説明

貯蔵タンクのフローティングルーフ構造

【課題】フローティングルーフに水が溜まらないようにすることができる貯蔵タンクのフローティングルーフ構造を提供すること。
【解決手段】貯蔵タンク10は、油等の液体を貯蔵するために有底円筒状に形成されたタンク本体10aと、タンク本体10aに貯蔵された液体の液面に浮かべられる円板状のフローティングルーフ13と、フローティングルーフ13の中心部cに開口された排水口14と連通し、当該排水口14に集められた雨水をタンク本体10aの外部に排出するドレン配管18と、を備える。フローティングルーフ13は、外周縁部から排水口14に向けて下り勾配形状に湾曲して形成された湾曲面13aと、湾曲面13aに立設されフローティングルーフ13を補強する補強プレート20と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、油等の液体を貯蔵する貯蔵タンクのフローティングルーフ構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、原油その他の揮発性・可燃性液体を貯蔵する、大型のフローティングルーフ式の貯蔵タンク(以下、単に貯蔵タンクという)が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
図6は、従来の貯蔵タンクの一例を示す断面図である。図6に示すように、貯蔵タンク100は、タンク本体100aと、フローティングルーフ113と、排水口14と、集水ピット17と、ドレン配管18と、を備える。また、貯蔵タンク100は、シール部15及びウェザーシールド16を備える。
【0004】
タンク本体100aは、油等の液体を貯蔵するために有底円筒状に形成されている。すなわち、タンク本体100aは、円板状の底板部11と、底板部11の外周縁部に立設された円筒状の側壁部12とから構成されている。
【0005】
フローティングルーフ113は、タンク本体100aに貯蔵された液体の液面に浮かべられる円板状の浮屋根であり、貯蔵液体の蒸発を防止する。排水口14は、フローティングルーフ113の中心部に開口され、雨水が流れ込めるようになっている。
【0006】
フローティングルーフ113は、所定厚みの鉄板等により形成されており、全体としては略平坦面となっているが、外周縁部から中心の排水口14に向けてわずかな下り勾配(水勾配)を有している。
【0007】
シール部15は、フローティングルーフ113の外周縁部に設けられ、フローティングルーフ113と側壁部12とのシールを確保する。ウェザーシールド16は、フローティングルーフ113の外周縁部上方に配設され、雨、雪等が貯蔵液体内に浸入するのを防止する。
【0008】
集水ピット17は、フローティングルーフ113の下面側に配置され、排水口14からの雨水を集める。ドレン配管18は、一端側が集水ピット17に連結され、タンク本体100a内を延びて他端側がタンク本体100aの外部に位置する。このドレン配管18は、集水ピット17に集められた雨水をタンク本体100aの外部に排出する。
【0009】
なお、貯蔵タンク100には、図示しない緊急用排出管(非常用排水装置)が設けられている。この緊急用排出管は、ドレン配管18等の故障時やドレン配管18等の排水能力以上の降雨時に、フローティングルーフ113の沈没防止を図るために、フローティングルーフ113上に溜まった水をタンク本体100a内の貯蔵液に排水するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2005−187050号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
上記従来技術にあっては、フローティングルーフ113に所定の水勾配が形成されている。しかしながら、大型の貯蔵タンク100にあっては、フローティングルーフ113の直径が、例えば50メートルに及ぶものもあるため、フローティングルーフ113の構成部材である鉄板の一部に、撓み等によって凹部等が生じると、雨水等による水溜りが出来やすく、上記従来の水勾配では十分な排水能力を確保できなかった。
【0012】
そして、このような水溜りを放置すると、フローティングルーフ113に腐食等が発生する虞があった。
【0013】
また、ドレン配管18等に故障等が発生していないにもかかわらず、フローティングルーフ113上に溜まった水が、上記緊急用排出管を介してタンク本体100a内に流れ込む虞もあった。
【0014】
したがって、フローティングルーフに水が溜まらないようにすることができる手段の提供が望まれていた。
【0015】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、フローティングルーフに水が溜まらないようにすることができる貯蔵タンクのフローティングルーフ構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上記目的を達成するため、本発明は、以下のような貯蔵タンクのフローティングルーフ構造を提供する。
【0017】
