説明

貯水タンク

【課題】貯水タンクにおいて、タンク内に貯蔵された水又は水を主成分とする液体の凍結に伴う体積膨張に起因するタンクの破損等の不都合を解消する。
【解決手段】貯水タンクにおいて、タンク内に貯蔵される液体の液面の高さを検出する水位検出手段、タンクから液体を排出する排水手段、及び排水手段を制御して、水位検出手段によって検出される液体の液面の高さを調整する水位調整手段を備えること、並びに貯水タンク及び液体を加熱する熱源となる構成要素を有する仕組みにおいて、貯水タンクが使用されること、熱源となる構成要素が発熱を停止する際に、水位調整手段が、予め定められた第1水位範囲に入るように液体の液面の高さを調整すること、及び第1水位範囲に対応する部位においては、タンクの内側の壁面が、液体に接触している壁面と液体の液面とが交わる角度が鋭角となる形状を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は貯水タンクに関する。詳しくは、本発明は、寒冷時における内容物の凍結に伴う体積膨張に起因する破損を抑制し得る貯水タンクに関する。
【背景技術】
【0002】
水、又は水を主成分とする液体を貯蔵する貯水タンク等の容器を備える何等かの装置は多く存在する。これらの装置においては、例えば屋外での使用時等、寒冷時における上記液体の凍結に伴う体積膨張に起因する貯水タンクの破損が懸念される。かかる装置の具体例としては、例えば、車両、給湯器、燃料電池等を挙げることができる。
【0003】
上記のような貯水タンクの内部に貯蔵された液体の凍結への対策としては、例えば、装置の停止時に貯水タンクから液体を排出すること(例えば、特許文献1又は2を参照)や、貯水タンクの内部に貯蔵された液体を加熱すること(例えば、特許文献3を参照)等が提案されている。
【0004】
しかしながら、上記のように貯水タンクの内部に貯蔵された液体を加熱するには、液体を加熱するための手段(例えば、温媒、温媒流通路、温媒循環ポンプ、温媒加熱手段等)を新たに設ける必要があり、装置の軽量小型化や製造コスト削減の観点から、必ずしも望ましくない。
【0005】
更に、貯水タンクを備える装置の種類や用途によっては、貯水タンクの内部に貯蔵された液体を完全に排出してしまうことができない場合がある。例えば、アルゴン循環型水素エンジンにおいては、燃料である水素の燃焼生成物としての水が作動ガスであるアルゴンに含まれ、作動ガスの比熱比を低下させる等の不都合を生ずる虞がある。そこで、かかるエンジンにおいては、燃焼室から排出される既燃ガスの流路に凝縮器を設けて、アルゴン中の水分(水蒸気)を凝縮させ、凝縮水を貯水タンクに分離・貯蔵する。
【0006】
上記のような構成においても、貯水タンクの内部に貯蔵された凝縮水が寒冷時に凍結して、例えば貯蔵タンクを破損する等の不都合を生ずる虞がある。しかしながら、この場合、貯水タンクが既燃ガスの流路に設けられた凝縮器に連通している。従って、凝縮水の凍結対策として、貯水タンクの内部に貯蔵された凝縮水を完全に排出してしまうと、作動ガスとして燃焼室に再循環されるべきアルゴンが貯水タンクの排出経路を経由して外部に漏れてしまう。即ち、作動ガスとしてのアルゴンの密閉を維持するためには、貯水タンクの内部に貯蔵された凝縮水を完全には排出せず、所定量の凝縮水を貯水タンクの内部に常に残すようにするべきであることが知られている。
【0007】
以上のように、当該技術分野においては、貯水タンクの内部に貯蔵された水又は水を主成分とする液体の凍結に伴う体積膨張に起因する貯水タンクの破損等の不都合を解消する有効な対策に対する継続的な要求が存在する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2006−112763号公報
【特許文献2】特開2009−99355号公報
【特許文献3】特開2005−100759号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
前述のように、当該技術分野においては、貯水タンクの内部に貯蔵された水又は水を主成分とする液体の凍結に伴う体積膨張に起因する貯水タンクの破損等の不都合を解消する有効な対策に対する継続的な要求が存在する。
【0010】
本発明は、上記のような要求に応えるために為されたものである。より具体的には、本発明は、貯水タンクにおいて、貯水タンクの内部に貯蔵された水又は水を主成分とする液体の凍結に伴う体積膨張に起因する貯水タンクの破損等の不都合を解消する有効な対策を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の上記目的は、
水又は水を主成分とする液体を内部に貯蔵する貯水タンクであって、
前記貯水タンクの内部に貯蔵される前記液体の液面の高さを検出する水位検出手段、
前記貯水タンクから前記液体を排出する排水手段、及び
前記排水手段を制御して、前記水位検出手段によって検出される前記液体の液面の高さを調整する水位調整手段、
を備えること、並びに
前記貯水タンク及び前記液体を加熱する熱源となる構成要素を有する仕組みにおいて、前記貯水タンクが使用されること、
前記熱源となる構成要素が発熱を停止する際に、前記水位調整手段が、予め定められた第1水位範囲に入るように前記液体の液面の高さを調整すること、及び
前記第1水位範囲に対応する部位においては、前記貯水タンクの内側の壁面が、前記液体に接触している壁面と前記液体の液面とが交わる角度が鋭角となる形状を有すること、
を特徴とする、貯水タンクによって達成される。
【発明の効果】
【0012】
上記のように、本発明によれば、貯水タンクを備える仕組みにおける熱源(例えば、車両における主たる熱源であるエンジン)が発熱を停止する際、貯水タンクの内部に貯蔵される液体の液面の高さが、第1水位範囲に入るように調整される。この第1水位範囲に対応する部位においては、液体に接触している貯水タンクの内側の壁面と液体の液面とが交わる角度が鋭角となっている。従って、本発明に係る貯水タンクを備える仕組み(例えば、車両)が寒冷時に屋外に放置される等して、周囲温度が氷点以下となり、液体が凍結しても、液体の凍結に伴う体積膨張に起因する応力が緩和され、液体の凍結に伴う体積膨張に起因するタンクの破損を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の1つの実施態様に係る貯水タンクを含むシステムの構成を表す概略図である。
【図2】図1中の一点鎖線で囲まれた部分の拡大図である。
【図3】本発明の1つの実施態様に係る貯水タンクにおいて実行される、貯水タンク内の液体の水位を制御を実行する処理を表すフローチャートである。
【図4】本発明のもう1つの実施態様に係る貯水タンクの構成を表す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
