貯留槽用液体流動制御部材
【課題】 貯留槽の使い勝手の向上を容易に図ることのできる貯留槽用液体流動制御部材を提供する。
【解決手段】 貯留槽Tの内部に供給される液体の貯留槽Tの内部における流動を制御するために、貯留槽Tの内面に配置される取付本体2と、この取付本体2を貯留槽Tに取着するための取着手段3とを設ける。貯留槽Tは鉄鋼材料により形成する。取付本体2は樹脂により形成する。取着手段3は永久磁石3aとし、この永久磁石3aを取付本体2に固着する。取付本体2には、貯留槽Tの内面に取り付けられる取付面21と、貯留槽Tの内部を平面的に区分するかあるいは流路の確立を行うための仕切板BPを取付可能な仕切板取付部22とを設ける。
【解決手段】 貯留槽Tの内部に供給される液体の貯留槽Tの内部における流動を制御するために、貯留槽Tの内面に配置される取付本体2と、この取付本体2を貯留槽Tに取着するための取着手段3とを設ける。貯留槽Tは鉄鋼材料により形成する。取付本体2は樹脂により形成する。取着手段3は永久磁石3aとし、この永久磁石3aを取付本体2に固着する。取付本体2には、貯留槽Tの内面に取り付けられる取付面21と、貯留槽Tの内部を平面的に区分するかあるいは流路の確立を行うための仕切板BPを取付可能な仕切板取付部22とを設ける。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体が供給される貯留槽、特に、既存の貯留槽の使い勝手の向上に好適な貯留槽用液体流動制御部材に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、液体を貯留可能な貯留槽が、工作機械などにおける加工部分の冷却および潤滑などに切削油、研削液、冷却液などの液体を循環供給するクーラント供給装置や、集合住宅などにおける受水タンクから各戸へ給水する給水装置や、揚げ油を貯留したフライヤータンクを用いた業務用の食品揚げ物装置などの各種の装置に用いられている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
例えば、工作機械のクーラント供給装置に用いられる貯留槽としてのクーラントタンクは、炭素鋼、合金鋼などの鉄鋼材料により、平面矩形状に形成された底板と、この底板の四辺に接続された4つの側板により、有底四角筒状に形成されている。また、クーラントタンクの上部には、開口端を閉塞するための蓋が配設されているのが一般的である。そして、工作機械の加工部位の冷却および潤滑に使用した液体としてのクーラントをフィルタやマグネットセパレータに供給して切粉などを分離し、その後、クーラントタンクに流入させてクーラントに混入している潤滑油、作動油、不水溶性切削液などの油分を浮上させてオイルスキーマで回収する。ついで、クーラントタンク内のクーラントをポンプによって工作機械の加工部分へ供給して循環使用するようにしている。また、クーラントタンク内のクーラントは、必要に応じて濾過器およびクリーンタンクなどを経て加工部分に供給されるようになっている。
【0004】
【特許文献1】特開2003−019668号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、従来のクーラントタンクにおいては、特に、クーラントタンクの直角隅部、詳しくは、相互に隣位する側板の接続部、側板と底板との接続部(底板の辺部)、相互に隣位する側板と底板との接続部(底板の四隅)が循環使用されるクーラントの流動のない部分、すなわち、液体の流動を阻害するデッドスペース(所謂死に水の発生部分)となるので、クーラントに含まれる微細な切粉などが付着し易いとともに、底部に切粉などが沈殿して溜まり易くなり、その堆積物の腐敗によりクーラントの特性が劣化したり、悪臭を放つなどの恐れがあることから、時々、クーラントタンクの底部の清掃作業などのメンテナンスをする必要がある。
【0006】
また、クーラントタンクの清掃は、クーラントタンクからクーラントのほとんどを排出した後に、被着物および堆積物をバキュームポンプに接続したホースにより吸引することで行われている。このため、クーラントタンクの直角隅部の被着物および堆積物の除去に多大な労力と時間とを必要とするという問題点があった。
【0007】
そこで、既存の貯留槽を含む多種多様の貯留槽の直角隅部に付着あるいは堆積する付着物および堆積物を極めて少なくすることができるとともに、メンテナンスに多大な労力と時間とを必要としない使い勝手に優れたものとすることが求められている。
【0008】
また、従来のクーラントタンクにおいては、クーラントタンクに供給したクーラントの供給側から排出側にいたる順方向の流路およびこれとは逆方向の流路の確立を容易かつ確実に図ることができないという問題点があった。
【0009】
そこで、既存の貯留槽を含む多種多様の貯留槽において、供給側から排出側にいたる順方向の流路およびこれとは逆方向の流路の確立を容易かつ確実に図ることのできる使い勝手に優れたものとすることが求められている。
【0010】
本発明はこのような点に鑑みてなされたものであり、貯留槽の使い勝手の向上を容易に図ることのできる貯留槽用液体流動制御部材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前述した目的を達成するため、本発明に係る貯留槽用液体流動制御部材の特徴は、鉄鋼材料により形成された貯留槽の内部に供給される液体の貯留槽の内部における流動を制御するために、前記貯留槽の内面に配置される取付本体と、この取付本体を前記貯留槽に取着するための取着手段とを有しており、前記貯留槽が、鉄鋼材料により形成されており、前記取付本体が、樹脂により形成されており、前記取着手段が、永久磁石であり、この永久磁石が前記取付本体に固着されており、前記取付本体が、前記貯留槽の内面に取り付けられる取付面と、前記貯留槽の流路の確立を行うための仕切板を取付可能な仕切板取付部とを有している点にある。
【0012】
前記取付本体としては、全体として矩形面を底面とするほほぼ三角柱状に形成されており、前記取付本体の底面が前記取付面とされており、前記取付本体の頂部に前記仕切板を着脱可能に取り付ける嵌合凹溝を長手方向に沿って形成することにより前記仕切板取付部が構成されていることが好ましい。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係る貯留槽用液体流動制御部材によれば、取着手段によって取付本体を貯留槽の内部に容易に取り付けることができる。そして、取付本体により、貯留槽の内部における液体の流動を制御することができるので、既存の貯留槽を含む多種多様の貯留槽の使い勝手の向上を容易に図ることができるなどの極めて優れた効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明を図面に示す実施形態により説明する。
【0015】
図1および図2は本発明に係る貯留槽用液体流動制御部材の実施形態を示すものであり、図1は要部の分解斜視図、図2は貯留槽の内部に配置した設置状態を示す斜視図である。
【0016】
本実施形態の貯留槽用液体流動制御部材1は、加工部分の冷却および潤滑などに切削油、研削液、冷却液などの液体からなるクーラントを循環供給することのできる工作機械のクーラント供給装置の貯留槽としての既存のクーラントタンクTに用いるものを例示している。
【0017】
図1および図2に示すように、本実施形態の貯留槽用液体流動制御部材1は、図1に二点差線にて示すほぼ直方体状に貯留槽としてのクーラントタンクTの内面に配置される取付本体2と、この取付本体2をクーラントタンクTに取着するための取着手段3とを有している。
【0018】
前記クーラントタンクTは、炭素鋼、合金鋼などの鉄鋼材料により平面矩形状に形成された底板T1と、この底板T1の四辺に接続された4つの側板T2とにより、有底四角筒状に形成されている。
【0019】
本実施形態の取付本体2は、樹脂により形成されており、クーラントタンクTの内面の直角隅部T3に取り付けられる第1本体4と、クーラントタンクTの内面の任意の面、例えば、底面Taに取り付けられる第2本体5とを有している。なお、取付本体2の素材としては、アルミニウムなどの非鉄金属からなる非磁性体を用いることもできる。
【0020】
前記第1本体4は、クーラントタンクTの内部に供給したクーラントの円滑な流動を得るためのものであり、後に詳しく述べるように、クーラントが流動しにくく、クーラントに含まれる微細切粉などが付着および堆積しやすい直角隅部T3をなくすことができるように形成されている。
【0021】
本実施形態の第1本体4は、クーラントタンクTの内面の直角隅部T3、詳しくは、相互に隣位する2つの側板T2により形成される側接続部T3aにクーラントタンクTの高さ方向に沿って取り付けられる側面用本体6と、側板T2と底板T1との辺接続部T3bにクーラントタンクTの底面Taの辺に沿って取り付けられる底辺用本体7と、相互に隣位する2つの側板T2と底板T1とにより形成される隅接続部T3cに取り付けられる隅用本体8とを有している。
