説明

貯蔵タンクの側壁構造、及び貯蔵タンクの側壁構造構築方法

【課題】ライナープレートの取り付けにおける作業性を向上できる貯蔵タンクの側壁構造、及び側壁構造構築方法を提供する。
【解決手段】第一ライナープレート3の両端部3a,3bがアンカー2の取付部2aに取り付けられ、周方向D1において互いに離間している一の第一ライナープレート3と他の第一ライナープレート3との間に、第二ライナープレート4が配置されてその両端部4a,4bがそれぞれの第一ライナープレート3に重なって取り付けられる構成とする。これによって、プレート加工時における高い寸法精度や取付時における高い位置精度を不要とし、ライナープレートの取付順序の制限を受けない作業を可能とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、貯蔵タンクの側壁構造、及び貯蔵タンクの側壁構造構築方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、液化天然ガス(LNG)、液化石油ガス(LPG)などの低温物体(ガス及び液体)を貯蔵する貯蔵タンクが知られている。貯蔵タンクは、側壁と底壁を有するコンクリート製の外槽と、外槽の内側を覆って気密性を高めるためのライナーと、断熱性を確保するための断熱材と、低温物体を貯留する内槽と、を備えている。ライナーは、複数のライナープレートを外槽の側壁の表面に取り付けることによって構成される。このような貯蔵タンクの側壁構造として、特許文献1が知られる。この側壁構造は、側壁に埋設されたアンカーを当該側壁の表面から露出させ、当該アンカーにライナープレートを固定することによって構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−077994号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述の側壁構造においては、周方向に互いに隣合うライナープレートの端部同士をアンカーの位置で突き合わせ、当該状態にてそれらの端部をアンカーに固定している。しかしながら、このような構造においては、個々のライナープレートを寸法精度良く加工する必要があると共に、位置精度良くライナープレートを配置する必要がある。また、ライナープレートの取付作業は、側壁の周方向における複数の位置において、同時進行で実行できることが好ましい。すなわち、周方向における各ライナープレートの取付順序が制限を受けず、いずれの位置からもライナープレート取付作業が可能であることが求められている。以上のように、ライナープレートの取り付けにおける作業性を向上させることが従来より要求されていた。
【0005】
本発明は、ライナープレートの取り付けにおける作業性を向上でき、コストを削減すると共に、工期を短縮することができる貯蔵タンクの側壁構造、及び側壁構造構築方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る貯蔵タンクの側壁構造は、槽の側壁と、側壁の周方向に所定の間隔で複数埋設され、当該側壁の表面に取付部を形成するアンカーと、側壁の表面を覆うライナーと、を備える貯蔵タンクの側壁構造であって、ライナーは、周方向に複数並べられる第一ライナープレートと、周方向に複数並べられる第二ライナープレートと、を備え、第一ライナープレートの周方向における両端部は、それぞれアンカーの取付部に取り付けられ、一の第一ライナープレートは、周方向に隣り合う他の第一ライナープレートから、周方向において離間し、第二ライナープレートの周方向における一端部は、一の第一ライナープレートに重なると共に取り付けられ、第二ライナープレートの周方向における他端部は、他の第一ライナープレートに重なると共に取り付けられることを特徴とする。
【0007】
本発明に係る貯蔵タンクの側壁構造によれば、第一ライナープレートの両端部がアンカーの取付部に取り付けられ、周方向において互いに離間している一の第一ライナープレートと他の第一ライナープレートとの間に、第二ライナープレートが配置されてその両端部がそれぞれの第一ライナープレートに重なって取り付けられる構成となっている。第一ライナープレートは、従来のようにアンカーの位置において、周方向に隣り合う他のライナープレートと突き合わせ溶接するものではなく、間に第二ライナープレートを配置できる程度に大きく離間させることができる。従って、第一ライナープレートは、隣り合う他のライナープレートとの位置関係に影響を受けることなく取り付け可能となるため、プレート加工時における高い寸法精度や取付時における高い位置精度が不要とされる。また、第二ライナープレートも、両端部をそれぞれの第一ライナープレートに重ねて取り付けられるものである。