説明

貫通配線基板及びその製造方法

【課題】貫通孔内に充填された導体に欠陥となるボイドの無い貫通配線が配された貫通配線基板、および貫通孔又は非貫通孔に導体を充填する際のボイドの発生を抑制しうる貫通配線基板の製造方法の提供。
【解決手段】平版状の基板1を構成する一方の主面2と他方の主面3とを結ぶ貫通孔4を配し、その貫通孔4に導体5を充填してなる貫通配線6を備えた貫通配線基板10であって、基板1の一縦断面おいて貫通孔4を見たとき、貫通孔4は、該貫通孔4の内側面を側辺4p及び4qとする台形状をなし、前記台形の2つの側辺4p及び4qは、互いに非平行であり、且つ前記台形の上底又は下底をなす2つの頂点から、対辺を含む直線へ引かれる2本の垂線T及びTに対して、前記台形の2つの側辺4p及び4qがそれぞれ同じ側に傾いていることを特徴とする貫通配線基板10。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板の内部を貫通する貫通配線を有する貫通配線基板およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、基板の一方の主面と他方の主面とに個別に実装されたデバイスの間を電気的に接続する方法として、基板の内部を貫通する貫通配線を設ける方法が用いられている。
貫通配線基板の一例として、特許文献1には、基板の厚み方向とは異なる方向に延びる部分を有する貫通孔に導体を充填してなる貫通配線を備えた貫通配線基板が記載されている。
【0003】
その一例として、図17に示すものが挙げられる。この貫通配線基板100は、石英ガラス等からなる基板101を構成する一方の主面102と側面103とを結ぶように貫通孔104を配し、該貫通孔104に銅(Cu)、タングステン(W)、金錫(Au−Sn)等の導体105を充填してなる貫通配線106を備える。
【0004】
従来、このような貫通配線106を基板101内部に形成するには、基板101内部を斜めに延びる貫通孔104を形成後、めっき法、スパッタ法、溶融金属充填法、CVD法、超臨界成膜法などにより、前記導体105を充填する方法が用いられている。
これらの方法の中でも、半導体プロセスとの整合性等のため、めっき法による導体充填がしばしば用いられている。
【0005】
一例として、電界めっきによる貫通配線基板100の従来の製造方法のを図18に示す。まず、基板101の内部に基板101の一方の主面102に対して斜め方向に延伸する貫通孔104を形成する(図18(a))。次いで、その内壁面および一方の主面102に電界めっきのためのシード層115を形成する(図18(b))。つづいて、一方の主面102のシード層115上にレジスト113で適宜パターンを施した後(図18(c))、電界めっきによって導体105を貫通孔104内に充填するために、基板101をめっき液に浸漬し、シード層107とめっき液内に別途設けたアノード電極(不図示)との間に適当な電流を流して、貫通孔104内で導体105を析出させて、貫通配線106を形成する(図18(d))。その後、適当な方法によって、一方の主面102上のシード層115及びレジスト113を除いて、貫通配線基板100を得る(図17)。なお、図17ではシード層115を省略して示していない。
上記では電界めっき法を用いて貫通孔内に導体を充填する手法を説明したが、無電界めっき法によっても貫通孔内に導体充填することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2006−303360号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところが、前記従来の製造方法では、めっきの際に貫通孔104の内部に導体105が充填されないボイド(空隙)109が形成されて、該ボイド109が残ったままで、貫通孔104の開口部107が導体105によって閉塞してしまう問題がしばしば起きている(図19)。ボイド109が生じてしまうと、その内部にめっき液等の異物が残留し、貫通配線106、貫通配線基板100、及び実装した電子デバイスに少なからず悪影響を与える恐れがある。
【0008】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、貫通孔内に充填された導体に欠陥となるボイドの無い貫通配線が配された貫通配線基板、および貫通孔又は非貫通孔に導体を充填する際のボイドの発生を抑制しうる貫通配線基板の製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
従来の製造方法における問題を本発明者らが鋭意検討したところ、貫通孔104の開口部107及び108の形状に問題を解決する手掛かりを得た(図20参照)。すなわち、開口部107及び108は、その断面において形状が尖った部分110及び111をそれぞれ有している。ここで、めっきの性質上、その尖った部分110及び111において優先的にめっきが成長してしまい、貫通孔104の内部に導体105が充填される前に、該開口部110及び111が閉塞してしまうために空隙109が生じることを発見し、以下の解決手段を見出すに至った。
【0010】
本発明の請求項1に記載の貫通配線基板は、平版状の基板を構成する一方の主面と他方の主面とを結ぶ貫通孔を配し、その貫通孔に導体を充填してなる貫通配線を備えた貫通配線基板であって、前記基板の一縦断面おいて前記貫通孔を見たとき、前記貫通孔は、該貫通孔の内側面を側辺とする台形状をなし、前記台形の2つの側辺は、互いに非平行であり、且つ前記台形の上底又は下底をなす2つの頂点から、対辺を含む直線へ引かれる2本の垂線に対して、前記台形の2つの側辺がそれぞれ同じ側に傾いていることを特徴とする。
【0011】