【0022】
すなわち、本実施形態の第1本体4は、3つに分割されている。また、側面用本体6および底辺用本体7のそれぞれは、配列方向に沿って複数の側面用ブロック6aと、複数の底辺用ブロック7aとにさらに分割されている。そして、隅用本体8、側面用ブロック6aおよび底辺用ブロック7aのそれぞれには、取着手段3としての円板状に形成された永久磁石3aが固着されている。
【0023】
なお、側面用ブロック6aおよび底辺用ブロック7aの数は、設計コンセプトなどの必要に応じて設定すればよく、本実施形態の分割数に限定されるものではない。
【0024】
また、側面用本体6および底辺用本体7のそれぞれを分割せずに一体に形成してもよい。
【0025】
勿論、側面用本体6、底辺用本体7および隅用本体8からなる第1本体4の全体を一体に形成してもよい。
【0026】
本実施形態の側面用ブロック6aについて、図3から図6により詳しく説明する。
【0027】
図3から図6は本発明に係る側面用ブロックの要部を示すものであり、図3は斜視図、図4は正面図、図5は図4の平面図、図6は図4の左側面図である。なお、図4から図6は、図3の左面を正面図とするとともに、異なる尺度に縮小して示してある。
【0028】
図3から図6に示すように、本実施形態の側面用本体6の一部を構成する側面用ブロック6aは、全体としてほぼ三角柱状をなすように形成されている。そして、側面用ブロック6aは、図3の両矢印にて示す上下方向が配列方向AAとされており、この配列方向AAに対して直交する側面用ブロック6aの面は、クーラントタンクTの相互に隣位する2つの側板T2により構成される2つの側面Tbのそれぞれに取り付けられるように、相互に直角をなすように配置された横長矩形状の2つの側面用取付面9と、円弧状に湾曲した2次元の曲面をなす側面用曲面10とにより形成されている。さらに、側面用ブロック6aの配列方向AAに沿った両端面のそれぞれは、配列方向AAに対して直交する平面状の側面用接続面11とされている。なお、側面用曲面10によって、側接続部T3aにクーラントの流動を阻害するデッドスペースの形成を防止するために丸みをつけてなるコーナーアール面が形成されている。
【0029】
前記2つの側面用取付面9のそれぞれには、有底の取付穴12が形成されており、この取付穴12には、取着手段3としての円板状に形成された永久磁石3aがその表面を側面用取付面9の表面と面一あるいは低くなるようにして固着されている。
【0030】
なお、側面用ブロック6aに対する永久磁石3aの固着方法は、接着剤などの接合部材を用いる構成や、永久磁石3aの一面に雄ねじを形成あるいは固着してその雄ねじを取付穴12の底面に螺入する構成や、側面用ブロック6aの成型時に永久磁石3aをインサート成型して側面用取付面9に埋設するなどの各種の構成から選択することができる。
【0031】
本実施形態の底辺用ブロック7aについて、図7から図11により詳しく説明する。
【0032】
図7から図11は本発明に係る底辺用ブロックの要部を示すものであり、図7は斜視図、図8は正面図、図9は図8の平面図、図10は図8の左側面図、図11は図8の下面図である。なお、図8から図11は、図7の背面側を正面図とするとともに、異なる尺度に縮小して示してある。また、前述した側面用ブロック6aと同一ないし相当する構成については図面中に同一の符号を付してある。
【0033】
図7から図11に示すように、本実施形態の底辺用本体7の一部を構成する底辺用ブロック7aは、樹脂により全体としてほぼ三角柱状をなすように形成されている。そして、底辺用ブロック7aは、図7の両矢印にて示す左斜め上から右斜め下方に向かう方向が配列方向ABとされており、この配列方向ABに対して直交する底辺用ブロック7aの面は、クーラントタンクTの側面Tbおよび底面Taに取り付けられるように、相互に直角をなすように配置された配列方向ABに沿って長い矩形状の2つの底辺用取付面13と、円弧状に湾曲した2次元の凹面をなす底辺用曲面14とにより形成されている。さらに、底辺用ブロック7aの配列方向ABに沿った両端面のそれぞれは、配列方向ABに対して直交する平面状の底辺用接続面15とされている。なお、底辺用曲面14によって、辺接続部T3bにクーラントの流動を阻害するデッドスペースの形成を防止するために丸みをつけてなるコーナーアール面が形成されている。
【0034】
前記2つの底辺用取付面13のそれぞれには、側面用ブロック6aの側面用取付面9と同様に、有底の取付穴12が形成されており、この取付穴12には、取着手段3としての円板状に形成された永久磁石3aがその表面を底辺用取付面13の表面と面一あるいは低くなるように固着されている。
【0035】
なお、底辺用ブロック7aに対する永久磁石3aの取り付けは、接着剤などの接合部材を用いる構成や、永久磁石3aの一面に雄ねじを形成あるいは固着してその雄ねじを取付穴12の底面に螺入する構成や、底辺用ブロック7aの成型時に永久磁石3aをインサート成型して底辺用取付面13に埋設するなどの各種の構成から選択することができる。
【0036】
本実施形態の隅用本体8について、図12から図16により詳しく説明する。
【0037】
図12から図16は本発明に係る隅用本体の要部を示すものであり、図12は斜視図、図13は正面図、図14は図13の平面図、図15は図13の左側面図、図16は図13の右側面図である。なお、図13から図16は、図12の左面を正面図とするとともに、異なる尺度に縮小して示してある。また、前述した側面用ブロック6aと同一ないし相当する構成については図面中に同一の符号を付してある。
【0038】
図12から図16に示すように、本実施形態の隅用本体8は、全体として直方体状の一角をほぼ1/4球状に穿設した形状をなすように形成されている。この隅用本体8の図12の下面は、クーラントタンクTの底面Taに取り付けられる正方形の一角が円弧状に切り欠かれた形状をなす隅用取付底面16とされている。そして、図12の左面および背面は、クーラントタンクTの相互に隣位する2つの側板T2により構成される2つの側面Tbのそれぞれに取り付けられるように、相互に直角をなすように配置された横長矩形状の2つの隅用取付側面17とされている。さらに、図12の正面および右面のそれぞれは、底辺用ブロック7aの底辺用接続面15が接続される底辺用被接続面18とされており、図12の上面は、側面用ブロック6aの側面用接続面11が接続される側面用被接続面19とされている。また、隅用取付底面16、2つの底辺用被接続面18および側面用被接続面19のそれぞれに円弧状の端縁が接続するようにほぼ1/4球状に湾曲した3次元の曲面をなす隅用本体曲面20が図12の右側部分に形成されている。なお、隅用本体曲面20によって、隅接続部T3cにクーラントの流動を阻害するデッドスペースの形成を防止するために丸みをつけてなるコーナーアール面が形成されている。
【0039】
前記隅用取付底面16および2つの隅用取付側面17のそれぞれには、側面用ブロック6aの側面用取付面9と同様に、有底の取付穴12が形成されており、この取付穴12には、取着手段3としての円板状に形成された永久磁石3aがその表面を隅用取付底面16および隅用取付側面17の表面と面一あるいは低くなるように固着されている。
【0040】
なお、隅用本体8に対する永久磁石3aの取り付けは、接着剤などの接合部材を用いる構成や、永久磁石3aの一面に雄ねじを形成あるいは固着してその雄ねじを取付穴12の底面に螺入する構成や、隅用本体8の成型時に永久磁石3aをインサート成型して隅用取付底面16および2つの隅用取付側面17のそれぞれに埋設するなどの各種の構成から選択することができる。
【0041】
本実施形態の第2本体5について、図17から図19により詳しく説明する。
【0042】
図17から図19は本発明に係る第2本体の要部を示すものであり、図17は斜視図、図18は正面図、図19は図18の平面図である。なお、図18および図19は、図17の正面を正面図とするとともに、異なる尺度に縮小して示してある。また、前述した側面用ブロック6aと同一ないし相当する構成については図面中に同一の符号を付してある。
【0043】
前記第2本体5は、クーラントタンクTの内部に供給したクーラントの円滑な流動を得るためのものであり、クーラントタンクTの内部を平面的に区分するかあるいは流路の確立を行うための仕切板BP(図2)、すなわち、クーラントタンクTに供給したクーラントに含まれる浮上油を所定の位置に溜めたり、クーラントタンクTに供給したクーラントの供給側から排出側にいたる順方向の流路およびこれとは逆方向の流路を確立する仕切板BPの設置に用いることができるようになっている。
【0044】