前述のように、本発明は、貯水タンクにおいて、貯水タンクの内部に貯蔵された水又は水を主成分とする液体の凍結に伴う体積膨張に起因する貯水タンクの破損等の不都合を解消する有効な対策を提供することを目的とする。
【0015】
本発明者は、上記目的を達成すべく鋭意研究の結果、液体に接触している貯水タンクの内側の壁面と液体の液面とが交わる角度が鋭角となるように、貯水タンクの内側の壁面の形状を構成し、且つ液体の液面の高さを調整することにより、液体の凍結に伴う体積膨張に起因する応力を緩和し、貯水タンクの破損を防止することを想到するに至ったものである。
【0016】
即ち、本発明の第1態様は、
水又は水を主成分とする液体を内部に貯蔵する貯水タンクであって、
前記貯水タンクの内部に貯蔵される前記液体の液面の高さを検出する水位検出手段、
前記貯水タンクから前記液体を排出する排水手段、及び
前記排水手段を制御して、前記水位検出手段によって検出される前記液体の液面の高さを調整する水位調整手段、
を備えること、並びに
前記貯水タンク及び前記液体を加熱する熱源となる構成要素を有する仕組みにおいて、前記貯水タンクが使用されること、
前記熱源となる構成要素が発熱を停止する際に、前記水位調整手段が、予め定められた第1水位範囲に入るように前記液体の液面の高さを調整すること、及び
前記第1水位範囲に対応する部位においては、前記貯水タンクの内側の壁面が、前記液体に接触している壁面と前記液体の液面とが交わる角度が鋭角となる形状を有すること、
を特徴とする、貯水タンクである。
【0017】
上記貯水タンクの材質や構成は、貯蔵しようとする液体に対して不活性であり、想定される用途に耐え得る機械的強度や耐熱性等の性質を有する限り、特に限定されるものではなく、当該技術分野において一般的に知られている種々の材料から作られたものを使用することができる。
【0018】
上記水位検出手段としては、貯水タンクの内部に貯蔵される液体の液面の高さを検出することができる限り、当該技術分野において一般的に知られている種々の水位センサから、用途に応じて適切なものを選択することができる。かかる水位センサとしては、例えば、フロートスイッチや静電容量センサ等、液体と接触して水位を検出するタイプのものや、超音波センサ等、液体とは接触せずに液面との距離を検出するタイプのもの等を挙げることができる。尚、水位検出手段は、貯水タンクの内部に貯蔵される液体の液面の高さ(水位)を検出し、検出した水位を表す測定信号(検出信号)を発生するように構成される。
【0019】
従って、例えば、上記水位検出手段を電子制御装置に接続して、上記水位調整手段による貯水タンクの内部に貯蔵される液体の液面の高さ(水位)の調整等、同電子制御装置によって行われる種々の制御に利用することができる。因みに、電子制御装置とは、例えば、CPU、ROM、RAM、不揮発性メモリ等の記憶装置、及びインターフェースを含む周知のマイクロコンピュータを主体とする電子装置を指す。但し、水位検出手段及び電子制御装置に関する上記説明はあくまでも例示であって、水位検出手段及び電子制御装置の構成は上記説明に限定されるものではない。
【0020】
次に、上記排水手段は、貯水タンクの内部に貯蔵される液体を貯水タンクから排出することが可能である限り、如何なる構成のものであってもよい。例えば、上記排水手段は、上記貯水タンクの底部に設けられた開口部と、同開口部を開閉して液体の排出を開始したり停止したりする弁体とを含んでなる構成とすることができる。あるいは、上記排水手段は、例えば、上記貯水タンクの底部近傍に端部が配設され、同貯水タンクの外部に連接された導管と、同導管に連接されたポンプとを含んでなる構成とすることもできる。尚、同ポンプとしては、特定の構成に限定されるものではなく、液体用ポンプとして一般的に使用される種々のタイプのものを使用することができる。
【0021】
排水手段は、如何なる構成をとるものであるにせよ、水位検出手段によって検出される液体の液面の高さ(水位)に基づいて水位調整手段によって制御され、貯水タンクの内部に貯蔵される液体の排出を開始したり停止したりするように構成される。かかる制御は、例えば、前述の電子制御装置から送出される指示信号(制御信号)によって行うことができる。この場合、上記水位調整手段は、水位検出手段から送出される、貯水タンクの内部に貯蔵されている液体の液面の高さ(水位)を表す測定信号(検出信号)を受け取り、同信号から導出される水位に基づいて貯水タンクの内部に貯蔵されている液体の排出を開始すべきか停止すべきかを判断し、同判断に基づいて排水手段に同液体の排出を開始又は停止させるための指示信号(制御信号)を排水手段に対して送出するように構成され、前述の電子制御装置が備える記憶装置に格納されたプログラムとして実装することができる。但し、水位調整手段及び電子制御装置に関する上記説明はあくまでも例示であって、水位調整手段及び電子制御装置の構成は上記説明に限定されるものではない。
【0022】
前述のように、本発明の第1態様に係る貯水タンクにおいては、貯水タンクを備える仕組みにおける熱源(例えば、車両における主たる熱源であるエンジン)が発熱を停止する際に、水位調整手段が、貯水タンクの内部に貯蔵される液体の液面の高さを予め定められた第1水位範囲に入るように調整する。具体的には、例えば上述のように、水位調整手段が、水位検出手段から送出される、貯水タンクの内部に貯蔵されている液体の液面の高さ(水位)を表す測定信号(検出信号)を受け取る。そして、水位調整手段は、同測定信号(検出信号)から導出される水位に基づいて貯水タンクの内部に貯蔵されている液体の排出を開始すべきか停止すべきかを判断する。更に、水位調整手段は、同判断に基づいて排水手段に同液体の排出を開始又は停止させるための指示信号(制御信号)を排水手段に対して送出する。同指示信号(制御信号)を受け取った排水手段は、同指示信号(制御信号)に従って、同液体の排出を開始又は停止する。このような一連の処理の結果として、貯水タンクの内部に貯蔵される液体の液面の高さ(水位)が、予め定められた第1水位範囲に入るように調整される。
【0023】
一方、貯水タンクの内側の壁面は、前述のように、第1水位範囲に対応する部位において、貯水タンクの内部に貯蔵される液体に接触している壁面と同液体の液面とが交わる角度が鋭角となる形状を有している。第1水位範囲に対応する部位において貯水タンクの内側の壁面が有する当該形状とは、例えば、貯水タンクの内部に貯蔵される液体の液面の面積が、鉛直方向において上に行くほど大きくなるような形状を指す。より具体的には、貯水タンクの内側の壁面が有する当該形状とは、例えば、第1水位範囲に対応する部位において、鉛直方向において上に向かって広がるテーパ状の形状を指す。
【0024】
従って、別の言い方をすれば、第1水位範囲は、貯水タンクの内側の壁面が上述のような(例えば、テーパ状の)形状を有する部位の鉛直方向における長さに対応して設定される、貯水タンクの内部に貯蔵される液体の液面の高さ(水位)である。第1水位範囲をこのように設定することにより、貯水タンクの内部に貯蔵される液体の液面の高さ(水位)が第1水位範囲に入る場合は、貯水タンクの内部に貯蔵される液体に接触している貯水タンクの壁面と、貯水タンクの内部に貯蔵される液体の液面とが、鋭角をなして交わる。