本発明の請求項2に記載の貫通配線基板の製造方法は、平版状の基板を構成する一方の主面と他方の主面とを結ぶ貫通孔を配し、その貫通孔に導体を充填してなる貫通配線を備えており、前記基板の一縦断面おいて前記貫通孔を見たとき、前記貫通孔は、該貫通孔の内側面を側辺とする台形状をなし、前記台形の2つの側辺は、互いに非平行であり、且つ前記台形の上底又は下底をなす2つの頂点から、対辺を含む直線へ引かれる2本の垂線に対して、前記台形の2つの側辺がそれぞれ同じ側に傾いている貫通配線基板の製造方法であって、前記基板の両主面を結ぶ貫通孔となる領域をレーザー照射することにより改質する工程(A)と、その改質された部分を除去して、前記一方の主面に前記第一の開口部を有し、前記第二の開口部となる端部が前記基板に内在する非貫通孔を形成する工程(B)と、前記非貫通孔の内壁にシード層を形成する工程(C)と、前記シード層を介して前記非貫通孔の内部に導体を充填する工程(D)と、前記他方の主面を研削して、前記非貫通孔を貫通孔となし、前記他方の主面に前記第二の開口部を形成する工程(E)と、を含むことを特徴とする。
【0012】
本発明の請求項3に記載の貫通配線基板の製造方法は、平版状の基板を構成する一方の主面と他方の主面とを結ぶ貫通孔を配し、その貫通孔に導体を充填してなる貫通配線を備えており、前記基板の一縦断面おいて前記貫通孔を見たとき、前記貫通孔は、該貫通孔の内側面を側辺とする台形状をなし、前記台形の2つの側辺は、互いに非平行であり、且つ前記台形の上底又は下底をなす2つの頂点から、対辺を含む直線へ引かれる2本の垂線に対して、前記台形の2つの側辺がそれぞれ同じ側に傾いている貫通配線基板の製造方法であって、前記基板の両主面を結ぶ貫通孔となる領域をレーザー照射することにより改質する工程(G)と、その改質された部分を除去して、前記一方及び他方の主面にそれぞれ前記第一及び第二の開口部を有する貫通孔を形成する工程(H)と、前記他方の主面に導体層を貼付する工程(I)と、前記導体層を介して前記貫通孔の内部に導体を充填する工程(J)と、を含むことを特徴とする。
【0013】
本発明の請求項4に記載の貫通配線基板の製造方法は、平版状の基板を構成する一方の主面と他方の主面とを結ぶ貫通孔を配し、その貫通孔に導体を充填してなる貫通配線を備えており、前記基板の一縦断面おいて前記貫通孔を見たとき、前記貫通孔は、該貫通孔の内側面を側辺とする台形状をなし、前記台形の2つの側辺は、互いに非平行であり、且つ前記台形の上底又は下底をなす2つの頂点から、対辺を含む直線へ引かれる2本の垂線に対して、前記台形の2つの側辺がそれぞれ同じ側に傾いている貫通配線基板の製造方法であって、導体層を有する基材を、前記基板の他方の面に該導体層を接して貼付する工程(M)と、前記基板の両主面を結ぶ貫通孔となる領域をレーザー照射することにより改質する工程(N)と、その改質された部分を除去して、前記一方の主面に前記第一の開口部を有し、前記他方の主面と前記導体層とが接する境界面に前記第二の開口部を有する貫通孔を形成する工程(O)と、前記導体層を介して前記貫通孔の内部に導体を充填する工程(P)と、を含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明の貫通配線基板によれば、貫通孔内に充填された導体に欠陥となるボイドの無い貫通配線が配されているので、該貫通孔内で該導体が剥離したり、該ボイド内にトラップされていた異物が漏出する恐れが無く、デバイス実装時の信頼性が高められた貫通配線基板を提供することができる。
また、本発明の貫通配線基板の製造方法によれば、貫通孔又は非貫通孔に導体を充填する際のボイドの発生を抑制することができるので、デバイス実装時の信頼性が高められた貫通配線基板を製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明にかかる貫通配線基板の一例を示す断面図である。
【図2】本発明にかかる貫通配線基板の一例を示す断面図である。
【図3】本発明にかかる貫通配線基板の一例を示す斜視図である。
【図4】本発明にかかる貫通配線基板の一例における製造方法を示す平面図および断面図である。
【図5】本発明にかかる貫通配線基板の製造方法の第一態様を示す平面図および断面図である。
【図6】本発明にかかる貫通配線基板の製造方法の第一態様を示す平面図および断面図である。
【図7】本発明にかかる貫通配線基板の製造方法の第一態様を示す平面図および断面図である。
【図8】本発明にかかる貫通配線基板の製造方法の第一態様を示す平面図および断面図である。
【図9】本発明にかかる貫通配線基板の製造方法の第二態様を示す平面図および断面図である。
【図10】本発明にかかる貫通配線基板の製造方法の第二態様を示す平面図および断面図である。
【図11】本発明にかかる貫通配線基板の製造方法の第二態様を示す平面図および断面図である。
【図12】本発明にかかる貫通配線基板の製造方法の第二態様を示す平面図および断面図である。
【図13】本発明にかかる貫通配線基板の製造方法の第三態様を示す平面図および断面図である。
【図14】本発明にかかる貫通配線基板の製造方法の第三態様を示す平面図および断面図である。
【図15】本発明にかかる貫通配線基板の製造方法の第三態様を示す平面図および断面図である。
【図16】本発明にかかる貫通配線基板の製造方法の第三態様を示す平面図および断面図である。
【図17】従来の貫通配線基板の一例を示す断面図である。
【図18】従来の貫通配線基板の製造方法を示す断面図である。
【図19】従来の貫通配線基板の製造方法において、貫通孔内にボイドが生じた状態を示す断面図である。
【図20】従来の貫通配線基板の製造方法における途中段階を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、好適な実施の形態に基づき、図面を参照して本発明を説明する。
図1は、本発明にかかる貫通配線基板の一例である貫通配線基板10の厚み方向に切った縦断面図である。この貫通配線基板10は、平版状の基板1を構成する一方の主面2と他方の主面3とを結ぶ貫通孔4を配し、その貫通孔4に導体5を充填してなる貫通配線6を備えた貫通配線基板10であって、基板1の一縦断面おいて貫通孔4を見たとき、貫通孔4は、該貫通孔4の内側面を側辺とする台形状をなし、前記台形の2つの側辺4p及び4qは、互いに非平行であり、且つ前記台形の上底又は下底をなす2つの頂点から、対辺を含む直線へ引かれる2本の垂線T及びTに対して、前記台形の2つの側辺4p及び4qがそれぞれ同じ側に傾いている。
