説明

貯湯式給湯装置

【課題】複数本の貯湯タンクを有した貯湯式給湯装置において、全ての貯湯タンクの確実かつ迅速な排水を実現する。
【解決手段】湯水を貯湯する第1貯湯タンク1、第2貯湯タンク2と、これら第1貯湯タンク1、第2貯湯タンク2内の湯水を沸き上げる加熱手段34と、第1貯湯タンク1、第2貯湯タンク2のそれぞれ下部に給水する第1給水管3、第2給水管4と、第1貯湯タンク1、第2貯湯タンク2のそれぞれ上部から出湯する第1出湯管5、第2出湯管6と、給湯時に第1出湯管5、第2出湯管6からの湯水の混合して出湯可能な出湯混合弁11と、第1出湯管5または第2出湯管6から分岐接続された大気開放弁10と、第1貯湯タンク1底部および前記第2貯湯タンク2底部に連通した排水栓39とを設け、排水時には出湯混合弁11を第1出湯管5と第2出湯管6が連通する開度に保持させるようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数本の貯湯タンクを有した貯湯式給湯装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、この種の複数の貯湯タンクを有した貯湯式給湯装置においては、図4に示すように、湯水を貯湯する複数の貯湯タンクA、Bと、貯湯タンクAの頂部から給湯するための給湯管101と、貯湯タンクBの底部に給水するための給水管102と、貯湯タンクBの頂部と貯湯タンクAの底部を接続する連絡管103と、貯湯タンクA内の上部に設けられ浴槽水を加熱するための風呂熱交換器104と、貯湯タンクA、B内の湯水を加熱するためのヒートポンプ式加熱手段105と、貯湯タンクB底部から流出させた湯水をヒートポンプ式加熱手段105へ導く入水管106と、ヒートポンプ式加熱手段105で加熱した湯水を貯湯タンクA頂部へ導く沸き上げ管107と、給湯管101から分岐接続された大気開放弁108と、貯湯タンクAの底部と貯湯タンクBの底部にそれぞれ連通した排水栓109および排水栓110とを備え、貯湯タンクA、Bの湯水を沸き上げる沸き上げ運転の際には、ヒートポンプ式加熱手段105に備えられた循環ポンプ(図示せず)を駆動して、貯湯タンクB底部から流出させた湯水を加熱して、貯湯タンクA頂部から戻し、連絡管103を介して貯湯タンクBの底まで満タンに沸き上げ、給湯する際には、貯湯タンクA内上部の湯を貯湯タンクB底部から流入する給水によって連絡管103を介して押し出すようにして給湯するようにしていたものであった(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002−139251号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、この従来のものでは、貯湯タンクAおよび貯湯タンクB内の湯水を排水するには、大気開放弁108と、排水弁109、110とを開放することで、両タンクの排水を可能としているが、貯湯タンクAの排水が完了して連絡管103の一端が空気に晒されるまでは貯湯タンクBの排水が行えず、排水に時間がかかるものであった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は上記課題を解決するため、請求項1では、湯水を貯湯する第1貯湯タンク、第2貯湯タンクと、これら第1貯湯タンク、第2貯湯タンク内の湯水を沸き上げる加熱手段と、を有し、大気開放弁を前記第1貯湯タンク上部および前記第2貯湯タンク上部に連通し、排水栓を前記第1貯湯タンク底部および前記第2貯湯タンク底部に連通した。
【0006】
