ、約3.0%以下、約2.0%以下、約1.0%以下であることができ、付加型であれば、重量で、約1.0ppm以上、約2.0ppm以上、約5.0ppm以上であることができ、約100ppm以下、約90ppm以下、約80ppm以下であることができる。
【0027】
シリコーン主剤および架橋剤に対する触媒の量は、重量で、縮合型またはシリコーンポリウレア型で0.0001〜3.0%、付加型では、1〜100ppmであれば、反応が充分に進行して経時変化がなく、硬化後のシリコーンゴム層の特性を損なわないため適する。
【0028】
シリコーンゴム層は、ガラス、プラスチック等窓の材質を選ばず吸着し、例えば、窓ガラス用のガラスに貼り付けて、貫通孔を有する窓貼り用積層フィルムとして測定した場合に、下記に測定の詳細を示すJIS K6854−1に準拠して行われる90°剥離試験により、約0.01N/m以上、約0.05N/m以上、約0.1N/mの吸着力を有することができる。一方、約15N/m以下、約10N/m以下、約5N/m以下の吸着力を有することができる。
【0029】
シリコーンゴム層の厚みとしては、吸着後の自重等による剥離等が生じなければ、特に限定されず、硬化後の厚みで、約40μm以下、約30μm以下、約25μm以下、約20μm以下、約15μm以下、約10μm以下であることができ、一方、うねりや凹凸のある表面上に平滑なシリコーンゴム層を形成するために、約0.3μm以上、約0.5μm以上、約0.7μm以上、約1.0μm以上、約2.0μm以上であることができる。
【0030】
シリコーンゴム層の厚みは、薄すぎると被着物に吸着しにくくなるため、0.5μm以上であれば適し、1.0μm以上であればさらに適する。そしてシリコーンゴム層の厚みは、経済性の点から、30μm以下であれば適し、20μm以下であればさらに適する。
【0031】
シリコーンゴム層は、基本的にその他の添加剤等を含まないが、必要であれば、下記プラスチックフィルム層および金属層の所に記載した添加剤などを含むことができる。
【0032】
本発明に係るシリコーンゴム層は、当業者に知られている粘着付与剤、すなわち、例えば、室温における弾性率を下げることによってガラスの微小表面への追従性およびアンカー効果を上げるための物質を実質的に含まない。
しかし、シリコーンゴム層の耐候性、吸着性等を損なわなければ、特に制限なく一般に使用されている粘着付与剤を加えることができる。具体的には、粘着付与剤としては、例えば、MQレジンがあげられる。
【0033】
MQレジンは、例えば、分子内にRSiO−(M体)およびSiO−(Q体)の構造を有する、通常、重量平均分子量が1万〜1.5万の固形樹脂であって、Q体1モルに対してM体が0.7〜1.1モルのものが使用される。シリコーン主剤等に混合溶解させた後に、硬化させることによって、使用できる。
【0034】
本発明に係るシリコーンゴム層は、粘着付与剤を、重量で、約15%以下、約10%以下、約5%以下含むことができ、約0.1%以上、約1%以上含むことができる。なお、市販されている一般的な粘着剤は、通常、50重量%以上のMQレジン等の粘着付与剤を含有することが知られている。
【0035】
シリコーンゴム層が、粘着付与剤を含む場合でも、シリコーンゴム層の厚み、粘着力等は、上記粘着付与剤のないシリコーンゴム層の所に記載した範囲に調整可能である。
【0036】
シリコーンゴム層には、通常、下記に記載する保護シート等により埃、塵等の付着物が付かないようになっていて、窓に良好に吸着できる。しかし、必要に応じて水や溶剤、界面活性剤等を窓またはシリコーンゴム層に噴霧などによって適用してから吸着させることも可能である。
【0037】
本発明に係るプラスチックフィルム層の材質としては、特に制限はなく、例えば、ポリエステル、ポリアミド、ポリオレフィン、ポリ塩化ビニル、ポリカーボネート、アクリル系樹脂、フッ素樹脂等よりなるフィルムを用いることができる。
【0038】
また、プラスチックフィルム層の構成は、必要に応じて、反射率や透過率を調整する等の目的で、共押出し等による任意の層数の多層構造をとってもよい。
【0039】
これらの中でも、透明性、寸法安定性および経済性等の点でポリエステル、ポリカーボネート、アクリル系樹脂およびポリオレフィンが適する。さらに特に、透明性、経済性、耐候性、耐熱性、機械特性等の点で、ポリエステルフィルムが適する。ポリエステルフィルムの場合、特に制限なく、用途に応じて、一軸延伸ポリエステルフィルム、二軸延伸ポリエステルフィルム、あるいは無延伸ポリエステルフィルムなどを使用できる。
【0040】