本実施形態においては、図2に示すように、クーラントタンクTの内部を図2の左右方向に平面的に2つに区分することのできるものを例示してある。勿論、仕切板BPの配置としては、クーラントタンクTの内部を図2の前後方向に区分したり、クーラントタンクTの内部を図2の左側のみを前後方向に区分して平面横長U字状の流路を形成するなどの各種の配置から設計コンセプトなどの必要に応じて選択することができる。
【0045】
図17から図19に示すように、本実施形態の第2本体5は、全体としてほぼ三角柱状をなすように形成されている。そして、図17の下面に示す底面は、クーラントタンクTの内部の側面Tbあるいは底面Taに取り付けられる第2本体用取付面21とされている。また、図17の上方に示す第2本体5の頂部には、仕切板BPを着脱可能に取り付けるための仕切板取付部としての嵌合凹溝22が長手方向に沿って形成されている。
【0046】
前記第2本体用取付面21には、側面用ブロック6aの側面用取付面9と同様の有底の取付穴12が複数箇所、本実施形態においては、長手方向に沿って間隔をおいて3つの取付穴12が長手方向に対して直交する方向に2列の総計6箇所に形成されている。そして、これらの取付穴12には、取着手段3としての円板状に形成された永久磁石3aがその表面を第2本体用取付面21の表面と面一あるいは低くなるように固着されている。
【0047】
なお、第2本体5に対する永久磁石3aの取り付けは、接着剤などの接合部材を用いる構成や、永久磁石3aの一面に雄ねじを形成あるいは固着してその雄ねじを取付穴12の底面に螺入する構成や、第2本体5の成型時に永久磁石3aをインサート成型して第2本体用取付面21に埋設するなどの各種の構成から選択することができる。
【0048】
また、貯留槽用液体流動制御部材1としては、設計コンセプトなどの必要に応じて、クーラントタンクTの内面に、第1本体4および第2本体5の一方のみを設置する構成とすることができる。さらに、第1本体4を設置する場合、側面用本体6、底辺用本体7および隅用本体8のうちのいずれか一つ、あるいは、二つのみをクーラントタンクTの内面に設置する構成としてもよい。
【0049】
つぎに、前述した構成からなる本実施形態の作用について説明する。
【0050】
まず、本実施形態の貯留槽用液体流動制御部材1の設置動作について説明する。
【0051】
本実施形態の貯留槽用液体流動制御部材1は、既存あるいは新規のクーラントタンクTの内部に、第1本体4および第2本体5を取り付けることにより設置する。
【0052】
例えば、まず、第1本体4の一部を構成する隅用本体8を、その隅用本体曲面20がクーラントタンクTの内側を向くように4つの隅接続部T3cのそれぞれに配置する。これにより、隅用取付底面16に固着された永久磁石3a、および、2つの隅用取付側面17に固着された永久磁石3aのそれぞれの磁力によって隅用本体8が隅接続部T3cに着脱可能に取り付けられることになる。
【0053】
ついで、底辺用ブロック7aを、その底辺用曲面14がクーラントタンクTの内側を向くように4つの辺接続部T3bのそれぞれに配列する。これにより、各底辺用ブロック7aは、その2つの底辺用取付面13に固着された永久磁石3aのそれぞれの磁力によって辺接続部T3bに着脱可能に取り付けられるとともに、各辺接続部T3bには、複数の底辺用ブロック7aからなる底辺用本体7が形成される。この時、隅用本体8に隣位する底辺用ブロック7aの底辺用接続面15が、隅用本体8の底辺用被接続面18に対して接続される。
【0054】
なお、複数の底辺用ブロック7aのうちの少なくとも1つの底辺用ブロック7aの隅用本体8の底辺用被接続面18に対して接続される長さ方向の一端側を所望のサイズで長手方向に対して直交する方向に切断して短くすることで、各種の長さに容易に対応させることができる。
【0055】
勿論、底辺用本体7を一体とした場合には、底辺用本体7の隅用本体8の底辺用被接続面18に対して接続される長さ方向の一端側を所望のサイズで長手方向に対して直交する方向に切断して短くすることで、各種の長さに容易に対応させることができる。
【0056】
ついで、側面用ブロック6aを、その側面用曲面10がクーラントタンクTの内側を向くように4つの側接続部T3aのそれぞれに配列する。これにより、各側面用ブロック6aは、その2つの側面用取付面9に固着された永久磁石3aのそれぞれの磁力によって側接続部T3aに着脱可能に取り付けられるとともに、各側接続部T3aには、複数の側面用ブロック6aからなる側面用本体6が形成される。この時、隅用本体8に隣位する側面用ブロック6aの側面用接続面11が、隅用本体8の側面用被接続面19に対して接続される。
【0057】
なお、複数の側面用ブロック6aのうちの少なくとも1つの側面用ブロック6aの隅用本体8の側面用被接続面19に対して接続される長さ方向の一端側を所望のサイズで長手方向に対して直交する方向に切断して短くすることで、各種の長さに容易に対応させることができる。
【0058】
勿論、側面用本体6を一体とした場合には、側面用本体6の隅用本体8の側面用被接続面19に対して接続される長さ方向の一端側を所望のサイズで長手方向に対して直交する方向に切断して短くすることで、各種の長さに容易に対応させることができる。
【0059】
このように、クーラントタンクTの内面の直角隅部T3に、隅用本体8、複数の底辺用ブロック7aを配列することで形成された底辺用本体7、および、複数の側面用ブロック6aを配列することで形成された側面用本体6を取り付けることで、クーラントタンクTの内面の直角隅部T3に対する第1本体4の取り付けが終了する。
【0060】
ついで、クーラントタンクTの内部に、第2本体5を取り付ける。すなわち、第2本体5の第2本体用取付面21を、例えば、図1および図2に示すように、クーラントタンクTの底面Taなどの所望の位置に配置する。これにより、第2本体5は、その第2本体用取付面21に取着された永久磁石3aのそれぞれの磁力によってクーラントタンクTの底面Taに着脱可能に取り付けられ、第2本体5の取り付けが終了する。その後、第2本体5の嵌合凹溝22に、仕切板BPの一端部を差し込むことにより、仕切板BPの取り付けが終了する。
【0061】
なお、第2本体5の取付位置は、クーラントタンクTの側面Tbであってもよく、クーラントタンクTの仕様や設計コンセプトなどの必要に応じて、クーラントタンクTの内面の任意の面から選択することができる。また、クーラントタンクTに対する第2本体5の取付数としても、クーラントタンクTのサイズや、クーラントタンクTに付設されるポンプ、分離装置の種類および位置などに応じて、複数とすることができる。
【0062】
すなわち、第2本体5の数および取付位置は、例えば、クーラントタンクTの内部を平面的に区分する場合の区分数や、クーラントタンクTの内部におけるクーラントの流路の形状(直線状、L字状、S字状、U字状など)や流路のサイズなどに応じて設定すすることができる。
【0063】
なお、上記の貯留槽用液体流動制御部材1の設置動作は、一例であり、クーラントタンクTのサイズや、仕様や、設計コンセプトなどの必要に応じて変更することができる。
【0064】
ついで、本実施形態の貯留槽用液体流動制御部材1によるクーラントの流動制御動作について説明する。
【0065】
本実施形態の貯留槽用液体流動制御部材1によれば、例えば、クーラントタンクTの図2の左側の上部から供給されたクーラントが同図の右側からポンプで汲み上げられて流動する場合、クーラントタンクTの内部が、貯留槽用液体流動制御部材1の第2本体5に取着された仕切板BPによって流動方向の上流側と、下流側との2つに区分することができる。これにより、クーラントに含まれる浮上油を、仕切板BPのクーラントの流動方向の上流側の部分に溜めることができる。また、クーラントタンクTの内面の直角隅部T3が、貯留槽用液体流動制御部材1の隅用本体曲面20、底辺用曲面14、および、側面用曲面10によってコーナーアール面を備えた円滑な曲面とされているので、クーラントの供給側から排出側への流動を円滑にすることができる。その結果、クーラントタンクTの内部におけるクーラントの流動を、デッドスペースが発生しないように円滑に制御することができるので、クーラントに含まれる微細な切粉などがクーラントタンクTの内面の隅に付着あるいは堆積するのを極めて少なくすることができる。
【0066】
ついで、本実施形態の貯留槽用液体流動制御部材1を設置したクーラントタンクTの付着物や堆積物の清掃などのメンテナンス動作について説明する。
【0067】
本実施形態のクーラントタンクTの付着物や堆積物の清掃などのメンテナンスは、クーラントタンクTから取付本体2を取り外すことにより行う。この時、取付本体2が、クーラントタンクTの内面に永久磁石3aの磁力によって固着されているので、取付本体2のクーラントタンクTからの取り外しを人力によって容易に行うことができる。そして、クーラントタンクTから取付本体2を取り外すと、クーラントタンクTの直角隅部T3には付着物や堆積物が存在しないので、クーラントタンクTの内面から被着物および堆積物をバキュームポンプに接続したホースにより吸引する際の作業性が格段に向上し、短時間で終了できる。その結果、クーラントタンクTの清掃を短時間で容易に行うことができる。
