説明

貯留水場、およびその形成方法

【課題】地盤上に形成される凹形状の貯留水域内の水を、外部に向かって排水する排水装置を備えた貯留水場において、貯留水域内の水が排水装置のいずれかの部位を通し地盤内に染み込む、ということをより確実に防止する。
【解決手段】貯留水場1は、貯留水域4の内面に敷設される内、外遮水シート9,10に形成された各開口12,13を通し、貯留水域4内の水2を排水する排水装置15を備える。排水装置15が、各開口12,13と互いに対応する貯留水域4の一部内面に沿って延び、各開口12,13の開口縁部と互いに接合される内、外遮水シート片19,20と、これら内、外遮水シート片19,20にそれぞれ形成された貫通孔21,22に挿通され、その外周面がこれら各貫通孔21,22の孔縁部に接合W1される排水パイプ23と、内、外遮水シート片19,20および排水パイプ23で囲まれた空間28に充填される遮水材29とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地盤上に形成され、上方に向かって開口する凹形状の貯留水域内の水を、その外部に向かって排水する排水装置を備えた貯留水場、およびその形成方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
上記貯留水場には、従来、下記特許文献1に示されるものがある。この公報のものによれば、貯留水場は、廃棄物処分場であって、地盤上に形成され上方に向かって開口する凹形状の貯留水域と、この貯留水域の内面に敷設され、互いに対面する内、外遮水シートと、これら内、外遮水シートの面方向における互いにほぼ同一位置の一部に形成された各開口を通し、上記貯留水域内の水をその外部に向かって排水する排水装置とを備えている。また、この排水装置は、上記各開口に挿通されて貯留水域内をその外部に連通させる排水パイプを備え、この排水パイプの外周面と上記各開口の開口縁部とはそれぞれ互いに接合されている。
【0003】
そして、廃棄物処分場として、上記貯留水域に廃棄物が投棄され、この投棄の進行に従い、上記貯留水域が順次埋め立てられる。一方、雨水などにより、貯留水域には水が溜ろうとするが、この水は上記排水管を通して貯留水域の外部に排水される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2000−325908号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上記内、外遮水シートに形成された各開口の開口縁部と上記排水パイプの外周面との互いの各接合は、従来、例えば、次のようになされている。即ち、上記各開口縁部にそれぞれ外嵌されるバンドが設けられる。そして、これら各バンドの締結により、上記各開口縁部がそれぞれ上記排水パイプの外周面に圧接させられ、これにより、上記各接合がなされている。
【0006】
しかし、上記したように、開口の開口縁部と排水パイプの外周面とをそれぞれ単にバンドにより締結しただけでは、その締結力が不足するおそれがある。そして、この場合には、上記各開口の開口縁部と排水パイプの外周面との間に生じている隙間を通し、上記貯留水域内の水がその外部に漏出して地盤内に染み込む、という不都合が生じる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上記のような事情に注目してなされたもので、本発明の目的は、地盤上に形成され、上方に向かって開口する凹形状の貯留水域内の水を、その外部に向かって排水する排水装置を備えた貯留水場において、上記貯留水域内の水が上記排水装置のいずれかの部位を通し地盤内に染み込む、ということをより確実に防止することである。
【0008】
請求項1の発明は、地盤3上に形成され上方に向かって開口する凹形状の貯留水域4と、この貯留水域4の内面に敷設され、互いに対面する内、外遮水シート9,10と、これら内、外遮水シート9,10の面方向における互いにほぼ同一位置の一部に形成された各開口12,13を通し、上記貯留水域4内の水2をその外部に向かって排水する排水装置15とを備えた貯留水場において、