【0025】
従って、第1水位範囲の上限は、貯水タンクの内側の壁面が上述のような(例えば、テーパ状の)形状を有する部位の鉛直方向における上限位置、即ち、かかる部位と、かかる部位の鉛直方向において上側に隣接する、上述のような形状を有していない部位との境界に対応して設定される。尚、貯水タンクの内部に貯蔵される液体の凍結が想定される状況において生じ得る上記仕組み(例えば、車両)の傾きやタンクに対する液面の傾き、水位検出手段が配設される位置等を勘案して、第1水位範囲の上限を上記境界より低い(鉛直方向において下の)位置に設定してもよい。
【0026】
一方、第1水位範囲の下限については、貯水タンクの内部に貯蔵される液体の凍結に伴う体積の膨張を小さくするためには、鉛直方向において、できるだけ低い位置に設定することが望ましい。但し、貯水タンクの用途、貯水タンクが装着される仕組み(例えば、車両)の構成等によっては、第1水位範囲の下限に制約が生ずる場合もある。例えば、本発明に係る貯水タンクを、作動ガス循環型エンジンにおける作動ガスから凝縮・分離される凝縮水を貯蔵するために使用する場合は、前述のように、貯水タンクの排出経路を経由して作動ガスが外部に漏れるのを防止するのに必要な量の凝縮水を貯水タンク内に残しておく必要がある。
【0027】
上記のように、本発明の第1態様に係る貯水タンクにおいては、熱源となる構成要素が発熱を停止する際に、水位調整手段が、貯水タンクの内部に貯蔵される液体の液面の高さを予め定められた第1水位範囲に入るように調整する。一方、貯水タンクの内側の壁面は、前述のように、第1水位範囲に対応する部位において、貯水タンクの内部に貯蔵される液体に接触している壁面と同液体の液面とが交わる角度が鋭角となる形状を有している。その結果、本発明の第1態様に係る貯水タンクにおいては、熱源となる構成要素が発熱を停止する際に、貯水タンクの内部に貯蔵される液体に接触している壁面と同液体の液面とが交わる角度が鋭角となる。
【0028】
上記により、本発明の第1態様に係る貯水タンクにおいては、熱源となる構成要素が発熱を停止する際に、貯水タンクの内部に貯蔵されている液体は、鉛直方向において上には広く下には狭い、略逆錐形の形状を有することとなる。同液体が凍結すると、液相から固相への変化に伴って体積が膨張し、体積の膨張に伴って貯水タンクの壁面に応力を及ぼすこととなる。しかしながら、上述のように、本発明の第1態様に係る貯水タンクにおいては、熱源となる構成要素が発熱を停止する際に貯水タンクの内部に残留している液体は略逆錐形の形状を有するため、凍結に伴って体積が膨張する際に、貯水タンクの壁面との間で滑りが生じ、体積の膨張分が鉛直方向において上向きに逃げることができるので、体積の膨張に伴って貯水タンクの壁面に及ぼされる応力が緩和される。
【0029】
上記のように、本発明によれば、熱源となる構成要素が発熱を停止する際、貯水タンクの内部に貯蔵される液体の液面の高さが、第1水位範囲に入るように調整される。この第1水位範囲に対応する部位においては、液体に接触している貯水タンクの内側の壁面と液体の液面とが交わる角度が鋭角となっている。従って、本発明の第1態様に係る貯水タンクを備える仕組み(例えば、車両)が寒冷時に屋外に放置される等して、周囲温度が氷点以下となり、液体が凍結しても、液体の凍結に伴う体積膨張に起因する応力が緩和され、液体の凍結に伴う体積膨張に起因するタンクの破損を防止することができるのである。
【0030】
尚、貯水タンクの内側の壁面が、第1水位範囲に対応する部位において、貯水タンクの内部に貯蔵される液体に接触している壁面と同液体の液面とが交わる角度が鋭角となる形状を有していない場合は、凍結に伴って体積が膨張する際に、貯水タンクの壁面との間で滑りが生じ難く、体積の膨張分が逃げることができない。その結果、体積の膨張に伴って貯水タンクの壁面に及ぼされる応力が緩和されず、タンクの破損等の不都合を回避することができない。
【0031】
ところで、貯水タンクにおいては、何等かの原因によって、貯水タンクを含む仕組みが揺れたり、振動を受けたりすると(例えば、車両が備える貯水タンクの場合、車両の走行に伴う揺れや振動、エンジンの稼働等に起因する振動等を受けたりすると)、これらの揺れや振動が原因となって、タンク内に貯蔵されている液体がタンクの内壁に沿って回り込んだり、液面が乱れて飛沫が跳ね飛んだりして、想定外の通路等に液体が入り込む虞がある。そこで、かかる事態を回避するために、貯水タンクの内部に、例えば消波板等を含んでなる消波手段を設けてもよい。消波手段とは、例えば、液体の液面に浮かべる等して液体の波動に触れる位置に配設され、消波板によって液体の波動を干渉させることによって、又は液体に消波板を通過させる際に、液体の波動に伴う運動エネルギを減衰させ、波動の振幅及び速度の増大を抑制するものである。従って、消波手段は、例えば、複数のフィンを有する等、複雑な形状をしているのが一般的である。尚、消波手段を構成する材料としては、当該技術分野において知られる種々の材料から適宜選択して使用することができ、貯水タンクの内部に貯蔵される液体に対して不活性であり、消波作用を発揮するのに必要な機械的強度や使用環境に耐え得る耐熱性等を備える限り特に限定されるものではない。
【0032】
しかしながら、上記のように、消波手段を液体の液面に浮かべる等して、液体の波動に消波手段が触れる(例えば、消波手段の一部が液体中に沈み、他の部分が液面上に露出する)位置に配設された状態のままで液体が凍結すると、液体の凍結に伴う体積の膨張に起因する応力が消波手段に作用して、消波手段の破損や変形等の問題を生ずる虞がある。
【0033】
従って、上記のような消波手段を備える貯水タンクにおいて、液体の凍結に伴う体積の膨張に起因する消波手段の破損や変形等の問題を回避するためには、液体が凍結する際には消波手段が液体に触れないようにすることが望ましい。
【0034】
即ち、本発明の第2態様は、
本発明の前記第1態様に係る貯水タンクであって、
前記液体の波動に伴う運動エネルギーを減衰させる消波手段を更に備えること、及び
前記消波手段が、前記第1水位範囲の上限よりも高い位置に配設されていること、
を特徴とする、貯水タンクである。
【0035】
前述のように、本発明に係る貯水タンクにおいては、同貯水タンクを含む仕組みにおける熱源となる構成要素が発熱を停止する際に、水位調整手段が、予め定められた第1水位範囲に入るように前記液体の液面の高さを調整する。加えて、本発明の第2態様に係る貯水タンクにおいては、上記のように、第1水位範囲の上限よりも高い(鉛直方向において上側の)位置に消波手段が配設されている。その結果、本発明の第2態様に係る貯水タンクにおいては、貯水タンクの内部に貯蔵される液体の凍結が想定される状況においては、同液体の液面よりも高い(鉛直方向において上側の)位置に消波手段が配設されることになる。従って、同液体が凍結する際には、消波手段に同液体が接触していないので、同液体の凍結に伴う体積の膨張に起因する応力により、消波手段が破損したり変形したりする問題が低減される。尚、貯水タンクの内部に貯蔵される液体の凍結が想定される状況において生じ得る、同貯水タンクを含む仕組み(例えば、車両)の傾きやタンクに対する液面の傾き、消波手段の形状や構造等を勘案して、第1水位範囲の上限と消波手段の配設位置との間に適切なマージンを設けてもよい。