【0068】
すなわち、本実施形態の貯留槽用液体流動制御部材1によれば、クーラントがクーラントタンクTの内部の全体で良好な流動状態となるので、クーラントタンクTの内面の隅に付着あるいは堆積しようとする微細な固体をクーラントの流動によって強制的に移動することができるので、クーラントタンクTの内面の直角角部に付着あるいは堆積する付着物および堆積物を極めて少なくすることができるとともに、クーラントタンクTの内面の直角角部に付着物および堆積物が存在しないので、クーラントタンクTの内面の付着物や堆積物の清掃などのメンテナンスの頻度を低減することができるとともに、メンテナンスに要する労力と時間とを少なくすることができる。
【0069】
したがって、本実施形態の貯留槽用液体流動制御部材1によれば、貯留槽としてのクーラントタンクTの使い勝手の向上を容易に図ることができる。
【0070】
また、本実施形態の貯留槽用液体流動制御部材1によれば、貯留槽としてのクーラントタンクTの内面に配置される取付本体2と、この取付本体2をクーラントタンクTに取着するための取着手段3とを有しているので、クーラントタンクTの内面に、貯留槽用液体流動制御部材1を簡単な操作によって容易に設置することができるとともに、既存のクーラントタンクTに設置することが容易にできるので、既存のクーラントタンクTの高性能化に寄与できる。
【0071】
さらに、本実施形態の貯留槽用液体流動制御部材1によれば、クーラントタンクTが鉄鋼材料によって形成されており、取付本体2が樹脂により形成されており、取着手段3が永久磁石3aであり、この永久磁石3aが取付本体2に固着されているので、クーラントタンクTに対する貯留槽用液体流動制御部材1の着脱を容易に行うことができるとともに、貯留槽用液体流動制御部材1の既存のクーラントタンクTに対する取り付けを容易に行うことができる。
【0072】
さらにまた、本実施形態の貯留槽用液体流動制御部材1によれば、取付本体2が、貯留槽としてのクーラントタンクTの直角隅部T3に取り付けられる取付面と、直角隅部T3に液体としてのクーラントの流動を阻害するデッドスペースの形成を防止するための丸みをつけてなるコーナーアール面とを有しているので、クーラントタンクTの内面への取り付けと、クーラントの流動の円滑化との両者を容易かつ確実に行うことができる。
【0073】
また、本実施形態の貯留槽用液体流動制御部材1によれば、取付本体2が、貯留槽としてのクーラントタンクTの内面に取り付けられる取付面と、クーラントタンクTの内部を平面的に区分するかあるいは流路の確立を行うための仕切板BPを取付可能な仕切板取付部とを有しているので、クーラントタンクTに供給したクーラントに含まれる浮上油を溜めたり、クーラントタンクTに供給したクーラントの供給側から排出側にいたる順方向の流路およびこれとは逆方向の流路の確立を容易かつ確実に図ることができる。
【0074】
またさらに、本実施形態の貯留槽用液体流動制御部材1によれば、取付本体2が、第1本体4と第2本体5とを有しており、第1本体4が、貯留槽としてのクーラントタンクTの直角隅部T3に取り付けるための取付面と、直角隅部T3に液体としてのクーラントの流動を阻害するデッドスペースの形成を防止するための丸みをつけるコーナーアール面とを有しており、第2本体5が、貯留槽としてのクーラントタンクTの内面に取り付けられる取付面と、クーラントタンクTの内部を平面的に区分するかあるいは流路の確立を行うための仕切板BPを取付可能な仕切板取付部とを有しているので、クーラントタンクTの内面への取り付けと、クーラントの流動のさらなる円滑化との両者を容易かつ確実におこなうことができる。
【0075】
さらに、本実施形態の貯留槽用液体流動制御部材1によれば、第1本体4が、側面用本体6と、底辺用本体7と、隅用本体8とに3分割されているので、クーラントタンクTの多種多様のサイズに、取付本体2のサイズを容易に適合させることができる。このように第1本体4を複数に分割することで、各種のサイズの貯留槽に対して部品の共通化を図ることができるとともに、保管および物流におけるスペースを小さくすることができるので、低コスト化に寄与する。すなわち、側面用本体6および底辺用本体7のそれぞれを所定長さの長尺の標準品として製造し、クーラントタンクTのサイズに応じて、標準品の1つの長さを切断によって調整することにより、クーラントタンクTの多種多様のサイズに容易に対応することができるので、標準化および低コスト化を図ることができる。なお、標準品の長さ調整は、出荷時かあるいは設置現場において行うことができる。
【0076】
さらに、本実施形態の貯留槽用液体流動制御部材1によれば、側面用本体6および底辺用本体7が、複数の側面用ブロック6aおよび複数の底辺用部ブロック体にさらに分割されているので、クーラントタンクTの多種多様のサイズに、取付本体2のサイズをより容易に適合させることができる。すなわち、側面用ブロック6aおよび底辺用ブロック7aを標準品とし、クーラントタンクTのサイズに応じて必要な数を選択することで、クーラントタンクTの多種多様のサイズに容易に対応することができるので、標準化および低コスト化をより確実に図ることができる。
【0077】
本発明の貯留槽用液体流動制御部材は、集合住宅などにおける受水タンクから各戸へ給水する給水装置や、揚げ油を貯留したフライヤータンクを用いた業務用の食品揚げ物装置などの各種の液体清浄化装置に用いることができる。
【0078】
なお、本発明は、前述した実施形態に限定されるものではなく、必要に応じて種々の変更が可能である。例えば、貯留槽がオーステナイト系ステンレスあるいは樹脂などの非磁性体により形成されている場合には、貯留槽の外側に、磁性体により形成された吸着片あるいは磁石を取着手段としての磁石と対向するように配設するとよい。
【図面の簡単な説明】
【0079】
【図1】本発明に係る貯留槽用液体流動制御部材の実施形態の要部を簡略化して示す分解斜視図
【図2】本発明に係る貯留槽用液体流動制御部材の実施形態を貯留槽の内部に配置した設置状態の要部を模式的に示す斜視図
【図3】本発明に係る貯留槽用液体流動制御部材の実施形態の側面用ブロックの要部を示す斜視図
【図4】本発明に係る貯留槽用液体流動制御部材の実施形態の側面用ブロックの要部を示す正面図
【図5】図4の平面図
【図6】図4の左側面図
【図7】本発明に係る貯留槽用液体流動制御部材の実施形態の底辺用ブロックの要部を示す斜視図
【図8】本発明に係る貯留槽用液体流動制御部材の実施形態の底辺用ブロックの要部を示す正面図
【図9】図8の平面図
【図10】図8の左側面図
【図11】図8の下面図
【図12】本発明に係る貯留槽用液体流動制御部材の実施形態の隅用本体の要部を示す斜視図
【図13】本発明に係る貯留槽用液体流動制御部材の実施形態の隅用本体の要部を示す正面図
【図14】図13の平面図
【図15】図13の左側面図
【図16】図13の右側面図
【図17】本発明に係る貯留槽用液体流動制御部材の実施形態の第2本体の要部を示す斜視図
【図18】本発明に係る貯留槽用液体流動制御部材の実施形態の第2本体の要部を示す正面図
【図19】図18の平面図
【符号の説明】
【0080】
1 貯留槽用液体流動制御部
2 取付本体
3 取着手段
3a 永久磁石
4 第1本体
5 第2本体
6 側面用本体
6a 側面用ブロック
7 底辺用本体
7a 底辺用ブロック
8 隅用本体
9 側面用取付面
10 側面用曲面
13 底辺用取付面
14 底辺用曲面
16 隅用取付底面
17 隅用取付側面
20 隅用曲面
21 第2本体用取付面
22 嵌合凹溝
T クーラントタンク
T3 直角隅部
T3a 側接続部
T3b 辺接続部
T3c 隅接続部
BP 仕切板
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体が供給される貯留槽、特に、既存の貯留槽の使い勝手の向上に好適な貯留槽用液体流動制御部材に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、液体を貯留可能な貯留槽が、工作機械などにおける加工部分の冷却および潤滑などに切削油、研削液、冷却液などの液体を循環供給するクーラント供給装置や、集合住宅などにおける受水タンクから各戸へ給水する給水装置や、揚げ油を貯留したフライヤータンクを用いた業務用の食品揚げ物装置などの各種の装置に用いられている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