上記排水装置15が、上記貯留水域4の内面のうちの上記各開口12,13と互いに対応する一部内面に沿って延び、かつ、互いに対面すると共に上記各開口12,13の開口縁部と互いに接合される内、外遮水シート片19,20と、これら内、外遮水シート片19,20にそれぞれ形成された貫通孔21,22に挿通され、その外周面がこれら各貫通孔21,22の孔縁部に接合W1される排水パイプ23と、上記内、外遮水シート片19,20および排水パイプ23で囲まれた空間28に充填される遮水材29とを備えたことを特徴とする貯留水場である。
【0009】
請求項2の発明は、上記各開口12,13に対応する地盤3の表層部に埋入されるようコンクリートブロック36を設置し、上記内遮水シート片19の内面に突設したアンカー37を上記コンクリートブロック36に埋設したことを特徴とする請求項1に記載の貯留水場である。
【0010】
請求項3の発明は、上記各開口12,13の開口縁部のそれぞれと上記内遮水シート片19とを互いに接合W2,W3すると共に、上記外遮水シート10の開口13の開口縁部と上記外遮水シート片20とを互いに接合W4したことを特徴とする請求項1、もしくは2に記載の貯留水場である。
【0011】
請求項4の発明は、請求項2に記載の貯留水場の形成方法であって、
上記コンクリートブロック36の設置予定位置における地盤3の表層部に、外方に向かって開口する上記コンクリートブロック36形成用の型枠39を設置し、
上記型枠39の開口40を閉じるようこの型枠39の上面に上記内遮水シート片19を設置し、
上記型枠39内にコンクリートを打設して、上記コンクリートブロック36を形成すると共に、このコンクリートブロック36に上記アンカー37を埋設して上記コンクリートブロック36に上記内遮水シート片19を固定し、
上記各開口12,13の開口縁部と上記内、外遮水シート片19,20とをそれぞれ互いに接合W2〜W4し、
上記空間28に粘性流動状態の遮水材29を注入し、その後固化させることを特徴とする貯留水場の形成方法である。
【0012】
なお、この項において、上記各用語に付記した符号や図面番号は、本発明の技術的範囲を後述の「実施例」の項や図面の内容に限定解釈するものではない。
【発明の効果】
【0013】
本発明による効果は、次の如くである。
【0014】
請求項1の発明は、地盤上に形成され上方に向かって開口する凹形状の貯留水域と、この貯留水域の内面に敷設され、互いに対面する内、外遮水シートと、これら内、外遮水シートの面方向における互いにほぼ同一位置の一部に形成された各開口を通し、上記貯留水域内の水をその外部に向かって排水する排水装置とを備えた貯留水場において、
上記排水装置が、上記貯留水域の内面のうちの上記各開口と互いに対応する一部内面に沿って延び、かつ、互いに対面すると共に上記各開口の開口縁部と互いに接合される内、外遮水シート片と、これら内、外遮水シート片にそれぞれ形成された貫通孔に挿通され、その外周面がこれら各貫通孔の孔縁部に接合される排水パイプと、上記内、外遮水シート片および排水パイプで囲まれた空間に充填される遮水材とを備えている。
【0015】
このため、上記排水装置は内、外遮水シート片を備えていて、通常、貯留水域の内面に全体的に敷設される内、外遮水シートと同様の2重遮水シート構造とされ、しかも、上記内、外遮水シート片および排水パイプで囲まれた空間には遮水材が充填されている。よって、上記各開口の開口縁部と内、外遮水シート片との間、および、これら内、外遮水シート片の各貫通孔の孔縁部と排水パイプの外周面との間は、それぞれ上記遮水材によって、より確実にシールされる。
【0016】
この結果、上記排水装置における上記地盤と貯留水域内との間のシール性能が十分に確保され、上記貯留水域内の水が上記排水装置のいずれかの部位を通し地盤内に染み込む、ということはより確実に防止される。
【0017】
請求項2の発明は、上記各開口に対応する地盤の表層部に埋入されるようコンクリートブロックを設置し、上記内遮水シート片の内面に突設したアンカーを上記コンクリートブロックに埋設している。
【0018】
