説明

貯湯タンク

【課題】コージェネレーションシステムの貯湯装置等に使用可能で、設置面積が小さく、かつ製作が容易な貯湯タンクを提供する。
【解決手段】貯湯タンク1は、断面形状が楕円形又は長円形の胴部を備え、内部に入水圧を受けるものである。貯湯タンク1は補強部材3を有し、補強部材3は一対の当て板15,15と、それらの間に取り付けられた複数の支持部材16からなる。支持部材16は板状であり、その平面18が上鏡部6又は下鏡部7に対向する姿勢で、当て板15,15に固定されている。補強部材3は胴部5の楕円形又は長円形の長軸Aに支持部材16が沿う方向に設けられており、当て板15,15は長軸Aと胴部5との接点近傍と接触又は接触し得る位置にある。貯湯タンク1に入水圧が掛かったときに当て板15,15が前記接点近傍と接触し、支持部材16が圧縮力を保持する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内部に入水圧を受ける貯湯タンクに関する。本発明の貯湯タンクは、例えばコージェネレーションシステムの貯湯装置に使用可能であり、設置面積が小さく、かつ製作が容易なものである。
【背景技術】
【0002】
燃料電池等の発電装置において発生した排熱が持つ熱エネルギーを湯水を介して回収し、貯湯タンクに貯留可能な熱回収装置を備えたコージェネレーションシステムが知られている(例えば、特許文献1)。かかる構成のコージェネレーションシステムは、発電装置と貯湯タンクとの間で湯水が循環可能なタンク循環流路を有し、当該タンク循環流路を介して循環する湯水によって発電装置を冷却し、これに伴って加熱された湯水を貯湯タンクに貯留する。
【0003】
図19は、従来技術に係るコージェネレーションシステムの主要部の構成を示す説明図である。図19に示すコージェネレーションシステム100は、熱・電気発生装置たる燃料電池装置101と、給湯システムたる貯湯装置によって構成されている。燃料電池装置101は、燃料電池102と循環ポンプ103によって構成されている。燃料電池102は熱交換器を有しており、内部に通水可能であり、内部に通水することにより燃料電池102の排熱を奪うことができる。
【0004】
貯湯装置は貯湯タンク105を中心とするものであり、貯湯タンク105に給水するための給水流路120と、貯湯タンク105から燃料電池装置101へ湯水を送る加熱往き流路112と、燃料電池装置101から貯湯タンク105へ湯水を送る加熱戻り流路113と、貯湯タンク105から湯水を取り出すための給湯流路121とを有する。また、給水流路120と加熱往き流路112との間、並びに、加熱戻り流路113と給湯流路121との間からそれぞれ給水側分岐流路116と給湯側分岐流路117が分岐し、貯湯タンク105の上下に設けられ且つタンク内部に連通する開口に結合されている。さらに、給水流路120、加熱往き流路112、加熱戻り流路113、給湯流路121、給水側分岐流路116、および給湯側分岐流路117には、それぞれ弁130,131,132,133,134,135が設けられている。
【0005】
貯湯タンク105に貯留された湯は循環ポンプ103によって常時循環しており、具体的には、給水側分岐流路116と加熱往き流路112を経て燃料電池102を通り、加熱戻り流路113と給湯側分岐流路117を経て、上側から貯湯タンク105に戻る。貯湯タンク105内の湯を取り出す場合(給湯時)は、給水流路120と給水側分岐流路116を経て貯湯タンク105内に下側から給水し、給湯側分岐流路117と給湯流路121から湯を取り出す。ここで、循環時と給湯時のいずれにおいても、貯湯タンク105内の温度成層をできるだけ乱さないことが重要である。
【0006】
ところで上記のような貯湯装置に用いられる貯湯タンクは内圧(入水圧)が掛かるものであるので、耐圧性の面で有利な円筒形状のものがよく採用されている。また円筒形状の方がより大きい容積を確保できるという利点もある。一方、円筒形状の貯湯タンクは大きい設置面積を必要とし、住宅の側壁等の狭い場所に設置するには不利である。そこで、設置面積が小さい円筒以外の形状を有する薄型の貯湯タンクが提案されている。例えば、特許文献2には断面形状が楕円形の貯湯タンクが開示されている。この貯湯タンクは、楕円の短径方向に沿って装着された補強板をタンク内部に備えている。ここで当該補強板は、その両端をタンク内壁に溶接等で直接接合することにより装着されている。また補強板の装着方向に関しては、長径方向でもよい旨の示唆がある。