プラスチックフィルム層の厚みは、柔軟性上等の問題がなければ、特に限定されず、約200μm以下、約100μm以下、約50μm以下であることができ、約10μm以上、約20μm以上、約30μm以上であることができる。プラスチックフィルム層の厚みは、約30μm以上かつ約100μm以下であれば、窓への吸着の際の取り扱いが容易となり適する。
【0041】
プラスチックフィルム層は、さらに必要に応じて、特に制限なく、帯電防止剤、 安定剤、潤滑剤、架橋剤、ブロッキング防止剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、赤外線吸収剤、光線遮断剤、意匠を付与するため等の着色剤、蒸着等の加工時のハンドリングを良好なものとするための滑剤などを含有することができる。
【0042】
プラスチックフィルム層では、例えば、赤外線吸収剤と紫外線吸収剤とを併用することにより、可視光線の透過率を下げずに、紫外線と赤外線の透過率を下げることができる。さらに、例えば、近赤外線領域の光を選択的に反射する多層構造のプラスチックフィルム層と赤外線吸収剤および紫外線吸収剤とを組み合わせれば、可視光の透過率を下げずに、赤外線および紫外線の透過率のみを下げたものとすることも可能である。
【0043】
本発明にかかる積層フィルムは、プラスチックフィルム層の少なくとも片面に、赤外線、紫外線、可視光線等を反射する等の目的で、金属層および/または金属化合物層を有することができる。金属層を用いると、赤外線から紫外線まで全領域において、透過率がフラットとなったり、特定の波長に吸収を有したりすることなどが一般的に知られているため、用途に応じて、例えば、広範な種類の金属層を使用することができる。金属層を構成する金属化合物としては、Au、Ag、Cu、Al等の金属もしくは合金を使用することができる。コストと反射率の点から、Alまたはその合金が好適である。その他、金属層を構成する金属化合物として、一般に知られているITO(酸化インジュウムに数%の酸化錫を混合したもの)等を用いてもよい。なお、必要に応じて金属物質を2種以上併用してもよい。
特に、図4に示されるように、プラスチックフィルム層と、シリコーンゴム層との間に金属層を有すると、金属層が、擦り等から保護されて好適である。また、金属層の、プラスチックフィルム層側とは反対の面には、金属層の酸化を防止する目的で防錆コート層があってもよい。
【0044】
金属層の光線透過率は、約1%以上、約5%以上であることができ、約75%以下、約70%以下、約65%以下であることができ、通常、平均値で5%〜20%のものが多く用いられるが、35%〜65%が適する場合もある。
【0045】
金属層の加工法については、特に制限はなく、例えば、蒸着法、スパッタリング法、プラズマCVD法など、金属薄膜を生成させる一般的に使用される方法により、行うことができる。また、意匠性付与など、必要な場合には、金属箔のドライラミネーションを用いることもできる。
【0046】
積層フィルムは、例えば、図5、6に示すように装飾目的で、プラスチックフィルム層上のシリコーンゴム層側および/又はその反対側に単層また多層の印刷層を含むことができる。
【0047】
印刷層の形成には、スクリーン、グラビア、オフセット、インクジェット、静電塗装などの知られた方法を用いることができる。市販されている多種の耐候性インクを適用する点では、スクリーン印刷を使用してもよい。印刷層は、例えば、プラスチックと金属層との間に位置すれば、摩擦などによる色落ちが少なくて適する。
【0048】
逆に、シリコーンゴム層との反対側上に、印刷層を設ければ、例えば、窓に積層フィルムを貼り付ける直前に印刷することができ、タイムリーな、公告、商品の価格等の自由な印刷や装飾等を行うことが可能となる。
【0049】
また、プラスチックフィルム層上に印刷する代わりに、プラスチックフィルム層中に模様パターン等を形成するように着色剤を含ませてもよい。
【0050】
積層フィルムは、着色剤等を含む場合を除き、積層フィルム全体で、約10%以上、約30%以上、約40%以上の可視光線透過率を有することができ、約99.9%以下、約90%以下、約80%以下、約60%以下の可視光線透過率を有することができる。
【0051】
積層フィルムは、シリコーンゴム層とプラスチック層などとの間の接着強度を上げる目的で、シリコーンゴム層とプラスチック層などとの間にコーティング層を有することができる。また、プラスチックフィルム層などへのシリコーンゴム層の適用性または接着性などを改良するために、適用前にプラスチックフィルム層などに、化学処理または放電処理を施してもよい。
【0052】