【0017】
前記台形の上底は、一方の主面2における貫通孔4の第一の開口部7が構成し、前記台形の下底は、他方の主面3における貫通孔4の第二の開口部8が構成し、前記台形の2つの側辺は、貫通孔4の内側面(辺4p及び辺4q)が構成する。図1では、前記上底の長さ>前記下底の長さである。
【0018】
図1において、垂線T及びTはそれぞれ前記台形の下底をなす2つの頂点(下底の両端)から対辺である上底を含む直線(基板1の一方の主面2)へ引かれている。図1の矢印で示すように、前記台形の側辺4pは垂線Tに対して左側に傾いており、前記台形の側辺4pは垂線Tに対して左側に傾いている。すなわち、側辺4p及び4qは、それぞれ垂線T及びTに対して、同じ左側に傾いている。
【0019】
図2は、本発明にかかる貫通配線基板の一例である貫通配線基板10の厚み方向に切った縦断面図であり、図1と同じ断面を示す。ただし、図2では、基板1の両主面を貫く垂線Tに対する、前記側辺4p及び4qの向きを示している。
【0020】
すなわち、この貫通配線基板10は、平版状の基板1を構成する一方の主面2と他方の主面3とを結ぶ貫通孔4を配し、その貫通孔4に導体5を充填してなる貫通配線6を備えた貫通配線基板10であって、基板1の一縦断面おいて貫通孔4を見たとき、貫通孔4は、該貫通孔4の内側面を側辺4p及び4qとする台形状をなし、前記台形の2つの側辺4p及び4qは互いに非平行であり、且つ前記台形の各々の側辺に沿う、一方の主面2から他方の主面3への2つの向き(矢印α及び矢印βで表される向き)は、基板1の両主面を貫く垂線Tに対して同じ側に向いている。
【0021】
図2において、前記台形の各々の側辺に沿う、一方の主面2から他方の主面3への前記2つの向きが垂線Tに対して同じ側に向いているとは、矢印α及び矢印βの指し示す方向が、両方とも垂線Tに対して紙面の右側を向いていることをいう。
これに対して、仮に矢印αの指し示す方向が垂線Tに対して紙面の右側を向いていて、矢印ベータの指し示す方向が垂線Tに対して紙面の左側を向いている場合は、前記2つの向きが垂線Tに対して異なる側に向いているという。
【0022】
貫通配線基板10の上記説明を言い換えると、貫通配線基板10は、単一の基板1を構成する一方の主面2と他方の主面3とを結ぶように貫通孔4を配し、その貫通孔4に導体5を充填してなる貫通配線6を備えた貫通配線基板10であって、貫通孔4は一方の主面2及び他方の主面3に対して傾いて延伸し、且つ、その第一の開口部7から第二の開口部8へ向けて略テーパー状に細くなるものである。
【0023】
図2の貫通配線基板10の断面は、貫通孔4における第一の開口部7の中心部と第二の開口部8の中心部に沿った断面である。貫通孔4は一方の主面2及び他方の主面3に対して傾いて延伸している。すなわち、図3の斜視図に示すように、貫通孔4の中心軸Jが基板1の厚み方向とは異なる方向に延伸している。前記中心軸Jは、一方の主面2又は他方の主面3に平行な任意の面に含まれる貫通孔4の領域の中心を通るものである。なお、図1及び2は、図3のX−X線に沿う断面図である。
【0024】
図2の断面図において、貫通孔4の相対する辺4p及び辺4qが一方の主面2となす角をそれぞれ角度θ及び角度φとして表すと、角度θと角度φの和は180度(°)超である。ここで、角度θは鋭角であり、角度φは鈍角である。この場合、辺4p及び辺4qは一方の主面2を貫く垂線Tに対して同じ側に向いている。また、貫通孔4の形状は、第一の開口部7から第二の開口部8へ向けて略テーパー状に細くなる。なお、辺4p及び辺4qは、前記台形の2つの側辺である。
【0025】
前記台形の2つの側辺が互いに非平行であり、且つ基板1の一方の主面2を貫く垂線Tに対して同じ側に向いて、貫通孔4が基板1の一方の主面2及び他方の主面3に対して傾いて延伸していることにより、一方の主面2における開口部7の位置と他方の主面3における開口部8の位置とを自由度高く設計することができるので、貫通配線基板10の両面に実装するそれぞれのデバイスの各電極部の配置に合わせて、貫通配線6を自在に配することができる。
【0026】
また、貫通孔4が、第一の開口部7から第二の開口部8へ向けて細くなる略テーパー状であることにより、貫通配線基板10の製造時に、貫通孔4内に導体5を充填して貫通配線6を形成する際に、ボイド(空隙)の形成を抑制することができる。このため、欠陥となるボイドが無い貫通配線6が配された貫通配線基板10は、その使用時における信頼性を高いものとすることができる。
【0027】
以上で示した、本発明の貫通配線基板10における基板1の材料としては、例えばガラス、サファイア、プラスチック、セラミックス等の絶縁体や、シリコン(Si)等の半導体が挙げられる。これらの材料のなかでも、絶縁性の石英ガラスが好ましい。基板材料が石英ガラスであると、後述する貫通孔の内壁に絶縁層を形成する必要がなく、浮遊容量成分の存在等による高速伝送の阻害要因がない等の利点がある。
基板1の厚さ(一方の主面2から他方の主面3までの距離)としては、約150μm〜1mmの範囲で適宜設定できる。
貫通配線基板10に配された貫通孔4に充填する前記導体5としては、例えば金錫(Au−Sn)、銅(Cu)等が挙げられる。
【0028】
本発明の貫通配線基板10に備えられる貫通配線6のパターンは、以上の例示に限定されるものではなく、適宜設計することが可能である。
【0029】
<貫通配線基板の製造方法の第一態様>
次に、本発明の貫通配線基板の一例である貫通配線基板10を製造する方法の第一態様を図4〜図8に示す。
ここで、図4〜図8は、貫通配線基板10を製造する基板1の平面図および断面図である。当該図中、(A)は該基板1の平面図であり、(B)は該平面図のX−X線間に沿う基板1の断面図である。
【0030】
本発明に係る貫通配線基板10の製造方法の第一態様は、以下の工程A〜Eの5工程を少なくとも有する。
