説明

貯湯式給湯装置

【課題】昼間の沸き増しが必要以上に早く行われて実際に給湯されるまでの時間が長くなるために貯湯タンクから無駄に放熱してしまう。
【解決手段】給水管2と出湯管4が接続されて湯水を貯湯する貯湯タンク1と、貯湯タンク1下部から取り出した湯水を加熱して貯湯タンク1上部に戻す加熱手段23と、過去の所定期間の使用熱量から翌日の必要熱量を算出し、所定の時間帯に必要熱量を沸き上げ、所定の時間帯内に沸き上げられない分の必要熱量である必要沸き増し熱量がある場合に、所定の時間帯以外に貯湯タンク1の残湯熱量が所定の沸き増し開始条件を満たしたときに沸き増すようにした制御手段41とを備え、制御手段41は、過去の所定期間の単位期間毎の使用熱量のバラツキ度合を算出し、バラツキ度合が小さい場合に所定の時間帯以外の沸き増し開始のタイミングを遅らせるように所定の沸き増し開始条件を変更するようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、貯湯式給湯装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来よりこの種の貯湯式給湯装置においては、給水管と出湯管が接続されて湯水を貯湯する貯湯タンクと、この貯湯タンク下部から取り出した湯水を加熱して貯湯タンク上部に戻す加熱手段とを備え、過去の所定期間の使用熱量から翌日の必要熱量を算出し、夜間時間帯に必要熱量を沸き上げ、夜間時間帯内に沸き上げられない分の必要熱量である必要沸き増し熱量がある場合に、昼間時間帯に貯湯タンクに設けられた複数の貯湯温度センサのうち、所定の位置の貯湯温度センサが沸き増し開始判定温度を下回ったら必要沸き増し熱量を沸き増すようにしたものがあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002−168524号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、この従来のものでは、貯湯タンクからの使用熱量がユーザーの使用状況によってまちまちであるため、湯切れしてしまわないよう沸き増し開始判定条件を、ある程度の熱量を給湯したら早めに沸き増すように余裕度を持たせて設定している。このため、昼間の沸き増しが必要以上に早く行われてしまい、実際に給湯されてしまうまでの時間が長くなるために貯湯タンクから無駄に放熱してしまうという問題があった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
そこで、本発明は上記課題を解決するため、請求項1では、給水管と出湯管が接続されて湯水を貯湯する貯湯タンクと、この貯湯タンク下部から取り出した湯水を加熱して貯湯タンク上部に戻す加熱手段と、過去の所定期間の使用熱量から翌日の必要熱量を算出し、所定の時間帯に必要熱量を沸き上げ、所定の時間帯内に沸き上げられない分の必要熱量である必要沸き増し熱量がある場合に、所定の時間帯以外に貯湯タンク内の残湯熱量が所定の沸き増し開始条件を満たしたときに沸き増すようにした制御手段とを備え、前記制御手段は、過去の所定期間の単位期間毎の使用熱量のバラツキ度合を算出し、バラツキ度合が小さい場合に所定の時間帯以外の沸き増し開始のタイミングを遅らせるように所定の沸き増し開始条件を変更するようにした。
【0006】
