説明

貯蔵安定性プロスタグランジン製品

プロスタグランジンを含むプロスタグランジン組成物および低密度ポリエチレン容器を開示する。プロスタグランジン組成物はポリエチレン容器内でより長期にわたって安定である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はプロスタグランジンを含む薬学的組成物の安定な貯蔵方法を提供する。その方法はプロスタグランジン組成物を、ブローフィルシール(BFS)技術を用いた、ポリエチレン容器、好ましくは低密度ポリエチレン(LDPE)容器、さらに好ましくはPurell PE 3020 D樹脂を含むLDPE容器に貯蔵する段階を有する。
【背景技術】
【0002】
霊長類を含む様々な哺乳動物を悩ませる眼疾患である緑内障は、眼圧の上昇(高眼圧症)を特徴とする。ヒトにおいて、このような高眼圧症は、毛様体上皮から前眼房および後眼房に入る房水の分泌の割合と、前眼房および後眼房からの房水の流出または排出の割合との間の不均衡によって引き起こされる。一般的に房水の排出障害が不均衡の主要な原因であると考えられている。
【0003】
慢性緑内障は、通常視野の喪失がゆっくりと進行し、制御されない場合には最終的に失明する。様々なプロスタグランジンを含む種々の活性化合物が緑内障を治療するために利用可能である。
【0004】
プロスタグランジンは水への溶解度が低く、一般的に不安定である。様々なプロスタグランジンを種々のシクロデキストリンと複合させることで、可溶化および安定化させる試みが成されてきた。例えば、欧州特許出願第330 511 A2号(Ueno等)および欧州特許出願第435 682 A2号(Wheeler)を参照のこと。これらの試みはそれぞれに成功している。
【0005】
眼科用製品のための容器は、製造を促進し、滅菌およびパイロジェンが存在しないことを含めた製品保護を維持し、内容物の検査を可能とし、輸送および貯蔵を可能とし、そして便利に使用でき、様々な目的を果たしている。
【0006】
眼科用製品のための容器成分は、製品の不可欠な要素として考えるべきである。なぜなら、容器成分は製品の安定性、有効性、毒性および安全性に著しい影響を及ぼす可能性があるからである。したがって特定の活性物質を含む組成物を選択する前に、様々な試験を行って容器成分を慎重に評価すべきである。
【0007】
眼科用製品のために広く使用されている容器成分はガラスおよびプラスチックである。ガラス容器の使用は減少しているが、プラスチック容器の使用は、それらが軽く、衝撃およびその他の機械的影響により耐久性があり、安価でより多くの設計可能性を提供するため支持されている。ポリエチレン、好ましくは添加物の有無に関わらず低密度ポリエチレンであるLDPE、およびポリプロピレンは、ヨーロッパ薬局方で規定されているプラスチックである。
【0008】
ポリプロピレンは低密度ポリエチレンよりも頑丈で堅く、高温に対してより耐性があることが知られている。しかしながら、ポリプロピレンはプラスチックの亀裂および黄変をもたらす酸素および酸などの酸化剤への耐性がより低い。また、ポリプロピレンはポリエチレンと比較して優れた柔軟性および加工性をもたらさないため、滅菌組成物のための、特にブローフィルシール技術を用いる容器の第1選択肢ではない。また、ポリプロピレンはポリエチレンと比較して費用効果の高い選択肢ではない。
【0009】
米国特許第6,235,781号(Weiner)[’781]は、ポリプロピレン容器に充填された水性プロスタグランジン組成物を含む薬学的製品を開示している。’781によると、ポリプロピレン容器に充填された水性プロスタグランジン組成物は、ポリエチレン容器に充填されたものよりもより安定である。さらに’781はプロスタグランジン処方物の安定性は、異なる安定性条件において、ポリプロピレン容器と比較してポリエチレン容器(LDPE)による影響を受けていると教示している。
【0010】
