説明

貯留槽

【課題】 板材を接合して形成された槽に貯留された導電性液体が漏洩したとき、漏洩場所を速やかに把握できるようにする。
【解決手段】 ライニング槽11aの溶接線に沿って漏洩検知溝2を設置し、その中に一対の電極線が螺旋状に巻き付けられた漏洩検知センサケーブル4を設置し、前記一対の電極線間に電圧を印加する電源16を設けてライニング槽11aの導電性液体が漏洩したら漏洩位置の前記電極線12が短絡するよう構成し、短絡により流れる電流により動作するスイッチ6と、スイッチ6の動作により警報を出力する警報器7と、前記電流を計測する電流計8と、短絡した漏洩検知センサケーブル4を検出する位置入力装置9と、電流計8と位置入力装置9の出力と電極線12の電気抵抗特性に基づいて短絡位置を出力する演算手段18と、演算手段18の出力に基づいて漏洩位置を画面表示する位置表示装置10と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の板状部材を接合して形成され導電性の液体を貯留する貯留槽に係り、特に、板状部材の接合線からの液体の漏れ及び漏れ位置を検出する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
コンクリート槽においては、貯留液の漏れを防ぐために、内面に金属板を貼り付けたライニングが設けられるが、複数の金属板を溶接などにより接合して形成されたライニングの溶接線から貯留液が漏れ出ることがある。
【0003】
従来、ライニングの溶接部からの漏洩を検知するために、溶接線に沿ってコンクリート槽に漏洩検知溝を設け、この漏洩検知溝に沿ってシール溝を設置してコンクリート槽からの滲出水が漏洩検知溝へ流入することを防ぎ、溶接部からの貯留液のみを漏洩検知溝で検出する方法や、漏洩検出溝に気体を充填して加圧し、加圧された気体が気泡となって発生する場所を槽内部からテレビカメラで確認する方法が提案されている(特許文献1参照)。
【0004】
また、コンクリート槽に埋め込まれた埋込金物を裏当て材としてライニング材を突合せ溶接して槽を形成し、この突合せ溶接線に対し、槽内側に、溶接線に沿って溶接線を覆うリーク検知溝を備えたシール板を溶接により装着するか、若しくは埋込金物に突合せ溶接線を覆うリーク検知溝を備え、このリーク検知溝に気体を充填して加圧する方法も提案されている(特許文献2参照)。この場合も、圧力の低下により漏洩の発生を検出し、加圧された気体が気泡となって発生する場所を槽内部からテレビカメラで確認する。
【0005】
【特許文献1】特開平5−172684号公報(第4,5頁、図2、図6、図7)
【特許文献2】特開平10−300620号公報(第3頁、図1、図14)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記特許文献1、2記載のライニング槽の漏洩検出方法では、漏洩の有無を検出しているが、漏洩した場所を特定することができない。
【0007】
本発明の課題は、漏洩場所を検出することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題は、部材を相互に接合して形成された槽の接合線に沿って溝状のくぼみを設けるとともに、その溝状のくぼみ内に一対の導線を互いに離隔して布設し、該一対の導線相互間に電圧を負荷し、前記一対の導線に流れる電流の値を継続的に測定し、前記導線の電気抵抗特性と前記電圧と前記測定された電流値に基づいて前記導線の短絡位置の距離を求めることにより解決できる。
【0009】
具体的には、上記課題は、複数の板状部材を接合して形成され導電性の液体を貯留する貯留槽であって、前記板状部材の接合線を覆って前記貯留槽の外側に溝を形成し、その溝に沿って溝内に互いに離隔して布設された一対の導線と、前記一対の導線の一方の端部相互間に電圧を印加する電源手段と、前記導線に流れる電流を測定する電流測定手段と、前記電圧と前記電流と前記導線の電気抵抗との関係に基づいて、前記板状部材の接合線からの前記液体の漏れ及び漏れ位置を求める漏れ検出手段とを備えてなる貯留槽により解決できる。
