説明

貯湯式給湯装置

【課題】 中温水を優先的に出湯させることができると共に、出湯切換弁の作動による出湯温度の急激な変化があっても、給湯温度のオーバーシュートを的確に抑制する。
【解決手段】 出湯管7と中間出湯管26の合流点に設けられ、何れか一方から出湯させるよう切り換える出湯切換弁27と、出湯切換弁27と給水バイパス管25からの湯水を給湯設定温度に混合する混合弁28とを備えた貯湯式給湯装置において、混合弁28は、給湯設定温度に応じて駆動部40を駆動して予め弁機構部39へ与える予荷重を変更して給湯の温度を変更させるFF制御部41と、給湯温度センサ30で検出する給湯温度と給湯設定温度の差に応じて駆動部40を駆動して弁機構部39へ与える予荷重を微調整するFB制御部42を備え、出湯切換弁27を切り換えた直後には、弁機構部39へ与える荷重をFF制御部41による予荷重に戻すようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、貯湯タンクの高温水を給水と混合して出湯する貯湯式給湯装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、この種の貯湯式給湯装置においては、図3に示すように、湯水を貯湯する貯湯タンク51と、この貯湯タンク51の下部に給水する給水管52と、前記貯湯タンク51の上部から出湯する出湯管53と、前記貯湯タンク51の中間部から出湯する中間出湯管54と、前記出湯管53と前記中間出湯管54の合流点に設けられ、何れか一方から出湯させるよう切り換える出湯切換弁55と、前記給水管52から分岐された給水バイパス管56と、前記出湯切換弁55からの出湯と前記給水バイパス管56からの給水とを給湯設定温度になるように混合する混合弁57と、前記給湯設定温度を設定する操作部58とを備え、貯湯タンク51中間部の中温水を貯湯タンク51上部の高温水よりも優先して出湯し、中温水が無くなるか少なくなると出湯切換弁55を切り換えて貯湯タンク51上部からの高温水を出湯し、混合弁57で給水バイパス弁56からの給水と混合して給湯設定温度の湯を給湯するようにしたものがあった。(特許文献1参照)
【0003】
また、図4に示すように、湯水を貯湯する貯湯タンク51と、この貯湯タンク51の下部に給水する給水管52と、前記貯湯タンク51の上部から出湯する出湯管53と、前記給水管52から分岐された給水バイパス管56と、前記出湯管53からの出湯と前記給水バイパス管56からの給水とを給湯設定温度になるように混合する混合弁57と、前記給湯設定温度を設定する操作部58とを備え、前記混合弁58は、感温変形部材59とバイアスバネ60の合力によって可動弁体61を移動させて湯水の混合比を調節する弁機構部62と、前記弁機構部62へ与える荷重を変更するための駆動部63と、前記給湯設定温度に応じて前記駆動部63を駆動して予め前記弁機構部62へ与える予荷重を変更して給湯の温度を変更させるFF制御部64と、前記混合弁57の下流に設けられた給湯温度センサ65で検出する給湯温度と前記給湯設定温度の差に応じて前記駆動部63を駆動して前記弁機構部62へ与える予荷重を微調整するFB制御部66を備えた貯湯式給湯装置があった。(特許文献2参照)
【特許文献1】特開2003−161518号公報
【特許文献2】特開2007−162984号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本件出願人は、特許文献1のような貯湯式給湯装置において、混合弁として特許文献2に示されるような感温変形部材を用いた混合弁を採用したところ、以下のような課題を見いだした。
【0005】
出湯切換弁55が中間出湯管54側に切り換えられている状況において、貯湯タンク51内の温水の放熱や出湯に伴い中間部の貯湯温度が徐々に低下していくと、図5に示すように、混合弁57はFB制御により湯側の開度が増すように駆動部63が駆動され、弁機構部62へ与える予荷重が変更される。この状態において、貯湯タンク51の中間部の貯湯温度が出湯切換弁55を切り換える所定温度まで低下すると、出湯切換弁55が出湯管53側に切り換えられて貯湯タンク51上部の高温の湯が混合弁57に流入する。それまで貯湯タンク51中間部の中温水が供給されていた混合弁57には、急に高温水が供給されるため、FB制御では湯温の変動を抑えきれずに給湯温度が大幅にオーバーシュートしてしまうという課題があった。
