説明

貯留タンク

【課題】貯留タンク内に浮かべた送液機器を含む大流量の送液機器の性能確認試験及び/又は試運転に好適に使用することができる貯留タンクを提供する。
【解決手段】貯留タンク1内の液を循環使用し、前記貯留タンク1内に浮かべた送液機器及び/又は前記送液機器から送水される水を圧送する外部送液機器の試運転及び/又は性能確認試験を行う際に使用する貯留タンク1であって、液を貯留し前記送液機器を浮かべるタンク本体11と、前記タンク本体11内に設けられ、底面に貫通孔49が穿設された分散板43を備え、前記送液機器又は前記外部送液機器から返送される液が大流量であっても前記タンク本体11内の液面が大きく揺動しないように、返送される液を分散させ前記タンク本体11内に放出可能なディストリビュータ31と、を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポンプなど送液機器の試運転及び/又は性能確認運転を行う際に使用する貯留タンクに関する。
【背景技術】
【0002】
石油コンビナートのタンク全面火災発生時に使用する消火設備の一つに大容量泡放射システムがある。図8は、大容量泡放射システム100の概略的構成を示す図である。大容量泡放射システム100は、海面に浮き海水を汲み上げる水中ポンプ102、水中ポンプ102から送られる海水を圧送する送水ポンプ104、泡混合器106、消火液を貯留し、泡混合器106に消火液を送る消火液タンク108、薬注ポンプ110、及び泡放水砲112などで構成され、毎分10,000〜30,000Lの放水量が可能である。
【0003】
大容量泡放射システム100を使用する場合、通常、海水の取り口と放水箇所が離れているため長距離の送水ホース114が必要となる。このような送水ホース114は、距離が長くかつ大量の海水が送水されるため、送水時、送水ホース114の圧力は非常に高くなっている。このような送水ホース114あるいは接続金具(接続継手)が破損すると、送水圧力によって送水ホース114の先端部が暴れ危険である。このため送水ホース114に高圧力が加わっても、破損することがない接続金具及び送水ホースが提案されている(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−232178号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
大容量泡放射システム100を構成する水中ポンプ102又は送水ポンプ104は、適宜、メンテナンスが行われるが、これら機器をメンテナンスした後には性能確認試験が行われる。送水ポンプ104をメンテナンスした場合には、水中ポンプ102及び送水ポンプ104を海岸近くに移動させ、水中ポンプ102を介して海水を取水し、送水ポンプ104の性能確認試験が行われる。
【0006】
従来の性能確認試験では、水中ポンプ102及び送水ポンプ104を海岸近くまで移動させる必要があり、多大の労力、費用を必要としていた。これら機器の性能確認試験を、小型のポンプなどのように工場、あるいは建屋内で実施することができれば移動の労力が不要となり好ましいが、流量が非常に多い水中ポンプ102及び送水ポンプ104の性能確認試験を工場、あるいは建屋内で実施することは容易ではない。また大容量泡放射システム100を所有するユーザーは、メーカーと異なり、通常、性能確認試験用の専用設備を保有していないこともあり、大容量泡放射システム100を構成する水中ポンプ102又は送水ポンプ104のメンテナンス後の性能確認試験については、これまでに従来の性能確認試験に代わる方法は提案されていない。
【0007】
大流量の送水ポンプ、送液ポンプは、大容量泡放射システム100を構成する水中ポンプ102及び送水ポンプ104に限られたものではなく、他の設備でも多く使用されている。さらに水、海水の他、排水、水溶液、油などの液体を送液する大流量の機器についても性能確認試験又は試運転は実施されるが、これら機器についても性能確認試験又は試運転を簡単に実施することができる方法は提案されていない。
【0008】
