説明

貴石風指標部品を備えた表示板

【課題】 文字基板の上面に指標部品を備える表示板において、高級貴石入台座部品に替わる指標部品を貴石風な仕様に形成することで、低価格で高級感と仕様の多様化を可能とした表示板を提供する。
【解決手段】 指標部品13は指標基板13bとその上面に光透過性装飾部材13a(透明樹脂、着色透明樹脂、透明硝子、着色透明硝子など)から成り、指標基板13bには貴石カット形状のカット模様が施され、指標基板13bと光透過性装飾部材13aには、表面処理が施されていることを特徴とし、大量生産が可能であるので、低価格で品質が揃った指標部品付表示板を提供することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は文字基板の上面に指標部品を備えた表示板で、時計用文字板、計器用表示板に関する。
【背景技術】
【0002】
ここでは表示板製品の代表例として時計用文字板を例に説明する。従来から腕時計などの携帯時計では文字板の表面に時刻を示す位置に時字として、指標部品または台座に貴石を組み込んだ貴石入台座部品を備えたものがある。このような貴石入台座部品は、貴石そのものが高価であるので比較的高級ランクに属する時計に用いられることが多い。
【0003】
図11は従来の貴石入台座部品付き時計用文字板30の斜視図である。図12は図11の文字板の中央の断面図を示したものである。この時計用文字板30は、文字基板31と、文字基板31の上面の一部時字に貴石入台座部品36を配設し、残りの時字に印刷などで形成された時字34を配設している。
【0004】
ここで、文字基板31の製造方法を説明する。文字基板31は、真鍮や洋白等の金属板の下面に時計用のムーブメントブロックに固定するためのエト足35が2本、溶接などの方法で固定されている。中央部には指針を貫通するための中心孔32が設けられている。文字基板31の表面にはメッキや塗装などの表面処理が施されおり、仕様によりブランド名などを印刷方法などで形成されている。
【0005】
貴石入台座部品36は、台座部36bと貴石36aで構成され、前記台座部36bは真鍮などの金属を切削加工して形成され、湿式メッキなどの表面処理を施し、台座部サイズに合った貴石36aを上から組み込み、専用冶具で押さえ爪にて貴石をカシメ固定している。
【0006】
貴石入台座部品36は、その足部を文字基板31の固定穴に嵌着し、曲がりなどの方向を直し、裏面側より接着剤等の方法で文字基板31に固定されている。
【0007】
また、従来の時計用文字板の指標部品に樹脂を凸形状に用いた例として、弊社出願の特開平10−132959号公報記載の構造が開示されている。
【0008】
【特許文献1】特開平10−132959号公報
【0009】
特許文献1に開示されたところの製造方法で形成した透明樹脂体を備えた時計用文字板40の概要を説明する。図13は透明樹脂体を備えた時計用文字板40の斜視図である。時計用文字板40は文字基板41と透明樹脂体43と印刷で形成した時字44で構成される。文字基板41の表面に印刷で数字時字43a(12,3,6,9)を形成し、各数字時字の外周をメッキまたは印刷手法でリング状に囲んだリング部43bを設け、前記リング部43b内に紫外線硬化性樹脂を滴下する。滴下された樹脂は表面張力および樹脂の粘度、樹脂の滴下量により甲丸凸状の形状となる。前記凸状の樹脂に紫外線を照射することにより樹脂部は硬化し、時字の上に甲丸凸状の透明樹脂体が形成される。甲丸凸状に形成された透明樹脂体は、透明のレンズ状を成し、屈折率により数字時字33aは拡大して目視できる効果を持っている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
前記背景技術で述べた、貴石入台座部品36を備えた時計用文字板30は、貴石36aそのものが高価であり、流通されている種類や色調は限定される。さらに時計用文字板に用いる貴石はその大きさや形状、色調にばらつきがあり、台座部36bに組み込むことを想定して、大きさ、形状、色調の規格を揃えると高額な貴石となってしまう。従って貴石入台座部品36は高級時計用文字板に用いられている。また、貴石入台座部品36は貴石の形状から他の指標部品に比べその構造上の高さが高く、また、貴石の大きさに合った台座部サイズを組み合わせることになるため、使用条件が限られていたなどの問題があった。
【0011】