【特許文献1】特開2007−64526号公報
【特許文献2】特開2005−83597号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、特許文献2に開示されている貯湯タンクでは、補強板を溶接等でタンクに直接接合する必要があるので、製作が煩雑である。当該現状に鑑み、本発明は、コージェネレーションシステムの貯湯装置等に使用可能で、設置面積が小さく、かつ製作が容易な貯湯タンクを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記した課題を解決するための請求項1に記載の発明は、断面形状が楕円形又は長円形の胴部を備え、内部に入水圧を受ける貯湯タンクであって、内部に補強部材が設けられ、前記補強部材は一対の当て板と当該当て板の間に取り付けられた支持部材とを有し、前記補強部材は胴部の楕円形又は長円形の長軸に前記支持部材が沿う方向に設けられており、当て板は前記長軸と胴部との接点近傍と接触又は接触し得る位置にあり、貯湯タンクに入水圧が掛かったときに当て板が前記接点近傍と接触し、支持部材が圧縮力を保持することを特徴とする貯湯タンクである。
【0009】
本発明の貯湯タンクは、断面形状が楕円形又は長円形の胴部を備え、内部に入水圧を受ける貯湯タンクに関するものであり、内部に補強部材が設けられている。そして本発明の貯湯タンクは、当該補強部材の構成と設置方向に特徴を有している。すなわち、補強部材は一対の当て板と支持部材とを有しており、当該支持部材は一対の当て板の間に取り付けられている。また補強部材の設置方向は、胴部の楕円形又は長円形の長軸に補強部材の支持部材が沿う方向である。さらに本発明の貯湯タンクは、補強部材と胴部との位置関係と補強の機構にも特徴を有している。すなわち、補強部材の当て板は、楕円形又は長円形の長軸と胴部との接点近傍と接触又は接触し得る位置にある。そして、貯湯タンクに入水圧が掛かったときに、当て板が楕円形又は長円形の長軸と胴部との接点近傍と接触し、支持部材が圧縮力を保持する。本発明の貯湯タンクは、胴部の断面形状が楕円形又は長円形であるので、断面形状が円形の貯湯タンクに比べて薄型となり、設置に必要な面積が小さい。また、タンク内部に水圧が掛かると胴部の断面形状ができるだけ円形に近い形状に戻ろうとするが、本発明の貯湯タンクでは胴部の楕円形又は長円形の長軸に沿う方向に支持部材が配されているので、支持部材が圧縮力を受け、胴部の膨らみが防止される。さらに、補強部材が上記した特定の方向に設置されているので、補強部材がタンク内部で確実に保持され、胴部に対してずれたり回転したりすることがない。またさらに、本発明の貯湯タンクでは、当て板が楕円形又は長円形の長軸と胴部との接点近傍と接触する構成を採用しているので、補強部材を設置する際に溶接等を行う必要がなく、タンクの製作が容易である。
【0010】
請求項2に記載の発明は、貯湯タンクは内部に温度成層を形成させて湯を貯留するものであり、支持部材は板状であり、支持部材は板状の平面が前記長軸の全てを含む平面と交わる姿勢で固定されていることを特徴とする請求項1に記載の貯湯タンクである。
【0011】
本発明の貯湯タンクは、内部に温度成層を形成させて湯を貯留するものである。そして、補強部材の支持部材は板状であり、板状の平面が楕円形又は長円形の長軸の全てを含む平面と交わる姿勢で固定されている。本発明の貯湯タンクでは、板状の支持部材が特定の姿勢で固定されているので、タンク内部の対流が阻止され、温度成層の乱れが高度に抑えられる。
【0012】
請求項3に記載の発明は、貯湯タンクは内部に温度成層を形成させて湯を貯留するものであり、縦置き姿勢で設置され、上端部と下端部の少なくとも一方に入湯口となる開口が設けられ、当該開口の真下又は真上に補強部材の一部が位置し、入湯口から速度を有して導入された湯が速度を維持した状態で補強部材の一部に当たり、湯の速度が緩和されることを特徴とする請求項1又は2に記載の貯湯タンクである。
【0013】