【0010】
上記構成によれば、槽を形成する部材の接合部から導電性液体が漏洩すると、漏洩した導電性液体は前記溝に留まる。この溝には一対の導線が互いに離隔されて布設されているから、溝に留まった導電性液体は、布設されている一対の導線をその場所で短絡させ、電源手段を含む電気回路が形成される。布設されている一対の導線間には常時、電圧が電源手段により印加されているから、短絡に伴って、導線の電気抵抗特性と、短絡で形成された電気回路の導線の長さに応じた電流が導線に流れる。導線に流れる電流の値は電流値測定手段により測定され、漏れ検出手段は、印加されている電圧と測定された電流値と導線の電気抵抗特性に基づいて、短絡が生じた位置を算出する。したがって、導線が短絡するほどの漏洩が生じると、短絡したと同時に、漏洩発生位置を知ることが可能になる。
【0011】
貯留槽が、複数の板状部材をコンクリート槽内表面に内張りされて形成されたライニング槽である場合は、前記溝は、ライニング槽が内張り形成される前に、コンクリート槽内表面に形成される。
【0012】
接合線が複数ある場合には、前記溝を複数形成し、1対の導線を各溝に布設するとともに、電源手段を各対に対して電圧を印加するよう接続し、電流値測定手段を複数対の導線いずれが短絡しても当該短絡による電流が流れる位置に配置し、さらに、漏れ検出手段を、導線のいずれの対が短絡したかを検知する短絡系統検知手段と、漏れ位置を表示する出力手段とを含んで構成し、前記出力手段は画面表示手段と前記槽の接合線を含む形状データを格納した記憶手段を備え、求まった漏れ位置と格納している形状データに基づいて、槽の形状を表示するとともに、表示された槽の形状に漏洩発生位置を明示するように構成する。
【0013】
このように構成することで、接合線が複数ある場合でも、漏洩がどの接合線のどの場所で生じたかを、漏洩発生と同時に、視覚的に直感的に把握することが可能になる。
【0014】
また、溝に互いに離隔して布設する一対の導線は、ケーブルの心材の周囲に互いに平行して螺旋状に巻きつけられた形とするのが望ましい。この構成によれば、水平方向に延びるくぼみ内に導線を布設する際に、2本の導線がくぼみの底部に位置するように留意しなくても、一定間隔ごとに必ずくぼみの底部に位置するし、鉛直方向のくぼみに布設する際も、2本の導線が一定間隔ごとに必ず接合線側に位置するから、導電性液体の漏洩を確実に検出できる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、導電性液体を貯留する槽を構成する板材の接合部から導電性液体の漏洩が発生した場合、即座に漏洩した場所を特定することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
(実施の形態1)
以下、本発明の実施の形態1について図1、図2、図4を参照して説明する。図示の実施の形態1は、コンクリートにより製作されたコンクリート槽11bと、その内表面に内張りされた金属板からなるライニング材で形成されたライニング槽11aと、ライニング槽11aを形成する金属板相互の溶接部1に対向するコンクリート面に、溶接部1に沿って溶接部1を覆うように形成された溝である漏洩検知溝2と、漏洩検知溝2の底部に接続され下端部がコンクリート外に位置する漏洩検知管3aと、漏洩検知管3aの前記下端部に漏洩検知管3bで接続された漏洩液収集容器11cと、漏洩検知管3bに枝管状に形成された漏洩検知センサケーブル挿入口3cと、前記漏洩検知溝2内にその全長に亘って布設されているとともに、一方の端部が漏洩検知管3a、漏洩検知管3b、漏洩検知センサケーブル挿入口3cを経て漏洩検知管3b外に導出された漏洩検知センサケーブル4と、漏洩検知センサケーブル4に接続された漏洩検出装置20と、を含んで構成されている。