また、従来例で取り上げた特許文献1の透明樹脂体を備えた時計用文字板40は、透明樹脂体43を用いた数字時字43aを、透明甲丸の凸型状のレンズ効果で、数字を拡大して見せ、立体的に視認性を向上させることを特徴としているものだが、数字時字43aは拡大するが、内部を立体的に表現するには限度があり、また文字基板上の平面にリング部43bと透明樹脂43で凸状を形成しているので、単純な甲丸凸状であるので文字板の平面感は残り、全体的に立体感に乏しい表現となっている。
【0012】
本発明の目的は以上のような課題を解決しようとするもので、部品サイズ、高さ、色調、カット模様等を自在に刻設でき、さらに簡易な手法で大量生産を可能とし、コストを押さえた貴石を用いないで貴石風にカット模様が見られる指標部品を作製し、該指標部品を一体と配設した時計用文字板または計器用表示板を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は以上のような従来の課題を解決するため、さらに本願発明の目的を達成するために成されたもので、本発明の請求項1に記載に係る指標部品付表示板10は、文字基板11の上面に指標部品13を備える表示板構造において、前記指標部品13は指標基板13bとその上面に光透過性装飾部材13aからなり、前記指標基板にはカット模様13cが施され、前記指標基板または光透過性装飾部材の少なくとも一方には表面処理が施されていることを特徴とするものである。
【0014】
次に、本発明の請求項2記載に係る指標部品付表示板は、指標基板13bのカット模様13cは上面が貴石(風)カット形状であることを特徴とするものである。図4は貴石(宝石)カット形状の代表例を図(上面図)で示したもので、貴石(風)カット形状にすることで、貴石入台座部品であるかのように見える。
【0015】
次に、本発明の請求項3記載に係る指標部品付表示板は、指標基板13bの上面にある光透過性装飾部材13aは、透明樹脂、着色透明樹脂、透明硝子または着色透明硝子の中の少なくとも1つであることを特徴とするものである。上面に載せる光透過性部材13aの材質、色調を変えることで仕様表現の選択肢が広がり、さらに前記カット模様13cと組み合わされた表現は拡大する。
【0016】
次に、本発明の請求項4記載に係る指標部品付表示板は、光透過性装飾部材13aの透明樹脂または着色透明樹脂は、樹脂上面に樹脂カット模様13dが施されていることを特徴とするものである。図8Aと図8Bは指標基板13b上面の樹脂にカット模様を施す完成図を示す。前記樹脂が硬化後、専用切削工具でカットを施すことで、樹脂カット模様13dが形成される。
【0017】
次に、本発明の請求項5記載に係る指標部品付表示板は、光透過性装飾部材13aの透明樹脂または着色透明樹脂は、金属調の微細ラメ、パール剤または偏光パール剤の中の少なくとも1つが樹脂材に混入して成ることを特徴とするものである。
【0018】
次に、本発明の請求項6記載に係る指標部品付表示板は、光透過性装飾部材13aの透明樹脂または着色透明樹脂は、紫外線硬化型、熱硬化型または2液反応硬化型の中の少なくとも1つから成ることを特徴とするものである。前記樹脂材の透明度、色調、粘度、滴下量、表面張力、硬化速度、密着性等の条件から、樹脂材の種類および硬化条件を選定する。
【0019】
次に、本発明の請求項7記載に係る指標部品付表示板は、表面処理は、湿式メッキ、乾式メッキ、印刷または塗装の中の少なくとも1つから成ることを特徴とするものである。主に湿式メッキ手法と乾式メッキ手法が用いられるが、仕様により印刷手法または塗装手法を加えることも可能である。
【0020】
次に、本発明の請求項8記載に係る指標部品付表示板は、表面処理により、指標基板13bまたは光透過性装飾部材13aの表面に、金属装飾被膜が施されていることを特徴とするものである。指標基板13bは、主に湿式メッキ手法による金系メッキ、白系メッキ(ロジウムメッキ等)や乾式メッキ手法(蒸着手法)による貴金属の被膜を施すことで、それぞれ異なる仕上がりとなる。また、光透過性装飾部材13aへは、乾式メッキ手法で半透明となる被膜を施し、半透明な表現を加えることができる。
【発明の効果】
【0021】
以上のように本発明に係る指標部品付表示板によれば、請求項1の効果は図1の本発明に係る時計用文字板の斜視図に示すように、指標部品13を時計用文字板11に備えることで、貴石入台座部品の表現が可能となり、貴石の大きさ、高さ、色調の表現が指標基板13bと光透過性装飾部材13aとの仕様の組み合わせにて自由に設定でき、また指標部品の立体感を強調して表現できる。同じ貴石表現を示した時、指標基板13bの厚さを薄くし、カットを浅くし、光透過性装飾部材13aのレンズ効果を利用することから、貴石入台座部品に比べ、構造上の高さを低くすることができる。