ここで、該貫通配線基板10は、図1を用いて説明したように、平版状の基板1を構成する一方の主面2と他方の主面3とを結ぶ貫通孔4を配し、その貫通孔4に導体5を充填してなる貫通配線6を備えた貫通配線基板10であって、基板1の一縦断面おいて貫通孔4を見たとき、貫通孔4は、該貫通孔4の内側面を側辺とする台形状をなし、前記台形の2つの側辺4p及び4qは、互いに非平行であり、且つ前記台形の上底又は下底をなす2つの頂点から、対辺を含む直線へ引かれる2本の垂線T及びTに対して、前記台形の2つの側辺4p及び4qがそれぞれ同じ側に傾いている。
【0031】
また、該貫通配線基板10は、図2を用いて説明したように、平版状の基板1を構成する一方の主面2と他方の主面3とを結ぶ貫通孔4を配し、その貫通孔4に導体5を充填してなる貫通配線6を備えた貫通配線基板10であって、基板1の一縦断面おいて貫通孔4を見たとき、貫通孔4は、該貫通孔4の内側面を側辺4p及び4qとする台形状をなし、前記台形の2つの側辺4p及び4qは互いに非平行であり、且つ前記台形の各々の側辺に沿う、一方の主面2から他方の主面3への2つの向き(矢印α及び矢印βで表される向き)は、基板1の両主面を貫く垂線Tに対して同じ側に向いている。
【0032】
すなわち、貫通配線基板10は、単一の基板1を構成する一方の主面2と他方の主面3とを結ぶように貫通孔4を配し、その貫通孔4に導体5を充填してなる貫通配線6を備えた貫通配線基板10であって、貫通孔4は一方の主面2及び他方の主面3に対して傾いて延伸し、且つ、その第一の開口部7から第二の開口部8へ向けて略テーパー状に細くなるものである。
【0033】
<工程A>
工程Aでは、基板1の両主面を結ぶ貫通孔4となる領域をレーザー照射することにより改質する。
その方法の一例として、図4に示すように、基板1にレーザー光Lを照射して、基板1内に基板1の材料が改質されてなる改質部16を形成する方法が挙げられる。改質部16は、貫通配線6となる領域に設けられる。
【0034】
基板1の材料としては、例えばガラス、サファイア、プラスチック、セラミックス等の絶縁体や、シリコン(Si)等の半導体が挙げられる。これらの材料のなかでも、絶縁性の石英ガラスが好ましい。基板材料が石英ガラスであると、後述する貫通孔の内壁に絶縁層を形成する必要がなく、浮遊容量成分の存在等による高速伝送の阻害要因がない、等の利点がある。
基板1の厚さ(一方の主面2から他方の主面3までの距離)としては、約150μm〜1mmの範囲で適宜設定できる。
【0035】
レーザー光Lは、例えば基板1の一方の主面2側から照射され、基板1内の所望の位置で焦点Sを結ぶ。焦点Sを結んだ位置で、該基板1の材料が改質される。したがって、レーザー光Lを照射しながら焦点Sの位置を順次ずらして移動(走査)して、貫通孔4となる領域の全部に対して、焦点Sを結ぶことにより、改質部16を形成することができる。
【0036】
レーザー光Lの光源としては、例えばフェムト秒レーザーを挙げることができる。該レーザー光Lを照射することによって、例えば径が数μm〜数十μmとした改質部16を得ることができる。また、基板1内部におけるレーザー光Lの焦点Sを結ぶ位置を制御することにより、所望の形状を有する改質部16を形成することができる。
【0037】
そのレーザー照射の方法としては、例えば貫通孔4の第二の開口部8となる基板1に内在する第二の端部18から、第一の開口部7となる第一の端部17に向けてレーザー照射して改質する際、レーザー光を適宜走査して、第二の端部18から第一の端部17に向けて徐々に太くなる形状(すなわち、第一の端部17から第二の端部18に向けて細くなる略テーパー形状)の改質部16を形成する方法が挙げられる。
【0038】
本実施例では、第一の端部17及び第二の端部18の半径が、それぞれ15μm及び5μmとなるように、角度θ及び角度φが、それぞれ70度及び120度となるように、改質部16を形成した。
【0039】
図4の断面図(B)に示した矢印は、レーザー光Lの焦点Sを走査する向きを表す。すなわち、前記矢印は、第二の端部18から第一の端部17まで該焦点Sを走査することを表す。このとき、矢印の向きで一筆書きの走査を行うことが、製造効率上好ましい。
【0040】
以上のように、改質部16を形成する際、レーザー光Lを照射する方向としては、基板1の一方または他方の主面からのみレーザー光Lを照射してもよいし、基板1の両主面からレーザー光Lを照射してもよい。
【0041】
<工程B>
工程Bでは、工程Aで形成した改質部16を除去して、基板1の一方の主面2に第一の開口部7を有し、第二の開口部8となる第二の端部18が基板1に内在する非貫通孔14を形成する。
その方法の一例として、図5に示すように、改質部16を形成した基板1をエッチング液(薬液)19に浸漬して、改質部16をエッチング(ウエットエッチング)することにより基板1から除去する方法が挙げられる。その結果、改質部16が存在した部分に、非貫通孔14(ブラインドビア)が形成される。本実施態様では基板1の材料として厚さ500μmの石英ガラス板を用い、エッチング液19としてフッ酸(HF)を主成分とする溶液を用いた。このエッチングは、基板1の改質されていない部分に比べて改質部16が非常に速くエッチングされる現象を利用するものであり、結果として改質部16の形状に応じた非貫通孔14を形成することができる。
【0042】
前記エッチング液19は特に限定されず、例えばフッ酸(HF)を主成分とする溶液、フッ酸に硝酸等を適量添加したフッ硝酸系の混酸等を用いることができる。また、基板1の材料に応じて、他の薬液を用いることもできる。
【0043】
<工程C>
工程Cでは、工程Bで形成した非貫通孔14の内壁および一方の主面2にシード層15を形成する。
その方法の一例として、図6に示すように、まず50nmの厚さのチタン(Ti)薄膜をスパッタ法により成膜し、次いで150nmの厚さの銅(Cu)薄膜をスパッタ法により成膜する二段階の成膜によって、Cu/Ti薄膜からなるシード層15を形成する方法が挙げられる。
