説明

貯蔵タンク内堆積スラッジの除去方法および除去装置

【課題】 貯蔵タンク内の堆積スラッジの掃除過程において、密閉系でスラッジ除去を行うことで貯蔵タンク内の臭気やベーパーおよびスラッジ中の低沸点成分の貯蔵タンク外への漏洩を防止してスラッジ除去を行う。
【解決手段】 貯蔵タンク1のタンク天板2の既存マンホール3に、先端近傍に噴出ノズル6を有する洗浄用管4を密閉かつ該洗浄用管の周方向に回動可能に固定し、前記噴出ノズル6から貯蔵液および/または洗浄液14を噴出させ、前記貯蔵タンク1内の堆積スラッジ13を貯蔵液および/または洗浄液14に懸濁させて、前記貯蔵タンク1内から抜出しするとともに、抜出した貯蔵液および/または洗浄液14を前記洗浄用管4へ返送する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コールタール、原油、重油等を貯蔵する貯蔵タンク内に堆積したスラッジの除去方法および装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
危険物貯蔵タンクのうち、1000キロリットルを超えるものは、消防法により10年に一度の開放点検が義務付けられている。
開放点検の際には、タンク底板まで検査するためタンク内の堆積スラッジの掃除が必要となる。タンク内の堆積スラッジは、重質油中に含有される重質物、ピッチ、石炭・コークス粉がタンク底部に沈降し、堆積したものである。
【0003】
従来、タンク内スラッジの掃除は、タンク内の液を抜出した後、タンク内下部の側板マンホールを開放して、人力で堆積スラッジをタンク外へ排出していた。また、堆積スラッジの高さが側板マンホールより高く、圧密されて硬くなっている場合は、蒸気配管をスラッジ内に差込み蒸気の圧力と熱で堆積スラッジを粉砕し、溶媒中へ懸濁させてタンク外へ排出し、側板マンホールが開放できる位置まで堆積スラッジの高さを下げていた。
【0004】
しかし、これらの方法では、開放系で実施するためにタンク外にタンク内の臭気やベーパーが漏洩するといった問題があった。また、タンク内の作業環境は、臭気やベーパーが充満し、夏場はタンク内の温度や湿度が高く、長時間のスラッジ排出作業は困難であった。人力に代わるタンク内堆積スラッジの処理方法として、タンク内の貯蔵液、洗浄油などの洗浄液を循環させることによって、スラッジを懸濁させて抜出す方法が行われているが、この方法では洗浄液を循環させる位置が一箇所に限定され、限られた範囲にある堆積スラッジのみの処理になるという問題がある。
【0005】
また、もう少し積極的な堆積スラッジの除去方法として、特許文献1では、タンクの側壁に所定間隔で進退自在に設置した洗浄管により、タンク内の共液または洗浄液を堆積スラッジに向けて近傍より噴出して、堆積スラッジを撹拌、分散、溶解させタンク外に抜出すことを提案している。
この方法では、使用しているタンクの側壁に複数個所、洗浄管を設置する孔を設ける必要があるが、危険物を貯蔵しているタンクを使用しながら、側壁に孔をあけることは、安全上、消防法上も難しい。また、タンク内堆積スラッジは、タンク壁面内側部にも堆積しているため、堆積スラッジの高さよりも低い部分の側壁に孔をあけることは現実的には難しい。
【0006】
仮に孔を空けて洗浄管を差し込んでも洗浄管設置部がタンク内液部であるため、シール部からの漏れ等、安全上問題がある。また、堆積スラッジの高さ方向全体に洗浄液を噴射するためには、洗浄管の設置孔をタンクの高さ方向、周方向に複数個設ける必要があり、安全上難しく、堆積スラッジの処理コストも高くなる。
また、洗浄管を他の孔へ抜き替える場合もタンクは開放系となる場合があり、液、タンク内臭気もしくはベーパーは漏洩する問題もある。