【0022】
また、本発明の請求項2は、指標基板13bのカット模様13cに貴石(風)カット形状に施すことを特徴としており、指標基板の上面を図4の貴石カット形状の代表例を示す図に示すような代表的な(A)のラウンド・ブリリアン・カットや(B)のジルコン・カット、(D)のシングル・カットなど一般的な貴石(宝石)カット形状にすることで、実際の貴石に近い形を表現すことができる効果がある。
【0023】
また、本発明の請求項3は、前記光透過性装飾部材13aに透明樹脂、着色透明樹脂、透明硝子または着色透明硝子の中の少なくとも一つが備えていることを特徴としており、これは高価な貴石の色調に近い色調で、例えば、ダイヤ、ルビー、エメラルド、ブルーサファイア、トパーズ等の色調で装飾することが可能となる。これらを用いることでコストを押さえた低価格の指標部品13が可能となる。
【0024】
また、本発明の請求項4は、前記光透過性装飾部材13aの透明樹脂または着色透明樹脂の樹脂上面にカット模様を施すことを特徴としており、前記樹脂上面にカット模様を施すことで、外光から入射した光は、カット面に反射し輝く光と、樹脂内に透過して進み指標基板13bのカット模様13cに反射して輝く光となり、相乗した輝きが得られる効果がある。
【0025】
また、本発明の請求項5は、前記光透過性装飾部材13aの透明樹脂または着色透明樹脂の樹脂材に金属調の微細ラメ13e、パール剤または偏光パール剤の中の少なくとも1つが混入して形成されていることを特徴としており、樹脂材に金属調の微細ラメ13e、パール剤や偏光パール剤が混入されることにより、外光から入射した光は、透過性樹脂材を進入し透過光となり、樹脂内に散乱した金属調の微細ラメ13e、パール剤または偏光パール剤に反射し、さまざまな方向へ輝き、貴石に類似した視覚効果を現す。
【0026】
また、本発明の請求項6は、前記光透過性装飾部材13aの透明樹脂または着色透明樹脂は、紫外線硬化型、熱硬化型または2液反応硬化型の中の少なくとも1つから成ることを特徴としており、これは前記樹脂の種類を樹脂の透明度、色調、滴下量、粘度、表面張力、硬化速度、密着性などの特性から適宜に選択し、光透過性装飾部材13aの条件である、透過性と密着性が有り甲丸の凸形状を形成する効果がある。
【0027】
また、本発明の請求項7は、指標部品13に形成された表面処理は、湿式メッキ(膜)、乾式メッキ(膜)、印刷または塗装の中の少なくとも1つから成ることを特徴としており、これは指標基板13bまたは光透過性装飾部材13aの表面に前記手法をもって装飾を施し、仕様および色調の表現を多様化し、カラーバリエーションを拡大する効果がある。
【0028】
また、本発明の請求項8は、指標部品13の指標基板13bおよび光透過性装飾部材13aの表面に、金属装飾被膜が施されていることを特徴としており、これは指標基板13bや光透過性装飾部材13aの表面に貴金属色(金色、銀色)や半透明の金属調膜を湿式メッキ手法や乾式メッキ手法で施すことで、輝かしさを表現し、また、乾式メッキ手法(蒸着手法)で光透過性装飾部材13aに半透明の金属調被膜を表面に施すことにより、輝きの中に内部を透過する深みを持った表現を可能とする効果がある。
【0029】
本発明のさらなる効果として、指標部品付表示板は製作工程が短く、且つ大量生産が可能な方法で製作することができる。また、貴石を用いた場合に生じる大きさ、形状、色調のバラツキによる問題が無く、指標部品付表示板を安いコストで提供できる効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0030】
実施例1として図1、図2、図3、図4および図5に基づいて本発明の、貴石風指標部品を備えた表示板である、時計用文字板で実施の形態を説明する。図1は本発明に係る時計用文字板の斜視図、図2は図1の断面図を示し、図3Aは本発明の指標部品を拡大した上面図で、図3Bは図3Aの側面図を示す。図1において、本実施形態に係る時計用文字板10は、文字基板11、指標部品13および時字14から構成され、文字基板11の上面の時刻を示す位置に指標部品13と時字14が固定された構造を取る。図1および図2では時字14は甲丸形状の指標を用いたが、従来技術の時計用文字板30で説明した印刷などの手法で時字34を形成することも可能である。
【0031】
文字基板11の構成を説明する。文字基板11は、真鍮や洋白等の金属板が基板として使用され、その下面には時計用のムーブメントブロックに固定するためのエト足15が2本、溶接などの方法で固定されている。中央部には指針を取付けるための中心孔12が設けられている。文字基板11の表面にはメッキや塗装などの表面処理が施されおり、仕様によりブランド名などを印刷方法などで形成されている。
