説明

貯蔵タンク運用計画導出システム及び方法

【課題】 複雑な混合整数非線形問題となる液化天然ガスを貯蔵する貯蔵タンクの運用計画問題の実行可能解を導出する。
【解決手段】 タンク初期状態情報と受入計画情報と送出計画情報を所与とし、非線形式を含む非線形制約条件に対して、非線形式を線形近似して混合整数非線形計画問題を混合整数線形計画問題に置換して求解し、液化天然ガスの受入対象となる貯蔵タンクを規定する受入パターンと液化天然ガスの払出を行う貯蔵タンクを規定する払出パターンの暫定解または最終解を導出する第1求解処理と、離散変数を含む離散型制約条件に対して離散変数を暫定的に固定して混合整数非線形計画問題を連続非線形計画問題に置換し求解し、各貯蔵タンクの液化天然ガスの貯蔵量及び貯蔵熱量の遷移の暫定解または最終解を導出する第2求解処理を、交互に夫々2回以上実行する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液化天然ガスを貯蔵する複数の貯蔵タンクに対して、所定の計画対象期間における液化天然ガスの受入計画と払出計画に基づき、液化天然ガスの受入対象及び払出対象となる貯蔵タンクを規定する貯蔵タンク運用計画を、数理計画問題としてコンピュータの演算処理により求解することにより導出する貯蔵タンク運用計画導出システム及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
数理計画問題の代表的な求解アルゴリズムとしては、線形計画法、混合整数線形計画法、整数計画法、二次計画法、非線形計画法等が存在する。線形計画法は、決定変数が連続変数で、制約条件や目的関数が全て線形式で表現された数理計画問題(線形計画問題)の求解アルゴリズムである。混合整数線形計画法は、決定変数が連続変数及び離散変数で、制約条件や目的関数が全て線形式で表現された数理計画問題(混合整数線形計画問題)の求解アルゴリズムである。整数計画法は、決定変数が離散変数で表現された数理計画問題(整数計画問題)の求解アルゴリズムである。二次計画法は、目的関数が2次式で制約条件が線形式で表現された数理計画問題(二次計画問題)の求解アルゴリズムである。非線形計画法は、制約条件や目的関数が線形でない任意の連続関数で表現された数理計画問題(非線形計画問題)の求解アルゴリズムである。導出対象の数理計画が、上記の代表的な数理計画問題で表現できる場合は、既存の各数理計画問題に適合した汎用ソルバーを用いて求解できる。
【0003】
液化天然ガスを貯蔵する貯蔵タンクの運用計画問題と類似する問題として、例えば、下記の特許文献1に開示されている「受け入れ設備の制御方法」がある。当該従来技術は、好ましい原料性状を可能な限り維持したまま予定外の受け入れ、払い出しにも迅速に対応でき、エネルギーコストもより最小となる操作手順をタンクの数が増える等の受け入れ設備が大きく複雑になっても短時間で立案することを可能とする受け入れ設備の制御方法を提供するもので、貯蔵対象の原料として、石油、ナフサ、ガス等の流体を想定している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−263486号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
天然ガスを主成分とする都市ガスを製造し需要者に供給するガス事業者においては、液化天然ガス(LNG)を生産地から消費地までLNGタンカー等により運搬し、消費地に設けられたLNGタンクに一旦貯蔵した上で、ガス需要に基づいて各LNGタンクから必要量のLNGを払出し、気化及び熱量調整等の処理を経て、所定の熱量範囲に調整された都市ガスとして需要者に供給する。
【0006】
従来、LNGを貯蔵する貯蔵タンクに対するLNGの受入計画と払出計画に基づき、総合的にその運用計画を、数理計画法により導出するシステムは存在していなかった。その背景として、以下に示す天然ガスに特有の問題がある。天然ガスは、メタンを主成分とするものの、エタン、プロパン、ブタン等の熱量、沸点、比重等の物性の異なる複数種の炭素水素及び窒素を含有するため、生産地によって、組成及び熱量が異なる。また、LNGは、−162℃程度以下の極低温で液化されているが、運搬、受入、貯蔵及び払出の各段階等において、外部からの入熱によって一部が蒸発して極低温のボイルオフガス(BOG)が発生し混入しており、当該BOGの発生量に応じて、LNGの各段階での熱量が変動するため、各段階でのLNGの状態変化をモデル化する場合、複雑な非線形モデルとなる。一方で、複数のLNGタンクに対して複数回のLNGの受入が生じる場合、どの受入をどのLNGタンクで行うかを規定する変数は離散変数となる。更に、所定のガス需要に対して、どのLNGタンクからLNGを払出するかを規定する変数も離散変数となる。他方で、各LNGタンクでのLNGの受入量、受入熱量、貯蔵量、貯蔵熱量、払出量、払出熱量等の変数は、連続変数となる。従って、LNGタンクの運用計画は、決定変数に連続変数と離散変数が含まれ、制約条件や目的関数が複雑な非線形式で表され、しかも変数の数及び制約条件の数の極めて多い、複雑で大規模な混合整数非線形計画問題となるため、LNGタンクの運用計画を導出するシステムは、当該複雑で大規模な混合整数非線形問題を実用的な計算時間で求解可能なシステムであることが求められる。
【0007】
導出対象の数理計画が、上述の代表的な数理計画問題で表現できる場合は、既存の各数理計画問題に適合した汎用ソルバーを用いて求解できるが、LNGを貯蔵する貯蔵タンクの運用計画問題は、上述の如く、複雑で大規模な混合整数非線形計画問題となるため、利用できる既存のソルバーは存在していなかった。
【0008】
一般に、非線形計画問題を求解した場合、局所的最適解であっても大域的最適解となっている保証がなく、特に、離散変数を含む場合に問題があった。斯かる問題に対して、非線形制約条件を凸型制約条件に近似することで、緩和された混合整数線形計画問題を解くという手法(凸緩和法)がある。しかし、当該凸緩和法も、変数が少ない小規模な非線形計画問題には有効な手法であるが、変数の数及び制約条件の数の多い、複雑で大規模な混合整数非線形計画問題に適用しても、非線形制約条件に対する近似誤差が大きく、得られた大域的最適解が、実問題であるLNGタンクの運用計画の実行可能解とならない。
【0009】
これに対して、特許文献1に開示された従来技術では、貯蔵対象の原料として、石油、ナフサ、ガス等の流体を想定しており、LNGのように、BOGの発生等により、貯蔵量や貯蔵熱量が変動することがないため、生産量モデルとして線形計画問題や二次計画問題を用いて求解できることが示されている(段落[0069]参照)。つまり、液化天然ガスでない流体を取り扱う場合は、複雑な混合整数非線形問題とはならず、従来の代表的な数理計画問題として求解可能である。
【0010】
本発明は上述の問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、複雑な混合整数非線形問題となる液化天然ガスを貯蔵する貯蔵タンクの運用計画問題の実行可能解を導出できる貯蔵タンク運用計画導出システム及び方法を提供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上述の如く、液化天然ガスは、貯蔵タンクへの受入、貯蔵、払出の各段階でBOGが発生することにより、貯蔵量や貯蔵熱量が変動し、且つ、熱量に関して種々の制約を受けるため、当該液化天然ガスを貯蔵する複数の貯蔵タンクに対して、所定の計画対象期間における液化天然ガスの受入計画と払出計画に基づき、液化天然ガスの受入対象及び払出対象となる貯蔵タンクを規定する貯蔵タンク運用計画を導出する数理計画問題は、複雑で大規模な混合整数非線形計画問題となり、既存の数理計画法では求解が不可能であったところ、本願発明者の鋭意研究により、当該混合整数非線形計画問題で表される貯蔵タンクの運用計画問題を、制約条件中の非線形式を線形近似することによって非線形制約を捨象した混合整数線形計画問題と、制約条件中に離散変数を含む整数制約及び混合整数制約を捨象した連続非線形計画問題の2種類の計画問題に緩和し、制約条件を段階的に精緻化しながら夫々の緩和された計画問題を交互に繰り返し求解することで、局所的最適解であっても大域的最適解に近い実行可能解が得られることを見出した。そして、当該新知見に基づき、本発明に係る貯蔵タンク運用計画導出システム及び方法に至った。
【0012】
即ち、上記目的を達成するための本発明に係る貯蔵タンク運用計画導出システムは、所定の計画対象期間における、液化天然ガスを貯蔵する複数の貯蔵タンク夫々の前記液化天然ガスの初期貯蔵量と初期貯蔵熱量を含むタンク初期状態情報、前記液化天然ガスの複数の受入計画夫々の前記液化天然ガスの受入時期と受入量と受入熱量を含む受入計画情報、及び、1または複数の払出ラインから前記各払出ラインに対応する送出先へ前記液化天然ガスを直接或いは気化させて送出する送出計画における所定の単位期間毎の送出計画量を含む送出計画情報の各入力を受け付け、入力情報として保存し、前記貯蔵タンクへの前記液化天然ガスの受入及び貯蔵に係る複数の制約条件、及び、前記貯蔵タンクから前記払出ラインへの前記液化天然ガスの払出に係る複数の制約条件を格納する記憶手段と、
前記入力情報と前記制約条件によって混合整数非線形計画問題として構成される少なくとも前記液化天然ガスの受入及び払出の各操作に係る前記貯蔵タンクの運用計画問題の実現可能解を、コンピュータの演算処理により求解する演算処理手段と、を備えて構成され、
前記演算処理手段は、混合整数線形計画問題を求解する第1処理手段と、連続非線形計画問題を求解する第2処理手段を備え、前記入力情報を所与とし、
前記制約条件の内の非線形式を含む複数の非線形制約条件の夫々に対して、第1緩和処理を行い、前記混合整数非線形計画問題を混合整数線形計画問題に置換して、前記第1処理手段を用いて求解し、少なくとも前記計画対象期間内における前記受入計画毎の前記液化天然ガスの受入の対象となる1または複数の前記貯蔵タンクを規定する受入パターンと前記単位期間毎の前記送出計画量に対応した前記液化天然ガスの払出を行う前記貯蔵タンクを規定する払出パターンの暫定解または最終解を導出する第1求解処理と、前記制約条件の内の離散変数を含む複数の離散型制約条件に対して、第2緩和処理を行い、前記混合整数非線形計画問題を連続非線形計画問題に置換し、前記第2処理手段を用いて求解し、少なくとも前記各貯蔵タンクの前記液化天然ガスの貯蔵量及び貯蔵熱量の遷移の暫定解または最終解を導出する第2求解処理を、夫々、2回以上実行し、
2回目以降の前記第1求解処理において、前記非線形制約条件の少なくとも一部に対して、直前の前記第2求解処理で導出した前記液化天然ガスの貯蔵量及び貯蔵熱量の遷移の暫定解を使用して、前記第1緩和処理を行い、1回目以降の前記第2求解処理において、前記離散型制約条件の少なくとも一部に対して、直前の前記第1求解処理で導出した前記離散変数を用いて前記第2緩和処理を行うことを特徴とする。
【0013】
更に好ましくは、上記特徴の貯蔵タンク運用計画導出システムは、
前記演算処理手段が、前記入力情報を所与とし、
前記第1求解処理を実行して、前記受入パターンの最終解、前記払出パターンの暫定解、及び、前記各貯蔵タンクの前記液化天然ガスの貯蔵量及び貯蔵熱量の遷移の暫定解を導出する第1演算処理、
前記第1演算処理を経て導出された前記最終解と前記各暫定解に基づいて、前記第2求解処理を実行して、少なくとも前記各貯蔵タンクの前記液化天然ガスの貯蔵量及び貯蔵熱量の遷移の新たな暫定解を導出する第2演算処理、
前記第1及び第2演算処理を経て導出された前記最終解と直近の前記各暫定解に基づいて、前記第1求解処理を実行して、少なくとも前記払出パターンの新たな暫定解または最終解を導出する第3演算処理、及び、
前記第1乃至第3演算処理を経て導出された前記最終解と直近の前記各暫定解に基づいて、前記第2求解処理を実行して、少なくとも前記各貯蔵タンクの前記液化天然ガスの貯蔵量及び貯蔵熱量の遷移の新たな暫定解または最終解を導出する第4演算処理を、順次実行する。
【0014】
更に好ましくは、上記特徴の貯蔵タンク運用計画導出システムは、前記複数の貯蔵タンクの特定の貯蔵タンク間が移送ラインで連結され、前記液化天然ガスを相互間で移送可能に構成されている場合において、
前記記憶手段が、前記混合整数非線形計画問題の制約条件として、更に、前記貯蔵タンク間の前記液化天然ガスの移送に係る複数の制約条件を格納し、
前記演算処理手段が、前記入力情報を所与とし、
前記移送に係る制約条件の少なくとも一部を考慮せずに前記第1乃至第4演算処理を順次実行することにより、前記第1演算処理において、更に、前記計画対象期間内における前記液化天然ガスの移送を行う前記特定の貯蔵タンクを規定する移送パターンの暫定解を導出し、前記第3演算処理において、更に、前記移送パターンの新たな暫定解を導出し、
前記第1乃至第4演算処理を経て導出された前記最終解と直近の前記各暫定解に基づいて、前記移送に係る制約条件を考慮し、前記第1求解処理を実行して、少なくとも前記移送パターンの新たな暫定解を導出する第5演算処理と、
前記第1乃至第5演算処理を経て導出された前記最終解と直近の前記各暫定解に基づいて、前記移送に係る制約条件を考慮し、前記第2求解処理を実行して、前記各貯蔵タンクの前記液化天然ガスの貯蔵量及び貯蔵熱量の遷移の最終解と前記移送パターンの最終解を導出する。
【0015】
更に好ましくは、上記特徴の貯蔵タンク運用計画導出システムは、前記演算処理手段が、前記入力情報及び前記制約条件に含まれる前記液化天然ガスの熱量に代えて前記熱量に近似的に換算可能な前記液化天然ガスの密度を用い、前記第1及び第2求解処理を実行し、前記各貯蔵タンクの前記液化天然ガスの貯蔵熱量の遷移の暫定解に代えて、前記各貯蔵タンクの前記液化天然ガスの密度の遷移の暫定解を導出するように構成されている。
【0016】
更に好ましくは、上記特徴の貯蔵タンク運用計画導出システムは、前記第1緩和処理において、前記制約条件に含まれる前記液化天然ガスの密度と体積の積の非線形式で表される前記液化天然ガスの質量が、基準密度を係数とする体積項と基準体積を係数とする密度項と定数項からなる1次多項式に線形近似される。
【0017】
更に好ましくは、上記特徴の貯蔵タンク運用計画導出システムは、前記演算処理手段が、前記第1及び第2求解処理において、前記連続変数と前記離散変数の内の少なくとも1つの変数によって規定される監視対象項目の所定の基準値からの乖離幅をペナルティとし、1または複数の前記ペナルティを加重加算した目的関数を最小化する実現可能解として、前記最終解及び前記暫定解を導出する。
【0018】
更に好ましくは、上記特徴の貯蔵タンク運用計画導出システムは、前記第1及び第2求解処理の少なくとも1つにおいて、前記ペナルティの1つとして、前記払出ライン毎の所定期間における送出された前記液化天然ガスの平均熱量と所定の基準熱量との間の乖離幅が含まれる。
【0019】
更に好ましくは、上記特徴の貯蔵タンク運用計画導出システムは、前記記憶手段が、更に、前記所定の単位期間を細分化した単位細分期間毎の送出計画量を含む詳細送出計画情報の入力を受け付け、前記入力情報として保存し、前記演算処理手段が、前記第1及び第2求解処理を夫々少なくとも2回実行して前記受入パターンと前記払出パターンの最終解を導出した後、導出された前記最終解と直近の前記各暫定解に基づいて、前記詳細送出計画情報を含む前記入力情報を所与とし、前記単位細分期間毎及び前記貯蔵タンク毎の払出量を導出する。
【0020】
更に好ましくは、上記特徴の貯蔵タンク運用計画導出システムは、前記払出パターンが、前記払出ライン毎に、前記貯蔵タンクと当該払出ライン間に介装された払出用ポンプの内、前記液化天然ガスの払出に使用する1または複数の前記払出用ポンプを規定する。
【0021】
更に好ましくは、上記特徴の貯蔵タンク運用計画導出システムは、前記演算処理手段が、既に開始した未終了の第1の前記計画対象期間の未経過期間の先頭から開始する第2の前記計画対象期間に対する前記第1及び第2求解処理において、初期条件として、第1の前記計画対象期間の経過期間の最終時点における処理結果を使用する。
【0022】
更に好ましくは、上記特徴の貯蔵タンク運用計画導出システムは、前記制約条件に、前記貯蔵タンクに組成の異なる前記液化天然ガスを貯蔵する場合に生じる層状化を防止するための制約条件が含まれる。
【0023】
更に、上記目的を達成するための本発明に係る貯蔵タンク運用計画導出方法は、上記入力情報を所定の記憶手段に保存する入力情報記憶工程と、前記入力情報、前記貯蔵タンクへの前記液化天然ガスの受入及び貯蔵に係る複数の制約条件、及び、前記貯蔵タンクから前記払出ラインへの前記液化天然ガスの払出に係る複数の制約条件によって混合整数非線形計画問題として構成される少なくとも前記液化天然ガスの受入及び払出の各操作を含む前記貯蔵タンクの運用計画問題の実現可能解を、コンピュータの演算処理により求解する演算処理工程と、を有し、
前記演算処理工程において、前記入力情報を所与とし、
前記制約条件の内の非線形式を含む複数の非線形制約条件の夫々に対して、第1緩和処理を行い、前記混合整数非線形計画問題を混合整数線形計画問題に置換して、前記第1処理手段を用いて求解し、少なくとも前記計画対象期間内における前記受入計画毎の前記液化天然ガスの受入の対象となる1または複数の前記貯蔵タンクを規定する受入パターンと前記単位期間毎の前記送出計画量に対応した前記液化天然ガスの払出を行う前記貯蔵タンクを規定する払出パターンの暫定解または最終解を導出する第1求解処理と、
前記制約条件の内の離散変数を含む複数の離散型制約条件に対して、第2緩和処理を行い、前記混合整数非線形計画問題を連続非線形計画問題に置換し、前記第2処理手段を用いて求解し、少なくとも前記各貯蔵タンクの前記液化天然ガスの貯蔵量及び貯蔵熱量の遷移の暫定解または最終解を導出する第2求解処理を、夫々、2回以上実行し、
2回目以降の前記第1求解処理において、前記非線形制約条件の少なくとも一部に対して、直前の前記第2求解処理で導出した前記液化天然ガスの貯蔵量及び貯蔵熱量の遷移の暫定解を使用して、前記第1緩和処理を行い、
1回目以降の前記第2求解処理において、前記離散型制約条件の少なくとも一部に対して、直前の前記第1求解処理で導出した前記離散変数を用いて前記第2緩和処理を行うことを特徴とする。
【0024】
本発明に係る貯蔵タンク運用計画導出システム及び方法において、前記入力情報を保存する前記記憶手段の一部と前記入力情報記憶工程、及び、前記演算処理手段と前記演算処理工程が夫々相互に対応し、実質的に同じ内容を規定している。従って、入力情報、制約条件、非線形制約条件、離散型制約条件、第1及び第2処理手段、第1及び第2緩和処理、第1及び第2求解処理、第1乃至第6演算処理、受入パターン、払出パターン、移送パターン、各最終解及び各暫定解は、上記貯蔵タンク運用計画導出システム及び方法間で同じ内容となっている。よって、上記貯蔵タンク運用計画導出方法の演算処理工程では、上記第1乃至第4演算処理或いは上記第1乃至第6演算処理を夫々経て、上記貯蔵タンク運用計画導出システムと同様の各最終解及び各暫定解を導出する。
【発明の効果】
【0025】
また、上記特徴の貯蔵タンク運用計画導出システム及び方法によれば、複雑で大規模な混合整数非線形問題で表される液化天然ガスを貯蔵する貯蔵タンクの運用計画問題を、混合整数線形計画問題と連続非線形計画問題の2種類の計画問題を、第1求解処理と第2求解処理に分割して、交互に繰り返し求解することで、第1求解処理により離散変数が関連する受入パターンや払出パターン等の暫定解または最終解が得られ、第2求解処理により非線形制約条件に関連する各貯蔵タンクの液化天然ガスの貯蔵量及び貯蔵熱量の遷移の暫定解または最終解が得られるため、互いの導出結果を交互に利用しながら、大域的最適解またはそれに近い実行可能解が得られる。この結果、より効率的な貯蔵タンクの運用計画の立案が短時間の演算処理で可能となるため、受入計画の変更や追加、或いは、払出計画の変更等に適時に対応可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】貯蔵タンクに対する液化天然ガスの受入操作に係る設備構成及び受入操作内容の概略を模式的に示す説明図
【図2】貯蔵タンクに対する液化天然ガスの移送操作に係る設備構成及び移送操作内容の概略を模式的に示す説明図
【図3】貯蔵タンクに対する液化天然ガスの払出操作に係る設備構成及び払出操作内容の概略を模式的に示す説明図
【図4】貯蔵タンクの運用計画問題で扱う主たる連続変数、主たる離散変数、及び、主たる定数を示す一覧表
【図5】本発明に係る貯蔵タンク運用計画導出システムの概略構成を模式的に示すブロック図
【図6】貯蔵タンクの運用計画問題の求解処理の手順を示すフローチャート
【図7】受入パターン、クーリング戻りパターン、及び、移送パターンの画面表示例を示す図
【図8】払出パターンの画面表示例を示す図
【図9】払出パターンの他の画面表示例を示す図
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明に係る貯蔵タンク運用計画導出システム及び方法の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0028】
本発明の一実施形態について、図1〜図8を参照して説明する。図1〜図3に、貯蔵タンク運用計画導出システム(以下、適宜「本システム」と称する。)が求解する運用計画問題の対象となる液化天然ガス(LNG)を貯蔵する複数の貯蔵タンク10に対するLNGの受入、移送、払出の各操作に係る設備構成及び各操作内容の概略を模式的に示す。先ず、図1〜図3を参照して、受入、移送、払出の各操作について簡単に説明する。
【0029】
受入操作とは、図1に示すように、LNGタンカー等の運搬手段11により生産地或いは他のLNG貯蔵基地等から運搬されてきたLNGを、複数の貯蔵タンク10の中から受入カーゴの積荷量等に応じた1または複数の貯蔵タンクを受入タンクとして指定し、指定された受入タンクに受入カーゴのLNGを受け入れる操作である。尚、LNGの各受入は、受入計画として設定され、その具体的な内容である受入量、受入時期(受入日)、受入熱量等は、受入計画情報として予め設定されている。本実施形態では、複数の貯蔵タンク10の内の一部のタンクだけを受入タンクとして使用する場合を想定し、例えば、図1に示す一例では、貯蔵タンク10が、2つのエリアA1,A2に分散して設置されている場合において、エリアA1の貯蔵タンクK101〜K104の4基と、エリアA2の貯蔵タンクK201〜K203の3基を受入タンクとして使用する。
【0030】
移送操作とは、図2に示すように、貯蔵タンク10内のLNGを、移送ライン12を介して別の貯蔵タンク10に移動させる操作で、例えば、複数の貯蔵タンク10の内の一部のタンクだけを受入タンクとして使用する場合等(図1参照)において、受入タンクから他の貯蔵タンク10にLNGを移動させる場合に適用される。尚、移送元となる貯蔵タンク10と移送ライン12の間には、移送用ポンプ13が夫々1台ずつ介装されている。図2に示す例では、受入タンクは全て移送元となり、エリアA2内の受入タンクは移送先ともなっている。受入タンクは必ずしも移送元とならなくても良い。また、受入タンクの一部が移送先となっているのは、受入タンクの選択の自由度を高めるためであり、例えば、後述する層状化判定条件に応じて受入タンクの貯蔵量を調整するのに利用できる。
【0031】
払出操作とは、図3に示すように、貯蔵タンク10内のLNGを各貯蔵タンク10に対応付けられた払出ライン14に払い出す操作である。各払出ライン14からは、払い出されたLNGを直接または気化させ、必要に応じて熱量調整を行い、対応する1または複数の送出先15へ送出される。本実施形態では、各貯蔵タンク10には、夫々少なくとも2台の払出用ポンプ16が設置され、例えば、同じ貯蔵タンク10の異なる払出用ポンプ16から同じ払出ライン14への払出が可能に構成され、一台がトリップして使用不能となっても他の一台に切り替えて使用可能に構成されている。また、一部の貯蔵タンク10を除いて、各払出用ポンプ16は、少なくとも2つの払出ライン14に接続し、何れか1つの払出ライン14に選択的に払出可能に構成されている。斯かる構成により、1基の貯蔵タンク10に対して1台または2台の払出用ポンプ16を稼働させることで、各貯蔵タンク10を夫々1つの払出ライン14に対応付けることができ、払出ライン14毎に払出元となる貯蔵タンク10がグループ化される。本実施形態では、払出ライン14毎に、所定の単位期間(例えば、1日)毎の対応する送出先15へのLNGまたはLNGを気化させた都市ガスの送出計画量が送出計画情報として予め設定されている。
【0032】
ところで、極低温のLNGを扱う設備では、LNGを通流させる配管類の内部を極低温状態に維持するために、LNGを通流させて配管類の内部の保冷するクーリング(保冷操作)を行う。本実施形態では、当該クーリングを、払出ライン14に払出されたLNGの一部(クーリング用LNG)を、弁を介して保冷対象の移送ライン12に流入させ、当該クーリング用LNGを回収する貯蔵タンク10(クーリング戻りタンク)まで移送することで実施する(第1のクーリング形態)。本実施形態では、クーリングの対象として移送ライン12を想定している。従って、クーリングを払出操作或いは移送操作の一部として捉えることもできる。以下の説明において、クーリング戻り量とは、移送ライン12に流入したクーリング用LNGの量(体積)またはクーリング戻りタンクに回収されるクーリング用LNGの量(体積)を意味する。尚、本実施形態では、上記第1のクーリング形態を想定しているが、これ以外にも、例えば、特定の受入タンクをクーリング供給タンクの候補とし、当該候補の中から選択されたクーリング供給タンクからクーリング用LNGを取り出し、移送ライン12を経由して、予めクーリング戻りタンクとして設定された貯蔵タンク10に回収するようにしても良い(第2のクーリング形態)。
【0033】
以下、図1〜図3に例示した貯蔵タンク10、移送ライン12、移送用ポンプ13、払出ライン14、払出用ポンプ16等で構成されるLNGの受入、移送、払出のための設備を、便宜的に、「LNG貯蔵設備群」と称する。
【0034】
次に、本システムの求解対象となる貯蔵タンク10の運用計画問題について説明する。本運用計画問題は、多数の連続変数と離散変数、及び、当該変数により規定される多数の制約条件と1つの目的関数で表され、一部の制約条件に非線形式が含まれる混合整数非線形計画問題となる。本システムは、上述の受入計画情報と送出計画情報、及び、各貯蔵タンク10のLNGの初期貯蔵量と初期貯蔵熱量を含むタンク初期状態情報が入力情報として与えられると、後述する処理手順で当該混合整数非線形計画問題を求解し、計画対象期間(例えば、30日間)内における受入計画毎のLNGの受入の対象となる1または複数の貯蔵タンク10を規定する受入パターン、LNGの移送を行う特定の貯蔵タンク10を規定する移送パターン、単位期間(例えば、1日)毎の上記送出計画量に対応した各払出ライン14へLNGの払出を行う貯蔵タンク10を規定する払出パターン、クーリング戻りタンクを規定するクーリング戻りパターン、及び、各貯蔵タンク10における単位期間(例えば、1日)毎の貯蔵量と貯蔵熱量の遷移を夫々導出し、出力情報として所定の形式で出力する。
【0035】
次に、本運用計画問題で扱う連続変数、離散変数、定数、制約条件の主たるものにつき説明する。以下、単位期間を1日とし、計画対象期間Tを30日とし、計画対象期間T内における時点t(t=1〜30)を日単位で表すものとする。本実施形態では、時点tの長さは単位期間(1日)である。
【0036】
図4(A)〜(C)に、主たる連続変数、主たる離散変数、及び、主たる定数の一覧表を夫々示す。図4(A)及び(B)の各一覧表の左列に連続変数または離散変数の記号を、右列に内容を夫々記載する。図4(C)の一覧表の左列に定数の記号を、中央列に分類番号を、右列に内容を夫々記載する。
【0037】
図4(A)及び(C)に示す受入量、移送量、払出量、BOG発生量、クーリング戻り量、BOGの量、送出計画量の次元は体積(液体状態)である。
【0038】
本実施形態では、LNGの熱量(受入熱量、貯蔵タンク10内の貯蔵熱量、払出ライン14内の熱量等)は、全て液体状態における密度(単位体積当たりの質量)に換算する。従って、LNGの熱量に関する連続変数及び定数は、全て密度に関する連続変数及び定数に置換したものを使用する。具体的には、LNGの熱量を気化ガスの標準状態の単位体積当たりの熱量[MJ/Nm](標準状態気化熱量)に換算し、LNGの標準状態気化熱量とLNGの密度(液体状態)の一方を他方の1次式で近似することで置換が可能となる。LNGの密度(液体状態)がLNGの標準状態気化熱量に換算できるため、払出されたLNGを気化した都市ガスに対する熱量制約が、払出されたLNGの密度(液体状態)に対する制約条件に簡単に置き換えることができる。
【0039】
図4(C)の一覧表に示す分類番号1に分類される定数は、受入計画情報及び送出計画情報等の入力情報によって与えられる。分類番号2に分類される定数は、LNGの物性に基づいて設定される。分類番号3に分類される定数は、貯蔵タンク10、移送ライン12、移送用ポンプ13、払出ライン14、及び、払出用ポンプ16等のLNGの受入、貯蔵、移送、払出に係る各種設備の属性情報(貯蔵タンク10の容積、移送用ポンプ13及び払出用ポンプ16の性能等)に基づいて設定される。分類番号4に分類される定数は、払出されたLNGに対する熱量制約に基づいて設定される。
【0040】
次に、制約条件について説明する。制約条件は、主として、受入、貯蔵、移送、払出、クーリングの各段階での各種設備に対する物量制約及び熱量制約として規定される。物量制約には、LNGの体積に関する制約、及び、各操作の対象となる貯蔵タンク10、移送ライン12、払出ライン14の可能な組み合わせに関する制約が含まれる。熱量制約は、各操作段階でのLNGの熱量に関する制約であるが、本実施形態では、熱量制約は、LNGの密度に関する制約となる。但し、貯蔵タンク10毎の日単位での質量変化に関する制約(下記の数2参照)、及び、払出ライン14毎のLNGの払出質量(払出量と密度の積)と対応する送出先15へのLNGの送出質量(送出計画量と密度の積)間のバランスに関する制約(下記の数8参照)、及び、クーリング用LNGに関する質量バランスに関する制約(下記の数18参照)にも、密度が含まれるため、質量に関する制約は、物量制約と熱量制約の2つの側面を有する。当該質量に関する制約条件式では、2つの連続変数(体積と密度)の積(非線形式)で表される種々の質量の多項式となるため、当該質量制約は非線形制約となる。
【0041】
また、制約条件は、制約条件式に含まれる変数の種類に応じても分類される。制約条件式が変数として、離散変数を含まず連続変数だけを含む場合、逆に、連続変数を含まず離散変数だけを含む場合、そして、連続変数と離散変数の両方を含む場合の3種類に分類される。
【0042】
以下、主たる制約条件について具体的に説明する。先ず、貯蔵タンク10毎の日単位での体積変化と質量変化に関する制約条件式を以下の数1〜数3に示す。数1〜数3は何れも連続変数に関する制約条件である。数1〜数3の制約条件式は、夫々、計画対象期間Tの日数と貯蔵タンク10の数の積と同数存在する。
【0043】
【数1】


【数2】


【数3】

【0044】
数1は、貯蔵タンクjにおいて、時点tでの当初貯蔵体積に対して時点tで発生する各操作やBOG発生等による体積変化を経て次の時点t+1の当初貯蔵体積となることを表している。具体的には、時点tでの当初貯蔵体積に、時点tでの受入量と流入する移送量と流入するクーリング戻り量を加算し、流出する移送量と払出量とBOG発生量を減算することで、次の時点t+1の当初貯蔵体積となる。従って、数1に示す制約条件は、受入、貯蔵、移送、払出、クーリングの全ての操作を含む物量制約を示している。ここで、数1の右辺第7項のBOG発生量は、時点tでの各操作で発生したBOGの総量であり、操作毎のBOG発生量として、その操作時点でのBOGの密度等をパラメータとして、操作別に予めテーブル化された値を使用することで求められる。
【0045】
数2は、貯蔵タンクjにおいて、時点tでの当初貯蔵質量に対して時点tで発生する各操作やBOG発生等による質量変化を経て次の時点t+1の当初貯蔵質量となることを表している。具体的には、時点tでの当初貯蔵質量(貯蔵体積と貯蔵密度の積)に、時点tでの受入質量(受入量と受入密度の積)と流入する移送質量(移送量と移送元タンクの貯蔵密度)と流入するクーリング戻り質量(クーリング戻り量とクーリング戻りLNGの密度)を加算し、流出する移送質量(移送量と貯蔵密度)と払出質量(払出量と貯蔵密度)とBOG発生質量(BOG発生量とBOGの密度)を減算することで、次の時点t+1の当初貯蔵質量(貯蔵体積と貯蔵密度の積)となる。ここで、数2の右辺第7項内のBOG発生量は、上記数1と同様に求められる。従って、数2に示す制約条件は、受入、貯蔵、移送、払出、クーリングの全ての操作を含む物量制約と熱量制約を示している。
【0046】
数3は、各貯蔵タンク10における貯蔵量の上下限に関する貯蔵段階での物量制約を規定する制約条件式であり、具体的には、時点tでの各貯蔵タンク10における貯蔵量が、各貯蔵タンク10の貯蔵容量で定まる体積上限値以下、体積下限値以上となることを規定している。
【0047】
次に、受入操作における物量制約に係る制約条件式を以下の数4〜数6に示す。数4は連続変数に関する制約条件であり、数5は、連続変数と離散変数に関する制約条件(混合整数制約条件)であり、数6は離散変数に関する制約条件である。
【0048】
【数4】


【数5】


【数6】

【0049】
数4は、時点tが受入日となっている受入計画の受入量が、時点tで各貯蔵タンク10に受け入れられた受入量の合計となることを表している。数3の左辺の各貯蔵タンク10の内、受入タンクとして使用されない貯蔵タンク10の受入量は0である。数4は、計画対象期間Tの日数と同数存在する。時点tで受入計画のない場合は、数4の右辺の定数の値は0である。
【0050】
数5は、時点tでの貯蔵タンクjでの受入量が、時点tに受入が有る場合は、貯蔵タンクjの体積上限値以下であり、時点tに受入が無い場合は、0であることを表している。数5は、計画対象期間Tの日数と貯蔵タンク10の数の積と同数存在する。
【0051】
数6は、1つの受入計画に対して同時に受入タンクとして使用できない貯蔵タンク10の組み合わせを規定している。つまり、数6は、貯蔵タンクj1と貯蔵タンクj2が同時に受入タンクとして使用できないことを表している。数6は、同時に受入タンクとして使用できない貯蔵タンク10の組み合わせの数だけ存在する。
【0052】
次に、払出操作における物量制約に係る制約条件式を以下の数7〜数10に示す。数7〜数10は何れも連続変数に関する制約条件である。数7及び数8の制約条件式は、夫々、計画対象期間Tの日数と払出ライン14の数の積と同数存在する。数9の制約条件式は、計画対象期間Tの日数と貯蔵タンク10の数の積と同数存在する。数10の制約条件式は、計画対象期間Tの日数と貯蔵タンク10の数と払出ライン14の数の積と同数存在する。
【0053】
【数7】


【数8】


【数9】


【数10】

【0054】
数7は、時点tでの払出ラインlへの払出量の合計と払出ラインlの送出計画量との間の体積バランスを規定している。具体的には、時点tでの払出ラインlへの払出量の合計が、払出ラインlから各貯蔵タンク10へのクーリング戻り量の合計と、時点tの払出ラインlに係る送出計画の送出先m’(m’は払出ラインlに対応する送出先を示す)への各送出計画量の合計を加算し、時点tでの送出先m’に混入する各BOGの量の合計を減算した体積と等しくなる。本実施形態では、払出操作に伴い各送出先15に混入するBOGの量は、その操作時点でのBOGの密度等をパラメータとして、操作別に予めテーブル化された値を使用することで求められる。
【0055】
数8は、時点tでの払出ラインlへの払出質量の合計と払出ラインlの送出計画量と密度の積で表される送出計画質量の間の質量バランスを規定している。具体的には、時点tでの払出ラインlへの各貯蔵タンクjからの払出量と密度の積の合計が、払出ラインlから各貯蔵タンク10へのクーリング戻り量の合計と、時点tの払出ラインlに係る送出計画の送出先m’(m’は払出ラインlに対応する送出先を示す)への各送出計画量の合計の和に払出ラインlの密度を乗算し、時点tでの送出先m’に混入する各BOGの量の合計にBOGの密度を乗算したBOG質量を減算した質量と等しくなる。
【0056】
数9は、時点tでの貯蔵タンクjから各払出ラインlへの払出量の合計が、貯蔵タンクjに接続している払出用ポンプkからの払出量の合計となることを規定している。
【0057】
数10は、時点tでの貯蔵タンクjから払出ラインlへの払出量が貯蔵タンクjと払出ラインl間の設けられた払出用ポンプ16の能力で決まる上限値以下に制限されることを表している。
【0058】
次に、払出操作における熱量制約に係る制約条件式を以下の数11及び数12に示す。数11及び数12は何れも連続変数に関する制約条件である。数11の制約条件式は、払出ライン14の数と同数存在し、数12の制約条件式は、計画対象期間Tの日数と払出ライン14の数の積と同数存在する。
【0059】
【数11】


【数12】

【0060】
数11は、各払出ラインlの時点tでの密度の計画対象期間Tにおける平均密度が、各払出ラインlの平均密度の下限値以上であることを規定している。
【0061】
数12は、時点tでの各払出ラインlの密度が、各払出ラインlの瞬時密度の下限値以上且つ上限値以下であることを規定している。本実施形態では、単位期間を1日と想定しているが、瞬時熱量の下限値と上限値は1時間単位での密度の変動許容範囲を規定している。つまり、数12は、1日単位で規定される各払出ラインlの密度が、1時間単位の密度の変動許容範囲内に収まっていることを規定するものである。
【0062】
次に、移送操作における物量制約に係る制約条件式を以下の数13〜数16に示す。数13は連続変数に関する制約条件である。数14〜数16は何れも離散変数に関する制約条件である。数13の制約条件式は、計画対象期間Tの日数と貯蔵タンク10の数と貯蔵タンク10の数から1引いた数との積と同数存在する。数14〜数16の制約条件式は、夫々、計画対象期間Tの日数と貯蔵タンク10の数の積と同数存在する。
【0063】
【数13】


【数14】


【数15】


【数16】

【0064】
数13は、時点tでの貯蔵タンクiから貯蔵タンクjへの移送量が貯蔵タンクiに設けられた移送用ポンプ13の能力で決まる上限値以下に制限されることを表している。
【0065】
数14は、時点tでの移送操作では、同じ時点tで、複数の貯蔵タンク10が移送先になることはないことを規定している。数14の左辺の値は、時点tで貯蔵タンクjが移送元となる移送が行われない場合は0となり、行われる場合は1となる。
【0066】
数15は、時点tでの移送操作では、同じ時点tで、複数の貯蔵タンク10が移送元となることはないことを規定している。数15の左辺の値は、時点tで貯蔵タンクjが移送先となる移送が行われない場合は0となり、行われる場合は1となる。
【0067】
数16は、時点tでの移送操作では、複数の貯蔵タンク10の内、同じ貯蔵タンク10が同時に移送先と移送元になることはないことを規定している。数16の左辺の値は、時点tで貯蔵タンクjが移送先または移送元となる移送が行われない場合は0となり、行われる場合は1となる。
【0068】
次に、クーリング操作における物量制約に係る制約条件式を以下の数17及び数18に示す。数17及び数18は何れも連続変数に関する制約条件である。数17及び数18の制約条件式は、夫々、計画対象期間Tの日数と払出ライン14の数の積と同数存在する。
【0069】
【数17】


【数18】

【0070】
数17は、時点tでの払出ラインlを経由して提供されるクーリング用LNGに関する体積バランスを規定している。具体的には、時点tでの払出ラインlから各貯蔵タンクjへのクーリング戻り量の合計が、時点tでの払出ラインlから所定の移送ライン12へのクーリング戻り量と等しくなる。
【0071】
数18は、時点tでのクーリング用LNGに関する質量バランスを規定している。具体的には、時点tでの各払出ライン14から所定の移送ライン12へのクーリング戻り量の合計とクーリング戻りLNGの密度の積が、時点tでの払出ラインlから所定の移送ライン12へのクーリング戻り量と払出ラインlの密度の積の合計と等しくなる。
【0072】
以上、主たる制約条件について、受入、貯蔵、移送、払出、クーリングの各段階での物量制約及び熱量制約に分類して、詳細に説明した。以下、説明の便宜上、数1、数7及び数17に示す体積変化及び体積バランスを規定する制約条件を「体積保存則」と称し、数2、数8及び数18に示す質量変化及び質量バランスを規定する制約条件を「質量保存則」と称す。制約条件は、本システムの求解対象の混合整数非線形計画問題の基礎となるLNG貯蔵設備群の構成及び個々の構成要素の個数や個々の構成要素の属性(大きさや性能等)等に大きく依存するため、数1〜数18で例示した主たる制約条件に追加して、別の制約条件を設定しても良い。更に、当該主たる制約条件の一部を、別の制約条件に変更しても良い。
【0073】
一例として、受入、移送、或いは、クーリングによってLNGを貯蔵タンク10に流入させる場合の制約として、貯蔵タンク10の貯蔵量と、流入するLNGと貯蔵LNGの密度差との関係に基づいて、LNGの入口をタンク上部またはタンク下部の何れか一方に決定する制約条件がある。これは、上記関係によって、貯蔵タンク10内でLNGに密度分布が生じて層状化するのを防止するための熱量制約に係る制約条件(層状化判定条件)である。当該制約条件は、例えば、受入タンクが複数の場合にLNGの入口をタンク下部に統一する運用を行う場合等において、LNGの入口がタンク上部となる受入タンクの貯蔵量を予めLNGの入口がタンク下部となる貯蔵量とする制約条件に変更できる。何れの場合においても、貯蔵タンク10のLNGの入口がタンク上部かタンク下部かを決める変数は離散変数となる。例えば、受入対象となる貯蔵タンク10が複数の場合に、LNGの入口をタンク上部またはタンク下部に統一する必要がある場合の制約条件は、当該離散変数を用いた制約条件となる。
【0074】
他の一例として、受入操作における物量制約に係る制約条件に、例えば、受入タンクが複数の場合に、受入タンク間で、受入前の各貯蔵量で決まるタンク液位の差が所定範囲内であることを規定する制約条件、受入タンクが複数の場合に、受入タンク間で、受入後の各貯蔵量で決まるタンク液位の差が等しいことを規定する制約条件、受入タンクが複数の場合に、受入タンク間で、受入量の比率が所定の比率となることを規定する制約条件、受入タンクの数が、受入計画の受入量によって決定されることを規定する制約条件等を追加しても良い。
【0075】
他の一例として、払出操作における物量制約に係る制約条件として、例えば、払出用ポンプ16と払出ライン14間の対応関係を一定期間変更せず固定することを規定する制約条件、払出ライン14毎に稼働させる払出用ポンプ16の台数を払出ライン14毎の送出計画量で定まる必要台数より1台多く設定することを規定する制約条件等を追加しても良い。尚、前者の制約条件の内、払出用ポンプ16と払出ライン14間の対応関係と、当該対応関係を固定する一定期間は、夫々入力情報の一部として適宜変更可能に構成しても良い。
【0076】
他の一例として、払出操作における熱量制約に係る制約条件として、例えば、数11及び数12に示す制約条件が、払出用ポンプ16が1台トリップしても満足することを規定する制約条件、払出用ポンプ16を起動する前の払出元となる貯蔵タンク10内の密度が所定の範囲内にあることを規定する制約条件、払出ライン14から送出先15へ送出されるLNGの熱量調整に付加されるLPG(液化石油ガス)の付加量が所定の上限値以下であることを規定する制約条件、払出ライン14から送出先15へ送出されるLNGに混入するBOG量が所定の上限値以下であることを規定する制約条件等を追加しても良い。
【0077】
他の一例として、移送操作における物量制約に係る制約条件として、例えば、移送ライン12毎に、移送元となる貯蔵タンク10と移送先となる貯蔵タンク10が特定の貯蔵タンク10に固定されていることを規定する制約条件、同じエリア内で受入操作を行う場合は、同じエリア内で移送操作を行わないことを規定する制約条件、移送用ポンプ13を起動する前の移送元となる貯蔵タンク10内の貯蔵量または液位が所定の範囲内にあることを規定する制約条件等を追加しても良い。
【0078】
他の一例として、クーリングにおける物量制約に係る制約条件として、例えば、移送ライン12毎に、クーリング用LNGの送出元となる払出ライン14とクーリング戻りタンクの可能な組み合わせを予め所定の組み合わせに固定する制約条件等を追加しても良い。
【0079】
次に、本システムの構成について説明する。図5は、本システム1の概略構成を示す。図5に示すように、本システム1は、混合整数非線形計画問題を後述する処理手順で求解する演算処理手段2と、当該処理手順、上述の制約条件と目的関数、上述の受入計画情報と送出計画情報とタンク初期状態情報を含む入力情報、上述のBOG発生量を規定するテーブル等を格納する記憶手段3を備える。尚、上述の連続変数、離散変数、及び、分類番号2〜4に分類される定数等は、制約条件の一部として、また、分類番号1に分類される定数は、入力情報の一部として、記憶手段3に格納される。
【0080】
演算処理手段2は、混合整数非線形計画問題を直接求解する汎用ソルバーを備えず、混合整数線形計画問題を求解する汎用ソルバーである第1処理手段4と連続非線形計画問題を求解する汎用ソルバーである第2処理手段5を備えて構成される。第1処理手段4は、分枝限定法を活用した求解アルゴリズムを用いて、混合整数線形計画問題及び整数計画問題を求解する。第2処理手段5は、内点法を活用した求解アルゴリズムを用いて、連続非線形計画問題を求解する。第1処理手段4及び第2処理手段5は、所定のプラットフォーム上で動作するソフトウェア手段で、当該プラットフォームを構成するメモリ上に各処理手段の実行プログラムがロードされて実現される。以下、便宜的に、第1処理手段4による求解処理を総合して「第1求解処理」と称し、第2処理手段5による求解処理を総合して「第2求解処理」と称す。
【0081】
また、演算処理手段2は、第1処理手段4及び第2処理手段5を後述する処理手順で、何れか一方を逐次選択して、第1求解処理または第2求解処理を選択的に実行する求解処理制御手段6としても機能し、更に、最終的に導出された受入パターン、移送パターン、払出パターン、クーリング戻りパターン、及び各貯蔵タンク10における1日毎の貯蔵量と貯蔵密度の遷移(以下、便宜的に「貯蔵状態遷移」と称す。)等の出力情報を所定の出力フォーマットで出力処理(画面表示或いはプリント出力等)する出力手段7としても機能する。従って、本実施形態では、第1処理手段4と第2処理手段5と求解処理制御手段6が協働して、貯蔵タンク10の運用計画問題の混合整数非線形計画問題を求解する専用ソルバーとして機能する。
【0082】
演算処理手段2は、上記プラットフォームとして、例えば、一般的に普及しているOS(オペレーティングシステム)で動作する高性能の中央演算処理装置(例えば、インテル社製のCore i5等)を搭載したパーソナルコンピュータ或いはエンジニアリングワークステーション等の汎用コンピュータを用いて構成される。第1処理手段4、第2処理手段5、及び、求解処理制御手段6と出力手段7は、夫々共通のプラットフォーム上に構成されても良く、また、夫々個別のプラットフォーム上に構成されても良い。また、後述するように、第1処理手段4による第1求解処理と第2処理手段5による第2求解処理は同時に実行されないため、第1処理手段4と第2処理手段5は共通のプラットフォーム上に構成されても良い。また、第1処理手段4と第2処理手段5を構成するプラットフォームと、求解処理制御手段6と出力手段7を構成するプラットフォームは、必ずしも同じアーキテクチャのコンピュータでなくても良く、第1処理手段4と第2処理手段5を構成するプラットフォームは、第1処理手段4と第2処理手段5の求解アルゴリズムに特化した専用コンピュータを用いても良い。
【0083】
記憶手段3は、例えば、上記プラットフォームに付属するハードディスク記憶装置等の不揮発性記憶装置、或いは、上記プラットフォームとは別に設けられた外付けのハードディスク等の不揮発性記憶装置を用いて実現される。記憶手段3は、ハードウェア構成上、必ずしも同じ記憶装置で構成されている必要はなく、例えば、上述の受入計画情報と送出計画情報とタンク初期状態情報等の入力情報を格納する記憶領域と、該入力情報以外の情報を格納する記憶領域が夫々異なる記憶装置を使用しても良い。更に、上記処理手順は、求解処理制御手段6が構成されるプラットフォームに付属する記憶装置に格納されているのが好ましい。
【0084】
次に、本システム1を用いて上記運用計画問題を求解して貯蔵タンク10の運用計画を導出する方法について、図6のフローチャートを参照して説明する。
【0085】
先ず、ステップ#1で、上述の受入計画情報と送出計画情報とタンク初期状態情報の入力情報を、オペレータの入力操作により受け付けて、記憶手段3に入力し、保存する(入力情報記憶工程)。
【0086】
受入計画情報は、計画導出期間T内のLNGの調達に係る情報で、例えば、計画導出期間T内に発生する受入計画毎に、受入計画の識別情報、LNGタンカーの入船日(受入日)、LNG受入量、LNGの密度(または標準状態気化熱量)等の情報で構成される。尚、本実施形態では、上述のように、LNGの標準状態気化熱量は、密度に換算するため、オペレータの入力操作により当該熱量の入力を受け付ける場合は、演算処理手段2が当該熱量を密度に変換してから記憶手段3に入力する。
【0087】
送出計画情報は、送出先15毎のLNGの需要推定に基づいて設定され、計画導出期間T内の1日単位での各送出先15へのLNGまたはLNGを気化させた都市ガスの送出計画量で構成される。本実施形態では、当該送出計画量は、LNG(液体状態)の体積で表される。
【0088】
タンク初期状態情報は、計画導出期間Tの開始直前に各貯蔵タンク10に貯蔵されているLNGの体積及び密度の各初期値で構成され、体積及び密度の各初期値が初期貯蔵量と初期貯蔵熱量に相当する。タンク初期状態情報は、各貯蔵タンク10に設けられた液量計及び質量計による測定結果を取得して、自動的にまたはオペレータの手動操作により、記憶手段3に入力される。
【0089】
記憶手段3には、入力情報記憶工程前に、求解対象である運用計画問題を構成する上述した制約条件、連続変数、離散変数、及び、定数等は、予め格納されている。尚、求解対象である運用計画問題を変更する場合は、つまり、対象とするLNG貯蔵設備群が異なる場合は、制約条件、連続変数、離散変数、及び、定数等を改めて設定し直す。
【0090】
次に、ステップ#2以降で、ステップ#1で入力され記憶手段3に保存されている入力情報を前提として、求解処理制御手段6によって制御される処理手順に基づいて演算処理工程を実行する。
【0091】
ステップ#2において、演算処理手段2は、上記制約条件の内、例えば、移送、払出及びクーリングに係る制約条件の一部を考慮せず、考慮の対象となる受入、貯蔵に係る制約条件と移送、払出及びクーリングに係る制約条件の他の一部の内、非線形式を含む非線形制約条件において当該非線形式を線形近似し、考慮の対象外の制約条件に含まれる非線形制約条件は考慮することなく、混合整数非線形計画問題で表されていた運用計画問題を混合整数線形計画問題に置換して、当該混合整数線形計画問題を、第1処理手段4を用いて、考慮対象として選択した制約条件を満足し、以下の目的関数を最小化する実行可能解として、受入パターン、払出パターン、移送パターン、クーリング戻りパターン、及び、貯蔵状態遷移を導出する(第1演算処理)。本実施形態では、当該第1演算処理により、受入パターンの最終解と、払出パターン、移送パターン、クーリング戻りパターン、及び、貯蔵状態遷移の暫定解を得る。このため、考慮の対象外とする制約条件は、受入パターンの最終解を導出するのに大きな影響を与えない制約条件が選択される。具体的に、如何なる制約条件を除外するかは、LNG貯蔵設備群の構成及び個々の構成要素の個数や個々の構成要素の属性(大きさや性能等)等に依存するが、移送に係る制約条件では、例えば、移送ライン12毎に、移送元となる貯蔵タンク10と移送先となる貯蔵タンク10が特定の貯蔵タンク10に固定されていることを規定する制約条件は考慮対象とするのが好ましい。また、払出に係る制約条件では、例えば、物量制約に係る制約条件は全て考慮し、熱量制約に係る一部の制約条件だけを考慮の対象外とするのが好ましい。
【0092】
尚、第1処理手段4は当該第1演算処理と後述する第3演算処理及び第5演算処理の第1求解処理を周知の分枝限定法を活用した求解アルゴリズムを用いて求解するが、当該第1求解処理の具体的な内容については、本発明の本旨ではないので、詳細な説明は省略する。
【0093】
第1演算処理では、線形近似の対象となる非線形制約条件は、上述の数2及び数8に示したLNGの質量に関する制約条件(質量保存則)である。数2及び数8の左辺、及び、右辺の各項の密度変数qと体積変数vの積で表される非線形式は、以下の数19の右辺に示す線形式に近似できる。尚、密度変数qと体積変数vの記号q及びvは、数2及び数8の各密度変数と各体積変数を便宜的に代表している。
【0094】
【数19】

【0095】
数19の右辺のq0とv0は定数で、夫々基準密度と基準体積を表しており、密度変数qの基準密度からの変化と体積変数vの基準体積からの変化が小さいと仮定することで、当該2つの変化の積は近似的に無視することができる。
【0096】
本実施形態では、目的関数として、以下の数20に示す目的関数Fを使用する。数20において、Piは、所定の監視対象項目の所定の基準値からの乖離幅で示されるペナルティで、Aiは当該ペナルティPiを加重加算するときの重み係数である。監視対象項目としては、上記制約条件において変動範囲が制限されている連続変数、例えば、上記数1から数18までに例示した制約条件式の内、不等式で表されている制約条件中の連続変数や、連続変数、離散変数またはその両方で表される関数等が含まれる。例えば、監視対象項目の一例として、各払出ライン14の時点tでの密度の計画対象期間Tにおける平均密度、各払出ライン14の各時点tでの密度、計画対象期間T内に発生する移送回数、計画対象期間T内における移送量の合計等が想定される。但し、ステップ#2の第1演算処理では、移送及び払出に係る制約条件の一部及びクーリングに係る制約条件については考慮しないので、これらの制約条件に係るペナルティの重み係数は0または他より小さい値に設定しても良い。
【0097】
【数20】

【0098】
ステップ#3において、演算処理手段2は、ステップ#2の第1演算処理で得られた結果を用いて、受入パターン及び離散変数を全て固定することにより、混合整数非線形計画問題で表されていた運用計画問題を連続非線形計画問題に置換して、当該連続非線形計画問題を、第2処理手段5を用いて、考慮対象として選択した制約条件を満足し、数20の目的関数を最小化する実行可能解として、貯蔵状態遷移の新たな暫定解を導出する(第2演算処理)。第2演算処理では、非線形式を含む制約条件は非線形式のまま線形近似せずに用い、更に、第1演算処理で考慮対象外として除外された制約条件の一部、例えば、払出に係る制約条件を考慮対象として追加する。これにより、第2演算処理では、第1演算処理で得られた貯蔵状態遷移の暫定解より高精度の暫定解が得られる。尚、第2演算処理では、考慮の対象となる制約条件に応じて、数20の目的関数における重み係数Aiを第1演算処理時より変更しても良い。
【0099】
尚、第2処理手段5は当該第2演算処理と後述する第4演算処理及び第6演算処理の第2求解処理を周知の内点法を活用した求解アルゴリズムを用いて求解するが、当該第2求解処理の具体的な内容については、本発明の本旨ではないので、詳細な説明は省略する。
【0100】
ステップ#4において、演算処理手段2は、ステップ#2〜ステップ#3の第1及び第2演算処理で得られた結果を用い、更に、考慮の対象となる制約条件の内、非線形式を含む非線形制約条件において、当該非線形式を線形近似することにより、混合整数非線形計画問題で表されていた運用計画問題を混合整数線形計画問題に置換して、当該混合整数線形計画問題を、第1処理手段4を用いて、考慮対象として選択した制約条件を満足し、数20の関数を最小化する実行可能解として、払出パターンとクーリング戻りパターンの最終解と、移送パターンの新たな暫定解を導出する(第3演算処理)。第3演算処理では、払出パターンとクーリング戻りパターンの最終解を得るために払出及びクーリングに係る制約条件を全て考慮対象とし、その代わりに、第2演算処理で考慮した移送に係る制約条件の一部を対象外として除外し、考慮の対象となる制約条件を調整し、混合整数線形計画問題の緩和を図っている。第3演算処理では、第2演算処理で得られたより高精度の貯蔵状態遷移の暫定解を使用するため、高精度に払出パターンとクーリング戻りパターンの最終解を得ることができ、移送パターンの暫定解も、第1演算処理時より高精度化される。尚、第3演算処理では、考慮の対象となる制約条件に応じて、数20の目的関数における重み係数Aiを第2演算処理時より変更しても良い。
【0101】
ステップ#5において、演算処理手段2は、ステップ#2〜ステップ#4の第1乃至第3演算処理で得られた結果を用いて、受入パターン、払出パターン、クーリング戻りパターン及び離散変数を全て固定することにより、混合整数非線形計画問題で表されていた運用計画問題を連続非線形計画問題に置換して、当該連続非線形計画問題を、第2処理手段5を用いて、考慮対象として選択した制約条件を満足し、数20の目的関数を最小化する実行可能解として、貯蔵状態遷移の新たな暫定解を導出する(第4演算処理)。第4演算処理では、非線形式を含む制約条件は非線形式のまま線形近似せずに用い、更に、第3演算処理で考慮対象外として除外された制約条件の一部を考慮対象として追加する。これにより、第4演算処理では、第2演算処理で得られた貯蔵状態遷移の暫定解より高精度の暫定解が得られる。尚、第4演算処理では、考慮の対象となる制約条件に応じて、数20の目的関数における重み係数Aiを第3演算処理時より変更しても良い。
【0102】
ステップ#6において、演算処理手段2は、ステップ#2、ステップ#4及びステップ#5の第1、第3及び第4演算処理で得られた結果を用い、更に、考慮の対象となる制約条件の内、非線形式を含む非線形制約条件において、当該非線形式を線形近似することにより、混合整数非線形計画問題で表されていた運用計画問題を混合整数線形計画問題に置換して、当該混合整数線形計画問題を、第1処理手段4を用いて、考慮対象として選択した制約条件を満足し、数20の関数を最小化する実行可能解として、移送パターンの新たな暫定解を導出する(第5演算処理)。第5演算処理では、移送パターンの新たな暫定解を得るために移送に係る制約条件を全て考慮対象としている。但し、ステップ#6では、既に、移送パターンと貯蔵状態遷移以外は最終解が得られているため、求解対象の混合整数線形計画問題は大幅に緩和されている。尚、第5演算処理においても、考慮の対象となる制約条件に応じて、数20の目的関数における重み係数Aiを第4演算処理時より変更しても良い。第5演算処理では、第4演算処理で得られたより高精度の貯蔵状態遷移の暫定解を使用するため、高精度に移送パターンの新たな暫定解を得ることができる。
【0103】
ステップ#7において、演算処理手段2は、ステップ#2、ステップ#4〜ステップ#6の第1、第3乃至第5演算処理で得られた結果を用いて、受入パターン、払出パターン、クーリング戻りパターン及び離散変数を全て固定することにより、混合整数非線形計画問題で表されていた運用計画問題を連続非線形計画問題に置換して、当該連続非線形計画問題を、第2処理手段5を用いて、考慮対象として選択した制約条件を満足し、数20の目的関数を最小化する実行可能解として、移送パターンと貯蔵状態遷移の最終解を導出する(第6演算処理)。第6演算処理では、非線形式を含む制約条件は非線形式のまま線形近似せずに用いる。これにより、第6演算処理では、第4演算処理で得られた貯蔵状態遷移の暫定解より高精度の貯蔵状態遷移の最終解が得られ、更に、移送パターンの最終解が得られる。尚、第6演算処理では、考慮の対象となる制約条件に応じて、数20の目的関数における重み係数Aiを第5演算処理時より変更しても良い。
【0104】
次に、ステップ#8において、上記ステップ#1〜ステップ#7の各処理を経て得られた受入パターン、払出パターン、クーリング戻りパターン、移送パターン、及び、貯蔵状態遷移の最終解を夫々所定の出力フォーマットで画面表示またはプリント出力する。
【0105】
受入パターン、クーリング戻りパターン、及び、移送パターンの表形式での画面表示例を図7に示す。図7に示す表示例では、2つのエリアA1及びA2の各貯蔵タンクK101〜K108,K201〜K206を1行目〜14行目に配置し、30日間の計画対象期間Tの時点t(t=1〜30)を日単位で1列目〜30列目に配置し、14行×30列の表を構成し、その中に受入パターン、クーリング戻りパターン、及び、移送パターンを表示している。
【0106】
受入パターンは、貯蔵タンク10の内、特定の時点tで受入タンクとなる場合に、当該貯蔵タンク10を示す行と当該特定の時点tを示す列の交点に、受入タンクとなることを示す記号(例えば、○印)を記す。図7に示す例では、例えば、時点t=1で貯蔵タンクK201とK203が、時点t=3で貯蔵タンクK102とK103とK104が、受入タンクとなることが分かる。実際の受入操作では、受入パターンに基づいて、各時点tで、選択された受入タンクに、受入計画で指定された受入量のLNGを受け入れる。尚、複数の受入タンクが選択された場合には、受入計画で指定された受入量を当該受入タンク間で予め決められた受入量の比率(例えば、等比率)に配分して受入を行う。
【0107】
クーリング戻りパターンは、貯蔵タンク10の内、特定の時点tでクーリング戻りタンクとなる場合に、当該貯蔵タンク10を示す行と当該特定の時点tを示す列の交点に、クーリング戻りタンクとなることを示す記号(例えば、▲印)を記す。図7に示す例では、例えば、時点t=1〜15で貯蔵タンクK107とK205が、時点t=16〜30で貯蔵タンクK108とK204が、クーリング戻りタンクとなることが分かる。
【0108】
移送パターンは、貯蔵タンク10の内、特定の時点tで移送元タンクとなる場合に、当該貯蔵タンク10を示す行と当該特定の時点tを示す列の交点に、移送先タンクを示すタンク番号を記す。図7に示す例では、例えば、時点t=2で、貯蔵タンクK103から貯蔵タンクK204へ、貯蔵タンクK104から貯蔵タンクK206へ、時点t=4で、貯蔵タンクK104からK108へ、夫々移送が行われることが分かる。
【0109】
払出パターンの表形式での画面表示例を図8に示す。図8に示す表示例では、或る1つの払出ライン14に対する払出パターンとして、30日間の計画対象期間Tの時点t(t=1〜30)を日単位で1行目〜30行目に配置し、各行に、対応する時点tで払出に供される貯蔵タンク10の番号が列挙される。図8に示す例では、例えば、時点t=1で、貯蔵タンクK103,K104,K106,K107が払出元となる貯蔵タンク10となる。実際の払出操作では、払出パターンに基づいて、各時点tで、選択された払出元となる貯蔵タンク10から当該1つの払出ライン14に払出可能状態となっている払出用ポンプ16を、例えば、送出計画量に応じて等負荷或いはポンプ能力に比例した払出量比で稼働させ、LNGの払出を実施する。ここで、仮に、払出可能状態となっている払出用ポンプ16の内の1台がトリップしても、残りの払出用ポンプ16で、送出計画量を賄えるように払出パターンは導出されている。
【0110】
貯蔵状態遷移の表示については、各貯蔵タンク10の貯蔵量を貯蔵タンク10別に、横軸を時点t、縦軸を貯蔵量(またはタンク液位)として、貯蔵量(またはタンク液位)の日単位での遷移を折れ線グラフで表示する。また、当該グラフ内に各貯蔵タンク10の貯蔵量の上限値及び下限値を参考に表示する。尚、本実施形態では、貯蔵状態遷移の内、各貯蔵タンク10の貯蔵密度の表示は行わずに、当該貯蔵密度と払出パターンによって定まる各払出ライン14の日単位での熱量遷移を、払出ライン14別に、横軸を時点t、縦軸を熱量として、折れ線グラフで表示する。尚、当該熱量遷移のグラフ内に、制約条件で使用した上限値及び下限値、法定の上限値及び下限値を参考に表示する。
【0111】
以上詳細に説明した貯蔵タンク運用計画導出システム及び方法の有用性を確認するため、本願の出願人が実際に運用しているLNGタンクに対して過去実際に行った受入、移送、払出、クーリングの各操作に対して、同じ入力情報を用いて、上記混合整数非線形計画問題となる運用計画問題を求解した結果、実現可能解が得られ、更に、実際に運用された結果より、移送に斯かるコスト、及び、送出熱量の基準熱量からの乖離幅の小さい結果が得られた。尚、本システム1のプラットフォームとして、インテル社製のCore i5プロセッサ(動作周波数2.4GHz)とメモリ4GBを搭載したノートブック型のパソコンを使用した場合、計画対象期間Tを30日とする上記運用計画問題の求解処理が、変数の総数が数万オーダーとなるにも拘わらず、15分程度で正常に終了した。
【0112】
以下に、上記実施形態の変形例を別実施形態として説明する。
【0113】
〈1〉上記実施形態では、図1に示すように、貯蔵タンク10の一部において受入を行い、図2に示すように、受入タンク内のLNGを、移送ライン12を介して別の貯蔵タンク10に移送する場合を想定したが、全ての貯蔵タンク10で受入を行い、貯蔵タンク10間で移送ライン12を介してLNGを移送することが無い場合、或いは、移送操作が、予め固定された移送パターンで行われる場合には、上記ステップ#6及びステップ#7の第5及び第6演算処理は不要となる。よって、ステップ#8の出力処理では、移送パターンの画面表示等は行わない。また、移送操作が、予め固定された移送パターンで行われる場合には、移送パターンを規定する離散変数は定数となる。
【0114】
〈2〉上記実施形態では、本システム1の求解対象となる運用計画問題において、上述の第1のクーリング形態を想定し、クーリング戻りパターンを導出する場合を説明したが、当該第1のクーリング形態に代えて、上述の第2のクーリング形態を想定した場合には、クーリング戻りパターンではなく、クーリング供給タンクを規定するクーリング供給パターンを導出することになる。また、上述の第1のクーリング形態と第2のクーリング形態を想定する場合は、クーリング戻りパターンとクーリング供給パターンの両方を導出する。尚、第2のクーリング形態を採用する場合には、別途、クーリング戻り量と同様のクーリング供給量を規定する連続変数を使用するのが好ましい。
【0115】
更に、クーリングが、特定の受入タンクをクーリング供給タンクの候補とし、当該候補の中から選択されたクーリング供給タンクからクーリング用LNGを取り出し、移送ライン12を経由して、貯蔵タンク10の内の選択されたクーリング戻りタンクに回収される場合も、クーリング戻りパターンとクーリング供給パターンの両方を兼ね備えたクーリングパターンを導出する。この場合、クーリングパターンは、移送パターンと類似するため、移送パターンを規定する離散変数と同様の変数を別途設けるのが好ましい。
【0116】
更に、上記〈1〉で示すように、移送操作を行わない場合には、移送ライン12が不要となり、本システム1の求解対象となる運用計画問題において、移送ライン12をクーリングの対象とする必要がなくなるため、この場合は、クーリング戻りパターンとクーリング供給パターンの何れも導出の必要がない。更に、移送ライン12が存在してクーリングが行われる場合でも、クーリング供給パターン或いはクーリング供給パターンが予め固定されて運用される場合には、固定された方のクーリング戻りパターンまたはクーリング供給パターンを導出する必要はない。
【0117】
〈3〉上記実施形態では、貯蔵タンク10が、2つのエリアA1,A2に分散して設置されている場合を想定したが、貯蔵タンク10が、2以上のエリアに分散して配置され、且つ、各エリアにおいて受入タンクの候補数が多い場合には、上記ステップ#2の第1演算処理の前に、受入タンクのエリアだけを仮決定する予備的な演算処理を追加しても良い。この場合、予備的な演算処理は、混合整数非線形計画問題で表されていた運用計画問題を混合整数線形計画問題或いは整数計画問題に置換して、当該混合整数線形計画問題を、第1処理手段4を用いて、考慮対象として選択した制約条件を満足し、数20に示す目的関数を最小化する実行可能解として、受入パターン、払出パターン、移送パターン、クーリング戻りパターン、及び、貯蔵状態遷移を導出する。但し、第1演算処理で考慮の対象とした制約条件の内の非線形制約条件は全て考慮の対象外とし、第1演算処理で考慮の対象とした他の制約条件についても、一部の受入及び貯蔵に係る制約条件の緩和または簡略化を行う。当該予備的な演算処理で得られた受入パターンによって受入エリアを固定し、また、貯蔵状態遷移の暫定解を用いて、第1演算処理における非線形制約条件の線形近似を行う。この結果、貯蔵タンク10の数或いはエリアの数が多い場合等において、第1演算処理をより高精度化することができる。
【0118】
〈4〉上記実施形態では、上記ステップ#4の第3演算処理を経て、全ての払出ライン14に対する払出パターンの最終解を導出する場合を説明したが、第3演算処理の前に、第3演算処理の前処理として少なくとも1回の第1求解処理と少なくとも1回の第2求解処理を夫々実行し、当該第1及び第2求解処理の結果を反映させて第3演算処理を実行するようにしても良い。
【0119】
例えば、図3に示すように、複数の払出ライン14が、エリアA1,A2に対応して区分されている場合には、払出ライン14毎の払出パターンをエリアに応じてグループ化し、上記ステップ#4の第3演算処理の前に、1つの受入エリアに対応する払出ライン14の払出パターンの最終解と他の払出パターン、移送パターン、及び、クーリング戻りパターンの暫定解を導出する第1求解処理(第3演算処理の第1前処理)と、ステップ#2の第1演算処理で得られた結果(受入パターンの最終解)と当該第3演算処理の第1前処理で得られた結果(一部の払出パターンの最終解と他の払出パターン、移送パターン、及び、クーリング戻りパターンの暫定解)を用いて、受入パターンと当該一部の払出パターン及び離散変数の全てを固定することにより、貯蔵状態遷移の新たな暫定解を導出する第2求解処理(第3演算処理の第2前処理)を実行し、第1及び第2演算処理で導出した各暫定解に代えて、第3演算処理の第1及び第2前処理で導出した最終解と各暫定解を用いて、上記ステップ#4の第3演算処理を行うようにするのも好ましい。
【0120】
更に、第3演算処理の第2前処理の後に、別の第1求解処理或いは第2求解処理を実行し、それらの第1または第2求解処理の結果も反映させて、第3演算処理を実行するようにしても良い。また、エリア数が3以上の場合にが、エリア毎の払出パターンの最終解を順番に導出するようにしても良い。
【0121】
〈5〉上記実施形態では、上記ステップ#6の第5演算処理を経て、移送パターンの最終解を導出する場合を説明したが、第5演算処理の前に、第5演算処理の前処理として少なくとも1回の第1求解処理と少なくとも1回の第2求解処理を夫々実行し、当該第1及び第2求解処理の結果を反映させて第5演算処理を実行するようにしても良い。この場合、当該第5演算処理の前処理としての第1求解処理で考慮する制約条件は、第5演算処理の第1求解処理で考慮する制約条件より、特に移送操作に係る制約条件において一部が簡略化または考慮せず緩和されたものを使用するのが好ましく、更に、当該第5演算処理の前処理としての第2求解処理で考慮する制約条件も、第6演算処理の第2求解処理で考慮する制約条件より、特に移送操作に係る制約条件において一部が簡略化または考慮せず緩和されたものを使用するのが好ましい。
【0122】
〈6〉上記実施形態では、導出される払出パターンは、図8に例示するように、単位期間(例えば、1日)毎の上記送出計画量に対応した各払出ライン14へLNGの払出を行う貯蔵タンク10を規定している。ここで、入力情報として受け付ける送出計画情報の送出計画量は、1日単位ではなく、更に細分化された単位細分期間(例えば、1時間)毎の送出計画量であっても良い。この場合、当該1時間単位の送出計画量を1日単位の送出計画量に集計することで、1日単位の払出パターンを導出できる。
【0123】
更に、ステップ#4の第3演算処理で、1日単位の払出パターンの最終解を導出し、ステップ#5の第4演算処理で、当該最終解を反映した貯蔵状態遷移の新たな暫定解を導出した後に、第4演算処理の後処理として、これらの結果を用いて導出した払出パターンでの1時間単位でのLNGの払出量を導出し、払出用ポンプ16の稼働優先順位を決定するのも好ましい実施形態である。
【0124】
具体的には、第1演算手段4が、1日単位の払出パターンに基づいて1時間単位の送出計画量に対応して払出操作を行った場合に、所定の制約条件を1時間単位でも満足するかを確認する整数計画問題を求解する。この場合、求解アルゴリズムとして、他の混合整数線形計画問題と異なり、列生成法を用いる。当該整数計画問題は、払出ライン14毎に、導出した払出パターンを所与とした場合の払出用ポンプ16の稼働優先順位を決める離散変数を導出する整数計画問題として構成する。制約条件としては、例えば、払出操作における物量制約及び熱量制約の制約条件の一部を1時間単位で使用する。目的関数として、当該優先順位で払出用ポンプ16を稼働させた場合に、1時間毎の各払出ライン14へLNGの払出を行う貯蔵タンク10と、導出した払出パターンにより決まる1日単位で払出を行う貯蔵タンク10との齟齬を数値化したものを使用する。より具体的には、優先順位を仮定して、1時間単位での各貯蔵タンク10からの払出量を導出し、当該払出量を用いて上記制約条件の判定を行い、制約条件を満足するものの中から目的関数を最小化する払出用ポンプ16の優先順位を導出する。
【0125】
導出された払出用ポンプ16の優先順位は、1時間単位での新たな払出パターンとして、1日単位の払出パターンと置き換えられる。但し、払出用ポンプ16の優先順位が、1日単位の払出パターンと齟齬がある場合には、当該優先順位に基づいて、第3及び第4演算処理または第4演算処理を再実行し、これらの再実行した導出結果を反映させて上記整数計画問題を再度実行するのが好ましい。
【0126】
図9に、払出用ポンプ16の優先順位を示す払出パターンの表形式での画面表示例を示す。払出用ポンプ16の優先順位は、1日単位で表示されているが、当該優先順位で、1時間単位の送出計画量に対応した時間単位での払出操作が可能となる。図9に示す例では、例えば、時点t=1で、払出用ポンプ16は、Q105,Q107,Q113,Q115,Q106,Q108,Q116,Q114,Q111,Q112の順番に稼働する。時点t=1の場合、払出用ポンプ16をQ105からQ111まで稼働させると、1日単位の払出パターンで規定される貯蔵タンク10のK103,K104,K106,K107、K108が全て払出元となり、また、Q112まで稼働させても同じである。
【0127】
このように払出用ポンプ16の稼働優先順位を決めることで、時間単位での送出計画量の時間変化に対して払出用ポンプ16の稼働台数を変化させて対応することが可能となる。例えば、送出計画量が少ない場合には、少ない台数で等負荷或いはポンプ能力に比例した払出量比で運転を行い、送出計画量が増加した場合には、当該優先順位に従って稼働台数を増やして等負荷運転を行う。
【0128】
〈7〉上記実施形態では、計画対象期間Tの運用計画問題の求解処理を、当該計画対象期間Tに対して独立した単独の求解処理として実行する場合を想定して説明した。しかし、単独の求解処理の場合には、計画対象期間Tの終了時点(t=30)の近傍において特殊解が発生する可能性がある。これは、各貯蔵タンク10のLNGの初期貯蔵量と初期貯蔵熱量を含むタンク初期状態情報が入力情報として与えられるため、開始時点(t=1)側の境界条件は存在するのに対して、終了時点(t=30)側の境界条件が存在しないためである。そこで、当該特殊解を回避するために、計画対象期間Tの終了時点(t=30)が到来する前に、例えば、既に20日が経過している場合は、当該経過期間の最終時点(t=20)で、次の時点(t=21)から始まる新たな計画対象期間T’に対して、既に求解した計画対象期間Tの時点(t=20)における各変数値を初期条件として、計画対象期間T’に対する運用計画問題の求解処理を行うのも好ましい実施形態である。
【0129】
〈8〉上記実施形態では、図1〜図3に例示したLNG貯蔵設備群を参考に、本システムの求解対象となる貯蔵タンク10の運用計画問題、及び、本システム1による当該運用計画問題の求解処理について説明したが、LNG貯蔵設備群を構成する貯蔵タンク10、移送ライン12、移送用ポンプ13、払出ライン14、払出用ポンプ16等の数、配置、及び、相互の接続関係等は、図1〜図3に例示したものに限定されるものではない。更に、計画対象期間T、単位期間、及び、単位細分期間も、上記説明で例示したものに限定されるものではない。
【0130】
〈9〉上記実施形態では、LNGの熱量を密度に変換して運用計画問題を生成したが、熱量を密度に変換せずそのまま規定し、質量に関する制約条件を熱量に関する制約条件として記述する場合にも、本運用計画問題は混合整数非線形計画問題となるため、上記で説明した求解処理手順を応用しても良い。
【符号の説明】
【0131】
1: 貯蔵タンク運用計画導出システム
2: 演算処理手段
3: 記憶手段
4: 第1処理手段
5: 第2処理手段
6: 求解処理制御手段
7: 出力手段
10: 貯蔵タンク
11: 運搬手段
12: 移送ライン
13: 移送用ポンプ
14: 払出ライン
15: 送出先
16: 払出用ポンプ
A1,A2: エリア

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の計画対象期間における、液化天然ガスを貯蔵する複数の貯蔵タンク夫々の前記液化天然ガスの初期貯蔵量と初期貯蔵熱量を含むタンク初期状態情報、前記液化天然ガスの複数の受入計画夫々の前記液化天然ガスの受入時期と受入量と受入熱量を含む受入計画情報、及び、1または複数の払出ラインから前記各払出ラインに対応する送出先へ前記液化天然ガスを直接或いは気化させて送出する送出計画における所定の単位期間毎の送出計画量を含む送出計画情報の各入力を受け付け、入力情報として保存し、前記貯蔵タンクへの前記液化天然ガスの受入及び貯蔵に係る複数の制約条件、及び、前記貯蔵タンクから前記払出ラインへの前記液化天然ガスの払出に係る複数の制約条件を格納する記憶手段と、
前記入力情報と前記制約条件によって混合整数非線形計画問題として構成される少なくとも前記液化天然ガスの受入及び払出の各操作に係る前記貯蔵タンクの運用計画問題の実現可能解を、コンピュータの演算処理により求解する演算処理手段と、を備えて構成され、
前記演算処理手段は、混合整数線形計画問題を求解する第1処理手段と、連続非線形計画問題を求解する第2処理手段を備え、前記入力情報を所与とし、
前記制約条件の内の非線形式を含む複数の非線形制約条件の夫々に対して、第1緩和処理を行い、前記混合整数非線形計画問題を混合整数線形計画問題に置換して、前記第1処理手段を用いて求解し、少なくとも前記計画対象期間内における前記受入計画毎の前記液化天然ガスの受入の対象となる1または複数の前記貯蔵タンクを規定する受入パターンと前記単位期間毎の前記送出計画量に対応した前記液化天然ガスの払出を行う前記貯蔵タンクを規定する払出パターンの暫定解または最終解を導出する第1求解処理と、
前記制約条件の内の離散変数を含む複数の離散型制約条件に対して、第2緩和処理を行い、前記混合整数非線形計画問題を連続非線形計画問題に置換し、前記第2処理手段を用いて求解し、少なくとも前記各貯蔵タンクの前記液化天然ガスの貯蔵量及び貯蔵熱量の遷移の暫定解または最終解を導出する第2求解処理を、夫々、2回以上実行し、
2回目以降の前記第1求解処理において、前記非線形制約条件の少なくとも一部に対して、直前の前記第2求解処理で導出した前記液化天然ガスの貯蔵量及び貯蔵熱量の遷移の暫定解を使用して、前記第1緩和処理を行い、
1回目以降の前記第2求解処理において、前記離散型制約条件の少なくとも一部に対して、直前の前記第1求解処理で導出した前記離散変数を用いて前記第2緩和処理を行うことを特徴とする貯蔵タンク運用計画導出システム。
【請求項2】
前記演算処理手段は、前記入力情報を所与とし、
前記第1求解処理を実行して、前記受入パターンの最終解、前記払出パターンの暫定解、及び、前記各貯蔵タンクの前記液化天然ガスの貯蔵量及び貯蔵熱量の遷移の暫定解を導出する第1演算処理、
前記第1演算処理を経て導出された前記最終解と前記各暫定解に基づいて、前記第2求解処理を実行して、少なくとも前記各貯蔵タンクの前記液化天然ガスの貯蔵量及び貯蔵熱量の遷移の新たな暫定解を導出する第2演算処理、
前記第1及び第2演算処理を経て導出された前記最終解と直近の前記各暫定解に基づいて、前記第1求解処理を実行して、少なくとも前記払出パターンの新たな暫定解または最終解を導出する第3演算処理、及び、
前記第1乃至第3演算処理を経て導出された前記最終解と直近の前記各暫定解に基づいて、前記第2求解処理を実行して、少なくとも前記各貯蔵タンクの前記液化天然ガスの貯蔵量及び貯蔵熱量の遷移の新たな暫定解または最終解を導出する第4演算処理を、順次実行することを特徴とする請求項1に記載の貯蔵タンク運用計画導出システム。
【請求項3】
前記複数の貯蔵タンクの特定の貯蔵タンク間が移送ラインで連結され、前記液化天然ガスを相互間で移送可能に構成されている場合において、
前記記憶手段は、前記混合整数非線形計画問題の制約条件として、更に、前記貯蔵タンク間の前記液化天然ガスの移送に係る複数の制約条件を格納し、
前記演算処理手段は、前記入力情報を所与とし、
前記移送に係る制約条件の少なくとも一部を考慮せずに前記第1乃至第4演算処理を順次実行することにより、前記第1演算処理において、更に、前記計画対象期間内における前記液化天然ガスの移送を行う前記特定の貯蔵タンクを規定する移送パターンの暫定解を導出し、前記第3演算処理において、更に、前記移送パターンの新たな暫定解を導出し、
前記第1乃至第4演算処理を経て導出された前記最終解と直近の前記各暫定解に基づいて、前記移送に係る制約条件を考慮し、前記第1求解処理を実行して、少なくとも前記移送パターンの新たな暫定解を導出する第5演算処理と、
前記第1乃至第5演算処理を経て導出された前記最終解と直近の前記各暫定解に基づいて、前記移送に係る制約条件を考慮し、前記第2求解処理を実行して、前記各貯蔵タンクの前記液化天然ガスの貯蔵量及び貯蔵熱量の遷移の最終解と前記移送パターンの最終解を導出する第6演算処理を実行することを特徴とする請求項2に記載の貯蔵タンク運用計画導出システム。
【請求項4】
前記演算処理手段は、前記入力情報及び前記制約条件に含まれる前記液化天然ガスの熱量に代えて前記熱量に近似的に換算可能な前記液化天然ガスの密度を用い、前記第1及び第2求解処理を実行し、前記各貯蔵タンクの前記液化天然ガスの貯蔵熱量の遷移の暫定解に代えて、前記各貯蔵タンクの前記液化天然ガスの密度の遷移の暫定解を導出するように構成されていることを特徴とする請求項1〜3の何れか1項に記載の貯蔵タンク運用計画導出システム。
【請求項5】
前記第1緩和処理において、前記制約条件に含まれる前記液化天然ガスの密度と体積の積の非線形式で表される前記液化天然ガスの質量が、基準密度を係数とする体積項と基準体積を係数とする密度項と定数項からなる1次多項式に線形近似されることを特徴とする請求項4に記載の貯蔵タンク運用計画導出システム。
【請求項6】
前記演算処理手段は、前記第1及び第2求解処理において、前記連続変数と前記離散変数の内の少なくとも1つの変数によって規定される監視対象項目の所定の基準値からの乖離幅をペナルティとし、1または複数の前記ペナルティを加重加算した目的関数を最小化する実現可能解として、前記最終解及び前記暫定解を導出することを特徴とする請求項1〜5の何れか1項に記載の貯蔵タンク運用計画導出システム。
【請求項7】
前記第1及び第2求解処理の少なくとも1つにおいて、前記ペナルティの1つとして、前記払出ライン毎の所定期間における送出された前記液化天然ガスの平均熱量と所定の基準熱量との間の乖離幅が含まれることを特徴とする請求項6に記載の貯蔵タンク運用計画導出システム。
【請求項8】
前記記憶手段は、更に、前記所定の単位期間を細分化した単位細分期間毎の送出計画量を含む詳細送出計画情報の入力を受け付け、前記入力情報として保存し、
前記演算処理手段は、前記第1及び第2求解処理を夫々少なくとも2回実行して前記受入パターンと前記払出パターンの最終解を導出した後、導出された前記最終解と直近の前記各暫定解に基づいて、前記詳細送出計画情報を含む前記入力情報を所与とし、前記単位細分期間毎及び前記貯蔵タンク毎の払出量を導出することを特徴とする請求項1〜7の何れか1項に記載の貯蔵タンク運用計画導出システム。
【請求項9】
前記払出パターンは、前記払出ライン毎に、前記貯蔵タンクと当該払出ライン間に介装された払出用ポンプの内、前記液化天然ガスの払出に使用する1または複数の前記払出用ポンプを規定することを特徴とする請求項1〜8の何れか1項に記載の貯蔵タンク運用計画導出システム。
【請求項10】
前記演算処理手段は、既に開始した未終了の第1の前記計画対象期間の未経過期間の先頭から開始する第2の前記計画対象期間に対する前記第1及び第2求解処理において、初期条件として、第1の前記計画対象期間の経過期間の最終時点における処理結果を使用することを特徴とする請求項1〜9の何れか1項に記載の貯蔵タンク運用計画導出システム。
【請求項11】
前記制約条件に、前記貯蔵タンクに組成の異なる前記液化天然ガスを貯蔵する場合に生じる層状化を防止するための制約条件が含まれることを特徴とする請求項1〜10の何れか1項に記載の貯蔵タンク運用計画導出システム。
【請求項12】
所定の計画対象期間における、液化天然ガスを貯蔵する複数の貯蔵タンク夫々の前記液化天然ガスの初期貯蔵量と初期貯蔵熱量を含むタンク初期状態情報、前記液化天然ガスの複数の受入計画夫々の前記液化天然ガスの受入時期と受入量と受入熱量を含む受入計画情報、及び、1または複数の払出ラインから前記各払出ラインに対応する送出先へ前記液化天然ガスを直接或いは気化させて送出する送出計画における所定の単位期間毎の送出計画量を含む送出計画情報の各入力を受け付け、入力情報として所定の記憶手段に保存する入力情報記憶工程と、
前記入力情報、前記貯蔵タンクへの前記液化天然ガスの受入及び貯蔵に係る複数の制約条件、及び、前記貯蔵タンクから前記払出ラインへの前記液化天然ガスの払出に係る複数の制約条件によって混合整数非線形計画問題として構成される少なくとも前記液化天然ガスの受入及び払出の各操作に係る前記貯蔵タンクの運用計画問題の実現可能解を、コンピュータの演算処理により求解する演算処理工程と、を有し、
前記演算処理工程において、前記入力情報を所与とし、
前記制約条件の内の非線形式を含む複数の非線形制約条件の夫々に対して、第1緩和処理を行い、前記混合整数非線形計画問題を混合整数線形計画問題に置換して、前記第1処理手段を用いて求解し、少なくとも前記計画対象期間内における前記受入計画毎の前記液化天然ガスの受入の対象となる1または複数の前記貯蔵タンクを規定する受入パターンと前記単位期間毎の前記送出計画量に対応した前記液化天然ガスの払出を行う前記貯蔵タンクを規定する払出パターンの暫定解または最終解を導出する第1求解処理と、
前記制約条件の内の離散変数を含む複数の離散型制約条件に対して、第2緩和処理を行い、前記混合整数非線形計画問題を連続非線形計画問題に置換し、前記第2処理手段を用いて求解し、少なくとも前記各貯蔵タンクの前記液化天然ガスの貯蔵量及び貯蔵熱量の遷移の暫定解または最終解を導出する第2求解処理を、夫々、2回以上実行し、
2回目以降の前記第1求解処理において、前記非線形制約条件の少なくとも一部に対して、直前の前記第2求解処理で導出した前記液化天然ガスの貯蔵量及び貯蔵熱量の遷移の暫定解を使用して、前記第1緩和処理を行い、
1回目以降の前記第2求解処理において、前記離散型制約条件の少なくとも一部に対して、直前の前記第1求解処理で導出した前記離散変数を用いて前記第2緩和処理を行うことを特徴とする貯蔵タンク運用計画導出方法。
【請求項13】
前記演算処理工程において、前記入力情報を所与とし、
前記第1求解処理を実行して、前記受入パターンの最終解、前記払出パターンの暫定解、及び、前記各貯蔵タンクの前記液化天然ガスの貯蔵量及び貯蔵熱量の遷移の暫定解を導出する第1演算処理、
前記第1演算処理を経て導出された前記最終解と前記各暫定解に基づいて、前記第2求解処理を実行して、少なくとも前記各貯蔵タンクの前記液化天然ガスの貯蔵量及び貯蔵熱量の遷移の新たな暫定解を導出する第2演算処理、
前記第1及び第2演算処理を経て導出された前記最終解と直近の前記各暫定解に基づいて、前記第1求解処理を実行して、少なくとも前記払出パターンの新たな暫定解または最終解を導出する第3演算処理、及び、
前記第1乃至第3演算処理を経て導出された前記最終解と直近の前記各暫定解に基づいて、前記第2求解処理を実行して、少なくとも前記各貯蔵タンクの前記液化天然ガスの貯蔵量及び貯蔵熱量の遷移の新たな暫定解または最終解を導出する第4演算処理を、順次実行することを特徴とする請求項12に記載の貯蔵タンク運用計画導出方法。
【請求項14】
前記複数の貯蔵タンクの特定の貯蔵タンク間が移送ラインで連結され、前記液化天然ガスを相互間で移送可能に構成されている場合において、
前記混合整数非線形計画問題の制約条件として、更に、前記貯蔵タンク間の前記液化天然ガスの移送に係る複数の制約条件が含まれ、
前記演算処理工程において、前記入力情報を所与とし、
前記移送に係る制約条件の少なくとも一部を考慮せずに前記第1乃至第4演算処理を順次実行することにより、前記第1演算処理において、更に、前記計画対象期間内における前記液化天然ガスの移送を行う前記特定の貯蔵タンクを規定する移送パターンの暫定解を導出し、前記第3演算処理において、更に、前記移送パターンの新たな暫定解を導出し、
前記第1乃至第4演算処理を経て導出された前記最終解と直近の前記各暫定解に基づいて、前記移送に係る制約条件を考慮し、前記第1求解処理を実行して、少なくとも前記移送パターンの新たな暫定解を導出する第5演算処理と、
前記第1乃至第5演算処理を経て導出された前記最終解と直近の前記各暫定解に基づいて、前記移送に係る制約条件を考慮し、前記第2求解処理を実行して、前記各貯蔵タンクの前記液化天然ガスの貯蔵量及び貯蔵熱量の遷移の最終解と前記移送パターンの最終解を導出する第6演算処理を実行することを特徴とする請求項13に記載の貯蔵タンク運用計画導出方法。
【請求項15】
前記演算処理工程において、前記入力情報及び前記制約条件に含まれる前記液化天然ガスの熱量に代えて前記熱量に近似的に換算可能な前記液化天然ガスの密度を用い、前記第1及び第2処理を実行し、前記各貯蔵タンクの前記液化天然ガスの貯蔵熱量の遷移の暫定解に代えて、前記各貯蔵タンクの前記液化天然ガスの密度の遷移の暫定解を導出することを特徴とする請求項12〜14の何れか1項に記載の貯蔵タンク運用計画導出方法。
【請求項16】
前記第1緩和処理において、前記制約条件に含まれる前記液化天然ガスの密度と体積の積の非線形式で表される前記液化天然ガスの質量が、基準密度を係数とする体積項と基準体積を係数とする密度項と定数項からなる1次多項式に線形近似されることを特徴とする請求項15に記載の貯蔵タンク運用計画導出方法。
【請求項17】
前記演算処理工程の前記第1及び第2求解処理において、前記連続変数と前記離散変数の内の少なくとも1つの変数によって規定される監視対象項目の所定の基準値からの乖離幅をペナルティとし、1または複数の前記ペナルティを加重加算した目的関数を最小化する実現可能解として、前記最終解及び前記暫定解を導出することを特徴とする請求項12〜16の何れか1項に記載の貯蔵タンク運用計画導出方法。
【請求項18】
前記演算処理工程の前記第1及び第2求解処理の少なくとも1つにおいて、前記ペナルティの1つとして、前記払出ライン毎の所定期間における送出された前記液化天然ガスの平均熱量と所定の基準熱量との間の乖離幅を含むことを特徴とする請求項17に記載の貯蔵タンク運用計画導出方法。
【請求項19】
前記入力情報記憶工程において、更に、前記所定の単位期間を細分化した単位細分期間毎の送出計画量を含む詳細送出計画情報の入力を受け付け、前記入力情報として保存し、
前記演算処理工程において、前記第1及び第2求解処理を夫々少なくとも2回実行して前記受入パターンと前記払出パターンの最終解を導出した後、導出された前記最終解と直近の前記各暫定解に基づいて、前記詳細送出計画情報を含む前記入力情報を所与とし、前記単位細分期間毎及び前記貯蔵タンク毎の払出量を導出することを特徴とする請求項12〜18の何れか1項に記載の貯蔵タンク運用計画導出方法。
【請求項20】
前記払出パターンは、前記払出ライン毎に、前記貯蔵タンクと当該払出ライン間に介装された払出用ポンプの内、前記液化天然ガスの払出に使用する1または複数の前記払出用ポンプを規定することを特徴とする請求項12〜19の何れか1項に記載の貯蔵タンク運用計画導出方法。
【請求項21】
前記演算処理工程において、既に開始した未終了の第1の前記計画対象期間の未経過期間の先頭から開始する第2の前記計画対象期間に対する前記第1及び第2求解処理において、初期条件として、第1の前記計画対象期間の経過期間の最終時点における処理結果を使用することを特徴とする請求項12〜20の何れか1項に記載の貯蔵タンク運用計画導出方法。
【請求項22】
前記制約条件に、前記貯蔵タンクに組成の異なる前記液化天然ガスを貯蔵する場合に生じる層状化を防止するための制約条件が含まれることを特徴とする請求項12〜21の何れか1項に記載の貯蔵タンク運用計画導出方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2013−92162(P2013−92162A)
【公開日】平成25年5月16日(2013.5.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−232608(P2011−232608)
【出願日】平成23年10月24日(2011.10.24)
【出願人】(000000284)大阪瓦斯株式会社 (2,453)
【Fターム(参考)】