また、請求項2では、給水管と出湯管が接続されて湯水を貯湯する貯湯タンクと、この貯湯タンク下部から取り出した湯水を加熱して貯湯タンク上部に戻すヒートポンプ式加熱手段と、中温水の発生状況を判断する判断手段と、浴槽内の浴水を貯湯タンク内の湯水で追い焚きする風呂熱交換器と、浴槽と風呂熱交換器を浴水が循環可能に接続する風呂循環回路と、過去の所定期間の使用熱量から翌日の必要熱量を算出し、所定の時間帯に必要熱量を沸き上げ、所定の時間帯内に沸き上げられない分の必要熱量である必要沸き増し熱量がある場合に、所定の時間帯以外に貯湯タンク内の残湯熱量が所定の沸き増し開始条件を満たしたときに沸き増すようにした制御手段とを備え、前記制御手段は、過去の所定期間の単位期間毎の使用熱量のバラツキ度合を算出すると共に、過去の所定期間における浴水追い焚きの時間、回数または加熱量の何れかを検出し、前記バラツキ度合が小さく、かつ、追い焚きの時間、回数または加熱量が少ない場合に、所定の時間帯以外の沸き増し開始のタイミングを遅らせるように所定の沸き増し開始条件を変更するようにした。
【0007】
また、請求項3では、前記所定の沸き増し開始条件は、貯湯タンクに設けられた複数の貯湯温度センサのうち、所定の位置の貯湯温度センサが沸き増し開始判定温度を下回ったことをもって沸き増し開始条件を満たしたものとし、沸き増し開始判定を行う貯湯温度センサを高い位置に設けられた貯湯温度センサに変更することで沸き増し開始のタイミングを遅らせるようにした。
【0008】
また、請求項4では、前記所定の沸き増し開始条件は、貯湯タンクに設けられた複数の貯湯温度センサのうち、所定の位置の貯湯温度センサが沸き増し開始判定温度を下回ったことをもって沸き増し開始条件を満たしたものとし、沸き増し開始温度を低い温度に変更することで沸き増し開始のタイミングを遅らせるようにした。
【0009】
また、請求項5では、前記バラツキ度合は、過去の所定期間の使用熱量の標準偏差から算出するようにした。
【0010】
また、請求項6では、前記バラツキ度合は、過去の所定期間の使用熱量の最大値と最小値の差から算出するようにした。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、日々の使用熱量がばらつかない使用パターンでは、所定の時間帯以外での沸き増し開始のタイミングを遅くするので、沸き増した湯が実際に給湯されてしまうまでの時間を短縮することができ、貯湯タンクからの無駄な放熱を低減することができると共に、日々の使用熱量がばらつくような使用パターンでは、所定の時間帯以外での沸き増し開始のタイミングを早めるので、湯切れ発生を防止できる。このように、ユーザーの使用状況に合わせて、湯切れを防止した上で最適かつ効率的な沸き増しを行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の一実施形態のヒートポンプ式風呂給湯機の概略構成図
【図2】同一実施形態の沸き上げ動作を説明するフローチャート
【図3】同一実施形態の沸き増し動作を説明するフローチャート
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の一実施形態のヒートポンプ式給湯装置を図面に基づいて説明する。
1は湯水を貯湯する貯湯タンク(ここではタンク容量370L)、2は貯湯タンク1に給水する給水管、3は給水管2に設けられ給水圧を減圧する減圧弁、4は貯湯タンク1上部から出湯する出湯管、5は出湯管4に設けられ過圧を逃がす過圧逃がし弁、6は減圧弁3の下流側の給水管2から分岐した給水バイパス管、7は出湯管4からの湯水と給水バイパス管6からの水とを混合する給湯混合弁、8は給湯混合弁7からの湯水を給湯する給湯管、9は給湯管8に設けられた給湯温度センサ、10は給湯管8を流れる流量を検出する給湯流量センサ、11は給水温度を検出する給水温度センサ、12は給湯栓である。
【0014】
