説明

貯水施設床版の遮水構造およびその製造方法

【課題】貯水施設の床版に設けた遮水シートは、要所のみをコンクリート等の重量物で床版に押さえる方法であり、台風や低気圧による強風が貯水施設に作用すると、それが貯水施設の水位が大幅に下がっているときと重なると風荷重と気圧の低下に伴う揚力によって遮水シートが上に引き揚げられることになり、この動作の繰り返しにより、遮水シートの固定個所を支点とした振動が発生して遮水シートに部分的に交番的に伸びが発生し、破損することとなる。
【解決手段】ゴムやプラスチック等製のシートの裏面にアスファルト、合成ゴム等の粘着物質を設けた遮水シートを、コンクリートやアスファルトコンクリート等の床版上に粘着物質面を当てて敷設して粘着物質を床版にシートの全面を密着させたことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンクリート等で構築された貯水施設の遮水構造およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
コンクリート等による貯水場等の貯水施設は、その床版からの漏水を防ぐために遮水手段が必要である。
そこで、従来は一般的に、ゴムやプラスチックによる遮水シートを床版上に敷設する方法が採用されている(例えば、特許文献1参照。)。
【特許文献1】特開2002−356871号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上述したような従来の技術においては、遮水シートの敷設は、水が存在しない状態で行い、要所のみをコンクリート等の重量物で床版に押さえる方法が採用されている。
このような貯水施設の場合には水の使用状況によって水位は常に変化する。
そこで、台風の近接や来襲、あるいは低気圧による強風が貯水施設に作用することと、貯水施設の水位が大幅に下がっているときとが重なると強風によって遮水シートにその影響がおよぶことがある。
【0004】
そのような場合、遮水シートは弾性材料で構成されていることから、風荷重と気圧の低下に伴う揚力によって上に引き揚げられることになり、さらに、遮水シートと床版との間に空気が引き込まれ、この動作の繰り返しにより、遮水シートの固定個所を支点とした振動が発生し、遮水シートに部分的に交番的に伸びが発生することになる。
この振動が過度となった場合や振動による疲労が蓄積された場合に、固定点付近で遮水シートに破損が発生するという問題がある。
【0005】
さらに、これを修復するためには水中でシートを補修することができないために貯水施設を乾燥状態にして補修可能な状態にすることが必要となるという問題がある。
本発明は、上記の問題点を解決するためになされたもので、貯水施設の床版に遮水シートを全面密着させる手段を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
そこで本発明は、ゴムやプラスチック等の可撓性体製のシートの裏面にアスファルト、合成ゴム等の粘着物質を設けた遮水シートを、コンクリートやアスファルトコンクリート等の床版上に粘着物質面を当てて敷設して粘着物質により床版にシートの全面を密着させたことを特徴とする。
さらには、シートの裏面にアスファルト、合成ゴム等の粘着物質を設けて遮水シートとし、構築地盤上にコンクリートやアスファルトコンクリート等による床版を構築し、前記遮水シートを粘着物質面を下にして床版上に広げ、遮水シートの表面に熱を作用させて裏面のアスファルトを床版に粘着させることにより床版に全面を密着させることを特徴とする貯水施設床版の遮水構造の製造方法である。
【発明の効果】
【0007】
これにより、遮水シートは全面が床版に完全に密着し、さらに、水圧がかかることによって密着状態が強化されると共に背後の地盤の崩壊対策も十分に行えることになる。
また、貯水施設の水位が低下しても、風や低気圧による引き揚げや浮き上がりの発生を防ぐことができ、それによって遮水シートの破損を防ぐことができるという効果が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下に、図面を参照して本発明の実施例を説明する。
図1は本発明の実施例を示す断面説明図、図2は遮水シートの断面説明図である。
図において、1はゴムやプラスチック等の可撓性体性のシートであり、必要に応じて天然繊維、合成繊維、金属繊維等による織布や不織布等による補強材2を埋設したシートを工場もしくは現場において貯水施設の大きさに合わせて接合を行う。この接合は、シート工の材料に合わせて適宜に選択されるもので、例えば溶着、接着、接合テープ等任意である。