【課題を解決するための手段】
【0006】
そこで、本発明は上記課題を解決するため、請求項1では、湯水を貯湯する貯湯タンクと、この貯湯タンクの下部に給水する給水管と、前記貯湯タンクの上部から出湯する出湯管と、前記貯湯タンクの中間部から出湯する中間出湯管と、前記出湯管と前記中間出湯管の合流点に設けられ、何れか一方から出湯させるよう切り換える出湯切換弁と、前記給水管から分岐された給水バイパス管と、前記出湯切換弁からの出湯と前記給水バイパス管からの給水とを給湯設定温度になるように混合する混合弁と、前記給湯設定温度を設定する操作部とを備えた貯湯式給湯装置において、前記混合弁は、感温変形部材とバイアスバネの合力によって可動弁体を移動させて湯水の混合比を調節する弁機構部と、前記弁機構部へ与える荷重を変更するための駆動部と、前記給湯設定温度に応じて前記駆動部を駆動して予め前記弁機構部へ与える予荷重を変更して給湯の温度を変更させるFF制御部と、前記混合弁の下流に設けられた給湯温度センサで検出する給湯温度と前記給湯設定温度の差に応じて前記駆動部を駆動して前記弁機構部へ与える予荷重を微調整するFB制御部を備え、前記出湯切換弁を切り換えた直後には、前記弁機構部へ与える荷重を前記FF制御部による予荷重に戻すようにした。
【0007】
また、請求項2では、前記出湯切換弁を切り換えた後に、所定時間経過してから前記弁機構部へ与える荷重を前記FF制御部のみによる予荷重に戻すようにした。
【0008】
また、請求項3では、給湯流量を検出する給湯流量センサを設け、前記所定時間は、給湯流量センサで検出する給湯流量に応じて変更するようにした。
【発明の効果】
【0009】
以上の構成により、本発明は、給湯温度を安定に保ちながら中温水を優先的に出湯させることができると共に、出湯切換弁の作動による貯湯タンクからの出湯温度の急激な変化があっても、給湯温度のオーバーシュートを的確に抑制できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
次に、本発明の一実施形態を図1に基づいて説明する。
この貯湯式給湯装置は、時間帯別契約電力の電力単価が安価な深夜時間帯に湯水を沸き上げて貯湯し、この貯湯した湯水を給湯に用いるもので、1は湯水を貯湯する貯湯タンク2を備えた貯湯タンクユニット、3は貯湯タンク2内の湯水を加熱するヒートポンプユニット等の加熱手段、4は台所や洗面所等に設けられた給湯栓、5は給湯設定温度を設定したりふろ運転を指示したりする操作部としてのリモートコントローラ、6は浴槽である。
【0011】
前記貯湯タンクユニット1の貯湯タンク2は、上端に出湯管7と、下端に給水管8とが接続され、さらに、前記加熱手段3と循環可能に接続する往き管9が下部に、戻り管10が上部に接続されている。また、往き管9の途中には貯湯タンク2内の湯水を加熱手段3へ循環させる積層ポンプ11が設けられ、給水管8途中には給水圧を所定圧力まで減圧する減圧弁12が設けられ、出湯管7途中には貯湯タンク2内の過圧を逃がす逃し弁13が設けられている。
【0012】
そして、前記積層ポンプ11によって往き管9から取り出した貯湯タンク2内下部の湯水を前記加熱手段3で沸き上げ、戻り管10から貯湯タンク2内上部に戻して貯湯される。そして給湯栓4が開かれると、給水管8からの給水により貯湯タンク2内の湯水が押し上げられて貯湯タンク2内上部の高温水が出湯管7から押し出されて給湯されるものである。
【0013】
前記加熱手段3は、冷媒を圧縮する圧縮機14とガスクーラとしての水−冷媒熱交換器15と減圧手段としての電子膨張弁16と強制空冷式の蒸発器17で構成されたヒートポンプ回路18と、それらの駆動を制御するヒーポン制御部19とを備えており、ヒートポンプ回路18内には冷媒として二酸化炭素が用いられ、高圧側で臨界圧力を越える超臨界ヒートポンプサイクルを構成しているものである。これによって、低温水を電熱ヒータなしで約90℃の高温まで沸き上げることが可能なものである。
【0014】