従って、アンカーとの位置関係や第一ライナープレートの端部の位置関係に影響を受けることなく取り付け可能となるため、プレート加工時における高い寸法精度や取付時における高い位置精度が不要とされる。第一ライナープレートは隣り合う他の第一ライナープレートとの位置関係に影響を受けることなく取付可能(すなわち、一の第一ライナープレートを取り付けなくては他の第一ライナープレートが取り付けられない、というものではない)であり、第二ライナープレートも、取り付けられる第一ライナープレートが先に取り付けられている限り、隣り合う他の第二ライナープレートとの位置関係に影響を受けるものではない。従って、側壁の周方向における各ライナープレートの取付順序が制限を受けず、いずれの位置からもライナープレート取付作業が可能である。以上によって、ライナープレートの取り付けにおける作業性を向上でき、コストを削減すると共に、工期を短縮することができる。
【0008】
本発明に係る貯蔵タンクの側壁構造構築方法は、槽の側壁を形成する側壁形成工程と、側壁の周方向に所定の間隔でアンカーを複数埋設し、側壁の表面に取付部を形成するアンカー埋設工程と、側壁の表面をライナーで覆うライナー形成工程と、を備える貯蔵タンクの側壁構造構築方法であって、ライナー形成工程は、第一ライナープレートを、周方向に複数並べる第一ライナープレート取付工程と、第二ライナープレートを、周方向に複数並べる第二ライナープレート取付工程を備え、第一ライナープレート取付工程では、第一ライナープレートの周方向における両端部は、それぞれアンカーの取付部に取り付けられ、一の第一ライナープレートは、周方向に隣り合う他の第一ライナープレートから、周方向において離間するように配置され、第二ライナープレート取付工程では、第二ライナープレートの周方向における一端部が、一の第一ライナープレートに重なると共に取り付けられ、第二ライナープレートの周方向における他端部が、他の第一ライナープレートに重なると共に取り付けられることを特徴とする。
【0009】
本発明に係る貯蔵タンクの側壁構造構築方法によれば、上述の側壁構造と同様の作用・効果を得ることが可能となる。これによって、ライナープレートの取り付けにおける作業性を向上させることができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、ライナープレートの取り付けにおける作業性を向上でき、コストを削減すると共に、工期を短縮することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の実施形態に係る側壁構造が適用された貯蔵タンクの概略断面図である。
【図2】本発明の実施形態に係る側壁構造を、貯蔵タンクの内側から見た図である。
【図3】図2に示すIII−III線に沿った断面図である。
【図4】図4(a)は、図2に示すIVa―IVa線に沿った断面図である。図4(b)は、図2に示すIVb−IVb線に沿った断面図である。
【図5】従来の側壁構造を貯蔵タンクの内側から見た図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照して本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。
【0013】
図1は、本発明の実施形態に係る側壁構造1が適用された貯蔵タンク100の概略断面図である。貯蔵タンク100は、液化天然ガス(LNG)、液化石油ガス(LPG)などの低温物体(ガス及び液体)を貯蔵するタンクであり、平面型の底部、円筒型の側部、及びドーム型の屋根部を有している。図1に示すように、貯蔵タンク100は、側壁102及び底壁103を有するコンクリート製の外槽(槽)101と、側壁102を覆う金属製のライナー104と、金属製の外槽屋根板105と、底壁103を覆う金属製の外槽底板106と、ライナー104の内周面に配置される側部断熱材107と、外槽屋根板105の内面に配置される屋根部断熱材108と、底部断熱材109と、側部断熱材107の内周面を覆う金属製の内槽側板110と、屋根部断熱材108を覆う金属製の内槽屋根板111と、底部断熱材109を覆う内槽底板112と、を備えている。本実施形態に係る側壁構造1は、外槽101の側壁102と、複数のアンカー2と、側壁102の表面102aを覆うライナー104と、を備えている。ライナー104は、複数の第一ライナープレート3及び複数の第二ライナープレート4によって構成されている。
【0014】