【0009】
このようなシート1の裏面に、例えばアスファルト、合成ゴム等の粘着物質3を塗布等して付着させて遮水シート4を構成する。
この粘着物質3の塗布に際して、例えばアスファルトを使用した場合、敷設時に加熱施工を行うが、シート材料がこの加熱によって変形や劣化することがない材料であることが要求される
つぎに、床版5はコンクリートやアスファルトコンクリート等の表層材で構築されるがコンクリートで構成する場合は、工場生産したコンクリートブロックを用いる工法や現場で打設する工法がある。これらいずれの工法にせよ目地が発生する。コンクリートブロックの場合にはその接合部が、現場で打設する場合には養生後に型枠を撤去した個所が目地6となる。
【0010】
実施例として、現場で打設する場合を説明する。まず、図3において、支保工7を所定間隔に配置し、その上に溶接配金8を置き、型枠9によって所定間隔に仕切る。
そこで、図4に示す如く、構築地盤10上にコンクリートを打設し、養生後に図5に示す如く、型枠9を取り除いて設計移動量Sをあけて上記目地6が形成される。
なお、このコンクリート床版は、貧配合コンクリートでもよいために環境余剰物資であるフライアッシュを用いることも可能である。
【0011】
そこで、その目地6に目地材11を挿入する。この目地材は11、図5に示す如く、地震や地盤変化に対応できるように移動量が確保できるように、例えば目地幅より閉止頭部が大きくなるようにして両床版材をまたぐ構造となっている。
つぎに、遮水シートを敷設する方法を説明する。
例えば、裏面に粘着物質としてアスファルトを塗布したゴム製の遮水シート4の場合で説明すると、アスファルト面を下にして遮水シート4を床版5上に広げる。
【0012】
そこで、表面に熱を作用させて裏面のアスファルトを粘着させることにより床版5と全面が凝着する。この場合の温度は、使用するアスファルトやシート材料によって決定される。加熱は既存のどのような手段でもよく図6に示するような熱ローラー12でもよくまた熱風でもよい。
つぎに、万一破損が発生した場合の修復方法について説明する。
【0013】
図7に示す如く、破損個所13より大きいシートの裏面に粘着物質を塗布して補修用の遮水シート4とする。
そこで、破損個所13の周囲を目地材14で囲み、前記遮水シート4を破損個所上におき、加熱しながら押し当てることによって修復は完了する。なお、このような修復作業は乾燥状態で行うのがよいが、水中加熱手段が存在することから湿潤状態または水中状態であっても可能である。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】実施例を示す断面説明図
【図2】遮水シートの断面説明図
【図3】コンクリート床版の施工例の断面説明図
【図4】コンクリート床版の施工例の断面説明図
【図5】コンクリート床版の施工例の断面説明図
【図6】遮水シートの接着工程を説明する断面説明図
【図7】修復個所の断面説明図
【符号の説明】
【0015】
1 シート
2 補強材
3 粘着物質
4 遮水シート
5 床版
6 目地
7 支保工
8 溶接配金
9 型枠
10 構築地盤
11 目地材
12 熱ローラー
13 破損個所
14 目地材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ゴムやプラスチック等の可撓性体製による遮水シートを床版上に敷設する遮水構造において、
可撓性体製のシートの裏面にアスファルト、合成ゴム等の粘着物質を設けた遮水シートを、コンクリートやアスファルトコンクリート等の床版上に粘着物質面を当てて敷設して粘着物質を介して床版にシートの全面を密着させたことを特徴とする貯水施設床版の遮水構造。
【請求項2】
請求項1において、シート内に天然繊維、合成繊維、金属繊維等による織布や不織布等による補強材を埋設したことを特徴とする貯水施設床版の遮水構造。
【請求項3】
シートの裏面にアスファルト、合成ゴム等の粘着物質を設けて遮水シートとし、
構築地盤上にコンクリートやアスファルトコンクリート等による床版を構築し、
前記遮水シートを粘着物質面を下にして前記床版上に広げ、
遮水シートの表面に熱を作用させて裏面のアスファルトを床版に粘着させることにより床版に全面を密着させることを特徴とする貯水施設床版の遮水構造の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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