このため、上記内遮水シート片は、上記貯留水域の内面の所定位置に対し上記コンクリートブロックとアンカーとにより強固に固定されると共に、これらコンクリートブロックとアンカーとによってより確実に補強されることから、上記内遮水シート片を構成部品とする上記排水装置も、上記貯留水域の内面の所定位置に強固に支持されると共に、それ自体補強される。よって、上記排水装置に何らかの外力が与えられる場合でも、上記貯留水域の内面の所定位置に対する排水装置の位置ずれが防止されると共に、この排水装置自体の変形が防止されて、そのシール性能は良好なままに保たれる。
【0019】
請求項3の発明は、上記各開口の開口縁部のそれぞれと上記内遮水シート片とを互いに接合すると共に、上記外遮水シートの開口の開口縁部と上記外遮水シート片とを互いに接合している。
【0020】
このため、上記空間は密閉状の空間にできることから、この空間に粘性流動状態の遮水材を注入したとき、この遮水材が上記空間から無用に漏出することは防止される。よって、上記空間への遮水材の充填は、この遮水材を上記空間に所定量注入することによって、より確実に行われ、この結果、この排水装置のシール性能は合理的に十分に確保される。
【0021】
請求項4の発明によれば、上記請求項1および請求項2に基づく効果が生じる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】図2の部分拡大断面図である。
【図2】貯留水場の簡略側面断面図である。
【図3】図1で示したものの正面図である。
【図4】組立体の斜視図である。
【図5】貯留水場の形成方法を説明する図1に相当する図である。
【図6】貯留水場の形成方法を説明する図3に相当する図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明の貯留水場に関し、地盤上に形成され、上方に向かって開口する凹形状の貯留水域内の水を、その外部に向かって排水する排水装置を備えた貯留水場において、上記貯留水域内の水が上記排水装置のいずれかの部位を通し地盤内に染み込む、ということをより確実に防止する、という目的を実現するため、本発明を実施するための形態は、次の如くである。
【0024】
即ち、貯留水場は、地盤上に形成され上方に向かって開口する凹形状の貯留水域と、この貯留水域の内面に敷設され、互いに対面する内、外遮水シートと、これら内、外遮水シートの面方向における互いにほぼ同一位置の一部に形成された各開口を通し、上記貯留水域内の水をその外部に向かって排水する排水装置とを備える。
【0025】
上記排水装置は、上記貯留水域の内面のうちの上記各開口と互いに対応する一部内面に沿って延び、かつ、互いに対面すると共に上記各開口の開口縁部と互いに接合される内、外遮水シート片と、これら内、外遮水シート片にそれぞれ形成された貫通孔に挿通され、その外周面がこれら各貫通孔の孔縁部に接合される排水パイプと、上記内、外遮水シート片および排水パイプで囲まれた空間に充填される遮水材とを備えている。
【実施例】
【0026】
本発明をより詳細に説明するために、その実施例を添付の図に従って説明する。
【0027】
図1〜図4において、符号1は貯留水場である。図例では、この貯留水場1は、各種廃棄物の最終処分場としての埋立地である。なお、この貯留水場1は、ラグーンなどにおける埋立地、灌漑用などの貯水池、およびその他の高精度の遮水施設を含む概念である。また、貯留水場1における貯留水とは、この貯留水場1に意図的に貯められる水2と、雨水などにより、無意図的に溜まる水2との少なくともいずれか一方を意味している。
【0028】
上記貯留水場1は、地盤3上に形成され、上方に向かって開口する凹形状の貯留水域4を備えている。平面視で、この貯留水域4の中央部側における地盤3上面が貯留水域4の内面の一部分である底面5とされ、貯留水域4の外縁部における地盤3上面が貯留水域4の内面の他部分である傾斜面(法面)6とされている。この傾斜面6は、上記底面5の外縁部から、その外方かつ斜め上方に延びている。
【0029】