(1) 油等の液体を貯蔵するために有底円筒状に形成されたタンク本体と、前記タンク本体に貯蔵された前記液体の液面に浮かべられ、中心部に排水口が設けられた円板状のフローティングルーフと、前記排水口と連通し当該排水口に集められた雨水を前記タンク本体の外部に排出するドレン配管と、を備える貯蔵タンクのフローティングルーフ構造であって、前記フローティングルーフは、外周縁部から前記排水口に向けて下り勾配形状に湾曲して形成された湾曲面と、前記湾曲面に立設され前記フローティングルーフを補強する補強プレートと、を備えることを特徴とする。
【0018】
フローティングルーフ上に降った雨水は、降雨量にかかわらず、湾曲面に沿って排水口に円滑に流れる。すなわち、フローティングルーフには、従来のような平坦面がないので、雨水が滞留することがない。そして、排水口に到達した雨水は、ドレン配管によってタンク本体の外部に円滑に排出される。
【0019】
したがって、(1)の発明によれば、フローティングルーフに水が溜まらないようにすることができる。また、フローティングルーフは、補強プレートによって補強されているので、フローティングルーフが湾曲形成されていても強度が低下することがなく、地震等の振動の作用によりスロッシング(液面揺動)が生じても、変形や破壊を抑制することができる。
【0020】
(2) (1)の発明においては、前記補強プレートは、前記フローティングルーフの前記中心部から半径方向に亘って複数立設されていることが好ましい。
【0021】
(2)の発明によれば、貯蔵タンクの容量や大きさに応じて補強プレートの立設数を適宜増減することにより、フローティングルーフの強度を容易に確保することができる。
【0022】
(3) (2)に記載の発明においては、前記補強プレートは、前記フローティングルーフの直交する二つの直径の位置に立設されていることが好ましい。
【0023】
(3)の発明によれば、きわめて簡易な構造でフローティングルーフの強度を容易に確保することができる。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、フローティングルーフには、従来のような平坦面がないので、フローティングルーフ上に降った雨水は、湾曲面に沿って排水口に円滑に流れる。したがって、フローティングルーフに水が溜まらないようにすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の実施形態に係るフローティングルーフを示す斜視図である。
【図2】フローティングルーフを示す平面図である。
【図3】貯蔵タンクを示す断面図である。
【図4】他のフローティングルーフを示す平面図である。
【図5】他のフローティングルーフを示す平面図である。
【図6】従来の貯蔵タンクの一例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下に、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施形態により本発明が限定されるものではない。
【0027】
図1は、本発明の実施形態に係るフローティングルーフを示す斜視図である。図2は、フローティングルーフを示す平面図である。図3は、貯蔵タンクを示す断面図である。
【0028】
図3に示すように、貯蔵タンク10は、タンク本体10aと、フローティングルーフ13と、排水口14と、集水ピット17と、ドレン配管18と、を備える。また、貯蔵タンク10は、シール部15及びウェザーシールド16を備える。
【0029】
タンク本体10aは、図3に示すように、油等の液体を貯蔵するために有底円筒状に形成されている。すなわち、タンク本体10aは、円板状の底板部11と、底板部11の外周縁部に立設された円筒状の側壁部12とから構成されている。
【0030】
フローティングルーフ13は、図3に示すように、タンク本体10aに貯蔵された液体の液面に浮かべられる円板状の浮屋根であり、貯蔵液体の蒸発を防止する。排水口14は、図1〜図3に示すように、フローティングルーフ13の中心部cに開口された円形穴であり、雨水が流れ込めるようになっている。
【0031】
また、フローティングルーフ13は、図1〜図3に示すように、外周縁部から排水口14に向けて下方に向かって凸となるように湾曲して形成された湾曲面13aと、湾曲面13aに立設され、フローティングルーフ13を補強する4つの補強プレート20と、を備える。
【0032】
湾曲面13aは、図1及び図3に示すように、排水口14が最も低くなるように断面円弧状に形成されている。湾曲面13aの勾配は、例えば、3万KLの貯蔵タンク10において、1:70程度とすることができるが、貯蔵タンク10の容量や大きさ等に応じて適宜増減可能である。
【0033】
4つの補強プレート20は、図1〜図3に示すように、フローティングルーフ13の直交する二つの直径の位置に立設されている。フローティングルーフ13と補強プレート20の底部20aとは、溶接等により固定されている。
【0034】
この4つの補強プレート20で区画されたフローティングルーフ13の中心部cには、それぞれ上記排水口14が設けられている。
【0035】
