説明

貯留容器への貯留物充填補助装置

【課題】 貯留時に大きな安息角で堆積する貯留物では、空隙部が大きく充填率が低いことに鑑みて、簡単な構造で堆積した山を崩して充填率を向上させる。
【解決手段】 円筒形の上胴部1aの下端部に逆円錐形のホッパー部1bが接続され、上胴部1aの上方からペーパースラッジ灰が投下されて貯留するホッパー1の、上胴部1aの下部であってホッパー部1bとの接続部よりも適宜高さの位置に、上胴部1aの周方向の複数箇所に空気吹出口10を設ける。空気吹出口10には吹き出し弁11aとエアチャンバー11とを介してコンプレッサ(図示せず)に連通させる。堆積したペーパースラッジ灰が所定の高さに達すると、吹き出し弁11aを開放して空気吹出口10から圧縮空気を噴射させ、ペーパースラッジ灰に流動性を付与して堆積により形成された山を崩して、充填率を高くする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、中間生成物や廃棄物等を生成した装置等から給送されたり、排出されたりしたこれら生成物や廃棄物等を受け容れて、後工程での所望の処理への搬送、例えば、トラック等による運搬・搬出や、コンベヤ等での次工程への搬送に待機させる容器である貯留容器へこれら中間生成物や廃棄物を充填する際の効率を向上させるための貯留物充填補助装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、製紙工場では紙の製造工程で生じる繊維かすであるペーパースラッジをボイラーで燃焼してバイオマスエネルギーとして熱を回収し、エネルギー効率の向上を図り、循環型社会の形成のための資源の有効利用を果たしている。さらに、このペーパースラッジを燃焼させた際に発生するペーパースラッジ灰は、セメント原料や道路の路盤材、土壌改良材などの原料として有効利用することができる。
【0003】
このため、バイオマスボイラーから発生したペーパースラッジ灰は貯留容器としてのホッパーに給送されて、一定量が貯留した後に路盤材等に適した処理を施すために該ホッパーから排出される。
【0004】
ところで、岩石や石炭、砂等の粉体や粒体を貯留容器に貯留させる場合、これら粉体等の貯留物は貯留容器の上方から落下させて行う。このとき貯留容器の中心部に落下させるから、貯留物は中央部が高位となって円錐形に堆積することになる。この際、ペーパースラッジ灰は、粒子が細かく不定形の形状をしており、摩擦係数が大きいこともあって、この円錐形の斜面の角度、いわゆる安息角が大きい状態で安定する。
【0005】
安息角が大きい場合には、堆積したペーパースラッジ灰の円錐形の頂点がホッパーの上縁部に早くに到達してしまい、該円錐形とホッパーの内壁面との間に形成される空隙部が大きくなって該ホッパーにおける充填率が低く、十分な量のペーパースラッジ灰を貯留させることができなくなってしまう。
【0006】
ホッパー内で貯留物の山を崩して平たくしながら貯留すれば、空隙部が小さくなってホッパーにおけるペーパースラッジ灰の充填率を向上させられる。例えば、特許文献1には、本体容器の下部のホッパ部にホッパ壁揺動手段を設けて、ホッパ壁に同ホッパ壁を内部側に押し込む力と外部側に引き上げる力とを反復して加えるようにした、アーチブリッジ破壊装置が開示されており、この破壊装置を利用することによって貯留物の山を崩して充填率を向上させることが考えられる。
【0007】
また、特許文献2には、粉体充填容器内の粉体と気体とを分離する分離手段を設け、この分離手段で分離された粉体充填容器内の気体を吸引して排出する排出手段を備えて、粉体充填容器へ粉体の充填を行う粉体充填装置が開示されている。また、この粉体充填装置では、粉体充填容器に加震手段により振動を与えながら粉体の充填を行うことも開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2009−67400
【特許文献2】特開2002−347701
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
前記特許文献1に開示されたアーチブリッジ破壊装置では、ホッパ壁揺動手段を設ける構造であり、しかも、このホッパ壁揺動手段によってホッパ壁を内部側に押し込む力と外部側に引き上げる力とを反復して加えることによるから、該ホッパ壁揺動手段の構造が複雑となり、また、このホッパ壁揺動手段の駆動機構にも複雑な構造を要するおそれがあり、アーチブリッジ破壊装置を複雑な構造で大型化させてしまうおそれがある。
【0010】
また、特許文献2に開示された粉体充填装置は、粉体に伴われて流入する気体を吸引することによるから、粉体充填容器は密閉される構造の場合に適している。このため、上部から貯留物を落下させるホッパー等のように高い密閉性が確保されていない容器には適していない。しかも、加震手段を設ける構造とするとさらに複雑な構造となってしまい、高精度な充填量が要求される粉体充填容器に適しているものであって、例えばペーパースラッジ灰のホッパーのように充填量に精度を要求されることがない構造物には適していない。
【0011】
そこで、この発明は、簡単な構造で、特にペーパースラッジ灰のように、軽量であって安息角が大きくなってしまう貯留物を貯留するホッパーの充填率を向上させることができるようにした貯留容器への貯留物充填補助装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0012】
前記目的を達成するための技術的手段として、この発明に係る貯留容器への貯留物充填補助装置は、上方から投入された粉体や粒体等の貯留物を貯留し、投入された貯留物がほぼ円錐形に堆積し、下部から該貯留物を排出する貯留容器において、壁体の適宜な高さ位置に、貯留容器の内部に圧縮空気を噴射する空気吹出口を設け、貯留物が前記空気吹出口に達する直前から、該空気吹出口から圧縮空気を噴射することを特徴としている。
【0013】
前記空気吹出口から圧縮空気が噴射されると、貯留物の流動性が増して、堆積して形成された円錐形の山が崩されて安息角が小さくなる。このため、貯留物と貯留容器の内壁面との間の間隙が少なくなって、貯留物が貯留容器内で密に充填される。
【0014】
前記空気吹出口を設ける高さ位置は、貯留物の性状等によって決定され、例えば安息角が大きい貯留物では低い位置に、小さい貯留物では高い位置とする等のように、貯留物の性状に応じて適した位置とする。
【0015】
また、貯留物が空気吹出口に達する直前から圧縮空気を吹き出すことにより、空気吹出口が貯留物で閉塞されてしまうことを回避する。
【0016】
また、請求項2の発明に係る貯留容器への貯留物充填補助装置は、筒状の上胴部と該上胴部に連続する逆錐形のホッパー部とを備え、前記上胴部の上方から投下された粉体や粒体等の貯留物を受け容れ、前記ホッパー部の下端部から貯留物を排出する貯留容器において、前記上胴部の下部に、貯留容器の内部に圧縮空気を噴射する空気吹出口を設け、貯留物が前記空気吹出口に達する直前から、該空気吹出口から圧縮空気を噴射することを特徴としている。
【0017】
下部にホッパー部を有する貯留容器では、ホッパー部が逆錐形に形成されているから、このホッパー部に貯留される貯留物とホッパー部の内壁面との間に空隙部は形成されず、ホッパー部内では貯留物が密に貯留される。他方、上胴部では貯留物が円錐形に堆積することになるから、この円錐形を崩すことでこの上胴部における貯留物の充填率を向上させることができる。このため、前記空気吹出口を上胴部の下部に設けることとしたものである。なお、貯留物の性状に応じて空気吹出口の高さ位置を定める。
【0018】
なお、筒状の上胴部と逆錐形とを組み合わせたものであれば、円筒と逆円錐とを組み合わせた形状のものが好ましいが、上胴部が角筒でホッパー部がこの角筒に連続する逆角錐形状のものであっても構わない。
【0019】
また、請求項3の発明に係る貯留容器への貯留物充填補助装置は、前記空気吹出口は、貯留容器の周壁部の複数箇所に配してあることを特徴としている。
【0020】
空気吹出口を複数箇所に設けたもので、貯留容器の周壁部に周方向に沿って等間隔あるいは不等間隔に設けたものである。
【0021】
また、請求項4の発明に係る貯留容器への貯留物充填補助装置は、前記複数箇所に設けた空気吹出口は、高さ位置が異なっていることを特徴としている。
【0022】
貯留容器へ貯留物を、例えばベルトコンベヤで貯留物を搬送して投下する場合、貯留物はベルトコンベヤによる搬送方向に加速されるから、貯留容器の中心から偏倚した位置に投下される場合がある。この場合には、貯留物の堆積による円錐形状の頂点が貯留容器の中心から偏倚し、該円錐形の底部の高さが異なる。このため、貯留物が堆積された際に高い側の貯留物の山を効率よく崩すことができるように、空気吹出口の高さを異ならせるようにしたものである。
【0023】
また、請求項5の発明に係る貯留容器への貯留物充填補助装置は、前記圧縮空気は、空気吹出口から貯留容器の中心に向けて径方向に噴射されることを特徴としている。
【0024】
圧縮空気の噴射方向は、後述するように、貯留物に対して効率よく流動性を付与することができる方向であればよい。しかし、噴射用のノズルや開口を貯留物で目詰まりさせては不都合である。また、圧縮空気の噴射によりノズルや開口に浸入した貯留物が確実に吹き飛ばされて除去される方向であれば好ましい。そこで、噴射方向を径方向とするものである。
【0025】
また、請求項6の発明に係る貯留容器への貯留物充填補助装置は、前記貯留物がペーパースラッジ灰であることを特徴としている。
【発明の効果】
【0026】
この発明に係る貯留容器への貯留物充填補助装置によれば、圧縮空気を噴射することにより堆積した貯留物に流動性が付与されて、貯留物の山が崩される。このため、貯留物の充填率を向上させることができ、貯留容器の容量を極力有効に利用することができる。
【0027】
また、圧縮空気を吹き出させる構造であるため、圧縮空気の配管を施工することでよく、簡単な構造で確実に充填率を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】この発明に係る貯留物充填補助装置を備えた貯留容器を示す正面図であり、下部に円錐形のホッパー部を有する貯留容器を示している。
【図2】図1に示す貯留容器の平面図である。
【図3】図2に示す貯留容器の一部を拡大して示す図であり、空気吹出口を示している。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、図示した好ましい実施の形態に基づいて、この発明に係る貯留容器への貯留物充填補助装置を具体的に説明する。
【0030】
図1は貯留容器の一例として、製紙工場に設置されているペーパースラッジ灰を貯留するためのホッパー1を示す正面図であり、鋼材によって櫓状に組まれたフレーム2に支持されて設置されている。ホッパー1の上部は円筒形の上胴部1aとされており、下部は逆円錐形のホッパー部1bとされて、これら上胴部1aとホッパー部1bとが接続されて形成されている。ホッパー部1bの最下部となる逆円錐形の頂部には排出口3が設けられており、貯留されたペーパースラッジ灰をこの排出口3から落下させて排出する。なお、排出する際には排出口3の下方に、ペーパースラッジ灰の運搬車両がその受容口を臨ませて待機し、落下したペーパースラッジ灰を受け容れる。
【0031】
前記上胴部1aの下部の壁体であって、ホッパー部1bの上端から適宜な高さの位置には、図2及び図3に示すように、上胴部1aの径方向を指向した空気吹出口10が設けられている。この空気吹出口10には上胴部1aの外側に設置されたエアチャンバー11が接続されており、このエアチャンバー11には、図示しないコンプレッサに接続されて圧縮空気が供給されている。また、エアチャンバー11の吐出口には吹き出し弁11aが設けられており、この吹き出し弁11aが開放されると、前記空気吹出口10から圧縮空気がホッパー1の内部に噴射されるようにしてある。
【0032】
図2は前記ホッパー1の平面図であり、同図に示すように、前記空気吹出口10は上胴部の周囲に沿ってほぼ等間隔に設置されており、それぞれの空気吹出口10に前記エアチャンバー11が接続されている。
【0033】
ホッパー1には、上方からペーパースラッジ灰が投下されるが、貯留されたパーパースラッジ灰が所定の高さ位置に達するとそれ以上貯留することができなくなる。このため、貯留されたペーパースラッジ灰が所定に高さまで貯留されたことを検出する高さ検出手段が備えられており、その検出信号によってペーパースラッジ灰を供給することを停止するようにしてある。そこで、この高さ検出手段によって、ペーパースラッジ灰が空気吹出口10に達する直前の位置を検出し、その検出信号によって前記吹き出し弁11aを開放して空気吹出口10から圧縮空気を吹き出させるようにしてある。
【0034】
以上により構成されたこの発明に係る貯留容器への貯留物充填補助装置の作用を、以下に説明する。
【0035】
ペーパースラッジを燃料とするバイオマスボイラーの燃焼により発生したペーパースラッジ灰は、図示しない搬送装置によってホッパー1の上方から投下されてホッパー1内に貯留される。投下されたペーパースラッジ灰がホッパー部1bを満たすと、上胴部1a内にほぼ中央部に投下される。なお、ホッパー部1bにおいてもほぼ中央部に投下されるが、内壁面が逆円錐形に形成されているから、内壁面において崩れやすく、比較的小さな安息角で堆積する。上胴部1aでは内壁面が円筒形に形成されているから内壁面において崩れにくく、大きな安息角で堆積することになる。この上胴部1aに堆積したペーパースラッジ灰が所定の高さに達すると、図示しない検出手段に検出されその検出信号が出力される。
【0036】
前記検出信号が発せられると、前記吹き出し弁11aを開放して、エアチャンバー11と空気吹出口10とが連通して、圧縮空気が空気吹出口10から噴射されることになる。この圧縮空気の噴射によりペーパースラッジ灰が吹き飛ばされて流動することになる。このため、ペーパースラッジ灰が攪拌されて、堆積によって形成された円錐形の山が崩される。したがって、この円錐形と上胴部1aの内壁面との間の空隙部が埋められることになって充填率が向上し、より多くのペーパースラッジ灰を貯留することができるようになる。
【0037】
そして、ペーパースラッジ灰が上胴部1aの上部まで達すると、前記検出手段によりペーパースラッジ灰の上部が検出され、ホッパー1にペーパースラッジ灰を搬送する搬送装置が停止する。このとき、ペーパースラッジ灰が堆積して形成された円錐形の安息角が小さい状態となるため、ホッパー1内はペーパースラッジ灰で満たされて、充填率が良好な状態となる。なお、この搬送装置の停止と共に、前記吹き出し弁11aが閉止されて圧縮空気の噴射も停止する。
【0038】
以上説明した実施形態では、空気吹出口10をほぼ等しい高さで上胴部1aの周面にほぼ等間隔で設置したものとして説明したが、異なる高さ位置に設置したものであっても構わない。特に、搬送速度の変更等によってペーパースラッジ灰が投下時に搬送方向に加速される場合には、ホッパー1の中央から偏倚した位置に投下されることから、堆積して形成される円錐形の頂点が中央から偏倚し、その形状が変形して、異なる高さでホッパー1の内壁面と接触する。この場合、接触する位置が高い箇所のペーパースラッジ灰を先に崩すことによって迅速に山を崩すことができ、充填できる空隙部を迅速に確保することができ、ペーパースラッジ灰の投下を円滑に行えると共に、充填率を向上させることができる。
【0039】
また、この実施形態ではペーパースラッジ灰を貯留するための、上部が円筒形の上胴部1aで下部が逆円錐形のホッパー部1bを備えたホッパー1について説明したが、円筒形の貯留容器であって、例えば穀物等を貯留するサイロ等にもこの発明に係る貯留物充填補助装置を利用することができる。すなわち、堆積した状態で安息角が大きくなる貯留物であって、該貯留物と貯留容器の内壁面との間に大きな空隙部が形成されて、充填率を低下させてしまう場合等に有効に利用することができる。
【産業上の利用可能性】
【0040】
この発明に係る貯留容器への貯留物充填補助装置によれば、安息角が大きくなって堆積される貯留物を貯留する場合であっても、確実に充填率を向上させることができる。しかも、圧縮空気を噴射することによるから簡単な構造でよく、空気が吹き込まれても影響を受けない貯留物を貯留する貯留容器に利用できる。
【符号の説明】
【0041】
1 ホッパー(貯留容器)
1a 上胴部
1b ホッパー部
3 排出口
10 空気吹出口
11 エアチャンバー
11a 吹き出し弁

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上方から投入された粉体や粒体等の貯留物を貯留し、投入された貯留物がほぼ円錐形に堆積し、下部から該貯留物を排出する貯留容器において、
壁体の適宜な高さ位置に、貯留容器の内部に圧縮空気を噴射する空気吹出口を設け、
貯留物が前記空気吹出口に達する直前から、該空気吹出口から圧縮空気を噴射することを特徴とする貯留容器への貯留物充填補助装置。
【請求項2】
筒状の上胴部と該上胴部に連続する逆錐形のホッパー部とを備え、前記上胴部の上方から投下された粉体や粒体等の貯留物を受け容れ、前記ホッパー部の下端部から貯留物を排出する貯留容器において、
前記上胴部の下部に、貯留容器の内部に圧縮空気を噴射する空気吹出口を設け、
貯留物が前記空気吹出口に達する直前から、該空気吹出口から圧縮空気を噴射することを特徴とする貯留容器への貯留物充填補助装置。
【請求項3】
前記空気吹出口は、貯留容器の周壁部の複数箇所に配してあることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の貯留容器への貯留物充填補助装置。
【請求項4】
前記複数箇所に設けた空気吹出口は、高さ位置が異なっていることを特徴とする請求項3に記載の貯留容器への貯留物充填補助装置。
【請求項5】
前記圧縮空気は、空気吹出口から貯留容器の中心に向けて径方向に噴射されることを特徴とする請求項1から請求項4までのいずれかに記載の貯留容器への貯留物充填補助装置。
【請求項6】
前記貯留物がペーパースラッジ灰であることを特徴とする請求項2から請求項5までのいずれかに記載の貯留容器への貯留物充填補助装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公開番号】特開2011−207500(P2011−207500A)
【公開日】平成23年10月20日(2011.10.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−76628(P2010−76628)
【出願日】平成22年3月30日(2010.3.30)
【出願人】(000183484)日本製紙株式会社 (981)
【Fターム(参考)】