【0032】
図1で示すように、本実施形態の指標部品13は時計用文字板のデザインおよび設計に従い、位置、大きさ、高さ、色調、カット模様等が決められ、必要箇所に設けられている。
【0033】
指標部品13の構成について説明する。指標部品13は指標基板13bと光透過性装飾部材13aで構成される。前記指標基板13bは上面にカット模様13cが施され、裏面に取り付け部13fで形成されている。
【0034】
前記カット模様13cは本発明の請求項2で貴石(風)カット形状に施すことを特徴としている。図4は貴石(宝石)カット形状の代表例を示したもので、(A)ラウンド・ブリリアン・カット、(B)ジルコン・カット、(C)オールド・ヨーロピアン・カット、および(D)シングル・カットは一般的な貴石(宝石)や硝子アクセサリー等に用いられるカット形状である。
【0035】
指標基板13bは、真鍮などの棒材をNC自動旋盤で指定された形状をプログラムにより、外形加工、模様加工および取り付け部加工などの順で、構成された形状に切削加工して形成される。切削工具にはダイヤモンドチップバイトが取り付けてあり、形成された面は鏡面状に輝く面状態となる。特に貴石風カット形状は、従来時計用文字板に取り付ける一般的な棒時字や丸型甲丸時字などと比べると、形状としては多面で構成され複雑であるが、規則性を成す面の組み合わされた形状なので、プログラムによりNC自動旋盤で大量生産が可能となり、プログラムでカット模様を容易に変更することが可能となり、仕様の多様化が実現できる。
【0036】
次に、前記切削加工で形成された指標基板13bは湿式メッキ手法または乾式メッキ手法で貴金属調の表面処理を行い、表面に金属装飾被膜を施す。また、仕様により、前記金属被膜形成後、印刷や塗装で指標基板13bの部分または全面にカラー被膜を施すことも可能である。
【0037】
次に、完成した指標基板13bは、その上面に光透過性装飾部材13aの加飾を施す。ここでは、紫外線硬化型の透明樹脂または着色透明樹脂を用いた例で説明する。前記指標基板13bを専用治具に固定し、指標基板上面に前記樹脂材をディスペンサー等で所定量滴下する。この場合、滴下量は指標基板の上面に、甲丸状の凸形状に盛り上がるように塗布されることが、望ましいが、滴下量が多くなると外形の端より液ダレが起こり、凸形状が低いものとなるので、条件として樹脂材の粘度が高いものが良い。
【0038】
次に、指標基板13bの上面に凸形状に形成された樹脂(13a)に紫外線を照射し、硬化させ形状を固めることで、指標部品13は完成する。
【0039】
次に、完成した指標部品13は、文字基板11の時刻を示す位置に施された指標固定穴11aに指標部品の取り付け部13fを合わせ、方向を決め文字基板11の裏面側よりカシメまたは接着剤等で固定し、時計用文字板10が完成する。なお、前記形成方法は指標部品を完成させ、文字基板11に固定する方法を用いたが、指標基板13bを文字基板11に配置し、固定後に指標基板13bの上面に樹脂13aを滴下し、紫外線を照射し硬化する方法も可能である。
【0040】
次に、実施例2として、図7、図8Aおよび図8Bに基づいて、本発明の請求項4の実施の形態を説明する。実施例1と同じ部分については、同じ符号を付して示す。請求項4で形成する指標部品53は、指標基板13bと樹脂部53hから成り、樹脂部にカットを施し樹脂カット模様53dを形成することを特徴としている。図7は指標基板13bの上面に樹脂部53hを設ける形成図(断面図)を示す。図8Aは樹脂部53hへ樹脂カット模様53dを施した上面図で、図8Bは図8Aの側面図を示す。指標基板13bの表面処理を施すまでの形成方法は実施例1で説明した内容と同様である。
【0041】
図7において、表面処理までを完了した指標基板13bを固定治具16に固定し、さらに指標基板の外形形状に合わせた樹脂形成枠体(筒)17を合わせ固定する。樹脂形成枠体17に透明樹脂または着色透明樹脂を所要量滴下する。
【0042】
次に、滴下された樹脂部53hに対し、上面より紫外線(UV)を照射し硬化させる。硬化後、外枠の樹脂形成枠体17を外す。
【0043】
次に、樹脂部53hが形成された指標基板13bをNCダイヤカット装置に固定し、切削工具の先端にダイヤモンドチップバイトを取り付け、NCプログラムにより、切削工具を高速で回転させ樹脂部53hに当て、角度を振りながら、鏡面状にカットを施す。樹脂部53hに樹脂カット模様53dが形成される。