さらに、PCT出願である国際公開第2002/022106号(Wong)は、冷却(2−8℃)しない限り、脂溶性のプロスタグランジン誘導体および類似体は、標準低密度ポリエチレン(LDPE)容器内で許容不可能な安定性を示すことを開示している。眼科用製剤の冷却を必要とする場合、発展途上国における人への治療の可能性を大きく減少させる。さらに、治療可能な地域であっても、製剤の冷却は患者を治療するための費用を増加させるため、必要とする人への治療の可能性をさらに減少させる。
【0011】
したがって、より長期にわたり費用効果の高い容器成分を使用してプロスタグランジン製剤を貯蔵するための方法が、当技術分野において必要とされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】欧州特許出願第330 511 A2号明細書
【特許文献2】欧州特許出願第435 682 A2号明細書
【特許文献3】米国特許第6,235,781号明細書
【特許文献4】国際公開2002/022106号パンフレット
【発明の概要】
【0013】
したがって、本発明は、プロスタグランジン、プロスタグランジン誘導体、またはプロスタグランジン類似体から選択される活性化合物を含む薬学的組成物の安定性を増加させる方法を提供する。その方法は、薬学的組成物、特に眼科用組成物を、ポリエチレン、好ましくはLDPE、さらに好ましくはPurell PE 3020 D樹脂を含むLDPEから製造された容器に提供する段階を有する。
【0014】
さらに、本発明は、トラボプロスト、ラタノプロスト、ビマトプロスト、タフルプロストを含む眼科用組成物の安定性を増加させる容器、方法を提供する。その容器は、BFS技術を用いて作成される、ポリエチレン、好ましくはLDPE、さらに好ましくはPurell PE 3020 D樹脂を含むLDPEから作られる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明において使用され得るプロスタグランジンは、薬学的に受容可能なプロスタグランジン、それらの誘導体および類似体、ならびにそれらの薬学的に受容可能なエステルおよび塩を全て含む。このようなプロスタグランジンは天然化合物:PGE、PGE、PGE、PGFα、PGFα、PGFα、PGDおよびPGI(プロスタサイクリン)、ならびにより大きい効力かまたはより小さい効力かのどちらかの同様な生物学的活性を有する、これらの化合物の類似体および誘導体を含む。天然プロスタグランジンの類似体は、以下を含むが、これらに限定されない:アルキル置換(例えば、15−メチルまたは16,16−ジメチル)、これらは生物的代謝を減少させることによって増強もしくは持続された有効性を与えるか、または作用の選択性を変化させる;飽和(例えば13,14−ジヒドロ)または不飽和(例えば2,3−ジデヒドロ、13,14−ジデヒドロ)、これらは生物的代謝を減少させることによって持続された有効性を与えるか、または作用の選択性を変化させる;欠失(deletion)または置換(例えば11−デオキシ、9−デオキソ−9−メチレン)、酸素に対してクロロ(またはハロゲン)(例えば9ベータ−クロロ)、炭素に対して酸素(例えば3−オキサ)、酸素に対して低級アルキル(例えば9−メチル)、酸素に対して水素(例えば、1−CHOH、1−CHOアシル)、これらは化学的安定性および/または作用の選択性を増強させる;ならびにオメガ−鎖修飾(例えば18,19,20−トリノル−17−フェニル、17,18,19,20−テトラノル−16−フェノキシ)、これらは作用の選択性を増強させ、かつ生物的代謝を減少させる。これらのプロスタグランジンの誘導体は、薬学的に受容可能な塩およびエステルを全て含み、それらは対応するアルコールまたは有機酸試薬を適切に使用することで、プロスタグランジンの1−カルボキシル基または任意のヒドロキシル基に結合され得る。用語「類似体」および「誘導体」は、それらのプロスタグランジン自体と類似の機能的および物理的反応を示す化合物を含むことを理解すべきである。本発明の組成物に使用するのに適したプロスタグランジンは、トラボプロスト、ラタノプロスト、ビマトプロスト、タフルプロスト等から成る群より選択可能である。
