説明

貯湯式給湯装置

【課題】給湯加圧ポンプによる過大出湯を防止した貯湯式給湯装置を提供する。
【解決手段】出湯管8からの湯と前記第1給水バイパス管28からの水とを混合する給湯混合弁27と、この給湯混合弁27からの湯水を蛇口4へ供給する給湯管29と、この給湯管29途中に設けられ時間当たりの給湯量を検出する給湯フローセンサ33と、前記給湯管29途中に設けられ湯水を昇圧して前記蛇口4へ供給するための給湯加圧ポンプ31とを備えたもので、前記給湯加圧ポンプ31は給湯フローセンサ33による所定給湯量の検出で駆動開始し、給湯フローセンサ33の所定給湯量以上の規定流量を検出することで、給湯加圧ポンプ31の回転数を低下させるか或いは駆動停止させるので、過大出湯や貯湯タンク2の破損を確実に防止する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、給湯加圧ポンプを内蔵した貯湯式給湯装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来よりこの種のものでは、給湯管途中に給湯加圧ポンプを備え、給湯栓の開栓で給湯加圧ポンプを駆動させ、貯湯タンク内の湯水を圧送して給湯することで、水道圧が極端に低い場所や2階、3階までの給湯でも良好に行われるようにしたものであった。(特許文献1参照)
【0003】
【特許文献1】特開昭58−47947号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところでこの従来のものでは、給湯抵抗が大きな2階、3階の給湯に合わせて給湯加圧ポンプの能力(回転数)をしているので、この状態で1階の給湯を行うと蛇口の開口状態にもよるが、給湯加圧ポンプの能力が過剰状態となり、過大出湯となって貯湯タンクが負圧になり破損する課題を有するものであった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この発明はこの点に着目し上記課題を解決するため、特にその構成を、湯水を貯湯する貯湯タンクと、この貯湯タンクへ水を供給する給水管と、前記貯湯タンクから湯を出湯する出湯管と、前記給水管から分岐された第1給水バイパス管と、前記出湯管からの湯と前記第1給水バイパス管からの水とを混合する給湯混合弁と、この給湯混合弁からの湯水を蛇口へ供給する給湯管と、この給湯管途中に設けられ時間当たりの給湯量を検出する給湯フローセンサと、前記給湯管途中に設けられ湯水を昇圧して前記蛇口へ供給するための給湯加圧ポンプとを備えたものに於いて、前記給湯加圧ポンプは給湯フローセンサによる所定給湯量の検出で駆動開始し、給湯フローセンサの所定給湯量以上の規定流量を検出することで、給湯加圧ポンプの回転数を低下させるか或いは駆動停止させるものである。
【発明の効果】
【0006】
以上のようにこの発明によれば、2階、3階の給湯特にシャワーが強力な出湯圧で快適な給湯が行われることは勿論、1階や給湯抵抗が小さな場所への給湯については、時間当たりの給湯量が所定給湯量以上の規定流量に達すると、給湯加圧ポンプの回転数を低下させて能力を下げるか或いは駆動停止させるので、過大出湯となることがなく貯湯タンクの負圧による破損も防止出来、長期に渡って安心して使用出来るものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
次にこの発明一実施形態を付した貯湯式給湯装置について図面に基づいて説明する。
この貯湯式給湯装置は、時間帯別契約電力の電力単価が安価な深夜時間帯に湯水を沸き上げて貯湯し、この貯湯した湯水を給湯や風呂に用いるもので、1は湯水を貯湯する貯湯タンク2を備えた貯湯タンクユニット、3は貯湯タンク内の湯水を加熱する加熱手段としてのヒートポンプユニット、4は台所や洗面所等に設けられた蛇口、5はこの蛇口4の近傍に設けられた給湯リモコン、6は浴槽、7は浴室に設けられた風呂リモコンである。
【0008】