【特許文献1】特開2001−276765号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、タンク内堆積スラッジの掃除過程において、密閉系でスラッジ除去を行い、タンク内の臭気やベーパーおよびスラッジ中の低沸点成分のタンク外への漏洩を防止することが可能なタンク内堆積スラッジの除去方法および装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、貯蔵タンクに堆積したスラッジの除去方法であって、該貯蔵タンクのタンク天板の既存マンホールに、先端近傍に噴出ノズルを有する洗浄用管を密閉かつ該洗浄用管の周方向に回動可能に固定し、前記噴出ノズルから貯蔵液および/または洗浄液を噴出させ、前記スラッジを貯蔵液および/または洗浄液に懸濁させて、該貯蔵タンク内から抜出しするとともに、抜出した貯蔵液および/または洗浄液を前記洗浄用管へ返送することを特徴とする貯蔵タンク内堆積スラッジの除去方法である。
【0009】
また、本発明は、貯蔵タンクに堆積したスラッジの除去装置であって、先端に噴出ノズルを有し、前記貯蔵タンクのタンク天板の既存マンホールに密閉かつ周方向に回動可能に固定された洗浄用管と、前記貯蔵タンクの底部近傍に接続されて貯蔵液および/または洗浄液を抜き出しする抜出管と、吸込み側が前記抜出管と接続され、吐出側が接続配管に接続されて抜出された貯蔵液および/または洗浄液を前記洗浄用管へ返送する循環ポンプと、該循環ポンプの吐出側で前記接続配管と切換可能に接続されて前記貯蔵タンク内の貯蔵液および/または洗浄液を前記貯蔵タンク外へ排出する排出管と、を有することを特徴とする貯蔵タンク内堆積スラッジの除去装置である。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、密閉系で安全かつ容易にタンク内の堆積スラッジに対して貯蔵液および/または洗浄液を高流速で噴出し、堆積スラッジを粉砕し、懸濁させ、抜出し処理することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明の実施例を図1に基づいて説明する。図1は、本発明によるタンク内堆積スラッジの除去装置の一例を示すフロー図であり、図2は、図1のA部を拡大して示す説明図である。
図1において、貯蔵タンク1のタンク天板2に設けられているマンホール(既設)3に洗浄用管4を立設する。洗浄用管4はマンホール3との接続部でスイベルジョイント5を介して設置されており、360度回動可能となっている。
【0012】
洗浄用管4の口径は、マンホール径以下であればいくらでもよいが、100〜200mm以下が取り扱い易い。また、洗浄用管の設置数は、タンクの大きさ(径)や堆積スラッジの量により決定するが、2〜3本を均等に設置するのが好ましい。
洗浄用管4のタンク内先端近傍には、貯蔵液および/または洗浄液14の噴出流速を上げ、効果的に堆積スラッジを粉砕、懸濁するため噴出ノズル6を設置する。噴出ノズル6の装着は、溶接、ねじ込みまたはボルト固定とし、図2に示すように堆積スラッジの高さに合わせて3〜4個設置する。噴出ノズル6の先端はキャップで封止できる構造とし、使用している噴出ノズルの流速を上げるようにしてもよい。
【0013】
噴出ノズル6のサイズは、洗浄用管4の直径より小さければいくらでもよいが、より噴出効果を上げるには50mm以下とするのが好ましい。また、噴出角度は、洗浄用管4の長さ方向に対して90度程度が望ましい。
洗浄用管4は、フレキシブルホース7、接続配管8を介して、加温器9、循環ポンプ10の吐出側に接続されている。循環ポンプ10の吸込み側は、貯蔵タンク1に既存の抜出管11に接続され、吐出側は、接続配管8と、あるいは切換弁16を介して排出管15と接続されており、切換弁16の操作で循環している貯蔵液および/または洗浄液14を、洗浄用管4あるいは排出管15のいずれか一方に供給できるように構成している。
【0014】
接続管8の途中に設けた加温器9は、加熱源として蒸気12を使用し、堆積スラッジ13の粉砕、懸濁に最適温度で循環するように貯蔵液および/または洗浄液14を加温する構成としている。
貯蔵タンク1内の堆積スラッジ13の処理に際しては、洗浄用管4をタンク天板2のマンホール3から貯蔵タンク1内に降ろしながら堆積スラッジ13内に装入し、タンク底板に立設する。
【0015】