積層フィルム最表面の耐スクラッチ性および/または防汚性を上げるために、プラスチックフィルム層の最表面や、プラスチックフィルム層の印刷層等の上に耐スクラッチ層および/または防汚層を設けることができる。耐スクラッチ層および/または防汚層を構成する樹脂としては、例えば、下記シリコーンゴム層の所に記載したのと同様の方法等により適用した、耐候性に優れる熱可塑性樹脂や熱硬化性樹脂等を用いることができ、こうした樹脂としては、例えば、フッ素樹脂、アクリル樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ウレタン樹脂、メラミン樹脂、シリコーン樹脂およびアクリルシリコーン樹脂等を挙げることができる。
【0053】
耐スクラッチ層および/または防汚層は、適用により設ける代わりに、あらかじめ表面に耐スクラッチ層および/または防汚層を設けたプラスチックフィルム層を用いることもできる。
【0054】
保護シートは、シリコーンゴム層の吸着面上に積層されている。貫通孔を有する窓貼り用積層フィルムの保管状態において、吸着面を保護し、塵、埃等が付きにくいようにするためのものであって、防塵、防汚等の機能を有するものである。保護シートとしては、柔軟性等の問題を生じない厚みを有する汎用品として市販されているPET、PP等を、特に制限なく使用できる。保護シート自体は吸着させないため、貫通孔が存在しなくてもよく、あるいは加工に好都合であれば、保護シートを貫通しないか、貫通して孔が存在していてもよい。
【0055】
また、本発明に係るシリコーンゴム層は、吸着層であって保護シートには、特に剥離性等の特性が必要ではないため、保護シートを使用する代わりに、積層フィルム自体をロール状に巻くことなどにより、プラスチックフィルム層などの最表面自体を、保護シートとして使用することも可能である。
【0056】
シリコーンゴム層の加工法としては、上記に記載したように、公知の方法によることができる。特に、プラスチックフィルム層上で、シリコーン主剤および硬化剤を、触媒によって、室温もしくは加熱下で硬化させることにより容易に形成することができる。
【0057】
シリコーンゴムの、プラスチックフィルム層への適用は、任意の段階で行うことができる。シリコーン主剤の粘度が高い場合には、シリコーン主剤と架橋剤との反応に悪影響を与えなければ、酢酸エチルやトルエン等の一般的に使用される可溶性の有機溶剤を、特に制限なく用いて、粘度を調整することができる。
【0058】
シリコーン主剤、架橋剤、触媒を含むシリコーン溶液の適用方法としては、任意の公知の方法が使用でき、例えば、ロッドコート法、コンマナイフコート法、ロールコート法、ブレードコーター法、スプレーコーター法、エアーナイフコート法、ディップコート法、キスコート法、バーコート法、ダイコート法、リバースロールコート法、オフセットグラビアコート法、マイヤバーコート法、グラビアコート法、リバースグラビアコート法、ロールブラッシュ法、スプレーコート法、含浸法、スピンコート法、及びカーテンコート法などを、単独または組合せて用いることができる。
【0059】
プラスチックフィルム層上にシリコーン主剤等を含むシリコーン溶液を適用する際には、必要に応じて、接着性、適用性を向上させるための予備処理として、プラスチックフィルム層の表面に火炎処理、コロナ放電処理、プラズマ放電処理などの物理的表面処理を行ったり、プライマー等を適用したりすることにより、シリコーンゴム層と、プラスチックフィルム層との接着性を強固にすることができる。
【0060】
プラスチックフィルム層へのシリコーン主剤、架橋剤、触媒を含むシリコーン溶液の適用は、上記に記載した適用方式によって、直接フィルムに適用してもよく、また、一度保護シート上に適用してある程度乾燥させた後、保護シートとプラスチックフィルム層とを貼り合せてシリコーンゴム層をプラスチックフィルム層に接着させてもよい。この時の硬化温度および硬化時間は、シリコーンゴムの充分な硬化が得られる条件であることが好ましい。
【0061】
本発明に係る貫通孔を有する積層フィルムでは、下記で詳細に説明する積層フィルムの形成後に、積層フィルムの上面〜吸着面までを貫通する貫通孔3が複数形成されている。積層フィルムの被着体への吸着時に、積層フィルムの吸着面と被着体との間に巻き込まれたり、残留したりした空気、水等は、この貫通孔から積層フィルムの上面側に排出される。
【0062】
貫通孔の横断面形状は、特に限定なく、積層フィルムの上面側または吸着面側から見て、それぞれ円形、楕円形、四角形、多角形、星形等の種々の形状を取ることができ、かつ上面側からみた形状と吸着面側からみた形状が異なることができるが、上面側、吸着面側からみて同一形状の円形であると、量産コストを下げることができ適する。
【0063】