【0044】
以上で、樹脂カット模様が施された指標部品53が完成する。図8A(上面図)、図8B(側面図)は樹脂部カット後の完成形状を示す。完成した前記指標部品53の文字基板11への取り付け方法は実施例1で説明した内容と同様である。樹脂部にカット模様を施すことで、携帯時計に入射された光は樹脂カット面で反射光となり輝く、また樹脂内部に施されたカット模様13cのカット面で生じる反射光と相乗し、二重の光反射効果が現れる。
【0045】
実施例2で、指標基板53に樹脂53hを形成し、樹脂上面をカットして樹脂カット模様53dを形成する手法を用いたが、もう一つの手法として、模様を施した成形型を光透過性素材で作製し、指標基板13bに型を合わせ、型に紫外線硬化樹脂を注入し、紫外線を照射し、透過光で硬化させ指標基板13bの上面に透明系樹脂で模様を形成する成形手法がある。
【0046】
成形手法による構成を説明する。図9に示すように、光透過性素材を用いて型の内部に模様を施した模様形成型18を作成する。指標基板13bを固定治具16へ合わせ固定する。固定された前記指標基板13bに前記模様形成型18を合わせ固定する。前記模様形成型18に紫外線硬化型の透明樹脂または着色透明樹脂を注入する。次に型の外側より紫外線を照射し、透過した紫外線により、前記透明樹脂または着色透明樹脂を型に施した模様に転写し、硬化させる。前記模様形成型18を指標基板13bより外す。 指標基板13bの上面に樹脂模様形成体19が形成される。この形成手法は、多数個成形型を作製することにより、簡易な方法で大量生産が可能となる。
【0047】
次に、実施例3として、指標部品63の特殊形状として、図6Aおよび図6Bに示す台座風指標部品の説明を行う。図6Aは台座風指標部品の上面図で、図6Bは図6Aの側面図を示す。台座風指標部品は図に示すように、指標基板63bと光透過性装飾部材63aで構成される。擬似貴石固定爪63gを指標基板63のコーナー4箇所に配置し、指標基板の中央位置には前記光透過性装飾部材63aとして透明樹脂または着色透明樹脂を甲丸状に滴下し、紫外線で硬化する。また、透明硝子または着色透明硝子を甲丸状または貴石風カット形状に形成したものを、接着剤等で固定、配置することも可能である。この台座風指標部品も有力な擬似貴石入台座部品として表現することができ、デザイン・バリエーションの拡大になる。
【0048】
前記実施例1における指標部品13は、図1、図3Aおよび図4に示すような指標部品の外形が丸型形状で現しているが、これは一般的な形状を示すもので、丸型タイプに限定されるものでは無く、図5に示すような角型タイプ、例えば四角形型、八角形型または四角形コーナーR型などの異形型タイプの形状にも適用できるものである。また、前記実施例2における指標基板13bにはカット模様13cを施した例を示したが、指標基板の上面が平坦で鏡面状を形成した形状であっても、前記形成方法により樹脂カット模様を施すことは可能であり、樹脂部をカットした効果が現れる。
【0049】
実施例4として、図10Aおよび図10Bに基づいて、本発明の請求項5の実施の形態を説明する。光透過性装飾部材の他は実施例1と同じであるので、同じ符号を付けて説明する。図10Aは前記光透過性装飾部材13aの透明樹脂または着色透明樹脂に金属調の微細ラメ13eが混入して形成した上面図で、図10Bは図10Aの側面図を示す。本発明の請求項5で、指標基板13b上面に形成する前記光透過性装飾部材13aの透明樹脂または着色透明樹脂で、樹脂材に金属調の微細ラメ13e、パール剤または偏光パール剤を混入して形成していることを特徴としている。
【0050】
ここでは樹脂への混入に金属調の微細ラメを例に説明する。図10Aおよび図10Bに示すように、これは樹脂滴下加工において施される仕様で、前記紫外線硬化型の透明樹脂または着色透明樹脂に金属調の微細ラメ13eを配合して、前記微細ラメ13eが配合された樹脂材をディスペンサー等で所定量滴下し、紫外線を照射して微細ラメ13eが混入された状態で硬化させて、形状を固める手法である。微細ラメ13eの大きさと配合量は、指標部品の大きさ、色調、樹脂滴下量、甲丸凸形状に合わせたサイズに、調整し、選定することが必要となる。外部より入射した光は微細ラメ13eに反射して、さまざまな方向へ輝く効果があり、前記微細ラメの他に、パール剤、偏光パール剤を使用しても同様にパール色状の輝きを反射する効果がある。前記パール剤としては、メルクジャパン社製、商品名:イリオジン100、200、300、500シリーズの中より選定し、配合量を調整し用いる。