【0016】
本発明の発明者は、従来技術の教示、すなわちプロスタグランジンはポリエチレン容器内で安定ではないということに対して、驚くべき発見をした。
【0017】
本発明の発明者は、容器システムに対して適切な等級のポリエチレン樹脂を使用することで、プロスタグランジンを含む組成物をポリエチレン容器内で安定可能とすることを今回発見した。
【0018】
さらに、本発明の発明者は、活性物質と相性のよい容器を作成するために使用されるポリエチレン樹脂への適した添加物の添加は、安定性を増加させることにさらに貢献することを発見した。
【0019】
さらに、本発明の発明者は、ポリエチレン容器の滅菌に使用されるガンマ線滅菌の線量もまた、ポリエチレン容器に充填されたプロスタグランジン製品の安定性に影響を及ぼすことを発見した。
【0020】
さらに、本発明の発明者は、低密度ポリエチレンに対する15−25kGyのガンマ線滅菌は、ポリエチレン容器に充填されたプロスタグランジンの安定性を維持および増加させるのに最適であることを発見した。本制限を超えるガンマ線滅菌は吸着を増加させるため、プロスタグランジン製品の分析結果または有効性を落とす。
【0021】
さらに、本発明の発明者は、プロスタグランジン組成物、好ましくはトラボプロスト、ラタノプロスト、ビマトプロスト、タフルプロスト組成物の安定性は、これらの組成物が、好ましくはBFS技術を用いた、LDPE容器、好ましくはPurell PE 3020 D樹脂から作成されたLDPE容器に充填されたときに増加し得ることを発見した。
【0022】
プロスタグランジン組成物の安定性は、15−25kGyのガンマ線を使用するかまたはガンマ線を使用しないで滅菌を行ったときにさらに増加した。したがって、ガンマ線は好ましくはプロスタグランジン組成物、さらに好ましくはトラボプロスト組成物の安定性に影響を及ぼすことを発見した。
【0023】
さらに、本発明の発明者は、プロスタグランジン組成物における防腐剤の吸着または損失は、プロスタグランジン組成物を、好ましくは15−25kGyのガンマ線滅菌を行った、ポリエチレン容器、好ましくはLDPE容器、さらに好ましくはPurell PE 3020 D容器に充填することによって、有意な水準にまで抑制可能であることを発見した。
【0024】
したがって、本発明の眼科用組成物は、好ましくはトラボプロストを、ブローフィルシール(BFS)技術を用いて製造されたPurell PE 3020 D樹脂を含むLDPEから作成され、かつ使用者がボトルを指先でデジタル操作することで滴を投薬するための十分な押しつぶし能(squeeze−ability)を有する容器内に有する。
【0025】
1つの実施形態では、本発明は、プロスタグランジン、プロスタグランジン誘導体、またはプロスタグランジン類似体から選択される活性化合物を含む薬学的組成物の安定性を増加させる方法を提供する。その方法は薬学的組成物をポリエチレンから製造された容器内に提供する段階を有する。
【0026】
他の実施形態では、本発明はプロスタグランジン、プロスタグランジン誘導体、またはプロスタグランジン類似体、ならびに防腐剤および薬学的に受容可能な添加剤から選択される活性化合物を含む薬学的組成物の安定性を増加させる方法を提供する。その方法は、薬学的組成物をポリエチレンから製造される複数回使用容器(multi−dose container)に提供する段階から成り、プロスタグランジン製品は12か月以上にわたって最高25℃までの室温で安定である。
【0027】
さらに他の実施形態では、本発明はプロスタグランジン、プロスタグランジン誘導体、またはプロスタグランジン類似体、ならびに防腐剤および薬学的に受容可能な添加剤から選択される活性化合物を含む薬学的組成物の安定性を増加させる方法を提供する。その方法は、薬学的組成物をポリエチレンから製造される複数回使用容器に提供する段階から成り、プロスタグランジン製品は2−8℃で冷却せずして安定である。
【0028】