貫通孔の直径は、約0.1μm以上、約1μm以上、約5μm以上、約10μm以上、約50μm以上、約100μm以上、約300μm以上、約400μm以上であることができ約3000μm以下、約2000μm以下、約1500μm以下、約1000μm以下、約800μm以下、約500μm以下であることができる。約300μm超、2000μm以下であると好ましい。約300μm超であれば、精度良く低コストで孔を製作できて適し、一方約2000μm以下であれば使用者により視識されにくく適する。また、必要に応じて、積層フィルムの上面側と吸着面側とで貫通孔の直径を異ならせることができるが、同直径であれば精度良く低コストで孔を製作でき適する。
【0064】
貫通孔は、単位面積当りの個数が少なすぎると、貫通孔のないフィルムに比較して空気抜けの差異が生じにくくなることから、本開示に係る貫通孔を有する窓貼り用積層フィルムは、100平方cm当り約1個以上であり、100平方cm当り、約4個以上、約9個以上、約16個以上、約25個以上、約36個以上、約40000個以下、約10000個以下、約4356個以下、約2500個以下、約1600個以下、約1089個以下、約625個以下、約400個以下有することができる。
【0065】
貫通孔のピッチは、約0.5mm以上、約1.0mm以上、約1.5mm以上、約2.0mm以上、約2.5mm以上、約3.0mm以上、約4.0mm以上、約5.0mm以上であることができ、約100mm以下、約50mm以下、約30mm以下、約25mm以下、約20mm以下、約15mm以下であることができる。約2.0mm以上であれば、積層フィルムの単位面積当りの貫通孔の密度が高くならず、積層フィルムの強度の維持に適し、約30mm以下であれば、空気、水等の抜けを良好に行うことができ適する。また、孔の直径が例えば1000μm以上の場合には、貫通孔のピッチは、孔の直径の約2倍以上であれば、積層フィルムの強度が維持に適する。
【0066】
積層シートにおいて、貫通孔はその中心が三角形、正方形、長方形、多角形などの格子図形の交点を描くような形で製作できるが、孔の配置は一様であると空気、水等の貫通孔までの移動が容易であり適し、任意の貫通孔のから隣接する貫通孔までの距離が等距離であると、例えば縦横方向への最小の移動距離が必要となるだけであるので、さらに適する。
【0067】
何らかの理論に拘束されることを意図しないが、図3中の模式図において、スキージにより掛かる力をF、本開示に係る積層フィルムの吸着力をA、貫通孔の直径をD、貫通孔から空気、水等が排出されるために必要な力をP、aを定数とすると、
F>A>P=a/D・・・(式1)
の場合に、力Fのスキージにより、被吸着面と積層フィルムの間を空気・水等が移動し、貫通孔から空気、水等が排出されることができると考えることができる。
【0068】
本発明に係る積層フィルムでは、シリコーンゴム層が接着性もしくは粘着性を有さないことから、上記(式1)中のAの値が従来の接着剤、粘着剤と比較して格段と小さくなり、さらに上記(式1)中のDを大きめに設定することで、簡易なスキージ等により極めて容易に貫通孔から空気、水等を排出することが可能となっている。
【0069】
他方、従来の接着剤、粘着剤の場合、上記(式1)中のAが本発明に係る吸着と比較すると非常に大きいことから、空気、水等を移動させることが困難であり、これらの排出のためには、隣接するそれぞれの貫通孔の外縁の最短距離が許容される残留気泡サイズと同程度となるような孔ピッチに設定する必要がある。また、孔ピッチと同程度の直径Dの貫通孔を設けた場合、積層フィルムの強度を維持できない上に、全体として開口面積が大きくなることから、積層フィルム本来の機能を発揮しえなくなる。これを防止するために貫通孔の直径Dを孔ピッチに対して充分に小さな値とする必要がある。実質的に視認可能な残留気泡が除去可能な孔ピッチおよび貫通孔の直径Dに設定したとしても、貫通孔の壁面による光の散乱によりフィルムの透明性の低下を招くこととなる。
【0070】
貫通孔は、特に制限なく、従来技術である、レーザー加工、針、ドリル、高圧水流、打ち抜き型、パンチ等を用いて製造できる。
【0071】
レーザー加工に利用するレーザーの種類は、特に制限なく、例えば、エキシマレーザー、炭酸ガス(CO)レーザー、TEA−COレーザー、YAGレーザー、UV−YAGレーザー、半導体レーザー、YVOレーザー、YLFレーザー等を利用することができる。
【実施例】
【0072】
積層フィルムの90°剥離の測定:JIS K6854−1に準拠して行った。具体的には、室温室湿度下で、積層フィルムと同じ寸法の洗浄された窓用ガラス板の上に、長さ200mm、幅25mmの短冊状に裁断した積層フィルムを吸着させ、その上から2kgゴムローラーを1往復させて積層フィルムの全面を吸着させた。次に引張試験機(メーカー名:オリエンテック株式会社、品番:RTG−1225)に取り付けて、積層フィルムの一方を、50mm/分の速度で、フィルム面から90°の方向に引張り、引張り試験を5回行った値の平均値をもって吸着力または粘着力とした。