例えば、工作機械のクーラント供給装置に用いられる貯留槽としてのクーラントタンクは、炭素鋼、合金鋼などの鉄鋼材料により、平面矩形状に形成された底板と、この底板の四辺に接続された4つの側板により、有底四角筒状に形成されている。また、クーラントタンクの上部には、開口端を閉塞するための蓋が配設されているのが一般的である。そして、工作機械の加工部位の冷却および潤滑に使用した液体としてのクーラントをフィルタやマグネットセパレータに供給して切粉などを分離し、その後、クーラントタンクに流入させてクーラントに混入している潤滑油、作動油、不水溶性切削液などの油分を浮上させてオイルスキーマで回収する。ついで、クーラントタンク内のクーラントをポンプによって工作機械の加工部分へ供給して循環使用するようにしている。また、クーラントタンク内のクーラントは、必要に応じて濾過器およびクリーンタンクなどを経て加工部分に供給されるようになっている。
【0004】
【特許文献1】特開2003−019668号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、従来のクーラントタンクにおいては、特に、クーラントタンクの直角隅部、詳しくは、相互に隣位する側板の接続部、側板と底板との接続部(底板の辺部)、相互に隣位する側板と底板との接続部(底板の四隅)が循環使用されるクーラントの流動のない部分、すなわち、液体の流動を阻害するデッドスペース(所謂死に水の発生部分)となるので、クーラントに含まれる微細な切粉などが付着し易いとともに、底部に切粉などが沈殿して溜まり易くなり、その堆積物の腐敗によりクーラントの特性が劣化したり、悪臭を放つなどの恐れがあることから、時々、クーラントタンクの底部の清掃作業などのメンテナンスをする必要がある。
【0006】
また、クーラントタンクの清掃は、クーラントタンクからクーラントのほとんどを排出した後に、被着物および堆積物をバキュームポンプに接続したホースにより吸引することで行われている。このため、クーラントタンクの直角隅部の被着物および堆積物の除去に多大な労力と時間とを必要とするという問題点があった。
【0007】
そこで、既存の貯留槽を含む多種多様の貯留槽の直角隅部に付着あるいは堆積する付着物および堆積物を極めて少なくすることができるとともに、メンテナンスに多大な労力と時間とを必要としない使い勝手に優れたものとすることが求められている。
【0008】
また、従来のクーラントタンクにおいては、クーラントタンクに供給したクーラントの供給側から排出側にいたる順方向の流路およびこれとは逆方向の流路の確立を容易かつ確実に図ることができないという問題点があった。
【0009】
そこで、既存の貯留槽を含む多種多様の貯留槽において、供給側から排出側にいたる順方向の流路およびこれとは逆方向の流路の確立を容易かつ確実に図ることのできる使い勝手に優れたものとすることが求められている。
【0010】
本発明はこのような点に鑑みてなされたものであり、貯留槽の使い勝手の向上を容易に図ることのできる貯留槽用液体流動制御部材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前述した目的を達成するため、本発明に係る貯留槽用液体流動制御部材の特徴は、鉄鋼材料により形成された貯留槽の内部に供給される液体の貯留槽の内部における流動を制御するために、前記貯留槽の内面に配置される取付本体と、この取付本体を前記貯留槽に取着するための取着手段とを有しており、前記貯留槽が、鉄鋼材料により形成されており、前記取付本体が、樹脂により形成されており、前記取着手段が、永久磁石であり、この永久磁石が前記取付本体に固着されており、前記取付本体が、前記貯留槽の内面に取り付けられる取付面と、前記貯留槽の流路の確立を行うための仕切板を取付可能な仕切板取付部とを有している点にある。
【0012】
前記取付本体としては、全体として矩形面を底面とするほほぼ三角柱状に形成されており、前記取付本体の底面が前記取付面とされており、前記取付本体の頂部に前記仕切板を着脱可能に取り付ける嵌合凹溝を長手方向に沿って形成することにより前記仕切板取付部が構成されていることが好ましい。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係る貯留槽用液体流動制御部材によれば、取着手段によって取付本体を貯留槽の内部に容易に取り付けることができる。そして、取付本体により、貯留槽の内部における液体の流動を制御することができるので、既存の貯留槽を含む多種多様の貯留槽の使い勝手の向上を容易に図ることができるなどの極めて優れた効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明を図面に示す実施形態により説明する。
【0015】
図1および図2は本発明に係る貯留槽用液体流動制御部材の実施形態を示すものであり、図1は要部の分解斜視図、図2は貯留槽の内部に配置した設置状態を示す斜視図である。
【0016】
本実施形態の貯留槽用液体流動制御部材1は、加工部分の冷却および潤滑などに切削油、研削液、冷却液などの液体からなるクーラントを循環供給することのできる工作機械のクーラント供給装置の貯留槽としての既存のクーラントタンクTに用いるものを例示している。
【0017】
図1および図2に示すように、本実施形態の貯留槽用液体流動制御部材1は、図1に二点差線にて示すほぼ直方体状に貯留槽としてのクーラントタンクTの内面に配置される取付本体2と、この取付本体2をクーラントタンクTに取着するための取着手段3とを有している。
【0018】
前記クーラントタンクTは、炭素鋼、合金鋼などの鉄鋼材料により平面矩形状に形成された底板T1と、この底板T1の四辺に接続された4つの側板T2とにより、有底四角筒状に形成されている。
【0019】
本実施形態の取付本体2は、樹脂により形成されており、クーラントタンクTの内面の直角隅部T3に取り付けられる第1本体4と、クーラントタンクTの内面の任意の面、例えば、底面Taに取り付けられる第2本体5とを有している。なお、取付本体2の素材としては、アルミニウムなどの非鉄金属からなる非磁性体を用いることもできる。
【0020】
前記第1本体4は、クーラントタンクTの内部に供給したクーラントの円滑な流動を得るためのものであり、後に詳しく述べるように、クーラントが流動しにくく、クーラントに含まれる微細切粉などが付着および堆積しやすい直角隅部T3をなくすことができるように形成されている。
【0021】
本実施形態の第1本体4は、クーラントタンクTの内面の直角隅部T3、詳しくは、相互に隣位する2つの側板T2により形成される側接続部T3aにクーラントタンクTの高さ方向に沿って取り付けられる側面用本体6と、側板T2と底板T1との辺接続部T3bにクーラントタンクTの底面Taの辺に沿って取り付けられる底辺用本体7と、相互に隣位する2つの側板T2と底板T1とにより形成される隅接続部T3cに取り付けられる隅用本体8とを有している。
【0022】
すなわち、本実施形態の第1本体4は、3つに分割されている。また、側面用本体6および底辺用本体7のそれぞれは、配列方向に沿って複数の側面用ブロック6aと、複数の底辺用ブロック7aとにさらに分割されている。そして、隅用本体8、側面用ブロック6aおよび底辺用ブロック7aのそれぞれには、取着手段3としての円板状に形成された永久磁石3aが固着されている。
【0023】
なお、側面用ブロック6aおよび底辺用ブロック7aの数は、設計コンセプトなどの必要に応じて設定すればよく、本実施形態の分割数に限定されるものではない。
【0024】
また、側面用本体6および底辺用本体7のそれぞれを分割せずに一体に形成してもよい。
【0025】
勿論、側面用本体6、底辺用本体7および隅用本体8からなる第1本体4の全体を一体に形成してもよい。
【0026】
本実施形態の側面用ブロック6aについて、図3から図6により詳しく説明する。
【0027】
図3から図6は本発明に係る側面用ブロックの要部を示すものであり、図3は斜視図、図4は正面図、図5は図4の平面図、図6は図4の左側面図である。なお、図4から図6は、図3の左面を正面図とするとともに、異なる尺度に縮小して示してある。
【0028】
図3から図6に示すように、本実施形態の側面用本体6の一部を構成する側面用ブロック6aは、全体としてほぼ三角柱状をなすように形成されている。そして、側面用ブロック6aは、図3の両矢印にて示す上下方向が配列方向AAとされており、この配列方向AAに対して直交する側面用ブロック6aの面は、クーラントタンクTの相互に隣位する2つの側板T2により構成される2つの側面Tbのそれぞれに取り付けられるように、相互に直角をなすように配置された横長矩形状の2つの側面用取付面9と、円弧状に湾曲した2次元の曲面をなす側面用曲面10とにより形成されている。さらに、側面用ブロック6aの配列方向AAに沿った両端面のそれぞれは、配列方向AAに対して直交する平面状の側面用接続面11とされている。なお、側面用曲面10によって、側接続部T3aにクーラントの流動を阻害するデッドスペースの形成を防止するために丸みをつけてなるコーナーアール面が形成されている。
【0029】