次に、20は前記浴槽6の湯水を加熱するためのステンレス製の蛇管よりなるふろ熱交換器で、この熱交換器20にはふろ往き管21およびふろ循環ポンプ22を有したふろ戻り管23が接続されて浴槽6の湯水が循環可能にされ、浴槽6内の湯水が貯湯タンク2内の高温水により加熱されて保温あるいは追焚きが行われるものである。なお、24はふろ戻り管23を循環する浴槽水の温度を検出するふろ温度センサである。
【0015】
そして、リモートコントローラ5からふろ運転の指令が出されるとふろ循環ポンプ22が駆動され、ふろ温度センサ24で所望の温度を検出するとふろ循環ポンプ22が停止されて運転が完了する。この時、ふろ熱交換器20の最上部より下方の湯水は浴槽水との熱交換で温度低下することとなる。
【0016】
次に、25は前記給水管8から分岐されて貯湯タンク2をバイパスする給水バイパス管、26は貯湯タンク2の中間部から出湯する中間出湯管、27はこの中間出湯管26と出湯管7との合流点に設けられ、貯湯タンク2内の温度分布に基づいて何れか一方から出湯させるよう切り換える出湯切換弁、28はこの出湯切換弁27から出湯される湯と前記給水バイパス管25からの水とを混合してその下流の給湯管29へ給湯する混合弁、30はこの混合弁26の下流の給湯管29に設けられた給湯温度センサ、31は給湯する湯水の量をカウントする給湯流量カウンタである。
【0017】
次に、32は貯湯タンク2の上下方向に複数個配置された貯湯温度センサで、この実施形態では5つの貯湯温度センサが配置され上から32a、32b、32c、32d、32eと呼び、この貯湯温度センサ32が検出する温度情報によって、貯湯タンク2内にどれだけの熱量が残っているかを検知し、そして貯湯タンク2内の上下方向の温度分布を検知するものである。
【0018】
33は日々の使用熱量や残熱量から深夜時間帯に沸き上げる沸き上げ熱量とピークシフト時刻を演算して加熱手段3へ沸き上げ開始と停止の指示を行うと共に、昼間時間帯に前記貯湯温度センサ32で検出する貯湯タンク2の残熱量が所定量を下回ると所定の沸き増し運転を開始させる貯湯制御部である。
【0019】
34は給湯温度がリモートコントローラ5で設定された給湯設定温度になるように混合弁28を制御すると共に、貯湯制御部33が検出した貯湯タンク2の温度分布に応じ、貯湯タンク2中間部に高温水あるいは中温水がある場合は出湯切換弁27を中間出湯管26側に、貯湯タンク2中間部に低温水がある場合は出湯切換弁27を出湯管7側に切り換えるようにする給湯制御部である。
【0020】
前記混合弁28は、ケーシング35と、混合後の湯水の温度に応じてバネ定数が変化する感温変形部材としての形状記憶合金バネ36とこの形状記憶合金バネ36に対抗する一定のバネ定数を有するバイアスバネ37の合力によって可動弁体38を移動させて湯水の混合比を調節する弁機構部39とで構成されている。形状記憶合金バネ36は、温度に応じて弾性係数が変化するニッケル・チタン合金などからなり、コイルスプリング状に形成されている。
【0021】
そして、この混合弁28は一端側からバイアスバネ37、可動弁体38、形状記憶合金バネ36の順に配置され、可動弁体38付近のバイアスバネ37側から弁機構部39内に導入された貯湯タンク2からの高温水と可動弁体38付近の形状記憶合金バネ36側から弁機構部39内に導入された給水バイパス管25からの給水とが混合され、混合湯雰囲気内に配置されている形状記憶合金バネ36のバネ定数が変化することによってバネ力も変化し、可動弁体38を挟んで対抗して設けられているバイアスバネ37のバネ力と平衡することで、所定の弁開度位置で可動弁体38が静止して所定の温度の湯を給湯するものである。
【0022】
ここで出湯管7側の出湯温度が上がると混合後の湯温が上がり、それに伴って混合湯雰囲気内に配置されている形状記憶合金バネ36のバネ定数が増大して形状記憶合金バネ36が以前より伸びた状態でバイアスバネ37と平衡し、可動弁体38が湯側開度を減少し水側開度を増大した位置で静止するため、給水バイパス管25側の弁開度が大きくなり、出湯管7側の弁開度が小さくなって形状記憶合金バネ36の作用によって自動的に所定の温度に調整される。
【0023】