前記貯湯タンクユニット1の貯湯タンク2は、上端に出湯管8と、下端に給水管9とが接続され、更に下部にヒーポン循環回路を構成するヒーポン往き管10と、上部にヒーポン循環回路を構成するヒーポン戻り管11とが接続され、前記ヒートポンプユニット3によってヒーポン往き管10から取り出した貯湯タンク2内の湯水を沸き上げてヒーポン戻り管11から貯湯タンク2内に戻して貯湯され、給水管9からの給水により貯湯タンク2内の湯水が押し上げられて貯湯タンク2内上部の高温水が出湯管8から押し出されて給湯されるものである。そして、給水管9途中には、市水の給水圧を所定の圧力まで減圧する減圧弁12と給水温度を検出する給水温度センサ13が設けられ、貯湯タンク2の上部には、貯湯タンク2内の過圧を逃す負圧作動弁付きの過圧逃し弁14が設けられているものである。
【0009】
前記ヒートポンプユニット3は、圧縮機15と凝縮器としての冷媒−水熱交換器16と電子膨張弁17と強制空冷式の蒸発器18で構成されたヒートポンプ回路19と、貯湯タンク2内の湯水を前記ヒーポン往き管10およびヒーポン戻り管11を介して冷媒−水熱交換器16に循環させるヒーポン循環ポンプ20と、それらの駆動を制御するヒーポン制御部21とを備えており、ヒートポンプ回路19内には冷媒として二酸化炭素が用いられて超臨界ヒートポンプサイクルを構成しているものである。なお、冷媒に二酸化炭素を用いているので、低温水を電熱ヒータなしで約90℃の高温まで沸き上げることが可能なものである。
【0010】
22は前記浴槽6の湯水を加熱するためのステンレス製の蛇管よりなる熱交換器で、この熱交換器22には風呂往き管23及び風呂循環ポンプ24を備えた風呂戻り管25が接続されて浴槽6の湯水が循環可能にされ、浴槽6内の湯水が貯湯タンク2内の高温水により加熱されて保温あるいは追焚きが行われるものである。なお、26は風呂戻り管25を循環する浴槽6の湯水の温度を検出する風呂温度センサである。
【0011】
27は出湯管8からの湯水と給水管9から分岐された第1給水バイパス管28からの低温水を混合する電動ミキシング弁より構成された給湯混合弁であり、その下流の給湯管29に設けた給湯温度センサ30で検出した湯温が給湯リモコン5や風呂リモコン7でユーザーが設定した給湯設定温度になるように混合比率を制御するものである。
【0012】
31は給湯管29途中に設けられ湯水を昇圧して蛇口4へ供給するための給湯加圧ポンプであり、32は給湯加圧ポンプ31の吸い込み側に設けられた給湯管29を逆流する流れを遮断する逆止弁、33は時間当たりの給湯流量を検出して前記給湯加圧ポンプ31の駆動を制御する給湯フローセンサである。
【0013】
34は出湯管8から分岐された湯張り管35からの湯水と給水管9から分岐された第2給水バイパス管36からの低温水とを混合する電動ミキシング弁より構成された風呂混合弁であり、その下流側の風呂戻り管25に連通された湯張り管35に設けた湯張り温度センサ37で検出した湯温が給湯リモコン5や風呂リモコン7でユーザーが設定した風呂設定温度になるように混合比率を制御するものである。
【0014】
そして、前記湯張り管35には、浴槽6への湯張りの開始/停止を行う湯張り弁38と、浴槽6への時間当たりの湯張り量を検出する風呂フローセンサ39と、浴槽6からの浴槽水の逆流を防ぐ湯張り逆止弁40が二重に設けられていると共に、前記風呂フローセンサ39が所定湯張り量を検出することで、湯水を昇圧して湯張りする風呂加圧ポンプ41が設けられているものである。
【0015】
42は貯湯タンク2の上下方向に複数個配置された貯湯温度センサで、この実施形態では5つの貯湯温度センサが配置され上から42a、42b、42c、42d、42eと呼び、この貯湯温度センサ42が検出する温度情報によって、貯湯タンク2内にどれだけの熱量が残っているかを検知し、そして貯湯タンク2内の上下方向の温度分布を検知するものである。
【0016】
前記給湯リモコン5及び風呂リモコン7には、給湯設定温度を設定する給湯温度設定スイッチ43、及び風呂設定温度を設定する風呂温度設定スイッチ44がそれぞれ設けられていると共に、浴槽6へ風呂設定温度の湯を風呂リモコン7の湯張り量設定スイッチ(図示せず)で設定された湯張り量だけ湯張りし所定時間保温させる風呂自動スイッチ45がそれぞれ設けられ、更に風呂リモコン7には約60℃の高温の湯を差し湯させる高温差し湯スイッチ46が設けられているものである。
【0017】