図2〜図4を参照して、貯蔵タンク100の側壁構造1の詳細な構造について説明する。図2は、本発明の実施形態に係る側壁構造1を、貯蔵タンク100の内側から見た図である。ただし、図2は、側部断熱材107及び内槽側板110を除いた状態が示されている。図3は、図2に示すIII−III線に沿った断面図である。なお、側壁102の表面102aは円弧状であるが、図3においては側壁102の表面102aを説明のために平面として示している。図4(a)は、図2に示すIVa―IVa線に沿った断面図である。図4(b)は、図2に示すIVb−IVb線に沿った断面図である。なお、図2〜図4では、側壁構造1の一部の構成として、アンカー2A,2B,2C,2D,2E、第一ライナープレート3A,3B,3C、第二ライナープレート4A,4B,4Cのみの構成を示しているが、他の部分においても同様の構成が採用される。また、以下の説明においては、側壁102の周方向、すなわち貯蔵タンク100の軸線周りの方向を「周方向D1」とし、上下方向、すなわち貯蔵タンク100の軸線が延びる方向を「上下方向D2」として説明する。また、図2における紙面左側を周方向D1における「一端部」、「一方」とし、紙面右側を周方向D1における「他端部」、「他方」として説明する。
【0015】
アンカー2は、側壁102の周方向D1に所定の間隔で複数埋設され、当該側壁102の表面102aに取付部2aを形成する。また、アンカー2は、上下方向D2においても所定の間隔で複数埋設される。図に示す例では、各アンカー2は、周方向D1に同一間隔で配置されると共に、上下方向D2に同一間隔で配置される。アンカー2の取付部2aは、アンカー2先端の固定部材の一面を表面102aから露出させることによって形成される。アンカー2の取付部2aは、矩形状に形成されている。ただし、取付部2aの形状は特に限定されず、円形などであってもよい。また、アンカー2は、周方向D1において隣り合う他のアンカー2と、上下方向D2における高さ位置が同じである。また、アンカー2は、上下方向D2において隣り合う他のアンカー2と、周方向D1における位置が同じである。
【0016】
図に示す例では、複数のアンカー2A、2B,2C,2D,2Eが、上下方向D2に沿って同一間隔で並んでいる。また、周方向D1に沿って、複数のアンカー2A、2B,2C,2D,2Eが、この順で並んでいる。
【0017】
第一ライナープレート3は、上下方向D2に延びる長方形状を有し、周方向D1に複数並べられる。また、第一ライナープレート3は、上下方向D2に複数並べられる。第一ライナープレート3の周方向D1における両端部3a,3bは、互いに異なるアンカー2の取付部2aに取り付けられる。一の第一ライナープレート3は、周方向D1に隣り合う他の第一ライナープレート3から、周方向D1において離間するように取り付けられる。すなわち、従来、ライナープレートは周方向D1において隙間なく(あるいは溶接代のための隙間程度をあけて)並べられていたが、第一ライナープレート3は、ライナープレートほぼ一枚分の間隔を空けて並べられる。
【0018】
また、一の第一ライナープレート3の上下方向D2における端部は、上下方向D2に隣り合う他のライナープレート3の端部に重なる(あるいは、重ねられる)と共に取り付けられる。なお、一枚の第一ライナープレート3の一端部3a(他端部3b)は、二つのアンカー2に対して固定されている。ただし、アンカー2の間隔や第一ライナープレート3の長さが変わることで、固定されるアンカー2の数は変更されてもよい。
【0019】
第一ライナープレート3の一端部3aは、周方向D1における一方のアンカー2の取付部2aに取り付けられている。すみ肉溶接により、一端部3aと取付部2aとの間に溶接部11が形成される(図3参照)。ライナープレート3の他端部3bは、周方向D1における他方のアンカー2の取付部2aに取り付けられている。すみ肉溶接により、他端部3bと取付部2aとの間に溶接部12が形成される(図3参照)。
【0020】
第一ライナープレート3の下端部3dは、一枚下のライナープレート3の上端部3cに重なると共に取り付けられている。すみ肉溶接により、下端部3dと上端部3cの間に溶接部16が形成される(図4(a)参照)。すなわち、上端部3cが側壁102の表面102aと接して、下端部3dが上端部3cに乗り上げる状態となり、下端部3dの先端と上端部3cの表面とがすみ肉溶接により固定される。下側の第一ライナープレート3を配置し、下端部3dが乗り上げる形で一枚上の第一ライナープレート3を配置するようにして、第一ライナープレート3を下から上の順に取り付ける例として、図4(a)に示す関係となる。あるいは、予め下端部3dと表面102aとの間に隙間を空けた状態で上側の第一ライナープレート3を配置し、当該隙間に上端3cを挿入する形で一枚下の第一ライナープレート3を配置するようにして、第一ライナープレート3を上から下の順に取り付ける例として、図4(a)に示す関係となる。一方、上側の第1ライナープレート3を配置し、上端部3cが乗り上げる形で一枚下の第一ライナープレート3を配置するようにして、第一ライナープレート3を上から下の順に取り付ける場合、あるいは、予め上端部3cと表面102aとの間に隙間を空けた状態で下側の第一ライナープレート3を配置し、当該隙間に下端部3dを挿入する形で一枚上の第一ライナープレート3を配置するようにして、第一ライナープレート3を下から上の順に取り付ける場合は、上端部3cが、一枚上の第一ライナープレート3の下端部3dに重なると共に取り付けられる。