本発明の貯湯タンクも内部に温度成層を形成させて湯を貯留するものであり、縦置き姿勢で設置される。本発明の貯湯タンクでは、上端部と下端部の少なくとも一方に入湯口となる開口が設けられ、当該開口の真下又は真上に補強部材の一部が位置している。そして、入湯口から速度を有して導入された湯が速度を維持した状態で補強部材の一部に当たり、湯の速度が緩和される。本発明の貯湯タンクによれば、補強部材の一部がタンク内部に導入された湯に対する緩衝材として機能し、温度成層の乱れが高度に抑えられる。なお、本発明において「入湯口」は入水口をも包含する概念であり、入湯口から湯のみならず水が導入されることもある。すなわち、入湯口から速度を有して導入された水が速度を維持した状態で補強部材の一部に当たり、水の速度が緩和される貯湯タンクも本発明に含まれる。
【0014】
請求項4に記載の発明は、入湯口から速度を有して導入された湯が速度を維持した状態で支持部材に当たり、湯の速度が緩和されることを特徴とする請求項3に記載の貯湯タンクである。
【0015】
本発明の貯湯タンクでは、入湯口から導入された湯が補強部材の一部たる支持部材に当たり、湯の速度が緩和される。かかる構成により、支持部材がタンク内部に導入された湯に対する緩衝材として機能し、温度成層の乱れが高度に抑えられる。さらに、支持部材の形状を工夫することで、緩衝材としての機能を容易に高めることができる。
【0016】
請求項5に記載の発明は、補強部材は支持部材の一部に設けられた緩衝部材をさらに有し、入湯口から速度を有して導入された湯が速度を維持した状態で緩衝部材に当たり、湯の速度が緩和されることを特徴とする請求項3に記載の貯湯タンクである。
【0017】
本発明の貯湯タンクでは、支持部材に緩衝部材が設けられており、入湯口から導入された湯が当該緩衝部材に当たり、湯の速度が緩和される。かかる構成により、補強部材の一部たる緩衝部材がタンク内部に導入された湯に対する緩衝材として機能し、温度成層の乱れが高度に抑えられる。さらに、緩衝部材の形状を工夫することで、緩衝材としての機能を容易に高めることができる。緩衝部材の例としては、バッフル板が挙げられる。
【0018】
請求項6に記載の発明は、支持部材は一連の管で形成されており、当該管の両端が貯湯タンク外と連通していることを特徴とする請求項1に記載の貯湯タンクである。
【0019】
本発明の貯湯タンクでは、支持部材が一連の管で形成されており、当該管の両端が貯湯タンク外と連通している。そのため、支持部材に他の機能を付加することができる。例えば、管の両端を集熱器等に接続し、得られた熱を循環させることで、支持部材は熱交換器として機能し、タンク内に蓄熱することが可能となる。
【0020】
請求項7に記載の発明は、貯湯タンクは内部に温度成層を形成させて湯を貯留するものであり、縦置き姿勢で設置され、上端部と下端部の少なくとも一方に入湯口となる開口が設けられ、補強部材は支持部材の一部に設けられた緩衝部材をさらに有し、当該開口の真下又は真上に緩衝部材が位置し、入湯口から速度を有して導入された湯が速度を維持した状態で緩衝部材に当たり、湯の速度が緩和されることを特徴とする請求項6に記載の貯湯タンクである。
【0021】
かかる構成により、温度成層の乱れが高度に抑えられると共にタンク内に蓄熱すること等が可能な貯湯タンクが提供される。なお、本発明においても「入湯口」は入水口をも包含する概念であり、入湯口から湯のみならず水が導入されることもある。すなわち、入湯口から速度を有して導入された水が速度を維持した状態で補強部材の一部に当たり、水の速度が緩和される貯湯タンクも本発明に含まれる。
【発明の効果】
【0022】
請求項1に記載の発明によれば、断面形状が円形の貯湯タンクに比べて設置に必要な面積が小さく、省スペースの点で有利である。また、胴部の楕円形又は長円形の長軸に沿う方向に支持部材が配されているので、支持部材が胴部からの圧縮力を受け、胴部の膨らみが防止される。さらに、補強部材が特定の方向に設置されているので、補強部材がタンク内部で確実に保持され、胴部に対してずれたり回転したりすることがない。またさらに、当て板が楕円形又は長円形の長軸と胴部との接点近傍と接触する構成を採用しているので、補強部材を設置する際に溶接等を行う必要がなく、タンクの製作が容易である。
【0023】
請求項2,3,4,5に記載の発明によれば、上記の効果に加え、温度成層の乱れが高度に抑えられる。
【0024】