上記貯留水域4の内面に全体的に敷設され、上下方向で互いに対面する内、外遮水シート9,10と、これら両シート9,10の間に挟まれる保護シート11とが設けられている。上記各遮水シート9,10は、それぞれ熱可塑性の低密度ポリエチレン樹脂(LDPE)製であり、厚さほぼ1.5mm以上であって、通常ほぼ3mmとされ、可撓性を有している。また、上記各遮水シート9,10の軟化点はほぼ110℃、溶融開始点はほぼ200℃である。なお、上記各遮水シート9,10は、上記材質に限定されるものではなく、熱可塑性の高密度ポリエチレン(HDPE)、もしくは塩化ビニールなどの樹脂製であってもよい。また、上記保護シート11は、ポリエステル樹脂の不織布製マットやウレタン製マットを上記各遮水シート9,10のような材質の上、下シートで挟み付けた多層体であって、全体的な厚さはほぼ10mmとされ、可撓性を有している。
【0030】
上記内、外遮水シート9,10および保護シート11の各面方向における互いにほぼ同一位置の一部に、矩形の開口12,13,14がそれぞれ形成されている。これら開口12,13,14は、上記貯留水域4の内面のうち、傾斜面6の下部と互いに対向している。上記各開口12,13,14を通し、上記貯留水域4内の水2をこの貯留水域4の外部に向かって排水する排水装置15が設けられている。また、このように排水された水2を浄化して放流する水処理設備16が設けられている。
【0031】
上記排水装置15は、上記貯留水域4の内面のうち、上記各開口12,13,14と互いに対応する一部内面(傾斜面6の下部)に沿って延び、かつ、上下方向で互いに少し離れて対面する矩形の内、外遮水シート片19,20と、これら各遮水シート片19,20に形成された円形の貫通孔21,22に挿通されてほぼ水平に延び、その外周面がこれら各貫通孔21,22の孔縁部に全周接合W1される排水パイプ23と、この排水パイプ23の貯留水域4とは反対側の端部を上記水処理設備16に連通させる他の排水パイプ24と、これら排水パイプ23,24を通し上記貯留水域4内の水2を上記水処理設備16に送水する水ポンプ25とを備えている。なお、この水ポンプ25を設けないで、上記水処理設備16に対し、上記貯留水域4内の水2を排水パイプ23,24を通し自然流下により送水させてもよい。
【0032】
上記各遮水シート片19,20は、前記各遮水シート9,10と同様の材質とされ、これら9,10と同様の厚さとされて可撓性を有している。また、上記排水パイプ23は熱可塑性のポリエチレン樹脂製とされ、内径が200〜400mm程度の円形パイプとされる。上記各貫通孔21,22の孔縁部と排水パイプ23の外周面との接合W1は、工場での作業として、押し出し肉盛溶着機を用い、そのノズルから熱溶融させた高温樹脂を押し出し、上記各貫通孔21,22の孔縁部と排水パイプ23の外周面との互いの対向部に肉盛りすることにより行われる。つまり、上記接合W1により、その対象となる互いの対向部同士が熱溶着される。
【0033】
上記内遮水シート9の開口12の開口縁部と、上記外遮水シート10の開口13の開口縁部におけるその幅方向での開口13に近い側の一部分とは、それぞれ上記内遮水シート片19の外面に接合W2,W3させられている。また、上記外遮水シート10の開口13の開口縁部におけるその幅方向での開口13から遠い側の他部分は、上記外遮水シート片20の外縁部に接合W4させられている。上記各接合W2〜W4は、いずれも矩形の環形状をなし、これら接合W2〜W4は、現場作業として、前記接合W1のときと同様の溶着機と、これに加えられる手動式熱風溶着機とを用いて行われる。つまり、上記接合W2〜W4により、その対象となる互いにの対向部同士が熱溶着される。
【0034】
上記外遮水シート10の開口13の開口縁部、上記内、外遮水シート片19,20、および排水パイプ23で囲まれた密閉状の空間28に遮水材29が充填されている。また、上記空間28の上部に対応する上記外遮水シート片20の上部にそれぞれ全周接合W5され、上記空間28に向かって遮水材29を粘性流動状態で注入させる注入パイプ31、および上記空間28内の空気32を外部に排気させる空気抜きパイプ33が設けられている。上記遮水材29は、ポリウレタン樹脂製であって、まず、異種の二液が混合されることにより接着性のある粘性流動状態とされる。そして、この遮水材29が上記空間28に注入され、その後、上記二液の互いの化学反応により常温固化される。また、上記各パイプ31,33は前記排水パイプ23と同様の材質であって、内径が10〜50mm程度の円形パイプとされる。
【0035】