【0017】
なお、ライニング槽11aには、導電性液体である水が貯留されている。
【0018】
図1では、溶接部1は、ライニング槽11aの底面(図上、下方になっている面)に示されているが、溶接部1はライニング槽11aの側壁にもあり、側壁の溶接部1は、水平方向に延びているものや、上下方向に延びているものがある。したがって、漏洩検知溝2、漏洩検知管3a、3b、漏洩検知センサケーブル挿入口3c、漏洩検知センサケーブル4も、側壁の各溶接部に対しても設けられている。以下、底面の溶接部1について説明するが、側壁の水平方向、上下方向の各溶接部についても同様であるので説明は省略する。
【0019】
溶接部1から貯留液(水)が漏洩すると、漏洩した水は漏洩検知溝2、漏洩検知管3aおよび漏洩検知管3bを通って漏洩液収集容器11cに流入する。漏洩液収集容器11cには、図示されていない液検知手段が設けられ、漏洩液の量が検出されるようになっている。
【0020】
漏洩検知センサケーブル4が漏洩検知センサケーブル挿入口3cを通過する箇所は、キャップ3dでシールされている。
【0021】
漏洩検出装置20は、図1、図3に示すように、前記複数の系統の漏洩検知センサケーブル4が接続されたセンサ集合ユニット5と、センサ集合ユニット5に接続された電源16と、センサ集合ユニット5に接続されたスイッチ6と、スイッチ6に接続された電源17及び警報器7と、センサ集合ユニット5に接続され短絡電流を測定して出力する電流値測定手段である電流計8と、センサ集合ユニット5に接続され短絡系統を検知して出力する短絡系統検知手段である位置入力装置9と、電流計8と位置入力装置9に接続され、それらの出力に基づいて漏洩検知センサケーブル4の短絡位置を算出する演算手段18と、演算手段18の算出結果に基づいて漏洩位置を表示する出力手段である位置表示装置10と、を含んで構成されている。位置入力装置9と演算手段18と位置表示装置10とで、漏れ検出手段が構成される。
【0022】
図3はセンサ集合ユニット5からのスイッチ6、位置入力装置9への配線の流れを模式図的に表現したものである。センサ集合ユニット5は、複数系統(系統1〜n)の漏洩検知センサケーブル4〜4がそれぞれ接続されるn対のセンサケーブル端子5a、電源16が接続される一対の電源端子5b、スイッチ6が接続される一対のスイッチ端子5c、電流計8が接続される一対の電流計端子5d、位置入力装置9が接続されるn対の系統識別端子5eを備えている。系統識別端子5eの各対は、漏洩検知センサケーブル4〜4のいずれかの系統にそれぞれ対応している。
【0023】
電源端子5bの一方は、各対のセンサケーブル端子5aの一方に導線5feで接続され、電源端子5bの他方は導線5faでスイッチ端子5cの一方に接続されている。スイッチ端子5cの他方は導線5fbで電流計端子5dの一方に接続され、電流計端子5dの他方は導線5fcで、前記系統識別端子5eの各対の一方に接続されている。センサケーブル端子5aの各対の他方は、それぞれ対応する系統の系統識別端子5eの各対の他方に導線5fdで接続されている。
【0024】
スイッチ6は、スイッチ端子5c間を接続する導線と、この導線に電流が流れたとき閉じられるスイッチとを備え、このスイッチは、電源17と警報器7が直列に接続された環状の回路の一部をなしている。つまり、このスイッチが閉じると前記環状の回路に電流が流れて警報器7が警報を出力するようになっている。
【0025】
位置入力装置9は、前記n対の系統識別端子5eにそれぞれ対応する接続端子を備え、各対の接続端子は対応する系統識別端子5eにそれぞれ接続されているとともに、各対の接続端子間を接続する導線を備え、この導線に電流が流れたとき、短絡した系統を示す短絡系統信号を出力する手段を備えている。
【0026】
前記電流計8は、測定した電流値をデジタルデータとして所定の時間間隔で前記演算手段18に送信するよう構成され、位置入力装置9が出力する短絡系統信号も、前記演算手段18に入力されるようになっている。