請求項6,7に記載の発明によれば、上記の効果に加え、多機能な支持部材を備えた貯湯タンクが提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら説明する。図1は、本発明の第一実施形態に係る貯湯タンクの外観を示す斜視図である。図2は、図1の貯湯タンクの組み立て構造を示す分解斜視図である。図3は、図1の貯湯タンクの内部構造を示す正面視縦断面図である。図4は、図1の貯湯タンクの内部構造を示す側面視縦断面図である。図5は、図1の貯湯タンクの内部構造を示す平面視横断面図である。
【0026】
本発明の第一実施形態に係る貯湯タンク1は、図19に示す様なコージェネレーションシステムの給湯装置等に使用されるものであり、内部に入水圧を受けるものである。図1〜5に示す様に、貯湯タンク1はタンク本体2と補強部材3を基本構成とし、縦置き姿勢で使用される。タンク本体2は、胴部5、上鏡部6、及び下鏡部7からなる。胴部5はタンク本体2の主要部分であり、その形状は水平方向の断面形状が楕円形又は長円形の筒状である。上鏡部6は貯湯タンク1の上端部を構成しており、胴部5の上部に位置し、胴部5を上方から塞いでいる。上鏡部6の平面視における略中央位置には、タンク内部8と連通する開口10が設けられている。一方、下鏡部7は貯湯タンク1の下端部を構成しており、胴部5の下部に位置し、胴部5を下方から塞いでいる。下鏡部7の底面視における略中央位置には、タンク内部と連通する開口11が設けられている。
【0027】
胴部5、上鏡部6、下鏡部7はいずれも厚み約1.2mmのステンレススティール製であり、胴部5と上鏡部6、並びに、胴部5と下鏡部7とはいずれも溶接により接合されている。タンク本体2の容積は140L程度であり、胴部5の高さは約1300mm、平面視(楕円形又は長円形)における長軸の長さは約500mm、短軸の長さは約250mmである。なお、発明の理解を容易にするために、図1〜5並びに後述する図6〜18において、各部材の厚みは誇張して描かれている。
【0028】
貯湯タンク1は、タンク本体2の内部8に補強部材3を備えている。図2〜5に示す様に、補強部材3は一対の当て板15,15と複数の支持部材16とから構成され、胴部5の楕円形又は長円形の長軸Aに支持部材16が沿う方向に設けられている。当て板15は縦長の薄板であり、胴部5の内面に合致するように反った形状を有し、さらに詳細には、図2,5に示す様に、長軸Aと胴部5の内面との接点17近傍の形状に合致する形状を有している。補強部材3をタンク本体2に設置した状態において、当て板15,15は接点17,17の近傍と接触する位置又は接触し得る位置にある。すなわち、当て板15,15は胴部5に直接接合されておらず、もちろん溶接もされていない。
【0029】
支持部材16は、一対の当て板15,15の間に複数取り付けられている。支持部材16は板状の部材であり、その板状の平面18(板の厚み方向に対して直交する面)が上鏡部6又は下鏡部7に対向する姿勢で、当て板15,15に固定されている。換言すれば、平面18は、胴部5における長軸Aの全てを含む平面と交わっており、貯湯タンク1を縦置き姿勢で設置したときに支持部材16の厚み方向が上下方向となり、平面18が真上または真下に向いている。補強部材3をタンク本体2に設置した状態において、最上位に位置する支持部材16は開口10の真下に、最下位に位置する支持部材16は開口11の真上に位置する。当て板15,15と支持部材16はいずれもステンレススティール製である。
【0030】
なお本実施形態では、支持部材16の固定姿勢たる「平面18が長軸Aの全てを含む平面と交わる姿勢」として平面18が真上または真下を向く姿勢を採用しているが、平面18が斜め上または斜め下を向く姿勢を採用してもよい。
【0031】
開口10,11はいずれもタンク本体2の内部8と連通しており、入湯口又は入水口として機能できるものである。例えば、貯湯タンク1を図19に示す様なコージェネレーションシステムに採用する場合、循環時は燃料電池102を通った湯が開口10から導入される。
【0032】