本発明は、貯留タンク内に浮かべた送液機器を含む大流量の送液機器の性能確認試験及び/又は試運転に好適に使用することができる貯留タンクを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、貯留タンク内の液を循環使用し、前記貯留タンク内に浮かべた送液機器及び/又は前記送液機器から送水される水を圧送する外部送液機器の試運転及び/又は性能確認試験を行う際に使用する貯留タンクであって、液を貯留し前記送液機器を浮かべるタンク本体と、前記タンク本体内に設けられ、前記送液機器又は前記外部送液機器から返送される液が大流量であっても前記タンク本体内の液面が大きく揺動しないように、返送される液を分散させ前記タンク本体内に放出可能なディストリビュータと、を含むことを特徴とする貯留タンクである。
【0010】
貯留タンク内に浮かべた送液機器及び/又は送液機器から送水される水を圧送する貯留タンク外に設置される外部送液機器の試運転及び/又は性能確認試験を大流量で行うためには、大量の液を循環使用することが効率的である。このとき送液機器は、貯留タンク内の液面に浮かんでいるので、大量の液を循環させても貯留タンクの液面を大きく波立たせないことが必要である。本発明の貯留タンクは、返送される液が大流量であってもタンク本体内の液面が大きく揺動しないように、返送される液を分散させタンク本体内に放出可能なディストリビュータを有するので、貯留タンクの液面が大きく波立たないように大量の液を循環させることができる。このような貯留タンクを使用することで、貯留タンク内に浮かべた送液機器を含む大流量の送液機器の性能確認試験及び/又は試運転を容易に実施することができる。
【0011】
また本発明の貯留タンクにおいて、前記ディストリビュータは、返送される液を前記タンク本体の底面に向って放出し前記タンク本体内の液面の揺動を防止することを特徴とする。
【0012】
ディストリビュータを用いて、返送される大流量の液をタンク本体の底面に向って放出すれば、放出された液は、底面に衝突し又は途中で反転上昇するので、より確実に液面の波立ちを防止することができる。
【0013】
また本発明の貯留タンクにおいて、前記ディストリビュータは、複数の分散板を備え、返送される液を順次、前記分散板を通過させ前記タンク本体内の液面の揺動を防止することを特徴とする。
【0014】
多段の分散板を直列に配置し、返送される大流量の液を順次、分散板を通過させタンク本体内に分散させ放出すれば、タンク内での液の動きが均一化され、より確実に液面の波立ちを防止することができる。
【0015】
また本発明の貯留タンクにおいて、前記貯留タンクが、移動可能なことを特徴とする。
【0016】
本発明の貯留タンクは、返送される液が大流量であってもタンク本体内の液面が大きく揺動しないように、返送される液を分散させタンク本体内に放出可能なディストリビュータを備えるので、液面の波立ちが防止される。このため貯留タンクの容量が小さく、タンク本体内での液流速が速くても液面が波立ち難い。このように本発明の貯留タンクは、大流量の液を循環させることができるタンクでありながら小型化が可能である。よってトラック等に積載し移動させる、又はキャスターを設け移動させることも可能であり、貯留タンク内に浮かべた送液機器を含む大流量の送液機器の性能確認試験及び/又は試運転に好適に使用することができる。
【0017】
また本発明の貯留タンクにおいて、前記液が水であり、前記送液機器及び前記外部送液機器が、大容量泡放射システムを構成する水中ポンプ及び送水ポンプであることを特徴とする。
【0018】
本発明の貯留タンクは、返送される大流量の液を分散させタンク本体内に放出するディストリビュータを備え、貯留タンク内の液面を大きく波立たせることなく大量の液を循環させることができるので、大容量泡放射システムを構成する水中ポンプ及び送水ポンプの性能確認試験及び/又は試運転に好適に使用することができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明の貯留タンクは、貯留タンク内の液面を大きく波立たせることなく大量の液を循環させることができるので、本発明の貯留タンクを、貯留タンク内に浮かべた送液機器を含む大流量の送液機器の性能確認試験及び/又は試運転に好適に使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の第1実施形態である貯留タンク1の斜視図である。
【図2】(a)は、図1の貯留タンク1を切断面線A−Aで切断した断面図、(b)は、図1の貯留タンク1を切断面線B−Bで切断した断面図である。