【0021】
図に示す例では、第一ライナープレート3Aの他端部3bは、アンカー2Aの取付部2aに固定される。第一ライナープレート3Bの一端部3aは、アンカー2Bの取付部2aに固定される。第一ライナープレート3Bの他端部3bは、アンカー2Cの取付部2aに固定される。第一ライナープレート3Cの一端部3aは、アンカー2Dの取付部2aに固定される。第一ライナープレート3Cの他端部3bは、アンカー2Eの取付部2aに固定される。
【0022】
第二ライナープレート4は、上下方向D2に延びる長方形状を有し、周方向D1に複数並べられる。また、第二ライナープレート4は、上下方向D2に複数並べられる。第一ライナープレート3と第二ライナープレート4は、同一サイズの板部材を使用することが好ましい。これによって、部品の共有化を図ることができ、作業効率が向上する。ただし、異なるサイズの板部材を使用してもよい。第二ライナープレート4は、第二ライナープレート4の周方向D1における一端部4aは、一方の第一ライナープレート3に重なると共に取り付けられる。第二ライナープレート4の周方向D1における他端部4bは、他方の第一ライナープレート3に重なると共に取り付けられる。すなわち、周方向D1において互いに隣り合っている一対の第一ライナープレートの間の隙間を覆うように、第二ライナープレート4が取り付けられる。
【0023】
第二ライナープレート4の一端部4aは、周方向D1における一方の第一ライナープレート3の他端部3bに重なると共に取り付けられている。すみ肉溶接により、一端部4aと他端部3bの間に溶接部14が形成される(図3参照)。すなわち、他端部3bが側壁102の表面102aまたは取付部2aと接して、一端部4aが他端部3bに乗り上げる状態となり、一端部4aの先端と他端部3bの表面とがすみ肉溶接により固定される。第二ライナープレート4の他端部4bは、周方向D1における他方の第一ライナープレート3の一端部3aに重なると共に取り付けられている。すみ肉溶接により、他端部4bと一端部3aの間に溶接部13が形成される(図3参照)。すなわち、一端部3aが側壁102の表面102aまたは取付部2aと接して、他端部4bが一端部3aに乗り上げる状態となり、他端部4bの先端と一端部3aの表面とがすみ肉溶接により固定される。
【0024】
第二ライナープレート4の下端部4dは、一枚下の第二ライナープレート4の上端部4cに重なると共に取り付けられている。すみ肉溶接により、下端部4dと上端部4cの間に溶接部17が形成される(図4(b)参照)。すなわち、上端部4cが側壁102の表面102aと接して、下端部4dが上端部4cに乗り上げる状態となり、下端部4dの先端と上端部4cの表面とがすみ肉溶接により固定される。下側の第二ライナープレート4を配置し、下端部4dが乗り上げる形で一枚上の第二ライナープレート4を配置するようにして、第二ライナープレート4を下から上の順に取り付ける例として、図4(b)に示す関係となる。あるいは、予め下端部4dと表面102aとの間に隙間を空けた状態で上側の第二ライナープレート4を配置し、当該隙間に上端4cを挿入する形で一枚下の第二ライナープレート4を配置するようにして、第二ライナープレート4を上から下の順に取り付ける例として、図4(b)に示す関係となる。一方、上側の第二ライナープレート4を配置し、上端部4cが乗り上げる形で一枚下の第二ライナープレート4を配置するようにして、第二ライナープレート4を上から下の順に取り付ける場合、あるいは、予め上端部4cと表面102aとの間に隙間を空けた状態で下側の第二ライナープレート4を配置し、当該隙間に下端部3dを挿入する形で一枚上の第二ライナープレート4を配置するようにして、第二ライナープレート4を下から上の順に取り付ける場合は、上端部4cが、一枚上の第二ライナープレート4の下端部4dに重なると共に取り付けられる。
【0025】