13は浴槽、14は貯湯タンク1内の上部に設けた風呂熱交換器、15は浴槽13と風呂熱交換器14とを浴水が循環可能に接続している風呂循環回路、16は風呂循環回路15途中に設けられた風呂循環ポンプ、17は浴槽13から風呂熱交換器14へ戻る浴水の温度を検出する風呂戻り温度センサ、18は風呂熱交換器14から浴槽13へ往く浴水の温度を検出する風呂往き温度センサ、19は浴槽13内の水位を圧力により検出する水位センサ、20は給湯管8から分岐されて風呂循環回路15へ接続された湯張り管、21は湯張り管20の開閉を行う湯張り電磁弁である。
【0015】
22は貯湯タンク1の側面上下に複数設けられ各部の貯湯温度を検出する貯湯温度センサであり、ここでは、貯湯温度センサ22aは30L、貯湯温度センサ22bは80L、貯湯温度センサ22cは130L、貯湯温度センサ22dは180L、貯湯温度センサ22eは230L、貯湯温度センサ22fは280L、貯湯温度センサ22gは330Lの容量の貯湯温度を検出するものである。
【0016】
23は貯湯タンク1内の湯水を加熱するヒートポンプ式加熱手段で、冷媒を圧縮する圧縮機24と、圧縮された高温冷媒と貯湯タンク1からの湯水とを熱交換する冷媒水熱交換器25と、冷媒水熱交換器25で放熱された冷媒を減圧する膨張弁26と、低温低圧の冷媒を蒸発される蒸発器としての空気熱交換器27とを冷媒配管28で環状に接続して構成され、一定の加熱能力で作動するように制御されるもので、貯湯タンク1下部から取り出した湯を加熱して貯湯タンク1上部に戻すようにしているため沸き上げる湯量を自在にコントロールできるものである。なお、29は空気熱交換機27に熱源となる外気を送風する送風ファンである。
【0017】
30は貯湯タンク1の下部と冷媒水熱交換器25の入口とを接続し、冷媒水熱交換機25の出口と貯湯タンク1の上部とを接続する加熱循環回路、31は冷媒水熱交換機25入口側の加熱循環回路30に設けられ貯湯タンク1下部から取り出した湯水を冷媒水熱交換機25を介して貯湯タンク1上部に循環させる加熱循環ポンプ、32は冷媒水熱交換機25に流入する湯水の温度を検出する入水温度センサ、33は冷媒水熱交換機25から流出する湯水の温度を検出する沸き上げ温度センサ、34は外気温度を検出する外気温度センサである。
【0018】
35は給湯温度や各種必要な設定を行うためのリモートコントローラで、給湯設定温度や風呂設定温度を表示する表示部36と、給湯設定温度および風呂設定温度を設定する温度設定スイッチ37と、浴槽13への所定湯量の湯張りに続いて所定の保温時間だけ保温運転を行わせるフロスイッチ38と、浴水を加熱する追焚き動作を行わせる追焚きスイッチ39と、貯湯タンク1からの使用熱量の実績に対する余裕分を多めにして翌日に必要な熱量(必要熱量Q)を設定する多めモードと使用熱量の実績に対する余裕分を少なめにして必要熱量Qを設定する少なめモードの少なくとも2種類の沸き上げモードを手動操作によって切り替える沸き上げモード切替スイッチ40とを備えている。
【0019】
41はこのヒートポンプ式風呂給湯機の作動を制御する制御手段で、予め作動を制御するためのプログラムが記憶されていると共に、演算、比較、記憶機能、カウント機能を有し、給湯温度センサ9、給湯流量センサ10、給水温度センサ11、風呂戻り温度センサ17、風呂往き温度センサ18、水位センサ19、貯湯温度センサ22a〜e、入水温度センサ32、沸き上げ温度センサ33、外気温度センサ34にて検出される値が入力され、給湯混合弁7、風呂循環ポンプ16、湯張り電磁弁21、圧縮機24、膨張弁26、送風ファン29、加熱循環ポンプ31の駆動を制御し、沸き上げ動作、給湯動作や風呂加熱動作等を制御するもので、リモートコントローラ35と通信可能に接続されているものである。
【0020】
<給湯動作>
次に、給湯栓12が開かれ、給湯流量センサ10が給湯開始と見なせる量以上の流量を検出すると、制御手段41は給湯温度センサ9で検出する給湯温度がリモートコントローラ35で設定した給湯設定温度となるように給湯混合弁7の開度を調節し、出湯管4からの湯と給水バイパス管6からの水とを混合して給湯設定温度の湯を給湯する。