【0073】
ゲル分率の測定:室温室湿度下で、0.5gの精密に秤量(W0(g)とする)した試料を200ccのトルエン中に24時間浸漬し、試料からトルエン溶解成分を溶出させた後で、不溶成分を取り出してアセトン洗浄した後で、この不溶成分を100℃に設定した真空乾燥機(メーカー名:ヤマト科学株式会社、型番:DP32)中で、0.1MPaの圧力下、1時間乾燥させ、この不溶成分の重量(W1(g)とする)を精密に秤量して、式:ゲル分率(%)=(W1/W0)×100により求めた。
【0074】
積層フィルムへの貫通孔の作製方法:室温室湿度下で以下のいずれかの手段;
COレーザー:メーカー名:住友重工、型番:IMPACT L500、(孔の直径が、出射側50μm以上(入射側100μm以上500μm以下)の場合使用)
エキシマレーザー:メーカー名:住友重工、型番:INDEX800
(孔の直径が、出射側10μm以上50μm未満(入射側40μm以上100μm未満)の場合使用)
パンチ(メーカー名:自社生産、直径約500μm以上の孔を作製)。
により、プラスチックフィルム層側からレーザー光を入射またはパンチを行い、孔ピッチ間隔で貫通孔を作製した。
ここで孔ピッチが5.0cmの場合は、シートの縦辺・横辺から孔までの距離を2.5cmとし、孔ピッチが5.0cm未満の場合は、シートの縦辺・横辺から孔までの距離を1.0cmとした。
【0075】
粘着付与剤:粘着付与剤を用いる場合には、MQレジン(メーカー名:東レ・ダウコーニング(株)、品番:BY15−701A)を使用した。
【0076】
積層フィルムの製造方法:室温室湿度下において、シリコーン主剤(東レ・ダウコーニング(株)、SD7226(トルエン中シリコーンレジンの30重量%溶液))、シリコーン用硬化触媒含有架橋剤(東レ・ダウコーニング(株)、SRX212)、およびコーティングしやすくするための希釈剤として酢酸エチル(ゴードー(株)工業用グレード)を、それぞれ100:0.6:100(重量比)の比率で混合し、15重量%のシリコーンコーティング溶液を得た。次に、この溶液をソルベントコーターに入れ、コーティング速度30m/分で、プラスチックフィルム層上に適用しながら、100℃で10分間、溶剤を蒸発させて硬化させ、シリコーンゴム層を有する積層フィルムを得た後に、保護シート(30μm厚OPP(東レ株式会社、トレファン30−2500))をシリコーンゴム層上に適用した。次に、この保護シート付き積層フィルムを200mm×200mm、および剥離試験用に25mm×200mmの各幅に断裁した。
【0077】
比較例に係る積層フィルムとして、以下のものを用いた。
a)3M社製のスコッチティント(登録商標)品番:RE87CLIS:PETフィルム表面に赤外線吸収剤と紫外線吸収剤を添加したアクリル系接着層を有する日射遮蔽機能を有するガラス飛散防止用の市販の製品。このフィルムは、90°剥離試験で500N/mの粘着力であり、ゲル分率は95%、可視光線の透過率は85%であった。
b)3M社製のスコッチティント(登録商標)品番:RE80CLIS:構造はRE87CLISと同じであるが、可視光線透過率81%の日射遮蔽機能を有するガラス飛散防止用の市販の製品。
c)3M社製のスコッチティント(登録商標)品番:RE18SIAR:PET表面にAlを蒸着したフィルムであり、Al蒸着層の上に紫外線吸収剤を添加したアクリル系接着層を有する、可視光線透過率18%の日射遮蔽機能を有するガラス飛散防止用の市販の製品。このフィルムは、90°剥離試験で500N/mの粘着力であり、ゲル分率は95%であった。
d)保護シート(30μm厚OPP(東レ株式会社、トレファン30−2500))上に、アクリル系粘着剤(日本合成化学工業社製,コーポニールN−2147,固形分:35重量%)100重量部に酢酸エチル25重量部を配合し、次いでイソシアネート系架橋剤(日本ポリウレタン工業社製,コロネートL)を1重量部配合し、十分に攪拌したものを、乾燥後の厚さが30μmになるようにナイフコーターによって塗布し、90℃で、1分間乾燥させ、次に50μm厚のPETフィルム(ルミラー 50S10(東レ(株)))上を圧着し、3層構造の積層体を得たもの。このフィルムは、90°剥離試験で500N/mの粘着力であり、ゲル分率は95%であった。
【0078】
参考例1