その後、循環ポンプ10によって貯蔵タンク1内から貯蔵液および/または洗浄液14を抜出し、加温器9で加温後、洗浄用管4を介して、噴出ノズル6から高流速で貯蔵液および/または洗浄液14を堆積スラッジ13に向けて噴出し、堆積スラッジ13を粉砕し、懸濁させる。次いで、洗浄用管4を回動させて角度を変えて先端部の噴出ノズル6の噴出方向を変更することにより、貯蔵タンク1内の堆積スラッジ13を満遍なく粉砕し、懸濁させることができる。この操作を繰り返して行い、貯蔵液および/または洗浄液14中のスラッジ濃度が高くなったとき、貯蔵液および/または洗浄液14は切換弁16の操作で排出管15から貯蔵タンク1外に排出される。
【0016】
なお、洗浄用管4を複数個所に設置した場合には、噴出ノズル6の噴出方向を一定とすることによって貯蔵タンク1内に旋回流を発生させ、堆積スラッジの懸濁をより効果的に促進することもできる。また、洗浄用管4を自重で堆積スラッジ13内に装入できない場合は一旦堆積スラッジ13上に載置させておき、貯蔵液および/または洗浄液14の噴出で生じる貯蔵タンク1内の旋回流で堆積スラッジ13を徐々に粉砕、懸濁させることでタンク底板まで降下させることができる。
【実施例】
【0017】
内径21.2m、高さ9.8m、容量3000キロリットルのコールタール用貯蔵タンク1のタンク天板2に既存するマンホール3のうちの三箇所に洗浄用管4を設置した。
貯蔵タンク1内に堆積し、圧密したコールタールスラッジに対して加温器9で常温〜100℃に加温した貯蔵液および/または洗浄液を、洗浄用管4の噴出ノズル6から噴出流速10〜30m/Sで噴出し、堆積するコールタールスラッジを粉砕、懸濁させて循環ポンプ10によって貯蔵タンク1外に排出した。その結果、貯蔵タンク1に堆積するスラッジの全量を除去することができた。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明によるタンク内堆積スラッジの除去装置の一例を示すフロー図である。
【図2】図1のA部を拡大して示す説明図である。
【符号の説明】
【0019】
1 貯蔵タンク
2 タンク天板
3 マンホール(既存)
4 洗浄用管
5 スイベルジョイント
6 噴出ノズル
7 フレキシブルホース
8 接続配管
9 加温器
10 循環ポンプ
11 抜出管
12 蒸気
13 堆積スラッジ
14 貯蔵液および/または洗浄液
15 排出管
16 切換弁

【特許請求の範囲】
【請求項1】
貯蔵タンクに堆積したスラッジの除去方法であって、該貯蔵タンクのタンク天板の既存マンホールに、先端近傍に噴出ノズルを有する洗浄用管を密閉かつ該洗浄用管の周方向に回動可能に固定し、前記噴出ノズルから貯蔵液および/または洗浄液を噴出させ、前記スラッジを貯蔵液および/または洗浄液に懸濁させて、該貯蔵タンク内から抜出しするとともに、抜出した貯蔵液および/または洗浄液を前記洗浄用管へ返送することを特徴とする貯蔵タンク内堆積スラッジの除去方法。
【請求項2】
貯蔵タンクに堆積したスラッジの除去装置であって、先端に噴出ノズルを有し、前記貯蔵タンクのタンク天板の既存マンホールに密閉かつ周方向に回動可能に固定された洗浄用管と、前記貯蔵タンクの底部近傍に接続されて貯蔵液および/または洗浄液を抜き出しする抜出管と、吸込み側が前記抜出管と接続され、吐出側が接続配管に接続されて抜出された貯蔵液および/または洗浄液を前記洗浄用管へ返送する循環ポンプと、該循環ポンプの吐出側で前記接続配管と切換可能に接続されて前記貯蔵タンク内の貯蔵液および/または洗浄液を前記貯蔵タンク外へ排出する排出管と、を有することを特徴とする貯蔵タンク内堆積スラッジの除去装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2009−95809(P2009−95809A)
【公開日】平成21年5月7日(2009.5.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−272344(P2007−272344)
【出願日】平成19年10月19日(2007.10.19)
【出願人】(591067794)JFEケミカル株式会社 (220)
【Fターム(参考)】