【0021】
このとき、制御手段41は、給水温度センサ11で検出する給水温度と給湯流量センサ11で検出する給湯流量と給湯設定温度とから使用熱量を所定温度の給湯量に換算して、積算記憶する。
【0022】
そして、給湯栓12が閉じられる等して給湯流量センサ10が検出する流量が給湯停止と見なせる量未満の流量まで低下すると、制御手段41は給湯混合弁7の開度調節を終了し、給湯を終了する。
【0023】
<湯張り動作>
また、リモートコントローラ35の風呂スイッチ38がオンされた場合について説明すると、制御手段41は湯張り電磁弁21を開き、給湯温度センサ9で検出する給湯温度がリモートコントローラ35で設定した風呂設定温度となるように給湯混合弁7の開度を調節して風呂設定温度の湯を湯張りし、給湯流量センサ10が検出する湯張り電磁弁21を開いてからの流量積算値が予めリモートコントローラ35等で設定した湯張り湯量に達すると湯張り電磁弁21を閉じる。
【0024】
このとき、制御手段41は、給水温度センサ11で検出する給水温度と給湯流量センサ11で検出する給湯流量と風呂設定温度とから浴槽13へ給湯された使用熱量を所定温度の給湯量に換算して、積算記憶する。
【0025】
そして、湯張り運転を完了すると制御手段41は所定の保温時間(例えば2時間)の保温運転を行う。この保温運転では、定期的に風呂循環ポンプ16を駆動して浴水温度をチェックし、風呂設定温度未満であれば風呂加熱要求ありとして風呂循環ポンプ16の工藤を継続して浴水を風呂設定温度まで加熱するようにしている。そして、湯張り運転の完了から所定の保温時間が経過すると、浴水の保温運転を行わないようにしている。
【0026】
<追い焚き動作>
また、リモートコントローラ35の追い焚きスイッチ39がオンされると、制御手段41は、風呂加熱要求ありとして風呂設定温度まで加熱する追い焚き運転を行うようにしており、追い焚き運転によって風呂加熱要求が発生すると、制御手段41は、風呂循環ポンプ16を駆動開始し、浴水を風呂熱交換器14に循環させて、貯湯タンク1内の貯湯熱によって浴水を加熱する風呂加熱動作を開始し、そして、風呂戻り温度センサ17が風呂設定温度以上を検出すると、風呂循環ポンプ16を駆動停止して風呂加熱動作を終了する。
【0027】
<沸き上げ動作>
次に、電力料金単価の安価な深夜の沸き上げ動作について、図2のフローチャートに基づいて説明する。ここでは、所定の時間帯である23時から翌朝7時までの深夜時間帯がそれ以外の昼間時間帯よりも電力料金単価が安価な料金制度に基づいて説明するが、これに限られず、例えば22時から翌朝8時までを安価な深夜時間帯とする料金制度でもよいものである。
【0028】
現在時刻が23時になり深夜時間帯の開始時刻となると(ステップS1でYes)、制御手段41は設定されている沸き上げモードと、給湯負荷として積算記憶している過去数日分の1日単位の使用熱量とに基づいて翌日に必要な必要熱量Qを算出、決定する(ステップS2)。ここでは、過去一週間の所定温度換算の給湯量の平均値と、その標準偏差に基づく値と、沸き上げモードの種類に応じた余裕分(例えば多めモードでは43℃換算100L分の熱量、少なめモードでは43℃換算50L分の熱量)との和から必要熱量Qを算出、決定するようにしている。
【0029】
次に、制御手段41は、外気温度センサ34で検出する外気温度Taに応じ、予め記憶されている外気温度Taに応じたテーブルデータから目標沸き上げ温度Tsetを決定する(ステップS3)。ここでは、目標沸き上げ温度Tsetを外気温度Taが10℃未満で75℃、外気温度Taが10℃以上では70℃としている。