上記積層フィルムの製造方法に従って、プラスチックフィルム層として50μm厚のPETフィルム(ルミラー 50S10(東レ(株)))を使用して、厚さが1.4μm、2.0μm、2.5μm、5.0μm、25μm、30μm、35μmのシリコーンゴム層を有する積層フィルムを使用して、サンプルより大きいサイズの、窓用ガラス(寸法:220mm角、厚み:3mm、メーカー名:旭硝子(株)、品番:FL3)に貼り付けて評価した。これら積層フィルムは、ガラスに対する90°剥離試験でそれぞれ、0.3N/m、0.3N/m、0.3N/m、0.4N/m、0.7N/m、0.7N/m、0.7N/mの吸着力であり、ゲル分率は、すべてのサンプルにおいてほぼ等しく95%であった。
【0079】
これらの200mm角の寸法を有するサンプルを、アクリル製窓(寸法:220mm角、厚み:3mm、メーカー名:三菱レイヨン(株)、品番:アクリライト)およびガラス製窓(寸法:220mm角、厚み:3mm、メーカー名:旭硝子(株)、品番:FL3)に吸着させたところ、シリコーンゴム層の厚さが、2.0μm〜30μmのものは、窓との界面に生じた気泡については、指でしごくことにより容易に除去が可能であり、実質的に外観上の不良無く良好に吸着した。10回貼り直しを行ったが、1回目と同様に、実質的に外観上の不良無く良好に吸着した。その後、積層フィルムを剥離したところ、目視による観察では、アクリル、ガラスともに被吸着面上に、吸着かす、吸着跡等を残さずに、きれいに剥離した。シリコーンゴム層の厚さが1.4μmのものは、気温50℃、湿度85%の環境に暴露したところ、168時間でガラスとの間に一部剥離が生じた。35μm厚のものは、溶剤の蒸発が十分ではなく、保護シートを剥がす際にプラスチックフィルム層とシリコーンゴム層との間に一部剥離が生じた。
【0080】
参考例2
参考例1において、シリコーンゴム層が5μmで、可視光透過率18%のAl蒸着層を有するPETフィルム(50テトライト T=18T(尾池工業(株)))を用いた以外は、参考例1と同様の手順で得た積層フィルムを製造した。200mm角の寸法を有するサンプルを、ガラス製窓に吸着させ、室温20℃、室湿度の環境下、試料の中心部分において、温度計を試料から10cm離れたところに放置し、太陽光の下15分放置した後に、温度を測定したところ、22℃であった。
【0081】
参考例3
参考例1において、シリコーンゴム層の厚みを5μmとし、粘着付与剤を、重量で10%、15%、20%、加えたものを製造したほかは、参考例1と同様の手順で得た積層フィルムを使用した。これらの積層フィルムは、ゲル分率が参考例1と同じであり、90°剥離試験で、それぞれ、12N/m、18N/m、20N/mの吸着力を示した。参考例1と同様に、アクリル製窓およびガラス製窓への貼り剥がし試験を行ったところ、粘着付与剤を10重量%、15重量%含むものでは、参考例1と同様の良好な結果が得られたが、20重量%のものでは、目視で粘着跡を確認した。
【0082】
比較例1
窓ガラスに、200mm角の寸法を有する、上記a)〜c)のフィルムを貼り付けたところ、気泡、しわが発生し、外観上良好な貼り付けはできなかった。貼り剥がしを行おうとしたが、粘着剤に糸引きが発生し粘着剤面の平滑状態が失われ、再貼り付けを行っても良好な外観を得ることはできなかった。
【0083】
比較例2
ガラス製窓に、窓貼り用積層フィルムを貼り付けることなく、室温20℃、室湿度の環境下、窓中心部分において、温度計を窓から10cm離れたところに放置し、太陽光の下15分放置した後に、参考例1と同様の手順で、温度を測定したところ、36℃であった。
【0084】
ガラス製窓に、200mm角の寸法を有する、上記a)〜c)のフィルムを貼り付け、室温20℃、室湿度の環境下、試料中心部分において、温度計を試料から10cm離れたところに放置し、太陽光の下15分放置した後に、参考例1と同様の手順で、温度を測定したところ、赤外線吸収層を持つa)RE87CLISおよびb)RE80CLISは、それぞれ、34℃、32℃であり、赤外線反射層を有するRE18SIARは、24℃であった。
【0085】
実施例1〜30、参考例3、比較例3〜6
参考例1において、シリコーンゴム層の厚みを5μmとしたほかは同じ条件で、参考例1と同様の手順で積層フィルムを得て使用したもの(参考例3)、さらに上記積層フィルムへの貫通孔の作製方法に記載した手順で孔を開けたもの(実施例1〜30)、貫通孔を開け上記比較例用d)のフィルムを用いたもの(比較例3〜6)で100mm×100mmのものを、120mm×120mm×3mmtのガラスに吸着させて、以下の評価を行った。このフィルムは、90°剥離試験で0.4N/mの吸着力であり、ゲル分率は95%、粘着性付与剤の含有率は、0重量%であった。
【0086】