【0036】
ところで、本発明に係る貯水タンクが使用される、同貯水タンク及びその内容物を加熱する熱源となる構成要素を有する仕組みとしては、例えば、内燃機関(エンジン)を備える車両等の乗り物や、発電機等を挙げることができる。例えば、上記仕組みが車両である場合を想定すると、車両が運転中(ここでは、車両が走行していなくとも、駆動源等が稼働中であれば運転中とする)である場合は、例えば、エンジン、モータ、ダイナモ等の稼働に伴って発生する熱により、車両が暖機され、貯水タンク内の液体も、氷点よりも高い温度に維持されるのが一般的である。一方、これらの熱源となる構成要素が稼働を停止すると、発熱も停止し、車両や貯水タンクの温度もやがて周囲温度に等しくなる。従って、車両が寒冷時に屋外に放置される等して、周囲温度が氷点以下となる場合は、貯水タンク内の液体が凍結する虞がある。このように、貯水タンクの内部に貯蔵される水又は水を主成分とする液体が凍結するか否かに大きな影響を及ぼす熱源としては、上記のように、エンジン、モータ、ダイナモ等が挙げられるが、これらの中でも最も大きな熱源となるのはエンジンである。
【0037】
従って、本発明の第3態様は、
本発明の前記第1態様又は前記第2態様の何れかに係る貯水タンクであって、前記熱源となる構成要素がエンジンであることを特徴とする、貯水タンクである。尚、上記エンジンは特定の形式に限定されるものではなく、また、燃料やその燃焼モードについても特に限定されない(より詳しくは後述する)。
【0038】
ところで、当該技術分野においては、種々のタイプのエンジンが存在しており、それらの中には、作動ガス循環型エンジンと称されるエンジンも知られている。この作動ガス循環型エンジンは、燃焼室に燃料と酸素と作動ガスとを供給して燃料を燃焼させると共に、燃焼室から排出された既燃ガスを燃焼室に循環経路(循環通路部)を通して循環させる(再供給する)エンジンである。当該エンジンにおいては、循環通路部に介装される凝縮手段に流入する既燃ガス(循環ガス)に含まれる水分が凝縮手段によって凝縮水として分離され、貯水タンクに貯蔵され、系外へ排出される。この水分が除去された既燃ガスは、凝縮手段の出口部から循環通路部へと排出され、燃焼室に再供給(循環)される。
【0039】
当然のことながら、上記作動ガス循環型エンジンにおいて既燃ガスから凝縮・分離される凝縮水を貯蔵する貯水タンクにおいても、寒冷時における凝縮水の凍結が懸念される。従って、作動ガス循環型エンジンは、貯水タンクの内部に貯蔵される水又は水を主成分とする液体の凍結に伴う体積の膨張に起因する応力による貯水タンクの破損等を低減しようとする本発明を適用する対象として望ましいことは明らかである。
【0040】
即ち、本発明の第3態様は、
本発明の前記第3態様に係る貯水タンクであって、
前記エンジンが、前記エンジンから排出される作動ガスに含まれる水分を凝縮水として凝縮させて作動ガスから分離する凝縮手段を備える作動ガス循環型エンジンであること、及び
前記液体が前記凝縮水であること、
を特徴とする、貯水タンクである。
【0041】
上記作動ガス循環型エンジンは、上述のように、燃焼室に燃料と酸素と作動ガスとを供給して燃料を燃焼させると共に、燃焼室から排出された既燃ガスを燃焼室に循環経路(循環通路部)を通して循環させる(再供給する)エンジンである。当該エンジンにおいては、循環通路部に介装される凝縮手段に流入する既燃ガス(循環ガス)に含まれる水分が凝縮手段によって凝縮水として分離され、貯水タンクに貯蔵され、系外へ排出される。この水分が除去された既燃ガスは、凝縮手段の出口部から循環通路部へと排出され、燃焼室に再供給(循環)される。
【0042】
上記凝縮手段は、既燃ガスに含まれる水分を分離・除去することが可能である限り、如何なる構成のものであってもよい。例えば、凝縮手段は、循環通路部から流入する既燃ガス(循環ガス)を大気と熱交換させることにより同既燃ガスに含まれる水分を凝縮させて凝縮水となし、同既燃ガスから同熱交換により凝縮水となった水分を分離する凝縮器であってもよい。この凝縮器は冷却水を冷媒として利用した水冷式凝縮器であってもよく、空冷式凝縮器であってもよい。
【0043】
また、上記エンジンにおいて使用される燃料としては、例えば、ガソリン、軽油、天然ガス、プロパン、水素等の、種々の燃料を用いることができる。但し、前述のように、本実施態様は、上述のように、作動ガス循環型エンジンにおいて既燃ガスから凝縮・分離される凝縮水を貯蔵する貯水タンクに本発明を適用して、寒冷時における凝縮水の凍結に伴う体積の膨張に起因する応力による貯水タンクの破損等を低減しようとするものである。従って、上記燃料としては、燃焼生成物として、水(HO)を生ずるものが想定される。
【0044】
尚、上記燃料は、上記エンジンの運転状態における燃料の相(例えば、液相、気相等)に応じた構成を有する燃料貯蔵部(例えば、タンク、ボンベ等)に貯蔵することができる。また、上記燃料は、同燃料貯蔵部から、例えば、同エンジンの燃焼室内に直接噴射(所謂「筒内噴射」)しても、又は同エンジンの吸気ポート内に噴射する等して作動ガスと予め混合してもよい。
【0045】
かかる燃料噴射を行う噴射手段は、例えば、前述した電子制御装置からの指示信号に応答して噴射口を弁体により開閉し、同噴射口が同弁体により開かれた際に同噴射手段に供給されている燃料の圧力により燃料を噴射する噴射弁であってよい。更に、燃料の噴射に用いられる圧力は、例えば、燃料が気相にある場合の燃料貯蔵部としての燃料タンク内の燃料ガスの圧力に基づくものであってもよく、例えば、燃料の圧力を高めるための圧縮機(例えば、コンプレッサ、ポンプ等)によって高められた燃料の圧力に基づくものであってもよい。更にまた、燃料の噴射に用いられる圧力は、燃料貯蔵部と噴射手段との間に介装された燃料噴射圧調整手段(例えば、圧力レギュレータ等)により一定の設定圧以上にならないように規制されていてもよい。
【0046】
また、上記燃料を燃焼させるのに用いられる酸化剤としては、例えば、酸素を使用することができる。酸素は、例えば、ボンベ等の酸素貯蔵部に貯蔵することができ、同酸素貯蔵部から、例えば、同エンジンの燃焼室内に直接噴射しても、又は同エンジンの燃焼室内に供給する前に、作動ガスと予め混合してもよい。
【0047】