【0030】
なお、外気温度Taと目標沸き上げ温度Tsetの関係データの代わりに、給水温度Twと目標沸き上げ温度Tsetのテーブルデータを制御手段41に予め記憶し、ステップS3では、給水温度センサ11、最下部の貯湯温度センサ22gあるいは入水温度センサ32で検出される給水温度Twに基づいて目標沸き上げ温度Tsetを決定する構成としてもよい。
【0031】
そして、制御手段41は、必要熱量Qを目標沸き上げ温度Tsetから給水温度Twを引いた値で除して、目標沸き上げ量Vを算出する(ステップS4)。このとき、目標沸き上げ量Vは、貯湯温度センサ22a〜gの位置に応じて補正され、算出された値が、130L以下では130L、130L超180L以下では180L、180L超230L未満では230L、230L超280L以下では280L、280L超では330Lを目標沸き上げ量Vとなるように補正して決定していると共に、決定された目標沸き上げ量Vに対応する貯湯温度センサ22c〜gのいずれか一つを沸き上げ完了を判定する貯湯温度センサとする。
【0032】
次に、制御手段41は、貯湯温度センサ22a〜gの検出温度に基づき、残湯判定温度(例えば50℃)以上の残湯量Vzを算出し(ステップS5)、目標沸き上げ量Vから残湯量Vzを減じて沸き上げ必要量Vpを算出する(ステップS6)。
【0033】
そして、制御手段41は、沸き上げ必要量Vpをヒートポンプ式加熱手段29の一定の加熱能力で除して沸き上げ時間を算出し、深夜時間帯の終了時刻から逆算して沸き上げ開始時刻(ピークシフト時刻)を算出する(ステップS7)。
【0034】
現在時刻がピークシフト時刻となると(ステップS8でYes)、前記ステップS3で決定した目標沸き上げ温度Tsetでの沸き上げ動作を開始すべく、ヒートポンプ式加熱手段23および加熱循環ポンプ31を駆動開始し、貯湯タンク1下部から取り出した水を目標沸き上げ温度Tsetの湯に加熱して貯湯タンク1上部から戻して積層状に貯湯する(ステップS9)。
【0035】
前記ステップS4で決定した目標沸き上げ量Vに対応する貯湯温度センサ22c〜gが規定の沸き上げ完了温度(例えば目標沸き上げ温度Tset)を検出するか、または入水温度センサ32が加熱上限温度(例えば55℃)以上を検出するかして沸き上げが完了されるか(ステップS10)、現在時刻が深夜時間帯の終了時刻である7時に到達すると(ステップS11)、ヒートポンプ式加熱手段23および加熱循環ポンプ31を駆動停止して沸き上げ動作を終了し(ステップS12)、沸き上げ動作のフローを終了するようにしている(ステップS13)。
【0036】
このように、必要熱量Qが少なく、目標沸き上げ温度Tsetで沸き上げて満タンに満たないような場合には、貯湯タンク1を満タンまで沸き上げず、算出された目標沸き上げ量V以上で最も近い各貯湯温度センサ22c〜gの容量まで沸き上げるようにして、貯湯タンク1内に残る中温水をヒートポンプ式加熱手段23で沸き上げる量を減らしている。一方、必要熱量Qが多い場合は、深夜時間帯に沸き上げ切れなかった不足分をこの後に説明する昼間時間帯の沸き増し動作で沸き上げるようにしている。
【0037】
<沸き増し動作>
次に、深夜時間帯に沸き上げられない分の必要熱量である必要沸き増し熱量がある場合に、電力料金単価が深夜時間帯に比べて高価な昼間時間帯に貯湯タンク1内の残湯熱量が所定の沸き増し開始条件を満たしたときに沸き増す昼間時間帯の沸き増し動作について図3に示すフローチャートに基づいて説明する。
【0038】
ここで、所定の沸き増し開始条件は、貯湯タンク1に設けられた複数の貯湯温度センサ22のうち、所定の位置の貯湯温度センサ22(ここでは貯湯タンク1の中程の高さ位置にある貯湯温度センサ22e)が沸き増し開始判定温度を下回ったことをもって沸き増し開始条件を満たしたものとする。
【0039】
深夜時間帯が終了して昼間時間帯が開始されると(ステップS21)、制御手段41は、貯湯温度センサ22a〜gの検出温度とそれぞれの貯湯温度センサ22a〜gに割り当てられた貯湯容量とから深夜時間帯の沸き上げ動作で沸き上げた結果となる沸き上げ貯湯熱量Qeを算出する(ステップS22)。
【0040】
次に、制御手段41は、図2のステップS2で求めた必要熱量Qから沸き上げ貯湯熱量Qeを減算して、必要熱量Qのうち深夜時間帯で沸き上げ切れずに昼間時間帯で沸き増す必要のある熱量(必要沸き増し熱量Qm)を算出し(ステップS23)、必要沸き増し熱量Qmをヒートポンプ式加熱手段23の一定の加熱能力Wで除して熱量を沸き増し時間に換算して沸き増し必要時間tmを算出する(ステップS24)。
【0041】
そして、制御手段41は、当日の使用湯量が所定量(ここでは500L)未満であるかを判定し(ステップS25)、所定量未満であれば、過去の所定期間(例えば一週間)の単位期間(例えば1日)毎の使用熱量のバラツキ度合を算出する(ステップS26)。ここで、バラツキ度合は、過去一週間の一日毎の使用熱量の標準偏差や、過去一週間の一日毎の使用熱量の最大使用熱量と最小使用熱量の差をバラツキ度合を表す数値とすることができる。
【0042】
次に、制御手段41は、前記ステップS26で算出したバラツキ度合を表す数値を予め定められた所定値と比較し(ステップS27)、バラツキ度合が小さい場合は、残湯熱量の減少に伴う沸き増し開始のタイミングをバラツキ度合が大きい場合に比べて遅らせるべく、沸き増し開始判定を行う所定の位置の貯湯温度センサ22eから上方にある貯湯温度センサ22dへ変更する(ステップS28)。一方、バラツキ度合が大きい場合は、残湯熱量の減少に伴う沸き増し開始のタイミングをバラツキ度合が小さい場合に比べて早めるべく、沸き増し開始判定を行う貯湯温度センサ22を元の貯湯温度センサ22eに戻すようにしている(ステップS29)。
【0043】
続いて、ステップS30では、制御手段41は、昼間時間帯開始からの沸き増し運転の積算時間が必要沸き増し時間tm未満かどうかを判別し、ステップS30でYesとなるとステップS31へ進み、前記ステップS28またはステップS29で決定した沸き増し開始判定を行う貯湯温度センサ22dまたは22eで検出する貯湯温度が所定の沸き増し開始温度(例えば50℃)以下まで低下すると、沸き増し開始条件を満たしたと判別するようにしている。
【0044】
沸き増し開始条件を満たすと(ステップS31でYes)、制御手段41は、ヒートポンプ式加熱手段23と加熱循環ポンプ31を駆動して、貯湯タンク1下部から取り出した水を目標沸き上げ温度Tsetの湯に加熱して貯湯タンク1上部から戻して積層状に貯湯する沸き増し運転を開始する(ステップS32)。また、このとき、制御手段41は、昼間時間帯開始からの沸き増し運転時間を積算して記憶するようにしている。
【0045】
そして、沸き増し運転に伴って貯湯温度センサ22a〜gで検出する貯湯量が予め定められた沸き増し停止貯湯量以上まで増加したか(ステップS33)、沸き増し積算時間が沸き増し必要時間tmに達したか(ステップS34)を判別し、それぞれYesとなった時点でヒートポンプ式加熱手段23と加熱循環ポンプ31の駆動を停止して沸き増し運転を停止する(ステップS35)。なお、ここでは、貯湯タンク1の中間下部付近の貯湯温度センサ22dが所定の沸き増し停止温度(例えば55℃)以上まで上昇すると、沸き増し停止貯湯量以上となったと判別するようにすると共に、沸き増し運転を一旦開始すると、最低継続時間(30分間)はヒートポンプ式加熱手段23を停止することなく駆動継続するようにしている。