【図3】図1の貯留タンク1を使用して、大容量泡放射システム100の送水ポンプ104の性能確認試験を行うときの構成を示す図である。
【図4】本発明の第2実施形態である貯留タンク2の斜視図である。
【図5】図4の貯留タンク2を切断面線C−Cで切断した断面図である。
【図6】本発明の第3実施形態である貯留タンク3の斜視図である。
【図7】図6の貯留タンク3を切断面線D−Dで切断した断面図である。
【図8】従来の大容量泡放射システム100の概略的構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
図1は、本発明の第1実施形態である貯留タンク1の斜視図である。図2において(a)は、貯留タンク1を切断面線A−Aで切断した断面図、(b)は、貯留タンク1を切断面線B−Bで切断した断面図である。図3は、貯留タンク1を使用して、大容量泡放射システム100の送水ポンプ104の性能確認試験を行うときの構成を示す図である。
【0022】
貯留タンク1は、貯留タンク1内の液を循環使用し、貯留タンク1内に浮かべた送液機器及び/又は送液機器から送水される水を圧送する外部送液機器の試運転及び/又は性能確認試験を行う際に使用する貯留タンクであって、タンク本体11と、タンク本体11内に設置されたディストリビュータ31を含む。以下、大容量泡放射システム100の送水ポンプ104の性能確認試験を例として、貯留タンク1の構成、使用例を説明する。
【0023】
タンク本体11は、立方体形状を有し、上面(天井面)を除く5面が金属製の壁で覆われ水を貯留する。上面には壁がなく、上面は全面開放されている。タンク本体前面13には、送水ポンプ104から返送される水をディストリビュータ31に導く、水流入管25が設けられている。ここではタンク本体11が、立方体形状を有しているが、タンク本体11の形状は、特定の形状に限定されるものではなく円筒形状であってもよい。
【0024】
タンク本体11の大きさは、循環させる水の流量により異なるが、大流量の水を循環させるタンクとしては小さく、移動可能な大きさからなる。大容量泡放射システム100の送水ポンプ104の性能確認試験に使用するタンク本体11の大きさを例示すれば、長さL=8m、幅W=2m、高さH=1.85mとすることができる。この大きさであれば、トラックに積載して移動させることができる。またタンク本体11の底部にキャスターを設け、移動させることも可能となる。
【0025】
大容量泡放射システム100の送水ポンプ104の性能確認試験を行う場合、送水ポンプ104に送水する水中ポンプ102が、タンク本体11内の水面27に浮かんでいるので、大量の水を循環させてもタンク本体11内の水面27を大きく波立たせないことが必要である。タンク本体11内の水面27が大きく波立っていない状態とは、タンク本体11内の水面27に浮かべて使用する水中ポンプ102の運転に支障を来たさず、安定運転を行うことができる状態を言う。なお、タンク本体11内の水面27を大きく波立たせないことと、タンク本体11内の水面27を大きく揺動させないこととは同義である。
【0026】
タンク本体11内の水面を大きく波立たせることなく大流量の水を循環させるには、タンク本体11の容量を大きくすればよいが、製造コストが高く、広い設置場所が必要となり、さらに簡単に移設させることができなくなる。本実施形態に示す貯留タンク1は、ディストリビュータ31を介して返送される大流量の水を分散させタンク本体11に放出することで、タンク本体11内の水面27を大きく波立たせることなく大量の水を循環可能とする。またディストリビュータ31を設けることでタンク本体11の大きさを小さくすることができる。
【0027】
ディストリビュータ31は、送水ポンプ104から返送される大流量の水を均等に分散させタンク本体11内に放出する装置であり、タンク本体11内に設置されている。ここで水を均等に分散させるとは、完全な均等のほか、均等とみなせるものも含む。ここで水を均等に分散させるのは、タンク内の水の流れ(動き)が不均一となると水面27が波立つため、これを防止するためである。よってディストリビュータ31は、水面27が波立たないように水を分散、放出できればよい。
【0028】