上記各開口12,13,14に対応する地盤3の表層部に埋入されるようコンクリートブロック36が設置される。この場合、上記排水パイプ23は上記コンクリートブロック36を貫通している。一方、上記内遮水シート片19の内面に、全体的に複数のアンカー37が一体的に突設されている。そして、これらアンカー37は、上記傾斜面6とほぼ面一とされる上記コンクリートブロック36の外面側に埋入され、このコンクリートブロック36の外面に上記内遮水シート片19が直接固定されている。この場合、上記排水パイプ23は上記コンクリートブロック36を水平方向で貫通した状態で上記コンクリートブロック36に埋入される。
【0036】
次に、上記貯留水場1の形成方法につき説明する。
【0037】
まず、工場などにおいて、上記内、外遮水シート片19,20、排水パイプ23、注入パイプ31、および空気抜きパイプ33による組立体38を形成する。
【0038】
図5,6において、現場において、上記コンクリートブロック36の設置予定位置における地盤3の表層部に、外方に向かって開口する上記コンクリートブロック36形成用の型枠39を設置する。
【0039】
次に、上記型枠39の開口40を閉じるようこの型枠39の上面に上記組立体38の内遮水シート片19を設置し、かつ、上記型枠39の内部とこの型枠39とを貫通するよう上記組立体38の排水パイプ23を設置する。また、この組立体38の内、外遮水シート片19,20の間に差し込んだ2つ割り構成の押え型枠41,41を、上記内遮水シート片19の上面に当接させ、かつ、地盤3側に固定する。
【0040】
次に、上記型枠39内にコンクリートを打設して、上記コンクリートブロック36を形成すると共に、このコンクリートブロック36に上記各アンカー37と排水パイプ23とを埋設して上記コンクリートブロック36に上記内遮水シート片19と排水パイプ23とを固定する。この後、上記押え型枠41,41は除去する(図6中二点鎖線)が、上記型枠39は除去してもよく、残存させてもよい。
【0041】
図1,3において、上記貯留水域4の内面に内遮水シート9を敷設する。この際、この内遮水シート9の敷設に先立って、予め、上記外遮水シート片20を屈曲させて小型形状となるよう全体的に収縮させる。次に、この外遮水シート片20に上記内遮水シート9の開口12を嵌合させ、この開口12に対し相対的に上記のように収縮させた外遮水シート片20を通過させる。そして、この内遮水シート9の開口12の開口縁部を上記内遮水シート片19に接合W2させる。この接合W2の作業において、上記外遮水シート片20の部分が邪魔になるならば、この外遮水シート片20の部分を上記開口12から離すよう上方に屈曲させておけばよい。
【0042】
次に、上記内遮水シート9の上面に保護シート11と外遮水シート10とを順次敷設する。この際、これら保護シート11と外遮水シート10との敷設に先立って、上記と同じように、予め、上記外遮水シート片20を屈曲させて小型形状となるよう全体的に収縮させる。次に、この外遮水シート片20に上記保護シート11の開口14と上記外遮水シート10の開口13とを順次嵌合させ、これら開口13,14に対し相対的に上記のように収縮させた外遮水シート片20を通過させる。そして、上記外遮水シート10の開口13の開口縁部の前記一部分を上記内遮水シート片19に接合W3させる。この接合W3の作業において、上記外遮水シート片20の部分が邪魔になるならば、この外遮水シート片20の部分を上記開口13から離すよう上方に屈曲させておけばよい。次に、上記外遮水シート10の開口13の開口縁部の前記他部分を、上記収縮させた状態から平坦な原形状に復元させた上記外遮水シート片20に接合W4させる。
【0043】
次に、上記外遮水シート10の開口13の開口縁部、上記内、外遮水シート片19,20、および排水パイプ23で囲まれた空間28に上記注入パイプ31を通し前記した二液の混合により粘性流動状態とされた遮水材29を注入し、その後、これら二液の互いの化学反応によりこの遮水材29を固化させる。この遮水材29の上記空間28への注入の際、この空間28内の空気32は上記空気抜きパイプ33を通し排気される。また、上記遮水材29は、上記注入パイプ31と空気32との各内部にまで注入される。これにより、上記空間28内には遮水材29が十分に充填される。この遮水材29の固化後には、上記注入パイプ31と空気抜きパイプ33とを外遮水シート片20の上面に沿った面で切断除去する。その除去面には、ポリエチレン製のシート片を手動式熱風溶着機で溶着することにより接合する。