更に、上記燃料の燃焼モードは、用いられる燃料の性状やエンジンの仕様等に応じて適宜選択することができる。より具体的には、例えば、少なくとも酸素と作動ガスとを含むガスが燃焼室内にて圧縮されている高圧縮状態にある期間内の所定の時期に燃料を燃焼室内に直接噴射(所謂「高圧噴射」)して燃料を拡散燃焼させてもよい。また、前述のように作動ガスと予め混合された燃料を、燃焼室内に設けられた点火手段から発生した火花によって点火して火花点火燃焼させてもよい。
【0048】
上記作動ガスとしては、例えば、空気や窒素等の種々のガスを用いることができるが、エンジンの熱効率を高めるという観点からは、例えば、アルゴン、ネオン、ヘリウム等の比熱比が大きい不活性ガスを用いることが望ましい。かかる比熱比が大きいガスを作動ガスとして用いる場合、比較的小さい比熱比を有するガス(例えば、空気、窒素等)を作動ガスとして用いる場合と比較して、より高い熱効率でエンジンを運転することができる。
【0049】
作動ガス循環型エンジンにおいては、前述のように、凝縮水を貯蔵する貯水タンクが既燃ガスの流路に設けられた凝縮器に連通している。従って、凝縮水の凍結対策として、貯水タンクの内部に貯蔵された凝縮水を完全に排出してしまうと、燃焼室に再循環されるべき作動ガスが貯水タンクの排出経路を経由して外部に漏れてしまう。即ち、作動ガスの密閉を維持するためには、貯水タンクの内部に貯蔵された凝縮水を完全には排出せず、所定量の凝縮水を貯水タンクの内部に常に残すようにするべきであるので、本実施態様においては、この点に留意して、第1水位範囲の下限を設定する必要がある。
【0050】
ところで、前述のように、上記作動ガスとしては、例えば、空気や窒素等の、種々のガスを用いることができるが、エンジンの熱効率を高め、且つ、例えば、窒素酸化物(NOx)のような、環境保護の観点から排出を抑制することが求められている汚染物質を削減するためには、例えば、単原子の不活性ガスを用いることが望ましい。かかる単原子の不活性ガスとしては、希ガス類に属するヘリウム、ネオン、アルゴン等を挙げることができるが、内燃機関の作動ガスとしては、これらの中ではアルゴンが広く用いられている。
【0051】
また、上記燃料としては、前述のように、例えば、ガソリン、軽油、天然ガス、プロパン、水素等の、種々の燃料を用いることができる。しかしながら、ガソリンを始めとする石油燃料を用いる場合は、燃焼生成物として二酸化炭素(CO)も発生するため、二酸化炭素をも循環ガスから分離・除去する必要が生ずる。また、二酸化炭素の排出は、昨今問題視されている地球温暖化等の観点からも望ましくない。更に、これらの石油燃料は、燃焼生成物として硫黄酸化物(SOx)等の有害物質を発生する虞がある。かかる懸念を伴わない環境に優しい燃料としては、燃焼生成物として水(HO)のみを生ずる水素を使用することが特に望ましい。
【0052】
従って、本発明の第5態様は、
本発明の前記第4態様に係る貯水タンクであって、
前記作動ガスがアルゴンであること、及び
前記エンジンにおける燃料が水素であること、
を特徴とする、貯水タンクである。
【0053】
上記のように、本発明の第5態様においては、高い比熱比を有し且つ不活性なアルゴンを作動ガスとして使用し、且つ燃焼生成物として水(HO)のみを生ずる水素を燃料として使用する作動ガス循環型エンジンにおいて、本発明に係る貯水タンクが使用される。その結果、本実施態様においては、高い熱効率にて運転しつつ、二酸化炭素、窒素酸化物、硫黄酸化物等の環境汚染物質の排出を抑制することができる作動ガス循環型エンジンを搭載する仕組み(例えば、車両)において、貯水タンク中の凝縮水が凍結しても、凝縮水の凍結に伴う体積膨張に起因する応力を緩和し、凝縮水の凍結に伴う体積膨張に起因する貯水タンクの破損を防止することができる。
【0054】
以上のように、本発明によれば、貯水タンクを備える仕組み(例えば、車両)が寒冷時に屋外に放置される等して、周囲温度が氷点以下となり、貯水タンク内の液体が凍結しても、液体に接触している貯水タンクの内側の壁面と液体の液面とが交わる角度が鋭角となっているので、液体の凍結に伴う体積膨張に起因する応力が緩和され、液体の凍結に伴う体積膨張に起因するタンクの破損を防止することができる。
【0055】
以下、本発明の幾つかの実施態様に係る貯水タンクにつき、添付図面を参照しつつ説明する。但し、以下に述べる説明はあくまで例示を目的とするものであり、本発明の範囲が以下の説明に限定されるものと解釈されるべきではない。
【実施例1】
【0056】
1)貯水タンクを含むシステムの構成
前述のように、図1は、本発明の1つの実施態様に係る貯水タンクを含むシステムの構成を表す概略図である。当該システムは、作動ガス循環型エンジンの本体部110、燃料供給部130、酸素供給部140、循環通路部(作動ガス循環通路部)150、及び凝縮手段160を備えている。このエンジンは、燃焼室に酸素及び作動ガス(例えば、アルゴンガス)を供給し、このガスを圧縮することにより高温高圧となったガス中に燃料(例えば、水素ガス)を噴射することにより燃料を拡散燃焼させる形式のエンジンである。なお、図1はエンジン本体部110の特定気筒の断面のみを示しているが、複数の気筒を含むエンジンの場合は、他の気筒も同様な構成を備えている。
【0057】
エンジン本体部110は、特定の構成に限定されるものではないが、本実施態様においては、シリンダヘッド111と、シリンダブロックが形成するシリンダ112と、シリンダ内において往復運動するピストン113と、クランク軸114と、ピストン113とクランク軸114とを連結しピストン113の往復運動をクランク軸114の回転運動に変換するためのコネクティングロッド115と、シリンダブロックに連接されたオイルパン116とを備えるピストン往復動型エンジンである。
【0058】
この場合、ピストン113の側面にはピストンリングが配設され(図示せず)、シリンダヘッド111、シリンダ112及びオイルパン116から形成される空間は、ピストン113により、ピストンの頂面側の燃焼室117と、クランク軸を収容するクランクケース118と、に区画されている。
【0059】
シリンダヘッド111には、燃焼室117に連通した吸気ポートと、燃焼室117に連通した排気ポートと、が形成されている(何れも図示せず)。吸気ポートには吸気ポートを開閉する吸気弁121が配設され、排気ポートには排気ポートを開閉する排気弁122が配設されている(何れも図示せず)。更に、シリンダヘッドには、燃料(例えば、水素ガス)を燃焼室117内に直接噴射する燃料噴射弁123が配設されている。
【0060】
燃料供給部130は、燃料タンク131(例えば、水素ガスタンク)、燃料ガス通路132、燃料ガス圧レギュレータ(図示せず)、燃料ガス流量計(図示せず)、及びサージタンク(図示せず)等を備えることができる。また、酸素供給部140は、酸素タンク141(酸素ガスタンク)、酸素ガス通路142、酸素ガス圧レギュレータ(図示せず)、酸素ガス流量計(図示せず)、及び酸素ガスミキサ(図示せず)を備えることができる。
【0061】
尚、エンジン本体部110、燃料供給部130、及び酸素供給部140の具体的な構成並びに動作については、例えば、作動ガス循環型水素エンジン等に関して当該技術分野において周知であるので、本明細書における詳細な説明は割愛する。