【0051】
これまで説明してきた、指標部品および指標部品を備えた表示板は、貴石風表現が大きさ、形状、色調のバラツキがなく、安価に生産できる。本発明は時計用文字板にて示したが、産業用、民生用のあらゆる機器、計測器等においても全く同様の効果を示す。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】本発明に係る時計用文字板の斜視図である。
【図2】図1の断面図である。
【図3A】本発明による指標部品の上面図である。
【図3B】図3Aの側面図である。
【図4】貴石(風)カット形状の代表例を示した各上面図で、(A)ラウンド・ブリリアン・カット、(B)ジルコン・カット、(C)オールド・ヨーロピアン・カット、(D)シングル・カットを示す。
【図5】異形形状の指標部品の各上面図で、(A)四角形型、(B)八角形型、(C)四角形コーナーR型を示す。
【図6A】実施例3の特殊形状(台座風指標部品)の上面図である。
【図6B】図6Aの側面図である。
【図7】実施例2の樹脂部形成の断面図である。
【図8A】実施例2の樹脂部にカットを施した上面図である。
【図8B】図8Aの側面図である。
【図9】実施例2の樹脂模様を成形手法で形成する断面図である。
【図10A】光透過性装飾部材に金属調の微細ラメを混入した上面図である。
【図10B】図10Aの側面図である。
【図11】背景技術例の貴石入台座部品を備えた時計用文字板の斜視図である。
【図12】図10の断面図である。
【図13】従来例の透明樹脂体を備えた時計用文字板の斜視図である。
【図14】図13の断面図である。
【符号の説明】
【0053】
10‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥本発明の時計用文字板
11、31、41‥‥‥‥‥文字基板
12、32,42‥‥‥‥‥中心穴
13,43‥‥‥‥‥‥‥‥指標部品
13a、63a‥‥‥‥‥‥光透過性装飾部材
13b、63b‥‥‥‥‥‥指標基板
13c‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥カット模様(貴石カット形状)
13e‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥金属調微細ラメ
13f、63f‥‥‥‥‥‥取り付け部
14‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥時字(甲丸時字)
34、44‥‥‥‥‥‥‥‥時字(印刷丸時字)
15、35、45‥‥‥‥‥エト足
16‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥固定治具
17‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥樹脂形成枠体(筒)
18‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥模様形成型
19‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥樹脂模様形成体
30‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥背景技術例の時計用文字板(貴石入台座部品付文字板)
36‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥貴石入台座部品
36a‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥貴石
36b‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥台座基板
40‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥従来例の時計用文字板(透明樹脂体を備えた時計用文字板)
43a‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥数字時字
43b‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥リング部(時字)
53‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥指標部品(樹脂部カット付指標部品)