さらに他の実施形態では、本発明はプロスタグランジン、プロスタグランジン誘導体、またはプロスタグランジン類似体、ならびに防腐剤および薬学的に受容可能な添加剤から選択される活性化合物を含む薬学的組成物の安定性を増加させる方法を提供する。その方法は、眼科用組成物を、BFS技術を使用してPurell PE 3020 D樹脂を含むLDPEから製造された複数回使用容器に提供する段階から成る。
【0029】
さらに他の実施形態では、本発明はトラボプロスト、ラタノプロスト、ビマトプロスト、タフルプロスト、ならびに防腐剤および薬学的に受容可能な添加剤から選択される活性化合物を含むプロスタグランジン組成物の安定性を増加させる方法を提供する。その方法は、薬学的組成物をポリエチレン、好ましくはLDPE、さらに好ましくはPurell PE 3020 D樹脂を含むLDPEから製造された複数回使用容器に提供する段階から成る。
【0030】
さらに他の実施形態では、本発明はトラボプロスト、ラタノプロスト、ビマトプロスト、タフルプロスト、ならびに防腐剤および薬学的に受容可能な添加剤から選択される活性化合物を含むプロスタグランジン組成物の安定性を増加させる方法を提供する。その方法は、薬学的組成物をポリエチレン、好ましくはLDPE、さらに好ましくはPurell PE 3020 D樹脂を含むLDPEから製造された複数回使用容器に提供する段階から成り、組成物は60℃および40℃/相対湿度(RH)25%以下で6か月または1年以上にわたって安定である。
【0031】
さらに他の実施形態では、本発明はトラボプロスト、ラタノプロスト、ビマトプロスト、タフルプロスト、ならびに防腐剤および薬学的に受容可能な添加剤から選択される活性化合物を含むプロスタグランジン組成物の安定性を増加させる方法を提供する。その方法は、薬学的組成物をポリエチレン、好ましくはLDPE、さらに好ましくはPurell PE 3020 D樹脂を含むLDPEから製造された複数回使用容器に提供する段階から成り、組成物は最高25℃までの室温で12か月以上にわたって安定である。
【0032】
さらに他の実施形態では、本発明はトラボプロスト、ラタノプロスト、ビマトプロスト、タフルプロスト、ならびに防腐剤および薬学的に受容可能な添加剤から選択される活性化合物を含むプロスタグランジン組成物の安定性を増加させる方法を提供する。その方法は、薬学的組成物を、ポリエチレン、好ましくはLDPE、さらに好ましくはPurell PE 3020 D樹脂を含むLDPEから製造された複数回使用容器に提供する段階から成り、組成物は2−8℃で冷却せずして安定である。
【0033】
さらに他の実施形態では、本発明はトラボプロスト、ラタノプロスト、ビマトプロスト、タフルプロスト、ならびに防腐剤および薬学的に受容可能な添加剤から選択される活性化合物を含むプロスタグランジン組成物の安定性を増加させる方法を提供する。その方法は、薬学的組成物を、15−25kGyのガンマ線滅菌を行った、ポリエチレン、好ましくはLDPE、さらに好ましくはPurell PE 3020 D樹脂を含むLDPEから製造された複数回使用容器に提供する段階から成る。
【0034】
さらに他の実施形態では、本発明はトラボプロスト、ラタノプロスト、ビマトプロスト、タフルプロスト、ならびに塩化ベンザルコニウムおよびポリエトキシル化ヒマシ油から選択される活性化合物を含むプロスタグランジン組成物の安定性を増加させる方法を提供する。その方法は、薬学的組成物を、15−25kGyのガンマ線滅菌を行ったPurell PE 3020 D樹脂を含むLDPEから製造された容器に提供する段階から成る。
【0035】
さらに他の実施形態では、本発明はトラボプロスト、ラタノプロスト、ビマトプロスト、タフルプロストおよびポリエトキシル化ヒマシ油から選択される活性化合物を含むプロスタグランジン組成物の安定性を増加させる方法を提供する。その方法は、薬学的組成物を、ポリエチレン、好ましくはLDPE、さらに好ましくはPurell PE 3020 D樹脂を含むLDPEから製造された容器に提供する段階から成り、容器はガンマ線滅菌されていない。