47は給湯リモコン5及び風呂リモコン7共に設けられたポンプスイッチで、前記給湯加圧ポンプ31と風呂加圧ポンプ41を、それぞれ給湯フローセンサ33と風呂フローセンサ39の流量検出で駆動させるかさせないかを選択するスイッチであり、一回目の押圧で駆動させ、二回目の押圧では駆動させないようにするもので、使用者自身が選択出来るようにしたものである。
【0018】
48は貯湯タンクユニット1内の各センサの入力を受け各アクチュエータの駆動を制御するマイコンを有し制御部を構成する給湯制御部である。この給湯制御部48に前記給湯リモコン5及び風呂リモコン7が無線または有線により接続されユーザーが任意の給湯設定温度及び風呂設定温度を設定できるようにしているものである。
【0019】
前記給湯制御部48は、給湯温度センサ30の検出する温度が給湯設定温度になるように給湯混合弁27の弁開度をフィードバック制御するようにしていると共に、湯張り温度センサ37の検出する温度が風呂設定温度になるように風呂混合弁34の弁開度をフィードバック制御するようにしているものである。
【0020】
又電気回路的には、給湯制御部48の入力側には給湯フローセンサ33と風呂フローセンサ39、ポンプスイッチ47が接続され、出力側には給湯加圧ポンプ31と風呂加圧ポンプ41が接続され、給湯フローセンサ33と風呂フローセンサ39の検出流量により給湯制御部48が分当たりの流量を算出し、所定流量ここでは3L/minで給湯加圧ポンプ31及び風呂加圧ポンプ41を駆動させるものであり、更に給湯加圧ポンプ31は給湯フローセンサ33の検出流量が前記所定流量以上の規定流量ここでは20L/minを超えると、給湯加圧ポンプ31の回転数を規定値の3000rpmから徐々に低下させて、20L/min以下を維持するようにし、それでも20L/minを超える時には駆動停止させたり、或いは20L/minを超えたら直ぐに駆動停止させるように制御するものである。
【0021】
次にこの一実施形態の作動を説明する。
先ず、沸き上げ運転について説明すると、深夜電力時間帯になって貯湯温度センサ42が貯湯タンク2内に翌日に必要な熱量が残っていないことを検出すると、給湯制御部48はヒーポン制御部21に対して沸き上げ開始指令を発する。指令を受けたヒーポン制御部21は圧縮機15を起動した後にヒーポン循環ポンプ20を駆動開始し、貯湯タンク2下部に接続されたヒーポン往き管10から取り出した5〜20℃程度の低温水を冷媒−水熱交換器16で70〜90℃程度の高温に加熱し、貯湯タンク2上部に接続されたヒーポン戻り管11から貯湯タンク2内に戻し、貯湯タンク2の上部から順次積層して高温水を貯湯していく。貯湯温度センサ42が必要な熱量が貯湯されたことを検出すると、給湯制御部48はヒーポン制御部21に対して沸き上げ停止指令を発し、ヒーポン制御部21は圧縮機15を停止すると共にヒーポン循環ポンプ20も停止して沸き上げ動作を終了するものである。
【0022】
次に浴槽6への湯張り運転について説明すると、給湯リモコン5又は風呂リモコン7のポンプスイッチ47の何れかを押圧した後に、風呂自動スイッチ45の何れかが操作されると、給湯制御部48が湯張り弁38を開弁する。そして、給水管9からの給水が貯湯タンク2内に流れ込む。そして出湯管8と湯張り管35を介して風呂混合弁34へ貯湯タンク2内の湯水が押し出され、第2給水バイパス管36からの低温水と混合され、給湯制御部48が風呂混合弁34の混合比率を調整し、風呂設定温度の湯が湯張り管35から風呂戻り管25を介して浴槽6へ湯張りされる。そして、この湯張り管35による湯張りで、風呂フローセンサ39がこの湯張りで3L/minの流量を検出し、給湯制御部48を介し風呂加圧ポンプ41を駆動開始させ、2階や3階に設置された浴槽6へも強力な給湯圧で良好な湯張りが行え、湯張り時間も短縮されるものである。
【0023】
次に給湯運転について説明すると、給湯リモコン5又は風呂リモコン7のポンプスイッチ47の何れかを押圧した後に、蛇口4を開くと、給水管9からの給水が貯湯タンク2内に流れ込む。そして貯湯タンク2の上部に貯められた高温水が出湯管8を介して給湯混合弁27へ押し出される。なお、貯湯タンク2内には上部に高温水、下部に低温水が貯められることとなるが、その温度差により比重差が発生し、温度境界層を形成して比重の軽い高温水が上部に、比重の重い低温水が下部に位置するので、互いに混じり合うことはないものである。