また、請求項2では、前記第1貯湯タンク、第2貯湯タンクのそれぞれ下部に給水する第1給水管、第2給水管と、前記第1貯湯タンク、第2貯湯タンクのそれぞれ上部から出湯する第1出湯管、第2出湯管と、給湯時に前記第1出湯管、第2出湯管からの湯水の混合して出湯可能な出湯混合弁と、前記第1出湯管または前記第2出湯管から分岐接続された前記大気開放弁とを設け、排水時には前記出湯混合弁を前記第1出湯管と前記第2出湯管が連通する開度に保持させるようにした
【0007】
また、請求項3では、前記大気開放弁を過圧逃がし弁機構付の大気開放弁として前記第1出湯管から分岐して設け、前記加熱手段は沸き上げ時に、前記第2貯湯タンクを沸き上げた後に前記第1貯湯タンクを沸き上げるようにした。
【0008】
また、請求項4では、前記出湯混合弁は少なくとも第2貯湯タンクを沸き上げている最中は第1出湯管と第2出湯管の間を閉鎖するようにした。
【0009】
また、請求項5では、前記第1貯湯タンクおよび第2貯湯タンク内の湯水を前記加熱手段に循環させる加熱循環回路と、前記第1貯湯タンク、第2貯湯タンク内の湯水の一方を選択的に前記加熱手段に循環させるよう前記加熱循環回路の流路を切り替える循環切替手段と、を設け、前記加熱循環回路は、前記加熱手段から前記第1貯湯タンク、第2貯湯タンクへ戻す流路を前記出湯混合弁を介して前記第1出湯管、第2出湯管へ接続し、前記第1出湯管、第2出湯管を前記加熱循環回路の一部として共用すると共に、前記循環切替手段を前記出湯混合弁で共用するようにした。
【0010】
また、請求項6では、前記出湯混合弁は、最大弁開度および最小弁開度においても前記第1出湯管と前記第2出湯管が連通するものとした。
【発明の効果】
【0011】
請求項1によれば、一つの大気開放弁と排水栓で、第1貯湯タンクと第2貯湯タンクを同時に排水することが可能で、第1貯湯タンクおよび第2貯湯タンクの確実な排水を行えると共に、排水にかかる時間を大幅に短縮することができる。
【0012】
請求項2によれば、例えば第1出湯管側に大気開放弁が設けられているとすると、排水時に、第1出湯管に設けられた大気開放弁から吸気された空気が第1貯湯タンクへ供給され、第2貯湯タンクには出湯混合弁と第2出湯管とを経由して大気開放弁で吸気された空気が供給され、第1貯湯タンクと第2貯湯タンクを同時に排水することが可能で、第1貯湯タンクおよび第2貯湯タンクの確実な排水を行えると共に、排水にかかる時間を大幅に短縮することができる。
【0013】
請求項3によれば、第2貯湯タンクが沸き上げられている間は、第1貯湯タンク上部の貯湯水が過圧逃がし弁機構付大気開放弁から過圧膨張分だけ排出されるため、沸き上げた湯水の無駄を抑制することができる。
【0014】
請求項4によれば、第2貯湯タンクが沸き上げられている間は、第1貯湯タンク上部の貯湯水のみが過圧逃がし弁機構付大気開放弁から過圧膨張分だけ排出されるため、沸き上げた湯水の無駄をより一層抑制することができる。
【0015】
請求項5によれば、配管の本数や弁体の数を減らすことができ、低コストかつシンプルな構造とすることができる。
【0016】
請求項6によれば、常に第1出湯管と第2出湯管とが連通し、第1貯湯タンクおよび第2貯湯タンクと大気開放弁が常時連通するため、突然の停電等があっても第1貯湯タンクおよび第2貯湯タンクの排水を確実に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の一実施形態の貯湯式風呂給湯装置の概略構成図
【図2】同一実施形態の沸き上げ時の作動を示すフローチャート
【図3】同一実施形態の給湯時の作動を示すフローチャート
【図4】従来の貯湯式風呂給湯装置の概略構成図
【発明を実施するための形態】
【0018】
次に、本発明の一実施形態の貯湯式風呂給湯装置を図面に基づいて説明する。