シード層15の材質としては、前記チタン及び銅に限定されず、金(Au)や金錫(Au−Sn)を用いることができる。後段の工程Dで充填される導体5の材質に合わせて適宜選択すればよい。
【0044】
<工程D>
工程Dでは、工程Cで形成したシード層15を介して非貫通孔16の内部に導体5を充填する。
その方法の一例として、図7に示すように、めっきする部分以外のシード層15の表面をレジスト13で覆った後、めっき液(不図示)に浸漬する方法が挙げられる。ここでは、非貫通孔14の内壁及び第一の開口部7の周辺を除いて、レジスト13をパターニングしてある。前記めっき液の成分としては、非貫通孔14の充填に適した硫酸銅めっき液が好適に用いられる。
【0045】
前記めっき液にレジストパターンを施した基板1を浸漬して、シード層15と別途設けたアノード電極(不図示)との間に適当な電流を流すことにより、レジスト13で覆われなかったシード層15を介して、めっき金属である導体5が析出することにより非貫通孔14内部に導体5が充填される。一方の主面上のシード層15及びレジスト層13は、導体5の充填終了後に適宜取り除かれる。
【0046】
ここで非貫通孔14の形状は、前述のように、第一の開口部7から第二の端部18(第二の開口部8)に向けて略テーパー状に細くなるように加工されているため、導体5が第一の開口部7を閉塞して、非貫通孔14内に導体5が充填されない領域(ボイド)を発生してしまうことを抑制することができる。すなわち、シード層15が形成された非貫通孔14は、第二の端部18から第一の開口部7に向けて徐々に太くなる形状であるため、めっきによってシード層15を介して導体5が析出するとき、細い側の第二の端部18の方が太い側の第一の開口部よりも早く充填される。このため、充填された導体5内部に、欠陥となるボイドが発生することを抑制して、非貫通孔14内に導体5を密に充填した非貫通配線12を得ることができる。
【0047】
<工程E>
工程Eでは、工程Dで形成した非貫通配線12を有する基板1の他方の主面3を研削(研磨)して、非貫通孔14及び非貫通配線12をそれぞれ貫通孔4及び貫通配線6となし、他方の主面3に第二の開口部8を形成する。
より具体的には、他方の主面3を研削して、基板1に内在する第二の端部18が他方の主面3に露呈するように、基板1を所望の厚さまで薄くする。また、所望により一方の主面2を研削してもよい。一方の主面2を研削することにより、第一の開口部7における導体5の表面を平滑にすることができる。
前記研削の方法としては、メカノケミカルポリシング(MCP)等の物理・化学的方法を適用すればよい。
以上の工程A〜Eにより、図8に示した貫通配線基板10が得られる。
【0048】
<貫通配線基板の製造方法の第二態様>
次に、本発明の貫通配線基板の一例である貫通配線基板10を製造する方法の第二態様を図9〜図12に示す。
ここで、図9〜図12は、貫通配線基板10を製造する基板1の平面図および断面図である。当該図中、(A)は該基板1の平面図であり、(B)は該平面図のY−Y線間に沿う基板1の断面図である。
【0049】
本発明に係る貫通配線基板10の製造方法の第二態様は、以下の工程G〜Jの4工程を少なくとも有する。
ここで、該貫通配線基板10は、図1を用いて説明したように、平版状の基板1を構成する一方の主面2と他方の主面3とを結ぶ貫通孔4を配し、その貫通孔4に導体5を充填してなる貫通配線6を備えた貫通配線基板10であって、基板1の一縦断面おいて貫通孔4を見たとき、貫通孔4は、該貫通孔4の内側面を側辺とする台形状をなし、前記台形の2つの側辺4p及び4qは、互いに非平行であり、且つ前記台形の上底又は下底をなす2つの頂点から、対辺を含む直線へ引かれる2本の垂線T及びTに対して、前記台形の2つの側辺4p及び4qがそれぞれ同じ側に傾いている。
【0050】
また、該貫通配線基板10は、図2を用いて説明したように、平版状の基板1を構成する一方の主面2と他方の主面3とを結ぶ貫通孔4を配し、その貫通孔4に導体5を充填してなる貫通配線6を備えた貫通配線基板10であって、基板1の一縦断面おいて貫通孔4を見たとき、貫通孔4は、該貫通孔4の内側面を側辺4p及び4qとする台形状をなし、前記台形の2つの側辺4p及び4qは互いに非平行であり、且つ前記台形の各々の側辺に沿う、一方の主面2から他方の主面3への2つの向き(矢印α及び矢印βで表される向き)は、基板1の両主面を貫く垂線Tに対して同じ側に向いている。
【0051】
すなわち、貫通配線基板10は、単一の基板1を構成する一方の主面2と他方の主面3とを結ぶように貫通孔4を配し、その貫通孔4に導体5を充填してなる貫通配線6を備えた貫通配線基板10であって、貫通孔4は一方の主面2及び他方の主面3に対して傾いて延伸し、且つ、その第一の開口部7から第二の開口部8へ向けて略テーパー状に細くなるものである。
【0052】
<工程G>
工程Gでは、基板1の両主面を結ぶ貫通孔4となる領域をレーザー照射することにより改質する。
その方法の一例として、図9に示すように、基板1にレーザー光Lを照射して、基板1内に基板1の材料が改質されてなる改質部16を形成する方法が挙げられる。改質部16は、貫通配線6となる領域に設けられる。
【0053】
基板1の材料の説明、レーザー光Lの焦点Sにおける基板1の改質、レーザー光Lの光源の説明は、前述の貫通配線基板の製造方法の第一態様における説明と同じである。
【0054】
レーザー光Lの照射の方法としては、例えば貫通孔4の第二の開口部8となる第二の端部18から、第一の開口部7となる第一の端部17に向けてレーザー照射して改質する際、レーザー光を適宜走査して、第二の端部18から第一の端部17に向けて徐々に太くなる形状(すなわち、第一の端部17から第二の端部18に向けて細くなる略テーパー形状)の改質部16を形成する方法が挙げられる。
【0055】
本実施例では、第一の端部17及び第二の端部18の半径が、それぞれ15μm及び5μmとなるように、角度θ及び角度φが、それぞれ70度及び120度となるように、改質部16を形成した。