【0062】
循環通路部150は、第1及び第2通路部(第1及び第2流路形成管)151及び152を備え、第1通路部151と第2通路部152との間に、入口部と出口部とを有する凝縮手段160が介装されている。循環通路部150は、排気ポートと吸気ポートとを燃焼室117の外部にて接続する「既燃ガス(循環ガス)の循環経路」を構成している。
【0063】
第1通路部151は、排気ポートと凝縮手段160の入口部とを接続している。第2通路部152は、凝縮手段160の出口部とと吸気ポートとを接続しており、その途中に、酸素ガスミキサ等(図示せず)を介して酸素供給部140が合流している。
【0064】
凝縮手段160は、上述したように既燃ガス(循環ガス)の入口部と出口部とを備える。更に、凝縮手段160は、冷却水導入口161、冷却水排出口162、及び凝縮水排出口163を備え、冷却水導入口と冷却水排出口とを接続する冷却水循環部には、冷却水の冷却に用いられる放熱器(ラジエタ)164が介装されている。
【0065】
凝縮手段160は、入口部から導入されて出口部から排出される既燃ガス(循環ガス)に含まれる水分(水蒸気)を、冷却水導入口161から導入されると共に凝縮手段160の内部を通過した後に冷却水排出口162から排出される冷却水によって冷却し、凝縮させる。凝縮された水は、一旦、凝縮手段160の底部に溜まり、凝縮水排出口163を開閉する弁体(図示せず)が開かれた際に凝縮水排出口163を通して系外に排出される。即ち、本実施態様においては、凝縮手段160の底部(図1において一点鎖線にて囲まれている部分)が、本発明に係る貯水タンクとしての機能を果たしており、凝縮水排出口163及び上記弁体が排水手段を構成している。加えて、本発明に係る貯水タンクとしての凝縮手段160の底部には、水位検出手段を構成する水位センサが配設されている(図示せず)。一方、水分が除去(分離)されたガスは、凝縮手段160の出口部から循環通路部150(第2通路部152)に排出される。
【0066】
尚、上記のように、本実施態様においては、凝縮手段160の底部が、本発明に係る貯水タンクとしての機能を果たしているが、例えば、導管等を介して凝縮手段160の底部と連接された別個の貯水タンクを設けてもよい。また、本実施態様においては、凝縮手段160は冷却水を冷媒として使用する水冷式凝縮器を用いているが、凝縮手段160は、水以外の冷媒を使用するものであってもよく、空気(空気の送風)により内部を通過するガスの水分を凝縮させる空冷式凝縮部を備えるものであってもよい。
【0067】
また、作動ガスとしては、前述のように、空気や窒素等の、種々のガスを用いることができるが、例えば、アルゴン、ネオン、ヘリウム等の、比熱比が大きい不活性ガスを用いることが望ましい。かかる比熱比が大きいガスを作動ガスとして用いる場合、比較的小さい比熱比を有するガス(例えば、空気、窒素等)を作動ガスとして用いる場合と比較して、より高い熱効率でエンジンを運転することができる。上記に加えて、例えば、窒素酸化物のような汚染物質の排出を削減して環境保護に貢献しようとする観点からも、不活性ガスを用いることが望ましい。これらの不活性ガスの中では、アルゴンが内燃機関の作動ガスとして広く用いられている。
【0068】
更に、燃料としては、前述のように、ガソリン、軽油、天然ガス、プロパン、水素等の種々の燃料を用いることができる。但し、本実施態様は、作動ガス循環型エンジンの燃料の燃焼生成物として生じ、既燃ガスに含まれる水分(水蒸気)を凝縮手段160によって凝縮・分離して得られる凝縮水を貯蔵する貯水タンクにおいて、寒冷時等における凝縮水の凍結に伴う体積の膨張に起因する貯水タンクの破損等を低減しようとするものである。従って、上記燃料としては、燃焼生成物として、水(HO)を生ずるものが想定され、中でも、二酸化炭素(CO)を排出せず、地球温暖化の防止に貢献しようとする観点から、水素を燃料として用いることが望ましい。
【0069】
2)貯水タンクの構成
上述のように、本実施態様においては、凝縮手段160の底部が、本発明に係る貯水タンクとしての機能を果たしている。そこで、ここからは、図2を参照しながら、本発明に係る貯水タンクに相当する、凝縮手段160の底部について説明する。尚、図2は、前述のように、図1中の一点鎖線で囲まれた部分の拡大図である。
【0070】
図2に示すように、本発明に係る貯水タンクに相当する凝縮手段160の底部は、略筒状(例えば、略円筒状)の形状を有する凝縮手段160の側面201と、略逆錐状(例えば、略逆円錐状)の形状を有する凝縮手段160の底面202とが、同じ断面を有する境界面(図2においては、第1水位範囲220の上限221(=上限水位H)における水平断面に相当する)にて組み合わされて構成されている。図2においては、本発明に係る貯水タンクに相当する凝縮手段160の底部に貯蔵される凝縮水の水位は、破線によって示す水面211の高さにあり、この水位は、一点鎖線によって示す第1水位範囲220の上限221(=上限水位H)と第1水位範囲220の下限222(=下限水位H)の間に位置する(即ち、第1水位範囲220に入っている)。その結果、凝縮水の水面211と、鉛直方向において上に向かって広がるテーパ状の形状を有する凝縮手段160の底面202とがなす角(θ)212は鋭角となる。
【0071】
上記のように、図2に示す状況においては、凝縮手段160の底部(貯水タンク)に貯蔵される凝縮水の水位が第1水位範囲220に入っている。従って、このままの水位を保ったまま凝縮水が凍結した場合、凝縮水の凍結に伴って体積が膨張する際に、貯水タンクの底面202との間で滑りが生じ易くなる。その結果、凝縮水の凍結に伴う体積の膨張分が鉛直方向において上向きに逃げることができるので、体積の膨張に伴って貯水タンクの内壁面(凝縮手段160の底面202)に及ぶ応力が緩和され、貯水タンクの破損等の不都合を回避することができる。
【0072】
尚、本実施態様においては、第1水位範囲220の上限221(=上限水位H)を、略筒状の形状を有する凝縮手段160の側面201と、略逆錐状の形状を有する凝縮手段160の底面202との境界面の高さに設定した。しかしながら、第1水位範囲220の上限221(=上限水位H)は、前述のように、貯水タンクの内部に貯蔵される液体の凍結が想定される状況において生じ得る、同貯水タンクを素なる仕組み(例えば、車両)の傾きやタンクに対する液面の傾き、水位検出手段が配設される位置等を勘案して、上記境界面よりも低い位置に設定してもよい。
【0073】
一方、第1水位範囲220の下限222(=上限水位H)については、本実施態様においては、本発明に係る貯水タンクを作動ガス循環型エンジンに適用することを想定しているので、前述のように、作動ガスの密閉を維持するために必要とされる量の凝縮水を貯水タンクの内部に残すように設定する必要がある。
【0074】