1は湯水を貯湯する第1貯湯タンク、2は第1貯湯タンクに並列に設けられ湯水を貯湯する第2貯湯タンク、3は第1貯湯タンク1下部に給水する第1給水管、4は第2貯湯タンク2下部に給水する第2給水管、5は第1貯湯タンク1上部から出湯する第1出湯管、6は第2貯湯タンク2上部から出湯する第2出湯管、7は減圧弁8と給水逆止弁9とを備えその下流で第1給水管3および第2給水管4に分岐する給水本管である。
【0019】
10は、第1出湯管5から分岐して設けられ、第1貯湯タンク1および第2貯湯タンク2の過圧膨張分を自動的に逃がす過圧逃がし弁機構を有すると共に手動で開放可能な構成とした大気開放弁としての過圧逃がし弁である。
【0020】
11は第1出湯管5からの湯水と第2出湯管6からの湯水を混合して出湯する出湯混合弁、12は出湯混合弁11で混合された湯水を供給する混合出湯管、13は混合出湯管12に設けられ出湯混合弁11で混合された湯水の温度を検出する出湯温度センサ、14は給水本管7の減圧弁8と給水逆止弁9の間から分岐された第1給水バイパス管、15は混合出湯管12からの湯水と第1給水バイパス管14からの水とを混合して給湯する給湯混合弁、16は給湯混合弁15で混合された湯水を供給する給湯管、17は給湯管16に設けられ給湯混合弁15で混合された湯水の温度を検出する給湯温度センサ、18は給湯管16を介して給湯される湯水の量をカウントする給湯流量カウンタ、19は給湯管16での湯の逆流を防止する給湯逆止弁である。
【0021】
20は混合出湯管12から分岐された風呂出湯管、21は給水本管7の減圧弁8と給水逆止弁9の間から分岐された第2給水バイパス管、22は風呂出湯管20からの湯水と第2給水バイパス管21からの水とを混合して浴槽23へ湯張りするため風呂混合弁、24は風呂混合弁22で混合された湯水を浴槽23へ供給するための湯張り管、25は湯張り管24を介して湯張りされる湯水の量をカウントする風呂流量カウンタ、26は湯張り管24を開閉して湯張りの開始停止を制御する湯張り弁、27は湯張り管24での湯の逆流を防止する風呂逆止弁である。
【0022】
28は浴槽23内の浴槽水を循環加熱するための風呂熱交換器、29は浴槽23と風呂熱交換器28とを浴槽水が循環可能に接続する風呂往き管30および風呂戻り管31よりなる風呂循環回路、32は風呂戻り管31に設けられ浴槽水を風呂熱交換器28へ圧送する風呂循環ポンプ、33は風呂戻り管31と湯張り管24の接続点付近に設けられ循環する浴槽水の温度および湯張り管24から湯張りされる湯水の温度を検出する風呂温度センサである。
【0023】
34は第1貯湯タンク1および第2貯湯タンク2内の湯水を加熱するヒートポンプ式の加熱手段で、内部に図示しない圧縮機、冷媒水熱交換器34a、膨張弁、空気熱交換器を備えたヒートポンプサイクルと、空気熱交換器に外気を送風する送風機と、冷媒水熱交換器に第1貯湯タンク1および第2貯湯タンク2内の湯水を循環させる加熱循環ポンプ34bとを備えているものである。
【0024】
35は第1貯湯タンク1の底部に設けられ第1貯湯タンク1底部の湯水を加熱手段34へ送る第1入水管、36は第2貯湯タンク2の底部に設けられ第2貯湯タンク2底部の湯水を加熱手段34へ送る第2入水管、37は第1入水管35、第2入水管36が合流してなり、加熱手段34の冷媒水熱交換器34aの水側入口に接続された入水本管、38は加熱手段34の冷媒水熱交換器34aの水側出口に接続され加熱手段34で沸き上げた湯を第1貯湯タンク1、第2貯湯タンク2へ戻すための沸き上げ管、39は入水本管37から分岐して設けられ手動で開放可能な構成とした排水栓である。
【0025】
沸き上げ管38は、出湯混合弁11の下流側の混合出湯管12に接続され、第1出湯管5および第2出湯管6を介して加熱手段34で沸き上げた湯水を第1貯湯タンク1および第2貯湯タンク2の上部へ戻すようにしており、第1入水管35、第2入水管36、入水本管37、沸き上げ管38、混合出湯管12、第1出湯管5、第2出湯管6で加熱循環回路40を構成している。ここで、出湯混合弁11は、加熱手段34で沸き上げた湯水を第1貯湯タンク1の上部または第2貯湯タンク2の上部のどちらに戻すかを切り替える循環切替手段として作動可能としている。
【0026】
41は沸き上げ管38途中で分岐して第1貯湯タンク1および第2貯湯タンク2の下部に連通する給水本管7に接続した沸き上げバイパス管、42は沸き上げ管38と沸き上げバイパス管41との分岐点に設けられ加熱手段34を循環させた湯水を第1貯湯タンク1、第2貯湯タンク2の下部に戻すか、第1貯湯タンク1、第2貯湯タンク2の上部に戻すかを切り替える沸き上げ切替弁である。
【0027】
43は第1貯湯タンク1の側面上下に複数(ここでは4個)設けられ、第1貯湯タンク1内の湯水の温度を検出する第1貯湯温度センサ、44は第2貯湯タンク2の側面上下に複数(ここでは3個)設けられ、第2貯湯タンク2内の湯水の温度を検出する第2貯湯温度センサで、それぞれ上から第1貯湯温度センサ43a、第1貯湯温度センサ43b、第1貯湯温度センサ43c、第1貯湯温度センサ43d、第2貯湯温度センサ44a、第2貯湯温度センサ44b、第2貯湯温度センサ44cと呼び、最上部の第1貯湯温度センサ43aおよび第2貯湯温度センサ44aで第1貯湯タンク1および第2貯湯タンク2から出湯する湯水の温度を検出し、最下部の第1貯湯温度センサ43dおよび第2貯湯温度センサ44cで第1貯湯タンク1および第2貯湯タンク2が満タンに沸き上げられたかを判別するための温度を検出し、第2貯湯タンク2最下部の第2貯湯温度センサ44cで給水本管7から供給される給水の温度を検出するようにしている。
【0028】
45はリモコンで、給湯装置に関する各種の情報(給湯設定温度、風呂設定温度、残湯量、給湯装置の作動状態等)を表示する表示部46と、給湯設定温度および風呂設定温度を設定操作するための温度設定スイッチ47と、浴槽23へ一定量の湯張りを指示する湯張りスイッチ48と、第1貯湯タンク1および第2貯湯タンク2の排水を行うための準備動作を行わせるよう指示する排水スイッチ49等の各種スイッチを備えている。
【0029】
50は、出湯温度センサ13、給湯温度センサ17、給湯流量カウンタ18、風呂流量カウンタ25、風呂温度センサ33、第1貯湯温度センサ43a〜43d、第2貯湯温度センサ44a〜44cの検出値が入力され、出湯混合弁11、給湯混合弁15、風呂混合弁22、湯張り弁26、風呂循環ポンプ32、沸き上げ切替弁42の作動を制御すると共に、リモコン45および加熱手段34と通信可能に接続されたタンク制御手段である。このタンク制御手段50は、予め給湯装置の作動を制御するためのプログラムが記憶されていると共に、演算、比較、記憶機能、時計機能を有しているものである。
【0030】
51は、加熱手段34内の必要カ所の温度等の入力を受けて圧縮機、膨張弁、送風機、加熱循環ポンプ34bの作動を制御すると共に、タンク制御手段50と通信可能に接続された加熱制御手段で、予め加熱手段34の作動を制御するためのプログラムが記憶されていると共に、演算、比較、記憶機能を有しているものである。
【0031】
<沸き上げ運転>
次に、沸き上げ運転時の作動を図2のフローチャートに基づいて説明する。
電気料金単価の安価な深夜時間帯になったことをタンク制御手段50が認識すると(ステップS1でYes)、タンク制御手段50は、これまでの給湯熱量と、第1貯湯温度センサ43a〜d、第2貯湯温度センサ44a〜cで検出する第1貯湯タンク1および第2貯湯タンク2内の残湯熱量と、第2貯湯タンク2最下部の第2貯湯温度センサ44cで検出する給水温度とに基づいて、下記の式から深夜時間帯での温度を算出し、算出した温度を5℃刻みの温度に切り上げて沸き上げ目標温度を決定する。
【0032】
沸き上げ目標温度={(出湯熱量−残湯熱量)/(タンク容量−残湯量)}+給水温度