前記2つの側面用取付面9のそれぞれには、有底の取付穴12が形成されており、この取付穴12には、取着手段3としての円板状に形成された永久磁石3aがその表面を側面用取付面9の表面と面一あるいは低くなるようにして固着されている。
【0030】
なお、側面用ブロック6aに対する永久磁石3aの固着方法は、接着剤などの接合部材を用いる構成や、永久磁石3aの一面に雄ねじを形成あるいは固着してその雄ねじを取付穴12の底面に螺入する構成や、側面用ブロック6aの成型時に永久磁石3aをインサート成型して側面用取付面9に埋設するなどの各種の構成から選択することができる。
【0031】
本実施形態の底辺用ブロック7aについて、図7から図11により詳しく説明する。
【0032】
図7から図11は本発明に係る底辺用ブロックの要部を示すものであり、図7は斜視図、図8は正面図、図9は図8の平面図、図10は図8の左側面図、図11は図8の下面図である。なお、図8から図11は、図7の背面側を正面図とするとともに、異なる尺度に縮小して示してある。また、前述した側面用ブロック6aと同一ないし相当する構成については図面中に同一の符号を付してある。
【0033】
図7から図11に示すように、本実施形態の底辺用本体7の一部を構成する底辺用ブロック7aは、樹脂により全体としてほぼ三角柱状をなすように形成されている。そして、底辺用ブロック7aは、図7の両矢印にて示す左斜め上から右斜め下方に向かう方向が配列方向ABとされており、この配列方向ABに対して直交する底辺用ブロック7aの面は、クーラントタンクTの側面Tbおよび底面Taに取り付けられるように、相互に直角をなすように配置された配列方向ABに沿って長い矩形状の2つの底辺用取付面13と、円弧状に湾曲した2次元の凹面をなす底辺用曲面14とにより形成されている。さらに、底辺用ブロック7aの配列方向ABに沿った両端面のそれぞれは、配列方向ABに対して直交する平面状の底辺用接続面15とされている。なお、底辺用曲面14によって、辺接続部T3bにクーラントの流動を阻害するデッドスペースの形成を防止するために丸みをつけてなるコーナーアール面が形成されている。
【0034】
前記2つの底辺用取付面13のそれぞれには、側面用ブロック6aの側面用取付面9と同様に、有底の取付穴12が形成されており、この取付穴12には、取着手段3としての円板状に形成された永久磁石3aがその表面を底辺用取付面13の表面と面一あるいは低くなるように固着されている。
【0035】
なお、底辺用ブロック7aに対する永久磁石3aの取り付けは、接着剤などの接合部材を用いる構成や、永久磁石3aの一面に雄ねじを形成あるいは固着してその雄ねじを取付穴12の底面に螺入する構成や、底辺用ブロック7aの成型時に永久磁石3aをインサート成型して底辺用取付面13に埋設するなどの各種の構成から選択することができる。
【0036】
本実施形態の隅用本体8について、図12から図16により詳しく説明する。
【0037】
図12から図16は本発明に係る隅用本体の要部を示すものであり、図12は斜視図、図13は正面図、図14は図13の平面図、図15は図13の左側面図、図16は図13の右側面図である。なお、図13から図16は、図12の左面を正面図とするとともに、異なる尺度に縮小して示してある。また、前述した側面用ブロック6aと同一ないし相当する構成については図面中に同一の符号を付してある。
【0038】
図12から図16に示すように、本実施形態の隅用本体8は、全体として直方体状の一角をほぼ1/4球状に穿設した形状をなすように形成されている。この隅用本体8の図12の下面は、クーラントタンクTの底面Taに取り付けられる正方形の一角が円弧状に切り欠かれた形状をなす隅用取付底面16とされている。そして、図12の左面および背面は、クーラントタンクTの相互に隣位する2つの側板T2により構成される2つの側面Tbのそれぞれに取り付けられるように、相互に直角をなすように配置された横長矩形状の2つの隅用取付側面17とされている。さらに、図12の正面および右面のそれぞれは、底辺用ブロック7aの底辺用接続面15が接続される底辺用被接続面18とされており、図12の上面は、側面用ブロック6aの側面用接続面11が接続される側面用被接続面19とされている。また、隅用取付底面16、2つの底辺用被接続面18および側面用被接続面19のそれぞれに円弧状の端縁が接続するようにほぼ1/4球状に湾曲した3次元の曲面をなす隅用本体曲面20が図12の右側部分に形成されている。なお、隅用本体曲面20によって、隅接続部T3cにクーラントの流動を阻害するデッドスペースの形成を防止するために丸みをつけてなるコーナーアール面が形成されている。
【0039】
前記隅用取付底面16および2つの隅用取付側面17のそれぞれには、側面用ブロック6aの側面用取付面9と同様に、有底の取付穴12が形成されており、この取付穴12には、取着手段3としての円板状に形成された永久磁石3aがその表面を隅用取付底面16および隅用取付側面17の表面と面一あるいは低くなるように固着されている。
【0040】
なお、隅用本体8に対する永久磁石3aの取り付けは、接着剤などの接合部材を用いる構成や、永久磁石3aの一面に雄ねじを形成あるいは固着してその雄ねじを取付穴12の底面に螺入する構成や、隅用本体8の成型時に永久磁石3aをインサート成型して隅用取付底面16および2つの隅用取付側面17のそれぞれに埋設するなどの各種の構成から選択することができる。
【0041】
本実施形態の第2本体5について、図17から図19により詳しく説明する。
【0042】
図17から図19は本発明に係る第2本体の要部を示すものであり、図17は斜視図、図18は正面図、図19は図18の平面図である。なお、図18および図19は、図17の正面を正面図とするとともに、異なる尺度に縮小して示してある。また、前述した側面用ブロック6aと同一ないし相当する構成については図面中に同一の符号を付してある。
【0043】
前記第2本体5は、クーラントタンクTの内部に供給したクーラントの円滑な流動を得るためのものであり、クーラントタンクTの内部を平面的に区分するかあるいは流路の確立を行うための仕切板BP(図2)、すなわち、クーラントタンクTに供給したクーラントに含まれる浮上油を所定の位置に溜めたり、クーラントタンクTに供給したクーラントの供給側から排出側にいたる順方向の流路およびこれとは逆方向の流路を確立する仕切板BPの設置に用いることができるようになっている。
【0044】
本実施形態においては、図2に示すように、クーラントタンクTの内部を図2の左右方向に平面的に2つに区分することのできるものを例示してある。勿論、仕切板BPの配置としては、クーラントタンクTの内部を図2の前後方向に区分したり、クーラントタンクTの内部を図2の左側のみを前後方向に区分して平面横長U字状の流路を形成するなどの各種の配置から設計コンセプトなどの必要に応じて選択することができる。
【0045】
図17から図19に示すように、本実施形態の第2本体5は、全体としてほぼ三角柱状をなすように形成されている。そして、図17の下面に示す底面は、クーラントタンクTの内部の側面Tbあるいは底面Taに取り付けられる第2本体用取付面21とされている。また、図17の上方に示す第2本体5の頂部には、仕切板BPを着脱可能に取り付けるための仕切板取付部としての嵌合凹溝22が長手方向に沿って形成されている。
【0046】
前記第2本体用取付面21には、側面用ブロック6aの側面用取付面9と同様の有底の取付穴12が複数箇所、本実施形態においては、長手方向に沿って間隔をおいて3つの取付穴12が長手方向に対して直交する方向に2列の総計6箇所に形成されている。そして、これらの取付穴12には、取着手段3としての円板状に形成された永久磁石3aがその表面を第2本体用取付面21の表面と面一あるいは低くなるように固着されている。
【0047】
なお、第2本体5に対する永久磁石3aの取り付けは、接着剤などの接合部材を用いる構成や、永久磁石3aの一面に雄ねじを形成あるいは固着してその雄ねじを取付穴12の底面に螺入する構成や、第2本体5の成型時に永久磁石3aをインサート成型して第2本体用取付面21に埋設するなどの各種の構成から選択することができる。
【0048】
また、貯留槽用液体流動制御部材1としては、設計コンセプトなどの必要に応じて、クーラントタンクTの内面に、第1本体4および第2本体5の一方のみを設置する構成とすることができる。さらに、第1本体4を設置する場合、側面用本体6、底辺用本体7および隅用本体8のうちのいずれか一つ、あるいは、二つのみをクーラントタンクTの内面に設置する構成としてもよい。
【0049】
つぎに、前述した構成からなる本実施形態の作用について説明する。
【0050】
まず、本実施形態の貯留槽用液体流動制御部材1の設置動作について説明する。
【0051】
本実施形態の貯留槽用液体流動制御部材1は、既存あるいは新規のクーラントタンクTの内部に、第1本体4および第2本体5を取り付けることにより設置する。
【0052】