ディストリビュータ31は、タンク本体11と同様に立方体形状からなり、上面35、底面37、両側面39、41の4面に金属製の壁を有し、前面及び背面には壁はない。上面35、底面37、両側面39、41の各壁材の両端部がタンク本体11の前面13、背面15の壁材に固定され、ディストリビュータ31の内部は空間となっている。ディストリビュータ31は、水流入管25と接続し、送水ポンプ104から返送される大流量の水は、水流入管25を通じてディストリビュータ31に送られる。
【0029】
ディストリビュータ31は、底面37とタンク本体底面21との間に所定の距離を有するように、タンク本体11内に支柱51で支持、設置されている。またディストリビュータ31の底面37は、分散板43となっており、底面全体に多数の貫通孔49が穿設されている。
【0030】
このような構造からなるディストリビュータ31に、送水ポンプ104から大流量の水が送られると、水はこの貫通孔49からタンク本体底面21に向って放出され、その後反転しタンク本体上面に向う。このためディストリビュータ底面37とタンク本体底面21との間隔が狭すぎると、貫通孔49から放出される水がタンク本体底面21に激しく衝突し、水の流れが大きく乱れる。水の流れが大きく乱れると、水面27が波立つため好ましくない。一方、ディストリビュータ底面37とタンク本体底面21との間隔が広い場合には、水面27の波立ちは発生しないが、タンク本体11が大きくなり不経済である。本実施形態の貯留タンク1は、この点を考慮し、ディストリビュータ底面37とタンク本体底面21との距離を、水面27が波立たない最小限の距離としている。
【0031】
ディストリビュータ底面の分散板43は、送水ポンプ104から送られる大流量の水をタンク本体底面21に向って均等に放出するための部材であるから、この機能を発揮するように貫通孔49を設ける必要がある。均等に水を放出させるためには、貫通孔49の大きさは小さい方がよいが、小さいほど貫通孔49を通過する際の圧力損失が大きくなる。貯留タンク1は、送水ポンプ104の性能確認試験を行う際に使用するタンクであるから、ディストリビュータ31の圧力損失が大きいことは好ましくない。よって分散板43は、送水ポンプ104から返送される水の量、許容される圧力損失を考慮し、水を均等に放出可能で、可能な限り圧力損失が小さくなるように設計する。
【0032】
分散板43の形成方法は、特定の方法に限定されないが容易に形成できることが好ましいことは言うまでもない。例えば、パンチングメタル(打ち抜き金網)を使用すれば、別途、貫通孔49を穿設する必要がない。貫通孔49の形状は、必ずしも円に限定されず、矩形形状、さらにはスリット形状を採用することもできる。但し、加工、入手の容易性を考えれば貫通孔49の形状は円が好ましい。
【0033】
ディストリビュータ31の横幅(短手方向の幅)Wは、タンク本体11の横幅Wに比較して小さく、ディストリビュータ31とタンク本体11との間には空間部53が設けられている。貫通孔49から放出された水は、ディストリビュータ31の下方で反転し、ディストリビュータ31とタンク本体11との間に設けられた空間部53を上昇する。特に本実施形態に示す貯留タンク1は、ディストリビュータ31の長手方向がタンク本体11と接続し、タンク本体前面13側及びタンク本体背面15側に空間部が設けられていないので、全ての水は、ディストリビュータ31の短手方向の空間部53を上昇する。このためディストリビュータ31とタンク本体11との間隔を極端に狭くすると、水の上昇速度が速くなりすぎ好ましくない。一方、ディストリビュータ31とタンク本体11との短手方向の間隔を極端に広くすると、ディストリビュータ31の横幅Wが小さくなり、貫通孔49から放出する水の流速が速くなり好ましくない。なお、本実施形態に示す貯留タンク1は、ディストリビュータ31の長手方向に、ディストリビュータ31とタンク本体11との間の空間部が設けられていないが、ここから水が上昇するように空間部を設けてもよい。
【0034】
ディストリビュータ31の高さLは、特に限定されないが、送水ホース114の径と同程度であれば、送水ホース114を接続し易い。極端に高さLを小さくすると、送水ポンプ104から返送される大流量の水がディストリビュータ31を通過するときの圧力損失が大きくなり好ましくない。逆に必要以上にディストリビュータ31の高さLを高くしても不経済である。
【0035】