ここで、タンク容量は第1貯湯タンク1と第2貯湯タンク2の総容量に基づいて予め定められた値(ここでは総容量から深夜時間帯の開始時まで確保しておくべき最低貯湯量を減じた値)を用い、残湯量は第1貯湯温度センサ43a〜dおよび第2貯湯温度センサ44a〜cでヒートポンプ式の加熱手段34での再沸き上げが難しい所定の温度(例えば50℃)以上の湯の分布状態から残湯量を検出するようにしている。
【0033】
そして、タンク制御手段50は、沸き上げ量(タンク総容量−残湯量)を算出し(ステップS2)、この沸き上げ量と沸き上げ目標温度とヒートポンプ式の加熱手段34の定格加熱能力とから深夜時間帯の終了時刻前に翌日に必要な熱量が沸き上がるような沸き上げ開始時刻をピークシフト演算によって算出する(ステップS3)。
【0034】
そして、現在時刻が沸き上げ開始時刻に到達すると(ステップS4でYes)、タンク制御手段50は、沸き上げ切替弁42を沸き上げバイパス管41側に切替え(ステップS5)、ヒートポンプ式の加熱手段34の加熱制御手段51に対して算出された沸き上げ目標温度での沸き上げ運転を開始するよう指示し、指示を受けた加熱制御手段51は、沸き上げ温度センサ(図示せず)で検出する冷媒水熱交換器34aから流出する湯の温度が沸き上げ目標温度となるように、圧縮機、膨張弁、送風機、加熱循環ポンプ34bを駆動制御して沸き上げ運転を開始する(ステップS6)。
【0035】
このとき、ヒートポンプ式の加熱手段34が沸き上げ目標温度近くの所定の立ち上げ温度に到達する前の低い温度の湯水は、沸き上げ管38から沸き上げバイパス管41を介して第1貯湯タンク1および第2貯湯タンク2の底部に戻り、第1貯湯タンク1および第2貯湯タンク2の上部の湯水との混合を避けるようにしている。
【0036】
そして、加熱制御手段51は、沸き上げ温度センサが所定の立ち上げ温度(ここでは50℃)以上に到達したことを検出すると(ステップS7)、その旨をタンク制御手段50へ送信し、この信号を受信したタンク制御手段50は、出湯混合弁11の開度を第2出湯管6側100%に切り替え(ステップS8)、その後に、沸き上げ切替弁42を沸き上げ管38側に切り替えて(ステップS9)、ヒートポンプ式の加熱手段34で沸き上げた湯水を第2貯湯タンク2の上部から貯湯するようにしている。
【0037】
このとき、第2貯湯タンク2内にヒートポンプ式の加熱手段34で沸き上げられた湯水が貯められていくのと同時に、加熱によって湯水が膨張して過圧状態となり、逃がし弁10の開弁圧力を超えると、逃がし弁10が開弁して第1貯湯タンク1の上部に貯められている前日の残り湯が膨張排出され、沸き上げた直後の湯は排出されることなく第2貯湯タンク2に貯められていくため、貯湯効率を高めることができる。
【0038】
第2貯湯タンク2の沸き上げが進行し、第2貯湯タンク2最下部の第2貯湯温度センサ44cが所定の満タン温度(ここでは55℃)を検出すると(ステップS10でYes)、タンク制御手段50は、出湯混合弁11の開度を第1出湯管5側100%に切り替え(ステップS11)、ヒートポンプ式の加熱手段34で沸き上げた湯水を第1貯湯タンク1の上部から貯湯するようにしている。
【0039】
第1貯湯タンク1の沸き上げが進行し、第1貯湯タンク1最下部の第1貯湯温度センサ44dが所定の満タン温度(ここでは55℃)を検出すると(ステップS12でYes)、タンク制御手段50は、その後の給湯開始に備えて、出湯混合弁11の開度を第2出湯管6側100%に切り替え(ステップS13)、加熱制御手段51に対して沸き上げ運転の終了を指示し、指示を受けた加熱制御手段51は、圧縮機、膨張弁、送風機、加熱循環ポンプ34bの駆動を停止して、沸き上げ運転を終了する(ステップS14)。
【0040】
<給湯運転>