例えば、まず、第1本体4の一部を構成する隅用本体8を、その隅用本体曲面20がクーラントタンクTの内側を向くように4つの隅接続部T3cのそれぞれに配置する。これにより、隅用取付底面16に固着された永久磁石3a、および、2つの隅用取付側面17に固着された永久磁石3aのそれぞれの磁力によって隅用本体8が隅接続部T3cに着脱可能に取り付けられることになる。
【0053】
ついで、底辺用ブロック7aを、その底辺用曲面14がクーラントタンクTの内側を向くように4つの辺接続部T3bのそれぞれに配列する。これにより、各底辺用ブロック7aは、その2つの底辺用取付面13に固着された永久磁石3aのそれぞれの磁力によって辺接続部T3bに着脱可能に取り付けられるとともに、各辺接続部T3bには、複数の底辺用ブロック7aからなる底辺用本体7が形成される。この時、隅用本体8に隣位する底辺用ブロック7aの底辺用接続面15が、隅用本体8の底辺用被接続面18に対して接続される。
【0054】
なお、複数の底辺用ブロック7aのうちの少なくとも1つの底辺用ブロック7aの隅用本体8の底辺用被接続面18に対して接続される長さ方向の一端側を所望のサイズで長手方向に対して直交する方向に切断して短くすることで、各種の長さに容易に対応させることができる。
【0055】
勿論、底辺用本体7を一体とした場合には、底辺用本体7の隅用本体8の底辺用被接続面18に対して接続される長さ方向の一端側を所望のサイズで長手方向に対して直交する方向に切断して短くすることで、各種の長さに容易に対応させることができる。
【0056】
ついで、側面用ブロック6aを、その側面用曲面10がクーラントタンクTの内側を向くように4つの側接続部T3aのそれぞれに配列する。これにより、各側面用ブロック6aは、その2つの側面用取付面9に固着された永久磁石3aのそれぞれの磁力によって側接続部T3aに着脱可能に取り付けられるとともに、各側接続部T3aには、複数の側面用ブロック6aからなる側面用本体6が形成される。この時、隅用本体8に隣位する側面用ブロック6aの側面用接続面11が、隅用本体8の側面用被接続面19に対して接続される。
【0057】
なお、複数の側面用ブロック6aのうちの少なくとも1つの側面用ブロック6aの隅用本体8の側面用被接続面19に対して接続される長さ方向の一端側を所望のサイズで長手方向に対して直交する方向に切断して短くすることで、各種の長さに容易に対応させることができる。
【0058】
勿論、側面用本体6を一体とした場合には、側面用本体6の隅用本体8の側面用被接続面19に対して接続される長さ方向の一端側を所望のサイズで長手方向に対して直交する方向に切断して短くすることで、各種の長さに容易に対応させることができる。
【0059】
このように、クーラントタンクTの内面の直角隅部T3に、隅用本体8、複数の底辺用ブロック7aを配列することで形成された底辺用本体7、および、複数の側面用ブロック6aを配列することで形成された側面用本体6を取り付けることで、クーラントタンクTの内面の直角隅部T3に対する第1本体4の取り付けが終了する。
【0060】
ついで、クーラントタンクTの内部に、第2本体5を取り付ける。すなわち、第2本体5の第2本体用取付面21を、例えば、図1および図2に示すように、クーラントタンクTの底面Taなどの所望の位置に配置する。これにより、第2本体5は、その第2本体用取付面21に取着された永久磁石3aのそれぞれの磁力によってクーラントタンクTの底面Taに着脱可能に取り付けられ、第2本体5の取り付けが終了する。その後、第2本体5の嵌合凹溝22に、仕切板BPの一端部を差し込むことにより、仕切板BPの取り付けが終了する。
【0061】
なお、第2本体5の取付位置は、クーラントタンクTの側面Tbであってもよく、クーラントタンクTの仕様や設計コンセプトなどの必要に応じて、クーラントタンクTの内面の任意の面から選択することができる。また、クーラントタンクTに対する第2本体5の取付数としても、クーラントタンクTのサイズや、クーラントタンクTに付設されるポンプ、分離装置の種類および位置などに応じて、複数とすることができる。
【0062】
すなわち、第2本体5の数および取付位置は、例えば、クーラントタンクTの内部を平面的に区分する場合の区分数や、クーラントタンクTの内部におけるクーラントの流路の形状(直線状、L字状、S字状、U字状など)や流路のサイズなどに応じて設定すすることができる。
【0063】
なお、上記の貯留槽用液体流動制御部材1の設置動作は、一例であり、クーラントタンクTのサイズや、仕様や、設計コンセプトなどの必要に応じて変更することができる。
【0064】
ついで、本実施形態の貯留槽用液体流動制御部材1によるクーラントの流動制御動作について説明する。
【0065】
本実施形態の貯留槽用液体流動制御部材1によれば、例えば、クーラントタンクTの図2の左側の上部から供給されたクーラントが同図の右側からポンプで汲み上げられて流動する場合、クーラントタンクTの内部が、貯留槽用液体流動制御部材1の第2本体5に取着された仕切板BPによって流動方向の上流側と、下流側との2つに区分することができる。これにより、クーラントに含まれる浮上油を、仕切板BPのクーラントの流動方向の上流側の部分に溜めることができる。また、クーラントタンクTの内面の直角隅部T3が、貯留槽用液体流動制御部材1の隅用本体曲面20、底辺用曲面14、および、側面用曲面10によってコーナーアール面を備えた円滑な曲面とされているので、クーラントの供給側から排出側への流動を円滑にすることができる。その結果、クーラントタンクTの内部におけるクーラントの流動を、デッドスペースが発生しないように円滑に制御することができるので、クーラントに含まれる微細な切粉などがクーラントタンクTの内面の隅に付着あるいは堆積するのを極めて少なくすることができる。
【0066】
ついで、本実施形態の貯留槽用液体流動制御部材1を設置したクーラントタンクTの付着物や堆積物の清掃などのメンテナンス動作について説明する。
【0067】
本実施形態のクーラントタンクTの付着物や堆積物の清掃などのメンテナンスは、クーラントタンクTから取付本体2を取り外すことにより行う。この時、取付本体2が、クーラントタンクTの内面に永久磁石3aの磁力によって固着されているので、取付本体2のクーラントタンクTからの取り外しを人力によって容易に行うことができる。そして、クーラントタンクTから取付本体2を取り外すと、クーラントタンクTの直角隅部T3には付着物や堆積物が存在しないので、クーラントタンクTの内面から被着物および堆積物をバキュームポンプに接続したホースにより吸引する際の作業性が格段に向上し、短時間で終了できる。その結果、クーラントタンクTの清掃を短時間で容易に行うことができる。
【0068】
すなわち、本実施形態の貯留槽用液体流動制御部材1によれば、クーラントがクーラントタンクTの内部の全体で良好な流動状態となるので、クーラントタンクTの内面の隅に付着あるいは堆積しようとする微細な固体をクーラントの流動によって強制的に移動することができるので、クーラントタンクTの内面の直角角部に付着あるいは堆積する付着物および堆積物を極めて少なくすることができるとともに、クーラントタンクTの内面の直角角部に付着物および堆積物が存在しないので、クーラントタンクTの内面の付着物や堆積物の清掃などのメンテナンスの頻度を低減することができるとともに、メンテナンスに要する労力と時間とを少なくすることができる。
【0069】
したがって、本実施形態の貯留槽用液体流動制御部材1によれば、貯留槽としてのクーラントタンクTの使い勝手の向上を容易に図ることができる。
【0070】
また、本実施形態の貯留槽用液体流動制御部材1によれば、貯留槽としてのクーラントタンクTの内面に配置される取付本体2と、この取付本体2をクーラントタンクTに取着するための取着手段3とを有しているので、クーラントタンクTの内面に、貯留槽用液体流動制御部材1を簡単な操作によって容易に設置することができるとともに、既存のクーラントタンクTに設置することが容易にできるので、既存のクーラントタンクTの高性能化に寄与できる。
【0071】
さらに、本実施形態の貯留槽用液体流動制御部材1によれば、クーラントタンクTが鉄鋼材料によって形成されており、取付本体2が樹脂により形成されており、取着手段3が永久磁石3aであり、この永久磁石3aが取付本体2に固着されているので、クーラントタンクTに対する貯留槽用液体流動制御部材1の着脱を容易に行うことができるとともに、貯留槽用液体流動制御部材1の既存のクーラントタンクTに対する取り付けを容易に行うことができる。
【0072】
さらにまた、本実施形態の貯留槽用液体流動制御部材1によれば、取付本体2が、貯留槽としてのクーラントタンクTの直角隅部T3に取り付けられる取付面と、直角隅部T3に液体としてのクーラントの流動を阻害するデッドスペースの形成を防止するための丸みをつけてなるコーナーアール面とを有しているので、クーラントタンクTの内面への取り付けと、クーラントの流動の円滑化との両者を容易かつ確実に行うことができる。