【0056】
図9の断面図(B)に示した矢印は、レーザー光Lの焦点Sを走査する向きを表す。すなわち、前記矢印は、第二の端部18から第一の端部17まで該焦点Sを走査することを表す。このとき、矢印の向きで一筆書きの走査を行うことが、製造効率上好ましい。
【0057】
以上のように、改質部16を形成する際、レーザー光Lを照射する方向としては、基板1の一方または他方の主面からのみレーザー光Lを照射してもよいし、基板1の両主面からレーザー光Lを照射してもよい。
【0058】
<工程H>
工程Hでは、工程Gで形成した改質部16を除去して、基板1の一方の主面2に第一の開口部7を有し、他方の主面3に第二の開口部8を有する貫通孔4を形成する。
その方法の一例として、図10に示すように、改質部16を形成した基板1をエッチング液(薬液)19に浸漬して、改質部16をエッチング(ウエットエッチング)することにより基板1から除去する方法が挙げられる。その結果、改質部16が存在した部分に、貫通孔4(ビア)が形成される。本実施態様では基板1の材料として厚さ500μmの石英ガラス板を用い、エッチング液19としてフッ酸(HF)を主成分とする溶液を用いた。このエッチングは、基板1の改質されていない部分に比べて改質部16が非常に速くエッチングされる現象を利用するものであり、結果として改質部16の形状に応じた貫通孔4を形成することができる。
そのほか、直線状に改質部を形成した後、エッチング液の選択比(改質層と非改質層のエッチングレートの比)が小さい液を適宜選択し、常に基板の片方の面からエッチングが進行するようにすることでテーパー形状の孔を形成することもできる。
【0059】
前記エッチング液19は特に限定されず、例えばフッ酸(HF)を主成分とする溶液、フッ酸に硝酸等を適量添加したフッ硝酸系の混酸等を用いることができる。また、基板1の材料に応じて、他の薬液を用いることもできる。
【0060】
<工程I>
工程Iでは、他方の主面3に導体層21を貼付する。
その方法の一例として、図11に示すように、厚さ1mmの銅板からなる導体層21を治具(不図示)によって、他方の主面3に固着させる方法が挙げられる。
導体層21の材質としては、銅に限定されず、チタン、金、金錫等の導電性物質からなるものが使用でき、その厚さは適宜設定される。
【0061】
<工程J>
工程Jでは、工程Iで固着させた導体層21を介して貫通孔4の内部に導体5を充填する。
その方法の一例として、導体層21が他方の主面3に貼付された基板1をめっき液(不図示)に浸漬する方法が挙げられる。前記めっき液の成分としては、貫通孔4の充填に適した硫酸銅めっき液が好適に用いられる。
【0062】
基板1を浸漬して、導電層21と別途設けたアノード電極(不図示)との間に適当な電流を流すことにより、導電層21が貫通孔4の第二の開口部8と接している部分を介して、めっき金属である導体5が析出することにより貫通孔4内部に導体5が充填される(図12参照)。
【0063】
ここで貫通孔4の形状は、前述のように、第一の開口部7から第二の開口部8に向けて略テーパー状に細くなるように加工されているため、導体5が第一の開口部7を閉塞して、貫通孔4内に導体5が充填されない領域(ボイド)を発生してしまうことを抑制することができる。すなわち、貫通孔4は、第二の開口部8から第一の開口部7に向けて徐々に太くなる形状であるため、めっきによって導電層21を介して導体5が析出し、細い側の第二の開口部8から太い側の第一の開口部7向けて導体5が充填されるとき、貫通孔4内のめっき液がスムーズに置換し、貫通孔内に新鮮なめっき液が均一に満たされた状態となるため、析出異常のない安定しためっき成長が行われる。このため、充填された導体5内部に、欠陥となるボイドが発生することを抑制して、貫通孔4内に導体5を密に充填した貫通配線6を得ることができる。
【0064】
貫通配線6が形成された貫通配線基板10の他方の主面3から、導体層15は適当な方法により除かれる。また、貫通配線基板10の両主面を研磨することにより、第一の開口部7及び第二の開口部8に露呈する導体5の表面を平滑にしてもよい。
以上の工程G〜Jにより、図8に示した貫通配線基板10が得られる。
【0065】
ここで説明した第二態様の製造方法では、レジストパターニングや第二の主面3の研削等の工程が必須ではないため、前述の第一態様の製造方法と比べて、工程数を少なくすることができるので製造効率が良い。
また、第二の開口部8に接する導電層21を介して導体5が析出するので、第二の開口部8から第一の開口部7に向けて導体5が貫通孔4を充填する傾向があり、ボイドの形成をより一層抑制することができる。
【0066】
<貫通配線基板の製造方法の第三態様>
次に、本発明の貫通配線基板の一例である貫通配線基板10を製造する方法の第三態様を図13〜図16に示す。
ここで、図13〜図16は、貫通配線基板10を製造する基板1の平面図および断面図である。当該図中、(A)は該基板1の平面図であり、(B)は該平面図のZ−Z線間に沿う基板1の断面図である。
【0067】
本発明に係る貫通配線基板10の製造方法の第三態様は、以下の工程M〜Pの4工程を少なくとも有する。
ここで、該貫通配線基板10は、図1を用いて説明したように、平版状の基板1を構成する一方の主面2と他方の主面3とを結ぶ貫通孔4を配し、その貫通孔4に導体5を充填してなる貫通配線6を備えた貫通配線基板10であって、基板1の一縦断面おいて貫通孔4を見たとき、貫通孔4は、該貫通孔4の内側面を側辺とする台形状をなし、前記台形の2つの側辺4p及び4qは、互いに非平行であり、且つ前記台形の上底又は下底をなす2つの頂点から、対辺を含む直線へ引かれる2本の垂線T及びTに対して、前記台形の2つの側辺4p及び4qがそれぞれ同じ側に傾いている。
【0068】