一方、凝縮手段160の底部(貯水タンク)に貯蔵される凝縮水の水位が第1水位範囲220の上限221を超えており、水面211が凝縮手段160の側面201と交わるような状況においては、凝縮手段160の内壁面との間での滑りが発生し難く、凝縮水の凍結に伴う体積の膨張分が逃げることができない。その結果、体積の膨張に伴って貯水タンクの内壁面(凝縮手段160の側面201や底面202に及ぶ応力が緩和されず、貯水タンクの破損等の不都合を生ずる虞が高いままとなる。
【0075】
3)貯水タンク内の水位の制御
前述のように、本発明に係る貯水タンク(本実施態様においては凝縮手段160の底部)においては、同貯水タンクを含む仕組みにおいて同貯水タンク及びその内容物である液体を加熱する熱源となる構成要素(本実施態様においては作動ガス循環型エンジン110)が発熱を停止する際に、水位調整手段が、予め定められた第1水位範囲220に入るように液体の液面(本実施態様においては凝縮水の水面211)の高さを調整する。かかる一連の処理につき、ここで、図3を参照しながら説明する。図3は、前述のように、本発明の1つの実施態様に係る貯水タンクにおいて実行される、貯水タンク内の液体の水位を制御を実行する処理を表すフローチャートである。同フローチャートに示される一連の処理は、例えば、電子制御装置(図示せず)が内蔵するクロックを利用する等して、十分に速い周期で繰り返し実行させることができる。
【0076】
図3に示すように、本実施態様においては、先ずステップS301において、貯水タンク内の凝縮水の水位(H)が、水位検出手段(図示せず)によって取得される。次に、ステップS302において、貯水タンクを含む仕組み(本実施態様においては車両)の熱源(本実施態様においてはエンジン)が停止しているか否かが判定される。同判定についての詳細については当業者に周知であるので、本明細書での説明は割愛する。
【0077】
熱源が停止していると判定される場合は(ステップS302:Yes)、ステップS301において取得された凝縮水の水位(H)が、第1水位範囲220の上限221(=上限水位H)を超えるか否かが判定される(ステップS303)。取得された水位Hが上限水位Hを超える(即ち、H>H)と判定される場合は(ステップS303:Yes)、凝縮水排出口163を開いて凝縮水の排水を開始する(ステップS305)。一方、上記ステップS303において、凝縮水の水位Hが上限水位Hを超えていない(即ち、H≦H)と判定される場合は(ステップS303:No)、凝縮水排出口163を閉じて凝縮水の排水を停止する(ステップS306)。尚、熱源であるエンジンが停止している状態において上記処理が際限なく繰り返し実行されることを回避するため、例えば、エンジンが停止してからの経過時間等に基づいて、上記処理の実行を停止させるように構成してもよい。
【0078】
ところで、本実施態様においては、貯水タンクにおける凝縮水の量は、エンジンを稼働させている限り、徐々に増加して行く。従って、貯水タンク内に凝縮水が溜まるに任せて放置した場合、やがて凝縮手段160の内部が凝縮水で満たされ、既燃ガスから水分を除去することができなくなるばかりか、作動ガスの循環通路に凝縮水が混入して、エンジンに重大なダメージを与える事態を招く虞がある。故に、本発明のように凝縮水の凍結に起因する不都合を回避するという目的ではなく、かかる懸念を解消することを目的として、エンジン稼働中での貯水タンク内での凝縮水の水位を管理することは、作動ガス循環型エンジンにおいて広く行われている。
【0079】
即ち、上記ステップS302において、熱源が停止していない(即ち、稼働中)と判定される場合は(ステップS302:No)、ステップS301において取得された凝縮水の水位(H)が、上述のような懸念を考慮して予め定められる稼働時上限水位(H)を超えるか否かが判定される(ステップS304)。取得された水位Hが稼働時上限水位Hを超える(即ち、H>H)と判定される場合は(ステップS304:Yes)、凝縮水排出口163を開いて凝縮水の排水を開始する(ステップS307)。一方、上記ステップS304において、凝縮水の水位Hが稼働時上限水位Hを超えていない(即ち、H≦H)と判定される場合は(ステップS304:No)、凝縮水排出口163を閉じて凝縮水の排水を停止する(ステップS308)。
【0080】
上述のように、図3に示すフローチャートによって表される一連の処理は、例えば、電子制御装置(図示せず)が内蔵するクロックを利用する等して、十分に速い周期で繰り返し実行される。従って、熱源であるエンジンが停止している場合は、凝縮水の水位Hが第1水位範囲220の上限221(=上限水位H)を超えるか否かについての判定が、所定の期間に亘って繰り返し行われ、その判定結果に基づいて、凝縮水の水位が第1水位範囲220に入るように制御される。
【0081】
その結果、液体の液面(本実施態様においては凝縮水の水面211)が、貯水タンクの内側の壁面(本実施態様においては凝縮手段160の底面202)と鋭角をなして交わる状態が達成される。従って、前述のように、貯水タンクを備える仕組み(例えば、車両)が寒冷時に屋外に放置される等して、周囲温度が氷点以下となり、凝縮水が凍結するような事態に陥っても、凝縮水の凍結に伴う体積の膨張分を鉛直方向において上向きに逃がすことができる。これにより、体積の膨張に伴って貯水タンクの内壁面(凝縮手段160の底面202)に及ぶ応力が緩和され、貯水タンクの破損等の不都合を回避することができる。
【実施例2】
【0082】
1)消波手段を有する貯水タンクの構成
次に、本発明のもう1つの実施態様に係る貯水タンクについて、図4を参照しながら説明する。前述のように、図4は、本発明のもう1つの実施態様に係る貯水タンクの構成を表す概略図である。図4に示す貯水タンクにおいては、図2に示す貯水タンクに対して、凝縮液の波動に伴う運動エネルギーを減衰させる消波手段が追加されている。
【0083】
即ち、本実施態様においては、貯水タンクとしての凝縮手段160の底部に、凝縮液の波動に伴う運動エネルギーを減衰させる消波手段310が設けられている。本実施態様における消波手段310は、複数枚の消波板311を含んでなる構造物であり、貯水タンクが受ける揺れや振動等に起因する凝縮水の波動に伴う運動エネルギを減衰させ、波動の振幅及び速度の増大を抑制するものである。図4に示すように、消波手段310は、第1水位範囲220の上限221(=上限水位H)よりも高い位置に配設されている。
【0084】
2)貯水タンク内の水位の制御
本実施態様に係る貯水タンクにおいても、前述の実施態様と同様に、図3に示すフローチャートによって表される一連の処理によって、凝集水の水位を制御することができる。即ち、貯水タンクを備える仕組みにおける熱源(例えば、車両における主たる熱源であるエンジン)が停止している際には、凝縮水の水位が第1水位範囲220に入るように水位調整手段によって調整される。
【0085】