【0036】
さらに他の実施形態では、本発明はトラボプロスト、塩化ベンザルコニウムおよびポリエトキシル化ヒマシ油を含むプロスタグランジン組成物の安定性を増加させる方法を提供する。その方法は、組成物を、Purell PE 3020 D樹脂を使用してBFS技術によって製造された複数回使用容器に提供する段階から成る。
【0037】
さらに他の実施形態では、本発明はビマトプロスト、塩化ベンザルコニウムおよびポリエトキシル化ヒマシ油を含むプロスタグランジン組成物の安定性を増加させる方法を提供する。その方法は、ビマトプロスト組成物を、Purell PE 3020 D樹脂を使用してBFS技術によって製造された複数回使用容器に提供する段階から成る。
【0038】
さらに他の実施形態では、本発明はラタノプロスト、塩化ベンザルコニウムおよびポリエトキシル化ヒマシ油を含むプロスタグランジン組成物の安定性を増加させる方法を提供する。その方法は、ラタノプロスト組成物を、Purell PE 3020 D樹脂を使用してBFS技術によって製造された複数回使用容器に提供する段階から成る。
【0039】
さらに他の実施形態では、本発明はタフルプロスト、塩化ベンザルコニウムおよびポリエトキシル化ヒマシ油を含むプロスタグランジン組成物の安定性を増加させる方法を提供する。その方法は、ラタノプロスト組成物を、Purell PE 3020 D樹脂を使用してBFS技術によって製造された複数回使用容器に提供する段階から成る。
【0040】
さらに他の実施形態では、本発明はプロスタグランジン、防腐剤および薬学的に受容可能な添加剤を含むプロスタグランジン組成物の安定性を増加させる方法を提供する。その方法は、プロスタグランジン組成物を低密度ポリエチレン複数回使用容器に充填する段階を含む。
【0041】
さらに他の実施形態では、本発明はトラボプロスト、防腐剤および薬学的に受容可能な添加剤を含む水性眼科用組成物の安定性を増加させる方法を提供する。その方法は、トラボプロスト組成物をブローフィルシール技術を用いて作成された低密度ポリエチレン複数回使用容器に充填する段階を含み、低密度ポリエチレン樹脂はPurell PE 3020 Dである。
【0042】
さらに他の実施形態では、本発明はラタノプロスト、防腐剤および薬学的に受容可能な添加剤を含む水性眼科用組成物の安定性を増加させる方法を提供する。その方法は、ラタノプロスト組成物をブローフィルシール技術を用いて作成された低密度ポリエチレン複数回使用容器に充填する段階を含み、低密度ポリエチレン樹脂はPurell PE 3020 Dである。
【0043】
さらに他の実施形態では、本発明はビマトプロスト、防腐剤および薬学的に受容可能な添加剤を含む水性眼科用組成物の安定性を増加させる方法を提供する。その方法は、ビマトプロスト組成物をブローフィルシール技術を用いて作成された低密度ポリエチレン複数回使用容器に充填する段階を含み、低密度ポリエチレン樹脂はPurell PE 3020 Dである。
【0044】
さらに他の実施形態では、本発明はタフルプロスト、防腐剤および薬学的に受容可能な添加剤を含む水性眼科用組成物の安定性を増加させる方法を提供する。その方法は、タフルプロスト組成物をブローフィルシール技術を用いて作成された低密度ポリエチレン複数回使用容器に充填する段階を含み、低密度ポリエチレン樹脂はPurell PE 3020 Dである。
【0045】
さらに、本発明はプロスタグランジンを含むプロスタグランジン組成物の安定性を増加させるための容器を提供する。その容器はポリエチレン、好ましくはLDPE、さらに好ましくはPurell PE 3020 D樹脂を含むLDPEから作成される。組成物が1か月から18か月の期間にわたって冷却されていなくても、ボトルは活性化合物または防腐剤をほぼ吸着しない。用語「ほぼ」は、本明細書において5重量%未満、好ましくは3重量%未満を指す。
【0046】