【0024】
ここで、給湯制御部48は出湯管8からの湯水と第1給水バイパス管28からの低温水を混合して給湯リモコン5又は風呂リモコン7で設定された給湯設定温度となるように給湯混合弁27を適当な比率に調整し、給湯設定温度の湯が蛇口4から給湯されるが、これを図3のフローチャートに示すように、給湯開始でステップ49では給湯フローセンサ33が3L/minの流量検出したかを判断し、YESでステップ50に進み給湯加圧ポンプ31を規定値の3000rpmで駆動開始させ、そしてステップ51に進んで再び給湯フローセンサ33の流量検出が20L/minより小さいかを判断し、超えていない時はYESでステップ50に戻り給湯加圧ポンプ31を規定値の3000rpmで駆動を継続させるものである。
【0025】
又20L/minを超えている場合は、NOでステップ52に進み給湯加圧ポンプ31の回転数を2000rpmに低下させてから、過大出湯が治まったかをステップ53で給湯フローセンサ33の流量検出が20L/minより小さいかを見て、YESではステップ52に戻って給湯加圧ポンプ31の回転数2000rpmを継続し、NOではステップ54に進み給湯加圧ポンプ31の回転数を更に1000rpmに低下して、ステップ55で給湯フローセンサ33の流量検出が20L/minより小さくなったかを見て、YESではステップ54に戻って給湯加圧ポンプ31の回転数1000rpmを継続し、NOではステップ56に進み給湯加圧ポンプ31の駆動を停止させるものである。
【0026】
これにより、20L/minを超える過大出湯の場合には、給湯加圧ポンプ31の回転数を徐々に段階的に低下させることで、出来るだけ良好な給湯加圧ポンプ31による給湯圧を残しながら過大出湯を防止することが出来、貯湯タンク2の負圧による破損も阻止して、長期に渡って安心して使用出来るものである。
【0027】
次に他の実施形態を示す図4のフローチャートを説明するが、図3と同一部分は同じ符号を付し、相違部分のみを説明すれば、ステップ50に進み給湯加圧ポンプ31を規定値の3000rpmで駆動開始させ、そしてステップ51に進んで再び給湯フローセンサ33の流量検出が20L/minより小さいかを判断し、20L/minを超えている場合は、NOでステップ57に進み給湯加圧ポンプ31を直ぐに駆動停止させるものである。
【0028】
これによれば、過大出湯発生後直ぐに給湯加圧ポンプ31を停止して、これ以上の過大出湯を確実に阻止して安全性を確保出来、しかも貯湯タンク2の負圧も確実に防止して、長期の継続使用を可能とするものである。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】この発明の一実施形態を示す貯湯式給湯装置の概略構成図。
【図2】同電気回路の要部ブロック図
【図3】同要部のフローチャート。
【図4】他の実施形態の要部フローチャート。
【符号の説明】
【0030】
2 貯湯タンク
4 蛇口
8 出湯管
9 給水管
27 給湯混合弁
28 第1給水バイパス管
29 給湯管
31 給湯加圧ポンプ
33 給湯フローセンサ
48 給湯制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
湯水を貯湯する貯湯タンクと、この貯湯タンクへ水を供給する給水管と、前記貯湯タンクから湯を出湯する出湯管と、前記給水管から分岐された第1給水バイパス管と、前記出湯管からの湯と前記第1給水バイパス管からの水とを混合する給湯混合弁と、この給湯混合弁からの湯水を蛇口へ供給する給湯管と、この給湯管途中に設けられ時間当たりの給湯量を検出する給湯フローセンサと、前記給湯管途中に設けられ湯水を昇圧して前記蛇口へ供給するための給湯加圧ポンプとを備えたものに於いて、前記給湯加圧ポンプは給湯フローセンサによる所定給湯量の検出で駆動開始し、給湯フローセンサの所定給湯量以上の規定流量を検出することで、給湯加圧ポンプの回転数を低下させるか或いは駆動停止させる事を特徴とする貯湯式給湯装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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