次に、給湯運転時の作動を図3のフローチャートに基づいて説明する。
給湯管16の先端に設けられた給湯栓(図示せず)が開かれ、第2貯湯タンク2の底部に第2給水管4から市水が流入すると共に第2貯湯タンク2の頂部から第2出湯管6を介して高温の湯が出湯し、出湯混合弁11および混合出湯管12を流れ、給湯混合弁15で第1給水バイパス管14からの水と混合されて給湯管16から給湯される。
【0041】
タンク制御手段50は、給湯流量カウンタ18が最低作動量以上の流量を検知すると(ステップS21でYes)、出湯温度センサ13で検出する出湯混合弁11から流出された湯水の温度をチェックし、この温度が給湯設定温度に基づく所定温度(例えば給湯設定温度+一定温度)以上かどうかを判定する(ステップS22)。
【0042】
沸き上げ運転の終了からの総給湯量があまり多くなっていない時点では、沸き上げ運転の終了時に図2のステップS13で出湯混合弁11は第2出湯管6側100%とされており、また、出湯温度センサ13で検出する温度も高くステップS22でYesと判定されるため、第2貯湯タンク2内の湯が第1貯湯タンク1内の湯よりも優先して選択的に出湯され、タンク制御手段50は、出湯混合弁11の開度を変更せずに、第2貯湯タンク2からの湯と第1給水バイパス管14からの給水とを混合して給湯混合弁15を給湯温度センサ17が給湯設定温度を検出するようにフィードバック制御する。
【0043】
そして、給湯流量カウンタ18が最低作動量未満の流量を検知すると(ステップS23でYes)、タンク制御手段50は、出湯混合弁11および給湯混合弁15をそのときの開度のまま次の給湯まで待機させる。
【0044】
一方、沸き上げ運転の終了からの総給湯量が多くなって、第2貯湯タンク2内の貯湯量が減ってきた時点では、出湯温度センサ13で検出する温度が徐々に低下して給湯設定温度に基づく所定温度を下回ると、ステップS22でNoとなって、タンク制御手段50は、出湯混合弁11の開度を第1出湯管5側に一段階だけ増加し(ステップS24)、出湯温度センサ13で検出する温度が給湯設定温度に基づく所定温度以上となるまでステップS22とステップS24を繰り返すようにしている。
【0045】
このように、給湯時は、先に沸き上げた第2貯湯タンク2から選択的または優先的に出湯するので、第2貯湯タンク2内の湯水は沸き上げから給湯までの時間が短縮されて、自然放熱量が減少し、貯湯効率を向上することができ、さらに、後に沸き上げられた第1貯湯タンク1内の湯水は最後に出湯されるので、高温の湯を長時間にわたって確保することができる。
【0046】
<風呂運転>
次に、風呂運転について説明すると、リモコン45の湯張りスイッチ48が操作されると、タンク制御手段50は湯張り弁26を開弁し、出湯混合弁11からの湯水が風呂出湯管20を介して風呂混合弁22に流入し、風呂混合弁22では風呂出湯管20からの湯水と第2給水バイパス管21からの給水とが風呂設定温度に混合されて湯張り管24を介して風呂循環回路29の風呂戻り管31に供給される。このとき、タンク制御手段50は、出湯混合弁11は給湯運転時と同じく、第2貯湯タンク2からの湯水を第1貯湯タンク1からの湯水よりも優先的に出湯するように制御すると共に、風呂温度センサ33で検出する温度が風呂設定温度になるように風呂混合弁22の開度をフィードバック制御するようにしている。
【0047】
そして、風呂流量カウンタ25が検出する湯張り量がリモコン45で予め設定された湯張り設定量に達すると、タンク制御手段50は湯張り弁26を閉弁して湯張り運転を終了する。
【0048】