また、該貫通配線基板10は、図2を用いて説明したように、平版状の基板1を構成する一方の主面2と他方の主面3とを結ぶ貫通孔4を配し、その貫通孔4に導体5を充填してなる貫通配線6を備えた貫通配線基板10であって、基板1の一縦断面おいて貫通孔4を見たとき、貫通孔4は、該貫通孔4の内側面を側辺4p及び4qとする台形状をなし、前記台形の2つの側辺4p及び4qは互いに非平行であり、且つ前記台形の各々の側辺に沿う、一方の主面2から他方の主面3への2つの向き(矢印α及び矢印βで表される向き)は、基板1の両主面を貫く垂線Tに対して同じ側に向いている。
【0069】
すなわち、貫通配線基板10は、単一の基板1を構成する一方の主面2と他方の主面3とを結ぶように貫通孔4を配し、その貫通孔4に導体5を充填してなる貫通配線6を備えた貫通配線基板10であって、貫通孔4は一方の主面2及び他方の主面3に対して傾いて延伸し、且つ、その第一の開口部7から第二の開口部8へ向けて略テーパー状に細くなるものである。
【0070】
<工程M>
工程Mでは、導体層22を有する基材23を、基板1の他方の面3に該導体層22を接して貼付する。
その方法の一例として、図13に示すように、厚さ50μmの銅薄膜からなる導体層22が片面に設けられた樹脂製の基材23を治具(不図示)を用いて、基板1の他方の面3に該導体層22を接するように固着させる方法が挙げられる。
基材23の片面に銅薄膜を形成する方法としては、例えばスパッタリング法が挙げられる。
【0071】
導体層22の材質としては、銅に限定されず、チタン、金、金錫等の導電性物質からなるものが使用でき、その厚さは適宜設定される。
基材23の材質としては、樹脂に限定されず、Si等からなる半導体基板や金属板であってもよい。その厚さは適宜設定される。
【0072】
<工程N>
工程Nでは、基板1の両主面を結ぶ貫通孔4となる領域をレーザー照射することにより改質する。
その方法の一例として、図14に示すように、基板1にレーザー光Lを照射して、基板1内に基板1の材料が改質されてなる改質部16を形成する方法が挙げられる。改質部16は、貫通配線6となる領域に設けられる。
【0073】
基板1の材料の説明、レーザー光Lの焦点Sにおける基板1の改質、レーザー光Lの光源の説明は、前述の貫通配線基板の製造方法の第一態様における説明と同じである。
【0074】
レーザー光Lの照射の方法としては、例えば貫通孔4の第二の開口部8となる第二の端部18から、第一の開口部7となる第一の端部17に向けてレーザー照射して改質する際、レーザー光を適宜走査して、第二の端部18から第一の端部17に向けて徐々に太くなる形状(すなわち、第一の端部17から第二の端部18に向けて細くなる略テーパー形状)の改質部16を形成する方法が挙げられる。
【0075】
本実施例では、第一の端部17及び第二の端部18の半径が、それぞれ15μm及び5μmとなるように、角度θ及び角度φが、それぞれ70度及び120度となるように、改質部16を形成した。
【0076】
図14の断面図(B)に示した矢印は、レーザー光Lの焦点Sを走査する向きを表す。すなわち、前記矢印は、第二の端部18から第一の端部17まで該焦点Sを走査することを表す。このとき、矢印の向きで一筆書きの走査を行うことが、製造効率上好ましい。
【0077】
以上のように、改質部16を形成する際、レーザー光Lを照射する方向としては、基板1の一方または他方の主面からのみレーザー光Lを照射してもよいし、基板1の両主面からレーザー光Lを照射してもよい。
【0078】
<工程O>
工程Oでは、工程Pで形成した改質部16を除去して、一方の主面2に第一の開口部7を有し、他方の主面3と導体層22とが接する境界面に前記第二の開口部8を有する貫通孔4を形成する。
その方法の一例として、図15に示すように、改質部16を形成した基板1をエッチング液(薬液)19に浸漬して、改質部16をエッチング(ウエットエッチング)することにより基板1から除去する方法が挙げられる。その結果、改質部16が存在した部分に、貫通孔4(ビア)が形成される。本実施態様では基板1の材料として厚さ500μmの石英ガラス板を用い、エッチング液19としてフッ酸(HF)を主成分とする溶液を用いた。このエッチングは、基板1の改質されていない部分に比べて改質部16が非常に速くエッチングされる現象を利用するものであり、結果として改質部16の形状に応じた貫通孔4を形成することができる。
そのほか、直線状に改質部を形成した後、エッチング液の選択比(改質層と非改質層のエッチングレートの比)が小さい液を適宜選択し、常に基板の片方の面からエッチングが進行するようにすることでテーパー形状の孔を形成することもできる。
【0079】
前記エッチング液19は特に限定されず、例えばフッ酸(HF)を主成分とする溶液、フッ酸に硝酸等を適量添加したフッ硝酸系の混酸等を用いることができる。また、基板1の材料に応じて、他の薬液を用いることもできる。
【0080】
<工程P>
工程Pでは、工程Mで基板1の他方の主面3に固着させた基材23の片面に設けられた導電層22を介して貫通孔4の内部に導体5を充填する。
その方法の一例として、導体層22が他方の主面3に貼付された基板1をめっき液(不図示)に浸漬する方法が挙げられる。前記めっき液の成分としては、貫通孔4の充填に適した硫酸銅めっき液が好適に用いられる。
【0081】
基板1を浸漬して、導電層22と別途設けたアノード電極(不図示)との間に適当な電流を流すことにより、導電層22が貫通孔4の第二の開口部8と接している部分を介して、めっき金属である導体5が析出することにより貫通孔4内部に導体5が充填される(図16参照)。
【0082】
ここで貫通孔4の形状は、前述のように、第一の開口部7から第二の開口部8に向けて略テーパー状に細くなるように加工されているため、導体5が第一の開口部7を閉塞して、貫通孔4内に導体5が充填されない領域(ボイド)を発生してしまうことを抑制することができる。すなわち、貫通孔4は、第二の開口部8から第一の開口部7に向けて徐々に太くなる形状であるため、めっきによって導電層22を介して導体5が析出し、細い側の第二の開口部8から太い側の第一の開口部7向けて導体5が充填されるとき、貫通孔4内のめっき液がスムーズに置換し、貫通孔内に新鮮なめっき液が均一に満たされた状態となるため、析出異常のない安定しためっき成長が行われる。このため、充填された導体5内部に、欠陥となるボイドが発生することを抑制して、貫通孔4内に導体5を密に充填した貫通配線6を得ることができる。