上下方向D2において、第一ライナープレート3の上端部3cと下端部3dとの取付部分と、第二ライナープレート4の上端部4cと下端部4dとの取付部分とは、高さ位置が異なっていることが好ましい。すなわち、第一ライナープレート3に対して、第二ライナープレート4の上下方向D2における位置をずらして取り付けることが好ましい。ライナープレート3,4同士の上下方向D2に延びる取付部分と、ライナープレート3,4のそれぞれの周方向D1に延びる取付部分とが、十字状に交差することを避けることができる。これによって、ライナー104の性能を高めることができる。
【0026】
図に示す例では、第二ライナープレート4Aの一端部4aは、第一ライナープレート3Aの他端部3bに重なり固定される。第二ライナープレート4Aの他端部4bは、第一ライナープレート3Bの一端部3aに重なり固定される。第二ライナープレート4Bの一端部4aは、第一ライナープレート3Bの他端部3bに重なり固定される。第二ライナープレート4Bの他端部4bは、第一ライナープレート3Cの一端部3aに重なり固定される。第二ライナープレート4Cの一端部4aは、第一ライナープレート3Cの他端部3bに重なり固定される。また、第二ライナープレート4Aでの上端部4cと下端部4dとの取付部分は、第一ライナープレート3A,3Bでの上端部3cと下端部3dとの取付部分からずれた位置に配置されており、高さ位置が異なっている。第二ライナープレート4Bでの上端部4cと下端部4dとの取付部分は、第一ライナープレート3B,3Cでの上端部3cと下端部3dとの取付部分からずれた位置に配置されており、高さ位置が異なっている。第二ライナープレート4Cでの上端部4cと下端部4dとの取付部分は、第一ライナープレート3Cでの上端部3cと下端部3dとの取付部分からずれた位置に配置されており、高さ位置が異なっている。
【0027】
次に、本実施形態に係る側壁構造構築方法について説明する。
【0028】
まず、型枠を用いて外槽101を打設し、側壁102を形成する(側壁形成工程)。このとき、側壁102の周方向D1及び上下方向D2に所定の間隔でアンカー2を複数埋設する(アンカー埋設工程)。このとき、側壁102の表面102aから取付部2aが露出するように配置する。次に、ライナープレート3,4を取り付けることで、側壁102の表面102aをライナー104で覆う(ライナー形成工程)。
【0029】
ライナー形成工程では、第一ライナープレート3を周方向D1及び上下方向D2に複数並べる工程(第一ライナープレート取付工程)と、第二ライナープレート4を、周方向D1及び上下方向D2に複数並べる工程(第二ライナープレート取付工程)が実行される。
【0030】
第一ライナープレート取付工程では、まず、一枚の第一ライナープレート3の周方向D1における両端部3a,3bを、互いに異なるアンカー2の取付部2aに溶接して取り付ける。次に(または同時に)、既に固定されている第一ライナープレート3から、周方向D1において離間するように、他の第一ライナープレート3の両端部3a,3bを、アンカー2の取付部2aに取り付ける。この工程を側壁102の全周にわたって繰り返す。
【0031】
また、一枚の第一ライナープレート3を固定した後、その上側に新たな第一ライナープレート3を同様にアンカー2に固定する。このとき、下側の第一ライナープレート3の上端部3cに、上側の第一ライナープレート3の下端部3dを重ねて溶接して取り付ける。この工程を、側壁102の上下方向D2の全範囲にわたって繰り返す。
【0032】
第二ライナープレート取付工程は、少なくとも、周方向D1において隣り合う一対の第一ライナープレート3が固定された後に実行される。この工程では、第二ライナープレート4の周方向D1における一端部4aを、一方の第一ライナープレート3の他端部3bに重ねると共に溶接して取り付ける。また、第二ライナープレート4の周方向D1における他端部4bを、他方の第一ライナープレート3の一端部3aに重ねると共に溶接して取り付ける。この工程を側壁102の全周にわたって繰り返す。
【0033】
また、一枚の第二ライナープレート4を固定した後、その上側に新たな第二ライナープレート4を同様に第一ライナープレート3に固定する(この場合、対応する位置において、一対の第一ライナープレート3が既に固定されている必要がある)。このとき、下側の第二ライナープレート4の上端部4cに、上側の第二ライナープレート4の下端部4dを重ねて溶接して取り付ける。この工程を、側壁102の上下方向D2の全範囲にわたって繰り返す。
【0034】