ディストリビュータ上面35とタンク本体上端23との距離は特に限定されず、水中ポンプ102の運転に支障のない深さがあればよい。ディストリビュータ上面35とタンク本体上端23との距離を必要以上に大きくしても、水中ポンプ102の運転には殆ど影響はなく、タンク本体11が大きくなる分だけ不経済である。
【0036】
次に、貯留タンク1を使用して、大容量泡放射システム100の送水ポンプ104の性能確認試験を行うときの要領を説明する。
【0037】
送水ポンプ104に水を送る水中ポンプ102の吐出部と、送水ポンプ104の吐出部と貯留タンク1に設けられた水流入管25とをそれぞれ送水ホース114で接続する。貯留タンク1に水を張り込んだ後、水面27に水中ポンプ102を浮かべ、送水ポンプ104及び送水ポンプ102を運転し、送水ポンプ104の性能確認試験を行う。水中ポンプ102及び送水ポンプ104の吐出流量は非常に大きく、大量の水が循環使用されるが、貯留タンク1の水面27は大きく波立たないので、送水ポンプ104の性能確認試験を安定的に行うことができる。
【0038】
以下、他の貯留タンク2を示す。図4は、本発明の第2実施形態である貯留タンク2の斜視図である。また図5は、貯留タンク2を切断面線C−Cで切断した断面図である。図1から図3に示す第1実施形態の貯留タンク1と同一の構成には、同一の符号を付して説明を省略する。
【0039】
第2実施形態の貯留タンク2も、第1実施形態の貯留タンク1と同様にタンク本体11とディストリビュータ32を備えるが、ディストリビュータ32の構造が第1実施形態の貯留タンク1に装着されたディストリビュータ31と異なる。但し、ディストリビュータ32の基本的機能は、ディストリビュータ31と同じである。
【0040】
ディストリビュータ32は、第1分散板44、第2分散板45の2枚の分散板からなり、第1分散板44、第2分散板45は、距離を隔ててタンク本体11内に液の流れに直交するように配置されている。第1分散板44、第2分散板45は共に、タンク本体11の短手方向の内寸と同じ大きさの金属板に貫通孔49が穿設されている。第1分散板44と第2分散板45とに穿設された貫通孔49は、同一ではなく、第2分散板45に穿設された貫通孔49は、第1分散板44に穿設された貫通孔49に比較して大きく、逆に個数は少ない。第1分散板44と第2分散板45とに穿設された貫通孔49を同じ仕様にしてもよいことはもちろんであるが、第2分散板45の上流側の水の流速は、非常に遅くなっているので、第2分散板45の貫通孔49を大きくしても水の動きを均一化することができる。第2分散板45の貫通孔49を大きくすれば、ディストリビュータ32全体として、圧力損失を低減することが可能であり好ましい。
【0041】
2枚の分散板は、第1分散板44がタンク本体前面13の近くに、第2分散板45がタンク本体11の中央部に取り付けられている。このため見かけ上、第1分散板44の上流側に第1の部屋54、第1分散板44と第2分散板45との間に第2の部屋55、第2分散板45の下流側に第3の部屋56が形成される。このような貯留タンク2を使用して、第1実施形態と同様に、大容量泡放射システム100の送水ポンプ104の性能確認試験を行うときは、水中ポンプ102は、第3の部屋56に浮かべる。
【0042】
貯留タンク2の場合、送水ポンプ104から返送される大流量の水は、水流入管25を通して、タンク本体11と第1分散板44とで仕切られた第1の部屋54に流入する。第1の部屋54では、水流入管25から勢いよく水が流入するため水の動きは大きく乱れているが、第1の部屋54から第2の部屋55に流入するときには、第1分散板44を介して水が均等に排出されるので、第2の部屋55内での水の動きは均一化される。さらに第2の部屋55から第3の部屋56に流入することで水の動きはより均一化される。第1分散板44、第2分散板45を通過するときの水の流速は非常に速いが、第2の部屋55、第3の部屋56に流入した途端に流速は急激に低下する。このように水を縮小箇所、拡大箇所を通し、流速を大きく変化させることで、水の流れをより整流させることができる。
【0043】
以上のようにディストリビュータ32を通じて、大流量の水をタンク本体11内に放出することで、タンク本体11の水面、より正確には第3の部屋56の水面27の波立ちを防止することができる。本実施形態の場合、水中ポンプ102は、第3の部屋56に浮かべ使用するので、第1の部屋54及び第2の部屋55の水面が波立っても第3の部屋56の水面の波立ちが防止できればよい。