【0046】
沸き増し運転を停止した後は、ステップS30へ戻り、沸き増し積算時間が必要沸き増し時間tm以上となると(ステップS30でNo)、沸き増し動作のフローを終了し(ステップS36)、当日は沸き増し運転を行わないようにしている。
【0047】
このように、日々の使用熱量がばらつかない使用パターンでは、所定の時間帯以外での沸き増し開始のタイミングを遅くするので、沸き増した湯が実際に給湯されてしまうまでの時間を短縮することができ、貯湯タンクからの無駄な放熱を低減することができると共に、日々の使用熱量がばらつくような使用パターンでは、所定の時間帯以外での沸き増し開始のタイミングを早めるので、湯切れ発生を防止できる。このように、ユーザーの使用状況に合わせて、湯切れを防止した上で最適かつ効率的な沸き増しを行うことができる。
【0048】
なお、この実施形態では、ステップS24にて必要沸き増し熱量Qmを必要沸き増し時間tmに換算して、沸き増しを時間でコントロールしているが、昼間時間帯に実際に沸き増した沸き増し積算熱量を管理することで、過不足なく沸き増しすることも可能である。
【0049】
また、沸き増し開始のタイミングを遅くするために、所定の位置の沸き増し開始判定を行う貯湯温度センサ22を変更するようにしているが、これに限らず、沸き増し開始判定を行う貯湯温度センサ22を変更することなく、沸き増し開始判定温度をそれまでよりも低い所定温度(例えば45℃)に変更することで、沸き増し開始のタイミングを遅くしてもよく、位置の変更と温度の変更を組み合わせてもよいものである。
【0050】
また、この実施形態では、バラツキ度合が所定値未満であることを1回判定したら沸き増し開始のタイミングを遅くするよう沸き増し開始条件を変更したが、バラツキ度合が所定値未満であることを複数日連続で判定すると、沸き増し開始のタイミングを遅くするよう沸き増し開始条件を変更し、バラツキ度合が所定値以上であることを1回でも判定すると、沸き増し開始のタイミングを早くするよう沸き増し開始条件を元に戻すようにしてもよい。このように、バラツキ度合が小さいことが複数日連続したことで沸き増し開始のタイミングを遅くするようにしたので、日々の使用熱量がばらつかない使用パターンであることを確実に判定することができる。
【0051】
また、制御手段41は、過去の所定期間における浴水追い焚きの時間、回数または加熱量の何れかを検出し、追い焚きの時間、回数または加熱量が予め定められた閾値より多い場合は、バラツキ度合が所定値未満であっても沸き増し開始条件を変更しないようにしてもよい。出湯による日々の使用熱量がばらつかなくとも風呂追い焚きによって使用熱量が多くなった場合に、沸き増し開始のタイミングを不要に遅くすることを抑制して湯切れを防止できると共に、出湯による日々に使用熱量のバラツキ度合が小さく、かつ、追い焚きの時間、回数または加熱量が予め定められた閾値より少ない場合は、沸き増し開始のタイミングを遅らせて、沸き増した湯が実際に給湯されてしまうまでの時間を短縮することができ、貯湯タンクからの無駄な放熱を低減することができる。
【0052】
また、バラツキ度合が一つの所定値に対して大きいか小さいかだけの判定によって沸き増し開始条件を変更するようにしているが、これに限らず、バラツキ度合を判定する値を所定範囲とし、所定範囲よりも小さい場合に沸き増し開始のタイミングを遅くするよう沸き増し開始条件を変更し、バラツキ度合が所定範囲よりも大きい場合に沸き増し開始のタイミングを早くするよう沸き増し開始条件を変更し、バラツキ度合が所定範囲内であれば沸き増し開始条件を変更しないようにしてもよい。
【符号の説明】
【0053】
1 貯湯タンク
2 給水管
4 出湯管
22 貯湯温度センサ