また、混合弁28外部のバイアスバネ37側には、この弁機構部39へ与える荷重を変更するための駆動部としてのステッピングモータ40が設けられており、ステッピングモータ40を一方向へ駆動することによって弁機構部39への荷重を増してバイアスバネ37および形状記憶合金バネ36を圧縮し、ステッピングモータ40を他方向へ駆動することで弁機構部39への荷重を減らしてバイアスバネ37および形状記憶合金バネ36を伸張する。このように弁機構部39へ与える荷重を変更することで形状記憶合金バネ36とバイアスバネ37が平衡する位置を大まかに調整し、給湯温度を変更可能としている。
【0024】
前記給湯制御部34には、前記リモートコントローラ5で設定される給湯設定温度に応じて前記ステッピングモータ40を駆動して予め前記弁機構部39へ与える予荷重を変更して前記弁機構部39から出湯する混合湯の温度をフィードフォワード制御によって変更させるFF制御部41と、前記混合弁28の下流に設けられた給湯温度センサ30で検出する給湯温度と前記給湯設定温度の差に応じて前記ステッピングモータ40を駆動して前記弁機構部39へ与える荷重をフィードバック制御によって微調整するFB制御部42とが設けられている。
【0025】
そして、給湯設定温度がリモートコントローラ5で設定されると、FF制御部41によって給湯設定温度に応じた予荷重を弁機構部39へ付加するようステッピングモータ40が駆動される。そして給湯栓4が開かれて給湯が開始されると、貯湯タンク2からの高温水が出湯管7を介して混合弁28へ流入すると同時に給水バイパス管25からの給水も混合弁28へ流入し、予め給湯設定温度に応じた予荷重が与えられた弁機構部39は形状記憶合金バネ36の雰囲気温度が給湯設定温度で形状記憶合金バネ36のバネ力とバイパスバネ37のバネ力とが平衡し、可動弁体38が静止して湯水の混合比率が決まる。
【0026】
このとき、出湯管7には貯湯タンク2内の高温水が混合弁26へ到達するまでの間に、出湯管7内部に残留する湯水が存在する。この残留水は貯湯タンク2内の温度に比べ同等か低くなるのが常であり、給湯開始初期に給湯温度をアンダーシュートさせてしまうと共に、残留水が出きった後に湯側の温度が急上昇するために給湯温度をオーバーシュートさせてしまう要因となっていたが、形状記憶合金バネ34は弁機構部37内部の温度自体で機械的に混合比率が調整されると同時に、形状記憶合金バネ34の熱容量が小さいと共に熱伝導性が高いため迅速に混合比率が機械的に調整されるので、残留水が流入している間は湯側を大きく開き給湯設定温度に近づけ給湯温度のアンダーシュートを著しく軽減できると共に、残留水が出きって貯湯タンク2内の高温水が流入すると形状記憶合金バネ34の雰囲気温度が上昇するのでそれに同調してバネ定数が変化し、湯側の開度を狭めるように形状記憶合金バネ34が迅速に伸張するため、給湯温度がオーバーシュートすることがない。
【0027】
また、前回の給湯終了から時間が経過して出湯管7の残留水が給湯設定温度以下まで低下してしまっている場合は、給湯開始初期には給湯設定温度以下の出湯管7の残留水と給水バイパス管25からの給水とが混合されるため形状記憶合金バネ36の雰囲気温度は給湯設定温度以下となり形状記憶合金バネ36がバイアスバネ37のバネ力により圧縮されて湯側の開度が広げられる。そのことによって出湯管7内の残留水が素早く排出され、貯湯タンク2内の高温水が混合弁28内に流入するまでの時間を短縮できる。そして、貯湯タンク2内の高温水が混合弁28内に流入すると形状記憶合金バネ36の雰囲気温度が上昇するのでそれに同調してバネ定数が変化し、湯側の開度を狭めるように形状記憶合金バネ36が迅速に伸張するため、給湯温度がオーバーシュートすることがない。
【0028】
ところで、この混合弁26はケーシング35と形状記憶合金バネ36とバイアスバネ37と可動弁体38とが相互に作用して構成されているため、多数のパーツそれぞれのバラツキが積算して混合弁28全体の性能のバラツキが出やすいものである。しかし、給湯が開始され混合後の給湯温度センサ30で検出する温度が給湯設定温度から一定以上ずれている場合は、FB制御部42がこの温度偏差に応じてステッピングモータ40を駆動して弁機構部39へ与えている予荷重を微調整するようにしているため、混合弁28自体のバラツキを制御で吸収することが可能となり、製品毎にバラツキのない一定の温度を給湯する貯湯式給湯装置とすることができる。