また、本実施態様に係る貯水タンクにおいては、上記のように、第1水位範囲220の上限221(=上限水位H)より高い(鉛直方向において上側の)位置に消波手段310が配設されている。その結果、本実施態様に係る貯水タンクにおいては、貯水タンク内の凝縮水の凍結が想定され得る、熱源であるエンジンが停止している状況においては、凝縮水の水面211よりも高い(鉛直方向において上側の)位置に消波手段310が存在することになる。従って、凝縮水が凍結する際には、消波手段310に凝縮水が接触していないので、凝縮水の凍結に伴う体積の膨張に起因する応力により消波手段310が破損したり変形したりする問題が低減される。
【0086】
尚、前述のように、貯水タンクを含む仕組みにおいて想定される傾きや貯水タンク(本実施態様においては凝縮手段160の底部)に対する凝縮水の傾き、消波手段310の形状や構造等を勘案して、第1水位範囲220の上限221(=上限水位H)と消波手段310の配設位置との間に適切なマージンを設けてもよい。
【0087】
一方、図3に示すフローチャートによって表される一連の処理によれば、貯水タンクを備える仕組みにおける熱源(例えば、車両における主たる熱源であるエンジン)が停止していない場合は、凝縮水の水位が上述の稼働時上限水位(H)を超えないように水位調整手段によって調整される。つまり、本実施態様に係る貯水タンクにおいて、貯水タンクを備える仕組みにおける熱源(例えば、車両における主たる熱源であるエンジン)が稼働している間は、凝縮水の水位は、上述の稼働時上限水位(H)の近傍に維持される(図4中に二点鎖線にて示す水面312)。
【0088】
図4からも明らかであるように、凝縮水の水位が稼働時上限水位(H)の近傍に維持されている状況においては、消波手段の310の一部が凝縮水の水面211よりも下側の水中に沈み、残りの部分がには凝縮水の水面211よりも上側に露出している。つまり、貯水タンクを備える仕組みにおける熱源(例えば、車両における主たる熱源であるエンジン)が稼働している場合は、消波手段310が凝縮水の波動に触れて、凝縮水の波動に伴う運動エネルギを減衰させ、波動の振幅及び速度の増大を抑制するのに望ましい高さに、凝縮水の水位が維持される。
【0089】
以上のように、消波手段310を備える本実施態様に係る貯水タンクにおいては、貯水タンクを備える仕組みにおける熱源(例えば、車両における主たる熱源であるエンジン)が稼働している場合は、消波手段310が消波効果を発揮することができる高さに凝縮水の水位が維持される。一方、熱源であるエンジンが停止している場合は、消波手段310よりも低い高さに凝縮水の水位が維持される。従って、消波手段310は凝縮水に触れていないので、凝縮水が凍結しても、凝縮水の膨張に起因する応力によって消波手段310が破損したり変形したりする虞が解消される。加えて、この水位においては、凝縮水の水面211と凝縮手段160の底面202とが鋭角をなして交わるので、凝縮水が凍結するような事態に陥っても、凝縮水の凍結に伴う体積の膨張に伴って貯水タンクの内壁面(凝縮手段160の底面202)に及ぶ応力が緩和され、貯水タンクの破損等の不都合を回避することができる。
【0090】
以上、本発明を説明することを目的として、特定の構成及び実行手順の組み合わせを有する幾つかの実施例について説明してきたが、本発明の範囲は、これらの例示的な実施態様に限定されるものではなく、特許請求の範囲及び明細書に記載された事項の範囲内で、適宜修正を加えることができる。
【符号の説明】
【0091】
110…エンジン本体部、111…シリンダヘッド、112…シリンダ、113…ピストン、114…クランク軸、115…コネクティングロッド、116…オイルパン、117…燃焼室、118…クランクケース、121…吸気弁、122…排気弁、123…燃料噴射弁、130…燃料供給部、131…燃料タンク、132…燃料ガス通路、140…酸素供給部、141…酸素タンク、142…酸素ガス通路、150…循環通路部、151…第1通路部(第1流路形成管)、152…第2通路部(第2流路形成管)、160…凝縮手段、161…冷却水導入口、162…冷却水排出口、163…凝縮水排出口、164…放熱器(ラジエタ)、201…凝縮手段の側面、202…凝縮手段の底面、211…停止時における凝縮水の水面、212…凝縮水の水面211と凝縮手段の底面202とがなす角(θ)、220…第1水位範囲、221てn第1水位範囲220の上限(=上限水位H)、222…第1水位範囲220の下限222(=下限水位H)、310…消波手段、311…消波板、及び312…稼働時における凝縮水の水面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水又は水を主成分とする液体を内部に貯蔵する貯水タンクであって、
前記貯水タンクの内部に貯蔵される前記液体の液面の高さを検出する水位検出手段、
前記貯水タンクから前記液体を排出する排水手段、及び
前記排水手段を制御して、前記水位検出手段によって検出される前記液体の液面の高さを調整する水位調整手段、
を備えること、並びに
前記貯水タンク及び前記液体を加熱する熱源となる構成要素を有する仕組みにおいて、前記貯水タンクが使用されること、
前記熱源となる構成要素が発熱を停止する際に、前記水位調整手段が、予め定められた第1水位範囲に入るように前記液体の液面の高さを調整すること、及び
前記第1水位範囲に対応する部位においては、前記貯水タンクの内側の壁面が、前記液体に接触している壁面と前記液体の液面とが交わる角度が鋭角となる形状を有すること、
を特徴とする、貯水タンク。
【請求項2】
請求項1に記載の貯水タンクであって、
前記液体の波動に伴う運動エネルギーを減衰させる消波手段を更に備えること、及び
前記消波手段が、前記第1水位範囲の上限よりも高い位置に配設されていること、
を特徴とする、貯水タンク。
【請求項3】
請求項1又は請求項2の何れか1項に記載の貯水タンクであって、前記熱源となる構成要素がエンジンであることを特徴とする、貯水タンク。
【請求項4】
請求項3に記載の貯水タンクであって、
前記エンジンが、前記エンジンから排出される作動ガスに含まれる水分を凝縮水として凝縮させて作動ガスから分離する凝縮手段を備える作動ガス循環型エンジンであること、及び
前記液体が前記凝縮水であること、
を特徴とする、貯水タンク。
【請求項5】
請求項4に記載の貯水タンクであって、
前記作動ガスがアルゴンであること、及び
前記エンジンにおける燃料が水素であること、
を特徴とする、貯水タンク。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−193634(P2012−193634A)
【公開日】平成24年10月11日(2012.10.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−56642(P2011−56642)
【出願日】平成23年3月15日(2011.3.15)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】