上述のように、貯湯タンク1はタンク本体2と補強部材3とを備えており、補強部材3の当て板15,15は接点17,17の近傍と接触する位置又は接触し得る位置にある(図5)。そして、タンクの内部8に入水圧が掛かって胴部5の断面形状ができるだけ円形に近い形状に戻ろうとすると、当て板15,15が接点17,17の近傍に接触し、支持部材16が圧縮力を保持することとなる。すなわち、本実施形態の貯湯タンク1では、補強部材3が胴部5に溶接等で直接接合されていないので、タンクの製作が容易である。また、補強部材3の設置方向が胴部5の楕円形又は長円形の長軸Aに沿う方向であるので、補強部材3がタンク本体2の内部で回転することがない。さらに、本実施形態の貯湯タンク1では、板状の支持部材16が特定の姿勢で固定されているので、タンク内部における湯水の対流が阻止され、温度成層の乱れが高度に抑えられる。
【0033】
上記した第一実施形態では、板状の支持部材16における平面18の形状が長方形の例を示したが、当該平面の形状として他の形状を採用してもよい。図6は、本発明の第二実施形態に係る貯湯タンクの組み立て構造を示す分解斜視図である。図7は、図6の貯湯タンクの内部構造と湯の流れを示す正面視縦断面図である。図7に示す第二実施形態に係る貯湯タンク21では、補強部材23が一対の当て板15,15の間に備える複数の支持部材のうち、最上位と最下位にある支持部材の形状が第一実施形態のものと異なっている。すなわち、最上位と最下位にある板状の支持部材26は、その平面28の中央付近に拡大平面部22を有している。拡大平面部22は平面28の一部を幅方向に広げて面積を大きくしたものであり、開口10,11の真下または真上に位置している。例えば開口10から湯を導入すると、図7の矢印で示す様に、導入された湯が速度を維持した状態で開口10の真下の拡大平面部22に当たり、湯の速度が緩和される。その結果、タンク内で形成された温度成層の乱れが高度に抑えられる。開口11から低温水を導入する場合も同様であり、導入された低温水が速度を維持した状態で開口11の真上の拡大平面部22に当たり、低温水の速度が緩和され、タンク内で形成された温度成層の乱れが高度に抑えられる。なお、本実施形態では拡大平面部22を最上位と最下位の支持部材に設けているが、最上位と最下位のいずれか一方の支持部材のみに設けてもよい。
【0034】
上記した第二実施形態は、支持部材自体の形状を工夫することで導入された湯の速度を緩和するものであるが、他の構成によって同様の作用を得ることもできる。図8は、本発明の第三実施形態に係る貯湯タンクの組み立て構造を示す分解斜視図である。図9は、図8の貯湯タンクの内部構造と湯の流れを示す正面視縦断面図である。図8に示す第三実施形態に係る貯湯タンク31では、補強部材33が一対の当て板15,15の間に備える複数の支持部材のうち、最上位の支持部材36にバッフル板(緩衝部材)32が設けられており、バッフル板32が補強部材33の一部を構成している。バッフル板(緩衝部材)32は支持部材36の中央付近に設けられており、略円形の平面部34を有している。平面部34の直径は支持部材36の幅方向の長さよりも大きく、平面部34が支持部材36の中央付近を覆っている。また平面部34は、開口10の真下に位置している。例えば開口10から湯を導入すると、図9の矢印で示す様に、導入された湯が速度を維持した状態でバッフル板32の平面部34に当たり、湯の速度が緩和される。その結果、タンク内で形成された温度成層の乱れが高度に抑えられる。なお、本実施形態ではバッフル板32を最上位の支持部材36のみに設けているが、最下位の支持部材に設けてもよく、両方に設けてもよい。
【0035】
上記した実施形態では、いずれも補強部材が複数の支持部材を有する構成を示したが、支持部材は一つの部材からなるものでもよい。図10は、本発明の第四実施形態に係る貯湯タンクの組み立て構造を示す分解斜視図である。図11は、本発明の第五実施形態に係る貯湯タンクの組み立て構造を示す分解斜視図である。図12は、図11の貯湯タンクの内部構造を示す側面視縦断面図である。
【0036】
図10に示す第四実施形態に係る貯湯タンク41では、支持部材46が一枚の板で構成されている。すなわち、本実施形態では補強部材43が一対の当て板15,15の間に平板状の板からなる支持部材46を備えており、タンクの内部8を縦に二分している。本実施形態では支持部材46が一枚の板からなるので、貯湯タンク41の製作が特に容易である。
【0037】
一方、図11,12に示す第五実施形態に係る貯湯タンク51は、支持部材56が一枚の板で構成されタンクの内部8を縦に二分している点で第四実施形態と共通しているが、支持部材56の形状が異なっている。すなわち、図11,12に示す様に、支持部材56は一枚の板体が、ほぼ等間隔に設定された山線と谷線に沿って交互に折られた形状を有している。本実施形態によれば、支持部材56の水平方向の圧縮力に対する強度が特に高い。