タンク制御手段50は、湯張り運転の終了に続き、浴槽水を所定時間にわたり風呂設定温度に保つ保温運転を行うようにしており、この保温運転では、一定時間間隔毎に風呂循環ポンプ32を駆動して風呂温度センサ33で浴槽水の温度を検出し、検出した温度が風呂設定温度未満であれば、風呂設定温度を検出するまで風呂循環ポンプ32の駆動を継続して風呂熱交換器28で第1貯湯タンク1上部の湯水と浴槽水を熱交換して浴槽水を加熱し、一方、検出した温度が風呂設定温度以上であれば風呂循環ポンプ32の駆動を停止し、一定時間が経過するまで風呂循環ポンプ32の駆動を待機するようにしている。
【0049】
この保温運転は、一般的に沸き上げ運転の終了からだいぶ時間が経過した夕方以降に行われることが多いものであるが、浴槽水を加熱する熱源となる第1貯湯タンク1内の湯水は複数の貯湯タンクのうち最後に沸き上げられ、風呂熱交換器28の熱源となる第1貯湯タンク1内の湯水よりも風呂熱交換器28の熱源とならない第2貯湯タンク2内の湯水が選択的または優先的に給湯されるため、熱源として利用するまでの経過時間での自然放熱量が少なく、また、第1貯湯タンク1内の湯水は従来のように多量に自然放熱した湯水と置換されることもないので、浴槽水の加熱能力を高く保つことができる。
【0050】
<排水運転>
次に、第1貯湯タンク1および第2貯湯タンク2内の湯水を排水する際の排水運転について説明する。
第1貯湯タンク1および第2貯湯タンク2内の排水を行うに際し、作業者が給水本管7へ給水する市水の元栓を閉止して新たな水の供給を遮断し、逃がし弁10を手動によって開放する。そして、リモコン45の排水スイッチ49を操作した後に、排水栓39を開栓する手順で行う。
【0051】
そして、排水スイッチ49が操作されると、タンク制御手段50は、沸き上げ切替弁42を沸き上げ管38側に切り替え、出湯混合弁11を第1出湯管5と第2出湯管6とが連通する半開状態として、排水状態とする。この半開状態は、出湯混合弁11の第1出湯管5側の開度と第2出湯管6側の開度とが等しくなる50%開度が好ましく、50%開度とすることで、第1出湯管5側と第2出湯管6側を連通する開口面積が最大となり、より多くの空気を第2出湯管6側に供給することが可能となるものである。
【0052】
この排水状態となると、逃がし弁10から吸い込まれた空気が第1出湯管5を通じて第1貯湯タンク1内の上部に供給されて、第1貯湯タンク2がスムースに排水され、第2貯湯タンク2の底部から排水される湯水の吸引力によって第2出湯管6から第1出湯管5の逃がし弁10までの間に満たされている湯水が第2貯湯タンク2内に引き込まれると同時に逃がし弁10から吸い込まれた空気が第1出湯管5、出湯混合弁11、第2出湯管6を経由して第2貯湯タンク2内の上部に供給されて、第2貯湯タンク2がスムースに排水される。
【0053】
なお、排水スイッチ49は単独のスイッチではなく、他の機能が割り当てられたスイッチを所定の手順で操作することで排水スイッチとして機能させるようにしてもよいものである。
【0054】
なお、本発明は上記の一実施形態に限定されるものではなく、発明の要旨を変更しない範囲で改変することができるものであり、例えば、出湯混合弁11を循環切替手段として兼用する構成としたが、これに限らず、第1出湯管5、第2出湯管6とは独立して沸き上げ管38から分岐して第1貯湯タンク1上部に接続する第1沸き上げ管と第2貯湯タンク上部に接続する第2沸き上げ管を設け、これらの一方を選択するよう切り替える出湯混合弁11とは独立した循環切替手段を設けるようにしてもよいが、出湯混合弁11を循環切替手段として兼用させ、第1出湯管5、第2出湯管6を加熱循環回路40の一部として用いたほうが、配管の本数や弁体の数を少なくすることができ、低コストかつシンプルにでき、かつ、第2貯湯タンク2内の湯水を余さずに使い切ることができて好ましいものである。
【0055】
また、前記出湯混合弁11を常時第1出湯管5と第2出湯管6とが連通するように、最大弁開度を第1出湯管5側を(100−X)%、第2出湯管6側をX%、最大弁開度を第1出湯管5側をX%、第2出湯管6側を(100−X)%と制限するようにしてもよい。