【0073】
また、本実施形態の貯留槽用液体流動制御部材1によれば、取付本体2が、貯留槽としてのクーラントタンクTの内面に取り付けられる取付面と、クーラントタンクTの内部を平面的に区分するかあるいは流路の確立を行うための仕切板BPを取付可能な仕切板取付部とを有しているので、クーラントタンクTに供給したクーラントに含まれる浮上油を溜めたり、クーラントタンクTに供給したクーラントの供給側から排出側にいたる順方向の流路およびこれとは逆方向の流路の確立を容易かつ確実に図ることができる。
【0074】
またさらに、本実施形態の貯留槽用液体流動制御部材1によれば、取付本体2が、第1本体4と第2本体5とを有しており、第1本体4が、貯留槽としてのクーラントタンクTの直角隅部T3に取り付けるための取付面と、直角隅部T3に液体としてのクーラントの流動を阻害するデッドスペースの形成を防止するための丸みをつけるコーナーアール面とを有しており、第2本体5が、貯留槽としてのクーラントタンクTの内面に取り付けられる取付面と、クーラントタンクTの内部を平面的に区分するかあるいは流路の確立を行うための仕切板BPを取付可能な仕切板取付部とを有しているので、クーラントタンクTの内面への取り付けと、クーラントの流動のさらなる円滑化との両者を容易かつ確実におこなうことができる。
【0075】
さらに、本実施形態の貯留槽用液体流動制御部材1によれば、第1本体4が、側面用本体6と、底辺用本体7と、隅用本体8とに3分割されているので、クーラントタンクTの多種多様のサイズに、取付本体2のサイズを容易に適合させることができる。このように第1本体4を複数に分割することで、各種のサイズの貯留槽に対して部品の共通化を図ることができるとともに、保管および物流におけるスペースを小さくすることができるので、低コスト化に寄与する。すなわち、側面用本体6および底辺用本体7のそれぞれを所定長さの長尺の標準品として製造し、クーラントタンクTのサイズに応じて、標準品の1つの長さを切断によって調整することにより、クーラントタンクTの多種多様のサイズに容易に対応することができるので、標準化および低コスト化を図ることができる。なお、標準品の長さ調整は、出荷時かあるいは設置現場において行うことができる。
【0076】
さらに、本実施形態の貯留槽用液体流動制御部材1によれば、側面用本体6および底辺用本体7が、複数の側面用ブロック6aおよび複数の底辺用部ブロック体にさらに分割されているので、クーラントタンクTの多種多様のサイズに、取付本体2のサイズをより容易に適合させることができる。すなわち、側面用ブロック6aおよび底辺用ブロック7aを標準品とし、クーラントタンクTのサイズに応じて必要な数を選択することで、クーラントタンクTの多種多様のサイズに容易に対応することができるので、標準化および低コスト化をより確実に図ることができる。
【0077】
本発明の貯留槽用液体流動制御部材は、集合住宅などにおける受水タンクから各戸へ給水する給水装置や、揚げ油を貯留したフライヤータンクを用いた業務用の食品揚げ物装置などの各種の液体清浄化装置に用いることができる。
【0078】
なお、本発明は、前述した実施形態に限定されるものではなく、必要に応じて種々の変更が可能である。例えば、貯留槽がオーステナイト系ステンレスあるいは樹脂などの非磁性体により形成されている場合には、貯留槽の外側に、磁性体により形成された吸着片あるいは磁石を取着手段としての磁石と対向するように配設するとよい。
【図面の簡単な説明】
【0079】
【図1】本発明に係る貯留槽用液体流動制御部材の実施形態の要部を簡略化して示す分解斜視図
【図2】本発明に係る貯留槽用液体流動制御部材の実施形態を貯留槽の内部に配置した設置状態の要部を模式的に示す斜視図
【図3】本発明に係る貯留槽用液体流動制御部材の実施形態の側面用ブロックの要部を示す斜視図
【図4】本発明に係る貯留槽用液体流動制御部材の実施形態の側面用ブロックの要部を示す正面図
【図5】図4の平面図
【図6】図4の左側面図
【図7】本発明に係る貯留槽用液体流動制御部材の実施形態の底辺用ブロックの要部を示す斜視図
【図8】本発明に係る貯留槽用液体流動制御部材の実施形態の底辺用ブロックの要部を示す正面図
【図9】図8の平面図
【図10】図8の左側面図
【図11】図8の下面図
【図12】本発明に係る貯留槽用液体流動制御部材の実施形態の隅用本体の要部を示す斜視図
【図13】本発明に係る貯留槽用液体流動制御部材の実施形態の隅用本体の要部を示す正面図
【図14】図13の平面図
【図15】図13の左側面図
【図16】図13の右側面図
【図17】本発明に係る貯留槽用液体流動制御部材の実施形態の第2本体の要部を示す斜視図
【図18】本発明に係る貯留槽用液体流動制御部材の実施形態の第2本体の要部を示す正面図
【図19】図18の平面図
【符号の説明】
【0080】
1 貯留槽用液体流動制御部
2 取付本体
3 取着手段
3a 永久磁石
4 第1本体
5 第2本体
6 側面用本体
6a 側面用ブロック
7 底辺用本体
7a 底辺用ブロック
8 隅用本体
9 側面用取付面
10 側面用曲面
13 底辺用取付面
14 底辺用曲面
16 隅用取付底面
17 隅用取付側面
20 隅用曲面
21 第2本体用取付面
22 嵌合凹溝
T クーラントタンク
T3 直角隅部
T3a 側接続部
T3b 辺接続部
T3c 隅接続部
BP 仕切板
【特許請求の範囲】
【請求項1】
貯留槽の内部に供給される液体の貯留槽の内部における流動を制御するために、前記貯留槽の内面に配置される取付本体と、この取付本体を前記貯留槽に取着するための取着手段とを有しており、
前記貯留槽が、鉄鋼材料により形成されており、
前記取付本体が、樹脂により形成されており、
前記取着手段が、永久磁石であり、この永久磁石が前記取付本体に固着されており、
前記取付本体が、前記貯留槽の内面に取り付けられる取付面と、前記貯留槽の流路の確立を行うための仕切板を取付可能な仕切板取付部とを有していることを特徴とする貯留槽用液体流動制御部材。
【請求項2】
前記取付本体が、全体として矩形面を底面とするほぼ三角柱状に形成されており、
前記取付本体の底面が前記取付面とされており、
前記取付本体の頂部に前記仕切板を着脱可能に取り付ける嵌合凹溝を長手方向に沿って形成することにより前記仕切板取付部が構成されていることを特徴とする請求項1に記載の貯留槽用液体流動制御部材。
【請求項1】
貯留槽の内部に供給される液体の貯留槽の内部における流動を制御するために、前記貯留槽の内面に配置される取付本体と、この取付本体を前記貯留槽に取着するための取着手段とを有しており、
前記貯留槽が、鉄鋼材料により形成されており、
前記取付本体が、樹脂により形成されており、
前記取着手段が、永久磁石であり、この永久磁石が前記取付本体に固着されており、
前記取付本体が、前記貯留槽の内面に取り付けられる取付面と、前記貯留槽の流路の確立を行うための仕切板を取付可能な仕切板取付部とを有していることを特徴とする貯留槽用液体流動制御部材。
【請求項2】
前記取付本体が、全体として矩形面を底面とするほぼ三角柱状に形成されており、
前記取付本体の底面が前記取付面とされており、
前記取付本体の頂部に前記仕切板を着脱可能に取り付ける嵌合凹溝を長手方向に沿って形成することにより前記仕切板取付部が構成されていることを特徴とする請求項1に記載の貯留槽用液体流動制御部材。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【公開番号】特開2009−67475(P2009−67475A)
【公開日】平成21年4月2日(2009.4.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−329816(P2008−329816)
【出願日】平成20年12月25日(2008.12.25)
【分割の表示】特願2004−376821(P2004−376821)の分割
【原出願日】平成16年12月27日(2004.12.27)
【出願人】(505001616)リックステクノサービス株式会社 (4)
【出願人】(502224814)株式会社 ユメックス (7)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年4月2日(2009.4.2)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年12月25日(2008.12.25)
【分割の表示】特願2004−376821(P2004−376821)の分割
【原出願日】平成16年12月27日(2004.12.27)
【出願人】(505001616)リックステクノサービス株式会社 (4)
【出願人】(502224814)株式会社 ユメックス (7)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]