【0027】
前記演算手段18には、漏洩検知センサケーブル4の電気抵抗特性及びセンサケーブル端子5aからの各系統の漏洩検知センサケーブル4のケーブル長さに対応する溶接線の位置データが格納されているとともに、入力された電流値と短絡系統信号、前記格納された電気抵抗特性及び溶接線の位置データに基づいて、漏洩検知センサケーブル4の短絡位置を算出するプログラムが搭載されている。
【0028】
位置表示装置10は、表示画面を備えるとともにライニング槽11aの溶接線を含む形状データを格納しており、前記演算手段18から出力される漏洩検知センサケーブル4の短絡位置に基づいて、漏洩検知センサケーブル4の短絡位置を水の漏洩位置として画面表示する。画面表示する際は、表示画面に、ライニング槽11aの斜視図を表示し、この斜視図に漏洩した溶接線を表示し、漏洩位置を矢印或いは色を変えて表示或いは光の点滅で表示する。同時に、漏洩位置の槽底面からの高さ、壁面の左右いずれかの端部からの距離を数値表示する。
【0029】
位置入力装置9は常時、漏洩検知センサケーブル4の複数の系統4〜4に流れる電流の値を監視し、いずれかの系統の電流値が予め設定されているレベルを超えたとき、当該系統が短絡したものと判断して検出した短絡系統を示す短絡系統信号を演算手段18に出力する。
【0030】
漏洩検知センサケーブル4は、図4、図5に示すように、漏洩検知センサケーブル心材14の周囲に被覆されていない一対の導線(以下、電極線12という)を互いに接触しない一定距離に離して螺旋状に巻き付け、その外側を網状の漏洩検知センサケーブル外皮13で保護をしたものである。一対の電極線12を螺旋状に漏洩検知センサケーブル心材14の周囲に巻きつけることで、漏洩検知センサケーブル4の布設の際に、漏洩検知センサケーブル4のねじれや設置方向に関係なく、漏洩検知センサケーブル4の据付方向に左右されることなく、漏洩検知センサケーブル4のどの部分でも電極線12が漏洩液と接触し検知できる。なお、演算手段18には、漏洩検知センサケーブル4の長さに対応する電極線12の長さのデータも格納されている。
【0031】
警報器7は、本実施の形態では、音声による警報と光の点滅による警報の双方を出力するように構成されているが、いずれか一方のみでもよい。
【0032】
以下、上記構成の装置の動作に付き、説明する。漏洩検知センサケーブル4が接続されているセンサケーブル端子5a間には、電源16により、所定の電圧Eが印加されている。ライニング槽11aに貯留された水が漏洩すると、漏洩した水は漏洩検知溝2に流入する。水が漏洩検知溝2に流入し、漏洩検知センサケーブル4の2本の電極線12が水に浸される深さにまで留まると、2本の電極線12が留まった水に短絡される。2本の電極線12が短絡されると、電源16、電源端子5bの他方、導線5fa、スイッチ端子5cの一方、スイッチ6、スイッチ端子5cの他方、導線5fb、電流計端子5dの一方、電流計8、電流計端子5dの他方、導線5fc、系統識別端子5eの一方、位置入力装置9、系統識別端子5eの他方、導線5fd、センサケーブル端子5aの他方、漏洩検知センサケーブル4の2本の電極線12の一方、短絡箇所、漏洩検知センサケーブル4の2本の電極線12の他方、センサケーブル端子5aの一方、電源16を順に直列に含む回路が形成される。
【0033】
前記一対の電源端子5b間には、電源16により所定の電圧Eが印加されているから、前記回路には、形成された回路の電気抵抗特性に応じた電流が流れる。この電流により、スイッチ6が動作し、警報器7に電流が流れて警報が出力される。
【0034】
電流計8は所定の時間間隔で電流計端子5d間を流れる電流を測定、出力しており、回路に流れる電流の値は、同時に、電流計8で測定され、デジタルデータに変換されて演算手段18に伝達される。
【0035】