ライナー形成工程においては、周方向D1に隣り合う少なくとも一対の第一ライナープレート3をアンカー2に取り付け、それ以降に、それらの第一ライナープレート3に第二ライナープレート4を固定する、という順序のみが必要な作業順序とされる。すなわち、その他の部分においてはあらゆる作業順序を採用することが可能であり、状況に応じて適切な順序とすることが可能となる。例えば、側壁102の周方向D1に沿って順番で第一ライナープレート3を固定してもよく、複数の箇所において同時進行で第一ライナープレート3を固定してもよい。また、側壁102の全周に第一ライナープレート3を固定し終えた後に第二ライナープレート4を固定してもよい。側壁102の周方向D1における一部の範囲で第一ライナープレート3を固定し終えた後に第二ライナープレート4を固定し、その後(または同時進行で)に他の範囲で第一ライナープレート3を固定してもよい。また、上下方向D2におけるライナープレート3,4の作業順序も限定されない。例えば、最も下段のライナープレート3,4を側壁102全周にわたって取り付けた後で、下から二段目のライナープレート3,4を全周にわたって取り付け、徐々に上段へ進んでいくようにライナープレート3,4の取り付けを行ってもよい。あるいは、まず、第一ライナープレート3を上下方向D2の全体にわたって取り付けておき、その後で第二ライナープレート4を上下方向D2の全体にわたって取り付けてもよい。その他、あらゆる順序で作業を行うことが可能である。
【0035】
次に、本実施形態に係る貯蔵タンク100の側壁構造1の作用・効果について説明する。
【0036】
比較のために、図5を参照して従来の側壁構造について説明する。図5(a)に示す構造は、上下方向に延びるラインアンカー52の位置において、ライナープレート53とライナープレート54の端部同士を突き合わせて溶接する構成である。ライナープレート53とラインアンカー52との間に溶接部56を形成して固定し、ライナープレート54とラインアンカー52との間に溶接部57を形成して固定している。このような構成では、ライナープレート53を取り付ける際に、隣り合うライナープレート53及びラインアンカー52との位置関係を考慮する必要があるため、加工精度や取付時の位置精度を確保する必要がある。また、上下方向全体にわたって二つの溶接部56,57が必要となるため、溶接必要箇所が大きい。図5(b)に示す構造は、上下方向に延びるラインアンカー62の位置において、ライナープレート63とライナープレート64の端部同士を突き合わせて溶接する構成である。ライナープレート63とライナープレート64とラインアンカー62との間に溶接部66を形成して固定している。このような構成では溶接必要箇所は少なくなるが、ライナープレート63とライナープレート64との距離が近接し、更に高い加工精度や取付時の位置精度を確保する必要がある。
【0037】
本実施形態に係る貯蔵タンク100の側壁構造1及びその側壁構造構築方法によれば、第一ライナープレート3の両端部3a,3bがアンカー2の取付部2aに取り付けられ、周方向D1において互いに離間している一の第一ライナープレート3と他の第一ライナープレート3との間に、第二ライナープレート4が配置されてその両端部4a,4bがそれぞれの第一ライナープレート3に重なって取り付けられる構成となっている。第一ライナープレート3は、従来のようにアンカー2の位置において、周方向D1に隣り合う他のライナープレートと突き合わせ溶接するものではなく、間に第二ライナープレート4を配置できる程度に大きく離間させることができる。従って、第一ライナープレート3は、隣り合う他のライナープレートとの位置関係に影響を受けることなく取り付け可能となるため、プレート加工時における高い寸法精度や取付時における高い位置精度が不要とされる。また、第二ライナープレート4も、両端部4a,4bをそれぞれの第一ライナープレート3に重ねて取り付けられるものである。従って、アンカー2との位置関係や第一ライナープレート3の端部3a,3bの位置関係に影響を受けることなく取り付け可能となるため、プレート加工時における高い寸法精度や取付時における高い位置精度が不要とされる。
【0038】
例えば、一のライナープレートを固定した後でなくては周方向に隣り合う次のライナープレートを取り付けられない構造であった場合、側壁全周にライナープレートを取り付けるためには、一枚目のライナープレートを取り付けた後に二枚目のライナープレートを取り付け、更にその次のライナープレートを取り付け、それ以降も全周に貼り終えるまで順番に取り付ける必要がある。すなわち、取付順序が制限されることにより、周方向における一部分で取付作業を行い、他の部分でも同時進行で取付作業を行うということができない。しかしながら、本実施形態に係る側壁構造1においては、第一ライナープレート3は隣り合う他の第一ライナープレート3との位置関係に影響を受けることなく取付可能であり、第二ライナープレート4も、取り付けられる第一ライナープレート3が先に取り付けられている限り、隣り合う他の第二ライナープレート4との位置関係に影響を受けるものではない。従って、側壁102の周方向D1における各ライナープレートの取付順序が制限を受けず、いずれの位置からもライナープレート取付作業が可能である。以上によって、ライナープレートの取り付けにおける作業性を向上でき、コストを削減すると共に、工期を短縮することができる。