【0056】
このように、常時第1貯湯タンク1および第2貯湯タンク2と逃がし弁10が常時連通するため、突然の停電等があっても第1貯湯タンク1および第2貯湯タンク2の排水を確実に行うことができる。
【0057】
なお、ここでは、最大弁開度、最小弁開度を制限することで、最大弁開度および最小弁開度でも第1出湯管5と第2出湯管6とが連通するようにしたが、これに限らず、出湯混合弁11内部に第1出湯管5側と第2出湯管6側とを連通するバイパス流路を開口するようにしても実現できるものである。
【符号の説明】
【0058】
1 第1貯湯タンク
2 第2貯湯タンク
3 第1給水管
4 第2給水管
5 第1出湯管
6 第2出湯管
10 逃がし弁(大気開放弁)
11 出湯混合弁(循環切替手段)
34 加熱手段
39 排水栓
40 加熱循環回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
湯水を貯湯する第1貯湯タンク、第2貯湯タンクと、これら第1貯湯タンク、第2貯湯タンク内の湯水を沸き上げる加熱手段と、を有し、大気開放弁を前記第1貯湯タンク上部および前記第2貯湯タンク上部に連通し、排水栓を前記第1貯湯タンク底部および前記第2貯湯タンク底部に連通したことを特徴とする貯湯式給湯装置。
【請求項2】
前記第1貯湯タンク、第2貯湯タンクのそれぞれ下部に給水する第1給水管、第2給水管と、前記第1貯湯タンク、第2貯湯タンクのそれぞれ上部から出湯する第1出湯管、第2出湯管と、給湯時に前記第1出湯管、第2出湯管からの湯水の混合して出湯可能な出湯混合弁と、前記第1出湯管または前記第2出湯管から分岐接続された前記大気開放弁とを設け、排水時には前記出湯混合弁を前記第1出湯管と前記第2出湯管が連通する開度に保持させるようにしたことを特徴とする請求項1記載の貯湯式給湯装置。
【請求項3】
前記大気開放弁に過圧逃がし弁機構付の大気開放弁として前記第1出湯管から分岐して設け、沸き上げ時に、前記加熱手段は、前記第2貯湯タンクを沸き上げた後に前記第1貯湯タンクを沸き上げるようにしたことを特徴とする請求項2記載の貯湯式給湯装置。
【請求項4】
前記出湯混合弁は少なくとも第2貯湯タンクを沸き上げている最中は第1出湯管と第2出湯管の間を閉鎖するようにした請求項3記載の貯湯式給湯装置。
【請求項5】
前記第1貯湯タンクおよび第2貯湯タンク内の湯水を前記加熱手段に循環させる加熱循環回路と、前記第1貯湯タンク、第2貯湯タンク内の湯水の一方を選択的に前記加熱手段に循環させるよう前記加熱循環回路の流路を切り替える循環切替手段と、を設け、前記加熱循環回路は、前記加熱手段から前記第1貯湯タンク、第2貯湯タンクへ戻す流路を前記出湯混合弁を介して前記第1出湯管、第2出湯管へ接続し、前記第1出湯管、第2出湯管を前記加熱循環回路の一部として共用すると共に、前記循環切替手段を前記出湯混合弁で共用するようにしたことを特徴とする請求項4記載の貯湯式給湯装置。
【請求項6】
前記出湯混合弁は、最大弁開度および最小弁開度においても前記第1出湯管と前記第2出湯管が連通するものとしたことを特徴とする請求項2から5の何れか一項に記載の貯湯式給湯装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2012−181002(P2012−181002A)
【公開日】平成24年9月20日(2012.9.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−45931(P2011−45931)
【出願日】平成23年3月3日(2011.3.3)
【出願人】(000000538)株式会社コロナ (753)
【Fターム(参考)】