【0044】
さらに他の貯留タンク3を示す。図6は、本発明の第3実施形態である貯留タンク3の斜視図である。また図7は、貯留タンク3を切断面線D−Dで切断した断面図である。図1から図5に示す第1及び第2実施形態の貯留タンク1、2と同一の構成には、同一の符号を付して説明を省略する。
【0045】
第3実施形態の貯留タンク3は、第2実施形態の貯留タンク2と類似するが、ディストリビュータ33の構造が第2実施形態の貯留タンク2に装着されたディストリビュータ32と異なる。但し、ディストリビュータ33の基本的機能は、ディストリビュータ31、32と同じである。
【0046】
ディストリビュータ33は、第1分散板46、第2分散板47、及び第3分散板48の3枚の分散板からなり、第1分散板46、第2分散板47、及び第3分散板48は、近接した状態でタンク本体11の中央部に液の流れに直交するように配置されている。第1分散板46、第2分散板47、及び第3分散板48は、タンク本体11の短手方向の内寸と同じ大きさの金属板に貫通孔49が穿設されている。第1分散板46及び第3分散板48は、同一の分散板であり、貫通孔49が、中央部から下方に設けられている。一方、第2分散板47は、貫通孔49の大きさは第1分散板46及び第3分散板48と同一であるが、貫通孔49の位置が中央部から上方に設けられている。第1分散板46、第2分散板47、及び第3分散板48は、パンチングメタルと金属板とを接続することで容易に形成することができる。
【0047】
第1分散板46、第2分散板47、及び第3分散板48は、近接した状態でタンク本体11の中央部に配置されているので、見かけ上、第1分散板46の上流側に比較的広い第1の部屋57、第1分散板46と第2分散板47との間には比較的狭い第2の部屋58、第2分散板47と第3分散板48との間には比較的狭い第3の部屋59、第3分散板48の下流側に広い第4の部屋60が形成される。このような貯留タンク3を使用して、第1実施形態と同様に、大容量泡放射システム100の送水ポンプ104の性能確認試験を行うときは、水中ポンプ102は、第4の部屋60に浮かべる。
【0048】
貯留タンク3の場合、送水ポンプ104から返送される大流量の水は、水流入管25を通して、タンク本体11と第1分散板46とで仕切られた第1の部屋57に流入する。第1の部屋57では、水流入管25から勢いよく水が流入するため水の動きは大きく乱れているが、第1の部屋57から第2の部屋58に流入するときには、第1分散板46を介して水が均等に排出されるので、第2の部屋58内での水の動きは均一化される。さらに第2の部屋58から第3の部屋59、第3の部屋59から第4の部屋60に移動する過程で第2分散板47、第3分散板48を通過するので、水の動きはより整流される。
【0049】
さらに第1分散板46及び第3分散板48は、貫通孔49が中央部から下方に、第2分散板47は、貫通孔49が中央部から上方に設けられているので、第1の部屋57から順次、第4の部屋60に移動する際、水がショートパスし難い。また第2実施形態の貯留タンク2と同様に、水を縮小箇所、拡大箇所を通過させるので流速が大きく変化する。これらにより水の流れをより均一化させることができる。
【0050】
水のショートパスを防止するには、本実施形態に示すように貫通孔49の位置(高さ)を交互に配置し、水を蛇行させることが好ましい。水を蛇行させるためには、第1分散板46及び第3分散板48の貫通孔49を中央部から上方に、第2分散板47の貫通孔49を中央部から下方に設けてもよいが、波立ちを防止する観点から、第4の部屋60に流入する水は、水面27から深い位置であることが好ましい。
【0051】
以上のようにディストリビュータ33を通じて、大流量の水をタンク本体11内に放出することで、タンク本体11の水面27、より正確には第4の部屋60の水面27の波立ちを防止することができる。本実施形態の場合、水中ポンプ102は、第4の部屋60に浮かべ使用するので、第1から第3の部屋57、58、59の水面27が波立っても第4の部屋60の水面27の波立ちが防止できればよい。なお、タンク本体11において、後流に従って水の流れが均一化されるので、分散板46、47、48の貫通孔49の大きさも、後流側ほど大きくしてもよい。