【0038】
第一実施形態における複数の支持部材16の特徴と、第四実施形態における一枚の板体からなる支持部材46の特徴とを組み合わせた実施形態も可能である。図13は、本発明の第六実施形態に係る貯湯タンクの組み立て構造を示す分解斜視図である。図14は、図13の貯湯タンクの内部構造を示す側面視縦断面図である。第六実施形態に係る貯湯タンク61が備える補強部材63の支持部材66は、1枚の垂直板67と4枚の水平板68とで構成されている。垂直板67は図10に示す支持部材46と基本的に同じものであり、タンクの内部8を二分している。4枚の水平板68は垂直板67に対して十字に交差するように設けられており、垂直方向に略等間隔に配置されている。本実施形態の場合も、支持部材66の水平方向の圧縮力に対する強度が特に高い。
【0039】
上記した実施形態では、いずれも支持部材が板状の例を示した。しかしながら、本発明はこれに限定されるものではなく、支持部材は板状以外の形状を有するものでもよい。図15は、本発明の第七実施形態に係る貯湯タンクの組み立て構造を示す分解斜視図である。図15に示す第七実施形態に係る貯湯タンク71では、支持部材76が棒状又は管状である。すなわち、本実施形態では補強部材73が一対の当て板15,15の間に棒状又は管状の支持部材76を複数備えている。本実施形態の場合も、支持部材76の水平方向の圧縮力に対する強度が特に高い。
【0040】
第七実施形態を基本として、支持部材に新たな機能を付加することもできる。図16は、本発明の第八実施形態に係る貯湯タンクの組み立て構造を示す分解斜視図である。図17は、図16の貯湯タンクの内部構造を示す正面視縦断面図である。図16に示す第八実施形態に係る貯湯タンク81では、補強部材83の支持部材86が一連の管で構成されており、その両端が貯湯タンク81の外部と連通している。すなわち図16,17に示す様に、本実施形態では、一対の当て板15,15の間に支持部材86を備えており、支持部材86は水平方向に延びる5本の水平管84と、上下の水平管84同士を端部で連通させる4本の垂直管85からなり、全体で一連の管を構成している。最上位と最下位の水平管84の末端は当て板15,15とタンク本体2を挿通し、外部と連通している。本実施形態によれば、例えば、一連の管からなる支持部材86の中に太陽集熱器等で熱せられた熱媒体を通すことで、支持部材86を熱交換器としても機能させて貯湯タンク81内に蓄熱することが可能となる。
【0041】
第八実施形態をさらに発展させた実施形態を図18に示す。図18は、本発明の第九実施形態に係る貯湯タンクの組み立て構造を示す分解斜視図である。図18に示す第九実施形態に係る貯湯タンク91は、図16に示す貯湯タンク81にバッフル板(緩衝部材)32を追加したものである。すなわち、貯湯タンク91においては、最上位の水平管94の中央付近にバッフル板32が設けられており、バッフル板32が補強部材93の一部を構成している。バッフル板32は、図8に示す第三実施形態で採用したものと基本的に同じものであり、平面部34が支持部材96の中央付近を覆っており、平面部34は開口10の真下に位置している。開口10から湯を導入したときの流れは、図9の矢印で示す流れと基本的に同じである。
【0042】
本発明の貯湯タンクは、例えばコージェネレーションシステムに使用可能なものであるが、それ以外の用途にも使用できることは勿論である。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】本発明の第一実施形態に係る貯湯タンクの外観を示す斜視図である。
【図2】図1の貯湯タンクの組み立て構造を示す分解斜視図である。
【図3】図1の貯湯タンクの内部構造を示す正面視縦断面図である。
【図4】図1の貯湯タンクの内部構造を示す側面視縦断面図である。
【図5】図1の貯湯タンクの内部構造を示す平面視横断面図である。
【図6】本発明の第二実施形態に係る貯湯タンクの組み立て構造を示す分解斜視図である。
【図7】図6の貯湯タンクの内部構造と湯の流れを示す正面視縦断面図である。
【図8】本発明の第三実施形態に係る貯湯タンクの組み立て構造を示す分解斜視図である。