23 ヒートポンプ式加熱手段
41 制御手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
給水管と出湯管が接続されて湯水を貯湯する貯湯タンクと、この貯湯タンク下部から取り出した湯水を加熱して貯湯タンク上部に戻す加熱手段と、過去の所定期間の使用熱量から翌日の必要熱量を算出し、所定の時間帯に必要熱量を沸き上げ、所定の時間帯内に沸き上げられない分の必要熱量である必要沸き増し熱量がある場合に、所定の時間帯以外に貯湯タンク内の残湯熱量が所定の沸き増し開始条件を満たしたときに沸き増すようにした制御手段とを備え、前記制御手段は、過去の所定期間の単位期間毎の使用熱量のバラツキ度合を算出し、バラツキ度合が小さい場合に所定の時間帯以外の沸き増し開始のタイミングを遅らせるように所定の沸き増し開始条件を変更するようにしたことを特徴とする貯湯式給湯装置。
【請求項2】
給水管と出湯管が接続されて湯水を貯湯する貯湯タンクと、この貯湯タンク下部から取り出した湯水を加熱して貯湯タンク上部に戻すヒートポンプ式加熱手段と、中温水の発生状況を判断する判断手段と、浴槽内の浴水を貯湯タンク内の湯水で追い焚きする風呂熱交換器と、浴槽と風呂熱交換器を浴水が循環可能に接続する風呂循環回路と、過去の所定期間の使用熱量から翌日の必要熱量を算出し、所定の時間帯に必要熱量を沸き上げ、所定の時間帯内に沸き上げられない分の必要熱量である必要沸き増し熱量がある場合に、所定の時間帯以外に貯湯タンク内の残湯熱量が所定の沸き増し開始条件を満たしたときに沸き増すようにした制御手段とを備え、前記制御手段は、過去の所定期間の単位期間毎の使用熱量のバラツキ度合を算出すると共に、過去の所定期間における浴水追い焚きの時間、回数または加熱量の何れかを検出し、前記バラツキ度合が小さく、かつ、追い焚きの時間、回数または加熱量が少ない場合に、所定の時間帯以外の沸き増し開始のタイミングを遅らせるように所定の沸き増し開始条件を変更するようにしたことを特徴とする貯湯式給湯装置。
【請求項3】
前記所定の沸き増し開始条件は、貯湯タンクに設けられた複数の貯湯温度センサのうち、所定の位置の貯湯温度センサが沸き増し開始判定温度を下回ったことをもって沸き増し開始条件を満たしたものとし、沸き増し開始判定を行う貯湯温度センサを高い位置に設けられた貯湯温度センサに変更することで沸き増し開始のタイミングを遅らせるようにしたことを特徴とする請求項1または2記載の貯湯式給湯装置。
【請求項4】
前記所定の沸き増し開始条件は、貯湯タンクに設けられた複数の貯湯温度センサのうち、所定の位置の貯湯温度センサが沸き増し開始判定温度を下回ったことをもって沸き増し開始条件を満たしたものとし、沸き増し開始温度を低い温度に変更することで沸き増し開始のタイミングを遅らせるようにしたことを特徴とする請求項1または2記載の貯湯式給湯装置。
【請求項5】
前記バラツキ度合は、過去の所定期間の使用熱量の標準偏差から算出するようにしたことを特徴とする請求項1〜4の何れか一項に記載の貯湯式給湯装置。
【請求項6】
前記バラツキ度合は、過去の所定期間の使用熱量の最大値と最小値の差から算出するようにしたことを特徴とする請求項1〜4の何れか一項に記載の貯湯式給湯装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2013−87961(P2013−87961A)
【公開日】平成25年5月13日(2013.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−225525(P2011−225525)
【出願日】平成23年10月13日(2011.10.13)
【出願人】(000000538)株式会社コロナ (753)