シール部15は、フローティングルーフ13の外周縁部に設けられ、フローティングルーフ13と側壁部12とのシールを確保する。シール部15は、例えば、ウレタンフォーム等のシール材をゴムシートで被覆し、フローティングルーフ13に固定されている。すなわち、フローティングルーフ13は、シール部15の上記ゴムシートが側壁部12に圧接されながら、滑る構造となっている。
【0036】
ウェザーシールド16は、フローティングルーフ13の外周縁部上方に配設され、雨、雪等が貯蔵液体内に浸入するのを防止する。ウェザーシールド16も側壁部12に圧接されながら、滑る構造となっている。
【0037】
集水ピット17は、フローティングルーフ13の下面側に配置され、排水口14からの雨水を集める。ドレン配管18は、一端側が集水ピット17に連結され、タンク本体10a内を延びて他端側がタンク本体10aの外部に位置する。このドレン配管18は、集水ピット17に集められた雨水をタンク本体10aの外部に排出する。
【0038】
なお、貯蔵タンク10には、図示しない緊急用排出管(非常用排水装置)が設けられている。この緊急用排出管は、ドレン配管18等の故障時やドレン配管18等の排水能力以上の降雨時に、フローティングルーフ13の沈没防止を図るために、フローティングルーフ13上に溜まった水をタンク本体10a内の貯蔵液に排水するものである。
【0039】
次に、フローティングルーフ13及び補強プレート20の作用効果について図1〜図3を参照して説明する。
【0040】
フローティングルーフ13上に降った雨水は、降雨量にかかわらず、図1〜図3に示す湾曲面13aに沿って、最も低位置の排水口14に円滑に流れる。すなわち、フローティングルーフ13には、従来のような平坦面がないので、雨水が滞留することがない。
【0041】
そして、排水口14に到達した雨水は、図3に示す集水ピット17に集まり、ドレン配管18によってタンク本体10aの外部に円滑に排出される。
【0042】
以上のように、この実施形態に係る貯蔵タンクのフローティングルーフ構造によれば、フローティングルーフ13に水が溜まらないようにすることができる。
【0043】
したがって、水溜りが原因で、フローティングルーフ13に腐食等が発生することがない。また、水溜りが原因で、緊急用排出管を介してタンク本体10a内に雨水等が流れ込む虞もない。
【0044】
また、フローティングルーフ13は、補強プレート20によって補強されているので、フローティングルーフ13が湾曲形成されていても強度が低下することがなく、地震等の振動の作用によりスロッシング(液面揺動)が生じても、変形や破壊を抑制することができる。
【0045】
補強プレート20は、フローティングルーフ13の直交する二つの直径の位置に立設されているので、きわめて簡易な構造でフローティングルーフ13の強度を容易に確保することができる。
【0046】
なお、上記実施形態においては、補強プレート20は、フローティングルーフ13の直交する二つの直径の位置に立設されているものとして説明したが、これに限定されない。
【0047】
すなわち、例えば、図4に示すように、補強プレート20を、中心部cから半径方向に向けて均等に3つ立設してもよい。また、図5に示すように、補強プレート20を、中心部cから半径方向に向けて均等に8つ立設してもよい。
【0048】
これらの場合にも、簡易な構造でフローティングルーフ13の強度を容易に確保することができる。ここで、図4及び図5は、他のフローティングルーフを示す平面図である。
【符号の説明】
【0049】
10 貯蔵タンク
10a タンク本体
11 底板部
12 側壁部
13 フローティングルーフ
13a 湾曲面
14 排水口
15 シール部
16 ウェザーシールド
17 集水ピット
18 ドレン配管
20 補強プレート
20a 底部
c 中心部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
油等の液体を貯蔵するために有底円筒状に形成されたタンク本体と、
前記タンク本体に貯蔵された前記液体の液面に浮かべられ、中心部に排水口が設けられた円板状のフローティングルーフと、
前記排水口と連通し当該排水口に集められた雨水を前記タンク本体の外部に排出するドレン配管と、
を備える貯蔵タンクのフローティングルーフ構造であって、
前記フローティングルーフは、外周縁部から前記排水口に向けて下り勾配形状に湾曲して形成された湾曲面と、
前記湾曲面に立設され前記フローティングルーフを補強する補強プレートと、
を備えることを特徴とする貯蔵タンクのフローティングルーフ構造。
【請求項2】
前記補強プレートは、前記フローティングルーフの前記中心部から半径方向に亘って複数立設されていることを特徴とする請求項1に記載の貯蔵タンクのフローティングルーフ構造。
【請求項3】
前記補強プレートは、前記フローティングルーフの直交する二つの直径の位置に立設されていることを特徴とする請求項2に記載の貯蔵タンクのフローティングルーフ構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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