【図9】図8の貯湯タンクの内部構造と湯の流れを示す正面視縦断面図である。
【図10】本発明の第四実施形態に係る貯湯タンクの組み立て構造を示す分解斜視図である。
【図11】本発明の第五実施形態に係る貯湯タンクの組み立て構造を示す分解斜視図である。
【図12】図11の貯湯タンクの内部構造を示す側面視縦断面図である。
【図13】本発明の第六実施形態に係る貯湯タンクの組み立て構造を示す分解斜視図である。
【図14】図13の貯湯タンクの内部構造を示す側面視縦断面図である。
【図15】本発明の第七実施形態に係る貯湯タンクの組み立て構造を示す分解斜視図である。
【図16】本発明の第八実施形態に係る貯湯タンクの組み立て構造を示す分解斜視図である。
【図17】図16の貯湯タンクの内部構造を示す正面視縦断面図である。
【図18】本発明の第九実施形態に係る貯湯タンクの組み立て構造を示す分解斜視図である。
【図19】従来技術に係るコージェネレーションシステムの主要部の構成を示す説明図である。
【符号の説明】
【0044】
1,21,31,41,51,61,71,81,91 貯湯タンク
3,23,33,43,53,63,73,83,93 補強部材
5 胴部
8 内部
10,11 開口
15 当て板
16,26,36,46,56,66,76,86,96 支持部材
17 接点
18,28 平面
32 バッフル板(緩衝部材)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
断面形状が楕円形又は長円形の胴部を備え、内部に入水圧を受ける貯湯タンクであって、内部に補強部材が設けられ、前記補強部材は一対の当て板と当該当て板の間に取り付けられた支持部材とを有し、前記補強部材は胴部の楕円形又は長円形の長軸に前記支持部材が沿う方向に設けられており、当て板は前記長軸と胴部との接点近傍と接触又は接触し得る位置にあり、貯湯タンクに入水圧が掛かったときに当て板が前記接点近傍と接触し、支持部材が圧縮力を保持することを特徴とする貯湯タンク。
【請求項2】
貯湯タンクは内部に温度成層を形成させて湯を貯留するものであり、支持部材は板状であり、支持部材は板状の平面が前記長軸の全てを含む平面と交わる姿勢で固定されていることを特徴とする請求項1に記載の貯湯タンク。
【請求項3】
貯湯タンクは内部に温度成層を形成させて湯を貯留するものであり、縦置き姿勢で設置され、上端部と下端部の少なくとも一方に入湯口となる開口が設けられ、当該開口の真下又は真上に補強部材の一部が位置し、入湯口から速度を有して導入された湯が速度を維持した状態で補強部材の一部に当たり、湯の速度が緩和されることを特徴とする請求項1又は2に記載の貯湯タンク。
【請求項4】
入湯口から速度を有して導入された湯が速度を維持した状態で支持部材に当たり、湯の速度が緩和されることを特徴とする請求項3に記載の貯湯タンク。
【請求項5】
補強部材は支持部材の一部に設けられた緩衝部材をさらに有し、入湯口から速度を有して導入された湯が速度を維持した状態で緩衝部材に当たり、湯の速度が緩和されることを特徴とする請求項3に記載の貯湯タンク。
【請求項6】
支持部材は一連の管で形成されており、当該管の両端が貯湯タンク外と連通していることを特徴とする請求項1に記載の貯湯タンク。
【請求項7】
貯湯タンクは内部に温度成層を形成させて湯を貯留するものであり、縦置き姿勢で設置され、上端部と下端部の少なくとも一方に入湯口となる開口が設けられ、補強部材は支持部材の一部に設けられた緩衝部材をさらに有し、当該開口の真下又は真上に緩衝部材が位置し、入湯口から速度を有して導入された湯が速度を維持した状態で緩衝部材に当たり、湯の速度が緩和されることを特徴とする請求項6に記載の貯湯タンク。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【公開番号】特開2010−84999(P2010−84999A)
【公開日】平成22年4月15日(2010.4.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−253961(P2008−253961)
【出願日】平成20年9月30日(2008.9.30)
【出願人】(000004709)株式会社ノーリツ (1,293)
【Fターム(参考)】