また、回路に電流が流れると、位置入力装置9は、漏洩検知センサケーブル4のどの系統に電流が流れたかを検出し、どの系統が短絡したかを示す短絡系統信号を演算手段18に出力する。
【0036】
演算手段18は、短絡系統信号が入力されたら、その直後に入力される電流値と格納されている漏洩検知センサケーブル4の電気抵抗特性に基づいて、電流が流れた漏洩検知センサケーブル4の長さを算出する。オームの法則からI(電流)=E(電圧)/R(抵抗)及びR(抵抗)=ρ(抵抗率)×L(電極線長さ)/S(電極線断面積)の関係から電極線12のρ(抵抗率)、S(面積)は電極線12により決められ既知であること及び使用する電圧値Eが既知であることから電極線12が短絡して構成された回路の長さ、したがって、センサケーブル端子5aを基準点として、この基準点から短絡位置までの漏洩検知センサケーブル4の長さが求められる(センサ集合ユニット内の導線の長さは、各系統同じ長さにしておけばよい)。なお、本実施の形態では、前記一対の電源端子5b間には、電源16により所定の電圧Eが印加されているが、回路に電流が流れた場合に、その時点での電圧を測定して演算に用いるようにすれば、必ずしも一定の電圧でなくともよい。
【0037】
演算手段18には、短絡した系統を示す短絡系統信号が入力されているから、短絡した漏洩検知センサケーブル4に対応する溶接線が判明し、該当する溶接線について、センサケーブル端子5aから短絡位置までの漏洩検知センサケーブル4の長さに対応する溶接線の位置を読み出せば、溶接線の漏洩位置が判明する。演算手段18は、短絡した溶接線を示す信号、短絡位置の溶接線始端からの距離を表す信号を位置表示装置10に出力する。
【0038】
位置表示装置10は、入力された溶接線を示す信号、短絡位置の溶接線始端からの距離と、格納しているライニング槽11aの溶接線を含む形状データに基づいて、ライニング槽11aの斜視図を画面表示し、表示した斜視図に、前記入力された信号で指定された溶接線を表示するとともに、前記短絡位置を表示した溶接線上に、矢印であるいは色変え表示であるいは光の点滅で明示する。併せて同じ画面上に、漏洩した場所のライニング槽11aの底面からの高さ及び壁面の左右いずれかの端部からの距離を数値で表示する。
【0039】
上述のように、本実施の形態によれば、水の漏洩が発生したら、漏洩発生が警報されるとともに、直ちに漏洩位置が画面表示されるから、敏速に対応策を準備することが可能になる。
【0040】
なお、上記実施の形態では、位置表示装置10では、ライニング槽11aの斜視図を用いて漏洩位置が表示されるが、漏洩した溶接線が含まれる壁面を、溶接線を含めて平面図で画面表示するようにしてもよい。その場合、その平面図で表示されている壁面がどの壁面(あるいは底面)であるかを明示するとともに、壁面の上下、漏洩した溶接線と当該溶接線上の漏洩位置を表示し、併せて漏洩位置の該壁面下端部からの距離、該壁面左右端部からの距離を数値表示するのが望ましい。
【0041】
また、上下方向に延びる溶接線に対して漏洩検知センサケーブル4を配置する場合は、漏洩検知センサケーブル外皮13と漏洩検知センサケーブル心材14の間にスポンジ状の絶縁材を充填し、漏洩した水をスポンジ状の絶縁材に吸込ませて、電極線12に水が接触しやすくするのが望ましい。
【0042】
漏れた水が溝に沿って流れ、複数箇所で導線が短絡する場合が当然考えられるが、一番初めに短絡した箇所が漏洩箇所に最も近いと考えるのが合理的であり、演算手段18は、最初に算出した漏洩位置を、漏洩位置として出力する。
【0043】
本実施の形態では、導電性液体として水を例示したが、本発明は、海水、各種水溶液など、導電性液体を貯留する槽であって、部材を接合して形成された槽であれば、水以外の液体であってもその接合部からの漏洩検出に適用可能であることはいうまでもない。部材の接合も、溶接に限らず、ロウ付け、圧着、接着剤による接合等の場合にも適用可能であり、槽を構成する部材も、金属板だけでなく、プラスチックスその他の複合材であってもよい。