【0029】
また、主に深夜電力で沸き上げた湯を貯めて昼間に給湯する貯湯式給湯装置であるため、混合弁28の湯側に供給される湯の温度は経時的に変化する。特に、貯湯タンク2内の湯と水の温度境界層は時間が経つ連れて中間温度部分が増大し、貯湯タンク2内上部の80℃以上の温水と下部の10℃程度の給水との間の温度境界層は深夜沸き上げ完了直後は薄く高さ方向の温度変化も急峻であっても、時間が経過するに従って熱伝導によって温度境界層が厚く高さ方向の温度変化が鈍っていくものである。
【0030】
このような高さ方向に温度分布を持った貯湯タンク2内の温水を用いて給湯するため、混合弁28の湯側の温度が刻々と変化する特性を有しており、温度境界層の湯を給湯に用いている状況では、混合後の給湯温度センサ30で検出する温度が給湯設定温度から一定以上ずれると、FB制御部42がこの温度偏差に応じてステッピングモータ40を駆動して弁機構部39へ与えている予荷重を微調整するので、熱源の温度が刻々と変化しても給湯温度を一定に保つことが可能である。
【0031】
このとき、熱源の温度変化が激しいと予荷重を頻繁に微調整する必要が出てくるが、予荷重を調整するためのモータをステッピングモータ40で構成しているので、細かく微調整できると共に、ポテンショメータ付DCモータのようにモータの回転角の検出のための抵抗やブラシの摺動部が不要なため確実で信頼性、耐久性の高い微細な調整が可能で、貯湯式給湯装置の製品寿命も長くなるものである。
【0032】
この一実施形態のように貯湯タンク2の湯水を熱源としたふろ熱交換器20を有したものは、貯湯タンク2内にさらに温度分布が発生するため熱源の温度変化がさらに激しく、本発明の混合弁28を用いた効果がより顕著となるものである。
【0033】
ここで、ふろ熱交換器20によって貯湯タンク2内の高温水で浴槽6の浴槽水を加熱するようにしたものにおいては、多量に中温水が発生する。この中温水は貯湯タンク2上部の高温水よりも先に給湯することで消費したいがため、給湯制御部34は、中間出湯管26が貯湯タンク2に接続されている位置付近より下方の貯湯温水の温度が一定温度以上である場合は、出湯切換弁27を中間出湯管26側に切り換えることにより、貯湯タンク2の中間部から中温水を高温水に優先して先に給湯に用いるようにしている。
【0034】
そして、貯湯タンク2の中間出湯管26の接続部より下方の貯湯温度が給湯に用いることができない温度付近まで低下したことを貯湯温度センサ32で検出したら、給湯制御部34は、出湯切換弁27を出湯管7側に切り換える。このとき、給湯制御部34は、出湯切換弁27を切り換えた直後に、混合弁28の弁機構部39へ与える荷重をFB制御部42による荷重調整をキャンセルし、FF制御部41による初期の予荷重に戻すようステッピングモータ40が作動する。
【0035】
このように構成することで、図2に示すように、出湯切換弁27の作動による貯湯タンク2からの出湯温度の急激な変化があっても、それまでの混合弁28湯側の温度の変化によるFB制御部42による荷重調整をキャンセルするので、給湯温度のオーバーシュートを的確に抑制することができた。
【0036】
ここで、出湯切換弁27の作動直後のFF制御部41による初期の予荷重に戻すタイミングとしては、出湯切換弁27の作動から所定時間T経過後にすると、混合弁28に高温の湯が実際に導入されるタイミングに合わせて初期の予荷重に戻すことができ、給湯温度のオーバーシュートとアンダーシュートを防止できる。
【0037】
なお、前記所定時間Tは給湯流量カウンタ31で検出する給湯流量に応じて変更することで、より正確に給湯温度のオーバーシュートとアンダーシュートを防止できる。
【0038】