53d‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥樹脂カット模様
53h‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥樹脂部
63‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥指標部品(台座風指標部品)
63g‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥擬似貴石固定爪

【特許請求の範囲】
【請求項1】
文字基板の上面に指標部品を備える表示板構造において、前記指標部品は指標基板とその上面に光透過性装飾部材からなり、前記指標基板にはカット模様が施され、前記指標基板または光透過性装飾部材の少なくとも一方には表面処理が施されていることを特徴とする指標部品付表示板。
【請求項2】
指標基板のカット模様は上面が貴石(風)カット形状であることを特徴とする請求項1に記載の指標部品付表示板。
【請求項3】
指標基板の上面にある光透過性装飾部材は、透明樹脂、着色透明樹脂、透明硝子または着色透明硝子の中の少なくとも1つであることを特徴とする請求項1記載の指標部品付表示板。
【請求項4】
光透過性装飾部材の透明樹脂または着色透明樹脂は、樹脂上面にカット模様が施されていることを特徴とする請求項1または請求項3記載の指標部品付表示板。
【請求項5】
光透過性装飾部材の透明樹脂または着色透明樹脂は、金属調の微細ラメ、パール剤または偏光パール剤の中の少なくとも1つが樹脂材に混入して成ることを特徴とする請求項1、請求項3または請求項4記載の指標部品付表示板。
【請求項6】
光透過性装飾部材の透明樹脂または着色透明樹脂は、紫外線硬化型、熱硬化型または2液反応硬化型の中の少なくとも1つから成ることを特徴とする請求項1、請求項3、請求項4または請求項5記載の指標部品付表示板。
【請求項7】
表面処理は、湿式メッキ、乾式メッキ、印刷または塗装の中の少なくとも1つから成ることを特徴とする請求項1記載の指標部品付表示板。
【請求項8】
表面処理により、指標基板または光透過性装飾部材の表面に、金属装飾被膜が施されていることを特徴とする請求項1または請求項7記載の指標部品付表示板。

【図1】
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【図2】
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【図3A】
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【図3B】
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【図4】
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【図5】
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【図6A】
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【図6B】
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【図7】
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【図8A】
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【図8B】
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【図9】
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【図10A】
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【図10B】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2006−208207(P2006−208207A)
【公開日】平成18年8月10日(2006.8.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−21003(P2005−21003)
【出願日】平成17年1月28日(2005.1.28)
【出願人】(000124362)シチズンセイミツ株式会社 (120)