【0083】
貫通配線6が形成された貫通配線基板10の他方の主面3から、導体層22及び基材23は適当な方法により除かれる。また、貫通配線基板10の両主面を研磨することにより、第一の開口部7及び第二の開口部8に露呈する導体5の表面を平滑にしてもよい。
以上の工程M〜Pにより、図8に示した貫通配線基板10が得られる。
【0084】
ここで説明した第三態様の製造方法では、レジストパターニングや第二の主面3の研削等の工程が必須ではないため、前述の第一態様の製造方法と比べて、工程数を少なくすることができるので製造効率が良い。
また、第二の開口部8に接する導電層22を介して導体5が析出するので、第二の開口部8から第一の開口部7に向けて導体5が貫通孔4を充填する傾向があり、ボイドの形成をより一層抑制することができる。
【産業上の利用可能性】
【0085】
本発明の貫通配線基板を用いることにより、その両主面にデバイスを実装する3次元実装や、複数のデバイスを一つのパッケージ内でシステム化するシステムインパッケージ(SiP)など、各種デバイスの高密度実装に好適に利用することができる。
【符号の説明】
【0086】
1…基板1…一方の主面、3…他方の主面、4…貫通孔、5…導体、6…貫通配線、7…第一の開口部、8…第二の開口部、10…貫通配線基板、13…レジスト、14…非貫通孔、15…シード層、16…改質部、17…一方の端部、18…他方の端部、19…エッチング液、21…導電層、22…導電層、23…基材、L…レーザー光線、T,T,T…垂線。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
平版状の基板を構成する一方の主面と他方の主面とを結ぶ貫通孔を配し、その貫通孔に導体を充填してなる貫通配線を備えた貫通配線基板であって、
前記基板の一縦断面おいて前記貫通孔を見たとき、
前記貫通孔は、該貫通孔の内側面を側辺とする台形状をなし、
前記台形の2つの側辺は、互いに非平行であり、且つ
前記台形の上底又は下底をなす2つの頂点から、対辺を含む直線へ引かれる2本の垂線に対して、前記台形の2つの側辺がそれぞれ同じ側に傾いていること
を特徴とする貫通配線基板。
【請求項2】
平版状の基板を構成する一方の主面と他方の主面とを結ぶ貫通孔を配し、その貫通孔に導体を充填してなる貫通配線を備えており、前記基板の一縦断面おいて前記貫通孔を見たとき、前記貫通孔は、該貫通孔の内側面を側辺とする台形状をなし、前記台形の2つの側辺は、互いに非平行であり、且つ前記台形の上底又は下底をなす2つの頂点から、対辺を含む直線へ引かれる2本の垂線に対して、前記台形の2つの側辺がそれぞれ同じ側に傾いている貫通配線基板の製造方法であって、
前記基板の両主面を結ぶ貫通孔となる領域をレーザー照射することにより改質する工程(A)と、その改質された部分を除去して、前記一方の主面に前記第一の開口部を有し、前記第二の開口部となる端部が前記基板に内在する非貫通孔を形成する工程(B)と、前記非貫通孔の内壁にシード層を形成する工程(C)と、前記シード層を介して前記非貫通孔の内部に導体を充填する工程(D)と、前記他方の主面を研削して、前記非貫通孔を貫通孔となし、前記他方の主面に前記第二の開口部を形成する工程(E)と、を含むことを特徴とする貫通配線基板の製造方法。
【請求項3】
平版状の基板を構成する一方の主面と他方の主面とを結ぶ貫通孔を配し、その貫通孔に導体を充填してなる貫通配線を備えており、前記基板の一縦断面おいて前記貫通孔を見たとき、前記貫通孔は、該貫通孔の内側面を側辺とする台形状をなし、前記台形の2つの側辺は、互いに非平行であり、且つ前記台形の上底又は下底をなす2つの頂点から、対辺を含む直線へ引かれる2本の垂線に対して、前記台形の2つの側辺がそれぞれ同じ側に傾いている貫通配線基板の製造方法であって、
前記基板の両主面を結ぶ貫通孔となる領域をレーザー照射することにより改質する工程(G)と、その改質された部分を除去して、前記一方及び他方の主面にそれぞれ前記第一及び第二の開口部を有する貫通孔を形成する工程(H)と、前記他方の主面に導体層を貼付する工程(I)と、前記導体層を介して前記貫通孔の内部に導体を充填する工程(J)と、を含むことを特徴とする貫通配線基板の製造方法。
【請求項4】
平版状の基板を構成する一方の主面と他方の主面とを結ぶ貫通孔を配し、その貫通孔に導体を充填してなる貫通配線を備えており、前記基板の一縦断面おいて前記貫通孔を見たとき、前記貫通孔は、該貫通孔の内側面を側辺とする台形状をなし、前記台形の2つの側辺は、互いに非平行であり、且つ前記台形の上底又は下底をなす2つの頂点から、対辺を含む直線へ引かれる2本の垂線に対して、前記台形の2つの側辺がそれぞれ同じ側に傾いている貫通配線基板の製造方法であって、
導体層を有する基材を、前記基板の他方の面に該導体層を接して貼付する工程(M)と、前記基板の両主面を結ぶ貫通孔となる領域をレーザー照射することにより改質する工程(N)と、その改質された部分を除去して、前記一方の主面に前記第一の開口部を有し、前記他方の主面と前記導体層とが接する境界面に前記第二の開口部を有する貫通孔を形成する工程(O)と、前記導体層を介して前記貫通孔の内部に導体を充填する工程(P)と、を含むことを特徴とする貫通配線基板の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【公開番号】特開2011−134982(P2011−134982A)
【公開日】平成23年7月7日(2011.7.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−294989(P2009−294989)
【出願日】平成21年12月25日(2009.12.25)
【出願人】(000005186)株式会社フジクラ (4,463)
【Fターム(参考)】