【0044】
さらに、本発明は、貯留槽がコンクリートにライニングされたライニング槽の場合だけでなく、貯留槽の周囲が何らかの理由でアクセス困難な場合、例えば地下深い場所に建設された貯留槽や、周囲が保温材で囲まれている場合などに適用して効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】本発明の実施の形態の全体構成を説明するブロック図である。
【図2】図1の部分の詳細を示す断面図である。
【図3】センサ集合ユニット内部の接続状態を模式的に示す接続図である。
【図4】漏洩検知センサケーブルの構造を示す斜視図である。
【図5】漏洩検知センサケーブルを示す断面図である。
【符号の説明】
【0046】
1 溶接部
2 漏洩検知溝
3a 漏洩検知管(埋設管)
3b 漏洩検知管
3c 漏洩検知センサケーブル挿入口
3d キャップ
4 漏洩検知センサケーブル
5 センサ集合ユニット
6 スイッチ
7 警報器
8 電流計
9 位置入力装置
10 位置表示装置
11a ライニング槽
11b コンクリート槽
12 電極線
13 漏洩検知センサケーブル外皮
14 漏洩検知センサケーブル心材
16,17 電源
18 演算手段
20 漏洩検出装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の板状部材を接合して形成され導電性の液体を貯留する貯留槽であって、前記板状部材の接合線を覆って前記貯留槽の外側に溝を形成し、その溝に沿って溝内に互いに離隔して布設された一対の導線と、前記一対の導線の一方の端部相互間に電圧を印加する電源手段と、前記導線に流れる電流を測定する電流測定手段と、前記電圧と前記電流と前記導線の電気抵抗との関係に基づいて、前記板状部材の接合線からの前記液体の漏れ及び漏れ位置を求める漏れ検出手段とを備えてなる貯留槽。
【請求項2】
請求項1に記載の貯留槽において、前記貯留槽は、コンクリート槽の内表面に前記複数の板状部材を内張りしてなるライニング槽であり、前記溝は、前記接合線に沿って前記コンクリート槽の内表面に形成されることを特徴とする貯留槽。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の貯留槽において、前記一対の導線は、複数の前記接合線に対応させて設けられた複数の溝にそれぞれ布設され、前記漏れ検出手段は、各溝に対応して設けられた各一対の導線に対応して設けられ、
前記貯留槽の接合線を含む形状データを格納した記憶手段と表示手段とを含む出力手段を設け、
該出力手段は、前記形状データに基づいて前記表示手段に前記貯留槽の形状を表示するとともに、該表示された前記貯留槽に前記漏れ検出手段により求めた漏れ位置を表示することを特徴とする貯留槽。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれかに記載の貯留槽において、前記一対の導線は、心材と、前記心材の周囲に螺旋状に、かつ互いに間隔を置いて巻きつけられた一対の電極線と、この電極線の外側を覆うように前記心材の周囲に配置された網状の漏洩検知センサケーブル外皮と、を含んで構成されている漏洩検知センサケーブルとして布設されていることを特徴とする貯留槽。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2007−10503(P2007−10503A)
【公開日】平成19年1月18日(2007.1.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−192180(P2005−192180)
【出願日】平成17年6月30日(2005.6.30)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【出願人】(390023928)日立エンジニアリング株式会社 (134)
【Fターム(参考)】