【0039】
また、図5(a)の構成では、ラインアンカー52はライナープレート固定のための機能のみならず、ラインアンカー52もライナーの表面の一部として機能しているため、ラインアンカー52とライナープレート53,54との間の気密性も要求される。しかしながら、本実施形態においては、第二ライナープレート4の両端部4a,4bが第一ライナープレート3に重なって溶接されるものであるため、アンカー2はライナー104の表面には露出せず、ライナープレート固定のためのみ機能する。従って、ラインアンカーではなく側壁102の表面102aに点在する構成のアンカー2を採用してもライナー104としての気密性は十分に確保できる。このような構成とすることで、図5(a)に比して溶接必要箇所を低減することができる。
【0040】
本発明は、上述の実施形態に限定されるものではない。例えば、図2に示すアンカー、第一ライナープレート、第二ライナープレートの大きさや位置や設置パターンは一例に過ぎず、発明の趣旨に従う限り、適宜変更可能である。
【0041】
本実施形態では、ライナープレートとして、上下方向に延びる長方形状のものを用いた。ライナープレートが周方向に延びるような取付方向にした場合、側壁102の曲面に合わせて湾曲を形成した後に取り付けする必要があるが、上下方向に延びる構成であればその必要がない。ただし、周方向に延びるライナープレートや正方形状のライナープレートを採用しても本発明の効果を得ることができる。
【符号の説明】
【0042】
1…側壁構造、2…アンカー、2a…取付部、3…第一ライナープレート、4…第二ライナープレート、100…貯蔵タンク、101…外槽(槽)、102…側壁。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
槽の側壁と、
前記側壁の周方向に所定の間隔で複数埋設され、当該側壁の表面に取付部を形成するアンカーと、
前記側壁の前記表面を覆うライナーと、を備える貯蔵タンクの側壁構造であって、
前記ライナーは、
前記周方向に複数並べられる第一ライナープレートと、
前記周方向に複数並べられる第二ライナープレートと、を備え、
前記第一ライナープレートの前記周方向における両端部は、それぞれ前記アンカーの前記取付部に取り付けられ、
一の前記第一ライナープレートは、前記周方向に隣り合う他の前記第一ライナープレートから、前記周方向において離間し、
前記第二ライナープレートの前記周方向における一端部は、前記一の第一ライナープレートに重なると共に取り付けられ、
前記第二ライナープレートの前記周方向における他端部は、前記他の第一ライナープレートに重なると共に取り付けられることを特徴とする貯蔵タンクの側壁構造。
【請求項2】
槽の側壁を形成する側壁形成工程と、
前記側壁の周方向に所定の間隔でアンカーを複数埋設し、前記側壁の表面に取付部を形成するアンカー埋設工程と、
前記側壁の前記表面をライナーで覆うライナー形成工程と、を備える貯蔵タンクの側壁構造構築方法であって、
前記ライナー形成工程は、
第一ライナープレートを、前記周方向に複数並べる第一ライナープレート取付工程と、
第二ライナープレートを、前記周方向に複数並べる第二ライナープレート取付工程を備え、
前記第一ライナープレート取付工程では、
第一ライナープレートの前記周方向における両端部は、それぞれ前記アンカーの前記取付部に取り付けられ、
一の前記第一ライナープレートは、前記周方向に隣り合う他の前記第一ライナープレートから、前記周方向において離間するように配置され、
前記第二ライナープレート取付工程では、
前記第二ライナープレートの前記周方向における一端部が、前記一の第一ライナープレートに重なると共に取り付けられ、
前記第二ライナープレートの前記周方向における他端部が、前記他の第一ライナープレートに重なると共に取り付けられることを特徴とする貯蔵タンクの側壁構造構築方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−192967(P2012−192967A)
【公開日】平成24年10月11日(2012.10.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−59597(P2011−59597)
【出願日】平成23年3月17日(2011.3.17)
【出願人】(000110011)トーヨーカネツ株式会社 (3)
【Fターム(参考)】