複数回使用する局所投与可能な眼科用処方物のための適した防腐剤の例としては、塩化ベンザルコニウム、チメロサール、クロロブタノール、メチルパラベン、プロピルパラベン、フェニルエチルアルコール、エデト酸2ナトリウム、ソルビン酸、Polyquad(登録商標)および当業者に同様に周知のその他の薬剤が挙げられる。このような防腐剤は、利用される場合、通常約0.001から約1.0重量%の間の量で使用可能である。
【0047】
本発明におけるポリエチレン容器内に充填されるプロスタグランジン組成物は、あらゆる薬の摂取方法に適合可能である。耳、鼻または目への局所的な投与に適した組成物が好ましいが、目への局所的な投与のために調製された組成物が最も好ましい。
【0048】
本発明における薬学的に受容可能な添加剤は、賦形剤、界面活性剤、等張化剤、および緩衝剤などの処方成分である。このような多くの処方成分は周知である。
【0049】
本明細書において使用される「LDPE」は低密度ポリエチレンを意味する。好ましい組成物は、Purell PE 1810 E、Purell PE 1840 H、Purell PE 3020 D、Purell PE 3040 D、Purell PE 3220 D、最も好ましくはPurell PE 3020 D、から成る群より選択されるLDPE樹脂を使用して、好ましくはBFS技術によって製造された容器、またはスリーピース(three piece)容器に充填されることが好ましい。
【0050】
好ましい組成物は、BFS技術によって製造された複数回使用容器に充填されることが好ましい。BFS工程では、プラスチックは半溶融状態まで加熱され、ねじおよび温度制御シリンダを介してパリソン組立体を通して押し出される。プラスチックは、それぞれのボトルに対して複数体であるか、または単体の楕円もしくは円であり得るダイを通して導かれ、そこからより小さなバイアルが形成可能である。必要であれば滅菌されており、絶えず組立体を通して流れることでプラスチックが崩れないように樹脂を押し出し可能とする空気または窒素は殺胞子性である。
【0051】
好ましい組成物は、「小容量」のボトルに充填されることが好ましい。本明細書で使用されるように、用語「小容量」のボトルは、1−2か月にわたって1日1−3回の局所投薬に十分な量、通常約20mL以下の水薬を保持するために十分な大きさのボトルを意味する。例えば、小容量の容器は、局所投与の点眼に適した5mL−、10mL−、および15mL−の大きさのボトルを含む。
【0052】
本発明における界面活性剤の例としては、市販等されているポリエトキシル化ヒマシ油であり、PEG−2からPEG−200ヒマシ油に分類されるもの、およびPEG−5からPEG−200水素添加ヒマシ油に分類されるものを含む。このようなポリエトキシル化ヒマシ油は、Alkamuls(登録商標)ブランドとしてRhone−Poulenc社(ニュージャージー州クランベリー所在)によって製造されるもの、およびCremophor(登録商標)ブランドとしてBASF社(ニュージャージー州パーシッパニー所在)によって製造されるものを含む。PEG−15からPEG−50ヒマシ油に分類されるポリエトキシル化ヒマシ油を使用することが好ましく、PEG−30からPEG−35ヒマシ油を使用することがより好ましい。Cremophor(登録商標)ELおよびAlkamuls(登録商標)EL−620、好ましくはCremophor(登録商標)RH−40として知られるポリエトキシル化ヒマシ油を使用することが最も好ましい。
【0053】
処方物の張度(tonicity)またはモル浸透圧濃度(osmolality)を調整するために使用可能な適した薬剤の例としては、塩化ナトリウム、塩化カリウム、マンニトール、デキストロース、グリセリンおよびプロピレングリコールが挙げられる。このような薬剤は、利用される場合、約0.1から約10.0重量%の間の量で使用され得る。
【0054】
適した緩衝剤の例としては、酢酸、クエン酸、炭酸、リン酸、ホウ酸、前述の薬学的に受容可能な塩、およびトロメタミンが挙げられる。このような緩衝剤は、利用される場合、約0.001から約1.0重量%の間の量で使用され得る。