フィルム強度評価:孔の直径がピッチの約1/2超になると、フィルムの引き裂き強度が急激に低下したため、NGとした。シート強度を、以下のいずれかで評価した。
A:容易に手で引き裂くことができなかった
B: 容易に手で引き裂くことができた
【0087】
気泡消失評価:保護フィルムを剥がした後、評価シートを、それぞれ被吸着物に貼りつけ、貼付が完了したら、スキージ(メーカー名:3M社、型番:PA−1)を使って手作業にて気泡を押し出して、目視により、
A:フィルムを吸着させた瞬間に気泡の目立った収縮があり、スキージで気泡の直径が100μm以下まで縮小した、
B:フィルムを吸着させた瞬間に気泡の目立った収縮はないが、スキージで気泡の直径が100μm以下まで縮小した、
C:フィルムを吸着させた瞬間に気泡の目立った収縮はないが、スキージで気泡の直径が100μm超まで縮小した、
D:フィルムを吸着させた瞬間に気泡の目立った収縮はなく、スキージで気泡の直径に変化がない、のいずれかで評価した。
【0088】
貫通孔の視認性評価:気泡消失試験を行った試験片を用いて貫通孔の視認性を確認した。室内蛍光灯の下で、肉眼によって、評価シート表面における貫通孔が視認できるかを検査した。評価シートは角度を変えて見て、
A:フィルム単独では見えるが窓に貼ると見えない、
B:窓に貼っても見えるが3m離れると見えない、
C:窓に貼って3m離れても見えるか、貫通孔の多さおよび/または多くの気泡残りによりフィルム全体の透明度が悪くなる、
のいずれかで評価した。
【0089】
上記のフィルム強度評価、気泡消失評価および貫通孔の視認性評価を行った結果を以下に示す。
【表1】

表中、孔作製方法は、それぞれ、
E:エキシマレーザー(孔の直径、約80μm程度までの場合)
C:COレーザー(孔の直径、約100〜約300μmの場合)
P:パンチ(孔の直径、約500μm以上の場合)
を表わす。
【0090】
表1において実施例のフィルムは、吸着力により貼り付けられているため、気泡は高い自由度をもって移動できるので、許容気泡サイズを100μmとした場合、比較例のフィルムに比べて遙かに大きな孔の直径と孔ピッチである孔の直径約300μm超、孔ピッチ2mm以上の領域でも気泡の消失が可能となっていた。また、孔の直径約300μm超、孔ピッチ50mm以下の領域において、容易に気泡の消失が可能となっており、特に孔ピッチ30mm以下の領域においては、特に容易に気泡の消失が可能となっていた。そして概して、孔の直径が1000μm未満の場合には、孔ピッチが2mm以上、および孔の直径が1000μm以上の場合には、孔ピッチが孔の直径の2倍以上であれば全体にわたって、フィルム貼付後の窓ガラス全体でみた場合、透明度の低下が極めて少なく、美観の高いフィルムを提供できた。また、美観の観点からは、孔の直径は約2000μmを超えない方が良好であったが、孔ピッチおよびアプリケーションによっては、美観を損なわない場合もあった。
【0091】
表1において比較例のフィルムでは、許容される残留気泡サイズを100μmとした場合、粘着剤を使用しているので、気泡がほとんど移動できないため、孔の直径約300μm以下、孔ピッチ1mm未満の領域で孔の直径、孔ピッチを設定しなければ実現できず、特に、孔の直径が80μm以下では、孔ピッチに関わらず、直径100μm以下まで気泡を縮小することはできなかった。孔の直径約300μm以下、孔ピッチ1mm以下の領域では、フィルムの素材の透明度が高いものであっても、貫通孔の存在によりフィルム全体としては半透明なものとなり、貼り付け後の窓ガラス全体の透明度・美観は低下してしまった。
一方、孔の直径約300μm超、孔ピッチ1mm超の領域では、フィルムそのものの透明度が高いものであったとしても細かい気泡が残るため、貼り付け後の窓ガラス全体の透明度・美観は低下してしまった。
【0092】
実施例31
孔ピッチ10mmかつ孔の直径500μm、シリコーンゴム層の厚み5.0μm、500mm×750mmの積層フィルムを、800mm×2000mmのアルミサッシ付きガラスに吸着させて評価したところ、フィルム強度評価でA、気泡消失評価でA、貫通孔の視認性評価でAとなった。このフィルムは、90°剥離試験での吸着力、ゲル分率、粘着性付与剤の含有率は、実施例1と同じであった。
実施例32〜33
実施例31において、シリコーンゴム層の硬化条件を120℃、10分間と130℃、10分に変更することより、それぞれゲル分率のみが99%のもの(実施例32)およびゲル分率のみが99.8%(実施例33)のものを用いて、フィルムを剥がした後で、ガラス表面上のシリコーンゴム層のガラスへの転写、すなわち吸着跡の評価を行った。