そして、給湯量が多くなって貯湯タンク2内の残湯量が少なくなっていることを前記貯湯制御部33が検出すると、前記貯湯制御部33は加熱手段3を駆動して貯湯タンク2下部の低温水を加熱して貯湯タンク2上部へ積層して貯湯する沸き増し運転を行う。沸き増し運転が行われると、沸き増し運転によって貯湯タンク2上部に貯められた高温水が出湯されるため、それまで温度低下し続けていた出湯管7からの出湯温度が急激に上昇する。このように急激に温度上昇した場合にあっても本発明の混合弁28によれば、形状記憶合金バネ36の雰囲気温度が上昇するのでそれに同調してバネ定数が変化し、湯側の開度を狭めるように形状記憶合金バネ36が迅速に伸張するため、給湯温度がオーバーシュートすることがないと共に、混合後の給湯温度センサ30で検出する温度が給湯設定温度から一定以上ずれている場合は、FB制御部42がこの温度偏差に応じてステッピングモータ40を駆動して弁機構部39へ与えている予荷重を微調整するようにしているため、給湯温度を一定に保つことが可能である。
【0039】
さらに本発明の貯湯式給湯装置によると、停電時のステッピングモータ40が駆動できない状況であっても、混合弁28は主に形状記憶合金バネ36によって湯水の混合比率を調節しているため、以前に設定した給湯設定温度の給湯を行うことができる。
【0040】
なお、本発明はこの一実施形態に限定されるものではなく、要旨を変更しない範囲で改変することを妨げるものではない。例えば、感温変形部材としてワックスサーモを用いたものでもよく、また、加熱手段として貯湯タンク内にヒータを配したものでもよい。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】本発明の一実施形態の概略構成図。
【図2】同一実施形態の作動を説明するための図。
【図3】従来の貯湯式給湯装置を示す図。
【図4】従来の貯湯式給湯装置を示す図。
【図5】従来の作動を説明するための図。
【符号の説明】
【0042】
2 貯湯タンク
3 加熱手段
5 リモートコントローラ(操作部)
7 出湯管
8 給水管
25 給水バイパス管
26 中間出湯管
27 出湯切換弁
28 混合弁
29 給湯管
30 給湯温度センサ
31 給湯流量カウンタ
36 形状記憶合金バネ(感温変形部材)
37 バイアスバネ
38 可動弁体
39 弁機構部
40 ステッピングモータ(駆動部)
41 FF制御部
42 FB制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
湯水を貯湯する貯湯タンクと、この貯湯タンクの下部に給水する給水管と、前記貯湯タンクの上部から出湯する出湯管と、前記貯湯タンクの中間部から出湯する中間出湯管と、前記出湯管と前記中間出湯管の合流点に設けられ、何れか一方から出湯させるよう切り換える出湯切換弁と、前記給水管から分岐された給水バイパス管と、前記出湯切換弁からの出湯と前記給水バイパス管からの給水とを給湯設定温度になるように混合する混合弁と、前記給湯設定温度を設定する操作部とを備えた貯湯式給湯装置において、前記混合弁は、感温変形部材とバイアスバネの合力によって可動弁体を移動させて湯水の混合比を調節する弁機構部と、前記弁機構部へ与える荷重を変更するための駆動部と、前記給湯設定温度に応じて前記駆動部を駆動して予め前記弁機構部へ与える予荷重を変更して給湯の温度を変更させるFF制御部と、前記混合弁の下流に設けられた給湯温度センサで検出する給湯温度と前記給湯設定温度の差に応じて前記駆動部を駆動して前記弁機構部へ与える予荷重を微調整するFB制御部を備え、前記出湯切換弁を切り換えた直後には、前記弁機構部へ与える荷重を前記FF制御部による予荷重に戻すようにしたことを特徴とする貯湯式給湯装置。
【請求項2】
前記出湯切換弁を切り換えた後に、所定時間経過してから前記弁機構部へ与える荷重を前記FF制御部のみによる予荷重に戻すようにしたことを特徴とする請求項1記載の貯湯式給湯装置。
【請求項3】
給湯流量を検出する給湯流量センサを設け、前記所定時間は、給湯流量センサで検出する給湯流量に応じて変更するようにしたことを特徴とする請求項2記載の貯湯式給湯装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−7890(P2010−7890A)
【公開日】平成22年1月14日(2010.1.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−164625(P2008−164625)
【出願日】平成20年6月24日(2008.6.24)
【出願人】(000000538)株式会社コロナ (753)
【Fターム(参考)】