【0044】
上記構成によれば、排水装置15が、上記貯留水域4の内面のうちの上記各開口12,13と互いに対応する一部内面に沿って延び、かつ、互いに対面すると共に上記各開口12,13の開口縁部と互いに接合される内、外遮水シート片19,20と、これら内、外遮水シート片19,20にそれぞれ形成された貫通孔21,22に挿通され、その外周面がこれら各貫通孔21,22の孔縁部に接合W1される排水パイプ23と、上記内、外遮水シート片19,20および排水パイプ23で囲まれた空間28に充填される遮水材29とを備えている。
【0045】
このため、上記排水装置15は内、外遮水シート片19,20を備えていて、貯留水域4の内面に全体的に敷設される内、外遮水シート9,10と同様の2重遮水シート構造とされ、しかも、上記内、外遮水シート片19,20および排水パイプ23で囲まれた空間28には遮水材29が充填されている。よって、上記各開口12,13の開口縁部と内、外遮水シート片19,20との間、および、これら内、外遮水シート片19,20の各貫通孔21,22の孔縁部と排水パイプ23の外周面との間は、それぞれ上記遮水材29によって、より確実にシールされる。
【0046】
この結果、上記排水装置15における上記地盤3と貯留水域4内との間のシール性能が十分に確保され、上記貯留水域4内の水2が上記排水装置15のいずれかの部位を通し地盤3内に染み込む、ということはより確実に防止される。
【0047】
また、前記したように、各開口12,13に対応する地盤3の表層部に埋入されるようコンクリートブロック36を設置し、上記内遮水シート片19の内面に突設したアンカー37を上記コンクリートブロック36に埋設している。
【0048】
このため、上記内遮水シート片19は、上記貯留水域4の内面の所定位置に対し上記コンクリートブロック36とアンカー37とにより強固に固定されると共に、これらコンクリートブロック36とアンカー37とによってより確実に補強されることから、上記内遮水シート片19を構成部品とする上記排水装置15も、上記貯留水域4の内面の所定位置に強固に支持されると共に、それ自体補強される。よって、上記排水装置15に何らかの外力が与えられる場合でも、上記貯留水域4の内面の所定位置に対する排水装置15の位置ずれが防止されると共に、この排水装置15自体の変形が防止されて、そのシール性能は良好なままに保たれる。
【0049】
また、前記したように、各開口12,13の開口縁部のそれぞれと上記内遮水シート片19とを互いに接合W2,W3すると共に、上記外遮水シート10の開口13の開口縁部と上記外遮水シート片20とを互いに接合W4している。
【0050】
このため、上記空間28は密閉状の空間になることから、この空間28に粘性流動状態の遮水材29を注入したとき、この遮水材29が上記空間28から無用に漏出することは防止される。よって、上記空間28への遮水材29の充填は、この遮水材29を上記空間28に所定量注入することによって、より確実に行われる。この結果、この排水装置15のシール性能は合理的に十分に確保される。
【0051】
なお、以上は図示の例によるが、各開口12,13,14と内、外遮水シート片19,20とはそれぞれ多角形状や円形状であってもよい。また、上記各パイプ23,31,33は角パイプであってもよい。また、上記接合は、上記した熱溶着の他、高周波などによる溶接であってもよく、接着剤による接着であってもよい。
【0052】
また、上記排水装置15は、上記貯留水域4の底面5に設置してもよい。また、特に、上記内、外遮水シート9,10と保護シート11とが互いに接着された一体型の場合には、これら各部材9〜11の間はシール性があるため、上記外遮水シート10の開口13の開口縁部は上記外遮水シート片20にのみ接合W4させてもよい。また、上記外遮水シート10の開口13の開口縁部の一部分は、これを上記内遮水シート9の開口12の開口縁部に接合させ、つまり、この内遮水シート9の開口12の開口縁部を介し上記内遮水シート片19に間接的に接合させてもよい。