【0052】
以上、第1から第3実施形態の貯留タンク1、2、3で示すように本発明の貯留タンクは、返送される大流量の液を均等に分散させタンク本体内に放出するディストリビュータ31、32、33を有するので、タンク本体内の液面が大きく揺動せず、大容量の水中ポンプを浮かべても安定した運転が可能となる。また、ディストリビュータ31、32、33を設けることで、タンク本体11の容量を小さくしてもタンク本体内の液面の揺動を抑制することができるので、貯留タンクを移動させることも可能となり、貯留タンク内に浮かべた送液機器を含む大流量の送液機器の性能確認試験及び/又は試運転を容易に実施することができる。
【0053】
本発明に係る貯留タンクは、前記実施形態に限定されるものではなく、要旨を変更しない範囲で変形して使用することができる。例えば、タンク本体11及び/又ディストリビュータ31、32、33は、金属材以外にFRPなど合成樹脂で形成してもよい。また第2実施形態に示すディストリビュータ32は、分散板が2枚、第3実施形態に示すディストリビュータ33は、分散板が3枚であったが、分散板の数は、さらに多くてもよい。但し、分散板の数を多くするに従って、ディストリビュータを通過するときの圧力損失が大きくなるので、流量、圧力損失を考慮し決定することが好ましい。
【0054】
また本実施形態では、大容量泡放射システム100の送水ポンプ104の性能確認試験を例として、貯留タンク1、2、3の構成、使用例を説明したが、本発明に係る貯留タンクは、大容量泡放射システム100の送水ポンプ104の性能確認試験以外にも使用可能なことは当然である。例えば、大容量泡放射システム100の水中ポンプ102の性能確認試験にも好適に使用可能であり、さらに他の送液機器の性能確認試験及び/又は試運転にも好適に使用することができる。また液も水に限定されるものではなく、油、水溶液、排水などであってもよい。また本発明に係る貯留タンクは、大流量の液を循環させても液面が大きく波立たないことに特徴があり、大流量の送液機器の性能確認試験及び/又は試運転にも好適に使用することができることは既に記載の通りであるが、流量が小さい送液機器の性能確認試験及び/又は試運転にも使用することができることは改めて言うまでもない。
【符号の説明】
【0055】
1 貯留タンク
2 貯留タンク
3 貯留タンク
11 タンク本体
13 タンク本体前面
15 タンク本体背面
21 タンク本体底面
23 タンク本体上端
25 水流入管
27 水面
31 ディストリビュータ
32 ディストリビュータ
33 ディストリビュータ
43 分散板
44 第1分散板
45 第2分散板
46 第1分散板
47 第2分散板
48 第3分散板
49 貫通孔
100 大容量泡放射システム
102 水中ポンプ
104 送水ポンプ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
貯留タンク内の液を循環使用し、前記貯留タンク内に浮かべた送液機器及び/又は前記送液機器から送水される水を圧送する外部送液機器の試運転及び/又は性能確認試験を行う際に使用する貯留タンクであって、
液を貯留し前記送液機器を浮かべるタンク本体と、
前記タンク本体内に設けられ、前記送液機器又は前記外部送液機器から返送される液が大流量であっても前記タンク本体内の液面が大きく揺動しないように、返送される液を分散させ前記タンク本体内に放出可能なディストリビュータと、
を含むことを特徴とする貯留タンク。
【請求項2】
前記ディストリビュータは、返送される液を前記タンク本体の底面に向って放出し前記タンク本体内の液面の揺動を防止することを特徴とする請求項1に記載の貯留タンク。
【請求項3】
前記ディストリビュータは、複数の分散板を備え、返送される液を順次、前記分散板を通過させ前記タンク本体内の液面の揺動を防止することを特徴とする請求項1又は2に記載の貯留タンク。
【請求項4】
前記貯留タンクが、移動可能なことを特徴とする請求項1から3のいずれか1に記載の貯留タンク。
【請求項5】
前記液が水であり、前記送液機器及び前記外部送液機器が、大容量泡放射システムを構成する水中ポンプ及び送水ポンプであることを特徴とする請求項1から4のいずれか1に記載の貯留タンク。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate