説明

貯蔵安定性が改善された固形製剤

【課題】貯蔵安定性を改善した血小板凝集抑制作用を有する固形製剤の提供。
【解決手段】(A)下記一般式(I)


を有する化合物又はその薬理上許容される塩及び(B)マンニトールのα結晶を含有する固形製剤。好適には、一般式(I)を有する化合物又はその薬理上許容される塩が、2−アセトキシ−5−(α−シクロプロピルカルボニル−2−フルオロベンジル)−4,5,6,7−テトラヒドロチエノ[3,2−c]ピリジン・塩酸塩である上記固形製剤。固形製剤としては散剤、細粒剤、顆粒剤、カプセル剤又は錠剤であり、特に錠剤が好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、
(A)下記一般式(I)
【0002】
【化1】

【0003】
を有する化合物又はその薬理上許容される塩及び
(B)マンニトールのα結晶を含有する固形製剤に関する。
【背景技術】
【0004】
上記一般式(I)を有する化合物又はその薬理上許容される塩は、血小板凝集抑制作用を有する化合物として知られている(特許文献1又は2)。
【0005】
特許文献3には、上記一般式(I)を有する化合物又はその薬理上許容される塩の製剤において、マンニトールの特定の粒子径が含量均一性を改善することが記載されている。しかしながら、当該特許文献には、マンニトールの結晶多形について記載されておらず、上記一般式(I)を有する化合物又はその薬理上許容される塩を含有する固形製剤にマンニトールのα結晶を含有することにより貯蔵安定性が改善されることは、記載も示唆もされていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平6−41139号公報
【特許文献2】特開2002−145883号公報
【特許文献3】国際公開番号WO2008/072534号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の課題は、上記一般式(I)を有する化合物又はその薬理上許容される塩を含有する、貯蔵安定性に優れた固形製剤を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記の課題を解決すべく鋭意研究を行った結果、マンニトールのα結晶を含有することにより、上記一般式(I)を有する化合物又はその薬理上許容される塩を含有する固形製剤は優れた貯蔵安定性を有することを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
すなわち、本発明は、
(1) (A)上記一般式(I)を有する化合物又はその薬理上許容される塩及び(B)マンニトールのα結晶を含有することを特徴とする固形製剤であり、好適には、
(2) 一般式(I)を有する化合物又はその薬理上許容される塩が、下記式(Ia)
【0010】
【化2】

【0011】
を有する化合物である(1)に記載の固形製剤、
(3) 製剤が、散剤、細粒剤、顆粒剤、カプセル剤又は錠剤である(1)又は(2)に記載の固形製剤、
(4) 製剤が、錠剤である(1)又は(2)に記載の固形製剤、
(5) マンニトールのα結晶が、α結晶を2〜100重量%含有するマンニトールである、(1)〜(4)のいずれか1つに記載の固形製剤、
(6) マンニトールのα結晶が、α結晶を45〜90重量%含有するマンニトールである、(1)〜(4)のいずれか1つに記載の固形製剤、又は、
(7) マンニトールのα結晶が、α結晶を48〜88重量%含有するマンニトールである、(1)〜(4)のいずれか1つに記載の固形製剤である。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、上記一般式(I)を有する化合物又はその薬理上許容される塩を含有する、貯蔵安定性に優れた固形製剤を提供することが可能となる。
【0013】
本発明の固形製剤は、例えば、血栓症又は塞栓症(好適には、血栓症)等の治療及び/又は予防(好適には、血栓症の治療薬及び/又は予防薬である)に有効である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の固形製剤の有効成分である、下記一般式(I)
【0015】
【化3】

【0016】
を有する化合物、すなわち2−アセトキシ−5−(α−シクロプロピルカルボニル−2−フルオロベンジル)−4,5,6,7−テトラヒドロチエノ[3,2−c]ピリジン、又はその薬理上許容される塩は、特開平6−41139号公報又は特開2002−145883号公報に記載されており、製造することができる。
【0017】
本発明の「その薬理上許容される塩」としては、例えば、フッ化水素酸塩、塩酸塩、臭化水素酸塩若しくはヨウ化水素酸塩のようなハロゲン化水素酸塩;硝酸塩、過塩素酸塩、硫酸塩若しくはリン酸塩のような無機酸塩;メタンスルホン酸塩、トリフルオロメタンスルホン酸塩若しくはエタンスルホン酸塩のような低級アルキルスルホン酸塩;ベンゼンスルホン酸塩若しくはp−トルエンスルホン酸塩のようなアリールスルホン酸塩;酢酸塩、リンゴ酸塩、フマル酸塩、コハク酸塩、クエン酸塩、アスコルビン酸塩、酒石酸塩、シュウ酸塩若しくはマレイン酸塩のような有機酸塩;又は、グリシン塩、リジン塩、アルギニン塩、オルニチン塩、グルタミン酸塩若しくはアスパラギン酸塩のようなアミノ酸塩等を挙げることができ、好適には、ハロゲン化水素酸塩又は有機酸塩であり、更に好適には、塩酸塩又はマレイン酸塩であり、最も好適には、塩酸塩である。
【0018】
一般式(I)で表される化合物において、ベンジル基のα位は不斉炭素であり、それに基づく光学活性体が存在するが、その異性体及びそれらの混合物も本発明の化合物に包含される。同様に、一般式(I)で表される化合物の薬理上許容される塩(例えば塩酸塩)の異性体及びそれらの混合物も、本発明の化合物の薬理上許容される塩(例えば塩酸塩)に包含される。
【0019】
マンニトールには5つの結晶多形が存在し、そのうち無水の結晶としてはα結晶、β結晶及びγ結晶が存在し、熱力学的にはβ結晶が最も安定であることが知られている(例えば、Pharm.Res.Vol.25,No.10,2292−2301(2008))。マンニトール結晶中の結晶多形の測定方法としては、例えば、粉末X線回折法、赤外分光法、近赤外分光法、ラマン分光法、固体NMR法、示差熱分析等が挙げられるが、本発明では粉末X線回折法により各結晶多形の含有量を測定することができる。粉末X線回折法によりマンニトールの結晶多形を測定するには、例えば、J. Pharm. Biomed. Anal. Vol.28, 1149-1159(2002)に記載されている方法を用いることができる。具体的には、例えば、用いたマンニトールがα結晶とβ結晶のピークのみが観測され、α結晶とβ結晶の混合物であることがわかる場合には、粉末X線回折上14.6°付近に観察されるβ結晶固有のピーク強度よりβ結晶含有量を算出し、100%から算出したβ結晶含有量を引いた値をα結晶含有量とした。
【0020】
使用するマンニトールは、100%α結晶でもよく、α結晶と他の結晶多形との混合物でもよい。マンニトールがα結晶と他の結晶多形との混合物である場合、マンニトール中のα結晶の含有量は、下限が、好適には2%であり、より好適には45%であり、更により好適には48%であり、上限が、好適には95%であり、より好適には88%である。
【0021】
使用するマンニトールの配合量は、固形製剤全重量に対して、通常10.0〜93.5重量%であり、好適には、44.0〜90.0重量%である。したがって、使用するマンニトールのα結晶の固形製剤全重量に対する含有量は、下限が、好適には1%であり、より好適には5%であり、更により好適には20%であり、特に好適には21%であり、上限が、好適には94%であり、より好適には90%であり、更により好適には84%であり、特に好適には79%である。
【0022】
本発明の固形製剤は、更に必要に応じて、適宜の薬理学的に許容されるマンニトール以外の賦形剤、滑沢剤、結合剤、乳化剤、安定剤、矯味矯臭剤及び/又は崩壊剤等の添加剤を含むことができる。
【0023】
使用される「マンニトール以外の賦形剤」としては、例えば、乳糖、白糖、ブドウ糖、マンニトールの他の結晶若しくはソルビトールのような糖誘導体;トウモロコシデンプン、バレイショデンプン、α−デンプン若しくはデキストリンのようなデンプン誘導体;結晶セルロースのようなセルロース誘導体;アラビアゴム;デキストラン;又は、プルラン等の有機系賦形剤;或いは、軽質無水ケイ酸、合成ケイ酸アルミニウム、ケイ酸カルシウム若しくはメタケイ酸アルミン酸マグネシウムのようなケイ酸塩誘導体;リン酸水素カルシウムのようなリン酸塩;炭酸カルシウムのような炭酸塩;又は、硫酸カルシウムのような硫酸塩等の無機系賦形剤を挙げることができ、好適には、セルロース誘導体及び糖誘導体から選択される一つ以上の賦形剤であり、更に好適には、乳糖、マンニトールの他の結晶及び結晶セルロースから選択される一つ以上の賦形剤であり、最も好適には、乳糖及び/又は結晶セルロースである。
【0024】
使用される「滑沢剤」としては、例えば、ステアリン酸;ステアリン酸カルシウム若しくはステアリン酸マグネシウムのようなステアリン酸金属塩;タルク;コロイドシリカ;ビーズワックス若しくは鯨ロウのようなワックス類;ホウ酸;アジピン酸;硫酸ナトリウムのような硫酸塩;グリコール;フマル酸;フマル酸ステアリルナトリウム;ショ糖脂肪酸エステル;安息香酸ナトリウム;D,L−ロイシン;ラウリル硫酸ナトリウム若しくはラウリル硫酸マグネシウムのようなラウリル硫酸塩;無水ケイ酸若しくはケイ酸水和物のようなケイ酸類;又は、上記デンプン誘導体等を挙げることができ、好適には、ステアリン酸金属塩である。
【0025】
使用される「結合剤」としては、例えば、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒプロメロース、ポリビニルピロリドン、ポリエチレングリコール、又は、前記賦形剤と同様の化合物等を挙げることができ、好適にはヒドロキシプロピルセルロース又はヒプロメロースである。
【0026】
使用される「乳化剤」としては、例えば、ベントナイト若しくはビーガムのようなコロイド性粘土;水酸化マグネシウム若しくは水酸化アルミニウムのような金属水酸化物;ラウリル硫酸ナトリウム若しくはステアリン酸カルシウムのような陰イオン界面活性剤;塩化ベンザルコニウムのような陽イオン界面活性剤;又は、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル若しくはショ糖脂肪酸エステルのような非イオン界面活性剤を挙げることができる。
【0027】
使用される「安定剤」としては、例えば、メチルパラベン若しくはプロピルパラベンのようなパラオキシ安息香酸エステル類;クロロブタノール、ベンジルアルコール若しくはフェニルエチルアルコールのようなアルコール類;塩化ベンザルコニウム;フェノール若しくはクレゾールのようなフェノール類;チメロサール;デヒドロ酢酸;又は、ソルビン酸等を挙げることができる。
【0028】
使用される「矯味矯臭剤」としては、例えば、サッカリンナトリウム若しくはアスパルテームのような甘味料;クエン酸、リンゴ酸若しくは酒石酸のような酸味料;又は、メントール、レモン若しくはオレンジのような香料等を挙げることができる。
【0029】
使用される「崩壊剤」としては、例えば、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースカルシウム若しくは内部架橋カルボキシメチルセルロースナトリウムのようなセルロース誘導体;架橋ポリビニルピロリドン;又は、カルボキシメチルスターチ若しくはカルボキシメチルスターチナトリウムのような化学修飾されたデンプン・セルロース類等を挙げることができる。
【0030】
固形製剤中の上記一般式(I)を有する化合物又はその薬理上許容される塩の配合量には特に制限はないが、例えば、固形製剤全重量に対して1.0〜30.0重量%(好適には、1.3〜20.0重量%)配合することが好ましい。
【0031】
また、固形製剤全量中の添加剤の配合量には特に制限はないが、例えば、固形製剤全重量に対して、マンニトールも含めて賦形剤を10.0〜93.5重量%(好適には、44.0〜90.0重量%)、滑沢剤を0.5〜5.0重量%(好適には、0.5〜3.0重量%)、結合剤を0.0〜15.0重量%(好適には、2.5〜10.0重量%)、崩壊剤を2.5〜40.0重量%(好適には、5.0〜30.0重量%)配合することが好ましい。
【0032】
本発明の固形製剤は、例えば、錠剤(舌下錠、口腔内崩壊剤を含む)、カプセル剤(ソフトカプセル、マイクロカプセルを含む)、顆粒剤、細粒剤、散剤、丸剤、チュワブル剤又はトローチ剤等であり得、好適には、散剤、細粒剤、顆粒剤、カプセル剤又は錠剤であり、最も好適には、錠剤である。
【0033】
本発明における製剤の製造方法としては、Powder Technology and Pharmaceutical Process (D. Chulia他,Elservier Science Pub Co(December 1, 1993))のような刊行物に記載されている一般的な方法を用いて製造すればよく、特に、乾式製法が好ましい。
【0034】
本発明における乾式製法には直接打錠法と乾式造粒法があり、好適には、直接打錠法である。
【0035】
「直接打錠法」とは、原料粉末を直接圧縮成形することにより製剤化する方法である。
【0036】
「乾式造粒法」とは、原料粉体をスラッグ又はシート状に圧縮成形し、適当な方法で破砕・分割して製造した顆粒を用いて製剤化する方法である。これらの製法はThe Theory and Practice of Industrial Pharmacy (Third Edition)(Leon Lachman 他: LEA & FEBIGER 1986)や、Pharmaceutical Dosage Forms: Tablets volume 1(Second Edition)(Herbert A.Lieberman他: MARCEL DEKKER INC. 1989)のような刊行物に記載されている。
【0037】
ここで造粒とは、粉状、塊状、溶液或いは溶融液状などの原料からほぼ均一な形状と大きさを持つ粒を造る操作をいい、顆粒剤、散剤又は細粒剤等の最終製品を作る造粒や、錠剤又はカプセル剤等の製造用中間製品を作る造粒がある。
【0038】
圧縮成形過程とは、原料粉体に機械的な力で圧力を加え原料粉体を塊状物とする過程であり、使用される装置としては、例えば、回転式錠剤機(菊水製作所社製、畑鉄工所社製、菅原精機社製等)、ローラーコンパクター、ロールグラニュレーター又はチルソネーター等の乾式造粒機(フロイント産業社製、ターボ工業社製、栗本鐵工所社製、マツボー社製、日本グラニュレーター社製、不二パウダル社製等)を挙げることができる。
【0039】
破砕・分割過程とは、圧縮成形過程で成形した塊状物をナイフ・カッター等で適当な大きさに破砕する過程であり、使用される装置としては、例えば、パワーミル、フィッツミル、フィオーレ若しくはコーミル等の解砕機又は製粒機(不二パウダル社製、徳寿工作所社製、パウレック社製等)を挙げることができる。
【0040】
このように得られた造粒物は所望の粒子径に整粒し、散剤、細粒剤又は顆粒剤の形態の製剤とすることができる。これら製剤はカプセルに充填してカプセル剤とすることもでき、或いは、さらに崩壊剤及び/又は滑沢剤等を必要に応じて添加し、打錠機等により圧縮成形することで錠剤形態の製剤にすることもできる。混合又は造粒等の操作は、いずれも製剤技術分野において汎用されており、当業者は適宜実施することができる。また、錠剤には少なくとも1層のフィルムコーティングを設けてもよい。
【0041】
コーティングは、例えば、フィルムコーティング装置を用いて行われ、フィルムコーティング基剤としては、例えば、糖衣基剤、水溶性フィルムコーティング基剤、腸溶性フィルムコーティング基剤又は徐放性フィルムコーティング基剤等を挙げることができる。
【0042】
糖衣基剤としては、白糖が用いられ、更に、タルク、沈降炭酸カルシウム、リン酸カルシウム、硫酸カルシウム、ゼラチン、アラビアゴム、ポリビニルピロリドン及びプルラン等より選ばれる1種または2種以上を組み合わせて用いることもできる。
【0043】
水溶性フィルムコーティング基剤としては、例えば、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒプロメロース、ヒドロキシエチルセルロース、メチルヒドロキシエチルセルロース若しくはカルボキシメチルセルロースナトリウムのようなセルロース誘導体;ポリビニルアセタールジエチルアミノアセテート、アミノアルキルメタクリレートコポリマー若しくはポリビニルピロリドンのような合成高分子;又は、プルランのような多糖類等を挙げることができる。
【0044】
腸溶性フィルムコーティング基剤としては、例えば、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート、ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートサクシネート、カルボキシメチルエチルセルロース若しくは酢酸フタル酸セルロースのようなセルロース誘導体;(メタ)アクリル酸コポリマーL、(メタ)アクリル酸コポリマーLD若しくは(メタ)アクリル酸コポリマーSのようなアクリル酸誘導体;又は、セラックのような天然物等を挙げることができる。
【0045】
徐放性フィルムコーティング基剤としては、例えば、エチルセルロースのようなセルロース誘導体;又は、アミノアルキルメタクリレートコポリマーRS若しくはアクリル酸エチル・メタクリル酸メチル・共重合体乳濁液のようなアクリル酸誘導体等を挙げることができる。
【0046】
上記コーティング基剤は、その2種以上を適宜の割合で混合して用いてもよい。また、さらに必要に応じて、適宜の薬理学的に許容される可塑剤、賦形剤、滑沢剤、隠蔽剤、着色剤及び/又は防腐剤等の添加剤を含むことができる。
【0047】
本発明に使用できる可塑剤の種類は特に限定されず、当業者が適宜選択可能である。そのような可塑剤としては、例えば、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、グリセリン及びソルビトール、グリセリントリアセテート、フタル酸ジエチル及びクエン酸トリエチル、ラウリル酸、ショ糖、デキストロース、ソルビトール、トリアセチン、アセチルトリエチルチトレート、トリエチルチトレート、トリブチルチトレート又はアセチルトリブチルチトレート等を挙げることができる。
【0048】
本発明に使用できる隠蔽剤としては、例えば、酸化チタン等を挙げることができる。
【0049】
本発明に使用できる着色剤としては、例えば、酸化チタン、酸化鉄、三二酸化鉄、黄色三二酸化鉄又は黄色5号アルミニウムレーキタルク等を挙げることができる。
【0050】
本発明に使用できる防腐剤としては、例えば、パラベン等を挙げることができる。
【0051】
本発明の固形製剤の有効成分である上記一般式(I)を有する化合物又はその薬理上許容される塩の投与量は、薬剤の活性、患者の症状、年齢又は体重等の種々の条件により変化し得る。その投与量は、経口投与の場合には、各々、通常は成人に対して1日、下限として0.01mg(好適には、1mg)であり、上限として200mg(好適には、100mg)を投与することができる。
【実施例】
【0052】
以下、実施例、比較例及び試験例により本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0053】
なお、実施例及び比較例において使用されている「化合物A」は、下記構造式(Ia)
【0054】
【化4】

【0055】
を有し、特開2002−145883号公報に記載の方法に準じて製造することができる。
【0056】
(実施例1)
化合物A(6.9g)、マンニトール(α結晶含有率:70%、β結晶含有率:30%、325.6g)、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース(75g)、ヒドロキシプロピルセルロース(37.5g)及び結晶セルロース(50g)をV型混合機で30分間混合した。得られた混合末を篩過した後、ステアリン酸マグネシウム(5g)を添加し、再度V型混合機で混合することにより、打錠用混合末を得た。
【0057】
次に、得られた混合末をロータリー式打錠機にて、錠剤質量が約100mgになるよう打錠圧約5kNで打錠した。得られた素錠に、ヒプロメロース、酸化チタン、タルク及び水からなるコーティング液を、パンコーティング機中で噴霧することにより、フィルムコーティング錠を得た。このフィルムコーティング錠を乾燥することで試験化合物を含有する錠剤を得た。得られた錠剤について安定性試験を行った。試験結果を表1に示す。
【0058】
(実施例2)
化合物A(13.8g)、マンニトール(α結晶含有率:88%、β結晶含有率:12%、726.3g)、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース(150g)、ヒドロキシプロピルセルロース(50g)及び結晶セルロース(50g)をV型混合機で30分間混合した。得られた混合末を篩過した後、ステアリン酸マグネシウム(10g)を添加し、再度V型混合機で混合することにより、打錠用混合末を得た
次に、得られた混合末をロータリー式打錠機にて、錠剤質量が約100mgになるよう打錠圧約5kNで打錠した。得られた素錠に、ヒプロメロース、酸化チタン、タルク及び水からなるコーティング液を、パンコーティング機中で噴霧することにより、フィルムコーティング錠を得た。このフィルムコーティング錠を乾燥することで試験化合物を含有する錠剤を得た。得られた錠剤について安定性試験を行った。試験結果を表1に示す。
【0059】
(比較例1)
化合物A(6.9g)、マンニトール(β結晶含有率:100%、325.6g)、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース(75g)、ヒドロキシプロピルセルロース(37.5g)及び結晶セルロース(50g)をV型混合機で30分間混合した。得られた混合末を篩過した後、ステアリン酸マグネシウム(5g)を添加し、再度V型混合機で混合することにより、打錠用混合末を得た
次に、得られた混合末をロータリー式打錠機にて、錠剤質量が約100mgになるよう打錠圧約3kNで打錠した。得られた素錠に、ヒプロメロース、酸化チタン、タルク及び水からなるコーティング液を、パンコーティング機中で噴霧することにより、フィルムコーティング錠を得た。このフィルムコーティング錠を乾燥することで試験化合物を含有する錠剤を得た。得られた錠剤について安定性試験を行った。試験結果を表1に示す。
【0060】
(試験例1)安定性試験
実施例1、実施例2及び比較例1で得られた錠剤を褐色ガラス瓶に入れ密閉し、密閉状態40℃/75%相対湿度下で静置し、1、2、3及び6ヶ月経過後に、試験錠剤中の有効成分(化合物A)の類縁物質を高速液体クロマトグラフィーにより測定し、得られたピークの面積(%)から、類縁物質の総含量(%)を得た。高速液体クロマトグラフィーの測定条件は、次の通りである。
カラム:Synergi 4u MAX−RP 80A(4.6mmID×150mm,Phenomenex社製)
移動相A:25mmol/Lリン酸緩衝液(pH4.0)/アセトニトリル混液(9:1)
移動相B:アセトニトリル/水混液(9:1)
グラジエント:
経過時間(分) 0 2 30 37 38 45
移動相A 100 100 0 0 100 100
移動相B 0 0 100 100 0 0
カラム温度:45℃付近の一定温度
検出波長:210nm
流量:1.50mL/分
(表1)
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――
測定時の化合物Aに対する類縁物質の総含量(%)
――――――――――――――――――――――――――――――――
試験錠剤 1ヶ月経過後 2ヶ月経過後 3ヶ月経過後 6ヶ月経過後
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――
実施例1 1.51 2.18 2.76 4.43
実施例2 1.45 − − −
― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ―
比較例1 4.07 − 8.26 13.92
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――
表中「−」は未測定を示す。
【産業上の利用可能性】
【0061】
本発明によれば、上記一般式(I)を有する化合物又はその薬理上許容される塩、及びマンニトールのα結晶を含有する貯蔵安定性の改善された固形製剤が得られる。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)下記一般式(I)
【化1】


を有する化合物又はその薬理上許容される塩及び
(B)マンニトールのα結晶を含有する固形製剤。
【請求項2】
一般式(I)を有する化合物又はその薬理上許容される塩が、下記式(Ia)
【化2】


を有する化合物である請求項1に記載の固形製剤。
【請求項3】
製剤が、散剤、細粒剤、顆粒剤、カプセル剤又は錠剤である請求項1又は2に記載の固形製剤。
【請求項4】
製剤が、錠剤である請求項1又は2に記載の固形製剤。
【請求項5】
マンニトールのα結晶が、α結晶を2〜100重量%含有するマンニトールである、請求項1乃至4のいずれか1つに記載の固形製剤。
【請求項6】
マンニトールのα結晶が、α結晶を45〜90重量%含有するマンニトールである、請求項1乃至4のいずれか1つに記載の固形製剤。
【請求項7】
マンニトールのα結晶が、α結晶を48〜88重量%含有するマンニトールである、請求項1乃至4のいずれか1つに記載の固形製剤。


【公開番号】特開2012−180280(P2012−180280A)
【公開日】平成24年9月20日(2012.9.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−129488(P2009−129488)
【出願日】平成21年5月28日(2009.5.28)
【出願人】(307010166)第一三共株式会社 (196)
【出願人】(000000206)宇部興産株式会社 (2,022)
【Fターム(参考)】