【0053】
また、上記遮水材29は、熱可塑性の樹脂材であってもよく、この場合には、この遮水材29を熱溶融させることにより粘性流動状態として上記空間28に注入し、その後、自然冷却などにより固化させればよい。
【符号の説明】
【0054】
1 貯留水場
2 水
3 地盤
4 貯留水域
5 底面
6 傾斜面
9 内遮水シート
10 外遮水シート
11 保護シート
12 開口
13 開口
14 開口
15 排水装置
19 内遮水シート片
20 外遮水シート片
21 貫通孔
22 貫通孔
23 排水パイプ
28 空間
29 遮水材
36 コンクリートブロック
37 アンカー
38 組立体
39 型枠
40 開口
W1 接合
W2 接合
W3 接合
W4 接合
W5 接合

【特許請求の範囲】
【請求項1】
地盤上に形成され上方に向かって開口する凹形状の貯留水域と、この貯留水域の内面に敷設され、互いに対面する内、外遮水シートと、これら内、外遮水シートの面方向における互いにほぼ同一位置の一部に形成された各開口を通し、上記貯留水域内の水をその外部に向かって排水する排水装置とを備えた貯留水場において、
上記排水装置が、上記貯留水域の内面のうちの上記各開口と互いに対応する一部内面に沿って延び、かつ、互いに対面すると共に上記各開口の開口縁部と互いに接合される内、外遮水シート片と、これら内、外遮水シート片にそれぞれ形成された貫通孔に挿通され、その外周面がこれら各貫通孔の孔縁部に接合される排水パイプと、上記内、外遮水シート片および排水パイプで囲まれた空間に充填される遮水材とを備えたことを特徴とする貯留水場。
【請求項2】
上記各開口に対応する地盤の表層部に埋入されるようコンクリートブロックを設置し、上記内遮水シート片の内面に突設したアンカーを上記コンクリートブロックに埋設したことを特徴とする請求項1に記載の貯留水場。
【請求項3】
上記各開口の開口縁部のそれぞれと上記内遮水シート片とを互いに接合すると共に、上記外遮水シートの開口の開口縁部と上記外遮水シート片とを互いに接合したことを特徴とする請求項1、もしくは2に記載の貯留水場。
【請求項4】
請求項2に記載の貯留水場の形成方法であって、
上記コンクリートブロックの設置予定位置における地盤の表層部に、外方に向かって開口する上記コンクリートブロック形成用の型枠を設置し、
上記型枠の開口を閉じるようこの型枠の上面に上記内遮水シート片を設置し、
上記型枠内にコンクリートを打設して、上記コンクリートブロックを形成すると共に、このコンクリートブロックに上記アンカーを埋設して上記コンクリートブロックに上記内遮水シート片を固定し、
上記各開口の開口縁部と上記内、外遮水シート片とをそれぞれ互いに接合し、
上記空間に粘性流動状態の遮水材を注入し、その後固化させることを特徴とする貯留水場の形成方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−227765(P2010−227765A)
【公開日】平成22年10月14日(2010.10.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−75993(P2009−75993)
【出願日】平成21年3月26日(2009.3.26)
【出願人】(000205627)大阪府 (238)
【出願人】(000204192)太陽工業株式会社 (174)
【出願人】(000000549)株式会社大林組 (1,758)
【出願人】(000140292)株式会社奥村組 (469)
【出願人】(390036515)株式会社鴻池組 (41)
【出願人】(591159675)錦城護謨株式会社 (27)
【出願人】(000106726)シーアイ化成株式会社 (267)
【出願人】(000003160)東洋紡績株式会社 (3,622)
【出願人】(000166627)五洋建設株式会社 (364)
【出願人】(000219406)東亜建設工業株式会社 (177)
【出願人】(000222668)東洋建設株式会社 (131)
【出願人】(000236610)株式会社不動テトラ (136)
【出願人】(000173773)財団法人地域地盤環境研究所 (7)
【出願人】(599105159)
【Fターム(参考)】