【0055】
本発明の組成物は、持続する放出性および/または快適性を提供するための成分をさらに含み得る。このような組成物は、米国特許第4,861,760号(Mazuel等)、米国特許第4,911,920号(Jani等)、および同一譲渡人に係る米国特許出願第08/108,824号(Lang等)に記載されるような、高分子量で、アニオン性のムコミメティック(mucomimetic)ポリマーおよびゲル化多糖(gelling polysaccharides)を含む。上記に引用されたポリマーに関係するこれらの特許および特許出願の内容は、参考することにより本明細書中に援用される。
【0056】
当業者に認識されているとおり、本組成物は、組成物の送達に適した様々な投薬形態で処方可能である。局所的な眼科用送達の好ましい場合では、組成物は、例えば、水性または非水性溶液、懸濁剤または乳化剤として処方され得る。局所的に投与可能な眼科用組成物は、3.5から8.0の間のpH、および1キログラム当たり260から320ミリオスモル(mOsm/kg)の間のモル浸透圧濃度を有する。
【0057】
本発明は以下の実施例によってさらに例示されるが、これは限定ではなく例示されることが意図される。
【実施例1】
【0058】
処方物の調製
表1に示す処方物は以下の通りに調製された。適切な大きさの清潔な容器に、バッチ容量の水の約80%を加えた。これに、EDTA、トロメタミン、ホウ酸、マンニトール、塩化ベンザルコニウムおよびCremophor(登録商標)RH−40を連続して加えて溶解させた。トラボプロストをガラスのビーカーに入れて秤量し、前もって調製しておいた溶液を用いて溶解させた。次に、溶液のpHをNaOHおよび/またはHClを用いて調整し、そして水を加えて容量を100%にした。その後、得られた溶液を滅菌ろ過した(0.2ミクロンフィルター)。
【0059】
【表1】

【0060】
調製された処方物を、表2および3に示される種々のLDPE樹脂で作成された容器に充填した。ガンマ線滅菌された容器またはガンマ線滅菌されていない容器のどちらかを使用し、異なる安定性条件での安定性をさらに調査した。また、処方物をBFS(ブローフィルシール)技術を用いた種々のLDPE樹脂を含む容器に充填し、異なる安定性条件での安定性をさらに調査した。
【0061】
【表2】

【0062】
【表3】

【0063】
0.004%w/vのトラボプロスト眼科用溶液の安定性(分析)における容器システムの効果を、異なる安定性条件で適合性試験によって調査した。結果を表4に示す。
【0064】
【表4】

注釈:
NG:ガンマ線非照射
G:ガンマ線照射
***BFS:ブローフィルシール技術を用いて作成された容器
***TPC:スリーピース容器
W:週
【実施例2】
【0065】
他のバッチを表1に示す処方および実施例1に示す方法によって調製し、これらの処方物をLDPE Purell PE 3020 D(非ガンマ滅菌)を含みBFS技術によって作成された容器に充填した。0.004%w/vのトラボプロスト眼科用溶液の安定性(分析)における容器システムの効果を、長期間にわたり異なる安定性条件で適合性試験によって調査した。結果を表5に示す。
【0066】
【表5】

W:週
M:月
NMT:それ以下

【特許請求の範囲】
【請求項1】
プロスタグランジン、防腐剤および薬学的に受容可能な添加剤を含むプロスタグランジン組成物の安定性を増加させる方法であって、該方法は、プロスタグランジン組成物を低密度ポリエチレン複数回使用容器に充填する段階を含む方法。
【請求項2】
請求項1の方法であって、前記プロスタグランジン組成物は、トラボプロスト、ラタノプロスト、ビマトプロストおよびタフルプロストから成る群より選択されるプロスタグランジンを含む方法。
【請求項3】
請求項1の方法であって、前記低密度ポリエチレン容器はブローフィルシール技術を用いて作成された低密度ポリエチレンボトルであり、低密度ポリエチレン樹脂はPurell PE 1810 E、Purell PE 1840 H、Purell PE 3020 D、Purell PE 3040 D、Purell PE 3220 Dからなる群より選択される方法。