ここで、吸着跡の評価は、500mm×750mmの積層フィルムを、各実施例についてそれぞれ8枚、800mm×2000mmのアルミサッシ付きガラスに貼り、2日間放置後に剥がして吸着跡の目視による確認により行った。
ゲル分率99%(実施例31)のものについては、吸着跡は認められなかったが、1枚についてシリコーンゴム層とプラスチックフィルム層の間で僅かな剥離を確認した。そしてゲル分率99.8%(実施例32)では、吸着跡は認められなかった。
このように実施例31〜33に係る積層フィルムは、大きなサイズでも充分な気泡消失が可能であり、貫通孔の視認性評価が良好で、フィルム貼付後の窓ガラス全体でみた場合、透明度の低下が極めて少なく、美観の高いフィルムを提供できており、ゲル分率が高いほど、ガラス表面上に、吸着かす、吸着跡の残りが少なかった。
実施例34
貼り付け作業時間測定試験:
フィルム寸法が750mm×900mmで、シリコーンゴム層の厚みが5.0μmである(参考例1)の積層フィルムを用いて、貫通孔のないもの、およびこれをパンチ(メーカー名:自社製)により直径500μm、および700μmのポンチを用いて、孔の直径500μmかつ孔ピッチ10mm、および孔の直径700μmかつ孔ピッチ10mmでそれぞれ貫通孔を空けた計3種類のサンプルを作製した。建物の板ガラス窓(縦寸法:3.0m、横寸法:2.0m)を、スコッチ・ブライト(商標)キッチンパワーふきん(メーカー名;住友スリーエム(株)、品番:KPF−01)を使用して水拭きし、以下の手順で、上記3種のサンプルの貼り付けに要する時間を測定した。
作業者は、A、B、Cの3名、
積層フィルムのライナーは事前に除去し、測定時間は、貼り付けに必要な時間のみを計測した。
貫通孔なしのフィルム、孔の直径500μmかつ孔ピッチ10mmのフィルム、および孔の直径700μmかつ孔ピッチ10mmフィルムの順番でフィルムを貼り付けた。
作業は直径5mm以上の気泡や水だまりが無いことを確認し、終了とした。
測定結果を表2に示す。
【表2】

貼り付け平均時間で比較すると、貫通孔なしフィルムの貼り付け作業時間は4分40秒であったが、孔の直径500μmかつ孔ピッチ10mmのフィルムでは1分33秒(77%減少、すなわち33%)、孔の直径700μmかつ孔ピッチ10mmフィルムでは1分30秒(78%減少、すなわち32%)に短縮され、貫通孔を有するフィルムが気泡および水抜きに顕著な効果を奏することが確認された。
【0093】
上記から明らかなように、実施例に示した本実施態様に係る貫通孔を有する窓貼り用積層フィルムは、大面積であっても窓に容易に吸着でき、さらに良好な吸着・剥がし性を有するのみならず、剥がした後もシリコーンゴム層の残りや吸着跡がない優れた効果を奏するものである。
【符号の説明】
【0094】
1 プラスチックフィルム層
11 上面
2 シリコーンゴム層
21 吸着面
3 金属層
4 印刷層
5 貫通孔
6 空気または水

【特許請求の範囲】
【請求項1】
プラスチックフィルム層と、
窓との吸着面を有するシリコーンゴム層とを含む、
100平方cm当たり1個以上の貫通孔を有する窓貼り用積層フィルムであって、
前記シリコーンゴム層は、接着性あるいは粘着性を有さない、窓貼り用積層フィルム。
【請求項2】
前記貫通孔の直径は、300μm超、2000μm以下であり、そして前記貫通孔のピッチの最小値は、2mmまたは前記貫通孔の直径の2倍のうちいずれか大きな値である、請求項1に記載の窓貼り用積層フィルム。
【請求項3】
前記貫通孔のピッチは、さらに30mm以下である、請求項2に記載の窓貼り用積層フィルム。
【請求項4】
前記シリコーンゴム層は、0.5μm以上、30μm以下の厚みを有し、そしてゲル分率は99%以上である、請求項1〜3のいずれか一項に記載の窓貼り用積層フィルム。
【請求項5】
前記シリコーンゴム層は、1.0μm以上、20μm以下の厚みを有し、そしてゲル分率は99.8%以上であり、さらに粘着付与剤を含まない、請求項1〜4のいずれか一項に記載の窓貼り用積層フィルム。
【請求項6】
赤外線反射層を含む、請求項1〜5のいずれか一項に記載の窓貼り用積層フィルム。
【請求項7】
印刷層を含む、請求項1〜6のいずれか一項に記載の窓貼り用積層フィルム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−14012(P2013−14012A)
【公開日】平成25年1月24日(2013.1.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−146270(P2011−146270)
【出願日】平成23年6月30日(2011.6.30)
【出願人】(505005049)スリーエム イノベイティブ プロパティズ カンパニー (2,080)
【Fターム(参考)】