【請求項4】
請求項1の方法であって、前記プロスタグランジン組成物は局所的に複数回使用する眼科用投与に適している方法。
【請求項5】
請求項1の方法であって、前記低密度ポリエチレン複数回使用容器は局所的な眼科用送達に適した小容量ボトルである方法。
【請求項6】
請求項1の方法であって、前記防腐剤は塩化ベンザルコニウムである方法。
【請求項7】
請求項1の方法であって、前記薬学的に受容可能な添加剤は、1以上の賦形剤、界面活性剤、等張化剤、または緩衝剤である方法。
【請求項8】
請求項1の方法における組成物は、60℃および40℃/相対湿度25%以下で6か月または1年以上にわたって安定である組成物。
【請求項9】
請求項1の方法における組成物であって、該組成物は2−8℃で冷却せずして安定である組成物。
【請求項10】
請求項1の方法における組成物であって、該組成物は12か月以上にわたって最高25℃までの室温において安定である組成物。
【請求項11】
トラボプロスト、防腐剤および薬学的に受容可能な添加剤を含む水性眼科用組成物の安定性を増加させる方法であって、該方法は、トラボプロスト組成物を、ブローフィルシール技術を用いて作成された低密度ポリエチレン複数回使用容器に充填する段階を含み、低密度ポリエチレン樹脂はPurell PE 3020 Dである方法。
【請求項12】
ラタノプロスト、防腐剤および薬学的に受容可能な添加剤を含む水性眼科用組成物の安定性を増加させる方法であって、該方法は、ラタノプロスト組成物を、ブローフィルシール技術を用いて作成された低密度ポリエチレン複数回使用容器に充填する段階を含み、低密度ポリエチレン樹脂はPurell PE 3020 Dである方法。
【請求項13】
ビマトプロスト、防腐剤および薬学的に受容可能な添加剤を含む水性眼科用組成物の安定性を増加させる方法であって、該方法は、ビマトプロスト組成物を、ブローフィルシール技術を用いて作成された低密度ポリエチレン複数回使用容器に充填する段階を含み、低密度ポリエチレン樹脂はPurell PE 3020 Dである方法。
【請求項14】
タフルプロスト、防腐剤および薬学的に受容可能な添加剤を含む水性眼科用組成物の安定性を増加させる方法であって、該方法は、タフルプロスト組成物を、ブローフィルシール技術を用いて作成された低密度ポリエチレン複数回使用容器に充填する段階を含み、低密度ポリエチレン樹脂はPurell PE 3020 Dである方法。
【請求項15】
請求項11、12、13および14の方法における組成物であって、該組成物は、60℃および40℃/相対湿度25%以下で6か月または1年以上にわたって安定である組成物。
【請求項16】
請求項11、12、13および14の方法における組成物であって、該組成物は2−8℃で冷却せずして安定である組成物。
【請求項17】
請求項11、12、13および14の方法における組成物であって、該組成物は12か月以上にわたって最高25℃までの室温において安定である組成物。
【請求項18】
請求項11、12、13および14の方法であって、前記防腐剤は塩化ベンザルコニウムである方法。
【請求項19】
請求項11、12、13および14の方法であって、前記薬学的に受容可能な添加剤は、1以上の賦形剤、界面活性剤、等張化剤、または緩衝剤である方法。

【公表番号】特表2012−516187(P2012−516187A)
【公表日】平成24年7月19日(2012.7.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−547065(P2011−547065)
【出願日】平成22年2月18日(2010.2.18)
【国際出願番号】PCT/IN2010/000094
【国際公開番号】WO2010/100656
【国際公開日】平成22年9月10日(2010.9.10)
【出願人】(511113590)マイクロ ラブズ リミテッド (2)
【Fターム(参考)】